台本概要
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タイトル | リア充人狼 |
---|---|
作者名 | Juuki (@Juuki_Voice) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 5人用台本(男2、女3) |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
「この中に1人、リア充がいる!」 文芸部副部長の慎二に呼ばれ、集まった文芸部メンバーの五人。 慎二が部室で見つけたもの。 それは、非リアであるはずのメンバーが持っているはずのないものだった! ーーーーーーーーーーーーーー 性転換× アドリブなどはご自由に!! 1342 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
慎二 | 男 | 61 | イケメンだけど彼女なし。 文芸部の副部長。 |
結美 | 女 | 35 | 文芸部メンバーの女子。 明るく、快活な性格。 |
信広 | 男 | 44 | 文芸部メンバーの男子。少しアホ。 |
綾 | 女 | 30 | 眼鏡女子でオタク。 |
琴音 | 女 | 30 | ぶりっ子。 バイトの先輩と付き合っている。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:夕暮れの教室に5人の男女が座っている。
信広:慎二副部長殿〜。どうしたんだよ、急に呼び出したりして?金曜は部活休みだろ?
琴音:私、今日は用事があるんだけど〜?すぐ済むのよね?
綾:あれ?結美は今日は早く帰らなくていいの?
結美:うん、テストもひと段落ついたしね〜
慎二:今日みんなに集まってもらったのは他でもない。俺からみんなに、大事な話があって呼んだんだ。
0:束の間の沈黙
結美:大事な話?何よそれ、改まっちゃって。あんたにしては大袈裟じゃない
信広:文芸創作コンクールのことじゃないか?部長が入選したとか!
綾:最近、熱心に創作に取り組んでたもんね…部長も慎二くんも
慎二:違う!コンクールの結果報告はまだ届いてない!
琴音:じゃあ何の話なのよ〜、ちゃっちゃと終わらせちゃってよね〜?
慎二:本題に入る前に、一つ問いたい。俺たち文芸部員2年生メンバーの共通点とはなんだ?綾!
綾:え!?え…えっと、みんなテストで悪い点だったとか…?
慎二:……それもある
信広:おお、なるほど!勉強会だな!みんなでテストの反省会を!
結美:残念〜。私、今回は結構良かったんだよね〜
信広:ほぉん、一番高いのは?
結美:数学の86点!前回から50点アップ!
信広:うわ、負けた…。
結美:前回は赤点ギリだったから、ちょ〜っと頑張っちゃった!
信広:俺は英語が74点。結構取れたかな!
綾:ちなみに他の教科は?
信広:他は赤点だ!
琴音:ダメじゃん
慎二:コラァ!テストの反省なんかするか!悲しくなるだろ!馬鹿信広!
信広:え!?なんで今罵られたの俺?
琴音:そうよ。ちょっと考えればわかるじゃない?私たち5人集まったって、勉強会になるわけないでしょ〜?ほとんどバカなんだから
綾:あ、じゃあB組の北澤くん、呼んでくる?確か今回のテスト、学年1位だったよね?
結美:え!?でも…慎二は私たちに用があって呼んだんでしょ?他の人を呼ぶのは良くないんじゃないかな!
慎二:その通りだ、結美!俺はみんなに問いたださなきゃいけないことがあって呼んだんたからな
信広:問いただすって…随分物騒な物言いじやないか
慎二:改めて問うが、俺たちの共通点はなんだ?
結美:もったいぶらないで早く言いなさいよ
慎二:それはだな…「全員彼氏・彼女がいない」ということだ!
0:再び場に沈黙が訪れる
信広:あのな、そんなこといちいち言われなくたってわかってるっての!そういう括りで俺らはつるんでるんだろ?
綾:恋愛関係に左右されない友達付き合いがしたいって慎二くん言ってたもんね
慎二:ああ、そうだとも。
琴音:くっだらないわね〜。帰ってもいい〜?
慎二:…だが!そんな俺たちの中に、裏切り者が紛れていたとしたら…?
0:慎二以外の4人は息を飲む。
慎二:これを見ろ…
0:慎二は一枚の紙を机に置く。
結美:これはノートの切れ端?…いや、手紙?しかも…文体からして女からのラブレター!?
慎二:部室に落ちていた。
琴音:だからって私たちに宛てられたものとは限らないでしょ?
