声劇台本置き場

0：暗い話となっております。気分が悪くなり次第、中断していただいて構いません。 ： パレス：今作の主人公。物心付いた時から、勇者の資質を見込まれ、武術の道に入れられた、男爵家の三男。実家には捨てられたようなもの。 ケイラ：シーフ。ベテラン冒険者。罠の取り外し、斥候など万能にこなす。優秀で優しい。しかし、死に際、呪いをかけられたことにより歪む。 フィル：聖剣士。若いが、かなりの技の使い手。シェイナと恋仲ではあるが、性格がかなり捻じ曲がっている。普段は隠しているが、こいつが全ての元凶。 シェイナ：フィルと恋仲の魔導師。全ての属性を使いこなす。落ち着いた雰囲気をしているものの、あまり考えることには向いていない。気弱で直情的な女 ラーク：勇者の資質を見込まれた宿屋の青年。過去に勇者に救われたことがあり、彼に憧れている。純粋な心を持っているがゆえに、悲惨な運命を辿る。主に語り手を担当。 ： ： 0：（本編） ラーク：今より少し前の話。僕達の住む国、フェニキア王国では1人の勇者がもてはやされていた。 ラーク：この国では、3歳を迎えた子供は教会から神託を授かり、資質を教わる。様々な職業の中から自分に1番合った職業を選べるように。 ラーク：彼は勇者の資質を持っており、貴族の生まれでありながら家を捨て、勇者となる為、幼少から武術の道を歩んだ。 ラーク：その彼の姿は、たくさんの国民を虜にした。僕もその中の1人であった。あの時までは・・・ ： 0：数年前。フェニキア王国。パレス率いるパーティが魔物を討伐し、凱旋していた。 0：馬車内にて―― ： ケイラ：本当、すっごい歓声ね。人気者だわ。 シェイナ：確かにね。毎回帰る度に。よく飽きないわね、こいつら。 フィル：どうせほとんどがパレスの信者だよ。貴族様なのに、家を捨ててまで俺たちを守ってくれてるんだ！ってな。 ケイラ：そんな言い方ないじゃない。パレスが国民を守ってるのは確かな話でしょ。 フィル：そこを言ってるんじゃねぇんだよ。この国のために家を自分で捨てたと思ってるのが滑稽だって言ってんだよ。 シェイナ：ふふっそれは違いないわね。所詮、目に見えるものしか見えてないのよね。こいつらは。 ケイラ：あんた達いい加減に・・・ パレス：落ち着けよ。国民の前だ。声は聞こえなくても、さすがに掴みかかったら不安を仰ぐだろ？ ケイラ：でもあんた・・・ パレス：大丈夫。家から放り出されたのは本当のことだし。それに2人の口の悪さにはもう慣れてるよ。 シェイナ：さすが勇者様は懐が深いわね。全てを許してくださる。 フィル：聖職者の方が向いてたんじゃないのか？ パレス：その適正は無かったぞ。勇者の資質は、それ以外の資質がほぼない人間しか待たないからな。 フィル：知ってるよそんなこと。嫌味も通じねえのか？ シェイナ：そんなにイライラしないでよ。早く部屋取って楽しみましょ？ フィル：・・・ふん。 シェイナ：何よ。つれないわね。 ケイラ：最悪ね・・・ パレス：まあまあ。戦いのとき、しっかりしてくれればそれでいいじゃないか。 ケイラ：・・・パレスがそれでいいなら、いいんだけど。あ、今日の宿はいつものとこなの？ パレス：そうだな。ラークの宿屋だ。 シェイナ：あそこ良いわよね。安い割にご飯も美味しいし、ベッドもフカフカだし。 ケイラ：そうね。居心地も良いし、私も大好きよ。 フィル：結構稼ぎあるんだから、もっといい部屋にしたいけどなあ。 シェイナ：どうせどこ行っても文句言うくせに・・・ フィル：何か言ったか？ シェイナ：いいえ、何も。。 ケイラ：あ！ラークがいるわ。出迎えてくれてるわよ。 0：馬車を降りる一行。 ラーク：勇者様！お疲れ様です。 パレス：ああ。ありがとう。 ケイラ：ラークもパレスのファンなのね。 ラーク：はい！大ファンです！