台本概要

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タイトル 女神は恋をしない
作者名 maturit  (@inui_maturi)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 3人用台本(男1、女1、不問1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ご自由に

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
優希 68
不問 92
リコリス 65
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
優希:「オートマタが恋をするだろうか?」 響:「どうしたの?頭でも打った?」 優希:「何言ってるんだよっ!」 響:「いや、お前が何言ってるんだよ」 優希:「俺は恋をしたんだ!!」 響:「もしかしてオートマタに?」 優希:「ああ、そうさっ!!」 響:「惚(ほ)れたのは外装(がわ)?」 優希:「違う!!内面にだ!!」 響:「あーはいはい、プログラミングね」 優希:「何故この気持ちがわからないんだっ!?」 響:「いや、いいんじゃない?今のご時世珍しくもなんともないよ」 優希:「そうだけど!!そうじゃないんだよ!!」 響:「何が言いたいんだよ?」 優希:「会えばわかる!!」 響:「ふーん、じゃあ合わせてよ」 優希:「いいだろう!覚悟するがいいっ!!」 響:「…なんの覚悟だよ」 0: 0:【女神は恋をしない】 0: 響:「いつまで待たせるんだよ」 優希:「まぁ待て!もうすぐ来る」 響:「そう、じゃあ待つよ…それにしても、この公園も懐かしいなぁ」 優希:「そうだな!昔はよく遊んだもんな!」 響:「うん、あの頃に戻りたいと思った事もあるよ」 優希:「そうか?今の方が楽しいだろ?」 響:「…そうでも無いよ」 優希:「ほらっ!来たよっ!!」 響:「…」 リコリス:「昨日ぶりね優希」 優希:「そうだね、今日は幼なじみを紹介したいんだ!」 リコリス:「どうりで見慣れない人と一緒だと思ったわ、こんにちは、初めまして」 響:「どうも」 優希:「ごめんな、人見知りで愛想(あいそ)が悪いけど良い奴なんだ」 響:「余計な事言うなっ」 優希:「いってー、なんだよっ!」 響:「僕の事は良いだろ、で、この子なの?」 優希:「あ、ああ、リコリスって言うんだ」 リコリス:「ご紹介に預(あず)かりました、リコリスです。貴方のお名前は?」 響:「響だよ」 リコリス:「そう、いい名前ね」 響:「そっちも見た目通りのいい名前だ」 リコリス:「まぁ、嬉しいわ」 響:「皮肉だよ」 優希:「おい、響…なんでそんな機嫌悪いんだよ?」 響:「さぁね、自分の心に聞いてみたら?」 優希:「俺が悪いのか?」 リコリス:「ふふっ、仲が良いのね」 響:「…ただの腐れ縁だよ」 優希:「俺たち親友だからっ!!」 響:「僕は認めてない」 優希:「なんでだよっ!?」 リコリス:「ふーん、そういう事ね。ねぇ、響って呼んでもいいかしら?」 響:「好きに呼べばいいよ」 リコリス:「じゃあ響ね、私は貴方と仲良くなりたいわ」 響:「ごくありふれたコミュニケーションプログラムだね」 優希:「おい、なんかお前変だぞ?」 響:「普通だよ」 優希:「いーや、なんかリコリスと会ってから機嫌悪いだろ」 響:「そういう所だけわかる優希は嫌いだ」 優希:「どういう意味だよっ!!」 リコリス:「あーもう、私を挟んで喧嘩(けんか)しないで」 響:「…」 優希:「ほんとごめん!いつもはここまでじゃないんだ」 リコリス:「気にしてないわ、それに…私は響の側につくから」 優希:「へ?」 リコリス:「だって優希の方が悪者だもの」 優希:「どういう意味っ!?」 響:「ちょっと、どういうつもり?」 リコリス:「私はね、他のオートマタとは違うの」 響:「同じに見えるんだけど」 リコリス:「見た目は同じだけど、中身が壊れてるの」 響:「は?」 