慎二:確かに、先輩方や後輩の誰かに向けられたものだと言う可能性はある…。だが、内容をよく読め
信広:書かれていることは…ええと…『この前の土曜は貴方と過ごすことができて良かった。貴方の勧めてくれた映画はとても感動的で、私の心に何か淡いものを残してくれた。これが恋心というものなのね。』…うーん…パス…
結美:ええっ!?私!?えぇ…と『次の休みはどこへ行きましょう。貴方の思う所でいい。水族館でも、動物園でも。貴方のゆく所が私の居場所になるの』…胸焼けしそうな文章ね…私も無理!パース!
綾:ひぇええ!!こ、これ、読むのぉ…うぅ…『これを書いているときに、ふと思い出した。来月の修学旅行の事を。貴方と過ごす京都でのひととき。大切な思い出を一緒に作りたいな』ご、ごめんなさいパスです!
琴音:はぁ…『少しでも長く貴方を見つめたい。少しでも多く貴方といたい。アイウォンチュー。アイニージュー。エブリデイウィズユー。〇〇より』…なんか、すごいわね
信広:衝撃の手紙だな…センスがもう……なぁ!?
琴音:そんで、アイウォンチューくらい英語で書きなさいよね…なんで全部カタカナなのよ
綾:これ…名前のところは掠れてて読めないね…謎の手紙あるあるだね…
結美:あ…でもこれ…来月、修学旅行…って!
慎二:そう。『大切な思い出を一緒に作りたいな』とある。よってこれは、来月に修学旅行を控えている2年生の誰かに宛てられたものだということに間違いないんだ!
信広:でもこれってよ、文体敵に女から男に宛てた手紙だろ?じゃあ俺は関係ないんじゃないか?
慎二:いや、そうとも言えない
信広:は?
慎二:恋愛の形は…様々だからな!
信広:え…?ええっ!?な、なんだよ!俺がこれを書いたって言いたいのか!?
慎二:あくまでも可能性があるという話だ
信広:俺がこんなギトギトのラブレター書くわけないだろ!!俺ならもっと綺麗な字で情緒的な文を書くぞ!?
結美:例えば〜?
信広:た、例えば…なぁ…『二人寄り添って歩こう。永遠の愛を形にしよう。いつまでも君の横で笑っていたいよ』とかな
綾:それ何かの歌詞だね。まるっきりパクリだね。
信広:とにかく!俺はこんなラブレターは知らない!疑うなら、指紋でも何でも取ってくれよ!
琴音:もう素手で触っちゃってるんだから無意味じゃない?
琴音:…それで?慎二はこの手紙の関係者を私たちの中から炙り出そうってわけ?
慎二:そうだ。リア充になったというのに、この俺に報告がないのは気に食わないからな!
琴音:どういう怒りなのそれ
結美:それにしても、この人随分ゾッコンよね。お相手さんはさぞかしイケメンなんでしょうねー
信広:にしても情報が少ないな…強いて言えば、映画あたりから攻められそうか?
信広:ちなみに、俺は今年に入ってから映画なんて見に行ってないぜ!
綾:私はこの間『積乱雲とアコーディオン』を見に行ったよ。
綾:でも割とコアな作品だし、ファンでもなきゃ、そんなに感動はしないかも。
慎二:いや、わからないぞ?そういう最近のアニメ映画は泣ける作品も多い。
慎二:それに、一緒に観に行くんだ、原作漫画の履修くらいはするだろ
結美:あ、それ私漫画持ってるよ!映画化されてたんだ!
綾:いいよね!セキアコ!
信広:俺はアニメとか興味ないから全然知らねぇ〜
慎二:…そんな話はどうでもいいんだ!この手紙に心当たりのある者は正直に名乗り出てほしい!
0:少しの間
結美:ま、出てこないわよね。恥ずかしすぎるもん…これは…
慎二:ダメか…。何か、決定的なものが見つかれば良いんだけどな…!
綾:あの〜、このラブレター…ちょっと変じゃない?
信広:ん?何か変なところあるか?
綾:だって、こんな文を書いてカレへの思いをアピールしてるのに、書いてあるのがノートの切れ端って…。
綾:こういうのって、もっとちゃんとした便箋とかに書いて渡さない?普通は。
琴音:確かに言われてみれば…。これを書いている人はロマンチストっぽいのに、ノートに汚い字で書く意味がわからないわ。渡そうとしていたなら尚更。
慎二:…そうだ、ノートだ!ノートを調べればこれと同じ罫線のものかどうかわかる!みんな!ノートを出すんだ!
