台本概要

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タイトル 雪と桜
作者名 akodon  (@akodon1)
ジャンル ファンタジー
演者人数 2人用台本(不問2)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 さようなら、また会う日まで。

とあるひと冬の、出会いと別れのお話です。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
不問 59 ゆき。雪の精。
不問 60 さくら。桜の精。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
雪:「ふぅ・・・今日の仕事もようやくひと段落ついたなぁ。 雪:やれやれ・・・毎年この時期は忙しくてかなわない。 雪:・・・おや?そこにゆっくり休めそうな場所があるじゃないか。 雪:今日はここでひと休みさせてもらおう」 桜:「・・・んん?そこに居るのはだあれ?」 雪:「おお、すまない。起こしてしまったようだな。 雪:キミはここの住人だね?」 桜:「じゅうにん?うーん・・・よくわかんない」 雪:「おやおや、どうやらまだ目覚めて間も無いようだな。 雪:ちなみに、自分の名前はわかるかな?」 桜:「名前?ボクの名前?えーっと、うーんと・・・」 雪:「そうかそうか。いや、無理に答えなくても良いよ。 雪:時間が経てばそのうち自然にわかるようになるだろうから」 桜:「ごめんなさい・・・」 雪:「いや、謝ることはないさ。 雪:むしろ、私こそ静かに寝ていたところを起こしてしまってすまないね」 桜:「ううん、大丈夫。 桜:それより、あなたのお名前は?」 雪:「ああ、そうそう。まだ自己紹介もしていなかったね。 雪:私のことは・・・そうだな、雪とでも呼んでくれ」 桜:「ゆき?」 雪:「そう、雪」 桜:「ゆき・・・ゆき・・・うん。ボク覚えたよ」 雪:「そうか、キミは目覚めたばかりだが、きっと賢い子なんだろうな」 桜:「ねぇねぇ、雪はどこから来たの?」 雪:「遠い北の国から旅をしてきたよ」 桜:「雪は何をしているの?」 雪:「旅をしながら人々に冬を告げる仕事をしているんだ」 桜:「雪はなんでここに来たの?」 雪:「なんで、って言われると難しいなぁ。 雪:毎年そういう流れというか、この時期にはここに行くという決まりがあって・・・」 桜:「えーっと、雪は・・・雪は・・・」 雪:「ははは、キミはとても知りたがり屋さんだね」 桜:「知りたがり?」 雪:「今のキミみたいに、アレはなんだろう?コレはどういうこと?と何でも気になってしまうこと」 桜:「へぇ・・・ボクはとっても知りたがり!」 雪:「ああ、とっても知りたがりだ」 桜:「ねぇねぇ、雪。ボクもっと色んなことが知りたいなぁ」 雪:「それは感心だ。色々なことを知るのは、すごくいい事だよ」 桜:「じゃあ、ボクにもっと色んなことを教えてよ、雪」 雪:「うーん、そうだなぁ。私も仕事があるから、ずっとはここに居られないが・・・ 雪:そうだ、なら私がここにいる間、この場所を宿として貸してくれないか?」 桜:「やど?」 雪:「そう、旅先で休息をとる為の、住処(すみか)のようなものだ。 雪:その代わり、私はキミが知りたいことをなんでも教えてあげよう」 桜:「うん!いいよ!雪になら貸してあげる!」 雪:「ありがとう。では、しばらく世話になるよ」 桜:「やったー!今日からここは雪のお宿だよ! 