台本概要
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タイトル | 雪と桜 |
---|---|
作者名 | akodon (@akodon1) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 2人用台本(不問2) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
さようなら、また会う日まで。 とあるひと冬の、出会いと別れのお話です。 1034 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
雪 | 不問 | 59 | ゆき。雪の精。 |
桜 | 不問 | 60 | さくら。桜の精。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
雪:「ふぅ・・・今日の仕事もようやくひと段落ついたなぁ。
雪:やれやれ・・・毎年この時期は忙しくてかなわない。
雪:・・・おや?そこにゆっくり休めそうな場所があるじゃないか。
雪:今日はここでひと休みさせてもらおう」
桜:「・・・んん?そこに居るのはだあれ?」
雪:「おお、すまない。起こしてしまったようだな。
雪:キミはここの住人だね?」
桜:「じゅうにん?うーん・・・よくわかんない」
雪:「おやおや、どうやらまだ目覚めて間も無いようだな。
雪:ちなみに、自分の名前はわかるかな?」
桜:「名前?ボクの名前?えーっと、うーんと・・・」
雪:「そうかそうか。いや、無理に答えなくても良いよ。
雪:時間が経てばそのうち自然にわかるようになるだろうから」
桜:「ごめんなさい・・・」
雪:「いや、謝ることはないさ。
雪:むしろ、私こそ静かに寝ていたところを起こしてしまってすまないね」
桜:「ううん、大丈夫。
桜:それより、あなたのお名前は?」
雪:「ああ、そうそう。まだ自己紹介もしていなかったね。
雪:私のことは・・・そうだな、雪とでも呼んでくれ」
桜:「ゆき?」
雪:「そう、雪」
桜:「ゆき・・・ゆき・・・うん。ボク覚えたよ」
雪:「そうか、キミは目覚めたばかりだが、きっと賢い子なんだろうな」
桜:「ねぇねぇ、雪はどこから来たの?」
雪:「遠い北の国から旅をしてきたよ」
桜:「雪は何をしているの?」
雪:「旅をしながら人々に冬を告げる仕事をしているんだ」
桜:「雪はなんでここに来たの?」
雪:「なんで、って言われると難しいなぁ。
雪:毎年そういう流れというか、この時期にはここに行くという決まりがあって・・・」
桜:「えーっと、雪は・・・雪は・・・」
雪:「ははは、キミはとても知りたがり屋さんだね」
桜:「知りたがり?」
雪:「今のキミみたいに、アレはなんだろう?コレはどういうこと?と何でも気になってしまうこと」
桜:「へぇ・・・ボクはとっても知りたがり!」
雪:「ああ、とっても知りたがりだ」
桜:「ねぇねぇ、雪。ボクもっと色んなことが知りたいなぁ」
雪:「それは感心だ。色々なことを知るのは、すごくいい事だよ」
桜:「じゃあ、ボクにもっと色んなことを教えてよ、雪」
雪:「うーん、そうだなぁ。私も仕事があるから、ずっとはここに居られないが・・・
雪:そうだ、なら私がここにいる間、この場所を宿として貸してくれないか?」
桜:「やど?」
雪:「そう、旅先で休息をとる為の、住処(すみか)のようなものだ。
雪:その代わり、私はキミが知りたいことをなんでも教えてあげよう」
桜:「うん!いいよ!雪になら貸してあげる!」
雪:「ありがとう。では、しばらく世話になるよ」
桜:「やったー!今日からここは雪のお宿だよ!
