台本概要
775 views
タイトル | 返り梅雨 |
---|---|
作者名 | VAL (@bakemonohouse) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 4人用台本(男1、女1、不問2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
治安の悪いバーでの二幕目。 特に制限はありません。 775 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ファッズ | 不問 | 64 | ナイトバー「逆巻く雨」のマスター。変装を得意とする。今回その見せ場は無い。 |
シガレット | 不問 | 44 | ヘビースモーカーのトリガージャンキー。 |
グラム | 女 | 72 | 大人の色気の塊。ファッズとは旧知の仲。 |
クロード | 男 | 61 | マフィアファミリーのボス。グラムと行動を共にする事が多い。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:酒撒くシリーズの2話目です!従来通り何でも有でございます。
0:(登場人物紹介)
:
ファッズ:『逆巻く雨』の店主。みんなのいじられお兄さん。様々な人間に化けることが出来る。無類の酒好きで普段は温厚である。
シガレット:口と頭が悪い女狙撃手。銃器のほかにもナイフや刀などの扱いにも長けている。呼吸には酸素と同量のニコチンが必要らしい。
グラム:妖艶な雰囲気を漂わせる神出鬼没、年齢不詳の美女。シガレットの師匠であり、ファッズの戦友の過去を持つ。現在は隠居中だと言うが・・・
クロード:殺し屋。グラムの古くからの友人。深くは語るまいよ。
:
0:本編―
:
ファッズ:揺蕩う波の音に耳澄ませ、恐る恐る息を潜める。その様、まさに獣のごとく。魔性の黒い影。
シガレット:心惑わせ、貶める。水面に映る満ちた月。飾り立てた夢など、壊れた幻想に相違無し。
グラム:愛を騙る愚者どもよ。若さは貴様の武器にあらず。言の葉に乗せりゃ、死は隣人。裁きの時間は刹那にて。
クロード:真実はその胸の中に。さあ手を掲げよう。勝利の美酒は我等の手の中に。・・・ということで今回の主人公はこの俺だ。
ファッズ:おおおおい!主人公は僕だから!
クロード:お前は前作やっただろうが!今回は渡せってんだ!
シガレット:いやまず、前作の主人公は私だろうが!
グラム:あらあ・・・また残念なことを。
ファッズ:まあシガレットだし。
クロード:同感。
シガレット:おい!師匠とファッズはともかくお前は面識そんなに無いだろうが!
クロード:やかましい小娘!
グラム:はいはい。これから嫌でも絡むから安心なさいな。そろそろ始めるよ。こんなんじゃいつまで経っても――
クロード:よしじゃあ始めるか!
ファッズ:それでは、本番・・・
全員:スタート!!!(みんな我先に)
:
:
ファッズ:ふぅ・・・
グラム:どうしたの?
ファッズ:いや、どうしたっていうか・・・なんか疲れたというか。
グラム:まあどうせ出勤前にはしゃぎすぎたんでしょ?変わらないわね。
ファッズ:んー僕も歳かな。
グラム:やめてよ。私まで歳を取った気分になっちゃうわ。
ファッズ:お前はまだ若・・・
グラム:(微笑み)
ファッズ:おおおおおお!おま、おまままままま――
グラム:ちょっと。落ち着きなさいよ。
ファッズ:いっ、いつからいた!?
グラム:ん~8回目のため息あたりだったかな。
ファッズ:となると・・・いや!数えてる時点で最初からいるだろ!?
グラム:あら。バレちゃった?ずっと見てたわよ。寂しそうな背中。
ファッズ:おかしいな。お前みたいな美人に気付かないなんて。
グラム:あんた、そんなこというタイプだったっけ?もしかして、アルコール抜けてないの?
ファッズ:いやいや僕だってちゃんと褒めるときは褒めるって。あとね。アルコールは常に摂取してる。故に!抜けることなんてありえないね。
グラム:あー・・・アル中に関しては十分に悪化してるみたいね。
ファッズ:放っておいてくれ。いつ死んでしまうかも分からない稼業なんだ。好きなことをセーブしたくはないね。
グラム:先に病気か何かで死にそうだけどね。
ファッズ:余計なお世話だ。・・・なあ。
グラム:ん?
ファッズ:まさか、ただの世間話をしにここに来たわけじゃないだろ?
グラム:私だってただ話したい時はあるわよ?
