台本概要

 325 views 

タイトル Gehimnis
作者名 VAL  (@bakemonohouse)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 中世風のラブストーリーです。
特に制限はありません。

 325 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ミカエル 108 豪傑で気高い騎士団長。幼少から武に身を落とし、部下の信頼も厚い。しかし正体は女であり、ずっと隠し続けていたのだが・・・
エイキッド 107 凄く優秀な騎士であるが、怠惰で適当な態度でいることが多く、役職には就いていない。ミカエルの秘密を知ってしまう。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
ミカエル:私は、騎士爵を持つ家に生を受けた。父は素晴らしい騎士だったと沢山の人から聞かされ ミカエル:娘の私から見ても、尊敬できる豪傑だった。いつか父のようになりたいと幼いながらに思っていたが ミカエル:女は騎士の資格を与えられないと。当時、母に教わった。でも私は騎士を目指した。結果、騎士団を率いる騎士団長へとなることが出来たんだ。 ミカエル:女という事実を隠し、男として生きることによって―― 0:城下町、酒場― エイキッド:いやあ、今回も疲れる仕事でしたね。体ガタガタっすよ。 ミカエル:はっ。どの口が言ってる。お前がサボってたという報告をいくつ受けたと思ってるんだ? エイキッド:やだなあ。団長までそんなこというんですか?俺は、やることやってますって。仕事の遅いやつらがただ僻んでるだけっすよ。 ミカエル:お前なあ・・・少しは仲良くしたらどうだ?やり辛いだろ。そんなんじゃ。 エイキッド:そんなことないっすよ。俺が騎士になった理由とあいつらの理由じゃ、全然方向性が違いますから。話なんて最初から合わないっす。 ミカエル:ほう。では聞こう。お前が騎士になった理由は何なのだ? エイキッド:仕事が無かったからですよ。ほら、俺って弱小貴族の3男坊じゃないっすか? エイキッド:家を継げるわけでもなく、他に何かしようにも制限だけは一丁前にあって。結局、少し剣の腕が立つってだけで、騎士になったんです。 ミカエル:・・・・・ エイキッド:ね?そんなやつ中々いないんですよ。団長だって何かしらの信念があって、そこまで上り詰めたんすよね? ミカエル:ああ。そうだが? エイキッド:俺みたいなの見てると腹立つでしょ?何の信念も無く、ただ業務をこなすだけのやつなんて。 ミカエル:そんなことはないさ。人それぞれの考え方がある。 エイキッド:それは団長が中身までしっかり出来た人だからそう思えるんすよ。言葉だけで何だかんだと能書きたれてるやつほど、噛み付いてくるもんですよ。 ミカエル:はっ。私のことを買いかぶらないでくれ。私はそんな大それた人間ではないさ。 エイキッド:そうですか?凄い人だと思いますよ。そんな人だからこそ聞きたいことがあるんですが・・・ ミカエル:何だ? エイキッド:どうして俺と酒なんて交わす気になったんすか? ミカエル:どうして・・・か。 エイキッド:最初は説教かな、とも思ったんすけど・・・そんな話どころか素振りさえ出してこないですし。何か目的があるんすか? ミカエル:目的が無いといけないのか? エイキッド:そういうわけじゃないっすけど。団長って暇なわけじゃないっすよね。 ミカエル:ああ。自分で言うのもなんだが、多忙な身だろうな。 エイキッド:なおさら、俺みたいな奴に時間を割く意味がわからないんすよ。 ミカエル:意外だな。もっと自信家だと思っていたんだが。 エイキッド:いやいや、そんなもん無いっすよ。これがもし長男だったら、もう少し違ったかもしれないっすけど。 ミカエル:それは長男である私には何とも言えないことだが・・・ エイキッド:別に賛同して欲しいわけじゃないっすよ。それより理由はなんなんすか? ミカエル:ああ。そうだったな。・・・次の仕事は私とお前の2人で就くことになった。 エイキッド:・・・は?えっと、すいません。もう1回言ってもらえますか? ミカエル:私とお前の2人で任務を任されることになった。 エイキッド:聞き間違いじゃないのかよ・・・何で俺なんすか? ミカエル:皆からの推薦だ。愛されてるなぁ。羨ましいよ。 エイキッド:なるほど。あいつらの仕業か。