リコリス:「私はね…女神なの」 響:「…優希、リコリスが壊れてる」 優希:「さっき壊れてるって言ってたじゃんか」 響:「いや、そうなんだけどっ!」 リコリス:「私は女神、そこは壊れてはいない標準使用よ」 響:「いやいやいや、十分おかしいからっ」 リコリス:「どこが?」 響:「…優希もおかしいと思うよねっ!?」 優希:「どこが?」 響:「え…壊れてるのは僕なの?いやいやいや、絶対おかしいって!」 リコリス:「んー、女神というのはコンセプトなのよ」 響:「コン…セプト?」 リコリス:「そうよ、私は特殊なオーダーメイドで、インストールされている人格プログラムが女神なの」 響:「…理解できるような?出来ないような?」 優希:「何もおかしいとこ無いじゃんか」 響:「そう…なのか?まぁ、とりあえずわかった事にする」 リコリス:「私が壊れているのは心」 響:「オートマタに心なんて無いだろ」 リコリス:「それはどうかしら?じゃあ、心ってなんだと思う?」 優希:「感情を揺さぶる熱い思いです!」 響:「感情論は聞いてないと思うよ?」 リコリス:「きちんとした定義がある訳じゃないけど、私は記憶の蓄積だと思うの」 響:「間違いでは無いんじゃない?」 リコリス:「ありがとう」 優希:「そーいう難しい話はよく分からん!」 響:「偉そうに言う事じゃないから」 優希:「俺が俺である事、これが心って事だろ」 響:「…かっこいい」 リコリス:「そうね、カッコイイわね」 響:「っ!?ちがくて!今のは不意打ち!」 優希:「何焦ってんだよ?」 響:「…なんだ気のせいか、やっぱ嫌い」 優希:「情緒不安定かっ!?」 リコリス:「羨ましいわ、私には二人の関係がとっても素晴らしいと思えるの」 響:「どうして?」 リコリス:「私のコンセプトが心の在り処(か)を探す事だから」 優希:「リコリスには心があるよ!」 リコリス:「そうね、私もそうだと思いたい…でもそんな証明は誰にも出来ない」 響:「具体的に何処が壊れてるの?」 リコリス:「…記憶媒体よ」 響:「じゃあ記憶に綻(ほころ)びが?」 優希:「よくわかんねーけど、そういうんじゃないみたいだ。出会ってからの記憶は保持されてるし」 響:「?」 リコリス:「すこし誤解させてしまったわね、じゃあ初めから説明するわ。私はベースとして様々な記憶データを元から記憶容量の九割にインストールされているの…だから私自身の記憶容量はほとんど残されていない」 響:「じゃあ壊れてるって言わないんじゃない?」 リコリス:「いいえ、壊れているわ…だって記憶容量を使い果たした今でも記憶しているの」 響:「それって…何処に記憶してるの?」 リコリス:「記憶媒体の外側、システム領域内よ…だから最近は日常生活行動に支障が出ているの」 優希:「凄いだろ?」 響:「どうなのかな。ねぇ、それって大丈夫なの?」 リコリス:「大丈夫では無いわ、バレたら故障として廃棄ね」 優希:「だから誰にも言うなよ響」 響:「なんでそんな大事な事を僕に教えるんだよ!」 優希:「だって親友だから」 響:「…たくっ!あーもうっ!…僕も誰にも言わないよ」 優希:「だよなっ」 リコリス:「ありがとう、優希が言う通り、いい人ね」 響:「君のためじゃない…優希のためだよ」 リコリス:「それでも、ありがとう」 響:「でもリコリス、君は定期的に自身の情報を何処かに送っているだろう?本当にバレていないのか?」 リコリス:「そうね、コンセプトからして研究データを送信しているけど…実は改竄(かいざん)してるの」 優希:「凄いだろ?」 響:「はぁ(ため息)、それ思いっきり違法じゃん」 優希:「でもリコリス自身がやってる訳だし、法律はオートマタを取り締まれないだろ?」 響:「今はそうだけど、この先もそうとは限らない。それに聞く限りだと長期間の活動は想定されていないだろ?」 リコリス:「そうね、そろそろ気づかれてもおかしくないわ」 優希:「えっ!?リコリスが居なくなるって事かっ!?そんな話聞いてないっ!」 