琴音:ええ〜…めんどくさぁ〜…私は却下…
慎二:それは罪を認めた、ということでいいか?琴音!
琴音:うぐぅ…わかったわよ!出せばいいんでしょ!出せば!
0:各々、ノートを取り出して広げる。
信広:現代文、数学、英語、化学基礎!その他諸々、全部大丈夫だろ!?俺は無罪だな!
綾:私もセーフ!えっと…似てるのはあるけど、みんな特に問題はなさそうだね…。…あれ?
琴音:結美?数学のノートは?
結美:……
慎二:結美の数学のノートだけまだ見てない。出してくれないか?
結美:う……
0:結美はゆっくりと数学のノートを取り出す。
0:慎二はそのノートをパラパラとめくっていく。
慎二:これは…!?
信広:ど、どうした慎二!?
慎二:ほとんど白紙じゃないか!
琴音:…はぁ、そんなこと?びっくりしたわ…
信広:こんなんでよくテスト86点も取れたな!はっ!?まさか…カンニング…!?
結美:違うわよ!ノートは取ってなかったんだけど…勉強、したから…
琴音:ホントにぃ〜?
結美:そ、それは本当よ!
綾:じゃあ、全員セーフだね。慎二くんの思い過ごしだよ。
0:慎二がノートの最後のページを見て動きを止めた。
綾:慎二くん…?どうしたの?
慎二:…結美。正直に答えてくれ。これは、誰の字だ?
0:慎二がそのページを結美に突きつけるように見せた。
信広:『結美、ノートとれよw』って書いてるな…。これ、男の字だろ?
綾:結美ちゃんの他のノートの字と比べても全然違う、ね…
慎二:結美…お前が…リア充か!!
0:少しの間
結美:だって…だって!言えなかったんだもん!
結美:私だけ彼氏作って、ひとりだけ抜け駆けしたら…みんなどんな顔するかなって…心配だったんだもん!
結美:言えないよ…私たちの関係が崩れちゃうんじゃないかって…怖くて…
結美:私だけリア充になったら…みんな…みんな…
結美:惨めな気持ちになっちゃうかもしれないじゃん!!
0:愕然とする4人
慎二:…ぷ…はっはっは!!
0:慎二以外の3人も全員笑い出す。
慎二:彼氏作ったくらいで、俺らが惨めな気持ちになるわけないだろー?
慎二:俺はただ…寂しかったんだ。
慎二:こんなに普段から仲良くしてるのに、隠し事をされるなんて…
綾:まあ、言える雰囲気じゃないよね…
慎二:素直に言ってくれれば、俺たちだって喜んださ!
結美:慎二…
信広:意外と心が広いな、慎二
琴音:……で?誰なのよ?
結美:え?
琴音:結美のカ・レ・シ!私たちの知ってる人?
結美:…うん…B組の北澤くん
信広:えっ!?学年1位の!?…へぇ…全然気付かなかった…
結美:放課後にね、たまに勉強教えてくれてたんだ。
結美:わからないところも熱心に何度もね。
信広:あいつ、やるなぁ…
結美:でもまさか、こんなところに落書きされてるなんて…思いもしなかった。やられたわ。
慎二:しかし…こんなラブレターを書くなんて結美はロマンチストだったんだなぁ!
結美:え?そのラブレター私書いてないよ?
慎二:なんだって?
琴音:うん、よく見るとノートの罫線も色も若干違うじゃん
慎二:うぅむ…わからんな…このラブレターは一体なんなんだ…
信広:ま、いいじゃん!購買でなんか菓子パンでも買ってこようか?奢るぜ?
結美:え!ホント!?羽振りいいじゃ〜ん!
信広:痛って!!叩くな叩くな!
0:じゃれあう信広の財布から、何かが落ちるのに気づく綾
綾:あれ?これって…映画の半券?
信広:あっ…!それは…
結美:『積乱雲とアコーディオン』の試写会のペアチケット…
慎二:なんだ、お前セキアコのこと知ってたんじゃないか。なんで隠してたんだー?
信広:いや?別に…
綾:先週土曜日…?この前の休みの日!私が行った日だ…!ほら、その時の写真!
琴音:ちょっとスマホ見せて!うわ、ホントだ。…あれ?綾の後ろの方に写ってるのって…?
結美:拡大して!
慎二:信広……と、誰だ?
信広:ハハ…妹…かな
琴音:妹と手繋ぐかな?