ファッズ:それが今だって?冗談きついよ。15年ぶりに会いに来て、ただそれだけ。なんて。この業界じゃ通用しないでしょ。
グラム:ふふ。そんな怖い顔しないでよ。別にあんたに不利益な話を持ってきたわけじゃないわ。
ファッズ:もったいぶるなよ。
グラム:はあ。わかったわよ。じゃあ単刀直入に言うわ。・・・あの子、私たちにくれない?
ファッズ:あの子って、誰だよ。
グラム:私の可愛い教え子よ。
ファッズ:・・・シガレットか?おいおいどう言うつもりだ。お前があいつを見限ったんだろ?今更、そんな話が通るかよ。それにあいつはモノじゃねえ。
グラム:当時には当時なりの理由があるのよ。わかるでしょ?
ファッズ:シガレットは俺の家族だ。・・・帰ってくれ。
グラム:へえ・・・そう。まあいいわ。まさかここまでナマクラになってるとは思わなかった。次会うときは容赦できないわよ。
ファッズ:あいつは守ってもらわなくたって十分強いさ。
グラム:そ。まあ楽しみにしてるわ。またね。
0:間―
ファッズ:・・・帰ったぞ。
シガレット:・・・おう。
ファッズ:いつまで隠れてるんだ?
シガレット:・・・・・
ファッズ:グラム気付いてたぞ。多分な。
シガレット:だろうな。師匠はすっげえ人だからよ。ファッズさんの渾身の演技も形無しだなー。
ファッズ:お前がバレバレの隠れ方しなかったらバレてないっての。
シガレット:かもな。
ファッズ:・・・さっきはああ言ったけど、お前が行きたいなら――
シガレット:行かねーよ。家族なんだろ?
ファッズ:ああ。そうだ。お前もマッシュもドッグもみんな俺の大事な家族だ。
シガレット:ははっ。そんなくさいセリフ。よく平気で言えるよな。
ファッズ:本心だからね。恥ずかしいとは思わないよ。
シガレット:・・・お前らしいな。
ファッズ:お前も思ってることは口に出したほうが楽だぞ。
シガレット:は?私はいつだって――
ファッズ:馬鹿。本当に言いたいことは隠すだろ。
シガレット:そんなこと――
ファッズ:あるね。何回見てきたか。・・・グラムにも沢山伝えたいことあるんだろ?
シガレット:師匠に・・・か。
ファッズ:・・・行ってこい。居そうな場所なら教えてやる。
シガレット:え?
ファッズ:顔に書いてあるんだよ。未練タラタラですってな。
シガレット:・・・戻ってこないかもしれねえぞ?
ファッズ:それならそれで仕方ない。でも帰ってきたら酒1杯奢ってやらんこともない。
シガレット:安いな!しかも確定じゃないのかよ。マッシュが聞いたら卒倒するぜ?
ファッズ:ははっそりゃ違いない。・・・じゃあな。
シガレット:ああ。酒、用意しとけよな。高いやつ開けさせてやる。
ファッズ:あー・・・帰ってこなくてもいいかも・・・
シガレット:あぁ?
ファッズ:なんでもございません!!
0:間―
グラム:ただいま
クロード:おかえり。どうだったんだ?
グラム:え?何がよ。
クロード:ふっ。お前のことなら何だって知ってる。今日だって、懐かしい奴のところに行ってた事とかな。
グラム:あら、熱烈なファンもいたものね。
クロード:ファンか。そいつは少し違うな。
クロード:確かに俺は、お前のことを可愛がってはいるが・・・
クロード:お前は俺のだ。他の奴に尻尾なんて振らせねえ。
グラム:ふふ。言うわね。否定はしないでおくわ。強い男でいる内はね。
クロード:そうか。なら一生俺のもんだな。
グラム:自信家は嫌いじゃないわ。
クロード:それで。どうだったんだ?元気にしてたかあいつ。
グラム:ファッズのこと?
クロード:あいつの店に行ってたんだろ?
グラム:ええ。そうね。元気そうだったわよ。
クロード:ほう。ファッズ自身に会いに行ったわけじゃ無さそうだな。
グラム:そういうこと。
クロード:あいつのバー・・・なんだっけ。何とかの雨みたいな。
グラム:逆巻く雨よ。
クロード:あーそれだそれ。最近よく聞くようになった。
グラム:その割には忘れてたけどね。
クロード:覚えにくい名前付けるからだ。
グラム:そう?おしゃれで良いと思うけど。
クロード:んで、お前はそのおしゃれなバーに何しに行ってたんだ?同窓会か?
