台本概要
423 views
タイトル | ありがとう、また逢おう。 |
---|---|
作者名 | VAL (@bakemonohouse) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 3人用台本(男2、女1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
死んだ親友を取り戻す話。 特に制限はございません。 423 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
ケイ | 男 | 121 | 本文参照 |
レイ | 女 | 102 | 本文参照 |
ジン | 男 | 114 | 本文参照 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:(登場人物紹介)
ケイ:今作主人公。研究員。レイとジンとは友人で同じ大学に通っていた。レイとは家が近く、想いを寄せており、現在は夫婦ではあるが・・・
レイ:ケイの妻。献身的な性格で、病魔に侵されたケイを支えている。最期まで添い遂げようと決めている。
ジン:故人。レイとケイの友人で、在学中に不慮の事故で命を落とす。ケイと同じく、レイのことが好きだった。
:
0:(本編)
:
ケイ:今でも夢に見る。・・・お前の変わり果てた姿を。
ケイ:何処で間違ったのかな。出会った事さえ間違ってたのかな。
ケイ:悔やんでも仕方ないことはわかってる。だから俺が助けに行くよ。
ケイ:例え、誰も隣にいなくなったとしても、お前のいない世界じゃ何も意味がないからさ・・・
:
0:研究室――
レイ:「体調はどんな感じ?」
ケイ:「うん。今日はいい感じだよ。」
レイ:「・・・本当に行くの?」
ケイ:「ああ。そのために研究してきたんだからな。」
レイ:「でも治療してから行ったって――」
ケイ:「もう助からないよ。手遅れだ。自分の体のことくらい、自分が1番わかってるよ。」
レイ:「私はケイが――」
ケイ:「それ以上言わないでくれ。しんどくなるから」
レイ:「ごめん・・・なさい。」
ケイ:「俺は今まで、今日のために生きてきたんだ。あいつを救うために。」
レイ:「ねぇ、本当に上手くいくの?」
ケイ:「正直わからない。試すことも不可能だし、これ以上かけれる時間も無いからね。」
レイ:「そう・・・なのね。」
ケイ:「大丈夫。あいつだけは絶対に助ける。」
レイ:「・・・そう。」
ケイ:「・・・・・」
レイ:「何度も言うけれど、ジンが死んだのは、ケイのせいじゃないわよ?」
ケイ:「違う。俺のせいだ。」
レイ:「違わない。悪いのは事故の加害者だけよ。」
ケイ:「俺があの時、レイを引き止めなけりゃ、きっと今もあいつは・・・」
レイ:「そんなの・・・」
ケイ:「レイだって、あいつが生きてたらきっと――」
レイ:「やめてよ!私はあなたを選んだの。ケイを愛してるのよ!」
ケイ:「それはっ!・・・いや、すまない。ありがとう。」
レイ:「・・・・・」
ケイ:「・・・そろそろ行こう。時間が惜しい。」
レイ:「・・・わかったわ。行きましょう。」
0:
ケイ:「操作方法はわかる?」
レイ:「ええ。何度も練習したから。」
ケイ:「・・・ごめんな。」
レイ:「本当よ。自分の夫を自分の手で殺すようなものですもの。」
ケイ:「・・・・・」
レイ:「ずっと一緒にいるとね。考えてることがわかるようになるの。」
ケイ:「え?」
レイ:「ケイ。あなた、最悪の場合、自分が身代わりになろうとしてるでしょ?」
ケイ:「・・・っ。そんなこと――」
レイ:「あるわよ。でももしそんなことしたら、ジンが今のあなたと同じ気持ちになるのよ?」
ケイ:「それは・・・ダメだな。」
レイ:「ダメよ。必ず生きて戻ってきて。2人とも。」
ケイ:「帰ってきても、すぐ死んでしまうんだけどね。」
レイ:「それでも、ちゃんと別れはしたいじゃない。結構辛いものよ?別れが言えないのって。」
ケイ:「そうだな。それは俺もわかるよ。」
レイ:「だから、ね?これは約束。」
ケイ:「わかった。約束するよ。」
レイ:「じゃあ、はい。」
ケイ:「マジかよ・・・」
レイ:「昔、よくやったじゃん。指切り。」
ケイ:「そうだけど、こんな歳になってまで――」
レイ:「いいじゃん別に。ほら、早く。」
ケイ:「あ、ああ。わかったよ。」
レイ:「はい。約束したからね。破ったら本当に針千本飲ましてあげるから!」
ケイ:「ははは。それは怖いな。」
レイ:「帰ってくれば良い話よ。」
ケイ:「・・・・・」
レイ:「・・・気をつけて行ってきてね。」
ケイ:「うん。」
レイ:「昔の私によろしくね。でも、浮気しちゃダメだよ。」
ケイ:「それって浮気になるのか?」
レイ:「そりゃそうだよ。今の私を好きでいて欲しいじゃん。」
ケイ:「わかったよ。努力する。・・・そろそろかな。」
レイ:「・・・そうだね。」
ケイ:「すまないけど、身体のことは頼むよ。あっちに行ってる間も同じように時間は経過するだろうからさ。」
レイ:「うん。任せて。ちゃんとお世話してあげる。」
ケイ:「ありがとう。それじゃあ、行ってきます。」
レイ:「行ってらっしゃい。」
:
ケイ:レイが装置のスイッチを入れると、段々と意識が薄れてきた。
ケイ:俺はこれから、過去に戻る。身体は置いて意識だけ。
ケイ:レイは愛していると言っていたけれど・・・きっとそれは――
レイ:「依存だ。なんて考えてるんでしょ。残念だけど、あなたが思ってるより愛してるわよ。例えジンが生きてても、それは変わらない。まあ何度言ってもあなたは信じてくれないでしょうけど。
レイ:だから、帰ってきたら、何度も言ってあげる。私はずっとあなただけを愛してる。ってね。だから・・・ね。必ず帰ってきて・・・お願いよ・・・」
:
0:大学構内――
ジン:「いつまで寝てんだよ。そろそろ起きろって。」
ケイ:声が聞こえる・・・懐かしい声だ・・・良かった。成功したみたいだ。
ジン:「おい。もう置いて帰っちゃうぞー。」
ケイ:「ジン・・・」
ジン:「おっ。やっと起きたか。ってなんだよ。何で泣いてんだ?あくびのしすぎか?」
ケイ:「あ、ああ。そんな感じだよ。」
ジン:「そっか。ちゃんと夜寝ろよな。もういい歳なんだからよ。」
