台本概要

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タイトル 返り梅雨
作者名 VAL  (@bakemonohouse)
ジャンル その他
演者人数 4人用台本(男1、女1、不問2)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 治安の悪いバーでの二幕目。
特に制限はありません。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ファッズ 不問 64 ナイトバー「逆巻く雨」のマスター。変装を得意とする。今回その見せ場は無い。
シガレット 不問 44 ヘビースモーカーのトリガージャンキー。
グラム 72 大人の色気の塊。ファッズとは旧知の仲。
クロード 61 マフィアファミリーのボス。グラムと行動を共にする事が多い。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:酒撒くシリーズの2話目です!従来通り何でも有でございます。 0:(登場人物紹介) : ファッズ:『逆巻く雨』の店主。みんなのいじられお兄さん。様々な人間に化けることが出来る。無類の酒好きで普段は温厚である。 シガレット:口と頭が悪い女狙撃手。銃器のほかにもナイフや刀などの扱いにも長けている。呼吸には酸素と同量のニコチンが必要らしい。 グラム:妖艶な雰囲気を漂わせる神出鬼没、年齢不詳の美女。シガレットの師匠であり、ファッズの戦友の過去を持つ。現在は隠居中だと言うが・・・ クロード:殺し屋。グラムの古くからの友人。深くは語るまいよ。 : 0:本編― : ファッズ:揺蕩う波の音に耳澄ませ、恐る恐る息を潜める。その様、まさに獣のごとく。魔性の黒い影。 シガレット:心惑わせ、貶める。水面に映る満ちた月。飾り立てた夢など、壊れた幻想に相違無し。 グラム:愛を騙る愚者どもよ。若さは貴様の武器にあらず。言の葉に乗せりゃ、死は隣人。裁きの時間は刹那にて。 クロード:真実はその胸の中に。さあ手を掲げよう。勝利の美酒は我等の手の中に。・・・ということで今回の主人公はこの俺だ。 ファッズ:おおおおい!主人公は僕だから! クロード:お前は前作やっただろうが!今回は渡せってんだ! シガレット:いやまず、前作の主人公は私だろうが! グラム:あらあ・・・また残念なことを。 ファッズ:まあシガレットだし。 クロード:同感。 シガレット:おい!師匠とファッズはともかくお前は面識そんなに無いだろうが! クロード:やかましい小娘! グラム:はいはい。これから嫌でも絡むから安心なさいな。そろそろ始めるよ。こんなんじゃいつまで経っても―― クロード:よしじゃあ始めるか! ファッズ:それでは、本番・・・ 全員:スタート!!!(みんな我先に) : : ファッズ:ふぅ・・・ グラム:どうしたの? ファッズ:いや、どうしたっていうか・・・なんか疲れたというか。 グラム:まあどうせ出勤前にはしゃぎすぎたんでしょ?変わらないわね。 ファッズ:んー僕も歳かな。 グラム:やめてよ。私まで歳を取った気分になっちゃうわ。 ファッズ:お前はまだ若・・・ グラム:(微笑み) ファッズ:おおおおおお!おま、おまままままま―― グラム:ちょっと。落ち着きなさいよ。 ファッズ:いっ、いつからいた!? グラム:ん~8回目のため息あたりだったかな。 ファッズ:となると・・・いや!数えてる時点で最初からいるだろ!? グラム:あら。バレちゃった?ずっと見てたわよ。寂しそうな背中。 ファッズ:おかしいな。お前みたいな美人に気付かないなんて。 グラム:あんた、そんなこというタイプだったっけ?もしかして、アルコール抜けてないの? ファッズ:いやいや僕だってちゃんと褒めるときは褒めるって。あとね。アルコールは常に摂取してる。故に!抜けることなんてありえないね。 グラム:あー・・・アル中に関しては十分に悪化してるみたいね。 ファッズ:放っておいてくれ。いつ死んでしまうかも分からない稼業なんだ。