グラム:まあ・・・よく似たものかしらね。
クロード:釣れねえな。呼ばれてねえぞ。
グラム:昔の教え子に会いに行ってたのよ。
クロード:ああ。シガレットだったか?まだ若い女だったよな。
グラム:そうよ。今、私たちに必要な子。
クロード:俺達に必要だと?何でまた。お前が途中で捨てたってことは、そこまで良い腕でも無いんだろ?
グラム:いいえ、あの子は優秀なスナイパーよ。長物の扱いなら私より上ね。
クロード:へえ・・・そんなやつを何故捨てた?お前なら成長した姿くらい想像できただろ。
グラム:あの時は――いいえ。嘘はやめておくわ。
クロード:賢明な判断だな。
グラム:あの子は私の恩師の娘なのよ。あの人が遺したただ1つの形見のようなものね。
グラム:すごく迷ったわ。私たちと同じ道を歩ませていいのかって。あの人が生きてたらどうするだろうって。
グラム:ずっと考えていたの。だから一度だけ仕事を体験させることにした。
クロード:嫌がったのか?
グラム:・・・3人よ。
クロード:3人?
グラム:初日に殺したのよ。
クロード:はあ!?どうやってだよ。
グラム:敵を遠くから見させるためにスナイパーライフルを渡してたの。弾を抜いてなかったのも悪かったんだけど――
クロード:ちょっと待て!普段からスナイパーの使い方教えてたのか?
グラム:いいえ、一度も。私が使ったところは見たことあるだろうけど。それだけね。
グラム:ハンドガンや近接武器はあの人の娘ってこともあるし、護身術も兼ねて教えていたけれど。
クロード:ははっ。化け物かよ・・・
グラム:私も怖くなったわよ。敵とはいえ人よ?迷い無く引き金を引いて、殺したあとも目が輝いていたわ。
クロード:生まれながらの殺し稼業ってことか。・・・そいつの親の名は?
グラム:あなたも知ってる名よ?
クロード:もったいぶるなよ。
グラム:シスさんよ。
クロード:なぁ!?シスさんて言ったか!?
グラム:ええ。言ったわよ。
クロード:あの人、娘なんかいたのかよ。ってかいつ死んだんだ?長く行方が知れないとは聞いてたけどよ。
グラム:10年ほど前よ。病気でね。その時にあの子を紹介されたの。私が育てたのはそれから3年ほど。
クロード:そうか・・・色々聞きたい話とかあったんだけどな。残念だ・・・ん?
グラム:どうしたの?
クロード:忘れ形見が来たみたいだぞ。
シガレット:お久しぶりです。師匠。
グラム:ファッズに聞いたの?ここにいること。
シガレット:はい。後ろにいるのは・・・
クロード:ははっ。気配は消したつもりだが。
シガレット:・・・
クロード:そんな身構えるなよ。俺はクロードだ。名前くらいは聞いたことあるか?
シガレット:いや、ない・・・です。
クロード:はははははは!あー似てるわ。あの人も全然人の名前知らなかった。
クロード:グラム。
グラム:ん?
クロード:俺は出かけてくる。後はお前に任せるよ。
グラム:あら。いいの?私の好きにしちゃっても。
クロード:ああ。信頼してるからな。それに、俺も懐かしい奴に会いたくなった。
グラム:ふふ・・・そう。やりすぎないでね。
シガレット:師匠。
グラム:わかってるわ。こっちへいらっしゃい。
シガレット:・・・はい。
0:長めの間―
ファッズ:・・・今日はやけに古い顔を見る日だ。・・・変わらないな。
クロード:ああ。そっちこそ。
ファッズ:お前もグラムと同じ口か?
クロード:いや?俺はお前に会いに来ただけだ。
ファッズ:へえ。何の用事で?
クロード:シスさんの娘のことで。
ファッズ:・・・グラムに聞いたか。
クロード:やっぱりお前も知ってたか。知らなかったのは俺だけかよ。
ファッズ:俺だって知ったのはここ数年のことだ。それにわざわざ伝える意味が無いだろう。
クロード:まあ確かにそうだな。・・・俺らは味方じゃ無いわけだし。
ファッズ:敵でもないけどな。
クロード:お前らはそう思ってても、裏稼業をしてるやつからすりゃ、目の上のたんこぶだ。
クロード:どこの派閥にも属さない腕利きってのは、脅威でしかないからな。
ファッズ:お前もそうだと?