でも、みなさんのことも好きですよ！ シェイナ：本当かしら？ついでじゃないでしょうね。 ラーク：そんなわけないじゃないですか！フィルさんは強くて頼もしいですし、シェイナさんは若いのに大魔道師ですし、ケイラさんは、えっと・・・凄いです！ ケイラ：なんか私だけ大雑把じゃないか？ フィル：見る目あるなぁ。お前もきっといい男になるよ。 パレス：そうだな。ラークはこのまま育って欲しいもんだ。 ラーク：あはは。照れますね。 シェイナ：今のところはただのガキだけどねー。 ラーク：もうガキじゃないですよ。16歳になったんです！冒険できる歳です！ ケイラ：もうそんな歳なの？時の流れは速いわね。 ラーク：これから鍛錬して強くなって、みなさんに追いつきます！ パレス：ああ。期待してるよ。 シェイナ：ねえ早く入らない？もう疲れたんだけど。 ラーク：あっすみません。すぐご案内しますね！ 0：宿、室内。 ケイラ：お疲れ様。今回も疲れたわね。 パレス：そうでもないよ。いつもケイラが完璧に視察してくれるから、最小限の力で切り抜けれる。ありがとう。 ケイラ：急に褒めないでよ。調子狂うじゃない。 パレス：はは。ごめんごめん。でも、いつも感謝してるんだよ。 ケイラ：私も感謝してるわよ。・・・何か照れるわね。・・・ん？ パレス：どうかしたか？ ケイラ：誰か部屋の前に来てるわね。多分ラークだと思うけど。 0：ケイラ、入り口に向かう。 ラーク：あ。お疲れ様です。 ケイラ：やっぱりラークだったわね。パレスに用事？ ラーク：は、はい。 ケイラ：わかったわ。じゃあ私は少し出かけるわね。立ち寄るところもあるし。じゃあね。 0：間― パレス：どうした？話があるんだろ。 ラーク：はい・・・失礼します。 パレス：そんな畏まるなよ。堅苦しいのは苦手だぞ？ ラーク：すみません・・・あの、勇者様。 パレス：何だい？ ラーク：僕・・・えっと・・・ パレス：ゆっくりでいいから、落ち着いて話してくれ。 ラーク：（深呼吸）・・・僕は騎士団に入ることにしました。 パレス：そう・・・なのか。 ラーク：早く強くなって、勇者になるんです。それで勇者様に――― パレス：（食い気味に）ラーク。あまり大きな声で言ってはいけない。君に資質が見出されたことは秘匿されてるんだ。勇者が2人現れると、内戦の火種になりかねないから。それはわかるな？ ラーク：す、すみません・・・ パレス：いいや。気持ちはすごく嬉しいよ。ありがとう。きっと君なら開花も早いはずだ。頑張れよ。 ラーク：はい！頑張ります！ 0：扉の外に1人の影があった。 フィル：へぇ・・・そう言うことか・・・ははは、楽しくなってきたな。俺が1番になれるチャンスがやっと回ってきたわけだ・・・あとは、あいつをどうにかしないと・・・な。くくくくく・・・ 0：孤児院前― シェイナ：またここに来てたのね。 ケイラ：シェイナ？珍しいわね。こんな町の外れまで来るなんて。フィルと一緒じゃなかったの？ シェイナ：どこかに行っちゃったの。だから仕方なく、お酒でも買おうと思って。 ケイラ：そうなのね。それで、結局どうなの？ シェイナ：何がよ。 ケイラ：うまくいってるの？フィルと。 シェイナ：・・・さあね。時々、彼が何考えてるのかわからないわ。 ケイラ：確かにね。私も時々、信じられなくなるわ。男って生き物は。 シェイナ：ふぅん。見た目も綺麗な方だし、ちょっとは男の影でもあるかと思って、わざわざこっちまで来たけど。その様子じゃ無さそうね。 ケイラ：まぁね。どっちかと言うと、男より孤児院にいる弟達の方が気になるわ。 シェイナ：血も繋がって無いのに、よくそこまで想えるわね。自分の給金もほとんどここに使ってるんでしょ？ ケイラ：金はまた稼げばいいわ。それに、血の繋がりよりも、心の繋がりの方が大事だと思うわよ。