結美:大体あんた妹いないじゃん
信広:……わかった、白状するよ…
信広:……俺もリア充だ…
慎二:え〜〜〜!
結美:え〜〜〜!
琴音:え〜〜〜!
信広:これは俺の彼女。後輩のリアちゃんだ。
信広:ネットで調べてたら、評価高かったし「デートにもぴったりの映画!」って出てたから試写会に応募したんだ。
信広:抽選に当たるとは思わなかったけど、アミを誘ったら喜んでくれた。
信広:だから一緒に行ったんだ。
結美:隅に置けないやつめー!
信広:いたたた!叩くなって!
琴音:でも、リアちゃん…だっけ?めちゃくちゃ可愛くない!?
信広:あぁ、日本とイギリスのハーフなんだって
慎二:ハーフ!?
信広:英語も話せるから、よく教えてくれるんだ
綾:それで英語の点数だけ異様に良かったんだ…
慎二:じゃあ、まさか…このラブレターはリアちゃんが?
結美:でも…英語話せるなら最後のところわざわざカタカナじゃなくて英語で書くでしょ
慎二:いくら信広でもこれくらいは読めるだろうしな…?
信広:いくらってなんだ!いくらって!
慎二:ていうか…お前も黙って彼女作ってやがったのか!コノヤロー!
信広:いててて!ごめん!ごめんってば!
信広:だってよ…俺がイギリス人ハーフの彼女できた!って言っても信じてもらえないだろ…?
信広:しかも、お前ら絶対茶化すだろ!
琴音:いや、これは茶化すでしょ!
慎二:お前ら…!もう隠し事はないな!?
琴音:……えっと…
0:その時、琴音の携帯が鳴った。
琴音:わぁあっ!……はい!もしもし!
琴音:うん、うん…わかった!ごめんね!ちょっと遅れちゃう!
琴音:うん、また後でね!
慎二:……彼氏か
琴音:うん。この後、デート
慎二:くぅっ…琴音もリア充かぁっ!
琴音:はーい!付き合ってまだ3日のホヤホヤリア充ちゃんでーす☆
慎二:やかましいな!
慎二:じゃあ…このラブレターも琴音が…?
琴音:それは絶対違うから!
信広:付き合ってまだ3日なら、この前の土曜ってところが引っかかるもんな
慎二:じゃあこれは誰のラブレターなんだ!
0:慎二の携帯に着信が入る。
慎二:はい…あ、部長!お疲れ様です!コンクールどうでした?
慎二:はい…はい…あ〜〜〜なるほど…。それは、なんというか、残念でしたね…
慎二:はい!あとは後輩の我々にお任せください!…はい!それでは!
結美:コンクール、ダメだったって?
慎二:あぁ。登場人物の女性が、愛を伝えるラブレターのくだりがあんまり評価が良くなかったらしい。
慎二:多分だけど、コレ、だよな…
信広:……あ、これ部長のメモ!?
結美:どうりで汚いわけだわ…
慎二:なんだ…なんだよそれぇ!!
0:一同笑い合う
慎二:心配して損した…
慎二:でも、これからは何かあったら俺にも報告しろよ?仮にも副部長なんだからな!
信広:はいはい。わかったよ
慎二:っ…!…まさか、綾も…!?
綾:えっ!?ない!ないないないない!私は彼氏なしだよ!…本当に
慎二:そっかぁ…安心した…
綾:え?
慎二:とにかく!何かあったら報告してくれよ〜?頼むぜ…
琴音:あぁっ!時間やばい!私もう行くね!
0:琴音が部室から出て行く。
結美:じゃあ、私は信広に何か奢ってもらわないと!ほら!購買行くよ!
信広:い、一個だけだからな!
0:結美、信広が部室からでてゆく。
慎二:まったく、学生は勉学と部活に励むべきだろ…
慎二:何のために文芸部にいるんだか…綾ちゃんを見習ってほしいよ…
綾:…私がこの部にいるのは、創作活動をするため、だけじゃないですよ?
慎二:ん?
綾:慎二くんもセキアコ、気になってるんでしょ?
慎二:え…何で?
綾:普通、タイトルだけを聞いてそれがアニメ映画だなんてすぐ思わないよ。
綾:それに、漫画原作があることも知ってた。
綾:セキアコっていう略称もすぐ言ってたしね。
綾:もともと知ってたとしか思えないよ
慎二:…そうだよ、だいぶ前から好きな作品だよ…
慎二:映画も行きたいんだけどね…
慎二:でも、セキアコの映画は男一人で行くにはハードル高すぎるんだ
慎二:…でも、よくわかったな?鋭いというか、なんというか…
綾:いつも、慎二くんのこと見てたから…
慎二:え…?