好きなことをセーブしたくはないね。 グラム:先に病気か何かで死にそうだけどね。 ファッズ:余計なお世話だ。・・・なあ。 グラム:ん? ファッズ:まさか、ただの世間話をしにここに来たわけじゃないだろ? グラム:私だってただ話したい時はあるわよ? ファッズ:それが今だって?冗談きついよ。15年ぶりに会いに来て、ただそれだけ。なんて。この業界じゃ通用しないでしょ。 グラム:ふふ。そんな怖い顔しないでよ。別にあんたに不利益な話を持ってきたわけじゃないわ。 ファッズ:もったいぶるなよ。 グラム:はあ。わかったわよ。じゃあ単刀直入に言うわ。・・・あの子、私たちにくれない? ファッズ:あの子って、誰だよ。 グラム:私の可愛い教え子よ。 ファッズ:・・・シガレットか?おいおいどう言うつもりだ。お前があいつを見限ったんだろ?今更、そんな話が通るかよ。それにあいつはモノじゃねえ。 グラム:当時には当時なりの理由があるのよ。わかるでしょ? ファッズ:シガレットは俺の家族だ。・・・帰ってくれ。 グラム:へえ・・・そう。まあいいわ。まさかここまでナマクラになってるとは思わなかった。次会うときは容赦できないわよ。 ファッズ:あいつは守ってもらわなくたって十分強いさ。 グラム:そ。まあ楽しみにしてるわ。またね。 0:間― ファッズ:・・・帰ったぞ。 シガレット:・・・おう。 ファッズ:いつまで隠れてるんだ? シガレット:・・・・・ ファッズ:グラム気付いてたぞ。多分な。 シガレット:だろうな。師匠はすっげえ人だからよ。ファッズさんの渾身の演技も形無しだなー。 ファッズ:お前がバレバレの隠れ方しなかったらバレてないっての。 シガレット:かもな。 ファッズ:・・・さっきはああ言ったけど、お前が行きたいなら―― シガレット:行かねーよ。家族なんだろ? ファッズ:ああ。そうだ。お前もマッシュもドッグもみんな俺の大事な家族だ。 シガレット:ははっ。そんなくさいセリフ。よく平気で言えるよな。 ファッズ:本心だからね。恥ずかしいとは思わないよ。 シガレット:・・・お前らしいな。 ファッズ:お前も思ってることは口に出したほうが楽だぞ。 シガレット:は?私はいつだって―― ファッズ:馬鹿。本当に言いたいことは隠すだろ。 シガレット:そんなこと―― ファッズ:あるね。何回見てきたか。・・・グラムにも沢山伝えたいことあるんだろ? シガレット:師匠に・・・か。 ファッズ:・・・行ってこい。居そうな場所なら教えてやる。 シガレット:え? ファッズ:顔に書いてあるんだよ。未練タラタラですってな。 シガレット:・・・戻ってこないかもしれねえぞ? ファッズ:それならそれで仕方ない。でも帰ってきたら酒1杯奢ってやらんこともない。 シガレット:安いな!しかも確定じゃないのかよ。マッシュが聞いたら卒倒するぜ? ファッズ:ははっそりゃ違いない。・・・じゃあな。 シガレット:ああ。酒、用意しとけよな。高いやつ開けさせてやる。 ファッズ:あー・・・帰ってこなくてもいいかも・・・ シガレット:あぁ? ファッズ:なんでもございません!! 0:間― グラム:ただいま クロード:おかえり。どうだったんだ? グラム:え?何がよ。 クロード:ふっ。お前のことなら何だって知ってる。今日だって、懐かしい奴のところに行ってた事とかな。 グラム:あら、熱烈なファンもいたものね。 クロード:ファンか。そいつは少し違うな。 クロード:確かに俺は、お前のことを可愛がってはいるが・・・ クロード:お前は俺のだ。他の奴に尻尾なんて振らせねえ。 グラム:ふふ。言うわね。否定はしないでおくわ。強い男でいる内はね。 クロード:そうか。なら一生俺のもんだな。 グラム:自信家は嫌いじゃないわ。 クロード:それで。どうだったんだ?元気にしてたかあいつ。 グラム:ファッズのこと? クロード:あいつの店に行ってたんだろ? グラム:ええ。そうね。元気そうだったわよ。 クロード:ほう。ファッズ自身に会いに行ったわけじゃ無さそうだな。 グラム:そういうこと。 クロード:あいつのバー・・・なんだっけ。