クロード:うちのファミリーはお前らより強い。損害は出るだろうが、勝てないわけじゃねえ。
ファッズ:じゃあ放っておけよ。
クロード:あくまでも俺らは。って話だ。その他のファミリーは知らねえよ。
ファッズ:結局、何が言いたい。
クロード:シガレットを俺らに預けろ。
ファッズ:何故だ。お前にとって利益なんかないだろ。
クロード:優秀なスナイパーは何人いても困らない。・・・って言うのは建前だ。グラムの恩師の娘だから。ただそれだけだ。
クロード:確かにシスさんは俺の憧れだけどな。
ファッズ:あいつは一度捨てただろう。置手紙と一緒にこの店の前にな。
クロード:7年前だっけか?大規模な抗争があった頃だ。
ファッズ:抗争?
クロード:お前が裏に戻ってくる前だな。
ファッズ:じゃあ・・・
クロード:部外者に戦況を伝える奴なんざ、この業界じゃ死んで当たり前だ。ましてや、表で生きてたお前に、説明なんて出来るわけがねえ。
ファッズ:・・・・・
クロード:っていう話を今してるだろうよ。
0:間―
グラム:あなたを巻き込みたくなかったのよ。
シガレット:・・・はい。
グラム:だから――
シガレット:わかってました。
グラム:・・・え?
シガレット:師匠が私を守ろうとして、ファッズに預けたこと。今も私のために、自分のファミリーに来いと言ってくれてることも。
グラム:じゃあ何で隠れてたの?
シガレット:やっぱり気付いてましたか。ファッズの渾身の演技だったのに。
グラム:・・・昔から知ってると、少しの癖とかが目に付くものよ。それよりもどうして?
シガレット:・・・単純に不安だったんです。わかってはいても、不要な人間だったんじゃないか。本当は嫌われてたんじゃないかとか。
グラム:そんなことあるわけないじゃない!
シガレット:はい・・・今日話してみて、改めて思いました。師匠は、私の好きな師匠のままだった。
グラム:っ・・・じゃあファミリーに――
シガレット:それはできません。
グラム:・・・どうしてなの?
シガレット:私には家族が居ます。
グラム:家族?
シガレット:はい。ファッズ、マッシュにドッグ。かけがえのない家族です。私は・・・もう。家族と離れ離れは嫌なんです!
グラム:シガレット・・・
シガレット:師匠。いいえ、グラ姉。ありがとう!私は幸せだよ!
グラム:はあ・・・私の負けね。いいわ。あのアル中に伝えておいて。いつか壁のインテリア増やしてあげるって。
シガレット:ふふ。了解!・・・失礼します!
グラム:・・・またね。
0:間―
クロード:ほら、噂をすれば帰って来たんじゃないか?
ファッズ:え。どうして・・・
クロード:さあな。本人に聞けよ。じゃ、俺は帰るぜ。
ファッズ:ああ。次に会ったときは――
クロード:客だ。客としてくる。
ファッズ:・・・はは。待ってるよ。
シガレット:ただいま。ん?誰かいたのか?
ファッズ:んーちょっと前まで友達がね。
シガレット:ふーん。
ファッズ:なあシガレット。本当に良かったのか?
シガレット:何が?
ファッズ:グラムのところじゃなくて。
シガレット:そんなことより、返事聞いてないんだけど。
ファッズ:返事?
シガレット:ただいまの返事。
ファッズ:ああ。・・・おかえり!
シガレット:はは。よおおおし!高い酒開けさせろおおお!
ファッズ:ちょ、ちょっと待て!まず見せろ!シガレットオオオオオ!!
0:間―
クロード:落ち込んでるかと思ったが、そうでもないみたいだな。
グラム:ふふ。あの子あんな風に笑えるんだ。って思い返しててね。
クロード:その分沢山泣いたんだろうさ。泣いた分は取り替えさないとな。
グラム:・・・そうね。
クロード:来いよ。
グラム:え?
クロード:俺の前なら泣いたって構わねえだろ?
グラム:ふふ・・・好きよ。そういうところも。
クロード:そいつはどうも。
グラム:・・・家族か。羨ましいわね。
クロード:お前とも家族だよ。シガレットは。もちろん俺にも大事な家族だ。
グラム:ふふ。そうね。
0:間―
シガレット:あ、そう言えば。
ファッズ:ん?
