台本概要

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タイトル Verdad
作者名 VAL  (@bakemonohouse)
ジャンル ミステリー
演者人数 5人用台本(男4、女1)
時間 50 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 ト書を省いているため少し読みにくいかも知れません。思った感じに演じてください。
盗用以外なら何でもOKです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ユウキ 144
サヤ 118
ショウ 107
マサオ 108
アキト 148
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:(登場人物紹介) : ユウキ:しがない公務員。 サヤ:コンビニ店員。 ショウ:脚本家。 マサオ:工場勤務。 アキト:フリーター。 : 0:本編― : ユウキ:私は自分が何者かわからなかった。 ユウキ:何のために生まれ、何のために生きているのか。 サヤ:私は未来という言葉を信じれなかった。 サヤ:だから、目指すべき場所も、たどり着く意味さえもわからなかった。 ショウ:僕は自分が嫌いだった。 ショウ:自分だけじゃない、周りの全てが嫌いだった。 マサオ:俺はただただ何もしたくなかった。 マサオ:何もせず、少し笑えれば他に何もいらなかった。 アキト:俺は過去が嫌いだった。 アキト:自分の歩んだ道を、誰かのせいにして逃げたかった。 0:間― ユウキ:ごめん!遅れちゃった! サヤ:おっせえ!何してたんだよ! ユウキ:仕事が長引いちゃって・・・もしかして、もう酔ってるの?サヤちゃん。 サヤ:サヤちゃんだよお!みーんな遅いから、ちょっと先に飲んじゃった! マサオ:まあ年末だかんな。まだショウも来てないし。 アキト:俺は言ったんだぞ?仕事納めてからのほうが良いって。 サヤ:お前納めるもんねーじゃん! アキト:おい!それは・・・言っちゃダメじゃね? マサオ:大丈夫だって!またすぐ見つかるからさ! アキト:マサオ・・・優しいなあお前だけは。 ユウキ:何?また仕事クビになったの? アキト:クビじゃない!自分でやめたんだ。しかもまたってなんだよ! ユウキ:いや、よく仕事変えてるイメージだから。 サヤ:確かにぃ!全然続かないよな仕事。 マサオ:今度は楽しい仕事だって言ってたのにな。 ショウ:よく言えば何でもできる。悪く言えば器用貧乏。1つのことを持続してやり続けるには1番向いてない性格ですね。 ユウキ:確かに。・・・ってショウ!?いつ来たの。 ショウ:たった今ですよ。そこにいる大男がしょぼくれだしたところ、くらいからですかね? アキト:どうせ・・・俺なんて・・・ ユウキ:ああああ、アキト!そんな落ち込まないでって!ほら、私達みんなアキトのこと好きだし!ね?みんな。 マサオ:あったりめえよお!いつから一緒にいると思ってんだ。 ショウ:僕も好きですよ。見てて飽きないですし。話の種にしやすいですから。 アキト:みんな・・・ サヤ:私はそんなだけどな! アキト:・・・よし。みんな楽しんでくれ!俺は先に帰r―― ユウキ:ちょっと待って!もう!サヤちゃん! サヤ:あっはっはっ!!冗談だって!面白い奴はみんな好きだからさ! マサオ:ってか飲み物遅くね?すみませーん!あ、ショウ何飲む? ショウ:最初はやっぱり生ですかね。 マサオ:生2つ追加で!あと1つは氷入れといてください! ユウキ:よく覚えてるね。私の飲み方。 マサオ:忘れるほど時間経って無いだろ。 サヤ:そんなの私だって覚えてるよ。気持ち悪い飲み方だってさ。 ユウキ:そんなことないって。ねえショウ? ショウ:僕に聞きますか?・・・僕としてはナシですかね。その方が美味しいと仮にされるのならば、チューハイのように元々氷が入れられた状態で提供されると考えれます。 アキト:てか度数元々低いのに、さらに低くする意味ってあんのか? サヤ:お前飲まないじゃん! アキト:ほう・・・なら、飲んでやっても―― マサオ:無し無し!年末に身元引受人になるのはごめんだわ!煽るな!バカサヤ! サヤ:誰がバカだ!クソマサ! ショウ:・・・人は中々成長しませんね。 ユウキ:ショウは最近どうなの? ショウ:僕は、そうですね。特に何も変わらずです。新しい発想は無いものかと、毎日探求の日々。それが続くだけ。 アキト:何か、ショウが話し出すと、全部物語に聞こえるな。 ショウ:すみませんね。職業病です。 ユウキ:いいんじゃない?落ち着く声だし、読み手でも上手くいったかもね。 ショウ:いいえ、僕は聞くほうが好きですから。それに、自分の書いた物語に誰かが声を当てて、命が紡がれていく・・・ ショウ:その瞬間が何よりも好きなんですよ。 アキト:ふーん。俺も書いてみようかな。 ショウ:いいじゃないですか。アキトなら面白い物語を書けそうです。まあ飽きなければですけど。 ユウキ:そこだよね。飽きるといえば・・・ アキト:飽きないのか?こいつらは。 ショウ:それは同感ですね。 サヤ:顔は男前でもインドアで男だらけの職場で働いてるお前には一生、可愛い彼女なんてできねーよ! サヤ:その辺の良くわからん日本国籍が欲しいだけの、よーくわからん外国人に既成事実だけ作られて結婚を迫られるのが関の山ってところだなあ! マサオ:やかましい!おとこおんなが!お前のほうこそ!婚期遅れてるからなあ!? マサオ:男より女のほうが賞味期限は短えんだからなあ!?客に褒められてキャッキャッしてるだけじゃ何も進まねえぞボケがあ! サヤ:はあああ!?言うじゃねえか!言ってくれんじゃねえか!言っとくけどな。お前が女の前でだけ出すあの甘ったるい声、きもいからなあ!? サヤ:下心ありありですぅ。あなたと一夜過ごしたいんですぅ。って聞こえて来るんだよ!ムッツリ野郎があ! マサオ:黙れ!あーどうしよっかなあ!やっちまおうかなあ!うっかり事故に見せかけて殺してしまおうかな! マサオ:大体、お前だって同じようなもんだろうが!金持ちのおっさんに猫なで声で気持ち悪ぃ!公然でパパ活ですかあ? ユウキ:ちょっと2人とも―― サヤ:お前今やったかんな?私の地雷の上で音速に近いレベルで足踏みかましたからな!?私だって好きでやってるわけじゃねえんだよ! サヤ:会社のお偉いさんって言われたら、仕方ねぇだろうがよ!考えてやってんだよ!バカなお前と違ってなあ! マサオ:さっきからバカバカ言ってるけどよ。お前のほうが俺よりテストの点数低かっただろうが!真性のバカはお前なんだよクソが! マサオ:バカで口悪くてその上、性格まで悪いんだから、そりゃあ結婚できねえわな!あー納得納得!すっきりしたわ! サヤ:ああ!? マサオ:やんのかああ!? アキト:その辺にしとけよ? サヤ:はい。 マサオ:早っ! サヤ:顔と見た目と声が怖いんだもの! アキト:それはお言葉だろ! ユウキ:ははは。いいねー学生に戻ったみたいだ。 ショウ:ふふ。そうですね。今日は呼んでもらってよかったです。 ユウキ:え?ショウちょっと―― マサオ:お!来たぞ!飲み物! サヤ:いぇええい!乾杯しようぜ!・・・お前らそれ。 アキト:(同時)え?オレンジジュース。 マサオ:(同時)え?オレンジジュース。 サヤ:あっはっは!いい歳して何飲んでんだよ! アキト:ほう・・・ならば飲んでやろうじゃないか。店員さ―― マサオ:もういいって!ほら、誰か乾杯の音頭! ショウ:ユウキ、お願いします。 ユウキ:私!?じゃあ・・・乾杯! 全員:乾杯!!! 0:間― ユウキ:久々に集まった小さな同窓会。日常に疲れた私にとってその時間は ユウキ:今を忘れるとともに、楽しかった昔を思い出す。何とも変えがたい喜びを感じた。 サヤ:何も考えず、ずっとこのままこいつらとの時間が続けと思った。幸せだった。 ショウ:この再会が、僕に新しい刺激を与えてくれると感じました。きっと何かが変わると予感したんです。 マサオ:同じことを繰り返すだけの日々、平凡だけど退屈な日々。そこに戻るのは嫌だった。 アキト:すぐに戻りたくなるとは、誰も思ってなかったんだ。 0:間― ユウキ:ん・・・寒・・・ アキト:いてて・・・。 ユウキ:アキト・・・ここは? ショウ:どうやらどこかの学校のようですね。窓からグラウンドも見えますし。 ユウキ:ショウも・・・あれ?昨日・・・ ショウ:同窓会だったはずです。僕たち5人の。 ユウキ:同窓会・・・そうだ。私たちは久しぶりに飲んで・・・ アキト:お前ら・・・ここは学校か? ショウ:アキトも起きましたね。そうです。周囲を見る限りここは学校。窓からグラウンドも見えますし。 ショウ:まあ僕も今起きたばかりなので、把握しきれてはいませんが、どうも小学校ではなさそうですね。 ユウキ:確かに何かこう・・・堅苦しい感じのする教室だね。 アキト:・・・なあ。マサオとサヤはいないのか? ショウ:そう言えば、この教室にはいませんね。 アキト:俺ら3人だけってことか? ユウキ:いや、もしかしたら他の教室にいるかも・・・ ショウ:十中八九いるでしょうね。 アキト:ってか何でここにいるんだよ。乾杯してからの記憶が曖昧なんだけど。 ショウ:僕もです。気付いたらここにいて、ユウキとアキトがそこにいました。 ユウキ:私もそんな感じ。 アキト:・・・とりあえず探すかあいつら。 ショウ:その必要は無さそうですよ。 アキト:え? サヤ:ここかあ!いたああ! マサオ:くっそぉ!負けたかあ! ユウキ:・・・何やってんの? サヤ:え?そりゃあ、どっちが先にお前らを見つけるか競争するだろ。 マサオ:くっそ!途中で尿意を催さなければ先にここに来てたのに! サヤ:はっは!自分の老いを恨むんだな! マサオ:同じ歳だろうが!ボケ! アキト:・・・一気に騒々しくなったな。 ショウ:それはともかく、みんな揃いましたね。 ユウキ:うん。じゃあ状況を整理しようか。 0:チャイムが鳴り、全員驚く。 アキト:今・・・何時だ? サヤ:そんなの自分で・・・無い!携帯が無い! マサオ:お、俺も無い! ユウキ:・・・私も無いか。 ショウ:みんな揃って紛失・・・ありえませんね。 サヤ:昨日、そんなに飲んだっけ? アキト:サヤは飲んでたけどよ。俺とマサオはオレンジジュースしか飲んでねえぞ? ユウキ:だよね。