何とかの雨みたいな。 グラム:逆巻く雨よ。 クロード:あーそれだそれ。最近よく聞くようになった。 グラム:その割には忘れてたけどね。 クロード:覚えにくい名前付けるからだ。 グラム:そう?おしゃれで良いと思うけど。 クロード:んで、お前はそのおしゃれなバーに何しに行ってたんだ?同窓会か? グラム:まあ・・・よく似たものかしらね。 クロード:釣れねえな。呼ばれてねえぞ。 グラム:昔の教え子に会いに行ってたのよ。 クロード:ああ。シガレットだったか?まだ若い女だったよな。 グラム:そうよ。今、私たちに必要な子。 クロード:俺達に必要だと?何でまた。お前が途中で捨てたってことは、そこまで良い腕でも無いんだろ? グラム:いいえ、あの子は優秀なスナイパーよ。長物の扱いなら私より上ね。 クロード:へえ・・・そんなやつを何故捨てた?お前なら成長した姿くらい想像できただろ。 グラム:あの時は――いいえ。嘘はやめておくわ。 クロード:賢明な判断だな。 グラム:あの子は私の恩師の娘なのよ。あの人が遺したただ1つの形見のようなものね。 グラム:すごく迷ったわ。私たちと同じ道を歩ませていいのかって。あの人が生きてたらどうするだろうって。 グラム:ずっと考えていたの。だから一度だけ仕事を体験させることにした。 クロード:嫌がったのか? グラム:・・・3人よ。 クロード:3人? グラム:初日に殺したのよ。 クロード:はあ!?どうやってだよ。 グラム:敵を遠くから見させるためにスナイパーライフルを渡してたの。弾を抜いてなかったのも悪かったんだけど―― クロード:ちょっと待て!普段からスナイパーの使い方教えてたのか? グラム:いいえ、一度も。私が使ったところは見たことあるだろうけど。それだけね。 グラム:ハンドガンや近接武器はあの人の娘ってこともあるし、護身術も兼ねて教えていたけれど。 クロード:ははっ。化け物かよ・・・ グラム:私も怖くなったわよ。敵とはいえ人よ?迷い無く引き金を引いて、殺したあとも目が輝いていたわ。 クロード:生まれながらの殺し稼業ってことか。・・・そいつの親の名は? グラム:あなたも知ってる名よ? クロード:もったいぶるなよ。 グラム:シスさんよ。 クロード:なぁ!?シスさんて言ったか!? グラム:ええ。言ったわよ。 クロード:あの人、娘なんかいたのかよ。ってかいつ死んだんだ?長く行方が知れないとは聞いてたけどよ。 グラム:10年ほど前よ。病気でね。その時にあの子を紹介されたの。私が育てたのはそれから3年ほど。 クロード:そうか・・・色々聞きたい話とかあったんだけどな。残念だ・・・ん? グラム:どうしたの? クロード:忘れ形見が来たみたいだぞ。 シガレット:お久しぶりです。師匠。 グラム:ファッズに聞いたの?ここにいること。 シガレット:はい。後ろにいるのは・・・ クロード:ははっ。気配は消したつもりだが。 シガレット:・・・ クロード:そんな身構えるなよ。俺はクロードだ。名前くらいは聞いたことあるか? シガレット:いや、ない・・・です。 クロード:はははははは!あー似てるわ。あの人も全然人の名前知らなかった。 クロード:グラム。 グラム:ん? クロード:俺は出かけてくる。後はお前に任せるよ。 グラム:あら。いいの?私の好きにしちゃっても。 クロード:ああ。信頼してるからな。それに、俺も懐かしい奴に会いたくなった。 グラム:ふふ・・・そう。やりすぎないでね。 シガレット:師匠。 グラム:わかってるわ。こっちへいらっしゃい。 シガレット:・・・はい。 0:長めの間― ファッズ:・・・今日はやけに古い顔を見る日だ。・・・変わらないな。 クロード:ああ。そっちこそ。 ファッズ:お前もグラムと同じ口か? クロード:いや?俺はお前に会いに来ただけだ。 ファッズ:へえ。何の用事で? クロード:シスさんの娘のことで。 ファッズ:・・・グラムに聞いたか。 クロード:やっぱりお前も知ってたか。知らなかったのは俺だけかよ。 ファッズ:俺だって知ったのはここ数年のことだ。それにわざわざ伝える意味が無いだろう。 