台本概要
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タイトル | 一葉の詩が綾なす出会いは。-2- |
---|---|
作者名 | なぎ@泣き虫保護者 (@fuyu_number10) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 5人用台本(男2、女3) ※兼役あり |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
雫が丘学園。 「いいんちょうさん」深山 一葉(みやま ひとは)は、転入生の椎名 綾子との初対面の時を迎えるが・・・。 クラスメイト1~4が登場しますが、 適当な割り振りで兼ね役をやってみてください。 ※台本をご利用になる際は、Twitterにてぜひお報せくださいませ。 お伺いできる限りお邪魔させていただければと存じます。 特に商用利用の場合において、著作権は放棄していません。無断での転載はお断りします。 71 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
一葉 | 女 | 26 | 深山 一葉(みやま ひとは)。委員長。 |
綾子 | 女 | 17 | 椎名 綾子(しいな あやこ)。転入生。 |
怜央 | 男 | 7 | 坂口 怜央(さかぐち れお)。一葉の腐れ縁。一葉・綾子と同級生。 |
藤澤先生 | 男 | 5 | 一葉・綾子・怜央の担任。怜央と兼ね役可。 |
ひなた | 女 | 2 | 階上 ひなた(はしかみ ひなた)。綾子の友達。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ひなた:(N)あーや、今頃どうしてるかな・・・。
ひなた:(N)きっと・・・(苦笑い)わたわたしてんのかなぁ・・・?
ひなた:(N)でも、あーやなら、絶対に大丈夫。
ひなた:(N)だってあーやは、自分で思ってる以上に、すてきな子、なんだからね。
0:間。雫が丘学園、始業式の後のホームルーム。
一葉:緩みきった教室の空気が、突如冷やされ、収縮したような緊張感を帯びます。
一葉:教室の引き戸が開かれて、藤澤先生が入ってきたから。
藤澤先生:ほら、席に着いてー・・・えっと、深山さん、号令をお願いします。
一葉:起立!礼!
一葉:
一葉:(N)ああ・・・反射でやってしまった・・・。
一葉:(N)「既成事実(きせいじじつ)」ってこうして作られるのね・・・。
藤澤先生:おはようございます。えー、ホームルームの前に、編入生を紹介します。
藤澤先生:椎名さん、どうぞ。
一葉:(N)先生がホワイトボードに名前を書きました。
一葉:(N)そして、入ってきたのは、小柄な女子生徒。150cmくらいかな?
一葉:(N)肩くらいまでに切りそろえた、綺麗な黒髪。
一葉:(N)「ザ・清潔感のある学生」、という言葉が一番似合うかも。
一葉:(N)でも、あー・・・ギクシャクしてるし、右手と右足が一緒に出てる・・・。
一葉:(N)先生に促され、椎名さんは自己紹介を始めます。
綾子:はっ、はじめ、まして・・・ししっ椎名、綾子、ですっ!
綾子:よよっ、よろしく、お願いしまっす!!
一葉:(N)教室に入ってきた時から挙動がおかしかったけど・・・噛みすぎだよ・・・。
一葉:(N)めちゃくちゃ緊張してるのね・・・椎名さん。
怜央:うふっく、ぷぷ・・・っ
一葉:(ひそひそ声で)怜央、笑わない!
藤澤先生:椎名さんの席は、あそこの深山さんの隣ね。
一葉:(N)言われて隣を見ると・・・私の席の隣、誰も座ってない!
一葉:(N)面倒見るってまさかの丸投げ!?噓でしょう!?
一葉:(N)ここまで仕組まれてた、って言うの!?
藤澤先生:それから、色々と係を決めるけど、その前に学級委員長を決めるね。
一葉:(N)終わった・・・。
藤澤先生:深山さん、お願いできますか?
一葉:(N)否応(いやおう)、なし・・・。
怜央:一葉、諦めろって。
一葉:うっさい・・・(机に突っ伏す)。
0:(場面転換、ホームルーム後の教室)
一葉:(N)ホームルームが終わった。私の、いや、私の隣の席に、主に女子が殺到している。
クラスメイト1:椎名さん、どこから来たの!?椎名さん可愛いね!
クラスメイト2:椎名さん、趣味は!?椎名さん可愛い!
クラスメイト3:椎名さん、好きな食べ物は?椎名さん、めっちゃ可愛い!
クラスメイト4:椎名さん、好きな哺乳類は?椎名さん、マジ可愛い!