私はね。 シェイナ：心の繋がりねえ・・・私にはわからないわ。 ケイラ：そのうちわかるわよ。シェイナにも。 シェイナ：はいはい。精進しますよ。お母さん。 ケイラ：ちょっと！私はまだあんたを産むような歳じゃないわよ！ ： ： ラーク：この時までは、まだ繋がりがあったのです。しかしこの2日後。その繋がりが一気に綻び、崩れ去る事件が起きてしまいました。 ： 0：孤児院近くの路地裏― フィル：ごめんなあ、待たせたか？ ケイラ：ん？ええ、少しだけね。 フィル：少し準備に手間がかかっちゃってよ。 ケイラ：それで、何の用事なの？シェイナとの恋の相談かしら？ フィル：いや。違うな。 ケイラ：だったら何なの―― フィル：はぁ！ ケイラ：かはっっ！！・・・な、何のつもり・・・？ フィル：ははは！まさかお前ともあろう奴が、俺みたいなのに警戒を怠るなんてなあ。本当、お人好しだな。 ケイラ：どうして・・・裏切るつもり！？ フィル：裏切るも何も。俺は最初からお前らと馴れ合う気なんて、さらさらないんだよ。俺は聖剣士だぞ？稀有な存在で、さらにその中でも群を抜いて資質があった！ フィル：それなのに・・・それなのに勇者ってだけで俺より崇められて・・・気に入らないんだよ！ ケイラ：たった・・・それだけのことで？狂ってる・・・狂ってるよあんた！ フィル：ふん。何とでも言えよ。お前もこれから狂うんだからよ。知ってるか？この魔具。 ケイラ：・・・っ！それは・・・ フィル：やっぱ知ってたか！こいつから出た魔力は身を腐らせ、そして魂までも侵食する・・・さあ怨念となって俺の意のままに働けよ？ははははは！！！ ケイラ：く・・・そ・・・みんな・・・パレス・・・ごめんね・・・ フィル：ははははは・・・次はあいつに仕事してもらわなくちゃな・・・くくく・・・ははははは！！！ 0：間― ケイラ：・・・ここはどこかしら？ ケイラ：私は、何してたんだっけ？・・・っ！何で・・・どうして私が倒れてるの・・・？ ケイラ：あ・・・そうだ。私はフィルに殺されて・・・殺されて？・・・いいえ、違うわ。 ケイラ：私は解放されたのよ！魔物たちとの戦いも、孤児院に寄付も！もうやらなくていい。あはは・・・私は幸せよ。 ケイラ：・・・いや、まだよ。私をこきつかった奴らを殺してやらなきゃ気が済まないわ！殺してやる。あいつら全員殺してやる！あはははは！！ ： 0：ララァの宿― ラーク：はぁ・・はぁ・・勇者様！ パレス：ど、どうしたんだ。そんなに急いで・・・ ラーク：（息切れしながら）あの・・・ケイラさんが・・・ パレス：落ち着け。ケイラがどうした？ ラーク：・・・殺されました。 パレス：・・・え？何を・・・言ってるんだ？ ラーク：（涙を堪える） パレス：ケイラは優秀で、暗殺者でも殺せないと言われるシーフだぞ？誰が殺せるって言うんだ。誰だ・・・誰なんだよ！ ラーク：勇者様っ・・・苦しい・・・です。 パレス：・・・っ！すまない・・・ラーク、ケイラの遺体はどこにある？ ラーク：今、教会に運んでるそうです・・・ パレス：行って来る。 ラーク：・・・はい。僕も―― パレス：無理をしてはいけない。落ち着くまでここにいるんだ。別れまではまだ、時間があるから。 ラーク：・・・はい。・・・わかりました。 ： ラーク：勇者様は軽く僕の肩を叩いて、微笑んだ後、部屋を出て行きました。1番無理をしているのは勇者様なのに。 ラーク：パーティメンバーの突然の訃報。それだけでも膨大なダメージを負った勇者様に、この夜。さらに心を抉る様な事態が待っていました。 ラーク：そして、僕自身の未来も大きな音を立てて崩れていくのでした・・・ ： 0：教会前―たくさんの人でごった返している。 ： シェイナ：パレス。ようやく来たのね。 フィル：遅かったな。 パレス：・・・ケイラは？ フィル：教会の棺の中だってよ。 パレス：・・・・・ フィル：みんな、道を開けろ。・・・行けよ。 パレス：ありがとう・・・ 0：間― パレス：嘘・・・じゃないんだな。本当に、死んでしまったのか・・・誰が君をこんな姿に・・・ パレス：・・・酷い傷だ。強い呪いのようなものを浴びたのか。どうしてあんなに警戒心の強い君が。・・・違う。そんなわけない。ありえない。・・・まさか、そんなこと・・・するわけが無い。 ： シェイナ：遅かったわね。安らかな顔してた？私はこういうの苦手であんまり見たくないのよ。 パレス：・・・っ。 シェイナ：ちょ、ちょっと！何なのよ、あいつ・・・ フィル：ほっとけよ。いくら強くても、まだまだ経験が足りないな。 シェイナ：そんなものなのかしら。 フィル：それより、部屋に戻ろうぜ。 シェイナ：え？別にいいけど。どうしたの？ フィル：今日はそういう気分なんだ。 シェイナ：冗談でしょ？こんな時に・・・ フィル：何？嫌なのか？じゃあいいや。その辺で適当に――― シェイナ：そうは言ってないでしょ！・・・わかったわよ。早く戻りましょう。 フィル：さすがシェイナ。そういうとこ好きだぜ。 シェイナ：はいはい、光栄ですこと。 0：間― シェイナ：・・・今日、激しかったわね。何かあったの？ フィル：別に。気分だよ気分。 シェイナ：嘘つかないで。今までそんなこと無かったじゃない。 フィル：・・・・・ シェイナ：話してよ。それとも、私にも話せないようなことなの？ フィル：・・・嫌われたくないからさ。 シェイナ：嫌いになんてならないわよ。 フィル：本当か？信じていいのか？ シェイナ：ええ。何でも聞いてあげるわ。 フィル：ケイラ殺したの・・・俺なんだよ。 シェイナ：・・・え？今、何て言ったの？ フィル：ケイラを殺したって言ったんだよ！ シェイナ：な、何で・・・何でそんなこと・・・ フィル：仕方なかったんだよ！俺の秘密を探ろうとするから・・・ シェイナ：秘密？何よ、秘密って―― 0：部屋の外から物音― シェイナ：・・・っ！誰！？ フィル：ラークかな・・・ シェイナ：・・・っ！！ フィル：お、おい！どこ行くんだよ！ シェイナ：追いかけるのよ！このままだと、パレスのところに行っちゃうでしょ！ フィル：待てって！ フィル：・・・な～んてな。ここのやつらは本当に馬鹿ばっかりで助かるわ。さぁ次世代の勇者さんよ。そのままパレスを貶めてやってくれ。はははははは！！ ： 0：同時刻、孤児院前― ： パレス：・・・ここだな。ケイラが殺されたのは。正面から呪いを・・・そんなこと本当にありえるのか？よりにもよって君に？ ケイラ：それがあっちゃってねぇ。私も驚いたのよ。 パレス：・・・っ！誰だ！？ ケイラ：あぁ。ごめんなさいね。今は姿が見えないの。魂だけの状態、いわゆるアストラル体ってやつね。 パレス：・・・本当に・・・本当にケイラなのか？ ケイラ：本当よ。ごめんね。こんなことになっちゃって。 パレス：君が謝ることじゃないだろ！君は・・・何も悪くないじゃないか・・・ ケイラ：うん・・・でも今、パレスを泣かしてるのは私だから。 パレス：（深呼吸）誰が君を殺したんだ？ ケイラ：やっぱり・・・気になるのね。 パレス：当たり前だろ。許せない・・・許せるわけが無い！ ケイラ：・・・気付いてるんでしょ？ パレス：・・・え？ ケイラ：遺体の傷跡やこの場所。何より、私が油断する相手。それだけで思い当たる節があるわよね。 パレス：それは・・・ ケイラ：それであってるわよ。あなたが今、頭の中で思い浮かべてる人物。それが私を殺した犯人。 パレス：え・・・それじゃ・・・嘘だろ・・・ ケイラ：嘘なんかじゃないわ。私だって死んだあとに何度も思った。似ているだけよ、きっと違う。あいつがそんなことするわけないわ！ってね。