桜:・・・ふぁーあ・・・(あくび)」 雪:「おやおや、大きなあくびをして。 雪:そういえば、まだキミが目覚めるのは、本当はもっと先だものね」 桜:「そうなの?わかんないけど・・・」 雪:「そうだよ。だから、今はまだちょっとだけ、ゆっくりおやすみ」 桜:「うん・・・ねぇ、雪。眠る前にもう一つだけ良い?」 雪:「ん?なんだい?」 桜:「ボクも名前がほしいんだ。 桜:おやすみする前に名前を呼んでほしいんだけど、ボクはまだ自分の名前がわからないから・・・」 雪:「うーん。いつか自然に自分のことは自覚するものだけれど・・・そういうことなら、そうだなぁ・・・ 雪:桜。キミの名前は、桜でどうかな?」 桜:「さくら?さくら・・・ふふ、とっても良い名前」 雪:「気に入ったかい?」 桜:「えへへ・・・すごく」 雪:「それは良かった。 雪:・・・さぁ、もう眠いだろう?そろそろ寝なさい」 桜:「うん、そうする・・・また起きたら、いっぱいお話しようね・・・雪」 雪:「ああ、おやすみ、桜・・・良い夢を」 0:(しばしの間。数週間後) 桜:「・・・あっ、来た来た!おかえり!雪ー!」 雪:「ただいま、桜。 雪:おや、また大きくなったみたいだね」 桜:「うん!最近ちょっとずつ暖かくなってきたから、ぐんぐん力が湧いてくるんだ」 雪:「それはとても良いことだ。 雪:いっぱいお日様の光を浴びて、大きくなるんだよ」 桜:「へへへ・・・。雪はもう今日のお仕事は終わり?」 雪:「そうだね。今日はもうこの辺で終わりにしておこうかな」 桜:「やったー! 桜:最近、雪が居てくれる時間が増えたから、いっぱいお話ができて嬉しいな!」 雪:「ふふ、そうかい?それは良かった」 桜:「ねぇねぇ、今日はあれが聞きたいな。 桜:寒い寒い国にいる、飛べない鳥の親子のお話」 雪:「そういえば桜、この間はその話の途中で眠ってしまったものね。 雪:えーと、どこまで話したかな?」 桜:「鳥のお母さんが卵を産んで、お父さんがその卵を孵(かえ)すところ!」 雪:「そうだ、そうだったね。では、その話の続きから・・・」 0:(しばらく間) 桜:「・・・あー!面白かった!」 雪:「本当に?それは良かった」 桜:「うん!鳥の子どもが一生懸命歩いて、海へ向かう時の話はドキドキしちゃった。 桜:途中で食べられませんように・・・って」 雪:「私もハラハラしながら見守っていたよ。 雪:無事に海まで辿り着けますように、と」 桜:「あーあ。いいなぁ、雪は色んなところで、色んなものを直接見ることができて。 桜:ボクはここから動けないから、雪がとっても羨ましい」 雪:「そんなに羨ましい?」 桜:「そうだよ!羨ましいよ! 桜:ボクも海を見てみたい。飛べない鳥を見てみたい。 桜:雪が前に話してくれた、真っ白い熊や、大きな氷でできた山を見てみたい」 雪:「すまないね。私が桜をどこかに連れて行ってあげられれば良いんだけど・・・」 桜:「ううん、大丈夫。 桜:ボクがここから動けないのは仕方が無いことだって、最近は分かるようになったんだ。 桜:ただ、ボクも雪みたいにどこかに行ければなぁ、って思っただけ」 雪:「そうか、キミはもう、それが理解できるほど大きくなったんだね」 桜:「うん!けど、まだまだ知らないことはいっぱいあるよ! 桜:だから、雪、これからもたーくさん、色んなことを教えてね」 雪:「ああ、わかったよ・・・桜。じゃあ、次は何を話そうか?」 桜:「わーい!それじゃあ、えーっと・・・次はねぇ・・・」 0:(しばらくの間。更に数週間後) 桜:「雪・・・雪?」 