シガレット:師匠が壁のインテリアを増やしに行くって言ってたぞ。
ファッズ:もしもし!!!鍵屋さんですか!?今すぐ店の鍵を10個増やしてくださいいいい!!!
:
:
:
0:Fin-
0:酒撒くシリーズの2話目です!従来通り何でも有でございます。
0:(登場人物紹介)
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ファッズ:『逆巻く雨』の店主。みんなのいじられお兄さん。様々な人間に化けることが出来る。無類の酒好きで普段は温厚である。
シガレット:口と頭が悪い女狙撃手。銃器のほかにもナイフや刀などの扱いにも長けている。呼吸には酸素と同量のニコチンが必要らしい。
グラム:妖艶な雰囲気を漂わせる神出鬼没、年齢不詳の美女。シガレットの師匠であり、ファッズの戦友の過去を持つ。現在は隠居中だと言うが・・・
クロード:殺し屋。グラムの古くからの友人。深くは語るまいよ。
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0:本編―
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ファッズ:揺蕩う波の音に耳澄ませ、恐る恐る息を潜める。その様、まさに獣のごとく。魔性の黒い影。
シガレット:心惑わせ、貶める。水面に映る満ちた月。飾り立てた夢など、壊れた幻想に相違無し。
グラム:愛を騙る愚者どもよ。若さは貴様の武器にあらず。言の葉に乗せりゃ、死は隣人。裁きの時間は刹那にて。
クロード:真実はその胸の中に。さあ手を掲げよう。勝利の美酒は我等の手の中に。・・・ということで今回の主人公はこの俺だ。
ファッズ:おおおおい!主人公は僕だから!
クロード:お前は前作やっただろうが!今回は渡せってんだ!
シガレット:いやまず、前作の主人公は私だろうが!
グラム:あらあ・・・また残念なことを。
ファッズ:まあシガレットだし。
クロード:同感。
シガレット:おい!師匠とファッズはともかくお前は面識そんなに無いだろうが!
クロード:やかましい小娘!
グラム:はいはい。これから嫌でも絡むから安心なさいな。そろそろ始めるよ。こんなんじゃいつまで経っても――
クロード:よしじゃあ始めるか!
ファッズ:それでは、本番・・・
全員:スタート!!!(みんな我先に)
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ファッズ:ふぅ・・・
グラム:どうしたの?
ファッズ:いや、どうしたっていうか・・・なんか疲れたというか。
グラム:まあどうせ出勤前にはしゃぎすぎたんでしょ?変わらないわね。
ファッズ:んー僕も歳かな。
グラム:やめてよ。私まで歳を取った気分になっちゃうわ。
ファッズ:お前はまだ若・・・
グラム:(微笑み)
ファッズ:おおおおおお!おま、おまままままま――
グラム:ちょっと。落ち着きなさいよ。
ファッズ:いっ、いつからいた!?
グラム:ん~8回目のため息あたりだったかな。
ファッズ:となると・・・いや!数えてる時点で最初からいるだろ!?
グラム:あら。バレちゃった?ずっと見てたわよ。寂しそうな背中。
ファッズ:おかしいな。お前みたいな美人に気付かないなんて。
グラム:あんた、そんなこというタイプだったっけ?もしかして、アルコール抜けてないの?
ファッズ:いやいや僕だってちゃんと褒めるときは褒めるって。あとね。アルコールは常に摂取してる。故に!抜けることなんてありえないね。
グラム:あー・・・アル中に関しては十分に悪化してるみたいね。
ファッズ:放っておいてくれ。いつ死んでしまうかも分からない稼業なんだ。好きなことをセーブしたくはないね。
グラム:先に病気か何かで死にそうだけどね。
ファッズ:余計なお世話だ。・・・なあ。
グラム:ん?
ファッズ:まさか、ただの世間話をしにここに来たわけじゃないだろ?
グラム:私だってただ話したい時はあるわよ?
ファッズ:それが今だって?冗談きついよ。15年ぶりに会いに来て、ただそれだけ。なんて。この業界じゃ通用しないでしょ。
グラム:ふふ。そんな怖い顔しないでよ。別にあんたに不利益な話を持ってきたわけじゃないわ。
ファッズ:もったいぶるなよ。
グラム:はあ。わかったわよ。じゃあ単刀直入に言うわ。・・・あの子、私たちにくれない?