ケイ:「そう・・・だな。今はえっと何歳だっけ。」
ジン:「まだ寝てんのかよ。20歳だよもう。タバコも酒もいける大人になったわけだ。」
ケイ:「20歳か。・・・今日は何月何日だ?」
ジン:「おいおいマジかよ。認知症なんじゃねえの?」
ケイ:「いいから。」
ジン:「はぁ。5月20日だけど。それがどうかしたのかよ。」
ケイ:「・・・っ!い、いや別に――」
レイ:「あっ2人ともまだここにいたの?いつまでたっても出てこないから、探しに来ちゃった。」
ジン:「よう、レイ。何かケイがおかしいんだよ。病院連れて行ったほうがいいんじゃね?」
レイ:「え?どうしたの?熱でもあるんじゃない?」
ケイ:「大丈夫だよ。あ、俺ちょっと用事あるから先帰るわ。また明日な!」
レイ:「ちょっと!ケイ!・・・行っちゃった。」
ジン:「本当、どうしたんだよ。あいつ。」
レイ:「さあ・・・どうしたんだろ。」
ジン:「ま、そのうち戻るだろ。とりあえず帰るか。」
レイ:「そう・・・だね。」
ジン:「どした?お前も何か考え事か?」
レイ:「え。いや、何て言うか・・・」
ジン:「何だよ。はっきりしねえな。」
レイ:「本当にケイだった?」
ジン:「は?どう言う意味だよ。」
レイ:「だから何て言ったらいいかわからないけど、違う人に見えたって言うか・・・」
ジン:「まあ・・・それは俺も感じたけどさ。でもケイはケイだろ。」
レイ:「そうなんだけど・・・」
ジン:「あいつにも何か事情があるんだよ。ゆっくり待とうぜ。」
レイ:「うん。そうだね。」
ジン:「よし。んじゃ、帰るぞ。寄りたいところあるんだよな。来るか?」
レイ:「お、奇遇だね。私もなの。」
ジン:「いいね。どっちから寄る?」
レイ:「近いほうでいいんじゃない?」
ジン:「決まりだな。」
レイ:「私、駅前の本屋さんに寄りたいな。結構近いし。」
ジン:「おっと。俺は大学前のスポーツ用品店だから、俺が先だな。」
レイ:「うっそ。マジ?絶対勝ったと思ったのに。」
ジン:「勝ち負けじゃ無いだろこんなの。」
レイ:「人生は全て勝負ごとで出来ている!」
ジン:「何それ。頭悪そう。」
レイ:「うるさいな。ほら、さっさと行くよ。」
ジン:「はいはい。」
0:
ケイ:危なかった。あのままあそこにいたら、きっと涙を抑えられなかっただろう。子供のように泣きじゃくっただろう。
ケイ:何度も会いたいと願った親友と、1番愛していた頃の妻。色んな感情が混じって、何度も思い描いた場面のはずなのに上手く話せなかった。
ケイ:・・・でも、喜んでばかりもいられない。装置に誤差があった。事故の1週間前に着くようにしていたはずだったのに、
ケイ:いざ着いてみれば、事故の2日前。もう少しずれていれば、取り返しのつかないことになっていただろう。
ケイ:10日ほど経てば、自動的に戻される仕様だ。だが、既にバグが起きている状況では、その仕様すらも信用できないものとなった。
ケイ:事故前に来れたことは不幸中の幸いだったかもしれない。
ケイ:とりあえず今の俺に出来ることは、2日後の事故を防ぐことに全力を尽くすのみだ。
0:
レイ:「ねえ、まだなの?」
ジン:「は?そんなに早く決まるわけ無いだろ。大富豪じゃねえんだから。じっくり選らばねえとな。」
レイ:「さっきから同じようなボールばっかり見てるじゃん。どれも一緒でしょ?」
ジン:「全然違うだろ。手に馴染む感じとか弾み方とか、まずデザインが違うね。」
レイ:「デザインの違いくらい、私でもわかるし。ってか、バスケとかやってたっけ?」
ジン:「いや、俺のじゃねえし。」
レイ:「え?そなの?」
ジン:「お前もしかして、忘れてるのか?」
レイ:「何を。」
ジン:「ケイの誕生日だよ。明後日だろうが。」
レイ:「忘れるわけないじゃん。私が買う本だって、ケイが欲しがってた物理学の本だし。」
ジン:「あいつまたそんなん欲しがってたのか。変わってるよな。マジで。」
レイ:「研究者になって、タイムマシンを作るのが夢らしいからねー」
ジン:「へぇ。何か変えたい過去とかあるのか?あいつ。」
レイ:「それが・・・宝くじがなんとか言ってたような気が・・・」
ジン:「ははは!完全なる私利私欲だな。」
レイ:「結構、欲深いところとかあるからねぇ」
ジン:「確かに。・・・あ、レイ。」
レイ:「ん?」
ジン:「明後日、ケイにプレゼント持ってくだろ?その前にお前の家の近くの公園に来てくれないか?少し話したいことがあってさ。」
レイ:「んー。いいよ。何かは聞かないほうがいい感じ?」
ジン:「そう・・・だな。今はまだ気持ちがまとまってないからさ。」
レイ:「そっか。わかったよ。」
ジン:「よし、これにするわ。」
レイ:「うわ。奇抜な色・・・」
ジン:「でも何かケイっぽくね?」
レイ:「うーん。わかる気がしないでもないね。」
ジン:「だろ?じゃあ次は本屋行くぞ。」
レイ:「やっとかー。本当遅いんだから。」
ジン:「お前だっていつも遅いだろうがよ。」
レイ:「今日はもう決まってるから早いもん。」
ジン:「そうですか。」
レイ:「全然、信用してないね?」
ジン:「そんなことはないよぉ?」
レイ:「その言い方が信用ならないんだってば。」
ジン:「いいから。さっさと行こうぜ。日が暮れるわ。」
レイ:「ジンのせいじゃん!」
:
0:翌日、大学構内。
:
ジン:「おはよ。今日はどうだ?」
ケイ:「どうって何がだ?」
ジン:「んー。やっぱりちょっとおかしいんだよな。」
ケイ:「おかしい・・・って俺がか?」
ジン:「何か、上手く言えないけどさ。おっさんくさい・・・みたいな?」
ケイ:「そ、そんなことないだろ。」
ジン:「昨日からちょっと変なんだよな。何か変な夢でも見たか?」
ケイ:「いや、そういうわけじゃないけど・・・」
ジン:「ふーん。まあいいや。お前にも色々あるだろうしな。」
ケイ:「・・・・・」
ジン:「昨日の用事ってのも、聞かないほうがいいか?」
ケイ:「うん・・・そうしてもらえると助かる。」
ジン:「・・・そっか。」
:
ケイ:自分では気付かなかったけど、話し方が結構変わっていたみたいだ。
ケイ:もし、ここでバレたとしても、結果としてジンを救えればいいと考えたこともあったが、不用意に過去を変えてしまえば
ケイ:沢山の仮説の中で現代に強制送還されるといったケースが1番可能性が高いという結論に至った。