でも・・・これが真実なのよ。 パレス：そんな・・・シェイナが君を・・・？ ケイラ：・・・・・ パレス：どうして？わけがわからない・・・ ケイラ：私だってわからないわよ。でも、起きてしまったことなの。どうしようもないわ。 パレス：・・・・・ ケイラ：あなたはこれからどうするつもりなの？ パレス：俺は・・・ ケイラ：あいつと一緒にいてはいけない。でも、私の仇なんてものは取ろうとしないで欲しいの。今以上に苦しむパレスを見たくないわ。 パレス：嫌だ。君を殺しておいてヘラヘラしてるやつをただ許すなんて、俺には出来ない！ ケイラ：パレス、これはあなたのために言ってるの。そんな感情は、何の得にもなりはしないのよ。 パレス：無理だ！せめて、君に謝らせて、どうして殺したのか聞かないと気が済まない！ ケイラ：行かないで！パレス！！ ： ケイラ：・・・行っちゃったわね・・・ふふふ。、やっぱりまだまだガキね。扱いやすくていいけど。さぁ見せてちょうだい。あなたがどこまで堕ちていくのかを、ね。はははははは！ 0：間― シェイナ：待ちなさい！ ラーク：・・・はぁ、はぁ シェイナ：ちっ！逃げ足が速いガキね！！ ラーク：はぁ、はぁ。ケホケホ！・・・もう、追ってきてないよな・・・ ： ラーク：フィルさんとシェイナさんが話してる内容を聞いてしまった僕は、勇者様にそのことを伝えようとしました。 ラーク：この頃の僕は焦っていたんでしょう。物音を大きく立ててしまい、シェイナさんに見つかってしまったのです。必死に走って街の路地へと辿り付いたのですが・・・ ラーク：もしあの時、僕が物音さえ立てなければ、違う未来があったと思うと・・・後悔の念が今も尚、消えることはありません。 ： ラーク：・・・そろそろ勇者様のところに行かないと。・・・っ！ シェイナ：見つけたわよ。どこに行くの？ ラーク：ゆ、勇者様のところです。 シェイナ：ふぅん。何をしに？ ラーク：・・・ケイラさんの話をしに行くんです。 シェイナ：隠さないのね。聡明なのか、それとも半分諦めてるだけなのか。どっちにしろ、行かせるわけにはいかないわ。 ラーク：どうしてですか！？ シェイナ：そんなことをしたら！フィルが捕まってしまうでしょ・・・ ラーク：それは、そうですけど。でもケイラさんが――― シェイナ：死んだやつの話をしないで！！私は・・・フィルさえいればそれで・・・ ラーク：そんなの・・・そんなのは愛なんかじゃありません！ シェイナ：あんたに何がわかるの！あんたみたいなガキと同じにしないでよ！ ラーク：・・・フィルさんは罪を償うべきです・・・どんな理由があったとはいえ、許されません！ シェイナ：わかってるわよ！そんなこと！ ラーク：・・・そこをどいてください シェイナ：無理よ。あんたには私と一緒に来てもらうわ。はあ！ ラーク：くっ！！緊縛の魔術・・・っ。解いて下さい！ ： ラーク：シェイナさんは聞く耳を持たず、僕の身体を重力魔法で強引に引っ張っていきました。 ラーク：街の人も怪訝な顔で僕たちを見つめていましたが、今の彼女にはそれを気にする余裕も持ち合わせてないようでした。 ラーク：街の外れに差し掛かった頃、最悪の出会いが不気味な笑みを浮かべながら迎えに来ました。 ： パレス：シェイナ？何をしてるんだ！？ シェイナ：パレス！？くそ！ ラーク：・・・っ！ パレス：シェイナ・・・お前・・・ シェイナ：近づかないで！そこから少しでも動いたら、このガキを殺すわ！ ラーク：・・・勇者、様。 パレス：ラーク、必ず助けてやるから、少し待っててくれ。 ラーク：（頷く） パレス：どうしてだシェイナ！どれだけ罪を重ねるつもりだ！ ケイラ：あら、最悪の形になったわね。 パレス：・・・ケイラ！？ ケイラ：ええ。あの子。余裕が全く無いわね。杖を握る手も震えてる。