ファッズ:あの子って、誰だよ。
グラム:私の可愛い教え子よ。
ファッズ:・・・シガレットか?おいおいどう言うつもりだ。お前があいつを見限ったんだろ?今更、そんな話が通るかよ。それにあいつはモノじゃねえ。
グラム:当時には当時なりの理由があるのよ。わかるでしょ?
ファッズ:シガレットは俺の家族だ。・・・帰ってくれ。
グラム:へえ・・・そう。まあいいわ。まさかここまでナマクラになってるとは思わなかった。次会うときは容赦できないわよ。
ファッズ:あいつは守ってもらわなくたって十分強いさ。
グラム:そ。まあ楽しみにしてるわ。またね。
0:間―
ファッズ:・・・帰ったぞ。
シガレット:・・・おう。
ファッズ:いつまで隠れてるんだ?
シガレット:・・・・・
ファッズ:グラム気付いてたぞ。多分な。
シガレット:だろうな。師匠はすっげえ人だからよ。ファッズさんの渾身の演技も形無しだなー。
ファッズ:お前がバレバレの隠れ方しなかったらバレてないっての。
シガレット:かもな。
ファッズ:・・・さっきはああ言ったけど、お前が行きたいなら――
シガレット:行かねーよ。家族なんだろ?
ファッズ:ああ。そうだ。お前もマッシュもドッグもみんな俺の大事な家族だ。
シガレット:ははっ。そんなくさいセリフ。よく平気で言えるよな。
ファッズ:本心だからね。恥ずかしいとは思わないよ。
シガレット:・・・お前らしいな。
ファッズ:お前も思ってることは口に出したほうが楽だぞ。
シガレット:は?私はいつだって――
ファッズ:馬鹿。本当に言いたいことは隠すだろ。
シガレット:そんなこと――
ファッズ:あるね。何回見てきたか。・・・グラムにも沢山伝えたいことあるんだろ?
シガレット:師匠に・・・か。
ファッズ:・・・行ってこい。居そうな場所なら教えてやる。
シガレット:え?
ファッズ:顔に書いてあるんだよ。未練タラタラですってな。
シガレット:・・・戻ってこないかもしれねえぞ?
ファッズ:それならそれで仕方ない。でも帰ってきたら酒1杯奢ってやらんこともない。
シガレット:安いな!しかも確定じゃないのかよ。マッシュが聞いたら卒倒するぜ?
ファッズ:ははっそりゃ違いない。・・・じゃあな。
シガレット:ああ。酒、用意しとけよな。高いやつ開けさせてやる。
ファッズ:あー・・・帰ってこなくてもいいかも・・・
シガレット:あぁ?
ファッズ:なんでもございません!!
0:間―
グラム:ただいま
クロード:おかえり。どうだったんだ?
グラム:え?何がよ。
クロード:ふっ。お前のことなら何だって知ってる。今日だって、懐かしい奴のところに行ってた事とかな。
グラム:あら、熱烈なファンもいたものね。
クロード:ファンか。そいつは少し違うな。
クロード:確かに俺は、お前のことを可愛がってはいるが・・・
クロード:お前は俺のだ。他の奴に尻尾なんて振らせねえ。
グラム:ふふ。言うわね。否定はしないでおくわ。強い男でいる内はね。
クロード:そうか。なら一生俺のもんだな。
グラム:自信家は嫌いじゃないわ。
クロード:それで。どうだったんだ?元気にしてたかあいつ。
グラム:ファッズのこと?
クロード:あいつの店に行ってたんだろ?
グラム:ええ。そうね。元気そうだったわよ。
クロード:ほう。ファッズ自身に会いに行ったわけじゃ無さそうだな。
グラム:そういうこと。
クロード:あいつのバー・・・なんだっけ。何とかの雨みたいな。
グラム:逆巻く雨よ。
クロード:あーそれだそれ。最近よく聞くようになった。
グラム:その割には忘れてたけどね。
クロード:覚えにくい名前付けるからだ。
グラム:そう?おしゃれで良いと思うけど。
クロード:んで、お前はそのおしゃれなバーに何しに行ってたんだ?同窓会か?