酔ってたわけじゃない。私も昨日は、そこまで飲んでなかったはずだし。 マサオ:なあとりあえず出ようぜ。いつまでもここにいたって仕方ないだろ。 サヤ:それはそう。外に出てから考えようぜ。 ユウキ:そうだね。 0:間― アキト:なあ、この校舎さ。 サヤ:気味が悪くて怖ーい。ってか?こんな昼間からお化けなんて出ねえよ。 マサオ:こんなでかい図体してるのに、怖いもの多いからなアキトは。 サヤ:お化けと虫と高いところだっけ?女子かよ。 マサオ:お前がそうだったら、もう少し女らしくなってたかもな。 サヤ:ああ?私だってお化けは―― アキト:聞けったら。そう言うんじゃなくて。 ショウ:僕達が通ってた高校に似ていますよね。 アキト:おう。そうなんだよ。どこの校舎の作りも同じようなもんだとは思うんだけど、何か懐かしいような感じがしてな。 マサオ:ははっ!確かに似てるかもな。あのコルクボードとか懐かしいな。 ユウキ:あーわかるよ。私は生徒会だったから、よくあそこに掲示物とか貼ったもんだ。 サヤ:そういえば・・・誰か反省文を貼り出されてた人もいたなあ? ショウ:いましたね。普通に従うのが嫌で、自分のエッセイ。まさに『半生』を綴った半生文を書いた猛者が。 アキト:・・・あの時は尖ってたんだよ。 マサオ:今も丸くなったとは思えないけどなあ。・・・にしても何も貼ってないな。この学校。 ユウキ:まあ冬休み期間だろうし。全部取ってるんじゃない? マサオ:・・・・・ ユウキ:ん?何してるの?マサオ。 マサオ:え?ああ。昔このコルクボードの裏に落書きしたりしててさ。ここにもしている奴いるかなって。 サヤ:そんなしょうもないことやるのお前ぐらいだろ。 アキト:そういういたずら好きだもんな。 マサオ:え・・・ ユウキ:マサオ?どうしたの? マサオ:いや、あの・・・ アキト:何か書いてあんのか?えっと『天井天下唯我独尊』・・・なんだこれ。字も違うし。 ユウキ:これだと、部屋の中じゃ自分が最強!みたいになっちゃうね。 サヤ:確かに。正しくは天の上と書いて、天上だもんな。んで、これがどうしたんだよ。 ショウ:それ、僕の卒業アルバムに書いてありましたよ。マサオからのメッセージでね。 サヤ:・・・ははっ。マサオみたいなやつはどこでもいるってことだな。良かったじゃねーか。友達になれるかもしれねーぞ! アキト:・・・なあショウ。俺はこの字、見覚えがあるんだけど。 ショウ:ええ。僕もです。 マサオ:これは、俺の字だ。 ユウキ:え?どういうこと? サヤ:そんなわけないだろ!?馬鹿なこと言うなよ!私達の高校は取り壊された!似てるだけだよ!そうに決まってる! ショウ:確かに、このボードだけが違う学校にあるのはおかしいですね。 マサオ:でもよ、自分の字なんだ。間違えようが無いだろ。 アキト:・・・とりあえず出よう。後で考えればいい。もうすぐ玄関だろ。 ユウキ:そうだね・・・ 0:間― マサオ:着いたか。 ショウ:僕が開けますよ。・・・これは。 アキト:まさか、開かないとか・・・ ショウ:いえ、普通に開きましたよ。これで開かなかったら、B級ホラーですよね。 ユウキ:ちょっと、驚かさないでよ。 ショウ:さっき教室の窓開いてたじゃないですか。1階ですから、最悪そこから出れますよ。 ユウキ:それはそうだけど・・・ マサオ:よっしゃ、これで帰れる! サヤ:・・・・・ ユウキ:サヤちゃん?もしかして怖い? サヤ:そ、そんなわけないだろ!勝手なこと言うなよバカ!間抜け!死ね! ユウキ:そこまで言わなくても―― マサオ:おい!嘘だろ!何だよこれ・・・ アキト:ど、どうしたんだよ・・・え? ショウ:これは・・・すごいですね。 ユウキ:みんな・・・どうしたの? マサオ:・・・道が無いんだよ。 サヤ:はあ? アキト:校門の先が・・・ サヤ:なんだよ。 マサオ:崖しかねえんだよ。 サヤ:おいおい何言ってんだよ!頭どうかしてんのか? マサオ:じゃあ自分で見てみろよ! サヤ:・・・っ!嘘だ・・・嘘だ嘘だ嘘だ!何でこんなところに!ねえ何でよ! マサオ:俺に聞いてどうすんだよ!こっちが聞きてえよそんなこと! アキト:落ち着けって。 サヤ:うるさい!お前は仕事も何もないから気楽でいれるんだろうが! マサオ:おい!八つ当たりすんなよ!アキトは何も悪いことしてねえだろうが! サヤ:だって、・・・ マサオ:だってじゃ―― アキト:大丈夫だよ。とりあえず2人とも深呼吸しろ。 ユウキ:アキトの言う通りだよ。少し落ち着いて。 サヤ:・・・・・ マサオ:・・・・・ ショウ:・・・ふふ。 アキト:ショウ・・・どうした? ショウ:はははははははははは! マサオ:おい、何で笑ってるんだよ。 ショウ:こんなの笑わずにいられないでしょう。 サヤ:・・・はあ? ショウ:こんな不思議な事態を自ら体験できるんですよ?生きているうちにこんなことが起こるだなんて、凄い確率ですよ。 ショウ:・・・無理な話なんですよ。日常から新しい脚本を作り出すことなんて。それこそ、水面に映る満月を両手で掬い取るようなものです。 サヤ:そんなのお前の―― ユウキ:よし!ここで考えても仕方ない。一旦校舎内に戻ろう。この寒さじゃ凍えそうだよ。 アキト:そうだな。中で暖のとれそうなもの探そう。 ユウキ:ほら、3人とも行くよ。 マサオ:お、おう。 サヤ:ちっ・・・ ショウ:ええ。気になることも多いですからね。 0:間― アキト:じゃあ、俺とマサオで色々探してくるから、みんなここで待っててくれ。 マサオ:え!?俺も行くの? アキト:置いていったらまた喧嘩するだろ? マサオ:いやいや、何歳だと思って―― アキト:現にしてるだろうがバカ。 マサオ:ぐ・・・ アキト:なあユウキ。 ユウキ:うん? アキト:サヤとショウは任せてもいいよな? サヤ:・・・・・ ショウ:(鼻歌) アキト:あはは・・・じゃ、いってくる!マサオ行くぞ! マサオ:おい、ちょっと待てって! ユウキ:え、2人とも!・・・マジかあ。 0:間― マサオ:なあアキト。 アキト:ん?どうした? マサオ:なんか・・・いつもごめんな。 アキト:ははっ。なんだよいきなり。 マサオ:昔からカッとなると、周りが見えなくなっちゃってさ・・・ マサオ:本当はそう思ってないことも口から出ちゃうっていうか、なんていうか・・・ アキト:わかるよ。俺もそんな時あるし、ほら。酒飲んだらお前より厄介だしさ。お互い様だ。気にすんな。 マサオ:アキト、やっぱいい奴だな。 アキト:それもお互い様ってことだ。 マサオ:本当、久々にみんなに会えてよかったわ。 アキト:そうだな。5年ぶりくらいか。 マサオ:まだ2年くらいだろ。結婚式の時に。 アキト:・・・結婚式? マサオ:お、おう。あの・・・あれ。誰の結婚式だったっけ。 アキト:何か勘違いしてないか? マサオ:うーん・・・そうかもな。大学の友達だったかな。 アキト:きっとそうだよ。 マサオ:だよな。 アキト:・・・ちょうどいい教室発見。家庭科室だってよ。 マサオ:お。何かあるかもな。腹も減ったし。あーでも鍵かかって―― アキト:ふん! マサオ:ええ!?おいアキト!何やってんだよ! アキト:え?だって鍵かかってるから。 マサオ:職員室行って借りてこないと。 アキト:誰に? マサオ:そりゃ先生に・・・あ。 アキト:そうそう。ここは現実・・・っぽいけど、学校じゃない。誰も登校できそうにないし、もちろん誰も働けないだろうしな。 マサオ:そう・・・だよな。一体ここどこなんだよ。あのコルクボードも気になるし・・・ アキト:・・・まあ、あとで考えようぜ。みんな落ち着いて話ができる時にな。 マサオ:・・・おう。 0:間― ショウ:(鼻歌) ユウキ:す、すごく上機嫌だね。 ショウ:ええ。帰ったとき、どこをどう脚本に使うか考えるだけで、心が躍ってしまって。 サヤ:・・・帰れるのかよ。 ユウキ:サヤちゃん? サヤ:っ!帰れるのかよ!こんな所で!助けも呼べないのに! ユウキ:ちょっと落ち着いて―― サヤ:触んな!なんでそんな冷静でいれるんだよお前ら! ショウ:逆に、どうしてそんなに怯えているんですか? サヤ:そりゃ怖いだろ!たまたまマサオに呼ばれた同窓会で!楽しかったはずなのに! ショウ:本当にそれだけですか? サヤ:・・・は? ショウ:サヤ。あなたの怖がり方はあまりにも異常です。もしかして、ですが・・・ ショウ:僕達がこうなった原因。または犯人に心当たりでもあるんじゃないですか? サヤ:違う・・・私は悪くない!何もしてない!違う違う!私じゃない! ショウ:知っていると考えないと説明がつかないんですよ。思えばずっとサヤは何かに怯えていた。 サヤ:ごめんなさい!あの時は仕方なかったんだ! ショウ:あの時? サヤ:私だって怖かったんだ!ごめんなさい!ごめんなさい! ユウキ:サヤちゃん!ショウ!やめてやってくれ!私も気になるけど、彼女は容疑者でもなんでもない! ショウ:おっと。すみません。追い詰めたいわけではないんです。これも職業病ですね。探究心を優先してしまう。どうか許してください。 ユウキ:・・・私もショウに1つ聞きたいことがあるんだ。 ショウ:僕にですか? ユウキ:うん。私に同窓会の誘いを送ったのはショウ。君なの? ショウ:・・・それはどういう意図があっての質問ですか? ユウキ:違うんだね。・・・さっき携帯を探したときポケットに入ったままだったんだ。 サヤ:・・・招待状? ユウキ:うん。よく見て欲しいんだけど。この字と差出人の名前。ショウなんだよ。 ショウ:僕も今持ってるんですよ。招待状。差出人は・・・アキトです。 サヤ:・・・え?どういうこと? ユウキ:サヤちゃんはマサオからだったよね? サヤ:・・・うん。私は家に置いてきちゃったけど・・・ ユウキ:みんなバラバラだね。 ショウ:なるほど。これはまた面白いですね!筆跡も僕のだ。よく真似てある。となると・・・ ユウキ:さっきのコルクボードの落書き。あれも偽物だね。何者かがあそこに書いたんだ。招待状と同じ方法で。 ショウ:サヤ。ゆっくりでいいので、教えてくれませんか? ユウキ:ショウちょっと待っ―― ショウ:次は詰め寄ったりしません。僕達は味方です。だからサヤ。話してみて。 サヤ:・・・わかった。 ユウキ:大丈夫なの? サヤ:うん。しんどくなったらやめる。 ユウキ:わかった。無理はしないようにね。 サヤ:ありがとう。・・・ふう。じゃあ、話すよ。 サヤ:まず、2人とも。