綾:あの!……映画、一緒に行かない!?
慎二:……
綾:な、なんか…ぴったりらしいし…デートにも…
慎二:綾…
0:少しの間
慎二:明日は、土曜日だな
慎二:映画、一緒に観に行こう
綾:……うん!
0:夕暮れの教室に5人の男女が座っている。
信広:慎二副部長殿〜。どうしたんだよ、急に呼び出したりして?金曜は部活休みだろ?
琴音:私、今日は用事があるんだけど〜?すぐ済むのよね?
綾:あれ?結美は今日は早く帰らなくていいの?
結美:うん、テストもひと段落ついたしね〜
慎二:今日みんなに集まってもらったのは他でもない。俺からみんなに、大事な話があって呼んだんだ。
0:束の間の沈黙
結美:大事な話?何よそれ、改まっちゃって。あんたにしては大袈裟じゃない
信広:文芸創作コンクールのことじゃないか?部長が入選したとか!
綾:最近、熱心に創作に取り組んでたもんね…部長も慎二くんも
慎二:違う!コンクールの結果報告はまだ届いてない!
琴音:じゃあ何の話なのよ〜、ちゃっちゃと終わらせちゃってよね〜?
慎二:本題に入る前に、一つ問いたい。俺たち文芸部員2年生メンバーの共通点とはなんだ?綾!
綾:え!?え…えっと、みんなテストで悪い点だったとか…?
慎二:……それもある
信広:おお、なるほど!勉強会だな!みんなでテストの反省会を!
結美:残念〜。私、今回は結構良かったんだよね〜
信広:ほぉん、一番高いのは?
結美:数学の86点!前回から50点アップ!
信広:うわ、負けた…。
結美:前回は赤点ギリだったから、ちょ〜っと頑張っちゃった!
信広:俺は英語が74点。結構取れたかな!
綾:ちなみに他の教科は?
信広:他は赤点だ!
琴音:ダメじゃん
慎二:コラァ!テストの反省なんかするか!悲しくなるだろ!馬鹿信広!
信広:え!?なんで今罵られたの俺?
琴音:そうよ。ちょっと考えればわかるじゃない?私たち5人集まったって、勉強会になるわけないでしょ〜?ほとんどバカなんだから
綾:あ、じゃあB組の北澤くん、呼んでくる?確か今回のテスト、学年1位だったよね?
結美:え!?でも…慎二は私たちに用があって呼んだんでしょ?他の人を呼ぶのは良くないんじゃないかな!
慎二:その通りだ、結美!俺はみんなに問いたださなきゃいけないことがあって呼んだんたからな
信広:問いただすって…随分物騒な物言いじやないか
慎二:改めて問うが、俺たちの共通点はなんだ?
結美:もったいぶらないで早く言いなさいよ
慎二:それはだな…「全員彼氏・彼女がいない」ということだ!
0:再び場に沈黙が訪れる
信広:あのな、そんなこといちいち言われなくたってわかってるっての!そういう括りで俺らはつるんでるんだろ?
綾:恋愛関係に左右されない友達付き合いがしたいって慎二くん言ってたもんね
慎二:ああ、そうだとも。
琴音:くっだらないわね〜。帰ってもいい〜?
慎二:…だが!そんな俺たちの中に、裏切り者が紛れていたとしたら…?
0:慎二以外の4人は息を飲む。
慎二:これを見ろ…
0:慎二は一枚の紙を机に置く。
結美:これはノートの切れ端?…いや、手紙?しかも…文体からして女からのラブレター!?
慎二:部室に落ちていた。
琴音:だからって私たちに宛てられたものとは限らないでしょ?
慎二:確かに、先輩方や後輩の誰かに向けられたものだと言う可能性はある…。だが、内容をよく読め
信広:書かれていることは…ええと…『この前の土曜は貴方と過ごすことができて良かった。貴方の勧めてくれた映画はとても感動的で、私の心に何か淡いものを残してくれた。これが恋心というものなのね。』…うーん…パス…
結美:ええっ!?私!?えぇ…と『次の休みはどこへ行きましょう。貴方の思う所でいい。水族館でも、動物園でも。貴方のゆく所が私の居場所になるの』…胸焼けしそうな文章ね…私も無理!パース!