大方、目障りな俺を鬼団長にしごいてもらおうとしたんじゃないすかね。 ミカエル:まあそんなところだろうな。 エイキッド:で、何で断らないんすか?もっと頼りになる団員いるでしょ? ミカエル:確かに、私の騎士団には才に恵まれた者が沢山いるが。 エイキッド:なら、そいつらを連れて行けば―― ミカエル:だが、私もお前に興味が無いわけではない。 エイキッド:え・・・男色なんすか? ミカエル:ははは。そうではない。 エイキッド:じゃあ何で・・・ ミカエル:今までの任務には、かなり難しい任務も存在していた。それこそ、命を落とす者もいたし。退役せざるを得ない者もいた。 ミカエル:しかし、お前は生きながらえた。さらに私はお前が怪我をしたところすらも見たことが無い。 エイキッド:それは―― ミカエル:それはサボっていただけ。なんて通用すると思うなよ? エイキッド:・・・っ。でも、実際そうっすから・・・ ミカエル:ほう。言い張るか。まあいい。嫌でもわかるだろうさ。次の任務ではサボることなど出来はしないのだから。なにせ私と2人きりなんだからな。 エイキッド:あの・・・断る権利などは・・・ ミカエル:あるわけがないだろう。 エイキッド:ですよね・・・。はあ、わかりましたよ。それで、どんな任務なんすか? ミカエル:ああ。皇女様の護衛任務だ。 エイキッド:は!?皇女様って、あの絶世の美女と言われている? ミカエル:ああ。そのお方で間違いない。 エイキッド:団長。ここでの話、無かったことに―― ミカエル:断る。 エイキッド:そんなぁ。俺には荷が重いですって ミカエル:私が半分背負ってやるじゃないか。 エイキッド:そういう問題じゃ・・・ ミカエル:これは決定事項だ。日取りは追って連絡する。せいぜい準備を怠るなよ。それでは私は先に失礼する。 エイキッド:はい。わかりました・・・ ミカエル:まあそんな暗い顔するな。ここの代金は私が持ってやる。最後の酒にならんよう祈ってるよ。じゃあな。 エイキッド:ははは・・・アンタのせいだっての。はぁ・・・どうやってやり過ごすかな・・・ 0:間―― ミカエル:お、逃げずに来たか。感心だな。 エイキッド:よく言いますよ。逃げたらどうせ追ってきて殺しに来るでしょ? ミカエル:よくわかってるじゃないか!勘の良い奴は嫌いじゃないぞ。 エイキッド:認めるんすね・・・一応今日の任務の確認しますね。 ミカエル:意外だな。 エイキッド:何がすか? ミカエル:何かやる気みたいだからさ。 エイキッド:俺だって上官と2人ってなったら流石にちゃんとしますって。 ミカエル:普段からちゃんとしてたら、今日みたいなことにはならなかったかもな。 エイキッド:ええ。少し後悔してますよ。・・・確認してもいいすか? ミカエル:ああ。すまない。頼むよ。 エイキッド:今回の任務は、皇女様が外交に行かれるケルベロス公国への旅路を、俺と団長の2人の護衛だけで向かう。道中は騎士の駐屯地のある町で危険な夜はやり過ごす・・・で間違いないっすか? ミカエル:ああ。その通りだ。 エイキッド:改めて言うっすけど、無謀すぎやしないっすか? ミカエル:仕方ない話だ。ケルベロス公国は1年前、第2王子が他国の刺客に殺されている。いくら、懇意にしている我が国であっても手放しで歓迎は出来ないだろうさ。 エイキッド:そうかもしれないっすけど。2人は心もとないっすよ。 ミカエル:ほう。私がいても不安と言うか。 エイキッド:団長がどうとかじゃなくて、人数のことを言ってるんすよ。道中に襲われるリスクが―― ミカエル:先方の指定だ。向こうさんとて、我が身が可愛いのだ。それは受け入れるしかあるまいよ。 エイキッド:・・・はあ。わかりました。心を決めますよ。 ミカエル:よろしい。そろそろ、皇女様が来られる。気を引き締めて置けよ。 エイキッド:了解っす。 0:皇女が来られ、護衛の2人も馬車の前にて歩き出す。 エイキッド:それにしても、やっぱり美人すね。皇女様。 ミカエル:ああ。他国からの求婚者も後を絶たないほどだ。わかっているとは思うが、くれぐれも―― エイキッド:わかってるっすよ。身分の違いもありますし、何より俺はああいう人は苦手っす。 ミカエル:何だ?お前こそ男色か? エイキッド:違いますよ。どうせなら強い女が好きなだけです。 ミカエル:ほう。何でまた。 エイキッド:自分が守る手間が省けるんで。・・・っ! ミカエル:どうした? エイキッド:恐らく前方から、魔物が来ます。 