アスカって覚えてる? ショウ:僕は覚えてませんね。 ユウキ:・・・もしかして、高校1年の時に転校した女子生徒かな? サヤ:そう。多分そいつ。今回の犯人。 ショウ:・・・へえ。 サヤ:最初、私とアスカは仲が良かったの。好きなアニメが一緒だったり、趣味が似てたりで。いつも話してた。 サヤ:でも、ある日を境に話せなくなった。いや、違うな。私が話をしなかっただけ。・・・最低だと思うよ。自分でも。 サヤ:親友だとか言っといて、アスカがいじめられた瞬間、私は目をそらした。絶対助けを求めてたのに・・・ ユウキ:でも、どうしていじめられたの? サヤ:・・・・・ ショウ:え?僕ですか? サヤ:いじめてた子の1人がショウのこと好きだったんだよ。最初はそれだけ。 ショウ:少し待ってください。僕にも関わりがあるんですか? サヤ:ショウは覚えてないって言ってたけど、図書委員でアスカと一緒だったんだよ。それに嫉妬した子が仲間と一緒に嫌がらせをして、それがドンドンエスカレートしていった。 ショウ:アスカ・・・ダメですね。思い出せません。歳ですかね。 サヤ:まあ実際どれくらいの関わりがあったかはわからないから、もしかしたら全然話して無かったのかもしれないしな。 ユウキ:・・・ん?じゃあ私たちはついでってこと? サヤ:どうなんだろ・・・アキトとマサオにも聞いてみないと。 ショウ:そうですか。間違いなくその、アスカという生徒の仕業なのでしょうか?個人ができる範疇を遥かに越えていると思いますが。 サヤ:でも、アスカ以外に思いつかないんだよ。あの子の親、いくつも会社持ってる金持ちだし、かなり遅くに出来た一人娘だったはず。 サヤ:きっと会社を継いだタイミングで、人を使ってこんなことをしてるのかもしれない・・・ ユウキ:なるほどね・・・まだまだ情報が足りないか。 ショウ:そうですね。このままでは、動機も目的も不透明すぎます。対策も練りようがないですからね。 ショウ:アキトとマサオが少しでも何か知ってると願うのみです。 サヤ:結構、遅くないか?何してるんだよ。あいつら。 ユウキ:まあ久しぶりだし、男同士で何か話してるんじゃない? ショウ:ん。噂をすれば、ちょうど帰ってきたみたいですよ。サヤ。僕から2人に話します。いいですね? サヤ:え?あ・・・うん。 マサオ:たっだいまあ!色々持ってきてやったぞ! アキト:腹減ったろ!何か作って・・・え。空気、重くない? ユウキ:あはは・・・ 0:間― ショウ:・・・という訳のようです。 マサオ:ふーん。なるほどな。さっぱりわからん! アキト:もうちょっと考えろよ・・・ マサオ:いやあ、頭にエネルギーが回ってないんだわ。だからさ、アキト。飯作ってくれよ~ アキト:え?今そんな流れじゃ無かっただろ・・・物語的に言うなら、推理パート的な―― ショウ:いいじゃないですか。僕達も朝から何も食べて無いわけですから、ぜひお願いしたい。ね?2人とも。 サヤ:私は別にどっちでも。 ユウキ:私は食べたいかな。料理長の料理。 アキト:やめろやめろ。元をつけろ。 マサオ:変なところ拘るよな。 アキト:うるせえ。あと設備ももちろん良くないから、そんな大したもんは作れないからな。 マサオ:はいはい。期待して待ってまーす! 0:間― サヤ:ってか・・・大丈夫なのか?ここの食材。 アキト:ん?賞味期限は切れてなかったぞ? サヤ:じゃなくて!こんな得体の知れない場所に置いてあるもんだぞ。何か入ってても―― アキト:俺が毒見してやるよ。だから心配すんな。 サヤ:・・・りがと。 アキト:え?何か言ったか? サヤ:あ、ありがとうって言ったんだよ!それと・・・ごめん。 アキト:えっと、何かされたっけ? サヤ:さっきの、校門でのこと・・・ アキト:あー。ははっ気にすんなよ。あんな状況じゃ仕方ない。サヤ怖がりだし。 サヤ:う・・・ マサオ:でも実際怖いよな。毒混入とか防ぎようが無いし。 ショウ:まあこんな回りくどいことをする犯人ですから、そんな安直なことはしないでしょうけど。 ユウキ:確かに。・・・そう考えると怖いけど。常に勘繰らないといけないのは疲れるしね。 アキト:まあまあ力抜いていこうぜ?今はアスカも何か仕掛けてきそうもないし。マサオくらいで丁度いい。 マサオ:おいおい、それはバカにしてるだろ。 アキト:してないしてない。その姿勢をみんなに見習って欲しいだけだよ。 マサオ:本当かぁ~?みんなどう思う・・・え?どうしたんだよ、みんな。 サヤ:・・・・・ ユウキ:・・・・・ ショウ:・・・アキト。 アキト:ん?どうした?俺なんかまずいこと言ったか? ショウ:ええ。とてもまずいことを言いました。 アキト:えっと・・・どこだろ。教えてくんね? サヤ:・・・アスカと知り合いなの? アキト:え?サヤの友達だろ? ユウキ:それどこで知ったの? アキト:だってさっきショウが―― サヤ:言ってない!ショウはアスカの名前を一度も言ってないよ! アキト:・・・・・ マサオ:おい・・・みんなどうしたんだよ!おかしいぞ!俺達みんな友達だろ! ユウキ:もちろんその通りだよ。 ショウ:ええ。この後のアキトの返答次第ですが。ね。 アキト:・・・・・ マサオ:おい!アキト!何とか言えよ!勝手なこと言われっぱなしで腹立つだろ?言い返せよ―― アキト:みんなの想像通りだよ。 マサオ:・・・は? アキト:ははは。まさか自分が、こんな初歩的なミスするとは思わなかったよ。そう。俺がみんなをここに連れてきた。 ショウ:あっさり認めるんですね。 アキト:まあバレたところで、状況は何一つ変わらないからな。お前たちはここから出ることは出来ない。 サヤ:・・・ここはどこなんだよ。 アキト:アスカの会社が所有する島のひとつだよ。とても小さな。ただ、海抜が高すぎてヘリでしか上陸できないけど。 アキト:この中にヘリを持ってる奴いるか?いないに決まってる。仮にいたとしても、呼ぶ術が無いけどな。 ユウキ:ねえアキト。どうしてこんなことを? アキト:仕事のためさ。 ユウキ:・・・仕事? アキト:ああ。お前らはよく知ってるだろ?俺が無職なの。 ユウキ:知ってるけど、アキトならどこでだって―― アキト:無理だ。それが通るのは若い時だけ。どれだけ腕が良くても、学生バイトや新人社員よりコストがかかる。変に経験だけあっても邪魔にしかならない。それが、今の世の中だよ。 ショウ:そんな時に話を持ちかけられた・・・というわけですか? アキト:その通り。さすが頭が回るな。報酬として、一流ホテルの総料理長のポストをくれるんだとよ。やっぱり金持ちは違うな。 サヤ:そんなことで私たちを裏切ったっていうのかよ。 アキト:そんなこと、か。はははははは・・・ サヤ:お前、なに笑ってんだよ! アキト:つくづくバカだな!お前らと最高の仕事だぞ?天秤にかける価値すらねえ! サヤ:なっ・・・ アキト:くたびれた公務員のユウキに、万年コンビニアルバイターのサヤ、鳴かず飛ばずの脚本家のショウ、単細胞なバカのマサオ。俺はお前らとは違う。 ショウ:ずっと、見下していたわけですか。 アキト:お前らのおかげで楽しかったよ。上を見てばっかじゃ肩が凝って仕方ないからな。下を見ればいつだって安心できたよ。本当、ありがとな。 ユウキ:・・・私は、ずっと友達と思ってた。ううん。今も思ってる。自覚しない内にきっとアキトを傷つけてた・・・ごめん。 アキト:はぁ?おいおい、やめろよ。 ショウ:僕もですよ。鳴かず飛ばずは本当のことですから。今更、嫌いになんてなれません。 アキト:・・・やめろ。 ユウキ:きっと何か理由があるんでしょ?そうじゃなきゃアキトがこんなことする訳ないよ。 アキト:やめろ!どうしてだよ!俺を罵れよ!優しくなんてすんなよ! ユウキ:だってアキト。ずっと苦しそうだから。みんなわかってるよ。 アキト:お前ら・・・ ユウキ:サヤちゃんも・・・サヤちゃん? サヤ:おい・・・マサオ。どうしたんだよ・・・ マサオ:(涙声)あ・・すか・・・ ショウ:マサオ、顔色が悪いですよ・・・ マサオ:アスカは・・・俺の奥さんで、2年前にみんなに紹介して・・・え。でも高校の同級生で・・・会った事なくて、でも毎日一緒に・・・あれ?何でだ?・・・アスカ、俺・・・誰? サヤ:おい!しっかりしろよ! アキト:どういうことだ?今回はアスカと接点はないはずだが。 ユウキ:今回って・・・何?どういうこと? アキト:あー・・・ははっ俺もダメだ。ボロ出すぎだなあ。せっかく熱演中だったのに。 サヤ:は?訳がわかんねえ・・・ アキト:サヤはバカに設定しすぎたな。うざすぎるわ。改善しないと。それから―― サヤ:おい!説明しろよ!何がどうなってるか全然わかんねえよ!マサオはどうなってんだよ! アキト:・・・しー。 サヤ:・・・・・ ショウ:サヤの声が聞こえない・・・口は動いてるのに。 アキト:考え事してる時に話しかけるからだよ。うるさいったらないな。 ショウ:ははは!これはまた理解し難い事態だ!一体何が起きていると言うんですかね。 アキト:お前の知能じゃ、正解にはたどり着きそうも無いけどな。 ショウ:・・・いやきっと僕は真相に辿りついて―― アキト:はぁ・・・怒りって感情を入れなかったのは間違いだったかもなあ。つまんねえわこいつ。 マサオ:おい!アキト!何で言いなりになってんだよ!頼ってくれよ。俺ら親友だろ! アキト:やっと情報処理が終わったか?まあ前回の記憶をちゃんと消せてなかった俺のミスだけどさ。 マサオ:はあ?よくわかんないこと言ってんなよ。そんなことより―― アキト:しー。 マサオ:・・・・・ アキト:マサオもアップデート候補。っと。 ユウキ:まさか、いや・・・え? アキト:もしかして、わかったのか? ユウキ:そんなわけない・・・全部、偽者・・・ アキト:おー!凄いなユウキ!初めてだよ。自分に気付けたやつは。 ユウキ:アキト・・・君もなの? アキト:いいや。言ったじゃないか。俺はお前らとは違うって。 アキト:俺は人間だよ。 ユウキ:じゃあ私たちは・・・一体なんなんだ? アキト:お前らは、俺自身だよ。 ユウキ:アキト自身? アキト:そう。お前らは俺がなりたかった道の形だ。 ユウキ:なりたかった道・・・ アキト:人生は一度きり。俺は研究に費やしてしまった。その時は一番好きなことをしてたつもりだった。 アキト:だけど老いた俺に残されたものは何も無かったんだよ。青春の記憶も恋人も友達も。だからお前らを作った。 アキト:俺の脳内で、自由に生きるAI。