桜:・・・ふぁーあ・・・(あくび)」
雪:「おやおや、大きなあくびをして。
雪:そういえば、まだキミが目覚めるのは、本当はもっと先だものね」
桜:「そうなの?わかんないけど・・・」
雪:「そうだよ。だから、今はまだちょっとだけ、ゆっくりおやすみ」
桜:「うん・・・ねぇ、雪。眠る前にもう一つだけ良い?」
雪:「ん?なんだい?」
桜:「ボクも名前がほしいんだ。
桜:おやすみする前に名前を呼んでほしいんだけど、ボクはまだ自分の名前がわからないから・・・」
雪:「うーん。いつか自然に自分のことは自覚するものだけれど・・・そういうことなら、そうだなぁ・・・
雪:桜。キミの名前は、桜でどうかな?」
桜:「さくら?さくら・・・ふふ、とっても良い名前」
雪:「気に入ったかい?」
桜:「えへへ・・・すごく」
雪:「それは良かった。
雪:・・・さぁ、もう眠いだろう?そろそろ寝なさい」
桜:「うん、そうする・・・また起きたら、いっぱいお話しようね・・・雪」
雪:「ああ、おやすみ、桜・・・良い夢を」
0:(しばしの間。数週間後)
桜:「・・・あっ、来た来た!おかえり!雪ー!」
雪:「ただいま、桜。
雪:おや、また大きくなったみたいだね」
桜:「うん!最近ちょっとずつ暖かくなってきたから、ぐんぐん力が湧いてくるんだ」
雪:「それはとても良いことだ。
雪:いっぱいお日様の光を浴びて、大きくなるんだよ」
桜:「へへへ・・・。雪はもう今日のお仕事は終わり?」
雪:「そうだね。今日はもうこの辺で終わりにしておこうかな」
桜:「やったー!
桜:最近、雪が居てくれる時間が増えたから、いっぱいお話ができて嬉しいな!」
雪:「ふふ、そうかい?それは良かった」
桜:「ねぇねぇ、今日はあれが聞きたいな。
桜:寒い寒い国にいる、飛べない鳥の親子のお話」
雪:「そういえば桜、この間はその話の途中で眠ってしまったものね。
雪:えーと、どこまで話したかな?」
桜:「鳥のお母さんが卵を産んで、お父さんがその卵を孵(かえ)すところ!」
雪:「そうだ、そうだったね。では、その話の続きから・・・」
0:(しばらく間)
桜:「・・・あー!面白かった!」
雪:「本当に?それは良かった」
桜:「うん!鳥の子どもが一生懸命歩いて、海へ向かう時の話はドキドキしちゃった。
桜:途中で食べられませんように・・・って」
雪:「私もハラハラしながら見守っていたよ。
雪:無事に海まで辿り着けますように、と」
桜:「あーあ。いいなぁ、雪は色んなところで、色んなものを直接見ることができて。
桜:ボクはここから動けないから、雪がとっても羨ましい」
雪:「そんなに羨ましい?」
桜:「そうだよ!羨ましいよ!
桜:ボクも海を見てみたい。飛べない鳥を見てみたい。
桜:雪が前に話してくれた、真っ白い熊や、大きな氷でできた山を見てみたい」
雪:「すまないね。私が桜をどこかに連れて行ってあげられれば良いんだけど・・・」
桜:「ううん、大丈夫。
桜:ボクがここから動けないのは仕方が無いことだって、最近は分かるようになったんだ。
桜:ただ、ボクも雪みたいにどこかに行ければなぁ、って思っただけ」
雪:「そうか、キミはもう、それが理解できるほど大きくなったんだね」
桜:「うん!けど、まだまだ知らないことはいっぱいあるよ!
