台本概要

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タイトル 萬屋恵比寿
作者名 机の上の地球儀  (@tsukuenoueno)
ジャンル ホラー
演者人数 2人用台本(男1、不問1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 (よろずや えびす)

~15分程度/売り口上/和製ダークファンタジー

商用・非商用利用に問わず連絡不要。
告知画像・動画の作成もお好きにどうぞ。
(その際各画像・音源の著作権等にご注意・ご配慮ください)
ただし、有料チケット販売による公演の場合は、可能ならTwitterにご一報いただけますと嬉しいです。
台本の一部を朗読・練習する配信なども問題ございません。
兼ね役OK。1人全役演じ分けもご自由に。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
会社員 不問 46 悩める会社員。 ※会社員は前読みなしの方が楽しいかも……?
恵比寿 46 何でも売り買いするという怪しい萬屋。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
 :   :   :  会社員:……はぁあああ〜。どうしたものか……。はぁああああ〜。……って、んん? 恵比寿:ガラガラガラ〜、どっこいしょ、っとォ!よぉし、今日はこの辺でいいか。どこか分かんねぇけど何が良さそうだ。 会社員:に、荷車……? 恵比寿:(わざとらしい咳払い)さあさあ皆様、ちょいとお耳を拝借!道行く皆々様の人生のたった2分間、どうぞオイラに恵んでくだせぇ。 恵比寿:さぁて!お立ち合いの中にご存じの方もいらっしゃいやしょうが、俺ァ萬屋(よろずや)。萬屋恵比寿!楊枝の1本から果ては長屋に鐘撞堂(かねつきどう)まで!欲しいものはないかい?要らないものないかい?御用聞きなら、この恵比寿にお任せあれ!どんな物でも売り買いするよォ! 会社員:は、はあ。ってかここ今私しかいませんけど……。 恵比寿:おっ!どうだいそこのあんた!欲しいものはあるかい!この恵比寿にちぃと言ってみな! 会社員:いや、欲しいものは特に……。 恵比寿:何だい、欲しいものはないってかい。でも悩みくらいはあんだろ?目の下にでっけえ隈を飼ってやがるし。 会社員:し、失礼ですよ!何なんですか、あんた! 恵比寿:だぁかぁらぁ、俺ァ萬屋!萬屋恵比寿だって……ありゃ?何だぁ、お前人間か?なーんでこんな所に人間が。……って。 恵比寿:もしかしてここ俗界(ぞっかい)かァ!? 会社員:ぞ、ぞっかい? 恵比寿:いやあ、遠くに来ちまったと思ったらまさか俗界とは。まぁたあいつに怒られちまうなあ。 会社員:独り言が多いなあ。 恵比寿:まあ良いや。そんなことよりお前さんだお前さん。早速悩みを聞こうじゃないか。 会社員:悩みと言われても……。と言うか話すなんて言ってないんですけど。 恵比寿:あるだろ?悩みの1つや2つ。俺様がドカンと一発叶えてやるよ。 会社員:そんな花火打ち上げるみたいな感じで言われても。 恵比寿:だぁああもう洒落臭えなあ!良いからさっさと悩みを吐けよ! 恵比寿:お前、恋仲の相手がいるようには見えねえし……どうせ仕事場で何か揉め事でもあるんだろ。違ぇか? 会社員:どこまでも失礼な人ですね。……まあ図星ですけど。 恵比寿:ほぉらな。何だい。乱暴な兄(あに)さんか、意地の悪い姉(あね)さんでもいるのかい? 会社員:……そういうんじゃないです。 会社員:最近、大きな仕事を任されて。同期と2人で組んでやってるんですけど……それがもうめちゃくちゃ大変で。そんな中、私のミスを同期が庇ってくれて。しかもそれで同期だけ職場の評価が下がってしまって。もう私、同期に合わせる顔がなくて……。 恵比寿:なるほどなあ。つまりまとめると、その同期?ってやつの職場の評判を上げたい訳か。 