ミカエル:何も見えないが・・・ エイキッド:馬車を止めて迎え撃ちます。 ミカエル:わ、わかった。馬車を止めてくれ!魔物が来るようだ! 0:数十秒後、前方より魔狼の群れが現れた。 ミカエル:驚いたな・・・本当に来るとは。 エイキッド:信じてなかったんすか? ミカエル:はは。すまない。半分はな。 エイキッド:まあいいっすよ。さあ来ますよ。団長。 ミカエル:ああ!任せておけ! 0:ものの数分で群れを殲滅する。 エイキッド:ふう。終わりましたね。 ミカエル:おい。 エイキッド:・・・なんすか? ミカエル:お前、今まで力を隠していたな。 エイキッド:いやいや、そんなことないっすよ。 ミカエル:いち早く魔物を見つける察知能力だけではない。私と同じペースで動き、正確に急所を穿ち。なおかつ息切れすら起こしていない。 エイキッド:はあ・・・いつもやってますって。俺が魔物が来ると言ってもあいつらは信用しませんけどね。 エイキッド:それに早く仕事を終わらせるために、魔物の急所を狙うのも当たり前のことっす。 ミカエル:それが何故、評価につながらんのだ。 エイキッド:あいつらが倒せる分は倒してもらわないと過剰業務っすから。その時に後衛で寝てるからじゃないですか? ミカエル:何処で身に着けた。 エイキッド:我流っす。幼少から1人で生きれるようにって頑張ったんすよ。 ミカエル:なっ!それを信じろというか・・・ エイキッド:嘘をつく理由ありますか?俺にメリットないっすよ? ミカエル:確かに・・・今日の夜、私と手合わせしろ。 エイキッド:は!?団長とですか?無理っすよ!まだ死にたくないっすもん! ミカエル:なに、殺しはしないさ。ただの好奇心だよ。お前の力へのな。 エイキッド:そんな暴論を・・・ ミカエル:決定事項だ。これ以上の抵抗は無駄だぞ。 エイキッド:・・・はぁ・・・ 0:当日夜。予定通り、町に着き対峙する2人―― ミカエル:さあ始めるぞ! エイキッド:本当にやるんすね・・・ ミカエル:当たり前だ!さあかかってこい! エイキッド:わかりましたよ!いきますよ・・・ ミカエル:はははっ!いい太刀筋だ!弱小の騎士団なら率いれるぞ! エイキッド:結構です!俺はゆったりと過ごしたいんで! ミカエル:ふん。それだけ才に恵まれていながら、勿体無いな。そら! エイキッド:ぐっ・・・やっぱり化け物ですね・・・ ミカエル:その化け物の剣戟を受け止めているのだ。誇るといい!はあああ! エイキッド:なっ!ぐあああ! ミカエル:・・・ふう。この辺で終わるとしよう。 エイキッド:腕がもげるかと思いましたよ・・・今もビリビリしてるっす。 ミカエル:そのつもりでやったが、痺れだけか。 エイキッド:そのつもりだったんすか! ミカエル:実際もげてないんだから文句を言うな。 エイキッド:・・・やっぱ暴論がすげえな。 ミカエル:何だ?まだやりたいか? エイキッド:いやいや!それは勘弁っす!! ミカエル:では先に部屋に戻っているぞ。皇女様はこの町の騎士達が厳重に守っている。ゆっくり戻ってくるがいい。はっはっは。 エイキッド:ふう・・・やり過ごせたか。・・・うん。腕もしっかり動くな。にしても疲れたな・・・ エイキッド:よし。さっさと風呂に入って、早く寝よう。あとは、これ以上目立たないように気をつけないとな・・・ 0:宿舎の大浴場―― エイキッド:さすが、王国直営の宿舎だ。城下町の銭湯にも引けを取らないし、余計な光が無い分、星がとても綺麗に照らしてくる。まさに、絶景だな。 エイキッド:ふう。そろそろ上がるか。今日はいち早く寝ないとな。・・・っ! ミカエル:お・・・お前どうしてここに!? エイキッド:いや普通に風呂に・・・って、え?団長・・・あなた・・・ ミカエル:・・・すまないが、お前を生かして置くわけには行かなくなった。 エイキッド:なっ! ミカエル:私の秘密を知ったお前は大罪人に他ならんのだ! エイキッド:またそんな暴論を! ミカエル:暴論か。たしかにそうなのだろう。だが!私とて守らねばならぬものがある! エイキッド:確かに俺には何もないが、ただ無駄死にするのはごめんだ。 ミカエル:ならば、エイキッド・・・再び剣を取れ。私から逃げおおせたのなら、お前の生を認めてやろう。 エイキッド:・・・わかりました。 0:再度、2人は対峙する―― エイキッド:本当にやりますか?俺は誰にも言う気は無いっすよ。それに誰も俺の言葉なんて信用しないと思いますが。 ミカエル:ふん。その証拠がどこにある。私は騎士でありたい。