グラム:まあ・・・よく似たものかしらね。
クロード:釣れねえな。呼ばれてねえぞ。
グラム:昔の教え子に会いに行ってたのよ。
クロード:ああ。シガレットだったか?まだ若い女だったよな。
グラム:そうよ。今、私たちに必要な子。
クロード:俺達に必要だと?何でまた。お前が途中で捨てたってことは、そこまで良い腕でも無いんだろ?
グラム:いいえ、あの子は優秀なスナイパーよ。長物の扱いなら私より上ね。
クロード:へえ・・・そんなやつを何故捨てた?お前なら成長した姿くらい想像できただろ。
グラム:あの時は――いいえ。嘘はやめておくわ。
クロード:賢明な判断だな。
グラム:あの子は私の恩師の娘なのよ。あの人が遺したただ1つの形見のようなものね。
グラム:すごく迷ったわ。私たちと同じ道を歩ませていいのかって。あの人が生きてたらどうするだろうって。
グラム:ずっと考えていたの。だから一度だけ仕事を体験させることにした。
クロード:嫌がったのか?
グラム:・・・3人よ。
クロード:3人?
グラム:初日に殺したのよ。
クロード:はあ!?どうやってだよ。
グラム:敵を遠くから見させるためにスナイパーライフルを渡してたの。弾を抜いてなかったのも悪かったんだけど――
クロード:ちょっと待て!普段からスナイパーの使い方教えてたのか?
グラム:いいえ、一度も。私が使ったところは見たことあるだろうけど。それだけね。
グラム:ハンドガンや近接武器はあの人の娘ってこともあるし、護身術も兼ねて教えていたけれど。
クロード:ははっ。化け物かよ・・・
グラム:私も怖くなったわよ。敵とはいえ人よ?迷い無く引き金を引いて、殺したあとも目が輝いていたわ。
クロード:生まれながらの殺し稼業ってことか。・・・そいつの親の名は?
グラム:あなたも知ってる名よ?
クロード:もったいぶるなよ。
グラム:シスさんよ。
クロード:なぁ!?シスさんて言ったか!?
グラム:ええ。言ったわよ。
クロード:あの人、娘なんかいたのかよ。ってかいつ死んだんだ?長く行方が知れないとは聞いてたけどよ。
グラム:10年ほど前よ。病気でね。その時にあの子を紹介されたの。私が育てたのはそれから3年ほど。
クロード:そうか・・・色々聞きたい話とかあったんだけどな。残念だ・・・ん?
グラム:どうしたの?
クロード:忘れ形見が来たみたいだぞ。
シガレット:お久しぶりです。師匠。
グラム:ファッズに聞いたの?ここにいること。
シガレット:はい。後ろにいるのは・・・
クロード:ははっ。気配は消したつもりだが。
シガレット:・・・
クロード:そんな身構えるなよ。俺はクロードだ。名前くらいは聞いたことあるか?
シガレット:いや、ない・・・です。
クロード:はははははは!あー似てるわ。あの人も全然人の名前知らなかった。
クロード:グラム。
グラム:ん?
クロード:俺は出かけてくる。後はお前に任せるよ。
グラム:あら。いいの?私の好きにしちゃっても。
クロード:ああ。信頼してるからな。それに、俺も懐かしい奴に会いたくなった。
グラム:ふふ・・・そう。やりすぎないでね。
シガレット:師匠。
グラム:わかってるわ。こっちへいらっしゃい。
シガレット:・・・はい。
0:長めの間―
ファッズ:・・・今日はやけに古い顔を見る日だ。・・・変わらないな。
クロード:ああ。そっちこそ。
ファッズ:お前もグラムと同じ口か?
クロード:いや?俺はお前に会いに来ただけだ。
ファッズ:へえ。何の用事で?
クロード:シスさんの娘のことで。
ファッズ:・・・グラムに聞いたか。
クロード:やっぱりお前も知ってたか。知らなかったのは俺だけかよ。
ファッズ:俺だって知ったのはここ数年のことだ。それにわざわざ伝える意味が無いだろう。
クロード:まあ確かにそうだな。・・・俺らは味方じゃ無いわけだし。
ファッズ:敵でもないけどな。
クロード:お前らはそう思ってても、裏稼業をしてるやつからすりゃ、目の上のたんこぶだ。
クロード:どこの派閥にも属さない腕利きってのは、脅威でしかないからな。
ファッズ:お前もそうだと?