桜:だから、雪、これからもたーくさん、色んなことを教えてね」
雪:「ああ、わかったよ・・・桜。じゃあ、次は何を話そうか?」
桜:「わーい!それじゃあ、えーっと・・・次はねぇ・・・」
0:(しばらくの間。更に数週間後)
桜:「雪・・・雪?」
雪:「・・・ん?ああ、桜。おはよう」
桜:「大丈夫?最近ずーっと眠そうだね」
雪:「そうだね。ここしばらく暖かい日が続くようになってきたからね。思わずうとうとしてしまうのかもしれないなぁ」
桜:「そういえば、今日はお仕事大丈夫なの?」
雪:「ああ、今日はもう大丈夫。
雪:お休みさ。今日だけじゃない、この先しばらく、ずーっとお休み」
桜:「そっか・・・」
雪:「おや?いつもだったら嬉しそうにしてくれるのに、今日は浮かない顔をしているね?」
桜:「ううん。雪がここに居てくれるのは嬉しいよ。
桜:だけど、あんまり元気がなさそうだから、心配なだけ」
雪:「元気がない?私が?」
桜:「うん。ここに来ても眠ってる時間が増えた。
桜:・・・それに、なんだか小さくなった気がする」
雪:「ははは、違うよ。それは桜が大きくなったからさ。
雪:ほら、背比べでもしてみよう。さぁ、こっちへおいで・・・」
桜:「・・・ねぇ、雪。ボクね、最近わかったことがあるんだ」
雪:「わかったこと?」
桜:「そう。雪がここへ来て休む時、暖かい日差しが出て、ボクは大きくなれること。
桜:ボクが大きくなるにつれ、雪がここで休む時間が増えたこと」
雪:「つまり、それはどういう事だと思う?」
桜:「雪がお休みをする時間が増える分、暖かい日が増えていく。
桜:草木が芽吹き、動物たちが目を覚まし、そしてボクたちは花を開く・・・
桜:そう、『春』がやってくる」
雪:「正解。よくわかったね」
桜:「わかるさ。だって、ボクは『桜』・・・春に咲く花だもの」
雪:「じゃあ、私のこともわかっているのかな?」
桜:「あなたは『雪』。
桜:冬の間、世界を静かに眠らせる、北の国からの使い」
雪:「大正解。よく理解したね。偉いよ、桜」
桜:「うん。だってボクは雪から色んなことを教わったから」
雪:「そうか・・・なら、これからどうなるか、分かるね?桜」
桜:「・・・雪は溶けて、消えていく。
桜:雪とのお別れがやってくる」
雪:「ああ、一つ違うなぁ」
桜:「どこが違うの?」
雪:「私は消えるわけじゃない。
雪:雪は溶けて水になり、川の一部となって海に混じり、やがて空へと還ってゆく。
雪:そして、それをまた幾度(いくど)か繰り返し、私はいずれまた雪になる。
雪:また長い長い旅に出るだけさ」
桜:「でも、ボクは雪が居なくなったらどうすればいいの?
桜:一人ぼっちになってしまう」
雪:「一人になんかならないさ。さっきキミも言ってたろ?
雪:もう少しすれば、草も木も、動物たちだって目を覚ます。
雪:それに、今は眠っているキミの仲間も目を覚まして、きっと賑やかになるはずさ」
桜:「けど、雪はそこにいないんでしょ?悲しくないの?」
雪:「ああ、私はいられない。
雪:だから、桜。目覚めた仲間に色んな話をしてあげて。キミが知ったたくさんのことを。私との思い出を。
雪:キミが覚えていてくれる。それだけで私は悲しくなんてないから」
桜:「それだけでいいの?」
雪:「それだけでいい。それだけで充分さ」
桜:「わかった。たくさんボクは話をするよ。
桜:雪に教えてもらった、たくさんのことを皆に」
雪:「ありがとう、桜。とても嬉しいよ」
桜:「・・・ねぇ、雪。最後に一つ教えてほしい」
雪:「なんだい?」
桜:「また、ボクたち会えるかな?