会社員:はい……。 恵比寿:おお!元はお前さんのへまとは言え、お前はなんて良い奴なんだ!そういう心意気、俺ァ好きだぜ。そういうことならその悩み、この恵比寿様がひとっ走り、ちゃちゃっと解決してやらぁ。 会社員:で、できるんですか!? 恵比寿:おう。料金は成功報酬の後払いで結構だ。じゃあまた、明日ここに来てくんな。 会社員:ありがとうございます!本当にありがとうございます……! 恵比寿:良いってことよ。  :   :(次の日)  :  会社員:萬屋さぁ〜ん!萬屋さぁ〜ん! 恵比寿:お、来たか。悩める若人。 会社員:萬屋さん!すごいです!一体どうやったんですか!冷たかった職場の空気が一点、同期は一躍ヒーローですよ! 恵比寿:ひ、ひぃろぉ? 会社員:今日同期が大口の契約を結んできて!プロジェクトのミスなんて綺麗さっぱり帳消しです!同期の評価も鰻上りですよ! 恵比寿:ほーそうかそうか。 会社員:あ、でも私、萬屋さんに支払えるものが何も……。 恵比寿:お?そうか。……そうだなあ。あ。ちょいとお前さん、その足元に咲いてんの、その緑のやつ、それをむしって俺にくれねえか。 会社員:え? 恵比寿:良いから早く! 会社員:は、はい……!……これで良いですか?って、これ……、 恵比寿:ありがとさん。じゃあ、今回はこれを対価いただくわ。 会社員:四葉のクローバー……。幾ら幸運の象徴だからって、お代になるようなものでは……。 恵比寿:何だ、この草「くろばあ」っつーのかい?幸運の象徴だなんて益々縁起が良いじゃあないか。 会社員:で、でもクローバーですよ? 恵比寿:俺の住んでるところでは舶来品のちと珍しい草でな。十分なお代さ。 会社員:舶来品って……。萬屋さんってどこからいらしたんですか? 恵比寿:さあなあ。どっちから来たのか分かりゃあ、家に帰ってるしなあ。 会社員:えっ!?もしかして昨日から帰ってないんですか!? 恵比寿:おうよ。昨日はそこのでっけえ箱の下で寝たぜ。 会社員:でっけぇ箱って……自販機じゃないですか! 恵比寿:俗界ってのは夜でも明るいんだな。眠りてぇのに眩しくて参った参った。 会社員:自販機の下で寝たからですよ!……ったくもう。 恵比寿:ぬぁっはっはっはー!  :   :(1ヶ月後)  :  恵比寿:いやー、参った。まさかあれから一月(ひとつき)も家に帰れないとは。俺の方向音痴も筋金入りだね、こりゃ。 会社員:(遠くから凄い形相で走ってきて)い、いた……!萬屋さん……! 恵比寿:お?なんだ。久々だなあ、若人。どうだ?仕事は上手く行ってるかァ? 会社員:た、助けてください! 恵比寿:は?なんだァ、お前さん震えて……、 会社員:(爪を噛みながら)同期のやつ、あれからどんどん評価を上げて……あの後、ミスを取り返してプロジェクトも成功して!それも全部何から何まであいつのおかげだって!次の主任はあいつだって!俺(/私)はずっとヒラのままなのに! 恵比寿:でも、そいつぁお前さんのとちりを取り成してくれたんだろ?だったら恩人じゃねえか。恩人の出世は喜ばしいことだろ? 会社員:だって俺(/私)と一緒に作ったプロジェクトなんですよ!?なんで同期だけ……!あいつばっかり評価されて……どうして……! 恵比寿:そんなこと言われてもねえ。 会社員:……あ!そ、そうだ!萬屋(よろずや)さん!あなたどんな物でも売ってくれるんですよね……!? 恵比寿:え?いやまあ。支払いさえしっかりしてくれれば、そりゃあねえ。 会社員:な、なら!職場の評価を買えるなら、逆に不評を買うこともできますよね……!?  :(間)  :  恵比寿:お前さん……。 会社員:ね!?お願いしますよ!同期の評価を下げてください!……あ、あと逆に俺(/私)の評価は上げて!みんなが俺(/私)を見直して、あいつが絶望するように……! 恵比寿:……チッ。……はぁ。残念だよ。 会社員:ね!?できるでしょう萬屋さん!売ってくださいよ!ねえ!!! 