台本概要
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タイトル | 青空 |
---|---|
作者名 | 桜蛇あねり(おうじゃあねり) (@aneri_game_m) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(女2) ※兼役あり |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
この『青空』を、あなたに捧げます。あなたとともに創り上げた、この『青空』を…。 これは、病院で出会った二人の少女の絆の物語。 女:2人(男女不問) 一人称や語尾の改変、世界観を壊さない程度のアドリブや改変はOKです。 594 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
あお | 女 | 81 | 高校生になったばかりの少女。 小説を書くことが好きだった。 |
空 | 女 | 65 | 余命宣告をされた少女。 |
母 | 女 | 4 | あおの母。 空と兼ね役。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:
あお:この『青空』を、あなたに捧げます。あなたとともに創り上げた、この『青空』を…。
:
あお:(桜が舞い散る、4月の始まりの日。私は、期待と不安を胸に、新しい高校の入学式へと向かっていた。どんな青春が待っているのかな、友達はできるかな、勉強はついていけるかな…。これから訪れるであろう、輝かしい高校生活を頭の中で描きながら、私は通学路である、住宅街の道を歩いていく。そして、大きな道路に出て……、目の前が真っ暗になった。)
あお:
あお:(あれ、私は……。遠くで私を呼ぶ声が聞こえる……。お母さん…?)
あお:
母:あお……っ!
母:
あお:おかあ…さん…?
あお:
母:よかった、よかった……!
母:
0:間
母:全治、三か月なんだって。飛び出してきた車と衝突して……いろんな所が骨折しているみたいなんだけど、脳への損傷はないって、先生は言っていたわ。完治すれば、元の生活に戻れるそうよ。
母:
あお:そっか、三か月、か……。
あお:
母:お母さんも協力するから、一緒にリハビリ頑張りましょうね。
母:
あお:うん、ありがとう。
あお:
:
:
あお:(入学式前に事故にあって、そして三か月の入院生活……。最悪だ……。新しい友達や、部活など、高校生活の基盤を決める大切な時期に入院なんて……。はあ、気が重い。
あお:退屈な入院生活が始まった。)
あお:
:
0:間
:
あお:(入院して一か月経ち、私はなんとか歩けるようになるまで回復した。まだ、松葉杖を使ってようやく、といったところだが、行動範囲が広がったのは嬉しかった。
あお:ふと、窓の外を見ると、とてもきれいな青空が広がっていた。外は快晴で、とても気持ちよさそうだ。そういえば、ここの病院には屋上に広場があると、母が言っていた。よし、屋上へ行ってみよう。)
:
:
あお:わぁ!気持ちいい!青空、きれいだなぁ……。
あお:
あお:(結構、人いるなぁ。みんな、元気そう!……あれ、あそこにいる女の子、元気なさそう…。……一人で空を見上げて…。よーし!)
あお:
:
:
あお:ねえ、隣、いい?
あお:
空:…!?
空:
あお:あ、ごめんね、そんなに警戒しないで?驚かせるつもりはなかったの。ここ、座ってもいいかな?
あお:
空:……別にいいけど。
空:
あお:ふふっ、ありがとう。
あお:
空:……。
空:
あお:……。
あお:
空:……。
空:
あお:……綺麗な空だね。
あお:
空:……。……そだね。
空:
あお:青空、か…。懐かしいなぁ…。
あお:
空:……?懐かしい…?
空:
あお:あぁ、ごめん、変なこと言ったよね。私、昔、といっても一年前とかなんだけど、青空をテーマにした小説を書いたことがあって。それを思い出しちゃって。
あお:
空:小説…?
空:
あお:うん。あの作品、まだ完成してなくてさ。病院生活も退屈だし、また書いてみようかな……。
あお:
空:あなたが書いた小説?
空:
あお:そうだよ。私、小説書くの大好きなんだ。
あお:
空:あ、あたしも好き!
空:
あお:あなたも小説書いているの?
あお:
空:うん!……まあ、完成した作品はないけど……。
空:
あお:それでもいいからさ!今度見せてよ!私の作品も見せるから!