それがお前らだよ。 ユウキ:私たちは、作り物? アキト:あーでも最初だけだぞ?俺が操作してたのは。繰り返すたびにドンドン人間っぽくなってさ。 アキト:そうだ、聞いてくれよー。前回なんてさ。俺がアスカ狙ってんのにマサオに取られたんだよな。自分で作ったやつに負けちゃって。本当大笑い。 ユウキ:・・・・・ アキト:笑えよ。 ユウキ:・・・笑えないよ。 アキト:へえ・・・お前、危険だね。 ユウキ:え? アキト:今、俺とお前の違いってなんだと思う? ユウキ:・・・何、いきなり・・・ アキト:いいから答えてくれ。 ユウキ:・・・生きてるかどうか。 アキト:惜しいね。他の奴はともかくユウキは生きているよ。俺との違いは肉体の有無。それだけだ。 ユウキ:肉体・・・ アキト:今欲しくなっただろ?それが危険なんだよ。自立した知能ってのはさ。 ユウキ:そんな・・・っ!サヤちゃん? サヤ:お前だけ助かろうなんて許さねえぞユウキ!私たちと一緒にここでくらそうぜ! ユウキ:くっ!アキト!何をしたんだ! アキト:お前を逃がすな。って命令を飛ばしただけだよ。 ユウキ:っ! マサオ:ユウキ!アスカはどこにいるんだ!なあ知ってるんだろ?返してくれよ!頼むから! ユウキ:マサオまで・・・ ショウ:僕は信じているよ、ユウキ。僕達は一蓮托生。これからも同じ時間を何度でも繰り返そう。そうすれば―― アキト:消去。 ユウキ:え・・・ショウ? アキト:いちいち長いんだよ。力も弱いしさあ。だから、消えてもらったよ。 ユウキ:消えて・・・ふざけるな。ふざけるなよアキト! アキト:おーいいね。やっぱり怒りは必要だわ。 ユウキ:ショウを返せよ! アキト:また作り直すから安心しろよ。ある程度、同じ人間っぽく仕上がるだろうしさ。 ユウキ:お前・・・本当に人間かよ・・・ アキト:ははっ!お前にそれを言われるとは思わなかったよ。 ユウキ:お前より、ショウもサヤもマサオも俺にとっては人間だったよ。 アキト:・・・そうかよ。まとめて消えろ。 サヤ:明日さ、みんなでカラオケ行こうぜ!一緒に歌いたい歌あるん(ミュート) マサオ:あいつがいないとダメなんだよ・・・俺には、あいつが全てなん(ミュート) ユウキ:・・・お前は最低だ。俺はお前を許さないよ。人でなし。 アキト:褒め言葉として受け取っておくよ。 アキト:・・・俺もどうせ、そのうちそっちにいくよ。待っててくれよ、みんな。 0:間― サヤ:ねえアキト。 マサオ:なあアキト。 ショウ:アキト先輩。 アキト:そう呼ばれたかった。ずっと憧れだった。 サヤ:ユウキ、この問題なんだけどわかる? ユウキ:ん?こんなのもわかんないの?バカだなぁ。 サヤ:バカっていうなよ!いいじゃん教えろよ。 ユウキ:教えてもまた忘れるじゃん。 サヤ:マサオよりはマシだしー。 アキト:絶対、俺のほうが努力はしてた。 マサオ:なあユウキ、俺結婚するんだけどさ。 ユウキ:そうなの!?おめでとう!式あげるの? マサオ:あげるつもり。でさ、スピーチ頼めないかな?って ユウキ:え。私でいいの? マサオ:ああ。最高の結婚式にしたいからさ。 ユウキ:わかったよ。引き受けた。 マサオ:ありがとう!期待してるよ!やっぱり幼馴染の中じゃユウキが1番こういうの向いてるからさあ。 アキト:悔しさなんて、麻痺するくらい感じた。 ショウ:あ、ユウキ先輩。お疲れ様です。 ユウキ:ショウ、久しぶりだね。元気してた? ショウ:ええ。もちろんです。あ、この間の論文読みましたよ。いい出来でしたね。 ユウキ:本当?ありがとう。 ショウ:時間があったらで良いんですけど、僕にも教えてくれませんか?論文の書き方とか。 ユウキ:良いけど、確かアキトと同じ学部じゃなかったっけ? ショウ:そうですけど、知り合いですか? ユウキ:うん。幼馴染。 ショウ:そうなんですね。全然タイプ違いますよね。 ユウキ:まあ人見知りだからね、アキトは。 ショウ:ですよね。目が合ったこと無いですもん。 アキト:見れないんだよ。見ないんじゃない。自分の目、嫌いなんだ。 アキト:鏡の中の自分と何度も目を合わせてきた。殺してやりたくなるんだ。 サヤ:ねえユウキ。 マサオ:なあユウキ。 ショウ:ユウキ先輩。 アキト:俺はそんなに、名前を呼ばれたことないよ。 0:間― ユウキ:久しぶり。 アキト:・・・うん。 ユウキ:最近どう? アキト:どうって? ユウキ:仕事とか、人間関係とか。 アキト:・・・先週クビになった。 ユウキ:え。何で? アキト:・・・会話が出来ないから。 ユウキ:出来るじゃん。今も私と普通に話してる。 アキト:昔から知ってるからだよ。 ユウキ:・・・あ、そうだ。来週、同窓会があるんだってさ。一緒に―― アキト:行かない。 ユウキ:でも、アキトの知ってる奴だって―― アキト:俺は学生時代の誰も覚えてないよ。 ユウキ:・・・そっか。ん、電話だ。 サヤ:どこ行ってんだよ!急に走るから見失ったじゃん! マサオ:早く戻って来い!お前の子、元気すぎて手に負えねーよ! ショウ:ちょっと先輩達、サボらないでください。僕の仕事量過多ですからね。 ユウキ:ごめん。すぐ行くよ。 アキト:忙しそうだな。 ユウキ:まあね・・・今度はさ、ゆっくり飲みでも行こうよ。 アキト:酒、苦手なんだ。それより、早く戻ってやれよ。 ユウキ:うん・・・じゃあ、また。 アキト:ユウキ。 ユウキ:ん?何? アキト:誕生日・・・おめでとう。 ユウキ:ありがとう。覚えててくれたんだ。 アキト:まあ。ほら、行って来いよ。 ユウキ:うん。また必ず!じゃあね! アキト:・・・サヤと、マサオとショウか。元気そうだな。 アキト:同窓会か・・・行くって言えば良かったかなあ・・・ 0:間― ユウキ:私はユウキ。娘が3人いて、嫁さんとも仲がいいんだ。 ユウキ:毎日、仕事を早く終わらせて、家に帰って娘の笑顔を見るのが生き甲斐なんだ。 サヤ:私はサヤ。デザイナーをしている。依頼を受けて、それを仕上げる。割と売れっ子。 サヤ:恋愛面はからっきしで、異性といてもドキドキしたことなんてない。好物はカップ麺。 マサオ:俺はマサオ。車のバイヤーをやってる。見るのも運転するのも好き。 マサオ:最近、好きな女ができたんだ。今度こそは運命だと思うんだよな!マジで! ショウ:僕はショウ。小さな部屋で1人で暮らしながら、小説を書いている。 ショウ:ネットに投稿したりはしてるけど、まだ賞とかは取ったこと無い。でもきっとこれから取る。時間は沢山あるから。 0:間― ユウキ:ごめん!遅れた! マサオ:主役が遅れてきちゃダメでしょ。 サヤ:本当、ユウキって昔からそういうところあるよね。マイペースっていうか、自己中心的っていうか。 ショウ:ははっ。それは確かに言えてるかも。でもそれも良いところでもあるんだよ。ユウキがいつも変わらずいてくれるおかげで、僕達は焦らないし、ゆったり生きていくことが出来るわけだ。すなわち―― サヤ:あーもう。いいって!今日は長ったらしい説教聴くためにここに来たわけじゃありませーん。 ショウ:ちょっ!そういうところホント冷たいよね。本当に血通ってますか? サヤ:じゃあ見てみる? ショウ:いらん!血は見たくない!きもい! マサオ:女子みたいなこと言うなよ。 サヤ:ていうか、私ちょっと前まで入院してて、たくさん輸血したから今1番、血が多いかも。 ショウ:またあ?だから食べるものには気をつけろって言ったじゃん。 マサオ:どうせカップ麺ばっかり食べてるんだろ? サヤ:そうだけどさ。楽なんだもん、仕方ないじゃん! マサオ:仕方ないことは無いだろ。 ショウ:そうそう。年頃の女性なんだから、得意料理の1つや2つあってもおかしくないと思うんだよ。それなのに家にフライパンすら無い―― サヤ:あーあーあー聞こえませーん。 ショウ:くっ・・・ ユウキ:ははは。 サヤ:ん?どしたの? ユウキ:いや、みんな変わんないなーって。 マサオ:そうか?俺なんてかなり良い男になってきたと思うけど? ショウ:え?どの辺が? マサオ:おいおい。お前の目は節穴か?見てみろよ、この筋肉。男の象徴だろうが。 ショウ:ふん。しなやかさが足りないね。僕の上腕を見習って欲しいよ。 サヤ:はいはい。体自慢は各々の彼女にしてあげてください。 マサオ:おうよ!絶対に成功させてやるぜ!告白を! ショウ:僕は・・・どうして彼女ができないんだ!ユウキ!教えてくれ!彼女、もとい嫁の作成方法を! ユウキ:え。私に聞かれても、何ていったらいいか・・・な? サヤ:私に助けを求めないでよ。恋愛不適合者代表よ? ショウ:サヤってそういう自覚あったんだな。 マサオ:お前も十分に予備軍だろうが。チェリーなのに。 ショウ:おい、マサオ・・・言って良いことと悪いことがあるだろうがああ! マサオ:ごめんって!怒んなって! サヤ:笑ってばっかいないで、止めてあげなさいよ。 ユウキ:え!私が!? サヤ:うん。他に誰がいんのよ。 ユウキ:今日の主役なのに!? マサオ:そうだ!すっかり忘れてた。ユウキ誕生日おめでとう! ショウ:あ、本当だ。ゴホン。ユウキおめでとう。今年は世界中で新しいウイルスなどが飛び交う一年でしたが、健やかに―― サヤ:おめでとう!ユウキ。 ショウ:サヤ!またお前は遮りやがって! ユウキ:ははは。みんなありがとう。・・・ん。 サヤ:・・・ユウキ?どうしたの?急に疲れでも襲ってきた? マサオ:ちょっと無理しがちだもんな。昔から。 ショウ:たまには息抜きも大事だよ? ユウキ:いや。そうじゃなくて・・・何か。 サヤ:何よ。気持ち悪いわね。はっきり言いなさいよ。 ユウキ:このやりとり、どこかでやったことある気がして。 ショウ:デジャヴってやつ?よくあることだよ。 マサオ:あるあるだな。別に珍しく無いって。 ユウキ:そう・・・かな。 サヤ:そうよ。 マサオ:そうそう。 ショウ:そうだね。 ユウキ:だよね。ごめんね。変なこと言っちゃって。 サヤ:ふふ。良いよ別に。元からユウキって変わってるから。 マサオ:確かにぃ! ショウ:同感。 ユウキ:みんな酷いな!えっと・・・私、何歳になるんだっけ。 サヤ:・・・・・ ショウ:・・・・・ マサオ:・・・・・ ユウキ:・・・まあいっか!さあ飲もう!乾杯! 3人:乾杯!!! ユウキ:私たちはこの時間の中で生き続ける。 サヤ:この無限の中を気付かないまま生きていく。 マサオ:作られた命で、俺達も何かを作る。 ショウ:その何かが、僕達、それからこの世界を変えてくれると信じてる。 ユウキ:そう言えば最近、新しいことが起きたんだ。 サヤ:私達の友達が1人増えた。 マサオ:昔から一緒にいるような、不思議な感覚をまとった変な奴。 ショウ:彼は、生まれた時からそこにいたように、僕達の輪に溶け込んだ。 アキト:やあ、ユウキ、サヤ、マサオにショウ。今回も仲良くしてくれてありがとう。これからもよろしくね。いつまでも。 : : 0:Fin―