雪:「・・・ん?ああ、桜。おはよう」 桜:「大丈夫?最近ずーっと眠そうだね」 雪:「そうだね。ここしばらく暖かい日が続くようになってきたからね。思わずうとうとしてしまうのかもしれないなぁ」 桜:「そういえば、今日はお仕事大丈夫なの?」 雪:「ああ、今日はもう大丈夫。 雪:お休みさ。今日だけじゃない、この先しばらく、ずーっとお休み」 桜:「そっか・・・」 雪:「おや?いつもだったら嬉しそうにしてくれるのに、今日は浮かない顔をしているね?」 桜:「ううん。雪がここに居てくれるのは嬉しいよ。 桜:だけど、あんまり元気がなさそうだから、心配なだけ」 雪:「元気がない?私が?」 桜:「うん。ここに来ても眠ってる時間が増えた。 桜:・・・それに、なんだか小さくなった気がする」 雪:「ははは、違うよ。それは桜が大きくなったからさ。 雪:ほら、背比べでもしてみよう。さぁ、こっちへおいで・・・」 桜:「・・・ねぇ、雪。ボクね、最近わかったことがあるんだ」 雪:「わかったこと?」 桜:「そう。雪がここへ来て休む時、暖かい日差しが出て、ボクは大きくなれること。 桜:ボクが大きくなるにつれ、雪がここで休む時間が増えたこと」 雪:「つまり、それはどういう事だと思う?」 桜:「雪がお休みをする時間が増える分、暖かい日が増えていく。 桜:草木が芽吹き、動物たちが目を覚まし、そしてボクたちは花を開く・・・ 桜:そう、『春』がやってくる」 雪:「正解。よくわかったね」 桜:「わかるさ。だって、ボクは『桜』・・・春に咲く花だもの」 雪:「じゃあ、私のこともわかっているのかな?」 桜:「あなたは『雪』。 桜:冬の間、世界を静かに眠らせる、北の国からの使い」 雪:「大正解。よく理解したね。偉いよ、桜」 桜:「うん。だってボクは雪から色んなことを教わったから」 雪:「そうか・・・なら、これからどうなるか、分かるね?桜」 桜:「・・・雪は溶けて、消えていく。 桜:雪とのお別れがやってくる」 雪:「ああ、一つ違うなぁ」 桜:「どこが違うの?」 雪:「私は消えるわけじゃない。 雪:雪は溶けて水になり、川の一部となって海に混じり、やがて空へと還ってゆく。 雪:そして、それをまた幾度(いくど)か繰り返し、私はいずれまた雪になる。 雪:また長い長い旅に出るだけさ」 桜:「でも、ボクは雪が居なくなったらどうすればいいの? 桜:一人ぼっちになってしまう」 雪:「一人になんかならないさ。さっきキミも言ってたろ? 雪:もう少しすれば、草も木も、動物たちだって目を覚ます。 雪:それに、今は眠っているキミの仲間も目を覚まして、きっと賑やかになるはずさ」 桜:「けど、雪はそこにいないんでしょ?悲しくないの?」 雪:「ああ、私はいられない。 雪:だから、桜。目覚めた仲間に色んな話をしてあげて。キミが知ったたくさんのことを。私との思い出を。 雪:キミが覚えていてくれる。それだけで私は悲しくなんてないから」 桜:「それだけでいいの?」 雪:「それだけでいい。それだけで充分さ」 桜:「わかった。たくさんボクは話をするよ。 桜:雪に教えてもらった、たくさんのことを皆に」 雪:「ありがとう、桜。とても嬉しいよ」 桜:「・・・ねぇ、雪。最後に一つ教えてほしい」 雪:「なんだい?」 桜:「また、ボクたち会えるかな? 桜:どれくらい先かはわからないけれど、またこんな風にお話できるかな?」 雪:「ああ、きっとまた会えるさ。 雪:・・・いや、会いに来るよ。 雪:たくさんたくさん旅をして、いずれまたここへ来る。 雪:その時はまた、色んな話をしよう」 桜:「うん。待ってる。 桜:ずっとずっと待っている」 雪:「・・・さぁ、私はそろそろ眠りにつこう。 雪:今日は日差しが暖かくて、とても気持ちが良い日だから」 桜:「うん、そうだね・・・あなたが眠るまで、ボクもずっとここに居る」 雪:「おやすみ、桜・・・また会う日まで」 桜:「おやすみ、雪・・・良い夢を。いつか会えるその日まで」 0:〜FIN〜