恵比寿:いやあ、そりゃ無理だ。売れねぇよ。 会社員:何で……!お願いします!このままじゃ俺(/私)は……!俺(/私)の持ってる物でなら何でもお支払いしますから! 恵比寿:……何でも?……へぇ。 会社員:えぇ!お金はないけど、俺(/私)が持ってる物なら何でも売ります!この時計も奮発したいいやつだし……あ!この靴も!就職祝いに父に買ってもらった老舗の革物で……!ね!?どれでも何でもあげますから! 恵比寿:そうかい。何でも、ねぇ。 会社員:はい!だからどうか……!どうかあいつを蹴落として、俺(/私)を上に……! 恵比寿:(手を叩いて)相分かった。そこまで言うんならお売りしやしょう。 会社員:ほ、本当ですか……! 恵比寿:あぁ。この萬屋恵比寿に二言はありやせん。 会社員:あぁ……!ありがとうございます、ありがとうございます……! 恵比寿:そんじゃ、この時間も勿体無ねぇからな。今すぐお代をいただくぜ。 会社員:…………へ?  :(グシュッ、と音がして、会社員が下を見ると、なんと自身の左胸に恵比寿の手がのめり込んでいた)  :  会社員:…………ぁ、あぁあ……! 恵比寿:ッカー。生温かくて気持ち悪ぃな。お、これが心臓か?いいねェ。粗悪品にしては活きが良い。これならまあ、お代になるだろうさ。 会社員:カハッ……!ぁぐ……が、 恵比寿:あん?何だって? 会社員:うぅぁ……! 恵比寿:何て言ってるか分からねえよ。全く、今時の若者は情けないねえ。ちぃと心臓抉り抜こうとしているだけじゃねェか。……あぁいや。人間ってぇのは、心臓がねぇと死んじまうんだったか? 会社員:な、なんで……? 恵比寿:だって何でもくれるんだろう?だったらお前さんの望みと、お前さん自身の心の臓……魂となら物々交換しても良いかな、ってね。 会社員:そんな……ゃめ……、取り消します……!取引は無かったことに……! 恵比寿:おいおい。取引後の文句はお断りだぜ。……何だい?お代が高いってか?馬鹿言っちゃいけねえ。哀れなお前さんに教えてやんよ。 恵比寿:人にはな、それぞれ魂の重量ってもんがある。世の中に貢献する徳の高い奴は重く、狡賢く卑怯で矮小な輩は軽い。 恵比寿:お前さんの魂も、出会った時は重くて高くて、俺なんぞの手にはとてもじゃないが余る代物だったが……今じゃどうだい?こんなに軽くて穴ボコだらけだ。 恵比寿:恩人を売るお前さんの魂の価値なんざ、こんなもんってこと、さ!(心臓を抜き取る) 会社員:ぁが、が……(ガクッと息絶える)。 恵比寿:おや、息絶えちまったか。 恵比寿:……本当に残念だよ。地獄で後悔しな。あばよ、お客さん。  :   :   :   :.

 :   :   :  会社員:……はぁあああ〜。どうしたものか……。はぁああああ〜。……って、んん? 恵比寿:ガラガラガラ〜、どっこいしょ、っとォ!よぉし、今日はこの辺でいいか。どこか分かんねぇけど何が良さそうだ。 会社員:に、荷車……? 恵比寿:(わざとらしい咳払い)さあさあ皆様、ちょいとお耳を拝借!道行く皆々様の人生のたった2分間、どうぞオイラに恵んでくだせぇ。 恵比寿:さぁて!お立ち合いの中にご存じの方もいらっしゃいやしょうが、俺ァ萬屋(よろずや)。萬屋恵比寿!楊枝の1本から果ては長屋に鐘撞堂(かねつきどう)まで!欲しいものはないかい?要らないものないかい?御用聞きなら、この恵比寿にお任せあれ!どんな物でも売り買いするよォ! 会社員:は、はあ。ってかここ今私しかいませんけど……。 恵比寿:おっ!どうだいそこのあんた!欲しいものはあるかい!この恵比寿にちぃと言ってみな! 会社員:いや、欲しいものは特に……。 恵比寿:何だい、欲しいものはないってかい。でも悩みくらいはあんだろ?目の下にでっけえ隈を飼ってやがるし。 会社員:し、失礼ですよ!何なんですか、あんた! 恵比寿:だぁかぁらぁ、俺ァ萬屋!萬屋恵比寿だって……ありゃ?何だぁ、お前人間か?なーんでこんな所に人間が。……って。 