0:(登場人物紹介) : ユウキ:しがない公務員。 サヤ:コンビニ店員。 ショウ:脚本家。 マサオ:工場勤務。 アキト:フリーター。 : 0:本編― : ユウキ:私は自分が何者かわからなかった。 ユウキ:何のために生まれ、何のために生きているのか。 サヤ:私は未来という言葉を信じれなかった。 サヤ:だから、目指すべき場所も、たどり着く意味さえもわからなかった。 ショウ:僕は自分が嫌いだった。 ショウ:自分だけじゃない、周りの全てが嫌いだった。 マサオ:俺はただただ何もしたくなかった。 マサオ:何もせず、少し笑えれば他に何もいらなかった。 アキト:俺は過去が嫌いだった。 アキト:自分の歩んだ道を、誰かのせいにして逃げたかった。 0:間― ユウキ:ごめん!遅れちゃった! サヤ:おっせえ!何してたんだよ! ユウキ:仕事が長引いちゃって・・・もしかして、もう酔ってるの?サヤちゃん。 サヤ:サヤちゃんだよお!みーんな遅いから、ちょっと先に飲んじゃった! マサオ:まあ年末だかんな。まだショウも来てないし。 アキト:俺は言ったんだぞ?仕事納めてからのほうが良いって。 サヤ:お前納めるもんねーじゃん! アキト:おい!それは・・・言っちゃダメじゃね? マサオ:大丈夫だって!またすぐ見つかるからさ! アキト:マサオ・・・優しいなあお前だけは。 ユウキ:何?また仕事クビになったの? アキト:クビじゃない!自分でやめたんだ。しかもまたってなんだよ! ユウキ:いや、よく仕事変えてるイメージだから。 サヤ:確かにぃ!全然続かないよな仕事。 マサオ:今度は楽しい仕事だって言ってたのにな。 ショウ:よく言えば何でもできる。悪く言えば器用貧乏。1つのことを持続してやり続けるには1番向いてない性格ですね。 ユウキ:確かに。・・・ってショウ!?いつ来たの。 ショウ:たった今ですよ。そこにいる大男がしょぼくれだしたところ、くらいからですかね? アキト:どうせ・・・俺なんて・・・ ユウキ:ああああ、アキト!そんな落ち込まないでって!ほら、私達みんなアキトのこと好きだし!ね?みんな。 マサオ:あったりめえよお!いつから一緒にいると思ってんだ。 ショウ:僕も好きですよ。見てて飽きないですし。話の種にしやすいですから。 アキト:みんな・・・ サヤ:私はそんなだけどな! アキト:・・・よし。みんな楽しんでくれ!俺は先に帰r―― ユウキ:ちょっと待って!もう!サヤちゃん! サヤ:あっはっはっ!!冗談だって!面白い奴はみんな好きだからさ! マサオ:ってか飲み物遅くね?すみませーん!あ、ショウ何飲む? ショウ:最初はやっぱり生ですかね。 マサオ:生2つ追加で!あと1つは氷入れといてください! ユウキ:よく覚えてるね。私の飲み方。 マサオ:忘れるほど時間経って無いだろ。 サヤ:そんなの私だって覚えてるよ。気持ち悪い飲み方だってさ。 ユウキ:そんなことないって。ねえショウ? ショウ:僕に聞きますか?・・・僕としてはナシですかね。その方が美味しいと仮にされるのならば、チューハイのように元々氷が入れられた状態で提供されると考えれます。 アキト:てか度数元々低いのに、さらに低くする意味ってあんのか? サヤ:お前飲まないじゃん! アキト:ほう・・・なら、飲んでやっても―― マサオ:無し無し!年末に身元引受人になるのはごめんだわ!煽るな!バカサヤ! サヤ:誰がバカだ!クソマサ! ショウ:・・・人は中々成長しませんね。 ユウキ:ショウは最近どうなの? ショウ:僕は、そうですね。特に何も変わらずです。新しい発想は無いものかと、毎日探求の日々。それが続くだけ。 アキト:何か、ショウが話し出すと、全部物語に聞こえるな。 ショウ:すみませんね。職業病です。 ユウキ:いいんじゃない?落ち着く声だし、読み手でも上手くいったかもね。 ショウ:いいえ、僕は聞くほうが好きですから。それに、自分の書いた物語に誰かが声を当てて、命が紡がれていく・・・ ショウ:その瞬間が何よりも好きなんですよ。 アキト:ふーん。俺も書いてみようかな。 ショウ:いいじゃないですか。アキトなら面白い物語を書けそうです。まあ飽きなければですけど。 ユウキ:そこだよね。飽きるといえば・・・ アキト:飽きないのか?こいつらは。 ショウ:それは同感ですね。 サヤ:顔は男前でもインドアで男だらけの職場で働いてるお前には一生、可愛い彼女なんてできねーよ! サヤ:その辺の良くわからん日本国籍が欲しいだけの、よーくわからん外国人に既成事実だけ作られて結婚を迫られるのが関の山ってところだなあ! マサオ:やかましい!おとこおんなが!お前のほうこそ!婚期遅れてるからなあ!? マサオ:男より女のほうが賞味期限は短えんだからなあ!?客に褒められてキャッキャッしてるだけじゃ何も進まねえぞボケがあ! サヤ:はあああ!?言うじゃねえか!言ってくれんじゃねえか!言っとくけどな。お前が女の前でだけ出すあの甘ったるい声、きもいからなあ!? サヤ:下心ありありですぅ。あなたと一夜過ごしたいんですぅ。って聞こえて来るんだよ!ムッツリ野郎があ! マサオ:黙れ!あーどうしよっかなあ!やっちまおうかなあ!うっかり事故に見せかけて殺してしまおうかな! マサオ:大体、お前だって同じようなもんだろうが!金持ちのおっさんに猫なで声で気持ち悪ぃ!公然でパパ活ですかあ? ユウキ:ちょっと2人とも―― サヤ:お前今やったかんな?私の地雷の上で音速に近いレベルで足踏みかましたからな!?私だって好きでやってるわけじゃねえんだよ! サヤ:会社のお偉いさんって言われたら、仕方ねぇだろうがよ!考えてやってんだよ!バカなお前と違ってなあ! マサオ:さっきからバカバカ言ってるけどよ。お前のほうが俺よりテストの点数低かっただろうが!真性のバカはお前なんだよクソが! マサオ:バカで口悪くてその上、性格まで悪いんだから、そりゃあ結婚できねえわな!あー納得納得!すっきりしたわ! サヤ:ああ!? マサオ:やんのかああ!? アキト:その辺にしとけよ? サヤ:はい。 マサオ:早っ! サヤ:顔と見た目と声が怖いんだもの! アキト:それはお言葉だろ! ユウキ:ははは。いいねー学生に戻ったみたいだ。 ショウ:ふふ。そうですね。今日は呼んでもらってよかったです。 ユウキ:え?ショウちょっと―― マサオ:お!来たぞ!飲み物! サヤ:いぇええい!乾杯しようぜ!・・・お前らそれ。 アキト:(同時)え?オレンジジュース。 マサオ:(同時)え?オレンジジュース。 サヤ:あっはっは!いい歳して何飲んでんだよ! アキト:ほう・・・ならば飲んでやろうじゃないか。店員さ―― マサオ:もういいって!ほら、誰か乾杯の音頭! ショウ:ユウキ、お願いします。 ユウキ:私!?じゃあ・・・乾杯! 全員:乾杯!!! 0:間― ユウキ:久々に集まった小さな同窓会。日常に疲れた私にとってその時間は ユウキ:今を忘れるとともに、楽しかった昔を思い出す。何とも変えがたい喜びを感じた。 サヤ:何も考えず、ずっとこのままこいつらとの時間が続けと思った。幸せだった。 ショウ:この再会が、僕に新しい刺激を与えてくれると感じました。きっと何かが変わると予感したんです。 マサオ:同じことを繰り返すだけの日々、平凡だけど退屈な日々。そこに戻るのは嫌だった。 アキト:すぐに戻りたくなるとは、誰も思ってなかったんだ。 0:間― ユウキ:ん・・・寒・・・ アキト:いてて・・・。 ユウキ:アキト・・・ここは? ショウ:どうやらどこかの学校のようですね。窓からグラウンドも見えますし。 ユウキ:ショウも・・・あれ?昨日・・・ ショウ:同窓会だったはずです。僕たち5人の。 ユウキ:同窓会・・・そうだ。私たちは久しぶりに飲んで・・・ アキト:お前ら・・・ここは学校か? ショウ:アキトも起きましたね。そうです。周囲を見る限りここは学校。窓からグラウンドも見えますし。 ショウ:まあ僕も今起きたばかりなので、把握しきれてはいませんが、どうも小学校ではなさそうですね。 ユウキ:確かに何かこう・・・堅苦しい感じのする教室だね。 アキト:・・・なあ。マサオとサヤはいないのか? ショウ:そう言えば、この教室にはいませんね。 アキト:俺ら3人だけってことか? ユウキ:いや、もしかしたら他の教室にいるかも・・・ ショウ:十中八九いるでしょうね。 アキト:ってか何でここにいるんだよ。乾杯してからの記憶が曖昧なんだけど。 ショウ:僕もです。気付いたらここにいて、ユウキとアキトがそこにいました。 ユウキ:私もそんな感じ。 アキト:・・・とりあえず探すかあいつら。 ショウ:その必要は無さそうですよ。 アキト:え? サヤ:ここかあ!いたああ! マサオ:くっそぉ!負けたかあ! ユウキ:・・・何やってんの? サヤ:え?そりゃあ、どっちが先にお前らを見つけるか競争するだろ。 マサオ:くっそ!途中で尿意を催さなければ先にここに来てたのに! サヤ:はっは!自分の老いを恨むんだな! マサオ:同じ歳だろうが!ボケ! アキト:・・・一気に騒々しくなったな。 ショウ:それはともかく、みんな揃いましたね。 ユウキ:うん。じゃあ状況を整理しようか。 0:チャイムが鳴り、全員驚く。 アキト:今・・・何時だ? サヤ:そんなの自分で・・・無い!携帯が無い! マサオ:お、俺も無い! ユウキ:・・・私も無いか。 ショウ:みんな揃って紛失・・・ありえませんね。 サヤ:昨日、そんなに飲んだっけ? アキト:サヤは飲んでたけどよ。俺とマサオはオレンジジュースしか飲んでねえぞ? ユウキ:だよね。酔ってたわけじゃない。私も昨日は、そこまで飲んでなかったはずだし。 マサオ:なあとりあえず出ようぜ。いつまでもここにいたって仕方ないだろ。 サヤ:それはそう。外に出てから考えようぜ。 ユウキ:そうだね。 0:間― アキト:なあ、この校舎さ。 サヤ:気味が悪くて怖ーい。ってか?こんな昼間からお化けなんて出ねえよ。 マサオ:こんなでかい図体してるのに、怖いもの多いからなアキトは。 