クロード:まあ確かにそうだな。・・・俺らは味方じゃ無いわけだし。 ファッズ:敵でもないけどな。 クロード:お前らはそう思ってても、裏稼業をしてるやつからすりゃ、目の上のたんこぶだ。 クロード:どこの派閥にも属さない腕利きってのは、脅威でしかないからな。 ファッズ:お前もそうだと? クロード:うちのファミリーはお前らより強い。損害は出るだろうが、勝てないわけじゃねえ。 ファッズ:じゃあ放っておけよ。 クロード:あくまでも俺らは。って話だ。その他のファミリーは知らねえよ。 ファッズ:結局、何が言いたい。 クロード:シガレットを俺らに預けろ。 ファッズ:何故だ。お前にとって利益なんかないだろ。 クロード:優秀なスナイパーは何人いても困らない。・・・って言うのは建前だ。グラムの恩師の娘だから。ただそれだけだ。 クロード:確かにシスさんは俺の憧れだけどな。 ファッズ:あいつは一度捨てただろう。置手紙と一緒にこの店の前にな。 クロード:7年前だっけか?大規模な抗争があった頃だ。 ファッズ:抗争? クロード:お前が裏に戻ってくる前だな。 ファッズ:じゃあ・・・ クロード:部外者に戦況を伝える奴なんざ、この業界じゃ死んで当たり前だ。ましてや、表で生きてたお前に、説明なんて出来るわけがねえ。 ファッズ:・・・・・ クロード:っていう話を今してるだろうよ。 0:間― グラム:あなたを巻き込みたくなかったのよ。 シガレット:・・・はい。 グラム:だから―― シガレット:わかってました。 グラム:・・・え? シガレット:師匠が私を守ろうとして、ファッズに預けたこと。今も私のために、自分のファミリーに来いと言ってくれてることも。 グラム:じゃあ何で隠れてたの? シガレット:やっぱり気付いてましたか。ファッズの渾身の演技だったのに。 グラム:・・・昔から知ってると、少しの癖とかが目に付くものよ。それよりもどうして? シガレット:・・・単純に不安だったんです。わかってはいても、不要な人間だったんじゃないか。本当は嫌われてたんじゃないかとか。 グラム:そんなことあるわけないじゃない! シガレット:はい・・・今日話してみて、改めて思いました。師匠は、私の好きな師匠のままだった。 グラム:っ・・・じゃあファミリーに―― シガレット:それはできません。 グラム:・・・どうしてなの? シガレット:私には家族が居ます。 グラム:家族? シガレット:はい。ファッズ、マッシュにドッグ。かけがえのない家族です。私は・・・もう。家族と離れ離れは嫌なんです! グラム:シガレット・・・ シガレット:師匠。いいえ、グラ姉。ありがとう!私は幸せだよ! グラム:はあ・・・私の負けね。いいわ。あのアル中に伝えておいて。いつか壁のインテリア増やしてあげるって。 シガレット:ふふ。了解!・・・失礼します! グラム:・・・またね。 0:間― クロード:ほら、噂をすれば帰って来たんじゃないか? ファッズ:え。どうして・・・ クロード:さあな。本人に聞けよ。じゃ、俺は帰るぜ。 ファッズ:ああ。次に会ったときは―― クロード:客だ。客としてくる。 ファッズ:・・・はは。待ってるよ。 シガレット:ただいま。ん?誰かいたのか? ファッズ:んーちょっと前まで友達がね。 シガレット:ふーん。 ファッズ:なあシガレット。本当に良かったのか? シガレット:何が? ファッズ:グラムのところじゃなくて。 シガレット:そんなことより、返事聞いてないんだけど。 ファッズ:返事? シガレット:ただいまの返事。 ファッズ:ああ。・・・おかえり! シガレット:はは。よおおおし!高い酒開けさせろおおお! ファッズ:ちょ、ちょっと待て!まず見せろ!シガレットオオオオオ!! 0:間― クロード:落ち込んでるかと思ったが、そうでもないみたいだな。 グラム:ふふ。あの子あんな風に笑えるんだ。って思い返しててね。 クロード:その分沢山泣いたんだろうさ。泣いた分は取り替えさないとな。 グラム:・・・そうね。 クロード:来いよ。 グラム:え? クロード:俺の前なら泣いたって構わねえだろ? グラム:ふふ・・・好きよ。そういうところも。 クロード:そいつはどうも。 グラム:・・・家族か。羨ましいわね。 クロード:お前とも家族だよ。シガレットは。もちろん俺にも大事な家族だ。 グラム:ふふ。そうね。 0:間― シガレット:あ、そう言えば。 ファッズ:ん? シガレット:師匠が壁のインテリアを増やしに行くって言ってたぞ。 ファッズ:もしもし!!!鍵屋さんですか!?今すぐ店の鍵を10個増やしてくださいいいい!!! : : : 0:Fin-