あお:
空:……。それは無理、だよ。
空:
あお:あ、そ、そうだよね!初対面なのに、見せたくないよね!ご、ごめんね、気を悪く……
あお:
空:あたし、今日死んじゃうから。
空:
あお:……え?
あお:
空:余命宣告されたの、今日がその日。
空:
あお:あ……。
あお:
空:だから、見せられない。
空:
あお:……大丈夫だよ。
あお:
空:え…?
空:
あお:だって!私とこうして、元気に話しているんだよ?そんなあなたが今日、急にいなくなるなんて、私は信じない。絶対に、あなたは死なない!……根拠はない、けど。
あお:
空:……。(ほほえみながら)ふふっ、あたしのこと知らないくせに。
空:
あお:あー、うん、そーだよね、何言ってんだって、自分でも思うんだけど、でも!私はあなたと明日も会えることを信じてる!
あお:
空:おもしろいね。うん、じゃああたしも、信じてみる。
空:
あお:うん!じゃあ、約束!明日、お互いの作品を見せ合おう!ここで!
あお:
空:わかった。明日、約束。
空:
あお:えへへ。じゃあ、また明日ね!
あお:
空:うん、また、明日。
空:
:
:
0:次の日
:
:
あお:今日も、あの子に会えるかな……。会える、よね。……。
あお:
空:約束、したからね。
空:
あお:……!
あお:
空:おはよ。
空:
あお:お、おはよ!!
あお:
空:今日も元気だね。はい、約束のもの、持ってきたよ。
空:
あお:うん…!うん!私も!!……あ、そういえば、自己紹介まだだったよね。私はあお。よろしくね!
あお:
空:うん、よろしく、あお。私は、空。
空:
あお:空…!いい名前だね!
あお:
空:あお、もね。さ、あおい、作品を見せてよ。
空:
あお:あー、なんかいざとなると恥ずかしいなぁ……。
あお:
空:何言ってるの、あおいが言ったんでしょ?
空:
あお:いやー、まあ、そうなんだけどさ。昨日、自分の作品読み返してたら、もうなんか恥ずかしくなっちゃって……。あー、過去の自分はこれを自信満々に書いてたんだー、とか思うとなんか悲しくて……。
あお:
空:もう!つべこべ言ってないで、早く見せる!
空:
あお:あぁー!私の黒歴史がぁ!
あお:
空:あ、あたしだって恥かしいのは同じなんだから!ほら、お互い読むよ!
空:
あお:ふふっ!うん!
あお:
:
0:間
:
空:あお、凄いよ!文章力があるし、表現の仕方も綺麗で素敵!
空:
あお:ホントに!?あの、正直に言ってくれていいんだよ?
あお:
空:ううん。本当のことだよ!文章力と表現力はすごい!
空:
あお:えへへ、照れるなぁ。
あお:
空:でも、キャラがたってない気がするんだよね。んー、そこがちょっと惜しいかな…。
空:
あお:なるほど。それは私も薄々思っていたんだよね。なんかありきたりだよなーって。
あお:
空:そこが、あなたの今後の課題点でしょう!
空:
あお:アドバイスありがとうございます、先生!
あお:
空:で、あたしの作品はどうだった?
空:
あお:めちゃくちゃ面白かった!すごく引き込まれたし、発想がすごいなって!
あお:
空:えっへへ!ありがと!なんか、人に見せたことなかったから、なんだろう、このむずむずする感情…。
空:
あお:ただ、ちょっとわかりにくい所があるかな、設定とか背景とか…。
あお:
空:うーん、そうなんだよね、あたし、文章に自信がなくて。
空:
あお:文章力は、本を読んだり勉強すればおのずと付いてきます!あなたはそこを頑張りましょう!
あお:
空:ふふっ。はーい、せんせーい!
空:
あお:にしても、ここのアイデアいいなぁ。
あお:
空:ねえ!ここの設定をさ、あおのこの『青空』に入れてみてよ!
空:
あお:確かに……、それだともっと面白くなるかもしれない。
あお:
空:ね!このノート貸すからさ!あたしの作品を、あおの作品の中に取り込んでほしい!