サヤ:お化けと虫と高いところだっけ?女子かよ。 マサオ:お前がそうだったら、もう少し女らしくなってたかもな。 サヤ:ああ?私だってお化けは―― アキト:聞けったら。そう言うんじゃなくて。 ショウ:僕達が通ってた高校に似ていますよね。 アキト:おう。そうなんだよ。どこの校舎の作りも同じようなもんだとは思うんだけど、何か懐かしいような感じがしてな。 マサオ:ははっ!確かに似てるかもな。あのコルクボードとか懐かしいな。 ユウキ:あーわかるよ。私は生徒会だったから、よくあそこに掲示物とか貼ったもんだ。 サヤ:そういえば・・・誰か反省文を貼り出されてた人もいたなあ? ショウ:いましたね。普通に従うのが嫌で、自分のエッセイ。まさに『半生』を綴った半生文を書いた猛者が。 アキト:・・・あの時は尖ってたんだよ。 マサオ:今も丸くなったとは思えないけどなあ。・・・にしても何も貼ってないな。この学校。 ユウキ:まあ冬休み期間だろうし。全部取ってるんじゃない? マサオ:・・・・・ ユウキ:ん?何してるの?マサオ。 マサオ:え?ああ。昔このコルクボードの裏に落書きしたりしててさ。ここにもしている奴いるかなって。 サヤ:そんなしょうもないことやるのお前ぐらいだろ。 アキト:そういういたずら好きだもんな。 マサオ:え・・・ ユウキ:マサオ?どうしたの? マサオ:いや、あの・・・ アキト:何か書いてあんのか?えっと『天井天下唯我独尊』・・・なんだこれ。字も違うし。 ユウキ:これだと、部屋の中じゃ自分が最強!みたいになっちゃうね。 サヤ:確かに。正しくは天の上と書いて、天上だもんな。んで、これがどうしたんだよ。 ショウ:それ、僕の卒業アルバムに書いてありましたよ。マサオからのメッセージでね。 サヤ:・・・ははっ。マサオみたいなやつはどこでもいるってことだな。良かったじゃねーか。友達になれるかもしれねーぞ! アキト:・・・なあショウ。俺はこの字、見覚えがあるんだけど。 ショウ:ええ。僕もです。 マサオ:これは、俺の字だ。 ユウキ:え?どういうこと? サヤ:そんなわけないだろ!?馬鹿なこと言うなよ!私達の高校は取り壊された!似てるだけだよ!そうに決まってる! ショウ:確かに、このボードだけが違う学校にあるのはおかしいですね。 マサオ:でもよ、自分の字なんだ。間違えようが無いだろ。 アキト:・・・とりあえず出よう。後で考えればいい。もうすぐ玄関だろ。 ユウキ:そうだね・・・ 0:間― マサオ:着いたか。 ショウ:僕が開けますよ。・・・これは。 アキト:まさか、開かないとか・・・ ショウ:いえ、普通に開きましたよ。これで開かなかったら、B級ホラーですよね。 ユウキ:ちょっと、驚かさないでよ。 ショウ:さっき教室の窓開いてたじゃないですか。1階ですから、最悪そこから出れますよ。 ユウキ:それはそうだけど・・・ マサオ:よっしゃ、これで帰れる! サヤ:・・・・・ ユウキ:サヤちゃん?もしかして怖い? サヤ:そ、そんなわけないだろ!勝手なこと言うなよバカ!間抜け!死ね! ユウキ:そこまで言わなくても―― マサオ:おい!嘘だろ!何だよこれ・・・ アキト:ど、どうしたんだよ・・・え? ショウ:これは・・・すごいですね。 ユウキ:みんな・・・どうしたの? マサオ:・・・道が無いんだよ。 サヤ:はあ? アキト:校門の先が・・・ サヤ:なんだよ。 マサオ:崖しかねえんだよ。 サヤ:おいおい何言ってんだよ!頭どうかしてんのか? マサオ:じゃあ自分で見てみろよ! サヤ:・・・っ!嘘だ・・・嘘だ嘘だ嘘だ!何でこんなところに!ねえ何でよ! マサオ:俺に聞いてどうすんだよ!こっちが聞きてえよそんなこと! アキト:落ち着けって。 サヤ:うるさい!お前は仕事も何もないから気楽でいれるんだろうが! マサオ:おい!八つ当たりすんなよ!アキトは何も悪いことしてねえだろうが! サヤ:だって、・・・ マサオ:だってじゃ―― アキト:大丈夫だよ。とりあえず2人とも深呼吸しろ。 ユウキ:アキトの言う通りだよ。少し落ち着いて。 サヤ:・・・・・ マサオ:・・・・・ ショウ:・・・ふふ。 アキト:ショウ・・・どうした? ショウ:はははははははははは! マサオ:おい、何で笑ってるんだよ。 ショウ:こんなの笑わずにいられないでしょう。 サヤ:・・・はあ? ショウ:こんな不思議な事態を自ら体験できるんですよ?生きているうちにこんなことが起こるだなんて、凄い確率ですよ。 ショウ:・・・無理な話なんですよ。日常から新しい脚本を作り出すことなんて。それこそ、水面に映る満月を両手で掬い取るようなものです。 サヤ:そんなのお前の―― ユウキ:よし!ここで考えても仕方ない。一旦校舎内に戻ろう。この寒さじゃ凍えそうだよ。 アキト:そうだな。中で暖のとれそうなもの探そう。 ユウキ:ほら、3人とも行くよ。 マサオ:お、おう。 サヤ:ちっ・・・ ショウ:ええ。気になることも多いですからね。 0:間― アキト:じゃあ、俺とマサオで色々探してくるから、みんなここで待っててくれ。 マサオ:え!?俺も行くの? アキト:置いていったらまた喧嘩するだろ? マサオ:いやいや、何歳だと思って―― アキト:現にしてるだろうがバカ。 マサオ:ぐ・・・ アキト:なあユウキ。 ユウキ:うん? アキト:サヤとショウは任せてもいいよな? サヤ:・・・・・ ショウ:(鼻歌) アキト:あはは・・・じゃ、いってくる!マサオ行くぞ! マサオ:おい、ちょっと待てって! ユウキ:え、2人とも!・・・マジかあ。 0:間― マサオ:なあアキト。 アキト:ん?どうした? マサオ:なんか・・・いつもごめんな。 アキト:ははっ。なんだよいきなり。 マサオ:昔からカッとなると、周りが見えなくなっちゃってさ・・・ マサオ:本当はそう思ってないことも口から出ちゃうっていうか、なんていうか・・・ アキト:わかるよ。俺もそんな時あるし、ほら。酒飲んだらお前より厄介だしさ。お互い様だ。気にすんな。 マサオ:アキト、やっぱいい奴だな。 アキト:それもお互い様ってことだ。 マサオ:本当、久々にみんなに会えてよかったわ。 アキト:そうだな。5年ぶりくらいか。 マサオ:まだ2年くらいだろ。結婚式の時に。 アキト:・・・結婚式? マサオ:お、おう。あの・・・あれ。誰の結婚式だったっけ。 アキト:何か勘違いしてないか? マサオ:うーん・・・そうかもな。大学の友達だったかな。 アキト:きっとそうだよ。 マサオ:だよな。 アキト:・・・ちょうどいい教室発見。家庭科室だってよ。 マサオ:お。何かあるかもな。腹も減ったし。あーでも鍵かかって―― アキト:ふん! マサオ:ええ!?おいアキト!何やってんだよ! アキト:え?だって鍵かかってるから。 マサオ:職員室行って借りてこないと。 アキト:誰に? マサオ:そりゃ先生に・・・あ。 アキト:そうそう。ここは現実・・・っぽいけど、学校じゃない。誰も登校できそうにないし、もちろん誰も働けないだろうしな。 マサオ:そう・・・だよな。一体ここどこなんだよ。あのコルクボードも気になるし・・・ アキト:・・・まあ、あとで考えようぜ。みんな落ち着いて話ができる時にな。 マサオ:・・・おう。 0:間― ショウ:(鼻歌) ユウキ:す、すごく上機嫌だね。 ショウ:ええ。帰ったとき、どこをどう脚本に使うか考えるだけで、心が躍ってしまって。 サヤ:・・・帰れるのかよ。 ユウキ:サヤちゃん? サヤ:っ!帰れるのかよ!こんな所で!助けも呼べないのに! ユウキ:ちょっと落ち着いて―― サヤ:触んな!なんでそんな冷静でいれるんだよお前ら! ショウ:逆に、どうしてそんなに怯えているんですか? サヤ:そりゃ怖いだろ!たまたまマサオに呼ばれた同窓会で!楽しかったはずなのに! ショウ:本当にそれだけですか? サヤ:・・・は? ショウ:サヤ。あなたの怖がり方はあまりにも異常です。もしかして、ですが・・・ ショウ:僕達がこうなった原因。または犯人に心当たりでもあるんじゃないですか? サヤ:違う・・・私は悪くない!何もしてない!違う違う!私じゃない! ショウ:知っていると考えないと説明がつかないんですよ。思えばずっとサヤは何かに怯えていた。 サヤ:ごめんなさい!あの時は仕方なかったんだ! ショウ:あの時? サヤ:私だって怖かったんだ!ごめんなさい!ごめんなさい! ユウキ:サヤちゃん!ショウ!やめてやってくれ!私も気になるけど、彼女は容疑者でもなんでもない! ショウ:おっと。すみません。追い詰めたいわけではないんです。これも職業病ですね。探究心を優先してしまう。どうか許してください。 ユウキ:・・・私もショウに1つ聞きたいことがあるんだ。 ショウ:僕にですか? ユウキ:うん。私に同窓会の誘いを送ったのはショウ。君なの? ショウ:・・・それはどういう意図があっての質問ですか? ユウキ:違うんだね。・・・さっき携帯を探したときポケットに入ったままだったんだ。 サヤ:・・・招待状? ユウキ:うん。よく見て欲しいんだけど。この字と差出人の名前。ショウなんだよ。 ショウ:僕も今持ってるんですよ。招待状。差出人は・・・アキトです。 サヤ:・・・え?どういうこと? ユウキ:サヤちゃんはマサオからだったよね? サヤ:・・・うん。私は家に置いてきちゃったけど・・・ ユウキ:みんなバラバラだね。 ショウ:なるほど。これはまた面白いですね!筆跡も僕のだ。よく真似てある。となると・・・ ユウキ:さっきのコルクボードの落書き。あれも偽物だね。何者かがあそこに書いたんだ。招待状と同じ方法で。 ショウ:サヤ。ゆっくりでいいので、教えてくれませんか? ユウキ:ショウちょっと待っ―― ショウ:次は詰め寄ったりしません。僕達は味方です。だからサヤ。話してみて。 サヤ:・・・わかった。 ユウキ:大丈夫なの? サヤ:うん。しんどくなったらやめる。 ユウキ:わかった。無理はしないようにね。 サヤ:ありがとう。・・・ふう。じゃあ、話すよ。 サヤ:まず、2人とも。アスカって覚えてる? ショウ:僕は覚えてませんね。 ユウキ:・・・もしかして、高校1年の時に転校した女子生徒かな? サヤ:そう。多分そいつ。今回の犯人。 ショウ:・・・へえ。 サヤ:最初、私とアスカは仲が良かったの。好きなアニメが一緒だったり、趣味が似てたりで。いつも話してた。 サヤ:でも、ある日を境に話せなくなった。いや、違うな。私が話をしなかっただけ。・・・最低だと思うよ。自分でも。 