それを脅かす可能性は全て・・・ぶった切るのみ! エイキッド:別に女でも、騎士は出来ると思うっすけどね。実際男より強いわけだし―― ミカエル:私を・・・女と言うなあああ!! エイキッド:はあ!! ミカエル:なっ・・・わ、私の剣が・・・ エイキッド:折れた剣では、戦えませんね。 ミカエル:お前・・・さっきは力を抑えていたのか? エイキッド:俺は、のんびり生きたいんすよ。だから必要以上の力を奮いたくないんです。 ミカエル:くっ・・・私の負けだ。好きにするがいい。 エイキッド:じゃあ、何で女でありながら騎士を目指したか。それを聞いてもいいすか? ミカエル:・・・わかった。 : ミカエル:私は、騎士爵を持つ家に生を受けた。父の騎士である姿に憧れたが、女は騎士の資格を与えられないと。当時、母に教わった。。 ミカエル:その後、妹が生まれた。病弱だった母は妹を産んだ時に、この世を去った。父は母以外の女と添い遂げることはないと言ったのだ。 ミカエル:その時、私は男として騎士爵を継ぐと決めた。そのために騎士団長へと上り詰めたのだ。 : エイキッド:そんなに権力が大事っすか? ミカエル:なっ・・・そんなことはない!私は・・・ エイキッド:でしょうね。あなたはただ強くなりたいだけだ。戦闘狂にも近く感じるっす。 ミカエル:違う!私は家を―― エイキッド:そんなこと!親は望んでないっすよ! ミカエル:・・・・・ エイキッド:・・・決めました。俺があなたを守るっす。 ミカエル:・・・は? エイキッド:本気で爵位を取りにいきます。あなたが女だと知れてもなんら問題がないように。 ミカエル:どうしてお前がそこまでする!? エイキッド:言ったでしょう?強い女が好きだって。だからあなたを娶ります。 ミカエル:ば、馬鹿か!?私はとうの昔に女を捨てた人間だぞ! エイキッド:そんなの俺には関係無いっすから。もちろん、あなたにもメリットはありますし。 ミカエル:何だ・・・それは。 エイキッド:騎士爵に嫁げば、あなたの血筋も貴族のままだし。あなたは常に自分より強い男と戦える。ね?いい話でしょ? ミカエル:私は・・・まだお前を信用していない。 エイキッド:いいっすよ別に。ただ前向きに考えて欲しいだけっす。断ったからと言って秘密をばらす訳じゃないですし、ちゃんと爵位を取って後ろ盾もするっすよ。 ミカエル:・・・考えておく。 エイキッド:今はその言葉だけで充分っす。あ、最後に1つ良いっすか? ミカエル:何だ? エイキッド:もう少し小さかったら、ばれなかったかもしれないっすね。 ミカエル:・・・っ!き、貴様あああああ!!殺す! エイキッド:今はまだ無理っすよ。これからに期待してるっす。そろそろ寝るっすよ。明日も任務っすから。 ミカエル:くっ・・・屈辱だ・・・ : ミカエル:それからと言うもの。エイキッドは本当に頑張り始めた。護衛任務が終わった後も、全ての任務で皇帝から表彰される程の戦果を上げていた。 ミカエル:彼が騎士爵を授かるのに、そう時間はかからなかった。そして彼は、私の父がしていた王国騎士団総隊長へと上り詰めたのだ。 ミカエル:結局、私が女だとばれることは無かったが・・・私は騎士団長を退役した。 0:数年後―― エイキッド:まだやるんすか? ミカエル:はぁはぁ・・・せめて一太刀くらい当てたいじゃないか。 エイキッド:それ毎日言ってますよ。団長。 ミカエル:・・・もう団長ではない。 エイキッド:え?それはどういう・・・ ミカエル:今日、辞めてきた! エイキッド:あ! ミカエル:や・・・やった。ついに1本取ったぞ! エイキッド:それは、ずるいですって。ってか、急に辞めて大丈夫なんすか?それに俺聞いてないんすけど! ミカエル:ああ。机の上に置いて来た。そんなことより。その話し方、どうにかならんのか?お前の方が上官だと言うのに。 エイキッド:そんなことって・・・口調はクセっすよ。団長だってそのままじゃないっすか。 ミカエル:私はお前が変えたらすぐにでも変えてやる。その・・・ちゃんと・・・騎士爵の妻として、恥ずかしくないように・・・ エイキッド:えっと・・・何か照れるんすけど・・・でも、何でまた急に。 ミカエル:少し腹が出てきたんだ。 エイキッド:え。太ったんすか? ミカエル:ち、違うわ!お前の・・・私達の子だ。 エイキッド:え、えええええ!?マジっすか!?剣なんて握っちゃダメっすよ!! ミカエル:だから辞めてきたんじゃないか。 エイキッド:家でもダメっす!・・・ははは。 ミカエル:どうした?急に笑い出して。 エイキッド:団長。俺にも守りたいものが出来たっす。ありがとうございます。 ミカエル:もう団長じゃないって言っただろう。 : エイキッド:・・・ミカエル。ありがとう。俺は幸せだよ。 ミカエル:私もですよ。旦那様。秘密を知られたのが、あなたで良かったです。 エイキッド:これからもよろしく頼むよ。 ミカエル:私の方こそ。 : : : 0:Fin―