空:
あお:オッケー!じゃあ、一緒にプロット考えていこう!
あお:
空:うん!
空:
:
:
0:夕方。
:
:
あお:わ、いつの間にか夕日が!
あお:
空:ここまで時間を忘れて話し込んだの、初めてかも!
空:
あお:そろそろ戻ろっか。
あお:
空:そうだね。続きは、また、明日。
空:
あお:うん…!明日までに、今日までのところ、書き進めておくね!
あお:
空:うん!楽しみにしてるね!
空:
あお:それじゃあ、また、明日!
あお:
:
:
:
あお:(その日から、私の退屈だった入院生活は、華やかな充実した日々へと一変した。私の文章と表現で、空の素敵なアイデアを形にしていく。ときにぶつかり合ったりしながらも、私と空は屋上のきれいな青空の下で、小説『青空』を完成させるべく語りつくした。
あお:空のアイデアはとても参考になる。今まで自信がなかった自分の想像力は、確実に向上していた。
あお:かつてない充実した日々だったが、
あお:それは長くは続かなかった。)
あお:
あお:(空と出会って1ヵ月が経とうとしていたある日。私は、いつものように、屋上へ向かった。手には完成した『青空』がある。
あお:一緒に完成を喜び合える!早く空に会いたい!
あお:屋上についたが、空はまだ来ていないみたいだ。もう少し、待ってみよう…。)
:
:
あお:空、遅いな……。いつもならとっくに来ているはず、なの、に……。
あお:
あお:(嫌な予感が頭をよぎる。私は、空の病室へ向かうことにした。
あお:
あお:本当は、わかっていた。この一か月、空が少しずつ弱ってきているのを、私はそばで見ていたのだから。
あお:それでも、このドアの先に待っている空を見るのは、怖かった。)
あお:
0:ノック音
あお:空、入るね…。
あお:
空:……あ、あお。
空:
あお:(そこには、ぐったりと横たわり、苦しそうに息をしている空。彼女の変わり果てた姿に、私は言葉を失った。
あお:信じたくなかった。でも、これが現実だ。もともと、一か月前に余命宣告を受けていたんだ。どんな病状なのかは、結局聞かなかったが、いずれこの日が来るとは、わかっていた。)
あおい:
空:ねえ、あお……あたし、死ぬのかな。
空:
あお:……っ!
あお:
空:怖い、怖いよ、あお……。
空:
あお:空……。
あお:
空:あたし、こんなに死が怖いなんて思わなかったよ? もう諦めてたことだし、特に未練なんてものも無かった。余命宣告された日が来ても、恐怖なんてなかった。それなのに、今は、死んでこの世界から離れるのが嫌なの。あおがいない世界に行くのが嫌なの。嫌だよ、怖いよ……っ
空:
あお:
あお:……。
空:あたし、やっぱりあなたと出会わなければよかった……。あなたの存在を知らなければ、こんな気持ちにならずに済んだんだ……。
空:
あお:なんで……そんなこと……言うの…。
あお:
空:……っ。…ぅ…っ。
空:
あお:私だって……。私だってあなたと出会わなければ良かった……。
あお:
空:……っ!!
空:
あお:私はこの世界で、あなたのいないこの世界で生きて行かなければならないんだよ? ずっと、死ぬまでその悲しみを背負っていかなければいけないんだよ? そんなの……嫌だよ!
あお:
空:あお……。
空:
あお:……!ご、ごめん、私……。
あお:……っ!!(部屋を飛び出す)
空:あお……。
空:
:
0:あおの病室
:
あお:う、うわああああああん!うっうっ空、空……っ!