0:酒撒くシリーズの2話目です!従来通り何でも有でございます。 0:(登場人物紹介) : ファッズ:『逆巻く雨』の店主。みんなのいじられお兄さん。様々な人間に化けることが出来る。無類の酒好きで普段は温厚である。 シガレット:口と頭が悪い女狙撃手。銃器のほかにもナイフや刀などの扱いにも長けている。呼吸には酸素と同量のニコチンが必要らしい。 グラム:妖艶な雰囲気を漂わせる神出鬼没、年齢不詳の美女。シガレットの師匠であり、ファッズの戦友の過去を持つ。現在は隠居中だと言うが・・・ クロード:殺し屋。グラムの古くからの友人。深くは語るまいよ。 : 0:本編― : ファッズ:揺蕩う波の音に耳澄ませ、恐る恐る息を潜める。その様、まさに獣のごとく。魔性の黒い影。 シガレット:心惑わせ、貶める。水面に映る満ちた月。飾り立てた夢など、壊れた幻想に相違無し。 グラム:愛を騙る愚者どもよ。若さは貴様の武器にあらず。言の葉に乗せりゃ、死は隣人。裁きの時間は刹那にて。 クロード:真実はその胸の中に。さあ手を掲げよう。勝利の美酒は我等の手の中に。・・・ということで今回の主人公はこの俺だ。 ファッズ:おおおおい!主人公は僕だから! クロード:お前は前作やっただろうが!今回は渡せってんだ! シガレット:いやまず、前作の主人公は私だろうが! グラム:あらあ・・・また残念なことを。 ファッズ:まあシガレットだし。 クロード:同感。 シガレット:おい!師匠とファッズはともかくお前は面識そんなに無いだろうが! クロード:やかましい小娘! グラム:はいはい。これから嫌でも絡むから安心なさいな。そろそろ始めるよ。こんなんじゃいつまで経っても―― クロード:よしじゃあ始めるか! ファッズ:それでは、本番・・・ 全員:スタート!!!(みんな我先に) : : ファッズ:ふぅ・・・ グラム:どうしたの? ファッズ:いや、どうしたっていうか・・・なんか疲れたというか。 グラム:まあどうせ出勤前にはしゃぎすぎたんでしょ?変わらないわね。 ファッズ:んー僕も歳かな。 グラム:やめてよ。私まで歳を取った気分になっちゃうわ。 ファッズ:お前はまだ若・・・ グラム:(微笑み) ファッズ:おおおおおお!おま、おまままままま―― グラム:ちょっと。落ち着きなさいよ。 ファッズ:いっ、いつからいた!? グラム:ん~8回目のため息あたりだったかな。 ファッズ:となると・・・いや!数えてる時点で最初からいるだろ!? グラム:あら。バレちゃった?ずっと見てたわよ。寂しそうな背中。 ファッズ:おかしいな。お前みたいな美人に気付かないなんて。 グラム:あんた、そんなこというタイプだったっけ?もしかして、アルコール抜けてないの? ファッズ:いやいや僕だってちゃんと褒めるときは褒めるって。あとね。アルコールは常に摂取してる。故に!抜けることなんてありえないね。 グラム:あー・・・アル中に関しては十分に悪化してるみたいね。 ファッズ:放っておいてくれ。いつ死んでしまうかも分からない稼業なんだ。好きなことをセーブしたくはないね。 グラム:先に病気か何かで死にそうだけどね。 ファッズ:余計なお世話だ。・・・なあ。 グラム:ん? ファッズ:まさか、ただの世間話をしにここに来たわけじゃないだろ? グラム:私だってただ話したい時はあるわよ? ファッズ:それが今だって?冗談きついよ。15年ぶりに会いに来て、ただそれだけ。なんて。この業界じゃ通用しないでしょ。 グラム:ふふ。そんな怖い顔しないでよ。別にあんたに不利益な話を持ってきたわけじゃないわ。 