一葉:(N)いや、可愛い言いすぎでしょ・・・あとなんで哺乳類限定なのよ・・・。
一葉:(N)私は半目の状態で、ちらりと椎名さんを見る。
綾子:え!えと福島からきました!趣味・・・趣味は読書で・・・
綾子:えと!好きな食べ物はオムライス、好きな「ほにゅーるい」は・・・
綾子:えっとえっと!ハリネズミです!!
一葉:(N)案の定、椎名さんはあわあわと、目を回しながら答えてる・・・ハリネズミねぇ・・・私も好きだわ。じゃないわ。
一葉:(N)本当にもう・・・。私は思わず机を「すぱーん!」と叩くと立ち上がります。
一葉:
一葉:はいはい、ちょっとみんな、ストップストップー!
一葉:
一葉:(N)あぁ・・・やってしまった。ええい、ままよ!
一葉:
一葉:椎名さん困ってるよ!はいはい並んで!一人一問ずつね!
一葉:
一葉:(N)幸いにも、理解あるクラスメート達は列を作って椎名さんに質問していく。
一葉:(N)はぁ・・・私は一体どうしてこういう・・・。
一葉:(N)一通り列が解消されたころ。
一葉:(N)くいくい。
一葉:(N)誰かが私の制服の袖を引っ張っている。
一葉:(N)椎名さんだ。
綾子:あっあの、委員長さん・・・?
一葉:椎名さん?何?どうしたの?気分でも悪い?
綾子:いえ、あの・・・さっきは、ありがとう、ございました・・・。
一葉:へ?あー!いや、あのね、あれはね、違うの!
一葉:
一葉:(N)椎名さん、きょとんとしてる・・・あれ?
綾子:ちがう・・・?
怜央:あー、椎名さん、こいつ委員長体質なんだよね。
綾子:いいんちょう、たいしつ・・・?
一葉:怜央?
一葉:
一葉:(N)余計な事言うな、とアイコンタクトを飛ばしますが・・・。
怜央:そそそ。だけどこいつ、委員長本当はやりたくないんだってさ。な、委員長さん?
綾子:え、そうなん、ですか・・・?
一葉:え、あお、ぅん、えと、ね?
綾子:でも、でも、皆さんをまとめてて、すごく、かっこいいな、って・・・!
一葉:へ?あ、はい。ありがとう、ございま・・・す・・・?
怜央:(変な笑い方をする)
一葉:怜央、あんたその笑い方やめて。
怜央:あ、自己紹介まだだっけ。俺、坂口 怜央(さかぐち れお)。怜央でいいよ。
綾子:あっ、椎名 綾子(しいな あやこ)です。よろしくお願いしますっ。
一葉:深山 一葉(みやま ひとは)、「ひとは」、でいいわ。椎名さんはニックネームとかあるの?
綾子:えと、前の学校では「あーや」って呼ばれてました。
一葉:「あーや」!かわいい!私も「あーや」って呼んでいい?
綾子:はい!よろしくお願いします!委員長さん!
一葉:(N)やっと椎名さんがほころぶような笑顔で話してくれたぁ・・・。
一葉:(N)え?あれ?私「ひとは、でいい」って言ったよ・・・ね?
怜央:あっははははは!委員長、さん!!だって!!
一葉:怜央うっさい!
綾子:(一葉の声に驚く)ひぅっ!
一葉:え?あーや?
綾子:すす、すみません!!びっくりしちゃって・・・!!ごめん、なさい・・・。
一葉:ううん、私こそいきなり大きな声出しちゃって、ごめんね!
綾子:いえ、えと、大丈夫、です!ご心配、おかけして、すみません・・・。
一葉:(N)やっと笑ってくれたと思ったのに・・・。
一葉:(N)これはまた、やらかしちゃったかなぁ・・・。
0:間。その日の晩。一葉の自室。
一葉:疲れた~!やらかしたぁ~!!あ~も~!!!