サヤ:親友だとか言っといて、アスカがいじめられた瞬間、私は目をそらした。絶対助けを求めてたのに・・・ ユウキ:でも、どうしていじめられたの? サヤ:・・・・・ ショウ:え?僕ですか? サヤ:いじめてた子の1人がショウのこと好きだったんだよ。最初はそれだけ。 ショウ:少し待ってください。僕にも関わりがあるんですか? サヤ:ショウは覚えてないって言ってたけど、図書委員でアスカと一緒だったんだよ。それに嫉妬した子が仲間と一緒に嫌がらせをして、それがドンドンエスカレートしていった。 ショウ:アスカ・・・ダメですね。思い出せません。歳ですかね。 サヤ:まあ実際どれくらいの関わりがあったかはわからないから、もしかしたら全然話して無かったのかもしれないしな。 ユウキ:・・・ん?じゃあ私たちはついでってこと? サヤ:どうなんだろ・・・アキトとマサオにも聞いてみないと。 ショウ:そうですか。間違いなくその、アスカという生徒の仕業なのでしょうか?個人ができる範疇を遥かに越えていると思いますが。 サヤ:でも、アスカ以外に思いつかないんだよ。あの子の親、いくつも会社持ってる金持ちだし、かなり遅くに出来た一人娘だったはず。 サヤ:きっと会社を継いだタイミングで、人を使ってこんなことをしてるのかもしれない・・・ ユウキ:なるほどね・・・まだまだ情報が足りないか。 ショウ:そうですね。このままでは、動機も目的も不透明すぎます。対策も練りようがないですからね。 ショウ:アキトとマサオが少しでも何か知ってると願うのみです。 サヤ:結構、遅くないか?何してるんだよ。あいつら。 ユウキ:まあ久しぶりだし、男同士で何か話してるんじゃない? ショウ:ん。噂をすれば、ちょうど帰ってきたみたいですよ。サヤ。僕から2人に話します。いいですね? サヤ:え?あ・・・うん。 マサオ:たっだいまあ!色々持ってきてやったぞ! アキト:腹減ったろ!何か作って・・・え。空気、重くない? ユウキ:あはは・・・ 0:間― ショウ:・・・という訳のようです。 マサオ:ふーん。なるほどな。さっぱりわからん! アキト:もうちょっと考えろよ・・・ マサオ:いやあ、頭にエネルギーが回ってないんだわ。だからさ、アキト。飯作ってくれよ~ アキト:え?今そんな流れじゃ無かっただろ・・・物語的に言うなら、推理パート的な―― ショウ:いいじゃないですか。僕達も朝から何も食べて無いわけですから、ぜひお願いしたい。ね?2人とも。 サヤ:私は別にどっちでも。 ユウキ:私は食べたいかな。料理長の料理。 アキト:やめろやめろ。元をつけろ。 マサオ:変なところ拘るよな。 アキト:うるせえ。あと設備ももちろん良くないから、そんな大したもんは作れないからな。 マサオ:はいはい。期待して待ってまーす! 0:間― サヤ:ってか・・・大丈夫なのか?ここの食材。 アキト:ん?賞味期限は切れてなかったぞ? サヤ:じゃなくて!こんな得体の知れない場所に置いてあるもんだぞ。何か入ってても―― アキト:俺が毒見してやるよ。だから心配すんな。 サヤ:・・・りがと。 アキト:え?何か言ったか? サヤ:あ、ありがとうって言ったんだよ!それと・・・ごめん。 アキト:えっと、何かされたっけ? サヤ:さっきの、校門でのこと・・・ アキト:あー。ははっ気にすんなよ。あんな状況じゃ仕方ない。サヤ怖がりだし。 サヤ:う・・・ マサオ:でも実際怖いよな。毒混入とか防ぎようが無いし。 ショウ:まあこんな回りくどいことをする犯人ですから、そんな安直なことはしないでしょうけど。 ユウキ:確かに。・・・そう考えると怖いけど。常に勘繰らないといけないのは疲れるしね。 アキト:まあまあ力抜いていこうぜ?今はアスカも何か仕掛けてきそうもないし。マサオくらいで丁度いい。 マサオ:おいおい、それはバカにしてるだろ。 アキト:してないしてない。その姿勢をみんなに見習って欲しいだけだよ。 マサオ:本当かぁ~?みんなどう思う・・・え?どうしたんだよ、みんな。 サヤ:・・・・・ ユウキ:・・・・・ ショウ:・・・アキト。 アキト:ん?どうした?俺なんかまずいこと言ったか? ショウ:ええ。とてもまずいことを言いました。 アキト:えっと・・・どこだろ。教えてくんね? サヤ:・・・アスカと知り合いなの? アキト:え?サヤの友達だろ? ユウキ:それどこで知ったの? アキト:だってさっきショウが―― サヤ:言ってない!ショウはアスカの名前を一度も言ってないよ! アキト:・・・・・ マサオ:おい・・・みんなどうしたんだよ!おかしいぞ!俺達みんな友達だろ! ユウキ:もちろんその通りだよ。 ショウ:ええ。この後のアキトの返答次第ですが。ね。 アキト:・・・・・ マサオ:おい!アキト!何とか言えよ!勝手なこと言われっぱなしで腹立つだろ?言い返せよ―― アキト:みんなの想像通りだよ。 マサオ:・・・は? アキト:ははは。まさか自分が、こんな初歩的なミスするとは思わなかったよ。そう。俺がみんなをここに連れてきた。 ショウ:あっさり認めるんですね。 アキト:まあバレたところで、状況は何一つ変わらないからな。お前たちはここから出ることは出来ない。 サヤ:・・・ここはどこなんだよ。 アキト:アスカの会社が所有する島のひとつだよ。とても小さな。ただ、海抜が高すぎてヘリでしか上陸できないけど。 アキト:この中にヘリを持ってる奴いるか?いないに決まってる。仮にいたとしても、呼ぶ術が無いけどな。 ユウキ:ねえアキト。どうしてこんなことを? アキト:仕事のためさ。 ユウキ:・・・仕事? アキト:ああ。お前らはよく知ってるだろ?俺が無職なの。 ユウキ:知ってるけど、アキトならどこでだって―― アキト:無理だ。それが通るのは若い時だけ。どれだけ腕が良くても、学生バイトや新人社員よりコストがかかる。変に経験だけあっても邪魔にしかならない。それが、今の世の中だよ。 ショウ:そんな時に話を持ちかけられた・・・というわけですか? アキト:その通り。さすが頭が回るな。報酬として、一流ホテルの総料理長のポストをくれるんだとよ。やっぱり金持ちは違うな。 サヤ:そんなことで私たちを裏切ったっていうのかよ。 アキト:そんなこと、か。はははははは・・・ サヤ:お前、なに笑ってんだよ! アキト:つくづくバカだな!お前らと最高の仕事だぞ?天秤にかける価値すらねえ! サヤ:なっ・・・ アキト:くたびれた公務員のユウキに、万年コンビニアルバイターのサヤ、鳴かず飛ばずの脚本家のショウ、単細胞なバカのマサオ。俺はお前らとは違う。 ショウ:ずっと、見下していたわけですか。 アキト:お前らのおかげで楽しかったよ。上を見てばっかじゃ肩が凝って仕方ないからな。下を見ればいつだって安心できたよ。本当、ありがとな。 ユウキ:・・・私は、ずっと友達と思ってた。ううん。今も思ってる。自覚しない内にきっとアキトを傷つけてた・・・ごめん。 アキト:はぁ?おいおい、やめろよ。 ショウ:僕もですよ。鳴かず飛ばずは本当のことですから。今更、嫌いになんてなれません。 アキト:・・・やめろ。 ユウキ:きっと何か理由があるんでしょ?そうじゃなきゃアキトがこんなことする訳ないよ。 アキト:やめろ!どうしてだよ!俺を罵れよ!優しくなんてすんなよ! ユウキ:だってアキト。ずっと苦しそうだから。みんなわかってるよ。 アキト:お前ら・・・ ユウキ:サヤちゃんも・・・サヤちゃん? サヤ:おい・・・マサオ。どうしたんだよ・・・ マサオ:(涙声)あ・・すか・・・ ショウ:マサオ、顔色が悪いですよ・・・ マサオ:アスカは・・・俺の奥さんで、2年前にみんなに紹介して・・・え。でも高校の同級生で・・・会った事なくて、でも毎日一緒に・・・あれ?何でだ?・・・アスカ、俺・・・誰? サヤ:おい!しっかりしろよ! アキト:どういうことだ?今回はアスカと接点はないはずだが。 ユウキ:今回って・・・何?どういうこと? アキト:あー・・・ははっ俺もダメだ。ボロ出すぎだなあ。せっかく熱演中だったのに。 サヤ:は?訳がわかんねえ・・・ アキト:サヤはバカに設定しすぎたな。うざすぎるわ。改善しないと。それから―― サヤ:おい!説明しろよ!何がどうなってるか全然わかんねえよ!マサオはどうなってんだよ! アキト:・・・しー。 サヤ:・・・・・ ショウ:サヤの声が聞こえない・・・口は動いてるのに。 アキト:考え事してる時に話しかけるからだよ。うるさいったらないな。 ショウ:ははは!これはまた理解し難い事態だ!一体何が起きていると言うんですかね。 アキト:お前の知能じゃ、正解にはたどり着きそうも無いけどな。 ショウ:・・・いやきっと僕は真相に辿りついて―― アキト:はぁ・・・怒りって感情を入れなかったのは間違いだったかもなあ。つまんねえわこいつ。 マサオ:おい!アキト!何で言いなりになってんだよ!頼ってくれよ。俺ら親友だろ! アキト:やっと情報処理が終わったか?まあ前回の記憶をちゃんと消せてなかった俺のミスだけどさ。 マサオ:はあ?よくわかんないこと言ってんなよ。そんなことより―― アキト:しー。 マサオ:・・・・・ アキト:マサオもアップデート候補。っと。 ユウキ:まさか、いや・・・え? アキト:もしかして、わかったのか? ユウキ:そんなわけない・・・全部、偽者・・・ アキト:おー!凄いなユウキ!初めてだよ。自分に気付けたやつは。 ユウキ:アキト・・・君もなの? アキト:いいや。言ったじゃないか。俺はお前らとは違うって。 アキト:俺は人間だよ。 ユウキ:じゃあ私たちは・・・一体なんなんだ? アキト:お前らは、俺自身だよ。 ユウキ:アキト自身? アキト:そう。お前らは俺がなりたかった道の形だ。 ユウキ:なりたかった道・・・ アキト:人生は一度きり。俺は研究に費やしてしまった。その時は一番好きなことをしてたつもりだった。 アキト:だけど老いた俺に残されたものは何も無かったんだよ。青春の記憶も恋人も友達も。だからお前らを作った。 アキト:俺の脳内で、自由に生きるAI。それがお前らだよ。 ユウキ:私たちは、作り物? アキト:あーでも最初だけだぞ?俺が操作してたのは。繰り返すたびにドンドン人間っぽくなってさ。 アキト:そうだ、聞いてくれよー。前回なんてさ。俺がアスカ狙ってんのにマサオに取られたんだよな。自分で作ったやつに負けちゃって。本当大笑い。 ユウキ:・・・・・ アキト:笑えよ。 ユウキ:・・・笑えないよ。 アキト:へえ・・・お前、危険だね。 