雪:「ふぅ・・・今日の仕事もようやくひと段落ついたなぁ。 雪:やれやれ・・・毎年この時期は忙しくてかなわない。 雪:・・・おや?そこにゆっくり休めそうな場所があるじゃないか。 雪:今日はここでひと休みさせてもらおう」 桜:「・・・んん?そこに居るのはだあれ?」 雪:「おお、すまない。起こしてしまったようだな。 雪:キミはここの住人だね?」 桜:「じゅうにん?うーん・・・よくわかんない」 雪:「おやおや、どうやらまだ目覚めて間も無いようだな。 雪:ちなみに、自分の名前はわかるかな?」 桜:「名前?ボクの名前?えーっと、うーんと・・・」 雪:「そうかそうか。いや、無理に答えなくても良いよ。 雪:時間が経てばそのうち自然にわかるようになるだろうから」 桜:「ごめんなさい・・・」 雪:「いや、謝ることはないさ。 雪:むしろ、私こそ静かに寝ていたところを起こしてしまってすまないね」 桜:「ううん、大丈夫。 桜:それより、あなたのお名前は?」 雪:「ああ、そうそう。まだ自己紹介もしていなかったね。 雪:私のことは・・・そうだな、雪とでも呼んでくれ」 桜:「ゆき?」 雪:「そう、雪」 桜:「ゆき・・・ゆき・・・うん。ボク覚えたよ」 雪:「そうか、キミは目覚めたばかりだが、きっと賢い子なんだろうな」 桜:「ねぇねぇ、雪はどこから来たの?」 雪:「遠い北の国から旅をしてきたよ」 桜:「雪は何をしているの?」 雪:「旅をしながら人々に冬を告げる仕事をしているんだ」 桜:「雪はなんでここに来たの?」 雪:「なんで、って言われると難しいなぁ。 雪:毎年そういう流れというか、この時期にはここに行くという決まりがあって・・・」 桜:「えーっと、雪は・・・雪は・・・」 雪:「ははは、キミはとても知りたがり屋さんだね」 桜:「知りたがり?」 雪:「今のキミみたいに、アレはなんだろう?コレはどういうこと?と何でも気になってしまうこと」 桜:「へぇ・・・ボクはとっても知りたがり!」 雪:「ああ、とっても知りたがりだ」 桜:「ねぇねぇ、雪。ボクもっと色んなことが知りたいなぁ」 雪:「それは感心だ。色々なことを知るのは、すごくいい事だよ」 桜:「じゃあ、ボクにもっと色んなことを教えてよ、雪」 雪:「うーん、そうだなぁ。私も仕事があるから、ずっとはここに居られないが・・・ 雪:そうだ、なら私がここにいる間、この場所を宿として貸してくれないか?」 桜:「やど?」 雪:「そう、旅先で休息をとる為の、住処(すみか)のようなものだ。 雪:その代わり、私はキミが知りたいことをなんでも教えてあげよう」 桜:「うん!いいよ!雪になら貸してあげる!」 雪:「ありがとう。では、しばらく世話になるよ」 桜:「やったー!今日からここは雪のお宿だよ! 桜:・・・ふぁーあ・・・(あくび)」 雪:「おやおや、大きなあくびをして。 雪:そういえば、まだキミが目覚めるのは、本当はもっと先だものね」 桜:「そうなの?わかんないけど・・・」 雪:「そうだよ。だから、今はまだちょっとだけ、ゆっくりおやすみ」 桜:「うん・・・ねぇ、雪。眠る前にもう一つだけ良い?」 雪:「ん?なんだい?」 