あお:
あお:(その夜、私はただただ泣いた。ずっとずっと、夜が明けるまで。完成した、『青空』を記したノートが手元からなくなっていたことに気付いたが、もう、どうでもよかった。空を失うかもしれないという悲しみと、空を傷つけてしまった悲しみが、私を襲い続けた。
あお: 私は今まで、人の死というものに触れた事がなかった。だからそれがどんなに悲しい事か、全く分からなくて怖くなった。私の大切な人がいなくなってしまう。そうしたら、私はどう生きていけばいい?空がいなくなった世界で生きていけるの?頭の中は恐怖でいっぱいだった。
あお:そして、夜が明けた。)
あお:
:
:
0:空の病室前
:
:
あお:(私は空の病室の前にいた。動くようになった右手で、ノックしようとする。でも、その手はノックする前に止まってしまった。この病室に入ってしまえば、現実を受け止めなくてはならない。その覚悟が、私にはあるのだろうか。怖かった。彼女の変わり果てた姿がこの奥にあるかもしれないのだから。それでも……。私は彼女に伝えなければいけない事があるのだ。)
あお:
:
0:(ノック音)
:
:
空:はい……。
空:
あお:(中から声がして、私はドアを開けた。中に入ると、昨日よりも酷い様態の空と、彼女の両親と思しき人物がいた。その二人に軽く会釈して、私は空の元へと近づいていく。)
あお:
あお:空……私だよ。
あお:
空:あお、来てくれたんだね。
空:
あお:……。空、あの、私……。
あお:
空:あお、昨日はあんなこと言ってごめんね。あたし、本当はあんなこと思ってないよ。
空:
あお:空……っ!私も……っ!私も、あんなこと言って、ごめん…っ!
あお:
空:あお、あたしね、余命宣告を受けた日、誰かと友達になることをあきらめたんだ。お父さんもお母さんも、すごく悲しんでて、あたしも悲しかったし、怖くなったから。この悲しみをこれ以上増やしたくなかったから。でも、あの日、あたしはあおと出会ってしまった。そのせいで、あたしも、あおも、悲しませることになってしまった…。
空:
あお:空……。
あお:
空:だけど、だけどね、あお。あたしが間違ってたんだ。あなたと過ごした一か月、本当に楽しかった。短い期間だったけど、あおは、あたしの一番大切な親友だよ。
空:
あお:うん、うん……っ。一番、大切な……うぅ…っ。
あお:
空:今はね、死ぬことの悲しみよりも、あなたに出会えて過ごせた喜びのほうが大きい。ありがとう、あお。あたしと出会ってくれて。
空:
あお:私も……ぅ、空、に出会えて……よかった……。
あお:
空:それとね、あお、そこにおいてあるノート。
空:
あお:あ…『青空』……。
あお:
空:昨日、ここで落としてたよ、ダメだよ、あたしたちの大切な物語なんだから。
空:
あお:うん、もう離さない…!
あお:
空:完成したね。すごくよかった。
空:
あお:読んで、くれたの?
あお:
空:当たり前じゃん。今思えばさ、余命がここまで伸びたのは、きっと『青空』を完成させるためだったのかもね。
空:
あお:ぅ…やだよ…空…行かないで…。
あお:
空:あたしは、ずっとその物語の中にいるよ、あお。あおなら、きっと良い小説家になれると思う。
空:
あお:うん……!私、夢をかなえてみせるから…!
あお:
空:最後に、あたしのわがまま、一つ聞いてくれる?
空:
あお:うん…!
あお:
空:あたしのこと、ずっとずっと忘れないでほしい。あたしがこの世界で生きていたことを、覚えていてほしい。
空:
あお:当たり前だよ!ずっと、ずっと、忘れない、忘れるわけない!
あお:
空:ありがとう、あお…。大好きだよ…。さよ、なら…。
空:
あお:ぁ、あぁ、空、空っ!私も、大好きだよ、ありがとう……!!
あお:
:
:
あお:(そして、私の一番大切な親友は、息をひきとった……。)
あお:
:
:
0:10年後
:
:
あお:(とある、春の日。今日は雲一つない、きれいな青空が広がっている。私は、空のお墓へと来ていた。)
あお:
あお:空、今日はね、渡したいものがあるんだ。あれから10年、長かったけど、ついに、やったよ。
あお:
あお:(私は、カバンの中から1冊の本を取り出した。その本のタイトルは『青空』。作者の名前は”空野 青(そらのあお)”)
あお:
あお:ついに作家デビュー!何度か挫折したこともあったけど、空との約束を思い出して、あきらめずにやり遂げたよ!私たちの『青空』読んでほしいの。
あお:
あお:(私は、その本をそっとお墓にお供えした。さあっと、春の風が吹く。)
あお:
空:頑張ったね、あお。
空:
あお:……!!