ケイ:だから俺は決して悟られてはいけない。ここに来た意味も、装置を作った意味さえ無くなってしまう。
:
レイ:「2人ともおはよ!」
ジン:「おはよ。」
ケイ:「・・・おはよう。」
:
ケイ:レイが来た。当時は確かこの後・・・
:
レイ:「今日もいい天気だね~明日も晴れるといいんだけど。」
ケイ:「ん?何か用事でもあるのか?学校は休みだし。」
レイ:「あーちょっとね。明日何時がいい?」
ジン:「・・・お前本当、頭回ってねえな。後で言うよ。」
ケイ:「何だよ。2人でどっかいくのか?」
ジン:「そんなんじゃねえよ。」
レイ:「・・・・・」
ケイ:「はは。秘密かよ。何か仲間はずれにされた気分だわ。」
レイ:「ちょっと、ケイ。」
ジン:「落ち着けよ。ガキじゃあるまいし。」
ケイ:「うるせえよ。余裕こきやがって・・・気にいらねえ。」
レイ:「2人ともやめなよ・・・」
ジン:「チッ・・・」
ケイ:「・・・・・」
:
ケイ:まだ若かったんだ。不安と焦燥から、心にも無い言葉を吐いてしまった。
ケイ:まさかこれが、ジンとの最期の会話になるだなんて、思わなかったしな。
ケイ:恐らく、ジンはレイに告白しようとしてたんだろう。そう思った俺は次の日、レイを呼び出して会いに行かせなかった。
ケイ:レイを心配したジンは・・・レイの家に向かう途中で、居眠り運転のトラックにはねられたんだ。
ケイ:だから今日を変えることで、明日の悲劇は起こらないはずなんだ。
:
レイ:「今日もいい天気だね~明日も晴れるといいんだけど。」
ケイ:「ん?何か用事でもあるのか?学校は休みだし。」
レイ:「あーちょっとね。明日何時がいい?」
ジン:「・・・お前本当、頭回ってねえな。後で言うよ。」
ケイ:「明日は晴れらしいよ。よっぽどのことが無い限りは降らないはずだ。」
ジン:「・・・そっか。」
ケイ:「お土産、期待してるよ。」
ジン:「わかったよ。」
レイ:「・・・ケイ。何か無理してない?」
ケイ:「無理?何でそんなこと・・・がっ!!」
ジン:「おい!どうしたケイ!」
レイ:「ちょっと!しっかりして!ケイ!」
ケイ:「だ・・・大丈夫。大丈夫だから――」
レイ:「何言ってんのよ。医務室に行かないと!」
ジン:「俺が連れて行く。行くぞ、ケイ。」
ケイ:「大丈夫だって・・・1人で行けるよ。」
ジン:「でも!」
ケイ:「いいから・・・1人で行きたいんだ。」
ジン:「わかったよ・・・。無理はするなよ?」
ケイ:「もちろんだよ。・・・じゃあな。」
0:
レイ:「大丈夫・・・なのかな。」
ジン:「今までは無かったのか?俺は初めて見たけど。」
レイ:「私も初めてだよ・・・あんな苦しそうな所見たこと無い。」
ジン:「そうか。・・・やっぱ何かの病気なのかな。」
レイ:「流石に病気なんだったら言ってくれると思うんだけど・・・」
ジン:「でもあいつ昨日からおかしかったしさ。もしかしたら・・・って。」
0:
ケイ:「はぁはぁ・・・ふぅ・・・落ち着いたか。」
:
ケイ:また誤算が発生した。現在の俺は、重い心臓病で走ることは愚か、長時間の行動はできない。
ケイ:さっき起きたような発作が起きて動けなくなるからだ。しかし、この時期の俺にそんな疾患は無かった。
ケイ:実際の発作よりは軽度で、短時間だったものの。実感するには充分だった。
ケイ:俺はこれが未来を変えれたことによる反動だと思うことにした。・・・思い込むことしかできなかった。
ケイ:全ては、明日になればわかるだろう・・・
0:
ジン:「レイ。」
レイ:「え、どうしたの?顔怖いよ?」
ジン:「医務室に寄って来たんだけど、ケイはいなかった。」
レイ:「もう帰っちゃったの?」
ジン:「いや、来てないって言われた。」
レイ:「じゃ、じゃあ、あの状態で帰ったってこと?」
ジン:「多分だけど、そういうことだろう。何か連絡は来てないか?」
レイ:「待ってね。・・・来てない・・・」
ジン:「さっきメール送ったんだけど、返信も来ないんだ。」
レイ:「ちょっとケイの家に電話してみる。」
レイ:「・・・もしもし、こんばんは。レイです。ケイって家に帰ってますか?・・・はい。いえ、少し体調が悪そうだったので・・・はい。・・・わかりました。すみません急に。・・・では、また。」
ジン:「何だって?」
レイ:「昼前くらいに帰ってきてずっと寝てるって。お母さんが。」
ジン:「そっか。良かった・・・」
レイ:「うん・・・」
ジン:「・・・・・」
レイ:「明日・・・ジンに会う前に聞いてみるよ。病気のこととか。」
ジン:「うん。任せるわ。何も無ければいいけど・・・」
:
0:
ケイ:「もう・・・朝か。寝すぎだな。」
ケイ:・・・今日は何とも無さそうだ。最悪の場合、目覚めたら現代だった。とかならどうしようと思ったけど、まだ大丈夫なようだ。
ケイ:今日で全てが決まる・・・不備のせいでほとんど何もできなかったけど。変えたい場所は変えれた。
ケイ:あとは今日が何も無く終わるだけ。些細なそれだけの願いをただ叶えたいんだ・・・
0:インターホンが鳴る。
ケイ:母親に通され、俺の部屋に来たその人は。俺が人生で1番愛した・・・そして、今1番会いたくない人だった。
レイ:「おはよ。身体、大丈夫?」
ケイ:「レイ・・・何でここに?」
レイ:「昨日あのまま家に帰ったって聞いて心配だったからさ。」
ケイ:「それは大丈夫なんだけど――」
レイ:「嘘つかないで。最近何か隠してるじゃん。」
ケイ:「そんなこと――」
レイ:「何年一緒にいると思ってるの!?それくらいわかるよ。私もジンも。」
ケイ:「俺・・・レイを好きになって・・・お前らと出会えてよかったよ。」
レイ:「な、何よ急に。」
ケイ:「ジンはどこにいるんだ?」
レイ:「え?私の家の近くの公園だけど・・・ちょっと!ケイ!」
:
ケイ:気付いたら駆け出してた。走るのなんて何年ぶりかわからない。不恰好に腕を振って、絡まりそうな足運びで
ケイ:ただただジンの元へと急ぐ。もう失いたくない。もっと伝えたいことがある。
ケイ:「・・・っ!!がぁ!!!」
ケイ:胸の痛みが増していく、足も重くなって、視界も暗くなる。でも止まらない。止まれない。
ケイ:現代に帰った後、あまり時間は無いかもしれない。それでも、俺はお前らとまた笑いたいんだ!