ミカエル:私は、騎士爵を持つ家に生を受けた。父は素晴らしい騎士だったと沢山の人から聞かされ ミカエル:娘の私から見ても、尊敬できる豪傑だった。いつか父のようになりたいと幼いながらに思っていたが ミカエル:女は騎士の資格を与えられないと。当時、母に教わった。でも私は騎士を目指した。結果、騎士団を率いる騎士団長へとなることが出来たんだ。 ミカエル:女という事実を隠し、男として生きることによって―― 0:城下町、酒場― エイキッド:いやあ、今回も疲れる仕事でしたね。体ガタガタっすよ。 ミカエル:はっ。どの口が言ってる。お前がサボってたという報告をいくつ受けたと思ってるんだ? エイキッド:やだなあ。団長までそんなこというんですか?俺は、やることやってますって。仕事の遅いやつらがただ僻んでるだけっすよ。 ミカエル:お前なあ・・・少しは仲良くしたらどうだ?やり辛いだろ。そんなんじゃ。 エイキッド:そんなことないっすよ。俺が騎士になった理由とあいつらの理由じゃ、全然方向性が違いますから。話なんて最初から合わないっす。 ミカエル:ほう。では聞こう。お前が騎士になった理由は何なのだ? エイキッド:仕事が無かったからですよ。ほら、俺って弱小貴族の3男坊じゃないっすか? エイキッド:家を継げるわけでもなく、他に何かしようにも制限だけは一丁前にあって。結局、少し剣の腕が立つってだけで、騎士になったんです。 ミカエル:・・・・・ エイキッド:ね?そんなやつ中々いないんですよ。団長だって何かしらの信念があって、そこまで上り詰めたんすよね? ミカエル:ああ。そうだが? エイキッド:俺みたいなの見てると腹立つでしょ?何の信念も無く、ただ業務をこなすだけのやつなんて。 ミカエル:そんなことはないさ。人それぞれの考え方がある。 エイキッド:それは団長が中身までしっかり出来た人だからそう思えるんすよ。言葉だけで何だかんだと能書きたれてるやつほど、噛み付いてくるもんですよ。 ミカエル:はっ。私のことを買いかぶらないでくれ。私はそんな大それた人間ではないさ。 エイキッド:そうですか?凄い人だと思いますよ。そんな人だからこそ聞きたいことがあるんですが・・・ ミカエル:何だ? エイキッド:どうして俺と酒なんて交わす気になったんすか? ミカエル:どうして・・・か。 エイキッド:最初は説教かな、とも思ったんすけど・・・そんな話どころか素振りさえ出してこないですし。何か目的があるんすか? ミカエル:目的が無いといけないのか? エイキッド:そういうわけじゃないっすけど。団長って暇なわけじゃないっすよね。 ミカエル:ああ。自分で言うのもなんだが、多忙な身だろうな。 エイキッド:なおさら、俺みたいな奴に時間を割く意味がわからないんすよ。 ミカエル:意外だな。もっと自信家だと思っていたんだが。 エイキッド:いやいや、そんなもん無いっすよ。これがもし長男だったら、もう少し違ったかもしれないっすけど。 ミカエル:それは長男である私には何とも言えないことだが・・・ エイキッド:別に賛同して欲しいわけじゃないっすよ。それより理由はなんなんすか? ミカエル:ああ。そうだったな。・・・次の仕事は私とお前の2人で就くことになった。 エイキッド:・・・は?えっと、すいません。もう1回言ってもらえますか? ミカエル:私とお前の2人で任務を任されることになった。 エイキッド:聞き間違いじゃないのかよ・・・何で俺なんすか? ミカエル:皆からの推薦だ。愛されてるなぁ。羨ましいよ。 エイキッド:なるほど。あいつらの仕業か。大方、目障りな俺を鬼団長にしごいてもらおうとしたんじゃないすかね。 ミカエル:まあそんなところだろうな。 エイキッド:で、何で断らないんすか?もっと頼りになる団員いるでしょ? ミカエル:確かに、私の騎士団には才に恵まれた者が沢山いるが。 エイキッド:なら、そいつらを連れて行けば―― ミカエル:だが、私もお前に興味が無いわけではない。 エイキッド:え・・・男色なんすか? ミカエル:ははは。