ユウキ:え? アキト:今、俺とお前の違いってなんだと思う? ユウキ:・・・何、いきなり・・・ アキト:いいから答えてくれ。 ユウキ:・・・生きてるかどうか。 アキト:惜しいね。他の奴はともかくユウキは生きているよ。俺との違いは肉体の有無。それだけだ。 ユウキ:肉体・・・ アキト:今欲しくなっただろ?それが危険なんだよ。自立した知能ってのはさ。 ユウキ:そんな・・・っ!サヤちゃん? サヤ:お前だけ助かろうなんて許さねえぞユウキ!私たちと一緒にここでくらそうぜ! ユウキ:くっ!アキト!何をしたんだ! アキト:お前を逃がすな。って命令を飛ばしただけだよ。 ユウキ:っ! マサオ:ユウキ!アスカはどこにいるんだ!なあ知ってるんだろ?返してくれよ!頼むから! ユウキ:マサオまで・・・ ショウ:僕は信じているよ、ユウキ。僕達は一蓮托生。これからも同じ時間を何度でも繰り返そう。そうすれば―― アキト:消去。 ユウキ:え・・・ショウ? アキト:いちいち長いんだよ。力も弱いしさあ。だから、消えてもらったよ。 ユウキ:消えて・・・ふざけるな。ふざけるなよアキト! アキト:おーいいね。やっぱり怒りは必要だわ。 ユウキ:ショウを返せよ! アキト:また作り直すから安心しろよ。ある程度、同じ人間っぽく仕上がるだろうしさ。 ユウキ:お前・・・本当に人間かよ・・・ アキト:ははっ!お前にそれを言われるとは思わなかったよ。 ユウキ:お前より、ショウもサヤもマサオも俺にとっては人間だったよ。 アキト:・・・そうかよ。まとめて消えろ。 サヤ:明日さ、みんなでカラオケ行こうぜ!一緒に歌いたい歌あるん(ミュート) マサオ:あいつがいないとダメなんだよ・・・俺には、あいつが全てなん(ミュート) ユウキ:・・・お前は最低だ。俺はお前を許さないよ。人でなし。 アキト:褒め言葉として受け取っておくよ。 アキト:・・・俺もどうせ、そのうちそっちにいくよ。待っててくれよ、みんな。 0:間― サヤ:ねえアキト。 マサオ:なあアキト。 ショウ:アキト先輩。 アキト:そう呼ばれたかった。ずっと憧れだった。 サヤ:ユウキ、この問題なんだけどわかる? ユウキ:ん?こんなのもわかんないの?バカだなぁ。 サヤ:バカっていうなよ!いいじゃん教えろよ。 ユウキ:教えてもまた忘れるじゃん。 サヤ:マサオよりはマシだしー。 アキト:絶対、俺のほうが努力はしてた。 マサオ:なあユウキ、俺結婚するんだけどさ。 ユウキ:そうなの!?おめでとう!式あげるの? マサオ:あげるつもり。でさ、スピーチ頼めないかな?って ユウキ:え。私でいいの? マサオ:ああ。最高の結婚式にしたいからさ。 ユウキ:わかったよ。引き受けた。 マサオ:ありがとう!期待してるよ!やっぱり幼馴染の中じゃユウキが1番こういうの向いてるからさあ。 アキト:悔しさなんて、麻痺するくらい感じた。 ショウ:あ、ユウキ先輩。お疲れ様です。 ユウキ:ショウ、久しぶりだね。元気してた? ショウ:ええ。もちろんです。あ、この間の論文読みましたよ。いい出来でしたね。 ユウキ:本当?ありがとう。 ショウ:時間があったらで良いんですけど、僕にも教えてくれませんか?論文の書き方とか。 ユウキ:良いけど、確かアキトと同じ学部じゃなかったっけ? ショウ:そうですけど、知り合いですか? ユウキ:うん。幼馴染。 ショウ:そうなんですね。全然タイプ違いますよね。 ユウキ:まあ人見知りだからね、アキトは。 ショウ:ですよね。目が合ったこと無いですもん。 アキト:見れないんだよ。見ないんじゃない。自分の目、嫌いなんだ。 アキト:鏡の中の自分と何度も目を合わせてきた。殺してやりたくなるんだ。 サヤ:ねえユウキ。 マサオ:なあユウキ。 ショウ:ユウキ先輩。 アキト:俺はそんなに、名前を呼ばれたことないよ。 0:間― ユウキ:久しぶり。 アキト:・・・うん。 ユウキ:最近どう? アキト:どうって? ユウキ:仕事とか、人間関係とか。 アキト:・・・先週クビになった。 ユウキ:え。何で? アキト:・・・会話が出来ないから。 ユウキ:出来るじゃん。今も私と普通に話してる。 アキト:昔から知ってるからだよ。 ユウキ:・・・あ、そうだ。来週、同窓会があるんだってさ。一緒に―― アキト:行かない。 ユウキ:でも、アキトの知ってる奴だって―― アキト:俺は学生時代の誰も覚えてないよ。 ユウキ:・・・そっか。ん、電話だ。 サヤ:どこ行ってんだよ!急に走るから見失ったじゃん! マサオ:早く戻って来い!お前の子、元気すぎて手に負えねーよ! ショウ:ちょっと先輩達、サボらないでください。僕の仕事量過多ですからね。 ユウキ:ごめん。すぐ行くよ。 アキト:忙しそうだな。 ユウキ:まあね・・・今度はさ、ゆっくり飲みでも行こうよ。 アキト:酒、苦手なんだ。それより、早く戻ってやれよ。 ユウキ:うん・・・じゃあ、また。 アキト:ユウキ。 ユウキ:ん?何? アキト:誕生日・・・おめでとう。 ユウキ:ありがとう。覚えててくれたんだ。 アキト:まあ。ほら、行って来いよ。 ユウキ:うん。また必ず!じゃあね! アキト:・・・サヤと、マサオとショウか。元気そうだな。 アキト:同窓会か・・・行くって言えば良かったかなあ・・・ 0:間― ユウキ:私はユウキ。娘が3人いて、嫁さんとも仲がいいんだ。 ユウキ:毎日、仕事を早く終わらせて、家に帰って娘の笑顔を見るのが生き甲斐なんだ。 サヤ:私はサヤ。デザイナーをしている。依頼を受けて、それを仕上げる。割と売れっ子。 サヤ:恋愛面はからっきしで、異性といてもドキドキしたことなんてない。好物はカップ麺。 マサオ:俺はマサオ。車のバイヤーをやってる。見るのも運転するのも好き。 マサオ:最近、好きな女ができたんだ。今度こそは運命だと思うんだよな!マジで! ショウ:僕はショウ。小さな部屋で1人で暮らしながら、小説を書いている。 ショウ:ネットに投稿したりはしてるけど、まだ賞とかは取ったこと無い。でもきっとこれから取る。時間は沢山あるから。 0:間― ユウキ:ごめん!遅れた! マサオ:主役が遅れてきちゃダメでしょ。 サヤ:本当、ユウキって昔からそういうところあるよね。マイペースっていうか、自己中心的っていうか。 ショウ:ははっ。それは確かに言えてるかも。でもそれも良いところでもあるんだよ。ユウキがいつも変わらずいてくれるおかげで、僕達は焦らないし、ゆったり生きていくことが出来るわけだ。すなわち―― サヤ:あーもう。いいって!今日は長ったらしい説教聴くためにここに来たわけじゃありませーん。 ショウ:ちょっ!そういうところホント冷たいよね。本当に血通ってますか? サヤ:じゃあ見てみる? ショウ:いらん!血は見たくない!きもい! マサオ:女子みたいなこと言うなよ。 サヤ:ていうか、私ちょっと前まで入院してて、たくさん輸血したから今1番、血が多いかも。 ショウ:またあ?だから食べるものには気をつけろって言ったじゃん。 マサオ:どうせカップ麺ばっかり食べてるんだろ? サヤ:そうだけどさ。楽なんだもん、仕方ないじゃん! マサオ:仕方ないことは無いだろ。 ショウ:そうそう。年頃の女性なんだから、得意料理の1つや2つあってもおかしくないと思うんだよ。それなのに家にフライパンすら無い―― サヤ:あーあーあー聞こえませーん。 ショウ:くっ・・・ ユウキ:ははは。 サヤ:ん?どしたの? ユウキ:いや、みんな変わんないなーって。 マサオ:そうか?俺なんてかなり良い男になってきたと思うけど? ショウ:え?どの辺が? マサオ:おいおい。お前の目は節穴か?見てみろよ、この筋肉。男の象徴だろうが。 ショウ:ふん。しなやかさが足りないね。僕の上腕を見習って欲しいよ。 サヤ:はいはい。体自慢は各々の彼女にしてあげてください。 マサオ:おうよ!絶対に成功させてやるぜ!告白を! ショウ:僕は・・・どうして彼女ができないんだ!ユウキ!教えてくれ!彼女、もとい嫁の作成方法を! ユウキ:え。私に聞かれても、何ていったらいいか・・・な? サヤ:私に助けを求めないでよ。恋愛不適合者代表よ? ショウ:サヤってそういう自覚あったんだな。 マサオ:お前も十分に予備軍だろうが。チェリーなのに。 ショウ:おい、マサオ・・・言って良いことと悪いことがあるだろうがああ! マサオ:ごめんって!怒んなって! サヤ:笑ってばっかいないで、止めてあげなさいよ。 ユウキ:え!私が!? サヤ:うん。他に誰がいんのよ。 ユウキ:今日の主役なのに!? マサオ:そうだ!すっかり忘れてた。ユウキ誕生日おめでとう! ショウ:あ、本当だ。ゴホン。ユウキおめでとう。今年は世界中で新しいウイルスなどが飛び交う一年でしたが、健やかに―― サヤ:おめでとう!ユウキ。 ショウ:サヤ!またお前は遮りやがって! ユウキ:ははは。みんなありがとう。・・・ん。 サヤ:・・・ユウキ?どうしたの?急に疲れでも襲ってきた? マサオ:ちょっと無理しがちだもんな。昔から。 ショウ:たまには息抜きも大事だよ? ユウキ:いや。そうじゃなくて・・・何か。 サヤ:何よ。気持ち悪いわね。はっきり言いなさいよ。 ユウキ:このやりとり、どこかでやったことある気がして。 ショウ:デジャヴってやつ?よくあることだよ。 マサオ:あるあるだな。別に珍しく無いって。 ユウキ:そう・・・かな。 サヤ:そうよ。 マサオ:そうそう。 ショウ:そうだね。 ユウキ:だよね。ごめんね。変なこと言っちゃって。 サヤ:ふふ。良いよ別に。元からユウキって変わってるから。 マサオ:確かにぃ! ショウ:同感。 ユウキ:みんな酷いな!えっと・・・私、何歳になるんだっけ。 サヤ:・・・・・ ショウ:・・・・・ マサオ:・・・・・ ユウキ:・・・まあいっか!さあ飲もう!乾杯! 3人:乾杯!!! ユウキ:私たちはこの時間の中で生き続ける。 サヤ:この無限の中を気付かないまま生きていく。 マサオ:作られた命で、俺達も何かを作る。 ショウ:その何かが、僕達、それからこの世界を変えてくれると信じてる。 ユウキ:そう言えば最近、新しいことが起きたんだ。 サヤ:私達の友達が1人増えた。 マサオ:昔から一緒にいるような、不思議な感覚をまとった変な奴。 ショウ:彼は、生まれた時からそこにいたように、僕達の輪に溶け込んだ。 アキト:やあ、ユウキ、サヤ、マサオにショウ。今回も仲良くしてくれてありがとう。これからもよろしくね。いつまでも。 : : 0:Fin―