リコリス:「ええ、言ってなかったわ」 響:「リコリスもわかってるんだ、僕らに出来ることはないよ」 優希:「なぁ響!何とかできないかな?」 響:「だから無理だって」 優希:「でもっ!!」 リコリス:「いいのよ、私は十分に満足してるから」 響:「リコリスもこう言ってるし、受け入れて最後まで見届けよう…優希もそれでいいよね?」 優希:「…嫌だっ!俺が何とかする!」 響:「話を聞いてなかったの?僕達が下手に何かをすればバレるリスクが高まる…それにオートマタは捕まらなくとも、僕たちは法に適応される」 優希:「リコリスを見殺しにしろって言うことかっ!?」 響:「何言ってるんだよ…オートマタには心もなければ命もない」 優希:「本気で言ってんのかっ!リコリスを見て、話をして、本気でそう言ってんのかっ!!」 響:「悪いけど本気だよ、もしも優希が変な事をするなら僕がバラす」 優希:「さっきは誰にも言わないって!そういったじゃんかよっ!!」 響:「…それは」 優希:「嫌いだ」 響:「え?」 優希:「お前なんて嫌いだ!いつも口先だけで余裕ぶって、何もしないそんなお前が、俺は嫌いなんだよっ!」 リコリス:「やめなさいっ!」 優希:「っ!?」 響:「っ!?」 リコリス:「優希、アナタ言い過ぎよ」 優希:「それは…リコリスが」 リコリス:「もしも私の為を思うなら、響の言葉を受け入れて…お願い」 響:「…ごめん」 リコリス:「響は悪くないわ、響なら私の言葉も気持ちも理解してくれると思ったから…それに優希を誰よりも愛してるから」 響:「なっ!?それはっ!」 リコリス:「大丈夫、大丈夫だから」 優希:「なんだよ…それ」 リコリス:「優希との時間はいつも楽しかったわ、それこそ忘れたくないと思ったキッカケも優希なの」 優希:「俺が悪いのかな?」 リコリス:「そうじゃない。私が私でありたいと思えた、この心をくれたのは優希よ」 優希:「…そっか、やっぱりリコリスには心があるんだな」 リコリス:「そうかもしれないわ」 響:「これからどうするの?」 リコリス:「そうね、残された時間は全て良い記憶にしたいわ」 優希:「わかった。取り乱してゴメン!あと、響。さっき言ったのは八つ当たりだ!本当にごめん!!」 響:「いいよ…本当の事だし」 リコリス:「そろそろ時間だわ、帰らないと」 優希:「明日もここに来るから」 リコリス:「ええ、約束ね」 響:「…」 リコリス:「そうだ、最後に響にだけ話があるの。だから優希は離れてて」 優希:「なんで?」 リコリス:「いいから」 優希:「隠し事は辞めてくれよっ!?」 リコリス:「はぁ(ため息)、優希にはデリカシーが欠如(けつじょ)しているわ」 響:「それには同意するよ」 優希:「うっ!…わかったよ…離れてるよ」 リコリス:「ありがとう」 響:「で?話って何?」 リコリス:「そうねぇ…響は優希が好きでしょ?」 響:「…そ、それりゃあ、友人として好きだよ?」 リコリス:「そうじゃなくて恋愛的に」 響:「っ!?そ、それは」 リコリス:「大丈夫、誰にも言わないわ」 響:「リコリスはどうなの?」 リコリス:「私?私は優希を愛しているわ」 響:「人間になりたい?」 リコリス:「それは思わないわ、もしも人間なら優希に出会わなかったかもしれない、私に興味を持たなかったかもしれない、そう考えると寂(さみ)しいから」 響:「そっか」 リコリス:「それにね」 響:「?」 リコリス:「女神は恋をしないの」 響:「え?それって…どういう」 リコリス:「最近記憶した知識だけど、恋は下に心があるから下心(したごころ)からって言うらしいじゃない?」 響:「面白い知識だね」 リコリス:「下心(したごころ)って事は外見でしょ?私はオートマタだから見た目なんて気にしないわ…見るのは内面だけ」 響:「面白い考え方だね」 リコリス:「だから私は優希を愛してるの」 響:「じゃあ、僕も」 優希:「おーい!!まだ話してるのかっ!!」 響:「本当に空気読めないなぁ」 リコリス:「ふふっ、そんな所も愛おしいでしょ?」 響:「…ノーコメントで」 優希:「もう話は良いのか?」 リコリス:「ええ、次の機会にするわ」 響:「じゃあね、リコリス」 リコリス:「またね」 優希:「ふーん、随分(ずいぶん)と仲が良いじゃんか」 響:「もしかして嫉妬(しっと)?」 優希:「そんなんじゃねーよ!」 響:「どうかなぁ?」 優希:「ところでなんの話してたんだよ」 響:「それはねぇ…」 優希:「それは?」 響:「女神は恋をしないって話だよ」