そうではない。 エイキッド:じゃあ何で・・・ ミカエル:今までの任務には、かなり難しい任務も存在していた。それこそ、命を落とす者もいたし。退役せざるを得ない者もいた。 ミカエル:しかし、お前は生きながらえた。さらに私はお前が怪我をしたところすらも見たことが無い。 エイキッド:それは―― ミカエル:それはサボっていただけ。なんて通用すると思うなよ? エイキッド:・・・っ。でも、実際そうっすから・・・ ミカエル:ほう。言い張るか。まあいい。嫌でもわかるだろうさ。次の任務ではサボることなど出来はしないのだから。なにせ私と2人きりなんだからな。 エイキッド:あの・・・断る権利などは・・・ ミカエル:あるわけがないだろう。 エイキッド:ですよね・・・。はあ、わかりましたよ。それで、どんな任務なんすか? ミカエル:ああ。皇女様の護衛任務だ。 エイキッド:は!?皇女様って、あの絶世の美女と言われている? ミカエル:ああ。そのお方で間違いない。 エイキッド:団長。ここでの話、無かったことに―― ミカエル:断る。 エイキッド:そんなぁ。俺には荷が重いですって ミカエル:私が半分背負ってやるじゃないか。 エイキッド:そういう問題じゃ・・・ ミカエル:これは決定事項だ。日取りは追って連絡する。せいぜい準備を怠るなよ。それでは私は先に失礼する。 エイキッド:はい。わかりました・・・ ミカエル:まあそんな暗い顔するな。ここの代金は私が持ってやる。最後の酒にならんよう祈ってるよ。じゃあな。 エイキッド:ははは・・・アンタのせいだっての。はぁ・・・どうやってやり過ごすかな・・・ 0:間―― ミカエル:お、逃げずに来たか。感心だな。 エイキッド:よく言いますよ。逃げたらどうせ追ってきて殺しに来るでしょ? ミカエル:よくわかってるじゃないか!勘の良い奴は嫌いじゃないぞ。 エイキッド:認めるんすね・・・一応今日の任務の確認しますね。 ミカエル:意外だな。 エイキッド:何がすか? ミカエル:何かやる気みたいだからさ。 エイキッド:俺だって上官と2人ってなったら流石にちゃんとしますって。 ミカエル:普段からちゃんとしてたら、今日みたいなことにはならなかったかもな。 エイキッド:ええ。少し後悔してますよ。・・・確認してもいいすか? ミカエル:ああ。すまない。頼むよ。 エイキッド:今回の任務は、皇女様が外交に行かれるケルベロス公国への旅路を、俺と団長の2人の護衛だけで向かう。道中は騎士の駐屯地のある町で危険な夜はやり過ごす・・・で間違いないっすか? ミカエル:ああ。その通りだ。 エイキッド:改めて言うっすけど、無謀すぎやしないっすか? ミカエル:仕方ない話だ。ケルベロス公国は1年前、第2王子が他国の刺客に殺されている。いくら、懇意にしている我が国であっても手放しで歓迎は出来ないだろうさ。 エイキッド:そうかもしれないっすけど。2人は心もとないっすよ。 ミカエル:ほう。私がいても不安と言うか。 エイキッド:団長がどうとかじゃなくて、人数のことを言ってるんすよ。道中に襲われるリスクが―― ミカエル:先方の指定だ。向こうさんとて、我が身が可愛いのだ。それは受け入れるしかあるまいよ。 エイキッド:・・・はあ。わかりました。心を決めますよ。 ミカエル:よろしい。そろそろ、皇女様が来られる。気を引き締めて置けよ。 エイキッド:了解っす。 0:皇女が来られ、護衛の2人も馬車の前にて歩き出す。 エイキッド:それにしても、やっぱり美人すね。皇女様。 ミカエル:ああ。他国からの求婚者も後を絶たないほどだ。わかっているとは思うが、くれぐれも―― エイキッド:わかってるっすよ。身分の違いもありますし、何より俺はああいう人は苦手っす。 ミカエル:何だ?お前こそ男色か? エイキッド:違いますよ。どうせなら強い女が好きなだけです。 ミカエル:ほう。何でまた。 エイキッド:自分が守る手間が省けるんで。・・・っ! ミカエル:どうした? エイキッド:恐らく前方から、魔物が来ます。 ミカエル:何も見えないが・・・ エイキッド:馬車を止めて迎え撃ちます。 ミカエル:わ、わかった。馬車を止めてくれ!魔物が来るようだ! 0:数十秒後、前方より魔狼の群れが現れた。 ミカエル:驚いたな・・・本当に来るとは。 エイキッド:信じてなかったんすか? ミカエル:はは。すまない。半分はな。 エイキッド:まあいいっすよ。さあ来ますよ。団長。 ミカエル:ああ!任せておけ! 0:ものの数分で群れを殲滅する。 