桜:どれくらい先かはわからないけれど、またこんな風にお話できるかな?」
雪:「ああ、きっとまた会えるさ。
雪:・・・いや、会いに来るよ。
雪:たくさんたくさん旅をして、いずれまたここへ来る。
雪:その時はまた、色んな話をしよう」
桜:「うん。待ってる。
桜:ずっとずっと待っている」
雪:「・・・さぁ、私はそろそろ眠りにつこう。
雪:今日は日差しが暖かくて、とても気持ちが良い日だから」
桜:「うん、そうだね・・・あなたが眠るまで、ボクもずっとここに居る」
雪:「おやすみ、桜・・・また会う日まで」
桜:「おやすみ、雪・・・良い夢を。いつか会えるその日まで」
0:〜FIN〜
雪:「ふぅ・・・今日の仕事もようやくひと段落ついたなぁ。
雪:やれやれ・・・毎年この時期は忙しくてかなわない。
雪:・・・おや?そこにゆっくり休めそうな場所があるじゃないか。
雪:今日はここでひと休みさせてもらおう」
桜:「・・・んん?そこに居るのはだあれ?」
雪:「おお、すまない。起こしてしまったようだな。
雪:キミはここの住人だね?」
桜:「じゅうにん?うーん・・・よくわかんない」
雪:「おやおや、どうやらまだ目覚めて間も無いようだな。
雪:ちなみに、自分の名前はわかるかな?」
桜:「名前?ボクの名前?えーっと、うーんと・・・」
雪:「そうかそうか。いや、無理に答えなくても良いよ。
雪:時間が経てばそのうち自然にわかるようになるだろうから」
桜:「ごめんなさい・・・」
雪:「いや、謝ることはないさ。
雪:むしろ、私こそ静かに寝ていたところを起こしてしまってすまないね」
桜:「ううん、大丈夫。
桜:それより、あなたのお名前は?」
雪:「ああ、そうそう。まだ自己紹介もしていなかったね。
雪:私のことは・・・そうだな、雪とでも呼んでくれ」
桜:「ゆき?」
雪:「そう、雪」
桜:「ゆき・・・ゆき・・・うん。ボク覚えたよ」
雪:「そうか、キミは目覚めたばかりだが、きっと賢い子なんだろうな」
桜:「ねぇねぇ、雪はどこから来たの?」
雪:「遠い北の国から旅をしてきたよ」
桜:「雪は何をしているの?」
雪:「旅をしながら人々に冬を告げる仕事をしているんだ」
桜:「雪はなんでここに来たの?」
雪:「なんで、って言われると難しいなぁ。
雪:毎年そういう流れというか、この時期にはここに行くという決まりがあって・・・」
桜:「えーっと、雪は・・・雪は・・・」
雪:「ははは、キミはとても知りたがり屋さんだね」
桜:「知りたがり?」
雪:「今のキミみたいに、アレはなんだろう?コレはどういうこと?と何でも気になってしまうこと」
桜:「へぇ・・・ボクはとっても知りたがり!」
雪:「ああ、とっても知りたがりだ」
桜:「ねぇねぇ、雪。ボクもっと色んなことが知りたいなぁ」
雪:「それは感心だ。色々なことを知るのは、すごくいい事だよ」
桜:「じゃあ、ボクにもっと色んなことを教えてよ、雪」
雪:「うーん、そうだなぁ。私も仕事があるから、ずっとはここに居られないが・・・
雪:そうだ、なら私がここにいる間、この場所を宿として貸してくれないか?」
桜:「やど?」
雪:「そう、旅先で休息をとる為の、住処(すみか)のようなものだ。
雪:その代わり、私はキミが知りたいことをなんでも教えてあげよう」
桜:「うん!いいよ!雪になら貸してあげる!」
雪:「ありがとう。では、しばらく世話になるよ」
桜:「やったー!今日からここは雪のお宿だよ!