綾:ひぇええ!!こ、これ、読むのぉ…うぅ…『これを書いているときに、ふと思い出した。来月の修学旅行の事を。貴方と過ごす京都でのひととき。大切な思い出を一緒に作りたいな』ご、ごめんなさいパスです!
琴音:はぁ…『少しでも長く貴方を見つめたい。少しでも多く貴方といたい。アイウォンチュー。アイニージュー。エブリデイウィズユー。〇〇より』…なんか、すごいわね
信広:衝撃の手紙だな…センスがもう……なぁ!?
琴音:そんで、アイウォンチューくらい英語で書きなさいよね…なんで全部カタカナなのよ
綾:これ…名前のところは掠れてて読めないね…謎の手紙あるあるだね…
結美:あ…でもこれ…来月、修学旅行…って!
慎二:そう。『大切な思い出を一緒に作りたいな』とある。よってこれは、来月に修学旅行を控えている2年生の誰かに宛てられたものだということに間違いないんだ!
信広:でもこれってよ、文体敵に女から男に宛てた手紙だろ?じゃあ俺は関係ないんじゃないか?
慎二:いや、そうとも言えない
信広:は?
慎二:恋愛の形は…様々だからな!
信広:え…?ええっ!?な、なんだよ!俺がこれを書いたって言いたいのか!?
慎二:あくまでも可能性があるという話だ
信広:俺がこんなギトギトのラブレター書くわけないだろ!!俺ならもっと綺麗な字で情緒的な文を書くぞ!?
結美:例えば〜?
信広:た、例えば…なぁ…『二人寄り添って歩こう。永遠の愛を形にしよう。いつまでも君の横で笑っていたいよ』とかな
綾:それ何かの歌詞だね。まるっきりパクリだね。
信広:とにかく!俺はこんなラブレターは知らない!疑うなら、指紋でも何でも取ってくれよ!
琴音:もう素手で触っちゃってるんだから無意味じゃない?
琴音:…それで?慎二はこの手紙の関係者を私たちの中から炙り出そうってわけ?
慎二:そうだ。リア充になったというのに、この俺に報告がないのは気に食わないからな!
琴音:どういう怒りなのそれ
結美:それにしても、この人随分ゾッコンよね。お相手さんはさぞかしイケメンなんでしょうねー
信広:にしても情報が少ないな…強いて言えば、映画あたりから攻められそうか?
信広:ちなみに、俺は今年に入ってから映画なんて見に行ってないぜ!
綾:私はこの間『積乱雲とアコーディオン』を見に行ったよ。
綾:でも割とコアな作品だし、ファンでもなきゃ、そんなに感動はしないかも。
慎二:いや、わからないぞ?そういう最近のアニメ映画は泣ける作品も多い。
慎二:それに、一緒に観に行くんだ、原作漫画の履修くらいはするだろ
結美:あ、それ私漫画持ってるよ!映画化されてたんだ!
綾:いいよね!セキアコ!
信広:俺はアニメとか興味ないから全然知らねぇ〜
慎二:…そんな話はどうでもいいんだ!この手紙に心当たりのある者は正直に名乗り出てほしい!
0:少しの間
結美:ま、出てこないわよね。恥ずかしすぎるもん…これは…
慎二:ダメか…。何か、決定的なものが見つかれば良いんだけどな…!
綾:あの〜、このラブレター…ちょっと変じゃない?
信広:ん?何か変なところあるか?
綾:だって、こんな文を書いてカレへの思いをアピールしてるのに、書いてあるのがノートの切れ端って…。
綾:こういうのって、もっとちゃんとした便箋とかに書いて渡さない?普通は。
琴音:確かに言われてみれば…。これを書いている人はロマンチストっぽいのに、ノートに汚い字で書く意味がわからないわ。渡そうとしていたなら尚更。
慎二:…そうだ、ノートだ!ノートを調べればこれと同じ罫線のものかどうかわかる!みんな!ノートを出すんだ!
琴音:ええ〜…めんどくさぁ〜…私は却下…
慎二:それは罪を認めた、ということでいいか?琴音!
琴音:うぐぅ…わかったわよ!出せばいいんでしょ!出せば!
0:各々、ノートを取り出して広げる。
信広:現代文、数学、英語、化学基礎!その他諸々、全部大丈夫だろ!?俺は無罪だな!
綾:私もセーフ!えっと…似てるのはあるけど、みんな特に問題はなさそうだね…。…あれ?