恵比寿:もしかしてここ俗界(ぞっかい)かァ!? 会社員:ぞ、ぞっかい? 恵比寿:いやあ、遠くに来ちまったと思ったらまさか俗界とは。まぁたあいつに怒られちまうなあ。 会社員:独り言が多いなあ。 恵比寿:まあ良いや。そんなことよりお前さんだお前さん。早速悩みを聞こうじゃないか。 会社員:悩みと言われても……。と言うか話すなんて言ってないんですけど。 恵比寿:あるだろ?悩みの1つや2つ。俺様がドカンと一発叶えてやるよ。 会社員:そんな花火打ち上げるみたいな感じで言われても。 恵比寿:だぁああもう洒落臭えなあ!良いからさっさと悩みを吐けよ! 恵比寿:お前、恋仲の相手がいるようには見えねえし……どうせ仕事場で何か揉め事でもあるんだろ。違ぇか? 会社員:どこまでも失礼な人ですね。……まあ図星ですけど。 恵比寿:ほぉらな。何だい。乱暴な兄(あに)さんか、意地の悪い姉(あね)さんでもいるのかい? 会社員:……そういうんじゃないです。 会社員:最近、大きな仕事を任されて。同期と2人で組んでやってるんですけど……それがもうめちゃくちゃ大変で。そんな中、私のミスを同期が庇ってくれて。しかもそれで同期だけ職場の評価が下がってしまって。もう私、同期に合わせる顔がなくて……。 恵比寿:なるほどなあ。つまりまとめると、その同期?ってやつの職場の評判を上げたい訳か。 会社員:はい……。 恵比寿:おお!元はお前さんのへまとは言え、お前はなんて良い奴なんだ!そういう心意気、俺ァ好きだぜ。そういうことならその悩み、この恵比寿様がひとっ走り、ちゃちゃっと解決してやらぁ。 会社員:で、できるんですか!? 恵比寿:おう。料金は成功報酬の後払いで結構だ。じゃあまた、明日ここに来てくんな。 会社員:ありがとうございます!本当にありがとうございます……! 恵比寿:良いってことよ。  :   :(次の日)  :  会社員:萬屋さぁ〜ん!萬屋さぁ〜ん! 恵比寿:お、来たか。悩める若人。 会社員:萬屋さん!すごいです!一体どうやったんですか!冷たかった職場の空気が一点、同期は一躍ヒーローですよ! 恵比寿:ひ、ひぃろぉ? 会社員:今日同期が大口の契約を結んできて!プロジェクトのミスなんて綺麗さっぱり帳消しです!同期の評価も鰻上りですよ! 恵比寿:ほーそうかそうか。 会社員:あ、でも私、萬屋さんに支払えるものが何も……。 恵比寿:お?そうか。……そうだなあ。あ。ちょいとお前さん、その足元に咲いてんの、その緑のやつ、それをむしって俺にくれねえか。 会社員:え? 恵比寿:良いから早く! 会社員:は、はい……!……これで良いですか?って、これ……、 恵比寿:ありがとさん。じゃあ、今回はこれを対価いただくわ。 会社員:四葉のクローバー……。幾ら幸運の象徴だからって、お代になるようなものでは……。 恵比寿:何だ、この草「くろばあ」っつーのかい?幸運の象徴だなんて益々縁起が良いじゃあないか。 会社員:で、でもクローバーですよ? 恵比寿:俺の住んでるところでは舶来品のちと珍しい草でな。十分なお代さ。 会社員:舶来品って……。萬屋さんってどこからいらしたんですか? 恵比寿:さあなあ。どっちから来たのか分かりゃあ、家に帰ってるしなあ。 会社員:えっ!?もしかして昨日から帰ってないんですか!? 恵比寿:おうよ。昨日はそこのでっけえ箱の下で寝たぜ。 会社員:でっけぇ箱って……自販機じゃないですか! 恵比寿:俗界ってのは夜でも明るいんだな。眠りてぇのに眩しくて参った参った。 会社員:自販機の下で寝たからですよ!……ったくもう。 恵比寿:ぬぁっはっはっはー!  :   :(1ヶ月後)  :  恵比寿:いやー、参った。まさかあれから一月(ひとつき)も家に帰れないとは。俺の方向音痴も筋金入りだね、こりゃ。 会社員:(遠くから凄い形相で走ってきて)い、いた……!萬屋さん……! 恵比寿:お?なんだ。久々だなあ、若人。どうだ?仕事は上手く行ってるかァ? 会社員:た、助けてください! 恵比寿:は?