優希:「オートマタが恋をするだろうか?」 響:「どうしたの?頭でも打った?」 優希:「何言ってるんだよっ!」 響:「いや、お前が何言ってるんだよ」 優希:「俺は恋をしたんだ!!」 響:「もしかしてオートマタに?」 優希:「ああ、そうさっ!!」 響:「惚(ほ)れたのは外装(がわ)?」 優希:「違う!!内面にだ!!」 響:「あーはいはい、プログラミングね」 優希:「何故この気持ちがわからないんだっ!?」 響:「いや、いいんじゃない?今のご時世珍しくもなんともないよ」 優希:「そうだけど!!そうじゃないんだよ!!」 響:「何が言いたいんだよ?」 優希:「会えばわかる!!」 響:「ふーん、じゃあ合わせてよ」 優希:「いいだろう!覚悟するがいいっ!!」 響:「…なんの覚悟だよ」 0: 0:【女神は恋をしない】 0: 響:「いつまで待たせるんだよ」 優希:「まぁ待て!もうすぐ来る」 響:「そう、じゃあ待つよ…それにしても、この公園も懐かしいなぁ」 優希:「そうだな!昔はよく遊んだもんな!」 響:「うん、あの頃に戻りたいと思った事もあるよ」 優希:「そうか?今の方が楽しいだろ?」 響:「…そうでも無いよ」 優希:「ほらっ!来たよっ!!」 響:「…」 リコリス:「昨日ぶりね優希」 優希:「そうだね、今日は幼なじみを紹介したいんだ!」 リコリス:「どうりで見慣れない人と一緒だと思ったわ、こんにちは、初めまして」 響:「どうも」 優希:「ごめんな、人見知りで愛想(あいそ)が悪いけど良い奴なんだ」 響:「余計な事言うなっ」 優希:「いってー、なんだよっ!」 響:「僕の事は良いだろ、で、この子なの?」 優希:「あ、ああ、リコリスって言うんだ」 リコリス:「ご紹介に預(あず)かりました、リコリスです。貴方のお名前は?」 響:「響だよ」 リコリス:「そう、いい名前ね」 響:「そっちも見た目通りのいい名前だ」 リコリス:「まぁ、嬉しいわ」 響:「皮肉だよ」 優希:「おい、響…なんでそんな機嫌悪いんだよ?」 響:「さぁね、自分の心に聞いてみたら?」 優希:「俺が悪いのか?」 リコリス:「ふふっ、仲が良いのね」 響:「…ただの腐れ縁だよ」 優希:「俺たち親友だからっ!!」 響:「僕は認めてない」 優希:「なんでだよっ!?」 リコリス:「ふーん、そういう事ね。ねぇ、響って呼んでもいいかしら?」 響:「好きに呼べばいいよ」 リコリス:「じゃあ響ね、私は貴方と仲良くなりたいわ」 響:「ごくありふれたコミュニケーションプログラムだね」 優希:「おい、なんかお前変だぞ?」 響:「普通だよ」 優希:「いーや、なんかリコリスと会ってから機嫌悪いだろ」 響:「そういう所だけわかる優希は嫌いだ」 優希:「どういう意味だよっ!!」 リコリス:「あーもう、私を挟んで喧嘩(けんか)しないで」 響:「…」 優希:「ほんとごめん!いつもはここまでじゃないんだ」 リコリス:「気にしてないわ、それに…私は響の側につくから」 優希:「へ?」 リコリス:「だって優希の方が悪者だもの」 優希:「どういう意味っ!?」 響:「ちょっと、どういうつもり?」 リコリス:「私はね、他のオートマタとは違うの」 響:「同じに見えるんだけど」 リコリス:「見た目は同じだけど、中身が壊れてるの」 響:「は?」 リコリス:「私はね…女神なの」 響:「…優希、リコリスが壊れてる」 優希:「さっき壊れてるって言ってたじゃんか」 響:「いや、そうなんだけどっ!」 リコリス:「私は女神、そこは壊れてはいない標準使用よ」 響:「いやいやいや、十分おかしいからっ」 リコリス:「どこが?」 響:「…優希もおかしいと思うよねっ!?」 