桜:・・・ふぁーあ・・・(あくび)」
雪:「おやおや、大きなあくびをして。
雪:そういえば、まだキミが目覚めるのは、本当はもっと先だものね」
桜:「そうなの?わかんないけど・・・」
雪:「そうだよ。だから、今はまだちょっとだけ、ゆっくりおやすみ」
桜:「うん・・・ねぇ、雪。眠る前にもう一つだけ良い?」
雪:「ん?なんだい?」
桜:「ボクも名前がほしいんだ。
桜:おやすみする前に名前を呼んでほしいんだけど、ボクはまだ自分の名前がわからないから・・・」
雪:「うーん。いつか自然に自分のことは自覚するものだけれど・・・そういうことなら、そうだなぁ・・・
雪:桜。キミの名前は、桜でどうかな?」
桜:「さくら?さくら・・・ふふ、とっても良い名前」
雪:「気に入ったかい?」
桜:「えへへ・・・すごく」
雪:「それは良かった。
雪:・・・さぁ、もう眠いだろう?そろそろ寝なさい」
桜:「うん、そうする・・・また起きたら、いっぱいお話しようね・・・雪」
雪:「ああ、おやすみ、桜・・・良い夢を」
0:(しばしの間。数週間後)
桜:「・・・あっ、来た来た!おかえり!雪ー!」
雪:「ただいま、桜。
雪:おや、また大きくなったみたいだね」
桜:「うん!最近ちょっとずつ暖かくなってきたから、ぐんぐん力が湧いてくるんだ」
雪:「それはとても良いことだ。
雪:いっぱいお日様の光を浴びて、大きくなるんだよ」
桜:「へへへ・・・。雪はもう今日のお仕事は終わり?」
雪:「そうだね。今日はもうこの辺で終わりにしておこうかな」
桜:「やったー!
桜:最近、雪が居てくれる時間が増えたから、いっぱいお話ができて嬉しいな!」
雪:「ふふ、そうかい?それは良かった」
桜:「ねぇねぇ、今日はあれが聞きたいな。
桜:寒い寒い国にいる、飛べない鳥の親子のお話」
雪:「そういえば桜、この間はその話の途中で眠ってしまったものね。
雪:えーと、どこまで話したかな?」
桜:「鳥のお母さんが卵を産んで、お父さんがその卵を孵(かえ)すところ!」
雪:「そうだ、そうだったね。では、その話の続きから・・・」
0:(しばらく間)
桜:「・・・あー!面白かった!」
雪:「本当に?それは良かった」
桜:「うん!鳥の子どもが一生懸命歩いて、海へ向かう時の話はドキドキしちゃった。
桜:途中で食べられませんように・・・って」
雪:「私もハラハラしながら見守っていたよ。
雪:無事に海まで辿り着けますように、と」
桜:「あーあ。いいなぁ、雪は色んなところで、色んなものを直接見ることができて。
桜:ボクはここから動けないから、雪がとっても羨ましい」
雪:「そんなに羨ましい?」
桜:「そうだよ!羨ましいよ!
桜:ボクも海を見てみたい。飛べない鳥を見てみたい。
桜:雪が前に話してくれた、真っ白い熊や、大きな氷でできた山を見てみたい」
雪:「すまないね。私が桜をどこかに連れて行ってあげられれば良いんだけど・・・」
桜:「ううん、大丈夫。
桜:ボクがここから動けないのは仕方が無いことだって、最近は分かるようになったんだ。
桜:ただ、ボクも雪みたいにどこかに行ければなぁ、って思っただけ」
雪:「そうか、キミはもう、それが理解できるほど大きくなったんだね」
桜:「うん!けど、まだまだ知らないことはいっぱいあるよ!