一葉:
一葉:(N)あーやの編入でざわついていたクラスは、
一葉:(N)時間が経つにつれて落ち着いていき。
一葉:(N)放課後には、いつもの雰囲気に戻っていたけれど。
一葉:(N)ただ、私には気がかりなことがあった。
一葉:(N)委員長になったことではなく、あーやのこと。
一葉:
一葉:極端に怖がりすぎじゃないかな、あーや・・・。
一葉:うーん・・・気のせいならいいんだけど。・・・(一つ呼吸をして)えいっと。
一葉:
一葉:(N)私はひとまず気持ちを切り替えようと、
一葉:(N)パソコンを立ち上げ、ネットの世界に飛び込むことにする。
一葉:
一葉:まずはやっぱり・・・ここかなぁ。
一葉:
一葉:(N)私が毎日チェックしている、文章投稿SNS。
一葉:
一葉:(ため息)やっぱり今日も、・・・更新されてない・・・。
一葉:
一葉:(N)お気に入りに入れている、とある作家さん。
一葉:(N)3月の下旬くらいから、全然更新されてない・・・。
一葉:(N)それまでは、割と間を置かずに新作がアップされていたのに・・・。
一葉:(N)もちろん、この作家さんにも人生があって、
一葉:(N)いろんなイベントや出来事があるんだろうけど・・・。
一葉:(N)ただ、別にフォローしていた短文投稿サイトでは、
一葉:(N)唯一無二のという、大切なお友達のことを書いていた。
一葉:(N)しばらくは更新はなさそう、かな。
一葉:(N)過去作をひたすら読もう、そしたらきっとリフレッシュできるはず!
一葉:(N)一人黙々と、時折自分で声に出して読んでみたり。
一葉:(N)やっぱりこの方の書く作品って優しくて、素敵だなぁ・・・。
一葉:(N)きっとリアルでも、同じような優しい雰囲気の方なんだろうなぁ・・・なんてね。
0:場面転換。綾子の家の浴室。
綾子:(N)湯船に肩までしっかりと浸かって、両手と両足をできるだけ投げ出して。
綾子:(N)今日の出来事を、一つ、一つ、思い出していく。
綾子:
綾子:今日は、特別な一日・・・のはずだったのに。
綾子:
綾子:(N)学校に着いた時から思いっきり緊張しちゃってて。
綾子:(N)新しいクラスでのあいさつも思いっきり噛んじゃって。
綾子:
綾子:そのあとも・・・たくさん質問されて・・・。
綾子:すごく・・・びっくりしたし、恥ずかしくて。
綾子:
綾子:でも・・・委員長さん、かっこよくて素敵な人だったな・・・。
綾子:
綾子:(N)「みやま ひとは」さんだったかな。名前で呼べなかったの、申し訳ないかも。
綾子:
綾子:明日謝らないと・・・。はう・・・。
綾子:
綾子:(N)まだ見慣れないお風呂場の天井を、見上げてため息。
綾子:
綾子:私って、どうしてこんなに緊張しいで、情けないんだろ・・・。
綾子:
綾子:(N)同い年のはずの二人・・・一葉(ひとは)さんはすごくちゃんとしてて。
綾子:(N)坂口君も、フレンドリーで穏(おだ)やかで・・・。
綾子:(N)でも私はいつも、肝心(かんじん)な時に上手くお話しできなくって・・・でも。
綾子:
綾子:ひな・・・私は・・・。
綾子:がんばるって。約束したもんね。・・・だから・・・。
綾子:がんばり続ける、から、ね。
0:綾子、湯船のお湯をひと掬(すく)いして、顔に思いっきりかける。
綾子:ふぅ・・・。
綾子:
綾子:(N)今日はしっかり休んで、明日からに備えます!
綾子:(N)でもその前に。
綾子:
綾子:・・・よし。
綾子:
綾子:(N)お風呂上がり。ひなと続けていた交換日記。
綾子:(N)こっちに来るときに、ひながそのままプレゼントとして
綾子:(N)渡してくれたもの。私だけが続ける日記になっちゃったけど・・・。
綾子:
綾子:えっと・・・なんて書こうかな・・・あ、そうだ。
綾子:
綾子:(N)大好きな、ひなへ。
綾子:(N)元気に、してますか?今、何をしていますか?
綾子:(N)私は、今日新しいクラスに入ったんだけど・・・
0:-間。綾子が日記を書きあげる。
綾子:これでよしっ、と。
綾子:このノートがいっぱいになったら・・・ひなに送ってみようかな・・・なんて・・・。
綾子:
綾子:(N)そういえば、しばらく書いてなかった、詩。
綾子:(N)久しぶりに、書いてみようかな・・・。
綾子:(N)待ってる人がいるとは、思っていないけど。
綾子:(N)今の気持ちを、書いてみよう。
0:場面転換。ひなたの自室。
ひなた:(N)あーやの話だと、今日あたりが始業式だったはず。
ひなた:(N)もしかして・・・教室に入るときに右手と右足が一緒に出てたりして・・・。
ひなた:
ひなた:ふふ、あーや、緊張しなくても大丈夫。あーやなら、きっと、ね。
ひなた:
ひなた:(N)私は100均で買ってきたノートとボールペンを取り出して、
ひなた:(N)あーやと続けていた交換日記の続きを書き始めた。
ひなた:
ひなた:んー、何を書こうかなぁ。まずはいつもの・・・。
ひなた:
ひなた:(N)大好きなあーやへ。
ひなた:(N)そろそろ始業式かな?どうだった?挨拶、ちゃんとできた?