あお:
あお:(その春の風に乗って、空の声が聞こえた気がした。)
あお:
:
:
あお:この『青空』を、あなたに捧げます。あなたとともに創り上げた、この『青空』を…。
あお:
:
0:完
:
あお:この『青空』を、あなたに捧げます。あなたとともに創り上げた、この『青空』を…。
:
あお:(桜が舞い散る、4月の始まりの日。私は、期待と不安を胸に、新しい高校の入学式へと向かっていた。どんな青春が待っているのかな、友達はできるかな、勉強はついていけるかな…。これから訪れるであろう、輝かしい高校生活を頭の中で描きながら、私は通学路である、住宅街の道を歩いていく。そして、大きな道路に出て……、目の前が真っ暗になった。)
あお:
あお:(あれ、私は……。遠くで私を呼ぶ声が聞こえる……。お母さん…?)
あお:
母:あお……っ!
母:
あお:おかあ…さん…?
あお:
母:よかった、よかった……!
母:
0:間
母:全治、三か月なんだって。飛び出してきた車と衝突して……いろんな所が骨折しているみたいなんだけど、脳への損傷はないって、先生は言っていたわ。完治すれば、元の生活に戻れるそうよ。
母:
あお:そっか、三か月、か……。
あお:
母:お母さんも協力するから、一緒にリハビリ頑張りましょうね。
母:
あお:うん、ありがとう。
あお:
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あお:(入学式前に事故にあって、そして三か月の入院生活……。最悪だ……。新しい友達や、部活など、高校生活の基盤を決める大切な時期に入院なんて……。はあ、気が重い。
あお:退屈な入院生活が始まった。)
あお:
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0:間
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あお:(入院して一か月経ち、私はなんとか歩けるようになるまで回復した。まだ、松葉杖を使ってようやく、といったところだが、行動範囲が広がったのは嬉しかった。
あお:ふと、窓の外を見ると、とてもきれいな青空が広がっていた。外は快晴で、とても気持ちよさそうだ。そういえば、ここの病院には屋上に広場があると、母が言っていた。よし、屋上へ行ってみよう。)
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あお:わぁ!気持ちいい!青空、きれいだなぁ……。
あお:
あお:(結構、人いるなぁ。みんな、元気そう!……あれ、あそこにいる女の子、元気なさそう…。……一人で空を見上げて…。よーし!)
あお:
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あお:ねえ、隣、いい?
あお:
空:…!?
空:
あお:あ、ごめんね、そんなに警戒しないで?驚かせるつもりはなかったの。ここ、座ってもいいかな?
あお:
空:……別にいいけど。
空:
あお:ふふっ、ありがとう。
あお:
空:……。
空:
あお:……。
あお:
空:……。
空:
あお:……綺麗な空だね。
あお:
空:……。……そだね。
空:
あお:青空、か…。懐かしいなぁ…。
あお:
空:……?懐かしい…?
空:
あお:あぁ、ごめん、変なこと言ったよね。私、昔、といっても一年前とかなんだけど、青空をテーマにした小説を書いたことがあって。それを思い出しちゃって。
あお:
空:小説…?
空:
あお:うん。あの作品、まだ完成してなくてさ。病院生活も退屈だし、また書いてみようかな……。
あお:
空:あなたが書いた小説?
空:
あお:そうだよ。私、小説書くの大好きなんだ。
あお:
空:あ、あたしも好き!
空:
あお:あなたも小説書いているの?
あお:
空:うん!……まあ、完成した作品はないけど……。
空:
あお:それでもいいからさ!今度見せてよ!私の作品も見せるから!
あお:
空:……。それは無理、だよ。
空:
あお:あ、そ、そうだよね!初対面なのに、見せたくないよね!ご、ごめんね、気を悪く……
あお:
空:あたし、今日死んじゃうから。
空:
あお:……え?
あお:
空:余命宣告されたの、今日がその日。
空:
あお:あ……。
あお:
空:だから、見せられない。
空:
あお:……大丈夫だよ。
あお:
空:え…?