なんだァ、お前さん震えて……、 会社員:(爪を噛みながら)同期のやつ、あれからどんどん評価を上げて……あの後、ミスを取り返してプロジェクトも成功して!それも全部何から何まであいつのおかげだって!次の主任はあいつだって!俺(/私)はずっとヒラのままなのに! 恵比寿:でも、そいつぁお前さんのとちりを取り成してくれたんだろ?だったら恩人じゃねえか。恩人の出世は喜ばしいことだろ? 会社員:だって俺(/私)と一緒に作ったプロジェクトなんですよ!?なんで同期だけ……!あいつばっかり評価されて……どうして……! 恵比寿:そんなこと言われてもねえ。 会社員:……あ!そ、そうだ!萬屋(よろずや)さん!あなたどんな物でも売ってくれるんですよね……!? 恵比寿:え?いやまあ。支払いさえしっかりしてくれれば、そりゃあねえ。 会社員:な、なら!職場の評価を買えるなら、逆に不評を買うこともできますよね……!?  :(間)  :  恵比寿:お前さん……。 会社員:ね!?お願いしますよ!同期の評価を下げてください!……あ、あと逆に俺(/私)の評価は上げて!みんなが俺(/私)を見直して、あいつが絶望するように……! 恵比寿:……チッ。……はぁ。残念だよ。 会社員:ね!?できるでしょう萬屋さん!売ってくださいよ!ねえ!!! 恵比寿:いやあ、そりゃ無理だ。売れねぇよ。 会社員:何で……!お願いします!このままじゃ俺(/私)は……!俺(/私)の持ってる物でなら何でもお支払いしますから! 恵比寿:……何でも?……へぇ。 会社員:えぇ!お金はないけど、俺(/私)が持ってる物なら何でも売ります!この時計も奮発したいいやつだし……あ!この靴も!就職祝いに父に買ってもらった老舗の革物で……!ね!?どれでも何でもあげますから! 恵比寿:そうかい。何でも、ねぇ。 会社員:はい!だからどうか……!どうかあいつを蹴落として、俺(/私)を上に……! 恵比寿:(手を叩いて)相分かった。そこまで言うんならお売りしやしょう。 会社員:ほ、本当ですか……! 恵比寿:あぁ。この萬屋恵比寿に二言はありやせん。 会社員:あぁ……!ありがとうございます、ありがとうございます……! 恵比寿:そんじゃ、この時間も勿体無ねぇからな。今すぐお代をいただくぜ。 会社員:…………へ?  :(グシュッ、と音がして、会社員が下を見ると、なんと自身の左胸に恵比寿の手がのめり込んでいた)  :  会社員:…………ぁ、あぁあ……! 恵比寿:ッカー。生温かくて気持ち悪ぃな。お、これが心臓か?いいねェ。粗悪品にしては活きが良い。これならまあ、お代になるだろうさ。 会社員:カハッ……!ぁぐ……が、 恵比寿:あん?何だって? 会社員:うぅぁ……! 恵比寿:何て言ってるか分からねえよ。全く、今時の若者は情けないねえ。ちぃと心臓抉り抜こうとしているだけじゃねェか。……あぁいや。人間ってぇのは、心臓がねぇと死んじまうんだったか? 会社員:な、なんで……? 恵比寿:だって何でもくれるんだろう?だったらお前さんの望みと、お前さん自身の心の臓……魂となら物々交換しても良いかな、ってね。 会社員:そんな……ゃめ……、取り消します……!取引は無かったことに……! 恵比寿:おいおい。取引後の文句はお断りだぜ。……何だい?お代が高いってか?馬鹿言っちゃいけねえ。哀れなお前さんに教えてやんよ。 恵比寿:人にはな、それぞれ魂の重量ってもんがある。世の中に貢献する徳の高い奴は重く、狡賢く卑怯で矮小な輩は軽い。 恵比寿:お前さんの魂も、出会った時は重くて高くて、俺なんぞの手にはとてもじゃないが余る代物だったが……今じゃどうだい?こんなに軽くて穴ボコだらけだ。 恵比寿:恩人を売るお前さんの魂の価値なんざ、こんなもんってこと、さ!(心臓を抜き取る) 会社員:ぁが、が……(ガクッと息絶える)。 恵比寿:おや、息絶えちまったか。 恵比寿:……本当に残念だよ。地獄で後悔しな。あばよ、お客さん。  :   :   :   :.