ひなた:(N)友達、できそ?
ひなた:(N)・・・。・・・・・・。
ひなた:
ひなた:このノートが埋まったら、あーやに送ってあげるからね。待っててね。
0:-続く-
ひなた:(N)あーや、今頃どうしてるかな・・・。
ひなた:(N)きっと・・・(苦笑い)わたわたしてんのかなぁ・・・?
ひなた:(N)でも、あーやなら、絶対に大丈夫。
ひなた:(N)だってあーやは、自分で思ってる以上に、すてきな子、なんだからね。
0:間。雫が丘学園、始業式の後のホームルーム。
一葉:緩みきった教室の空気が、突如冷やされ、収縮したような緊張感を帯びます。
一葉:教室の引き戸が開かれて、藤澤先生が入ってきたから。
藤澤先生:ほら、席に着いてー・・・えっと、深山さん、号令をお願いします。
一葉:起立!礼!
一葉:
一葉:(N)ああ・・・反射でやってしまった・・・。
一葉:(N)「既成事実(きせいじじつ)」ってこうして作られるのね・・・。
藤澤先生:おはようございます。えー、ホームルームの前に、編入生を紹介します。
藤澤先生:椎名さん、どうぞ。
一葉:(N)先生がホワイトボードに名前を書きました。
一葉:(N)そして、入ってきたのは、小柄な女子生徒。150cmくらいかな?
一葉:(N)肩くらいまでに切りそろえた、綺麗な黒髪。
一葉:(N)「ザ・清潔感のある学生」、という言葉が一番似合うかも。
一葉:(N)でも、あー・・・ギクシャクしてるし、右手と右足が一緒に出てる・・・。
一葉:(N)先生に促され、椎名さんは自己紹介を始めます。
綾子:はっ、はじめ、まして・・・ししっ椎名、綾子、ですっ!
綾子:よよっ、よろしく、お願いしまっす!!
一葉:(N)教室に入ってきた時から挙動がおかしかったけど・・・噛みすぎだよ・・・。
一葉:(N)めちゃくちゃ緊張してるのね・・・椎名さん。
怜央:うふっく、ぷぷ・・・っ
一葉:(ひそひそ声で)怜央、笑わない!
藤澤先生:椎名さんの席は、あそこの深山さんの隣ね。
一葉:(N)言われて隣を見ると・・・私の席の隣、誰も座ってない!
一葉:(N)面倒見るってまさかの丸投げ!?噓でしょう!?
一葉:(N)ここまで仕組まれてた、って言うの!?
藤澤先生:それから、色々と係を決めるけど、その前に学級委員長を決めるね。
一葉:(N)終わった・・・。
藤澤先生:深山さん、お願いできますか?
一葉:(N)否応(いやおう)、なし・・・。
怜央:一葉、諦めろって。
一葉:うっさい・・・(机に突っ伏す)。
0:(場面転換、ホームルーム後の教室)
一葉:(N)ホームルームが終わった。私の、いや、私の隣の席に、主に女子が殺到している。
クラスメイト1:椎名さん、どこから来たの!?椎名さん可愛いね!
クラスメイト2:椎名さん、趣味は!?椎名さん可愛い!
クラスメイト3:椎名さん、好きな食べ物は?椎名さん、めっちゃ可愛い!
クラスメイト4:椎名さん、好きな哺乳類は?椎名さん、マジ可愛い!
一葉:(N)いや、可愛い言いすぎでしょ・・・あとなんで哺乳類限定なのよ・・・。
一葉:(N)私は半目の状態で、ちらりと椎名さんを見る。
綾子:え!えと福島からきました!趣味・・・趣味は読書で・・・
綾子:えと!好きな食べ物はオムライス、好きな「ほにゅーるい」は・・・
綾子:えっとえっと!ハリネズミです!!
一葉:(N)案の定、椎名さんはあわあわと、目を回しながら答えてる・・・ハリネズミねぇ・・・私も好きだわ。じゃないわ。
一葉:(N)本当にもう・・・。私は思わず机を「すぱーん!」と叩くと立ち上がります。
一葉:
一葉:はいはい、ちょっとみんな、ストップストップー!