優希:「どこが?」 響:「え…壊れてるのは僕なの?いやいやいや、絶対おかしいって!」 リコリス:「んー、女神というのはコンセプトなのよ」 響:「コン…セプト?」 リコリス:「そうよ、私は特殊なオーダーメイドで、インストールされている人格プログラムが女神なの」 響:「…理解できるような?出来ないような?」 優希:「何もおかしいとこ無いじゃんか」 響:「そう…なのか?まぁ、とりあえずわかった事にする」 リコリス:「私が壊れているのは心」 響:「オートマタに心なんて無いだろ」 リコリス:「それはどうかしら?じゃあ、心ってなんだと思う?」 優希:「感情を揺さぶる熱い思いです!」 響:「感情論は聞いてないと思うよ?」 リコリス:「きちんとした定義がある訳じゃないけど、私は記憶の蓄積だと思うの」 響:「間違いでは無いんじゃない?」 リコリス:「ありがとう」 優希:「そーいう難しい話はよく分からん!」 響:「偉そうに言う事じゃないから」 優希:「俺が俺である事、これが心って事だろ」 響:「…かっこいい」 リコリス:「そうね、カッコイイわね」 響:「っ!?ちがくて!今のは不意打ち!」 優希:「何焦ってんだよ?」 響:「…なんだ気のせいか、やっぱ嫌い」 優希:「情緒不安定かっ!?」 リコリス:「羨ましいわ、私には二人の関係がとっても素晴らしいと思えるの」 響:「どうして?」 リコリス:「私のコンセプトが心の在り処(か)を探す事だから」 優希:「リコリスには心があるよ!」 リコリス:「そうね、私もそうだと思いたい…でもそんな証明は誰にも出来ない」 響:「具体的に何処が壊れてるの?」 リコリス:「…記憶媒体よ」 響:「じゃあ記憶に綻(ほころ)びが?」 優希:「よくわかんねーけど、そういうんじゃないみたいだ。出会ってからの記憶は保持されてるし」 響:「?」 リコリス:「すこし誤解させてしまったわね、じゃあ初めから説明するわ。私はベースとして様々な記憶データを元から記憶容量の九割にインストールされているの…だから私自身の記憶容量はほとんど残されていない」 響:「じゃあ壊れてるって言わないんじゃない?」 リコリス:「いいえ、壊れているわ…だって記憶容量を使い果たした今でも記憶しているの」 響:「それって…何処に記憶してるの?」 リコリス:「記憶媒体の外側、システム領域内よ…だから最近は日常生活行動に支障が出ているの」 優希:「凄いだろ?」 響:「どうなのかな。ねぇ、それって大丈夫なの?」 リコリス:「大丈夫では無いわ、バレたら故障として廃棄ね」 優希:「だから誰にも言うなよ響」 響:「なんでそんな大事な事を僕に教えるんだよ!」 優希:「だって親友だから」 響:「…たくっ!あーもうっ!…僕も誰にも言わないよ」 優希:「だよなっ」 リコリス:「ありがとう、優希が言う通り、いい人ね」 響:「君のためじゃない…優希のためだよ」 リコリス:「それでも、ありがとう」 響:「でもリコリス、君は定期的に自身の情報を何処かに送っているだろう?本当にバレていないのか?」 リコリス:「そうね、コンセプトからして研究データを送信しているけど…実は改竄(かいざん)してるの」 優希:「凄いだろ?」 響:「はぁ(ため息)、それ思いっきり違法じゃん」 優希:「でもリコリス自身がやってる訳だし、法律はオートマタを取り締まれないだろ?」 響:「今はそうだけど、この先もそうとは限らない。それに聞く限りだと長期間の活動は想定されていないだろ?」 リコリス:「そうね、そろそろ気づかれてもおかしくないわ」 優希:「えっ!?リコリスが居なくなるって事かっ!?そんな話聞いてないっ!」 リコリス:「ええ、言ってなかったわ」 響:「リコリスもわかってるんだ、僕らに出来ることはないよ」 優希:「なぁ響!何とかできないかな?」 響:「だから無理だって」 優希:「でもっ!!」 リコリス:「いいのよ、私は十分に満足してるから」 響:「リコリスもこう言ってるし、受け入れて最後まで見届けよう…優希もそれでいいよね?」 優希:「…嫌だっ!俺が何とかする!」 