桜:だから、雪、これからもたーくさん、色んなことを教えてね」
雪:「ああ、わかったよ・・・桜。じゃあ、次は何を話そうか?」
桜:「わーい!それじゃあ、えーっと・・・次はねぇ・・・」
0:(しばらくの間。更に数週間後)
桜:「雪・・・雪?」
雪:「・・・ん?ああ、桜。おはよう」
桜:「大丈夫?最近ずーっと眠そうだね」
雪:「そうだね。ここしばらく暖かい日が続くようになってきたからね。思わずうとうとしてしまうのかもしれないなぁ」
桜:「そういえば、今日はお仕事大丈夫なの?」
雪:「ああ、今日はもう大丈夫。
雪:お休みさ。今日だけじゃない、この先しばらく、ずーっとお休み」
桜:「そっか・・・」
雪:「おや?いつもだったら嬉しそうにしてくれるのに、今日は浮かない顔をしているね?」
桜:「ううん。雪がここに居てくれるのは嬉しいよ。
桜:だけど、あんまり元気がなさそうだから、心配なだけ」
雪:「元気がない?私が?」
桜:「うん。ここに来ても眠ってる時間が増えた。
桜:・・・それに、なんだか小さくなった気がする」
雪:「ははは、違うよ。それは桜が大きくなったからさ。
雪:ほら、背比べでもしてみよう。さぁ、こっちへおいで・・・」
桜:「・・・ねぇ、雪。ボクね、最近わかったことがあるんだ」
雪:「わかったこと?」
桜:「そう。雪がここへ来て休む時、暖かい日差しが出て、ボクは大きくなれること。
桜:ボクが大きくなるにつれ、雪がここで休む時間が増えたこと」
雪:「つまり、それはどういう事だと思う?」
桜:「雪がお休みをする時間が増える分、暖かい日が増えていく。
桜:草木が芽吹き、動物たちが目を覚まし、そしてボクたちは花を開く・・・
桜:そう、『春』がやってくる」
雪:「正解。よくわかったね」
桜:「わかるさ。だって、ボクは『桜』・・・春に咲く花だもの」
雪:「じゃあ、私のこともわかっているのかな?」
桜:「あなたは『雪』。
桜:冬の間、世界を静かに眠らせる、北の国からの使い」
雪:「大正解。よく理解したね。偉いよ、桜」
桜:「うん。だってボクは雪から色んなことを教わったから」
雪:「そうか・・・なら、これからどうなるか、分かるね?桜」
桜:「・・・雪は溶けて、消えていく。
桜:雪とのお別れがやってくる」
雪:「ああ、一つ違うなぁ」
桜:「どこが違うの?」
雪:「私は消えるわけじゃない。
雪:雪は溶けて水になり、川の一部となって海に混じり、やがて空へと還ってゆく。
雪:そして、それをまた幾度(いくど)か繰り返し、私はいずれまた雪になる。
雪:また長い長い旅に出るだけさ」
桜:「でも、ボクは雪が居なくなったらどうすればいいの?
桜:一人ぼっちになってしまう」
雪:「一人になんかならないさ。さっきキミも言ってたろ?
雪:もう少しすれば、草も木も、動物たちだって目を覚ます。
雪:それに、今は眠っているキミの仲間も目を覚まして、きっと賑やかになるはずさ」
桜:「けど、雪はそこにいないんでしょ?悲しくないの?」
雪:「ああ、私はいられない。
雪:だから、桜。目覚めた仲間に色んな話をしてあげて。キミが知ったたくさんのことを。私との思い出を。
雪:キミが覚えていてくれる。それだけで私は悲しくなんてないから」
桜:「それだけでいいの?」
雪:「それだけでいい。それだけで充分さ」
桜:「わかった。たくさんボクは話をするよ。
桜:雪に教えてもらった、たくさんのことを皆に」
雪:「ありがとう、桜。とても嬉しいよ」
桜:「・・・ねぇ、雪。最後に一つ教えてほしい」
雪:「なんだい?」
桜:「また、ボクたち会えるかな?
桜:どれくらい先かはわからないけれど、またこんな風にお話できるかな?」
雪:「ああ、きっとまた会えるさ。
雪:・・・いや、会いに来るよ。
雪:たくさんたくさん旅をして、いずれまたここへ来る。
雪:その時はまた、色んな話をしよう」
桜:「うん。待ってる。
桜:ずっとずっと待っている」
雪:「・・・さぁ、私はそろそろ眠りにつこう。
雪:今日は日差しが暖かくて、とても気持ちが良い日だから」
桜:「うん、そうだね・・・あなたが眠るまで、ボクもずっとここに居る」
雪:「おやすみ、桜・・・また会う日まで」
桜:「おやすみ、雪・・・良い夢を。いつか会えるその日まで」
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