空:
あお:だって!私とこうして、元気に話しているんだよ?そんなあなたが今日、急にいなくなるなんて、私は信じない。絶対に、あなたは死なない!……根拠はない、けど。
あお:
空:……。(ほほえみながら)ふふっ、あたしのこと知らないくせに。
空:
あお:あー、うん、そーだよね、何言ってんだって、自分でも思うんだけど、でも!私はあなたと明日も会えることを信じてる!
あお:
空:おもしろいね。うん、じゃああたしも、信じてみる。
空:
あお:うん!じゃあ、約束!明日、お互いの作品を見せ合おう!ここで!
あお:
空:わかった。明日、約束。
空:
あお:えへへ。じゃあ、また明日ね!
あお:
空:うん、また、明日。
空:
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0:次の日
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あお:今日も、あの子に会えるかな……。会える、よね。……。
あお:
空:約束、したからね。
空:
あお:……!
あお:
空:おはよ。
空:
あお:お、おはよ!!
あお:
空:今日も元気だね。はい、約束のもの、持ってきたよ。
空:
あお:うん…!うん!私も!!……あ、そういえば、自己紹介まだだったよね。私はあお。よろしくね!
あお:
空:うん、よろしく、あお。私は、空。
空:
あお:空…!いい名前だね!
あお:
空:あお、もね。さ、あおい、作品を見せてよ。
空:
あお:あー、なんかいざとなると恥ずかしいなぁ……。
あお:
空:何言ってるの、あおいが言ったんでしょ?
空:
あお:いやー、まあ、そうなんだけどさ。昨日、自分の作品読み返してたら、もうなんか恥ずかしくなっちゃって……。あー、過去の自分はこれを自信満々に書いてたんだー、とか思うとなんか悲しくて……。
あお:
空:もう!つべこべ言ってないで、早く見せる!
空:
あお:あぁー!私の黒歴史がぁ!
あお:
空:あ、あたしだって恥かしいのは同じなんだから!ほら、お互い読むよ!
空:
あお:ふふっ!うん!
あお:
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0:間
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空:あお、凄いよ!文章力があるし、表現の仕方も綺麗で素敵!
空:
あお:ホントに!?あの、正直に言ってくれていいんだよ?
あお:
空:ううん。本当のことだよ!文章力と表現力はすごい!
空:
あお:えへへ、照れるなぁ。
あお:
空:でも、キャラがたってない気がするんだよね。んー、そこがちょっと惜しいかな…。
空:
あお:なるほど。それは私も薄々思っていたんだよね。なんかありきたりだよなーって。
あお:
空:そこが、あなたの今後の課題点でしょう!
空:
あお:アドバイスありがとうございます、先生!
あお:
空:で、あたしの作品はどうだった?
空:
あお:めちゃくちゃ面白かった!すごく引き込まれたし、発想がすごいなって!
あお:
空:えっへへ!ありがと!なんか、人に見せたことなかったから、なんだろう、このむずむずする感情…。
空:
あお:ただ、ちょっとわかりにくい所があるかな、設定とか背景とか…。
あお:
空:うーん、そうなんだよね、あたし、文章に自信がなくて。
空:
あお:文章力は、本を読んだり勉強すればおのずと付いてきます!あなたはそこを頑張りましょう!
あお:
空:ふふっ。はーい、せんせーい!
空:
あお:にしても、ここのアイデアいいなぁ。
あお:
空:ねえ!ここの設定をさ、あおのこの『青空』に入れてみてよ!
空:
あお:確かに……、それだともっと面白くなるかもしれない。
あお:
空:ね!このノート貸すからさ!あたしの作品を、あおの作品の中に取り込んでほしい!
空:
あお:オッケー!じゃあ、一緒にプロット考えていこう!
あお:
空:うん!
空:
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0:夕方。
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あお:わ、いつの間にか夕日が!
あお:
空:ここまで時間を忘れて話し込んだの、初めてかも!
空:
あお:そろそろ戻ろっか。
あお:
空:そうだね。続きは、また、明日。
空:
あお:うん…!明日までに、今日までのところ、書き進めておくね!