エイキッド:ふう。終わりましたね。 ミカエル:おい。 エイキッド:・・・なんすか? ミカエル:お前、今まで力を隠していたな。 エイキッド:いやいや、そんなことないっすよ。 ミカエル:いち早く魔物を見つける察知能力だけではない。私と同じペースで動き、正確に急所を穿ち。なおかつ息切れすら起こしていない。 エイキッド:はあ・・・いつもやってますって。俺が魔物が来ると言ってもあいつらは信用しませんけどね。 エイキッド:それに早く仕事を終わらせるために、魔物の急所を狙うのも当たり前のことっす。 ミカエル:それが何故、評価につながらんのだ。 エイキッド:あいつらが倒せる分は倒してもらわないと過剰業務っすから。その時に後衛で寝てるからじゃないですか? ミカエル:何処で身に着けた。 エイキッド:我流っす。幼少から1人で生きれるようにって頑張ったんすよ。 ミカエル:なっ!それを信じろというか・・・ エイキッド:嘘をつく理由ありますか?俺にメリットないっすよ? ミカエル:確かに・・・今日の夜、私と手合わせしろ。 エイキッド:は!?団長とですか?無理っすよ!まだ死にたくないっすもん! ミカエル:なに、殺しはしないさ。ただの好奇心だよ。お前の力へのな。 エイキッド:そんな暴論を・・・ ミカエル:決定事項だ。これ以上の抵抗は無駄だぞ。 エイキッド:・・・はぁ・・・ 0:当日夜。予定通り、町に着き対峙する2人―― ミカエル:さあ始めるぞ! エイキッド:本当にやるんすね・・・ ミカエル:当たり前だ!さあかかってこい! エイキッド:わかりましたよ!いきますよ・・・ ミカエル:はははっ!いい太刀筋だ!弱小の騎士団なら率いれるぞ! エイキッド:結構です!俺はゆったりと過ごしたいんで! ミカエル:ふん。それだけ才に恵まれていながら、勿体無いな。そら! エイキッド:ぐっ・・・やっぱり化け物ですね・・・ ミカエル:その化け物の剣戟を受け止めているのだ。誇るといい!はあああ! エイキッド:なっ!ぐあああ! ミカエル:・・・ふう。この辺で終わるとしよう。 エイキッド:腕がもげるかと思いましたよ・・・今もビリビリしてるっす。 ミカエル:そのつもりでやったが、痺れだけか。 エイキッド:そのつもりだったんすか! ミカエル:実際もげてないんだから文句を言うな。 エイキッド:・・・やっぱ暴論がすげえな。 ミカエル:何だ?まだやりたいか? エイキッド:いやいや!それは勘弁っす!! ミカエル:では先に部屋に戻っているぞ。皇女様はこの町の騎士達が厳重に守っている。ゆっくり戻ってくるがいい。はっはっは。 エイキッド:ふう・・・やり過ごせたか。・・・うん。腕もしっかり動くな。にしても疲れたな・・・ エイキッド:よし。さっさと風呂に入って、早く寝よう。あとは、これ以上目立たないように気をつけないとな・・・ 0:宿舎の大浴場―― エイキッド:さすが、王国直営の宿舎だ。城下町の銭湯にも引けを取らないし、余計な光が無い分、星がとても綺麗に照らしてくる。まさに、絶景だな。 エイキッド:ふう。そろそろ上がるか。今日はいち早く寝ないとな。・・・っ! ミカエル:お・・・お前どうしてここに!? エイキッド:いや普通に風呂に・・・って、え?団長・・・あなた・・・ ミカエル:・・・すまないが、お前を生かして置くわけには行かなくなった。 エイキッド:なっ! ミカエル:私の秘密を知ったお前は大罪人に他ならんのだ! エイキッド:またそんな暴論を! ミカエル:暴論か。たしかにそうなのだろう。だが!私とて守らねばならぬものがある! エイキッド:確かに俺には何もないが、ただ無駄死にするのはごめんだ。 ミカエル:ならば、エイキッド・・・再び剣を取れ。私から逃げおおせたのなら、お前の生を認めてやろう。 エイキッド:・・・わかりました。 0:再度、2人は対峙する―― エイキッド:本当にやりますか?俺は誰にも言う気は無いっすよ。それに誰も俺の言葉なんて信用しないと思いますが。 ミカエル:ふん。その証拠がどこにある。私は騎士でありたい。それを脅かす可能性は全て・・・ぶった切るのみ! エイキッド:別に女でも、騎士は出来ると思うっすけどね。実際男より強いわけだし―― ミカエル:私を・・・女と言うなあああ!! エイキッド:はあ!! ミカエル:なっ・・・わ、私の剣が・・・ エイキッド:折れた剣では、戦えませんね。 ミカエル:お前・・・さっきは力を抑えていたのか? エイキッド:俺は、のんびり生きたいんすよ。