ファッズ:もったいぶるなよ。 グラム:はあ。わかったわよ。じゃあ単刀直入に言うわ。・・・あの子、私たちにくれない? ファッズ:あの子って、誰だよ。 グラム:私の可愛い教え子よ。 ファッズ:・・・シガレットか?おいおいどう言うつもりだ。お前があいつを見限ったんだろ?今更、そんな話が通るかよ。それにあいつはモノじゃねえ。 グラム:当時には当時なりの理由があるのよ。わかるでしょ? ファッズ:シガレットは俺の家族だ。・・・帰ってくれ。 グラム:へえ・・・そう。まあいいわ。まさかここまでナマクラになってるとは思わなかった。次会うときは容赦できないわよ。 ファッズ:あいつは守ってもらわなくたって十分強いさ。 グラム:そ。まあ楽しみにしてるわ。またね。 0:間― ファッズ:・・・帰ったぞ。 シガレット:・・・おう。 ファッズ:いつまで隠れてるんだ? シガレット:・・・・・ ファッズ:グラム気付いてたぞ。多分な。 シガレット:だろうな。師匠はすっげえ人だからよ。ファッズさんの渾身の演技も形無しだなー。 ファッズ:お前がバレバレの隠れ方しなかったらバレてないっての。 シガレット:かもな。 ファッズ:・・・さっきはああ言ったけど、お前が行きたいなら―― シガレット:行かねーよ。家族なんだろ? ファッズ:ああ。そうだ。お前もマッシュもドッグもみんな俺の大事な家族だ。 シガレット:ははっ。そんなくさいセリフ。よく平気で言えるよな。 ファッズ:本心だからね。恥ずかしいとは思わないよ。 シガレット:・・・お前らしいな。 ファッズ:お前も思ってることは口に出したほうが楽だぞ。 シガレット:は?私はいつだって―― ファッズ:馬鹿。本当に言いたいことは隠すだろ。 シガレット:そんなこと―― ファッズ:あるね。何回見てきたか。・・・グラムにも沢山伝えたいことあるんだろ? シガレット:師匠に・・・か。 ファッズ:・・・行ってこい。居そうな場所なら教えてやる。 シガレット:え? ファッズ:顔に書いてあるんだよ。未練タラタラですってな。 シガレット:・・・戻ってこないかもしれねえぞ? ファッズ:それならそれで仕方ない。でも帰ってきたら酒1杯奢ってやらんこともない。 シガレット:安いな!しかも確定じゃないのかよ。マッシュが聞いたら卒倒するぜ? ファッズ:ははっそりゃ違いない。・・・じゃあな。 シガレット:ああ。酒、用意しとけよな。高いやつ開けさせてやる。 ファッズ:あー・・・帰ってこなくてもいいかも・・・ シガレット:あぁ? ファッズ:なんでもございません!! 0:間― グラム:ただいま クロード:おかえり。どうだったんだ? グラム:え?何がよ。 クロード:ふっ。お前のことなら何だって知ってる。今日だって、懐かしい奴のところに行ってた事とかな。 グラム:あら、熱烈なファンもいたものね。 クロード:ファンか。そいつは少し違うな。 クロード:確かに俺は、お前のことを可愛がってはいるが・・・ クロード:お前は俺のだ。他の奴に尻尾なんて振らせねえ。 グラム:ふふ。言うわね。否定はしないでおくわ。強い男でいる内はね。 クロード:そうか。なら一生俺のもんだな。 グラム:自信家は嫌いじゃないわ。 クロード:それで。どうだったんだ?元気にしてたかあいつ。 グラム:ファッズのこと? クロード:あいつの店に行ってたんだろ? グラム:ええ。そうね。元気そうだったわよ。 クロード:ほう。ファッズ自身に会いに行ったわけじゃ無さそうだな。 グラム:そういうこと。 クロード:あいつのバー・・・なんだっけ。何とかの雨みたいな。 グラム:逆巻く雨よ。 クロード:あーそれだそれ。最近よく聞くようになった。 グラム:その割には忘れてたけどね。 クロード:覚えにくい名前付けるからだ。 グラム:そう?おしゃれで良いと思うけど。 クロード:んで、お前はそのおしゃれなバーに何しに行ってたんだ?同窓会か? グラム:まあ・・・よく似たものかしらね。 クロード:釣れねえな。呼ばれてねえぞ。 グラム:昔の教え子に会いに行ってたのよ。 クロード:ああ。