あお:
空:うん!楽しみにしてるね!
空:
あお:それじゃあ、また、明日!
あお:
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あお:(その日から、私の退屈だった入院生活は、華やかな充実した日々へと一変した。私の文章と表現で、空の素敵なアイデアを形にしていく。ときにぶつかり合ったりしながらも、私と空は屋上のきれいな青空の下で、小説『青空』を完成させるべく語りつくした。
あお:空のアイデアはとても参考になる。今まで自信がなかった自分の想像力は、確実に向上していた。
あお:かつてない充実した日々だったが、
あお:それは長くは続かなかった。)
あお:
あお:(空と出会って1ヵ月が経とうとしていたある日。私は、いつものように、屋上へ向かった。手には完成した『青空』がある。
あお:一緒に完成を喜び合える!早く空に会いたい!
あお:屋上についたが、空はまだ来ていないみたいだ。もう少し、待ってみよう…。)
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あお:空、遅いな……。いつもならとっくに来ているはず、なの、に……。
あお:
あお:(嫌な予感が頭をよぎる。私は、空の病室へ向かうことにした。
あお:
あお:本当は、わかっていた。この一か月、空が少しずつ弱ってきているのを、私はそばで見ていたのだから。
あお:それでも、このドアの先に待っている空を見るのは、怖かった。)
あお:
0:ノック音
あお:空、入るね…。
あお:
空:……あ、あお。
空:
あお:(そこには、ぐったりと横たわり、苦しそうに息をしている空。彼女の変わり果てた姿に、私は言葉を失った。
あお:信じたくなかった。でも、これが現実だ。もともと、一か月前に余命宣告を受けていたんだ。どんな病状なのかは、結局聞かなかったが、いずれこの日が来るとは、わかっていた。)
あおい:
空:ねえ、あお……あたし、死ぬのかな。
空:
あお:……っ!
あお:
空:怖い、怖いよ、あお……。
空:
あお:空……。
あお:
空:あたし、こんなに死が怖いなんて思わなかったよ? もう諦めてたことだし、特に未練なんてものも無かった。余命宣告された日が来ても、恐怖なんてなかった。それなのに、今は、死んでこの世界から離れるのが嫌なの。あおがいない世界に行くのが嫌なの。嫌だよ、怖いよ……っ
空:
あお:
あお:……。
空:あたし、やっぱりあなたと出会わなければよかった……。あなたの存在を知らなければ、こんな気持ちにならずに済んだんだ……。
空:
あお:なんで……そんなこと……言うの…。
あお:
空:……っ。…ぅ…っ。
空:
あお:私だって……。私だってあなたと出会わなければ良かった……。
あお:
空:……っ!!
空:
あお:私はこの世界で、あなたのいないこの世界で生きて行かなければならないんだよ? ずっと、死ぬまでその悲しみを背負っていかなければいけないんだよ? そんなの……嫌だよ!
あお:
空:あお……。
空:
あお:……!ご、ごめん、私……。
あお:……っ!!(部屋を飛び出す)
空:あお……。
空:
:
0:あおの病室
:
あお:う、うわああああああん!うっうっ空、空……っ!
あお:
あお:(その夜、私はただただ泣いた。ずっとずっと、夜が明けるまで。完成した、『青空』を記したノートが手元からなくなっていたことに気付いたが、もう、どうでもよかった。空を失うかもしれないという悲しみと、空を傷つけてしまった悲しみが、私を襲い続けた。
あお: 私は今まで、人の死というものに触れた事がなかった。だからそれがどんなに悲しい事か、全く分からなくて怖くなった。私の大切な人がいなくなってしまう。そうしたら、私はどう生きていけばいい?空がいなくなった世界で生きていけるの?頭の中は恐怖でいっぱいだった。
あお:そして、夜が明けた。)
あお:
:
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0:空の病室前
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:
あお:(私は空の病室の前にいた。動くようになった右手で、ノックしようとする。でも、その手はノックする前に止まってしまった。この病室に入ってしまえば、現実を受け止めなくてはならない。その覚悟が、私にはあるのだろうか。怖かった。彼女の変わり果てた姿がこの奥にあるかもしれないのだから。それでも……。私は彼女に伝えなければいけない事があるのだ。)
あお:
:
0:(ノック音)
:
:
空:はい……。
空:
あお:(中から声がして、私はドアを開けた。中に入ると、昨日よりも酷い様態の空と、彼女の両親と思しき人物がいた。その二人に軽く会釈して、私は空の元へと近づいていく。)
あお:
あお:空……私だよ。
あお:
空:あお、来てくれたんだね。
空:
あお:……。空、あの、私……。
あお:
空:あお、昨日はあんなこと言ってごめんね。あたし、本当はあんなこと思ってないよ。
空:
あお:空……っ!私も……っ!私も、あんなこと言って、ごめん…っ!