クロード:うちのファミリーはお前らより強い。損害は出るだろうが、勝てないわけじゃねえ。
ファッズ:じゃあ放っておけよ。
クロード:あくまでも俺らは。って話だ。その他のファミリーは知らねえよ。
ファッズ:結局、何が言いたい。
クロード:シガレットを俺らに預けろ。
ファッズ:何故だ。お前にとって利益なんかないだろ。
クロード:優秀なスナイパーは何人いても困らない。・・・って言うのは建前だ。グラムの恩師の娘だから。ただそれだけだ。
クロード:確かにシスさんは俺の憧れだけどな。
ファッズ:あいつは一度捨てただろう。置手紙と一緒にこの店の前にな。
クロード:7年前だっけか?大規模な抗争があった頃だ。
ファッズ:抗争?
クロード:お前が裏に戻ってくる前だな。
ファッズ:じゃあ・・・
クロード:部外者に戦況を伝える奴なんざ、この業界じゃ死んで当たり前だ。ましてや、表で生きてたお前に、説明なんて出来るわけがねえ。
ファッズ:・・・・・
クロード:っていう話を今してるだろうよ。
0:間―
グラム:あなたを巻き込みたくなかったのよ。
シガレット:・・・はい。
グラム:だから――
シガレット:わかってました。
グラム:・・・え?
シガレット:師匠が私を守ろうとして、ファッズに預けたこと。今も私のために、自分のファミリーに来いと言ってくれてることも。
グラム:じゃあ何で隠れてたの?
シガレット:やっぱり気付いてましたか。ファッズの渾身の演技だったのに。
グラム:・・・昔から知ってると、少しの癖とかが目に付くものよ。それよりもどうして?
シガレット:・・・単純に不安だったんです。わかってはいても、不要な人間だったんじゃないか。本当は嫌われてたんじゃないかとか。
グラム:そんなことあるわけないじゃない!
シガレット:はい・・・今日話してみて、改めて思いました。師匠は、私の好きな師匠のままだった。
グラム:っ・・・じゃあファミリーに――
シガレット:それはできません。
グラム:・・・どうしてなの?
シガレット:私には家族が居ます。
グラム:家族?
シガレット:はい。ファッズ、マッシュにドッグ。かけがえのない家族です。私は・・・もう。家族と離れ離れは嫌なんです!
グラム:シガレット・・・
シガレット:師匠。いいえ、グラ姉。ありがとう!私は幸せだよ!
グラム:はあ・・・私の負けね。いいわ。あのアル中に伝えておいて。いつか壁のインテリア増やしてあげるって。
シガレット:ふふ。了解!・・・失礼します!
グラム:・・・またね。
0:間―
クロード:ほら、噂をすれば帰って来たんじゃないか?
ファッズ:え。どうして・・・
クロード:さあな。本人に聞けよ。じゃ、俺は帰るぜ。
ファッズ:ああ。次に会ったときは――
クロード:客だ。客としてくる。
ファッズ:・・・はは。待ってるよ。
シガレット:ただいま。ん?誰かいたのか?
ファッズ:んーちょっと前まで友達がね。
シガレット:ふーん。
ファッズ:なあシガレット。本当に良かったのか?
シガレット:何が?
ファッズ:グラムのところじゃなくて。
シガレット:そんなことより、返事聞いてないんだけど。
ファッズ:返事?
シガレット:ただいまの返事。
ファッズ:ああ。・・・おかえり!
シガレット:はは。よおおおし!高い酒開けさせろおおお!
ファッズ:ちょ、ちょっと待て!まず見せろ!シガレットオオオオオ!!
0:間―
クロード:落ち込んでるかと思ったが、そうでもないみたいだな。
グラム:ふふ。あの子あんな風に笑えるんだ。って思い返しててね。
クロード:その分沢山泣いたんだろうさ。泣いた分は取り替えさないとな。
グラム:・・・そうね。
クロード:来いよ。
グラム:え?
クロード:俺の前なら泣いたって構わねえだろ?
グラム:ふふ・・・好きよ。そういうところも。
クロード:そいつはどうも。
グラム:・・・家族か。羨ましいわね。
クロード:お前とも家族だよ。シガレットは。もちろん俺にも大事な家族だ。
グラム:ふふ。そうね。
0:間―
シガレット:あ、そう言えば。
ファッズ:ん?
シガレット:師匠が壁のインテリアを増やしに行くって言ってたぞ。
ファッズ:もしもし!!!鍵屋さんですか!?今すぐ店の鍵を10個増やしてくださいいいい!!!
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0:Fin-