シガレットだったか?まだ若い女だったよな。 グラム:そうよ。今、私たちに必要な子。 クロード:俺達に必要だと?何でまた。お前が途中で捨てたってことは、そこまで良い腕でも無いんだろ? グラム:いいえ、あの子は優秀なスナイパーよ。長物の扱いなら私より上ね。 クロード:へえ・・・そんなやつを何故捨てた?お前なら成長した姿くらい想像できただろ。 グラム:あの時は――いいえ。嘘はやめておくわ。 クロード:賢明な判断だな。 グラム:あの子は私の恩師の娘なのよ。あの人が遺したただ1つの形見のようなものね。 グラム:すごく迷ったわ。私たちと同じ道を歩ませていいのかって。あの人が生きてたらどうするだろうって。 グラム:ずっと考えていたの。だから一度だけ仕事を体験させることにした。 クロード:嫌がったのか? グラム:・・・3人よ。 クロード:3人? グラム:初日に殺したのよ。 クロード:はあ!?どうやってだよ。 グラム:敵を遠くから見させるためにスナイパーライフルを渡してたの。弾を抜いてなかったのも悪かったんだけど―― クロード:ちょっと待て!普段からスナイパーの使い方教えてたのか? グラム:いいえ、一度も。私が使ったところは見たことあるだろうけど。それだけね。 グラム:ハンドガンや近接武器はあの人の娘ってこともあるし、護身術も兼ねて教えていたけれど。 クロード:ははっ。化け物かよ・・・ グラム:私も怖くなったわよ。敵とはいえ人よ?迷い無く引き金を引いて、殺したあとも目が輝いていたわ。 クロード:生まれながらの殺し稼業ってことか。・・・そいつの親の名は? グラム:あなたも知ってる名よ? クロード:もったいぶるなよ。 グラム:シスさんよ。 クロード:なぁ!?シスさんて言ったか!? グラム:ええ。言ったわよ。 クロード:あの人、娘なんかいたのかよ。ってかいつ死んだんだ?長く行方が知れないとは聞いてたけどよ。 グラム:10年ほど前よ。病気でね。その時にあの子を紹介されたの。私が育てたのはそれから3年ほど。 クロード:そうか・・・色々聞きたい話とかあったんだけどな。残念だ・・・ん? グラム:どうしたの? クロード:忘れ形見が来たみたいだぞ。 シガレット:お久しぶりです。師匠。 グラム:ファッズに聞いたの?ここにいること。 シガレット:はい。後ろにいるのは・・・ クロード:ははっ。気配は消したつもりだが。 シガレット:・・・ クロード:そんな身構えるなよ。俺はクロードだ。名前くらいは聞いたことあるか? シガレット:いや、ない・・・です。 クロード:はははははは!あー似てるわ。あの人も全然人の名前知らなかった。 クロード:グラム。 グラム:ん? クロード:俺は出かけてくる。後はお前に任せるよ。 グラム:あら。いいの?私の好きにしちゃっても。 クロード:ああ。信頼してるからな。それに、俺も懐かしい奴に会いたくなった。 グラム:ふふ・・・そう。やりすぎないでね。 シガレット:師匠。 グラム:わかってるわ。こっちへいらっしゃい。 シガレット:・・・はい。 0:長めの間― ファッズ:・・・今日はやけに古い顔を見る日だ。・・・変わらないな。 クロード:ああ。そっちこそ。 ファッズ:お前もグラムと同じ口か? クロード:いや?俺はお前に会いに来ただけだ。 ファッズ:へえ。何の用事で? クロード:シスさんの娘のことで。 ファッズ:・・・グラムに聞いたか。 クロード:やっぱりお前も知ってたか。知らなかったのは俺だけかよ。 ファッズ:俺だって知ったのはここ数年のことだ。それにわざわざ伝える意味が無いだろう。 クロード:まあ確かにそうだな。・・・俺らは味方じゃ無いわけだし。 ファッズ:敵でもないけどな。 クロード:お前らはそう思ってても、裏稼業をしてるやつからすりゃ、目の上のたんこぶだ。 クロード:どこの派閥にも属さない腕利きってのは、脅威でしかないからな。 ファッズ:お前もそうだと? クロード:うちのファミリーはお前らより強い。損害は出るだろうが、勝てないわけじゃねえ。 ファッズ:じゃあ放っておけよ。 クロード:あくまでも俺らは。って話だ。