このままじゃラークは殺されるわよ。 パレス：・・・どうすればいい？ ケイラ：ごめんなさい・・・こっちが先に。としか思い付かないわ・・・ パレス：そんな・・・ シェイナ：何を1人でブツブツ言ってんのよ！！ パレス：・・・・・ シェイナ：え？ははは・・・あんた、私に剣を向けるの？ パレス：・・・ラークから手を離せ。。 ケイラ：無駄よ。そんな声、彼女には届いてない。それから、ここで逃がせば、間違いなくラークは戻っては来れないわ。よく考えるのよ。 パレス：シェイナ！術を解け！お前には聞きたいことがたくさんあるんだよ！ シェイナ：うるさい！私は、あんたに用なんて無いのよ！ パレス：・・・そこまで腐ってるのか？彼女を殺して、次はラークか！ シェイナ：は？何わけのわからないこと言ってるのよ！ ラーク：勇者様！それは――― シェイナ：ちぃ！！動くな！クソガキ！ ケイラ：今よ！行って！ パレス：うわあああああ！！！！ シェイナ：が・・・パレ・・・ス、あんた・・・ ラーク：・・・あぁ・・・うわああああ！！！ パレス：お、俺・・・何てことを・・・ ケイラ：あーあ。殺しちゃった。よく考えてって言ったのに。まだまだ子供なのよ君も。でもこれから大人になるチャンスね。毎日忙しくなるわよ。せいぜい頑張りなさい。仲間殺しの勇者さん。あはははは！！！ パレス：あ・・・ああ・・・うわああああ！！ ： ラーク：勇者様は発狂し、そこから立ち去っていきました。しかし、僕の悲鳴と勇者様の叫びを聞いた人たち数人がそこにいました。 ラーク：その日から勇者様は、仲間殺しの勇者と国中で知られることとなり、僕達の目の前に姿を現さないようになりました・・・ ： フィル：くくく。みんな本当によく踊ってくれるな。・・・あと少しだ。あと少しで俺がこの国で１番の羨望を浴びる人間になる。くくく・・・ははははは！！ ： シェイナ：・・・私、死んだのかしら。ふふっ。つまらない人生だったわね。戦って稼いで、酒飲んでの繰り返し・・・最後は惚れた男の力にもなれずに空回りして、結果パレスに殺されて。 シェイナ：あはは・・・本当笑える。次生まれ変わるなら、ちゃんと普通に生きたいな・・・ ケイラ：えー。それって面白く無いわよ？ シェイナ：ケイラ！？生きてたの？ ケイラ：いいえ。死んでるわよ。あんたと同じ。 シェイナ：・・・ああ。そういやそうだったわね。もう、死んでるんだった。・・・成仏とかしないものなの？ ケイラ：うーん。ちょっと諸事情があってね。それでシェイナにも手伝ってもらいたいなって。 シェイナ：え？あんた、何を言って・・・っ！いやああああ！！ ケイラ：あんたも私と同じ怨念になって彷徨うのよ・・・一緒に楽しみましょう。あははははは！ ： 0：数年後、現在―― ： ラーク：あの事件から数年の時が経ちました。僕は騎士団で鍛錬を積み、王家から勇者の称号を賜りました。 ラーク：・・・勇者様は、国から仲間殺しの罪を問われ、国内外に指名手配され、罪人とされました。 ラーク：恐らくフィルさんの仕業でしょう。シェイナさんだけでなく、ケイラさん殺しの汚名も勇者様が背負わされておりました。 ラーク：当時の僕はまだ若く、勇者の資質も明かしていなかったため、何を言っても信じてもらえず、自分の無力さを恨みました。 ラーク：この日、僕は王家に呼ばれて城へと来ていました。勇者となった僕の話なら聞いてもらえるのではないかと、ずいぶん頑張ってきましたが・・・ ラーク：王様から言い渡されたのは、罪人パレスの処刑命令でした・・・ ： 0：処刑台―― ： パレス：ラークだな・・・大人になったなあ。立派だぞ。 ラーク：勇者様！ パレス：静かに。大きな声を出すな。俺との関係性を疑われる。それに・・・俺はもう勇者じゃない。ただの罪人だ。 ラーク：そ、んな・・・ パレス：もう、疲れたんだ。