0:
ジン:「ケ・・・イ?」
ケイ:「はっ・・・はっ・・・」
ジン:「どうしたんだよ。とりあえず座れ。酷い汗だぞ。」
ケイ:「はぁ・・・はぁ・・・」
ジン:「ゆっくりでいいから、深呼吸しろ。」
ケイ:「ふぅ・・・」
ジン:「どうだ?少しは楽になったか?」
ケイ:「・・・ああ。」
ジン:「んで、どうしたんだよ。そんなに急いでさ。」
ケイ:「あ・・・えっと用事ってわけじゃないんだけど・・・」
ジン:「そんなに俺に会いたかったかー?」
ケイ:「まあ、そんなとこかな。」
ジン:「・・・冗談だろ?」
ケイ:「いや、割と本気だよ。今後もジンとレイと一緒に生きて行きたいなって思ってる。」
ジン:「それは俺もだけど・・・何だよ。明日死んだりすんのか?」
ケイ:「死なないよ。少なくとも明日じゃない。」
ジン:「・・・やっぱ病気なのか?」
ケイ:「いや、まだ病気じゃないよ。でも人である限り、いつかは死ぬ。だからといって今死ぬには惜しいだろ?」
ジン:「それはまあな。確かに今死ぬのはごめんだわ。」
ケイ:「その言葉を聴けただけで、”ここ”に来た意味があると思えるよ。」
ジン:「そっか。相変わらず変な奴だな。」
ケイ:「ははは。・・・ごめんな。」
ジン:「ん?何が?」
ケイ:「ここでレイに告白するつもりだったんじゃないのか?」
ジン:「まあ・・・そうだよ。」
ケイ:「やっぱり。」
ジン:「実は好きだったんだけど、やっぱり友達でいたいから、これからもよろしくってな。」
ケイ:「え?」
ジン:「勝ち目の無い戦いなんてしたくないしな。」
ケイ:「ちょっと待ってくれ。嘘だろ?」
ジン:「鈍感なお前にはわかんないかもしれないけど、あいつはずっとお前を見てるよ。昨日だって、まるで世界が終わるんじゃないかみたいな顔してた。俺が相手だったらそんなにはならねえ。」
ケイ:「そんなこと!お前が死んだ時だって――」
ジン:「ケイ。もうあいつを悲しませるなよ。約束だ。」
ケイ:「・・・ああ。約束する。」
ジン:「その手、マジでやってる?」
ケイ:「ああ。大マジだ。ほら早く。」
ジン:「この歳で指きりって・・・」
ケイ:「俺も思ったよ。でもまあいいじゃないか。」
ジン:「・・・はい。破ったら針千本飲ましてやるからな。」
ケイ:「わかってるよ。レイと合わせて二千本はとてもじゃないけど無理だ。」
ジン:「一本も負けてやらないからな!・・・あっそうだこれ。」
ケイ:「ん?バスケットボール?」
ジン:「おう。バスケ好きだろ?誕生日プレゼントだ。」
ケイ:「ありがとう。やったこと無いけど。」
ジン:「え?好きって言ってただろ?」
ケイ:「見るのが好きなんだ。」
ジン:「なんだよー。失敗したかぁ。」
ケイ:「いや、嬉しいよ。ありがとう。・・・っ!ぐあ・・・」
ジン:「おい!ケイ!大丈夫か!?」
ケイ:「だ・・いじょうぶ。だから、また会おう。ありがとうな・・・」
ジン:「おい!起きろって!ケイ!」
ケイ:「うるせっ・・・なんだよジン。大きい声出して・・・」
ジン:「は?えっと・・・ケイ?」
ケイ:「何言ってんだよ。ん?公園?何でお前とここにいるんだっけ?」
ジン:「お前・・・病院行って来い。」
ケイ:「は?別にどこも悪く――」
ジン:「いいから!来い!」
ケイ:「ちょ!どうしたんだよジン。ちょっとおかしいぞ?」
ジン:「お前にだけは言われたくねぇよ!!」
:
0:
ケイ:「ん・・・ここは・・・」
レイ:「おかえり。」
ケイ:「ああ。ただいま。」
ジン:「待ってたぞ。親友。」
ケイ:「っ!・・・ああ、良かった。また会えた・・・」
レイ:「ちゃんと約束・・・守ってくれたね。」
ケイ:「ああ。でもジンとの約束は守れてないかも。レイを泣かしちゃったわ。」
ジン:「馬鹿。悲しんでるように見えるか?嬉し泣きはセーフだよ。」
レイ:「カレンもさっきまで起きてたんだけど、寝ちゃった。」
ケイ:「カレンって・・・?」
ジン:「思い出してみろ。思い出そうとすれば、記憶は蘇るはずだ。」
ケイ:「カレン・・・俺とレイの娘・・・そっか。そうだった・・・最愛の娘だ。」
ジン:「混乱することもあるだろうが、お前が俺を助けてくれたから、色々変わった未来がある。これから徐々に思い出していこう。」
レイ:「これからは治療ね。心臓を治して生きてよ。」
ジン:「俺達のできることは何だってする。だから頑張れ。・・・頑張ってくれ。頼む。」
ケイ:「ああ・・・頑張るよ・・・ありがとう・・・ありがとう。」
0:
:
ケイ:変わった未来と変わらない未来があった。タイムマシンはあったが効力を失くし、
ケイ:心臓病は発症したままで、ジンは存命。俺とレイには娘がいて、ジンを助けに行った事実は記憶として残ってはいるが、
ケイ:俺とレイとジンしかその事実を知らない。全て思い通りになったわけだ。あとは心臓を治すだけ・・・だったんだけど。
:
ケイ:結局、間に合わずに俺は死んだ。でも後悔はしてない。最期は大切な親友と最愛の人、それに娘に囲まれて逝くことができたんだ。
ケイ:きっと俺は世界中の誰よりも幸せなんだ。って心からそう思えたよ。いつかまた逢えたら、感謝を伝えに行きます。
ケイ:ありがとう。
:
:
0:
ジン:「なあ子供の名前ってもう決めたのか?」
ケイ:「え?まだだけど。」
ジン:「はぁ?そろそろ生まれるんじゃないのかよ。」
ケイ:「そうだけど・・・何か決めかねててさ。難しいんだよな。名前付けるのって。」
ジン:「わかんなくも無いけど、お前だったら大丈夫だろ。」
ケイ:「凄い信頼だな。ありがとう。」
ジン:「・・・・・」
ケイ:「どうした?」
ジン:「ありがとうな。本当に。」
ケイ:「いきなりどうしたんだよ。変な奴だな。」
ジン:「はは。お前にだけは言われたくないよ。あ、そろそろ帰るわ。じゃな。レイにもよろしく。」
ケイ:「おう。またな。」
ジン:「ああ。また逢おう。」
:
:
:
0:Fin――
0:(登場人物紹介)
ケイ:今作主人公。研究員。レイとジンとは友人で同じ大学に通っていた。レイとは家が近く、想いを寄せており、現在は夫婦ではあるが・・・