その他のファミリーは知らねえよ。 ファッズ:結局、何が言いたい。 クロード:シガレットを俺らに預けろ。 ファッズ:何故だ。お前にとって利益なんかないだろ。 クロード:優秀なスナイパーは何人いても困らない。・・・って言うのは建前だ。グラムの恩師の娘だから。ただそれだけだ。 クロード:確かにシスさんは俺の憧れだけどな。 ファッズ:あいつは一度捨てただろう。置手紙と一緒にこの店の前にな。 クロード:7年前だっけか?大規模な抗争があった頃だ。 ファッズ:抗争? クロード:お前が裏に戻ってくる前だな。 ファッズ:じゃあ・・・ クロード:部外者に戦況を伝える奴なんざ、この業界じゃ死んで当たり前だ。ましてや、表で生きてたお前に、説明なんて出来るわけがねえ。 ファッズ:・・・・・ クロード:っていう話を今してるだろうよ。 0:間― グラム:あなたを巻き込みたくなかったのよ。 シガレット:・・・はい。 グラム:だから―― シガレット:わかってました。 グラム:・・・え? シガレット:師匠が私を守ろうとして、ファッズに預けたこと。今も私のために、自分のファミリーに来いと言ってくれてることも。 グラム:じゃあ何で隠れてたの? シガレット:やっぱり気付いてましたか。ファッズの渾身の演技だったのに。 グラム:・・・昔から知ってると、少しの癖とかが目に付くものよ。それよりもどうして? シガレット:・・・単純に不安だったんです。わかってはいても、不要な人間だったんじゃないか。本当は嫌われてたんじゃないかとか。 グラム:そんなことあるわけないじゃない! シガレット:はい・・・今日話してみて、改めて思いました。師匠は、私の好きな師匠のままだった。 グラム:っ・・・じゃあファミリーに―― シガレット:それはできません。 グラム:・・・どうしてなの? シガレット:私には家族が居ます。 グラム:家族? シガレット:はい。ファッズ、マッシュにドッグ。かけがえのない家族です。私は・・・もう。家族と離れ離れは嫌なんです! グラム:シガレット・・・ シガレット:師匠。いいえ、グラ姉。ありがとう!私は幸せだよ! グラム:はあ・・・私の負けね。いいわ。あのアル中に伝えておいて。いつか壁のインテリア増やしてあげるって。 シガレット:ふふ。了解!・・・失礼します! グラム:・・・またね。 0:間― クロード:ほら、噂をすれば帰って来たんじゃないか? ファッズ:え。どうして・・・ クロード:さあな。本人に聞けよ。じゃ、俺は帰るぜ。 ファッズ:ああ。次に会ったときは―― クロード:客だ。客としてくる。 ファッズ:・・・はは。待ってるよ。 シガレット:ただいま。ん?誰かいたのか? ファッズ:んーちょっと前まで友達がね。 シガレット:ふーん。 ファッズ:なあシガレット。本当に良かったのか? シガレット:何が? ファッズ:グラムのところじゃなくて。 シガレット:そんなことより、返事聞いてないんだけど。 ファッズ:返事? シガレット:ただいまの返事。 ファッズ:ああ。・・・おかえり! シガレット:はは。よおおおし!高い酒開けさせろおおお! ファッズ:ちょ、ちょっと待て!まず見せろ!シガレットオオオオオ!! 0:間― クロード:落ち込んでるかと思ったが、そうでもないみたいだな。 グラム:ふふ。あの子あんな風に笑えるんだ。って思い返しててね。 クロード:その分沢山泣いたんだろうさ。泣いた分は取り替えさないとな。 グラム:・・・そうね。 クロード:来いよ。 グラム:え? クロード:俺の前なら泣いたって構わねえだろ? グラム:ふふ・・・好きよ。そういうところも。 クロード:そいつはどうも。 グラム:・・・家族か。羨ましいわね。 クロード:お前とも家族だよ。シガレットは。もちろん俺にも大事な家族だ。 グラム:ふふ。そうね。 0:間― シガレット:あ、そう言えば。 ファッズ:ん? シガレット:師匠が壁のインテリアを増やしに行くって言ってたぞ。 ファッズ:もしもし!!!鍵屋さんですか!?今すぐ店の鍵を10個増やしてくださいいいい!!! : : : 0:Fin-