だから必要以上の力を奮いたくないんです。 ミカエル:くっ・・・私の負けだ。好きにするがいい。 エイキッド:じゃあ、何で女でありながら騎士を目指したか。それを聞いてもいいすか? ミカエル:・・・わかった。 : ミカエル:私は、騎士爵を持つ家に生を受けた。父の騎士である姿に憧れたが、女は騎士の資格を与えられないと。当時、母に教わった。。 ミカエル:その後、妹が生まれた。病弱だった母は妹を産んだ時に、この世を去った。父は母以外の女と添い遂げることはないと言ったのだ。 ミカエル:その時、私は男として騎士爵を継ぐと決めた。そのために騎士団長へと上り詰めたのだ。 : エイキッド:そんなに権力が大事っすか? ミカエル:なっ・・・そんなことはない!私は・・・ エイキッド:でしょうね。あなたはただ強くなりたいだけだ。戦闘狂にも近く感じるっす。 ミカエル:違う!私は家を―― エイキッド:そんなこと!親は望んでないっすよ! ミカエル:・・・・・ エイキッド:・・・決めました。俺があなたを守るっす。 ミカエル:・・・は? エイキッド:本気で爵位を取りにいきます。あなたが女だと知れてもなんら問題がないように。 ミカエル:どうしてお前がそこまでする!? エイキッド:言ったでしょう?強い女が好きだって。だからあなたを娶ります。 ミカエル:ば、馬鹿か!?私はとうの昔に女を捨てた人間だぞ! エイキッド:そんなの俺には関係無いっすから。もちろん、あなたにもメリットはありますし。 ミカエル:何だ・・・それは。 エイキッド:騎士爵に嫁げば、あなたの血筋も貴族のままだし。あなたは常に自分より強い男と戦える。ね?いい話でしょ? ミカエル:私は・・・まだお前を信用していない。 エイキッド:いいっすよ別に。ただ前向きに考えて欲しいだけっす。断ったからと言って秘密をばらす訳じゃないですし、ちゃんと爵位を取って後ろ盾もするっすよ。 ミカエル:・・・考えておく。 エイキッド:今はその言葉だけで充分っす。あ、最後に1つ良いっすか? ミカエル:何だ? エイキッド:もう少し小さかったら、ばれなかったかもしれないっすね。 ミカエル:・・・っ!き、貴様あああああ!!殺す! エイキッド:今はまだ無理っすよ。これからに期待してるっす。そろそろ寝るっすよ。明日も任務っすから。 ミカエル:くっ・・・屈辱だ・・・ : ミカエル:それからと言うもの。エイキッドは本当に頑張り始めた。護衛任務が終わった後も、全ての任務で皇帝から表彰される程の戦果を上げていた。 ミカエル:彼が騎士爵を授かるのに、そう時間はかからなかった。そして彼は、私の父がしていた王国騎士団総隊長へと上り詰めたのだ。 ミカエル:結局、私が女だとばれることは無かったが・・・私は騎士団長を退役した。 0:数年後―― エイキッド:まだやるんすか? ミカエル:はぁはぁ・・・せめて一太刀くらい当てたいじゃないか。 エイキッド:それ毎日言ってますよ。団長。 ミカエル:・・・もう団長ではない。 エイキッド:え?それはどういう・・・ ミカエル:今日、辞めてきた! エイキッド:あ! ミカエル:や・・・やった。ついに1本取ったぞ! エイキッド:それは、ずるいですって。ってか、急に辞めて大丈夫なんすか?それに俺聞いてないんすけど! ミカエル:ああ。机の上に置いて来た。そんなことより。その話し方、どうにかならんのか?お前の方が上官だと言うのに。 エイキッド:そんなことって・・・口調はクセっすよ。団長だってそのままじゃないっすか。 ミカエル:私はお前が変えたらすぐにでも変えてやる。その・・・ちゃんと・・・騎士爵の妻として、恥ずかしくないように・・・ エイキッド:えっと・・・何か照れるんすけど・・・でも、何でまた急に。 ミカエル:少し腹が出てきたんだ。 エイキッド:え。太ったんすか? ミカエル:ち、違うわ!お前の・・・私達の子だ。 エイキッド:え、えええええ!?マジっすか!?剣なんて握っちゃダメっすよ!! ミカエル:だから辞めてきたんじゃないか。 エイキッド:家でもダメっす!・・・ははは。 ミカエル:どうした?急に笑い出して。 エイキッド:団長。俺にも守りたいものが出来たっす。ありがとうございます。 ミカエル:もう団長じゃないって言っただろう。 : エイキッド:・・・ミカエル。ありがとう。俺は幸せだよ。 ミカエル:私もですよ。旦那様。秘密を知られたのが、あなたで良かったです。 エイキッド:これからもよろしく頼むよ。 ミカエル:私の方こそ。 : : : 0:Fin―