レイ:ケイの妻。献身的な性格で、病魔に侵されたケイを支えている。最期まで添い遂げようと決めている。
ジン:故人。レイとケイの友人で、在学中に不慮の事故で命を落とす。ケイと同じく、レイのことが好きだった。
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0:(本編)
:
ケイ:今でも夢に見る。・・・お前の変わり果てた姿を。
ケイ:何処で間違ったのかな。出会った事さえ間違ってたのかな。
ケイ:悔やんでも仕方ないことはわかってる。だから俺が助けに行くよ。
ケイ:例え、誰も隣にいなくなったとしても、お前のいない世界じゃ何も意味がないからさ・・・
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0:研究室――
レイ:「体調はどんな感じ?」
ケイ:「うん。今日はいい感じだよ。」
レイ:「・・・本当に行くの?」
ケイ:「ああ。そのために研究してきたんだからな。」
レイ:「でも治療してから行ったって――」
ケイ:「もう助からないよ。手遅れだ。自分の体のことくらい、自分が1番わかってるよ。」
レイ:「私はケイが――」
ケイ:「それ以上言わないでくれ。しんどくなるから」
レイ:「ごめん・・・なさい。」
ケイ:「俺は今まで、今日のために生きてきたんだ。あいつを救うために。」
レイ:「ねぇ、本当に上手くいくの?」
ケイ:「正直わからない。試すことも不可能だし、これ以上かけれる時間も無いからね。」
レイ:「そう・・・なのね。」
ケイ:「大丈夫。あいつだけは絶対に助ける。」
レイ:「・・・そう。」
ケイ:「・・・・・」
レイ:「何度も言うけれど、ジンが死んだのは、ケイのせいじゃないわよ?」
ケイ:「違う。俺のせいだ。」
レイ:「違わない。悪いのは事故の加害者だけよ。」
ケイ:「俺があの時、レイを引き止めなけりゃ、きっと今もあいつは・・・」
レイ:「そんなの・・・」
ケイ:「レイだって、あいつが生きてたらきっと――」
レイ:「やめてよ!私はあなたを選んだの。ケイを愛してるのよ!」
ケイ:「それはっ!・・・いや、すまない。ありがとう。」
レイ:「・・・・・」
ケイ:「・・・そろそろ行こう。時間が惜しい。」
レイ:「・・・わかったわ。行きましょう。」
0:
ケイ:「操作方法はわかる?」
レイ:「ええ。何度も練習したから。」
ケイ:「・・・ごめんな。」
レイ:「本当よ。自分の夫を自分の手で殺すようなものですもの。」
ケイ:「・・・・・」
レイ:「ずっと一緒にいるとね。考えてることがわかるようになるの。」
ケイ:「え?」
レイ:「ケイ。あなた、最悪の場合、自分が身代わりになろうとしてるでしょ?」
ケイ:「・・・っ。そんなこと――」
レイ:「あるわよ。でももしそんなことしたら、ジンが今のあなたと同じ気持ちになるのよ?」
ケイ:「それは・・・ダメだな。」
レイ:「ダメよ。必ず生きて戻ってきて。2人とも。」
ケイ:「帰ってきても、すぐ死んでしまうんだけどね。」
レイ:「それでも、ちゃんと別れはしたいじゃない。結構辛いものよ?別れが言えないのって。」
ケイ:「そうだな。それは俺もわかるよ。」
レイ:「だから、ね?これは約束。」
ケイ:「わかった。約束するよ。」
レイ:「じゃあ、はい。」
ケイ:「マジかよ・・・」
レイ:「昔、よくやったじゃん。指切り。」
ケイ:「そうだけど、こんな歳になってまで――」
レイ:「いいじゃん別に。ほら、早く。」
ケイ:「あ、ああ。わかったよ。」
レイ:「はい。約束したからね。破ったら本当に針千本飲ましてあげるから!」
ケイ:「ははは。それは怖いな。」
レイ:「帰ってくれば良い話よ。」
ケイ:「・・・・・」
レイ:「・・・気をつけて行ってきてね。」
ケイ:「うん。」
レイ:「昔の私によろしくね。でも、浮気しちゃダメだよ。」
ケイ:「それって浮気になるのか?」
レイ:「そりゃそうだよ。今の私を好きでいて欲しいじゃん。」
ケイ:「わかったよ。努力する。・・・そろそろかな。」
レイ:「・・・そうだね。」
ケイ:「すまないけど、身体のことは頼むよ。あっちに行ってる間も同じように時間は経過するだろうからさ。」
レイ:「うん。任せて。ちゃんとお世話してあげる。」
ケイ:「ありがとう。それじゃあ、行ってきます。」
レイ:「行ってらっしゃい。」
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ケイ:レイが装置のスイッチを入れると、段々と意識が薄れてきた。
ケイ:俺はこれから、過去に戻る。身体は置いて意識だけ。
ケイ:レイは愛していると言っていたけれど・・・きっとそれは――
レイ:「依存だ。なんて考えてるんでしょ。残念だけど、あなたが思ってるより愛してるわよ。例えジンが生きてても、それは変わらない。まあ何度言ってもあなたは信じてくれないでしょうけど。
レイ:だから、帰ってきたら、何度も言ってあげる。私はずっとあなただけを愛してる。ってね。だから・・・ね。必ず帰ってきて・・・お願いよ・・・」
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0:大学構内――
ジン:「いつまで寝てんだよ。そろそろ起きろって。」
ケイ:声が聞こえる・・・懐かしい声だ・・・良かった。成功したみたいだ。
ジン:「おい。もう置いて帰っちゃうぞー。」
ケイ:「ジン・・・」
ジン:「おっ。やっと起きたか。ってなんだよ。何で泣いてんだ?あくびのしすぎか?」
ケイ:「あ、ああ。そんな感じだよ。」
ジン:「そっか。ちゃんと夜寝ろよな。もういい歳なんだからよ。」
ケイ:「そう・・・だな。今はえっと何歳だっけ。」
ジン:「まだ寝てんのかよ。20歳だよもう。タバコも酒もいける大人になったわけだ。」
ケイ:「20歳か。・・・今日は何月何日だ?」
ジン:「おいおいマジかよ。認知症なんじゃねえの?」
ケイ:「いいから。」
ジン:「はぁ。5月20日だけど。それがどうかしたのかよ。」
ケイ:「・・・っ!い、いや別に――」