琴音:結美?数学のノートは?
結美:……
慎二:結美の数学のノートだけまだ見てない。出してくれないか?
結美:う……
0:結美はゆっくりと数学のノートを取り出す。
0:慎二はそのノートをパラパラとめくっていく。
慎二:これは…!?
信広:ど、どうした慎二!?
慎二:ほとんど白紙じゃないか!
琴音:…はぁ、そんなこと?びっくりしたわ…
信広:こんなんでよくテスト86点も取れたな!はっ!?まさか…カンニング…!?
結美:違うわよ!ノートは取ってなかったんだけど…勉強、したから…
琴音:ホントにぃ〜?
結美:そ、それは本当よ!
綾:じゃあ、全員セーフだね。慎二くんの思い過ごしだよ。
0:慎二がノートの最後のページを見て動きを止めた。
綾:慎二くん…?どうしたの?
慎二:…結美。正直に答えてくれ。これは、誰の字だ?
0:慎二がそのページを結美に突きつけるように見せた。
信広:『結美、ノートとれよw』って書いてるな…。これ、男の字だろ?
綾:結美ちゃんの他のノートの字と比べても全然違う、ね…
慎二:結美…お前が…リア充か!!
0:少しの間
結美:だって…だって!言えなかったんだもん!
結美:私だけ彼氏作って、ひとりだけ抜け駆けしたら…みんなどんな顔するかなって…心配だったんだもん!
結美:言えないよ…私たちの関係が崩れちゃうんじゃないかって…怖くて…
結美:私だけリア充になったら…みんな…みんな…
結美:惨めな気持ちになっちゃうかもしれないじゃん!!
0:愕然とする4人
慎二:…ぷ…はっはっは!!
0:慎二以外の3人も全員笑い出す。
慎二:彼氏作ったくらいで、俺らが惨めな気持ちになるわけないだろー?
慎二:俺はただ…寂しかったんだ。
慎二:こんなに普段から仲良くしてるのに、隠し事をされるなんて…
綾:まあ、言える雰囲気じゃないよね…
慎二:素直に言ってくれれば、俺たちだって喜んださ!
結美:慎二…
信広:意外と心が広いな、慎二
琴音:……で?誰なのよ?
結美:え?
琴音:結美のカ・レ・シ!私たちの知ってる人?
結美:…うん…B組の北澤くん
信広:えっ!?学年1位の!?…へぇ…全然気付かなかった…
結美:放課後にね、たまに勉強教えてくれてたんだ。
結美:わからないところも熱心に何度もね。
信広:あいつ、やるなぁ…
結美:でもまさか、こんなところに落書きされてるなんて…思いもしなかった。やられたわ。
慎二:しかし…こんなラブレターを書くなんて結美はロマンチストだったんだなぁ!
結美:え?そのラブレター私書いてないよ?
慎二:なんだって?
琴音:うん、よく見るとノートの罫線も色も若干違うじゃん
慎二:うぅむ…わからんな…このラブレターは一体なんなんだ…
信広:ま、いいじゃん!購買でなんか菓子パンでも買ってこようか?奢るぜ?
結美:え!ホント!?羽振りいいじゃ〜ん!
信広:痛って!!叩くな叩くな!
0:じゃれあう信広の財布から、何かが落ちるのに気づく綾
綾:あれ?これって…映画の半券?
信広:あっ…!それは…
結美:『積乱雲とアコーディオン』の試写会のペアチケット…
慎二:なんだ、お前セキアコのこと知ってたんじゃないか。なんで隠してたんだー?
信広:いや?別に…
綾:先週土曜日…?この前の休みの日!私が行った日だ…!ほら、その時の写真!
琴音:ちょっとスマホ見せて!うわ、ホントだ。…あれ?綾の後ろの方に写ってるのって…?
結美:拡大して!
慎二:信広……と、誰だ?
信広:ハハ…妹…かな
琴音:妹と手繋ぐかな?
結美:大体あんた妹いないじゃん
信広:……わかった、白状するよ…
信広:……俺もリア充だ…
慎二:え〜〜〜!
結美:え〜〜〜!
琴音:え〜〜〜!
信広:これは俺の彼女。後輩のリアちゃんだ。
信広:ネットで調べてたら、評価高かったし「デートにもぴったりの映画!」って出てたから試写会に応募したんだ。
信広:抽選に当たるとは思わなかったけど、アミを誘ったら喜んでくれた。
信広:だから一緒に行ったんだ。
結美:隅に置けないやつめー!