響:「話を聞いてなかったの?僕達が下手に何かをすればバレるリスクが高まる…それにオートマタは捕まらなくとも、僕たちは法に適応される」 優希:「リコリスを見殺しにしろって言うことかっ!?」 響:「何言ってるんだよ…オートマタには心もなければ命もない」 優希:「本気で言ってんのかっ!リコリスを見て、話をして、本気でそう言ってんのかっ!!」 響:「悪いけど本気だよ、もしも優希が変な事をするなら僕がバラす」 優希:「さっきは誰にも言わないって!そういったじゃんかよっ!!」 響:「…それは」 優希:「嫌いだ」 響:「え?」 優希:「お前なんて嫌いだ!いつも口先だけで余裕ぶって、何もしないそんなお前が、俺は嫌いなんだよっ!」 リコリス:「やめなさいっ!」 優希:「っ!?」 響:「っ!?」 リコリス:「優希、アナタ言い過ぎよ」 優希:「それは…リコリスが」 リコリス:「もしも私の為を思うなら、響の言葉を受け入れて…お願い」 響:「…ごめん」 リコリス:「響は悪くないわ、響なら私の言葉も気持ちも理解してくれると思ったから…それに優希を誰よりも愛してるから」 響:「なっ!?それはっ!」 リコリス:「大丈夫、大丈夫だから」 優希:「なんだよ…それ」 リコリス:「優希との時間はいつも楽しかったわ、それこそ忘れたくないと思ったキッカケも優希なの」 優希:「俺が悪いのかな?」 リコリス:「そうじゃない。私が私でありたいと思えた、この心をくれたのは優希よ」 優希:「…そっか、やっぱりリコリスには心があるんだな」 リコリス:「そうかもしれないわ」 響:「これからどうするの?」 リコリス:「そうね、残された時間は全て良い記憶にしたいわ」 優希:「わかった。取り乱してゴメン!あと、響。さっき言ったのは八つ当たりだ!本当にごめん!!」 響:「いいよ…本当の事だし」 リコリス:「そろそろ時間だわ、帰らないと」 優希:「明日もここに来るから」 リコリス:「ええ、約束ね」 響:「…」 リコリス:「そうだ、最後に響にだけ話があるの。だから優希は離れてて」 優希:「なんで?」 リコリス:「いいから」 優希:「隠し事は辞めてくれよっ!?」 リコリス:「はぁ(ため息)、優希にはデリカシーが欠如(けつじょ)しているわ」 響:「それには同意するよ」 優希:「うっ!…わかったよ…離れてるよ」 リコリス:「ありがとう」 響:「で?話って何?」 リコリス:「そうねぇ…響は優希が好きでしょ?」 響:「…そ、それりゃあ、友人として好きだよ?」 リコリス:「そうじゃなくて恋愛的に」 響:「っ!?そ、それは」 リコリス:「大丈夫、誰にも言わないわ」 響:「リコリスはどうなの?」 リコリス:「私?私は優希を愛しているわ」 響:「人間になりたい?」 リコリス:「それは思わないわ、もしも人間なら優希に出会わなかったかもしれない、私に興味を持たなかったかもしれない、そう考えると寂(さみ)しいから」 響:「そっか」 リコリス:「それにね」 響:「?」 リコリス:「女神は恋をしないの」 響:「え?それって…どういう」 リコリス:「最近記憶した知識だけど、恋は下に心があるから下心(したごころ)からって言うらしいじゃない?」 響:「面白い知識だね」 リコリス:「下心(したごころ)って事は外見でしょ?私はオートマタだから見た目なんて気にしないわ…見るのは内面だけ」 響:「面白い考え方だね」 リコリス:「だから私は優希を愛してるの」 響:「じゃあ、僕も」 優希:「おーい!!まだ話してるのかっ!!」 響:「本当に空気読めないなぁ」 リコリス:「ふふっ、そんな所も愛おしいでしょ?」 響:「…ノーコメントで」 優希:「もう話は良いのか?」 リコリス:「ええ、次の機会にするわ」 響:「じゃあね、リコリス」 リコリス:「またね」 優希:「ふーん、随分(ずいぶん)と仲が良いじゃんか」 響:「もしかして嫉妬(しっと)?」 優希:「そんなんじゃねーよ!」 響:「どうかなぁ?」 優希:「ところでなんの話してたんだよ」 響:「それはねぇ…」 優希:「それは?」 響:「女神は恋をしないって話だよ」