レイ:「あっ2人ともまだここにいたの?いつまでたっても出てこないから、探しに来ちゃった。」
ジン:「よう、レイ。何かケイがおかしいんだよ。病院連れて行ったほうがいいんじゃね?」
レイ:「え?どうしたの?熱でもあるんじゃない?」
ケイ:「大丈夫だよ。あ、俺ちょっと用事あるから先帰るわ。また明日な!」
レイ:「ちょっと!ケイ!・・・行っちゃった。」
ジン:「本当、どうしたんだよ。あいつ。」
レイ:「さあ・・・どうしたんだろ。」
ジン:「ま、そのうち戻るだろ。とりあえず帰るか。」
レイ:「そう・・・だね。」
ジン:「どした?お前も何か考え事か?」
レイ:「え。いや、何て言うか・・・」
ジン:「何だよ。はっきりしねえな。」
レイ:「本当にケイだった?」
ジン:「は?どう言う意味だよ。」
レイ:「だから何て言ったらいいかわからないけど、違う人に見えたって言うか・・・」
ジン:「まあ・・・それは俺も感じたけどさ。でもケイはケイだろ。」
レイ:「そうなんだけど・・・」
ジン:「あいつにも何か事情があるんだよ。ゆっくり待とうぜ。」
レイ:「うん。そうだね。」
ジン:「よし。んじゃ、帰るぞ。寄りたいところあるんだよな。来るか?」
レイ:「お、奇遇だね。私もなの。」
ジン:「いいね。どっちから寄る?」
レイ:「近いほうでいいんじゃない?」
ジン:「決まりだな。」
レイ:「私、駅前の本屋さんに寄りたいな。結構近いし。」
ジン:「おっと。俺は大学前のスポーツ用品店だから、俺が先だな。」
レイ:「うっそ。マジ?絶対勝ったと思ったのに。」
ジン:「勝ち負けじゃ無いだろこんなの。」
レイ:「人生は全て勝負ごとで出来ている!」
ジン:「何それ。頭悪そう。」
レイ:「うるさいな。ほら、さっさと行くよ。」
ジン:「はいはい。」
0:
ケイ:危なかった。あのままあそこにいたら、きっと涙を抑えられなかっただろう。子供のように泣きじゃくっただろう。
ケイ:何度も会いたいと願った親友と、1番愛していた頃の妻。色んな感情が混じって、何度も思い描いた場面のはずなのに上手く話せなかった。
ケイ:・・・でも、喜んでばかりもいられない。装置に誤差があった。事故の1週間前に着くようにしていたはずだったのに、
ケイ:いざ着いてみれば、事故の2日前。もう少しずれていれば、取り返しのつかないことになっていただろう。
ケイ:10日ほど経てば、自動的に戻される仕様だ。だが、既にバグが起きている状況では、その仕様すらも信用できないものとなった。
ケイ:事故前に来れたことは不幸中の幸いだったかもしれない。
ケイ:とりあえず今の俺に出来ることは、2日後の事故を防ぐことに全力を尽くすのみだ。
0:
レイ:「ねえ、まだなの?」
ジン:「は?そんなに早く決まるわけ無いだろ。大富豪じゃねえんだから。じっくり選らばねえとな。」
レイ:「さっきから同じようなボールばっかり見てるじゃん。どれも一緒でしょ?」
ジン:「全然違うだろ。手に馴染む感じとか弾み方とか、まずデザインが違うね。」
レイ:「デザインの違いくらい、私でもわかるし。ってか、バスケとかやってたっけ?」
ジン:「いや、俺のじゃねえし。」
レイ:「え?そなの?」
ジン:「お前もしかして、忘れてるのか?」
レイ:「何を。」
ジン:「ケイの誕生日だよ。明後日だろうが。」
レイ:「忘れるわけないじゃん。私が買う本だって、ケイが欲しがってた物理学の本だし。」
ジン:「あいつまたそんなん欲しがってたのか。変わってるよな。マジで。」
レイ:「研究者になって、タイムマシンを作るのが夢らしいからねー」
ジン:「へぇ。何か変えたい過去とかあるのか?あいつ。」
レイ:「それが・・・宝くじがなんとか言ってたような気が・・・」
ジン:「ははは!完全なる私利私欲だな。」
レイ:「結構、欲深いところとかあるからねぇ」
ジン:「確かに。・・・あ、レイ。」
レイ:「ん?」
ジン:「明後日、ケイにプレゼント持ってくだろ?その前にお前の家の近くの公園に来てくれないか?少し話したいことがあってさ。」
レイ:「んー。いいよ。何かは聞かないほうがいい感じ?」
ジン:「そう・・・だな。今はまだ気持ちがまとまってないからさ。」
レイ:「そっか。わかったよ。」
ジン:「よし、これにするわ。」
レイ:「うわ。奇抜な色・・・」
ジン:「でも何かケイっぽくね?」
レイ:「うーん。わかる気がしないでもないね。」
ジン:「だろ?じゃあ次は本屋行くぞ。」
レイ:「やっとかー。本当遅いんだから。」
ジン:「お前だっていつも遅いだろうがよ。」
レイ:「今日はもう決まってるから早いもん。」
ジン:「そうですか。」
レイ:「全然、信用してないね?」
ジン:「そんなことはないよぉ?」
レイ:「その言い方が信用ならないんだってば。」
ジン:「いいから。さっさと行こうぜ。日が暮れるわ。」
レイ:「ジンのせいじゃん!」
:
0:翌日、大学構内。
:
ジン:「おはよ。今日はどうだ?」
ケイ:「どうって何がだ?」
ジン:「んー。やっぱりちょっとおかしいんだよな。」
ケイ:「おかしい・・・って俺がか?」
ジン:「何か、上手く言えないけどさ。おっさんくさい・・・みたいな?」
ケイ:「そ、そんなことないだろ。」
ジン:「昨日からちょっと変なんだよな。何か変な夢でも見たか?」
ケイ:「いや、そういうわけじゃないけど・・・」
ジン:「ふーん。まあいいや。お前にも色々あるだろうしな。」
ケイ:「・・・・・」
ジン:「昨日の用事ってのも、聞かないほうがいいか?」
ケイ:「うん・・・そうしてもらえると助かる。」
ジン:「・・・そっか。」
:
ケイ:自分では気付かなかったけど、話し方が結構変わっていたみたいだ。
ケイ:もし、ここでバレたとしても、結果としてジンを救えればいいと考えたこともあったが、不用意に過去を変えてしまえば
ケイ:沢山の仮説の中で現代に強制送還されるといったケースが1番可能性が高いという結論に至った。
ケイ:だから俺は決して悟られてはいけない。ここに来た意味も、装置を作った意味さえ無くなってしまう。
:
レイ:「2人ともおはよ!」