桜:「ボクも名前がほしいんだ。 桜:おやすみする前に名前を呼んでほしいんだけど、ボクはまだ自分の名前がわからないから・・・」 雪:「うーん。いつか自然に自分のことは自覚するものだけれど・・・そういうことなら、そうだなぁ・・・ 雪:桜。キミの名前は、桜でどうかな?」 桜:「さくら?さくら・・・ふふ、とっても良い名前」 雪:「気に入ったかい?」 桜:「えへへ・・・すごく」 雪:「それは良かった。 雪:・・・さぁ、もう眠いだろう?そろそろ寝なさい」 桜:「うん、そうする・・・また起きたら、いっぱいお話しようね・・・雪」 雪:「ああ、おやすみ、桜・・・良い夢を」 0:(しばしの間。数週間後) 桜:「・・・あっ、来た来た!おかえり!雪ー!」 雪:「ただいま、桜。 雪:おや、また大きくなったみたいだね」 桜:「うん!最近ちょっとずつ暖かくなってきたから、ぐんぐん力が湧いてくるんだ」 雪:「それはとても良いことだ。 雪:いっぱいお日様の光を浴びて、大きくなるんだよ」 桜:「へへへ・・・。雪はもう今日のお仕事は終わり?」 雪:「そうだね。今日はもうこの辺で終わりにしておこうかな」 桜:「やったー! 桜:最近、雪が居てくれる時間が増えたから、いっぱいお話ができて嬉しいな!」 雪:「ふふ、そうかい?それは良かった」 桜:「ねぇねぇ、今日はあれが聞きたいな。 桜:寒い寒い国にいる、飛べない鳥の親子のお話」 雪:「そういえば桜、この間はその話の途中で眠ってしまったものね。 雪:えーと、どこまで話したかな?」 桜:「鳥のお母さんが卵を産んで、お父さんがその卵を孵(かえ)すところ!」 雪:「そうだ、そうだったね。では、その話の続きから・・・」 0:(しばらく間) 桜:「・・・あー!面白かった!」 雪:「本当に?それは良かった」 桜:「うん!鳥の子どもが一生懸命歩いて、海へ向かう時の話はドキドキしちゃった。 桜:途中で食べられませんように・・・って」 雪:「私もハラハラしながら見守っていたよ。 雪:無事に海まで辿り着けますように、と」 桜:「あーあ。いいなぁ、雪は色んなところで、色んなものを直接見ることができて。 桜:ボクはここから動けないから、雪がとっても羨ましい」 雪:「そんなに羨ましい?」 桜:「そうだよ!羨ましいよ! 桜:ボクも海を見てみたい。飛べない鳥を見てみたい。 桜:雪が前に話してくれた、真っ白い熊や、大きな氷でできた山を見てみたい」 雪:「すまないね。私が桜をどこかに連れて行ってあげられれば良いんだけど・・・」 桜:「ううん、大丈夫。 桜:ボクがここから動けないのは仕方が無いことだって、最近は分かるようになったんだ。 桜:ただ、ボクも雪みたいにどこかに行ければなぁ、って思っただけ」 雪:「そうか、キミはもう、それが理解できるほど大きくなったんだね」 桜:「うん!けど、まだまだ知らないことはいっぱいあるよ! 桜:だから、雪、これからもたーくさん、色んなことを教えてね」 雪:「ああ、わかったよ・・・桜。じゃあ、次は何を話そうか?」 桜:「わーい!それじゃあ、えーっと・・・次はねぇ・・・」 0:(しばらくの間。更に数週間後) 桜:「雪・・・雪?」 雪:「・・・ん?ああ、桜。おはよう」 桜:「大丈夫?最近ずーっと眠そうだね」 雪:「そうだね。ここしばらく暖かい日が続くようになってきたからね。思わずうとうとしてしまうのかもしれないなぁ」 桜:「そういえば、今日はお仕事大丈夫なの?」 雪:「ああ、今日はもう大丈夫。 雪:お休みさ。今日だけじゃない、この先しばらく、ずーっとお休み」 桜:「そっか・・・」 雪:「おや?