お前の手で死ねるなら本望だよ。・・・すまないな。 0：観客から「早く殺せ！罪人を許すな！」など、様々な罵声が飛び交っている。 ラーク：・・・っ！ パレス：落ち着け。俺が言う。 パレス：（大きく息を吸って）うるさい！お前達が何をされたって言うんだ！都合のいいときはちやほやして、自分達が気に入らないことがあったら憤慨するんだ！お前らを守ろうとした俺が馬鹿だった・・・全部壊してやるよ！！この世界も、お前らも！！ 0：処刑場が静寂に包まれる。 ラーク：勇者、様・・・ パレス：驚かせてしまったか？すまない。だが、これでお前を責める人間は誰もいないよ。 ラーク：僕には・・・できません。 パレス：・・・お願いだ。もう、楽にさせてくれ。 ラーク：・・・・・ パレス：ラーク。お前しかいないんだ。俺を・・・殺してくれ・・・ ラーク：・・・せめて痛み無く、一太刀でいかせていただきます。 パレス：ありがとう。ラーク。お前のことは大好きだ。俺には弟がいなかったから、本物の弟みたいに思っていた。 ラーク：・・・っ。勇者様・・・さようならです。僕も大好きでした・・・ パレス：ああ・・・元気でな・・・ ： フィル：やった・・・ようやくだ。これであとは、あいつが心を病むのを待つだけ・・・くくく。 ラーク：誰が心を病むんですか？ フィル：・・・っ！お前、なぜここにいる？王家に呼び出されているはずだろ！？ ラーク：やっと見つけました。永かった・・・ずっと探していたんですよ。フィルさん。 フィル：お、俺に何か用があるのかよ。 ラーク：ええ。その通りです。 フィル：え・・・は？嘘だろ？どうして今、剣を抜くんだよ！ ラーク：・・・あなたを殺します。 フィル：・・・っ！お前、勇者だろうが！お前もパレスと同じ運命を辿るつもりか！？ ラーク：気安く勇者様の名前を言うな！！・・・僕はもう、失うものなんてない！ フィル：そ、そんな・・・あと少しなのに！ シェイナ：ふふ。久しぶりね。 フィル：この声・・・シェイナ！？何で・・・ シェイナ：ケイラが離してくれなくってね。成仏しそこねたのよ。 ケイラ：こんにちは。その節はお世話になったわね。フィルもこっちにいらっしゃいな。何も考えなくていいから楽よ？ねぇパレス。 パレス：ははっ。そうだな。次こそはちゃんと仲間でいたいもんだ。ははは。 フィル：そんな・・・嫌だ。俺は死にたくない！ ケイラ：誰も死にたくはなかったわよ。でもあんたが・・・この結末を招いたのよ！ふふふ、あははははは！！！ シェイナ：そうね。もう無理よ。諦めるしかないわ。 パレス：自業自得だな。 フィル：嫌だ・・・嫌だあああああ！！！！ ： ラーク：僕はフィルさんを殺した。これで勇者パーティは全滅となりました。 ラーク：フィルさんの死は、仲間が処刑されたことを憎み、私に襲い掛かったとして処理されました。 ラーク：それから僕は何事も無く、勇者として生きてきました。・・・それも今日で終わり。もう疲れた・・・ シェイナ：ついにこっちに来る気になったの？ ケイラ：思ったより早かったわね。 フィル：こんなもんだろ。俺としては、もう少し早いと思ってたんだけどよ。 パレス：ラーク。本当にいいのか？こっちに来たら、もう戻れないんだぞ？ ラーク：ええ。いいんです。この国の人間を守る気になれませんから・・・ パレス：そうか・・・なら歓迎するよ。いらっしゃい。 フィル：いらっしゃい。 シェイナ：いらっしゃい。 ケイラ：いらっしゃい。 ラーク：はい。みなさん、よろしくお願いします。 ： ラーク：僕はついに勇者様たちと本当の仲間になることが出来ました。開放的な毎日にいつも感謝してます。 ラーク：・・・よかったら貴方も、僕たちの仲間になりませんか？ふふふ・・・あはははははは・・・・ ： ： 0：Fin―