ジン:「おはよ。」
ケイ:「・・・おはよう。」
:
ケイ:レイが来た。当時は確かこの後・・・
:
レイ:「今日もいい天気だね~明日も晴れるといいんだけど。」
ケイ:「ん?何か用事でもあるのか?学校は休みだし。」
レイ:「あーちょっとね。明日何時がいい?」
ジン:「・・・お前本当、頭回ってねえな。後で言うよ。」
ケイ:「何だよ。2人でどっかいくのか?」
ジン:「そんなんじゃねえよ。」
レイ:「・・・・・」
ケイ:「はは。秘密かよ。何か仲間はずれにされた気分だわ。」
レイ:「ちょっと、ケイ。」
ジン:「落ち着けよ。ガキじゃあるまいし。」
ケイ:「うるせえよ。余裕こきやがって・・・気にいらねえ。」
レイ:「2人ともやめなよ・・・」
ジン:「チッ・・・」
ケイ:「・・・・・」
:
ケイ:まだ若かったんだ。不安と焦燥から、心にも無い言葉を吐いてしまった。
ケイ:まさかこれが、ジンとの最期の会話になるだなんて、思わなかったしな。
ケイ:恐らく、ジンはレイに告白しようとしてたんだろう。そう思った俺は次の日、レイを呼び出して会いに行かせなかった。
ケイ:レイを心配したジンは・・・レイの家に向かう途中で、居眠り運転のトラックにはねられたんだ。
ケイ:だから今日を変えることで、明日の悲劇は起こらないはずなんだ。
:
レイ:「今日もいい天気だね~明日も晴れるといいんだけど。」
ケイ:「ん?何か用事でもあるのか?学校は休みだし。」
レイ:「あーちょっとね。明日何時がいい?」
ジン:「・・・お前本当、頭回ってねえな。後で言うよ。」
ケイ:「明日は晴れらしいよ。よっぽどのことが無い限りは降らないはずだ。」
ジン:「・・・そっか。」
ケイ:「お土産、期待してるよ。」
ジン:「わかったよ。」
レイ:「・・・ケイ。何か無理してない?」
ケイ:「無理?何でそんなこと・・・がっ!!」
ジン:「おい!どうしたケイ!」
レイ:「ちょっと!しっかりして!ケイ!」
ケイ:「だ・・・大丈夫。大丈夫だから――」
レイ:「何言ってんのよ。医務室に行かないと!」
ジン:「俺が連れて行く。行くぞ、ケイ。」
ケイ:「大丈夫だって・・・1人で行けるよ。」
ジン:「でも!」
ケイ:「いいから・・・1人で行きたいんだ。」
ジン:「わかったよ・・・。無理はするなよ?」
ケイ:「もちろんだよ。・・・じゃあな。」
0:
レイ:「大丈夫・・・なのかな。」
ジン:「今までは無かったのか?俺は初めて見たけど。」
レイ:「私も初めてだよ・・・あんな苦しそうな所見たこと無い。」
ジン:「そうか。・・・やっぱ何かの病気なのかな。」
レイ:「流石に病気なんだったら言ってくれると思うんだけど・・・」
ジン:「でもあいつ昨日からおかしかったしさ。もしかしたら・・・って。」
0:
ケイ:「はぁはぁ・・・ふぅ・・・落ち着いたか。」
:
ケイ:また誤算が発生した。現在の俺は、重い心臓病で走ることは愚か、長時間の行動はできない。
ケイ:さっき起きたような発作が起きて動けなくなるからだ。しかし、この時期の俺にそんな疾患は無かった。
ケイ:実際の発作よりは軽度で、短時間だったものの。実感するには充分だった。
ケイ:俺はこれが未来を変えれたことによる反動だと思うことにした。・・・思い込むことしかできなかった。
ケイ:全ては、明日になればわかるだろう・・・
0:
ジン:「レイ。」
レイ:「え、どうしたの?顔怖いよ?」
ジン:「医務室に寄って来たんだけど、ケイはいなかった。」
レイ:「もう帰っちゃったの?」
ジン:「いや、来てないって言われた。」
レイ:「じゃ、じゃあ、あの状態で帰ったってこと?」
ジン:「多分だけど、そういうことだろう。何か連絡は来てないか?」
レイ:「待ってね。・・・来てない・・・」
ジン:「さっきメール送ったんだけど、返信も来ないんだ。」
レイ:「ちょっとケイの家に電話してみる。」
レイ:「・・・もしもし、こんばんは。レイです。ケイって家に帰ってますか?・・・はい。いえ、少し体調が悪そうだったので・・・はい。・・・わかりました。すみません急に。・・・では、また。」
ジン:「何だって?」
レイ:「昼前くらいに帰ってきてずっと寝てるって。お母さんが。」
ジン:「そっか。良かった・・・」
レイ:「うん・・・」
ジン:「・・・・・」
レイ:「明日・・・ジンに会う前に聞いてみるよ。病気のこととか。」
ジン:「うん。任せるわ。何も無ければいいけど・・・」
:
0:
ケイ:「もう・・・朝か。寝すぎだな。」
ケイ:・・・今日は何とも無さそうだ。最悪の場合、目覚めたら現代だった。とかならどうしようと思ったけど、まだ大丈夫なようだ。
ケイ:今日で全てが決まる・・・不備のせいでほとんど何もできなかったけど。変えたい場所は変えれた。
ケイ:あとは今日が何も無く終わるだけ。些細なそれだけの願いをただ叶えたいんだ・・・
0:インターホンが鳴る。
ケイ:母親に通され、俺の部屋に来たその人は。俺が人生で1番愛した・・・そして、今1番会いたくない人だった。
レイ:「おはよ。身体、大丈夫?」
ケイ:「レイ・・・何でここに?」
レイ:「昨日あのまま家に帰ったって聞いて心配だったからさ。」
ケイ:「それは大丈夫なんだけど――」
レイ:「嘘つかないで。最近何か隠してるじゃん。」
ケイ:「そんなこと――」
レイ:「何年一緒にいると思ってるの!?それくらいわかるよ。私もジンも。」
ケイ:「俺・・・レイを好きになって・・・お前らと出会えてよかったよ。」
レイ:「な、何よ急に。」
ケイ:「ジンはどこにいるんだ?」
レイ:「え?私の家の近くの公園だけど・・・ちょっと!ケイ!」
:
ケイ:気付いたら駆け出してた。走るのなんて何年ぶりかわからない。不恰好に腕を振って、絡まりそうな足運びで
ケイ:ただただジンの元へと急ぐ。もう失いたくない。もっと伝えたいことがある。
ケイ:「・・・っ!!がぁ!!!」
ケイ:胸の痛みが増していく、足も重くなって、視界も暗くなる。でも止まらない。止まれない。
ケイ:現代に帰った後、あまり時間は無いかもしれない。それでも、俺はお前らとまた笑いたいんだ!