いつもだったら嬉しそうにしてくれるのに、今日は浮かない顔をしているね?」 桜:「ううん。雪がここに居てくれるのは嬉しいよ。 桜:だけど、あんまり元気がなさそうだから、心配なだけ」 雪:「元気がない?私が?」 桜:「うん。ここに来ても眠ってる時間が増えた。 桜:・・・それに、なんだか小さくなった気がする」 雪:「ははは、違うよ。それは桜が大きくなったからさ。 雪:ほら、背比べでもしてみよう。さぁ、こっちへおいで・・・」 桜:「・・・ねぇ、雪。ボクね、最近わかったことがあるんだ」 雪:「わかったこと?」 桜:「そう。雪がここへ来て休む時、暖かい日差しが出て、ボクは大きくなれること。 桜:ボクが大きくなるにつれ、雪がここで休む時間が増えたこと」 雪:「つまり、それはどういう事だと思う?」 桜:「雪がお休みをする時間が増える分、暖かい日が増えていく。 桜:草木が芽吹き、動物たちが目を覚まし、そしてボクたちは花を開く・・・ 桜:そう、『春』がやってくる」 雪:「正解。よくわかったね」 桜:「わかるさ。だって、ボクは『桜』・・・春に咲く花だもの」 雪:「じゃあ、私のこともわかっているのかな?」 桜:「あなたは『雪』。 桜:冬の間、世界を静かに眠らせる、北の国からの使い」 雪:「大正解。よく理解したね。偉いよ、桜」 桜:「うん。だってボクは雪から色んなことを教わったから」 雪:「そうか・・・なら、これからどうなるか、分かるね?桜」 桜:「・・・雪は溶けて、消えていく。 桜:雪とのお別れがやってくる」 雪:「ああ、一つ違うなぁ」 桜:「どこが違うの?」 雪:「私は消えるわけじゃない。 雪:雪は溶けて水になり、川の一部となって海に混じり、やがて空へと還ってゆく。 雪:そして、それをまた幾度(いくど)か繰り返し、私はいずれまた雪になる。 雪:また長い長い旅に出るだけさ」 桜:「でも、ボクは雪が居なくなったらどうすればいいの? 桜:一人ぼっちになってしまう」 雪:「一人になんかならないさ。さっきキミも言ってたろ? 雪:もう少しすれば、草も木も、動物たちだって目を覚ます。 雪:それに、今は眠っているキミの仲間も目を覚まして、きっと賑やかになるはずさ」 桜:「けど、雪はそこにいないんでしょ?悲しくないの?」 雪:「ああ、私はいられない。 雪:だから、桜。目覚めた仲間に色んな話をしてあげて。キミが知ったたくさんのことを。私との思い出を。 雪:キミが覚えていてくれる。それだけで私は悲しくなんてないから」 桜:「それだけでいいの?」 雪:「それだけでいい。それだけで充分さ」 桜:「わかった。たくさんボクは話をするよ。 桜:雪に教えてもらった、たくさんのことを皆に」 雪:「ありがとう、桜。とても嬉しいよ」 桜:「・・・ねぇ、雪。最後に一つ教えてほしい」 雪:「なんだい?」 桜:「また、ボクたち会えるかな? 桜:どれくらい先かはわからないけれど、またこんな風にお話できるかな?」 雪:「ああ、きっとまた会えるさ。 雪:・・・いや、会いに来るよ。 雪:たくさんたくさん旅をして、いずれまたここへ来る。 雪:その時はまた、色んな話をしよう」 桜:「うん。待ってる。 桜:ずっとずっと待っている」 雪:「・・・さぁ、私はそろそろ眠りにつこう。 雪:今日は日差しが暖かくて、とても気持ちが良い日だから」 桜:「うん、そうだね・・・あなたが眠るまで、ボクもずっとここに居る」 雪:「おやすみ、桜・・・また会う日まで」 桜:「おやすみ、雪・・・良い夢を。いつか会えるその日まで」 0:〜FIN〜