信広:いたたた!叩くなって!
琴音:でも、リアちゃん…だっけ?めちゃくちゃ可愛くない!?
信広:あぁ、日本とイギリスのハーフなんだって
慎二:ハーフ!?
信広:英語も話せるから、よく教えてくれるんだ
綾:それで英語の点数だけ異様に良かったんだ…
慎二:じゃあ、まさか…このラブレターはリアちゃんが?
結美:でも…英語話せるなら最後のところわざわざカタカナじゃなくて英語で書くでしょ
慎二:いくら信広でもこれくらいは読めるだろうしな…?
信広:いくらってなんだ!いくらって!
慎二:ていうか…お前も黙って彼女作ってやがったのか!コノヤロー!
信広:いててて!ごめん!ごめんってば!
信広:だってよ…俺がイギリス人ハーフの彼女できた!って言っても信じてもらえないだろ…?
信広:しかも、お前ら絶対茶化すだろ!
琴音:いや、これは茶化すでしょ!
慎二:お前ら…!もう隠し事はないな!?
琴音:……えっと…
0:その時、琴音の携帯が鳴った。
琴音:わぁあっ!……はい!もしもし!
琴音:うん、うん…わかった!ごめんね!ちょっと遅れちゃう!
琴音:うん、また後でね!
慎二:……彼氏か
琴音:うん。この後、デート
慎二:くぅっ…琴音もリア充かぁっ!
琴音:はーい!付き合ってまだ3日のホヤホヤリア充ちゃんでーす☆
慎二:やかましいな!
慎二:じゃあ…このラブレターも琴音が…?
琴音:それは絶対違うから!
信広:付き合ってまだ3日なら、この前の土曜ってところが引っかかるもんな
慎二:じゃあこれは誰のラブレターなんだ!
0:慎二の携帯に着信が入る。
慎二:はい…あ、部長!お疲れ様です!コンクールどうでした?
慎二:はい…はい…あ〜〜〜なるほど…。それは、なんというか、残念でしたね…
慎二:はい!あとは後輩の我々にお任せください!…はい!それでは!
結美:コンクール、ダメだったって?
慎二:あぁ。登場人物の女性が、愛を伝えるラブレターのくだりがあんまり評価が良くなかったらしい。
慎二:多分だけど、コレ、だよな…
信広:……あ、これ部長のメモ!?
結美:どうりで汚いわけだわ…
慎二:なんだ…なんだよそれぇ!!
0:一同笑い合う
慎二:心配して損した…
慎二:でも、これからは何かあったら俺にも報告しろよ?仮にも副部長なんだからな!
信広:はいはい。わかったよ
慎二:っ…!…まさか、綾も…!?
綾:えっ!?ない!ないないないない!私は彼氏なしだよ!…本当に
慎二:そっかぁ…安心した…
綾:え?
慎二:とにかく!何かあったら報告してくれよ〜?頼むぜ…
琴音:あぁっ!時間やばい!私もう行くね!
0:琴音が部室から出て行く。
結美:じゃあ、私は信広に何か奢ってもらわないと!ほら!購買行くよ!
信広:い、一個だけだからな!
0:結美、信広が部室からでてゆく。
慎二:まったく、学生は勉学と部活に励むべきだろ…
慎二:何のために文芸部にいるんだか…綾ちゃんを見習ってほしいよ…
綾:…私がこの部にいるのは、創作活動をするため、だけじゃないですよ?
慎二:ん?
綾:慎二くんもセキアコ、気になってるんでしょ?
慎二:え…何で?
綾:普通、タイトルだけを聞いてそれがアニメ映画だなんてすぐ思わないよ。
綾:それに、漫画原作があることも知ってた。
綾:セキアコっていう略称もすぐ言ってたしね。
綾:もともと知ってたとしか思えないよ
慎二:…そうだよ、だいぶ前から好きな作品だよ…
慎二:映画も行きたいんだけどね…
慎二:でも、セキアコの映画は男一人で行くにはハードル高すぎるんだ
慎二:…でも、よくわかったな?鋭いというか、なんというか…
綾:いつも、慎二くんのこと見てたから…
慎二:え…?
綾:あの!……映画、一緒に行かない!?
慎二:……
綾:な、なんか…ぴったりらしいし…デートにも…
慎二:綾…
0:少しの間
慎二:明日は、土曜日だな
慎二:映画、一緒に観に行こう
綾:……うん!