0:
ジン:「ケ・・・イ?」
ケイ:「はっ・・・はっ・・・」
ジン:「どうしたんだよ。とりあえず座れ。酷い汗だぞ。」
ケイ:「はぁ・・・はぁ・・・」
ジン:「ゆっくりでいいから、深呼吸しろ。」
ケイ:「ふぅ・・・」
ジン:「どうだ?少しは楽になったか?」
ケイ:「・・・ああ。」
ジン:「んで、どうしたんだよ。そんなに急いでさ。」
ケイ:「あ・・・えっと用事ってわけじゃないんだけど・・・」
ジン:「そんなに俺に会いたかったかー?」
ケイ:「まあ、そんなとこかな。」
ジン:「・・・冗談だろ?」
ケイ:「いや、割と本気だよ。今後もジンとレイと一緒に生きて行きたいなって思ってる。」
ジン:「それは俺もだけど・・・何だよ。明日死んだりすんのか?」
ケイ:「死なないよ。少なくとも明日じゃない。」
ジン:「・・・やっぱ病気なのか?」
ケイ:「いや、まだ病気じゃないよ。でも人である限り、いつかは死ぬ。だからといって今死ぬには惜しいだろ?」
ジン:「それはまあな。確かに今死ぬのはごめんだわ。」
ケイ:「その言葉を聴けただけで、”ここ”に来た意味があると思えるよ。」
ジン:「そっか。相変わらず変な奴だな。」
ケイ:「ははは。・・・ごめんな。」
ジン:「ん?何が?」
ケイ:「ここでレイに告白するつもりだったんじゃないのか?」
ジン:「まあ・・・そうだよ。」
ケイ:「やっぱり。」
ジン:「実は好きだったんだけど、やっぱり友達でいたいから、これからもよろしくってな。」
ケイ:「え?」
ジン:「勝ち目の無い戦いなんてしたくないしな。」
ケイ:「ちょっと待ってくれ。嘘だろ?」
ジン:「鈍感なお前にはわかんないかもしれないけど、あいつはずっとお前を見てるよ。昨日だって、まるで世界が終わるんじゃないかみたいな顔してた。俺が相手だったらそんなにはならねえ。」
ケイ:「そんなこと!お前が死んだ時だって――」
ジン:「ケイ。もうあいつを悲しませるなよ。約束だ。」
ケイ:「・・・ああ。約束する。」
ジン:「その手、マジでやってる?」
ケイ:「ああ。大マジだ。ほら早く。」
ジン:「この歳で指きりって・・・」
ケイ:「俺も思ったよ。でもまあいいじゃないか。」
ジン:「・・・はい。破ったら針千本飲ましてやるからな。」
ケイ:「わかってるよ。レイと合わせて二千本はとてもじゃないけど無理だ。」
ジン:「一本も負けてやらないからな!・・・あっそうだこれ。」
ケイ:「ん?バスケットボール?」
ジン:「おう。バスケ好きだろ?誕生日プレゼントだ。」
ケイ:「ありがとう。やったこと無いけど。」
ジン:「え?好きって言ってただろ?」
ケイ:「見るのが好きなんだ。」
ジン:「なんだよー。失敗したかぁ。」
ケイ:「いや、嬉しいよ。ありがとう。・・・っ!ぐあ・・・」
ジン:「おい!ケイ!大丈夫か!?」
ケイ:「だ・・いじょうぶ。だから、また会おう。ありがとうな・・・」
ジン:「おい!起きろって!ケイ!」
ケイ:「うるせっ・・・なんだよジン。大きい声出して・・・」
ジン:「は?えっと・・・ケイ?」
ケイ:「何言ってんだよ。ん?公園?何でお前とここにいるんだっけ?」
ジン:「お前・・・病院行って来い。」
ケイ:「は?別にどこも悪く――」
ジン:「いいから!来い!」
ケイ:「ちょ!どうしたんだよジン。ちょっとおかしいぞ?」
ジン:「お前にだけは言われたくねぇよ!!」
:
0:
ケイ:「ん・・・ここは・・・」
レイ:「おかえり。」
ケイ:「ああ。ただいま。」
ジン:「待ってたぞ。親友。」
ケイ:「っ!・・・ああ、良かった。また会えた・・・」
レイ:「ちゃんと約束・・・守ってくれたね。」
ケイ:「ああ。でもジンとの約束は守れてないかも。レイを泣かしちゃったわ。」
ジン:「馬鹿。悲しんでるように見えるか?嬉し泣きはセーフだよ。」
レイ:「カレンもさっきまで起きてたんだけど、寝ちゃった。」
ケイ:「カレンって・・・?」
ジン:「思い出してみろ。思い出そうとすれば、記憶は蘇るはずだ。」
ケイ:「カレン・・・俺とレイの娘・・・そっか。そうだった・・・最愛の娘だ。」
ジン:「混乱することもあるだろうが、お前が俺を助けてくれたから、色々変わった未来がある。これから徐々に思い出していこう。」
レイ:「これからは治療ね。心臓を治して生きてよ。」
ジン:「俺達のできることは何だってする。だから頑張れ。・・・頑張ってくれ。頼む。」
ケイ:「ああ・・・頑張るよ・・・ありがとう・・・ありがとう。」
0:
:
ケイ:変わった未来と変わらない未来があった。タイムマシンはあったが効力を失くし、
ケイ:心臓病は発症したままで、ジンは存命。俺とレイには娘がいて、ジンを助けに行った事実は記憶として残ってはいるが、
ケイ:俺とレイとジンしかその事実を知らない。全て思い通りになったわけだ。あとは心臓を治すだけ・・・だったんだけど。
:
ケイ:結局、間に合わずに俺は死んだ。でも後悔はしてない。最期は大切な親友と最愛の人、それに娘に囲まれて逝くことができたんだ。
ケイ:きっと俺は世界中の誰よりも幸せなんだ。って心からそう思えたよ。いつかまた逢えたら、感謝を伝えに行きます。
ケイ:ありがとう。
:
:
0:
ジン:「なあ子供の名前ってもう決めたのか?」
ケイ:「え?まだだけど。」
ジン:「はぁ?そろそろ生まれるんじゃないのかよ。」
ケイ:「そうだけど・・・何か決めかねててさ。難しいんだよな。名前付けるのって。」
ジン:「わかんなくも無いけど、お前だったら大丈夫だろ。」
ケイ:「凄い信頼だな。ありがとう。」
ジン:「・・・・・」
ケイ:「どうした?」
ジン:「ありがとうな。本当に。」
ケイ:「いきなりどうしたんだよ。変な奴だな。」
ジン:「はは。お前にだけは言われたくないよ。あ、そろそろ帰るわ。じゃな。レイにもよろしく。」
ケイ:「おう。またな。」
ジン:「ああ。また逢おう。」
:
:
:
0:Fin――