一葉:
一葉:(N)あぁ・・・やってしまった。ええい、ままよ!
一葉:
一葉:椎名さん困ってるよ!はいはい並んで!一人一問ずつね!
一葉:
一葉:(N)幸いにも、理解あるクラスメート達は列を作って椎名さんに質問していく。
一葉:(N)はぁ・・・私は一体どうしてこういう・・・。
一葉:(N)一通り列が解消されたころ。
一葉:(N)くいくい。
一葉:(N)誰かが私の制服の袖を引っ張っている。
一葉:(N)椎名さんだ。
綾子:あっあの、委員長さん・・・?
一葉:椎名さん?何?どうしたの?気分でも悪い?
綾子:いえ、あの・・・さっきは、ありがとう、ございました・・・。
一葉:へ?あー!いや、あのね、あれはね、違うの!
一葉:
一葉:(N)椎名さん、きょとんとしてる・・・あれ?
綾子:ちがう・・・?
怜央:あー、椎名さん、こいつ委員長体質なんだよね。
綾子:いいんちょう、たいしつ・・・?
一葉:怜央?
一葉:
一葉:(N)余計な事言うな、とアイコンタクトを飛ばしますが・・・。
怜央:そそそ。だけどこいつ、委員長本当はやりたくないんだってさ。な、委員長さん?
綾子:え、そうなん、ですか・・・?
一葉:え、あお、ぅん、えと、ね?
綾子:でも、でも、皆さんをまとめてて、すごく、かっこいいな、って・・・!
一葉:へ?あ、はい。ありがとう、ございま・・・す・・・?
怜央:(変な笑い方をする)
一葉:怜央、あんたその笑い方やめて。
怜央:あ、自己紹介まだだっけ。俺、坂口 怜央(さかぐち れお)。怜央でいいよ。
綾子:あっ、椎名 綾子(しいな あやこ)です。よろしくお願いしますっ。
一葉:深山 一葉(みやま ひとは)、「ひとは」、でいいわ。椎名さんはニックネームとかあるの?
綾子:えと、前の学校では「あーや」って呼ばれてました。
一葉:「あーや」!かわいい!私も「あーや」って呼んでいい?
綾子:はい!よろしくお願いします!委員長さん!
一葉:(N)やっと椎名さんがほころぶような笑顔で話してくれたぁ・・・。
一葉:(N)え?あれ?私「ひとは、でいい」って言ったよ・・・ね?
怜央:あっははははは!委員長、さん!!だって!!
一葉:怜央うっさい!
綾子:(一葉の声に驚く)ひぅっ!
一葉:え?あーや?
綾子:すす、すみません!!びっくりしちゃって・・・!!ごめん、なさい・・・。
一葉:ううん、私こそいきなり大きな声出しちゃって、ごめんね!
綾子:いえ、えと、大丈夫、です!ご心配、おかけして、すみません・・・。
一葉:(N)やっと笑ってくれたと思ったのに・・・。
一葉:(N)これはまた、やらかしちゃったかなぁ・・・。
0:間。その日の晩。一葉の自室。
一葉:疲れた~!やらかしたぁ~!!あ~も~!!!
一葉:
一葉:(N)あーやの編入でざわついていたクラスは、
一葉:(N)時間が経つにつれて落ち着いていき。
一葉:(N)放課後には、いつもの雰囲気に戻っていたけれど。
一葉:(N)ただ、私には気がかりなことがあった。
一葉:(N)委員長になったことではなく、あーやのこと。
一葉:
一葉:極端に怖がりすぎじゃないかな、あーや・・・。
一葉:うーん・・・気のせいならいいんだけど。・・・(一つ呼吸をして)えいっと。
一葉:
一葉:(N)私はひとまず気持ちを切り替えようと、
一葉:(N)パソコンを立ち上げ、ネットの世界に飛び込むことにする。
一葉:
一葉:まずはやっぱり・・・ここかなぁ。
一葉:
一葉:(N)私が毎日チェックしている、文章投稿SNS。
一葉:
一葉:(ため息)やっぱり今日も、・・・更新されてない・・・。
一葉:
一葉:(N)お気に入りに入れている、とある作家さん。
一葉:(N)3月の下旬くらいから、全然更新されてない・・・。
一葉:(N)それまでは、割と間を置かずに新作がアップされていたのに・・・。
一葉:(N)もちろん、この作家さんにも人生があって、
一葉:(N)いろんなイベントや出来事があるんだろうけど・・・。
一葉:(N)ただ、別にフォローしていた短文投稿サイトでは、
一葉:(N)唯一無二のという、大切なお友達のことを書いていた。
一葉:(N)しばらくは更新はなさそう、かな。
一葉:(N)過去作をひたすら読もう、そしたらきっとリフレッシュできるはず!