あお:
空:あお、あたしね、余命宣告を受けた日、誰かと友達になることをあきらめたんだ。お父さんもお母さんも、すごく悲しんでて、あたしも悲しかったし、怖くなったから。この悲しみをこれ以上増やしたくなかったから。でも、あの日、あたしはあおと出会ってしまった。そのせいで、あたしも、あおも、悲しませることになってしまった…。
空:
あお:空……。
あお:
空:だけど、だけどね、あお。あたしが間違ってたんだ。あなたと過ごした一か月、本当に楽しかった。短い期間だったけど、あおは、あたしの一番大切な親友だよ。
空:
あお:うん、うん……っ。一番、大切な……うぅ…っ。
あお:
空:今はね、死ぬことの悲しみよりも、あなたに出会えて過ごせた喜びのほうが大きい。ありがとう、あお。あたしと出会ってくれて。
空:
あお:私も……ぅ、空、に出会えて……よかった……。
あお:
空:それとね、あお、そこにおいてあるノート。
空:
あお:あ…『青空』……。
あお:
空:昨日、ここで落としてたよ、ダメだよ、あたしたちの大切な物語なんだから。
空:
あお:うん、もう離さない…!
あお:
空:完成したね。すごくよかった。
空:
あお:読んで、くれたの?
あお:
空:当たり前じゃん。今思えばさ、余命がここまで伸びたのは、きっと『青空』を完成させるためだったのかもね。
空:
あお:ぅ…やだよ…空…行かないで…。
あお:
空:あたしは、ずっとその物語の中にいるよ、あお。あおなら、きっと良い小説家になれると思う。
空:
あお:うん……!私、夢をかなえてみせるから…!
あお:
空:最後に、あたしのわがまま、一つ聞いてくれる?
空:
あお:うん…!
あお:
空:あたしのこと、ずっとずっと忘れないでほしい。あたしがこの世界で生きていたことを、覚えていてほしい。
空:
あお:当たり前だよ!ずっと、ずっと、忘れない、忘れるわけない!
あお:
空:ありがとう、あお…。大好きだよ…。さよ、なら…。
空:
あお:ぁ、あぁ、空、空っ!私も、大好きだよ、ありがとう……!!
あお:
:
:
あお:(そして、私の一番大切な親友は、息をひきとった……。)
あお:
:
:
0:10年後
:
:
あお:(とある、春の日。今日は雲一つない、きれいな青空が広がっている。私は、空のお墓へと来ていた。)
あお:
あお:空、今日はね、渡したいものがあるんだ。あれから10年、長かったけど、ついに、やったよ。
あお:
あお:(私は、カバンの中から1冊の本を取り出した。その本のタイトルは『青空』。作者の名前は”空野 青(そらのあお)”)
あお:
あお:ついに作家デビュー!何度か挫折したこともあったけど、空との約束を思い出して、あきらめずにやり遂げたよ!私たちの『青空』読んでほしいの。
あお:
あお:(私は、その本をそっとお墓にお供えした。さあっと、春の風が吹く。)
あお:
空:頑張ったね、あお。
空:
あお:……!!
あお:
あお:(その春の風に乗って、空の声が聞こえた気がした。)
あお:
:
:
あお:この『青空』を、あなたに捧げます。あなたとともに創り上げた、この『青空』を…。
あお:
:
0:完