一葉:(N)一人黙々と、時折自分で声に出して読んでみたり。
一葉:(N)やっぱりこの方の書く作品って優しくて、素敵だなぁ・・・。
一葉:(N)きっとリアルでも、同じような優しい雰囲気の方なんだろうなぁ・・・なんてね。
0:場面転換。綾子の家の浴室。
綾子:(N)湯船に肩までしっかりと浸かって、両手と両足をできるだけ投げ出して。
綾子:(N)今日の出来事を、一つ、一つ、思い出していく。
綾子:
綾子:今日は、特別な一日・・・のはずだったのに。
綾子:
綾子:(N)学校に着いた時から思いっきり緊張しちゃってて。
綾子:(N)新しいクラスでのあいさつも思いっきり噛んじゃって。
綾子:
綾子:そのあとも・・・たくさん質問されて・・・。
綾子:すごく・・・びっくりしたし、恥ずかしくて。
綾子:
綾子:でも・・・委員長さん、かっこよくて素敵な人だったな・・・。
綾子:
綾子:(N)「みやま ひとは」さんだったかな。名前で呼べなかったの、申し訳ないかも。
綾子:
綾子:明日謝らないと・・・。はう・・・。
綾子:
綾子:(N)まだ見慣れないお風呂場の天井を、見上げてため息。
綾子:
綾子:私って、どうしてこんなに緊張しいで、情けないんだろ・・・。
綾子:
綾子:(N)同い年のはずの二人・・・一葉(ひとは)さんはすごくちゃんとしてて。
綾子:(N)坂口君も、フレンドリーで穏(おだ)やかで・・・。
綾子:(N)でも私はいつも、肝心(かんじん)な時に上手くお話しできなくって・・・でも。
綾子:
綾子:ひな・・・私は・・・。
綾子:がんばるって。約束したもんね。・・・だから・・・。
綾子:がんばり続ける、から、ね。
0:綾子、湯船のお湯をひと掬(すく)いして、顔に思いっきりかける。
綾子:ふぅ・・・。
綾子:
綾子:(N)今日はしっかり休んで、明日からに備えます!
綾子:(N)でもその前に。
綾子:
綾子:・・・よし。
綾子:
綾子:(N)お風呂上がり。ひなと続けていた交換日記。
綾子:(N)こっちに来るときに、ひながそのままプレゼントとして
綾子:(N)渡してくれたもの。私だけが続ける日記になっちゃったけど・・・。
綾子:
綾子:えっと・・・なんて書こうかな・・・あ、そうだ。
綾子:
綾子:(N)大好きな、ひなへ。
綾子:(N)元気に、してますか?今、何をしていますか?
綾子:(N)私は、今日新しいクラスに入ったんだけど・・・
0:-間。綾子が日記を書きあげる。
綾子:これでよしっ、と。
綾子:このノートがいっぱいになったら・・・ひなに送ってみようかな・・・なんて・・・。
綾子:
綾子:(N)そういえば、しばらく書いてなかった、詩。
綾子:(N)久しぶりに、書いてみようかな・・・。
綾子:(N)待ってる人がいるとは、思っていないけど。
綾子:(N)今の気持ちを、書いてみよう。
0:場面転換。ひなたの自室。
ひなた:(N)あーやの話だと、今日あたりが始業式だったはず。
ひなた:(N)もしかして・・・教室に入るときに右手と右足が一緒に出てたりして・・・。
ひなた:
ひなた:ふふ、あーや、緊張しなくても大丈夫。あーやなら、きっと、ね。
ひなた:
ひなた:(N)私は100均で買ってきたノートとボールペンを取り出して、
ひなた:(N)あーやと続けていた交換日記の続きを書き始めた。
ひなた:
ひなた:んー、何を書こうかなぁ。まずはいつもの・・・。
ひなた:
ひなた:(N)大好きなあーやへ。
ひなた:(N)そろそろ始業式かな?どうだった?挨拶、ちゃんとできた?
ひなた:(N)友達、できそ?
ひなた:(N)・・・。・・・・・・。
ひなた:
ひなた:このノートが埋まったら、あーやに送ってあげるからね。待っててね。
0:-続く-