台本概要
138 views
タイトル | 優衣と沙紀 |
---|---|
作者名 | Danzig |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(女2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず連絡不要 |
説明 |
百合ものですが、百合まで行けない切ない関係の話です。 20分~25分程度 注意: サシ劇ではありますが、 主人公、霧島沙紀の独白がナレーションとなって物語が進行しますので、 沙紀のセリフが極端に多く、サシ劇としてはセリフのバランスが悪いです。 台本使用規定: 商用、非商用問わず連絡不要 138 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
沙紀 | 女 | 93 | 霧島沙紀(きりしま さき) |
優衣 | 女 | 63 | 木之下優衣(きのした ゆい) |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:優衣と沙紀
:
:
0:登場人物
0:霧島沙紀(きりしま さき)
0:木之下優衣(きのした ゆい)
:
0:あらすじ
0:霧島沙紀と木之下優衣は、中学時代からの大の親友
0:気の合う二人は、何をするにもいつも一緒。
0:今日も休みを利用して二人で映画やカラオケを楽しんだ
:
0:第一場 公園
:
沙紀:(独白)
沙紀:私の名前は霧島沙紀(きりしま さき)
沙紀:私には木之下優衣(きのした ゆい)という中学時代からの大親友がいる。
沙紀:私と優衣とは昔から何をするにもいつも一緒だった
沙紀:今日も休日を利用して、二人で映画とカラオケを楽しんできた
沙紀:その帰り道、公園の脇道(わきみち)を二人で並んで歩いてる
:
優衣:う~~ん
:
:
0:大きく伸びをする優衣
:
沙紀:どうしたのw 優衣
:
優衣:いや~、何か久しぶりに、思いっ切り遊んだって感じがするわね
優衣:私歌いすぎて喉がw 明日ヤバイかもw
:
沙紀:ははは 優衣はカラオケ好きだからね
:
優衣:もう大好き でも、歌は沙紀の方が上手けどね
:
沙紀:そんな事ないわよ
:
優衣:そんな事あるって、ははは
:
:
沙紀:(独白)
沙紀:私は優衣の事が好きだ
沙紀:勿論、親友として、この気の置けない仲間としての優衣が好きだ
沙紀:
沙紀:でも、いつの頃からか、その想いの中に恋心が混じっている事に気が付いた。
沙紀:しかし、それを優衣に告げる事はない・・・
沙紀:
沙紀:
沙紀:公園を少し過ぎると、高校の野球グラウンドの横を通る
沙紀:そこには、野球の練習をしている高校生の姿が見える
:
優衣:お! 高校生君達も、元気にやってますなぁ
:
沙紀:ホント、土曜だというのに大変よね
:
優衣:ホント、ホント
優衣:いやぁ青春ですなぁ
:
沙紀:でも私、あの子達の事、ちょっと羨(うらや)ましいなって思うんだ。
沙紀:私、男に生まれたかったんだよねぇ
:
優衣:へー、そうなんだw
優衣:どうして?
:
沙紀:私ね、力強いのって、ちょっと憧れるんだ。
沙紀:なんかこう・・・大切な時に、大好きな人を、ギュッと抱きしめてやれるのって、いいじゃない?
:
優衣:そう?
優衣:私はどっちかっていうと、抱きしめられる方がいいけどな
優衣:あぁ、ナイト様♪
優衣:なんてねw
:
沙紀:ははは、優衣らしいわねw
:
沙紀:(独白)
沙紀:私が優衣に、自分のこの想いを伝える事はないだろう
沙紀:優衣にとって、私は中学時代からの友人
沙紀:私も優衣との今の関係が大切
沙紀:もし、私が優衣に想いを告げてしまえば、おそらく今の関係は終わってしまうだろう
沙紀:私には、それがたまらなく怖い
沙紀:だから、優衣にこの想いを伝える事はないのだ
:
優衣:まぁでも、沙紀って、どっちかっていうと「ナイトタイプ」だもんねw
:
沙紀:そうかなぁ はは
:
優衣:そうよ
優衣:私、沙紀のそういうとこ好きよ、
優衣:ホント大好き♪
:
沙紀:え?・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:ダメ・・・違う・・・
沙紀:違うの・・
沙紀:勘違いしちゃダメ!
:
優衣:私の事を、ずっと守ってくださいね♪
優衣:ナイト様♪
:
優衣:私、ナイト様の事を、お慕い申し上げておりますわ♪
:
沙紀:優衣・・・・それって・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:私の中で、何かが壊(こわ)れる音が聞こえた気がした
沙紀:優衣のいう『好き』という感情が、友人に向けてのものであることは、十分わかっている
沙紀:それでも、何か・・・
沙紀:まるでダムが決壊(けっかい)するような・・・
沙紀:そんな、破滅(はめつ)に向かう音が、聞こえた気がした
:
優衣:え?
:
沙紀:(独白)
沙紀:しばらく、私達は黙っていた
沙紀:そして、少しして、優衣がようやく言葉の意味を理解した
:
:
優衣:や・・・やだぁ~ もう、何勘違いしてるのよw
優衣:そんなんじゃないってw
優衣:女同士で、何言ってるのよ もうw
優衣:親友として、そういう「ナイト」みたいな沙紀が、好きよって事じゃない
:
沙紀:・・・・うん
:
沙紀:(独白)
沙紀:私には、それしか言えなかった
沙紀:言葉が見つからなかったのだ
沙紀:笑えばいいのか、冗談を言えばいいのか、
沙紀:どういう言葉を選べば、この雰囲気が元に戻るのか
沙紀:わからなかった
沙紀:それは、例えどんな言葉であったとしても
沙紀:何かを口に出してしまえば、全てが終わってしまう、そんな気がしていたから・・・
:
優衣:どうしたの?
:
沙紀:(独白)
沙紀:優衣が、私の顔を見つめている
:
優衣:あ・・・ごめん、
優衣:私、何か変な事いっちゃった?
:
沙紀:し・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:ダメ、堪(こら)えて!
:
優衣:え?
:
沙紀:(独白)
沙紀:それ以上はダメ、やめて!
沙紀:
沙紀:
沙紀:しかし、いくら自分にそう言い聞かせても
沙紀:私にはもう自分をどうする事も出来なかった・・・
:
沙紀:し・・・
沙紀:親友じゃなきゃ・・・ダメかな・・
:
優衣:沙紀?
優衣:それ・・・どういう事?
優衣:私・・・沙紀の事、親友だと思ってたけど・・・
優衣:駄目・・・だった?
:
沙紀:そ・・・そうじゃなくて
:
優衣:え?
:
沙紀:親友としての「好き」とかじゃなくて、
沙紀:れ・・れ・・恋愛の対象としての「好き」じゃ・・・駄目かな?
:
優衣:え!
:
沙紀:私さ、優衣の事が好きなんだ、ずっと前から・・・・
沙紀:その・・・親友としてじゃなく・・・恋愛の対象として
:
沙紀:(独白)
沙紀:突然の私の言葉に、優衣が驚いている
沙紀:それは分かっていた事・・・
沙紀:優衣はそんな風に、私を見ていなかったのだから
:
優衣:えっと・・・
優衣:沙紀が、そんな風に私の事思っててくれたなんて、私、考えた事もなかった
:
沙紀:そう・・・よね
:
沙紀:(独白)
沙紀:優衣の精一杯の優しさが、伝わってくる
沙紀:親友だと思っていた同姓から、突然告白をされれば、誰だって戸惑うでしょう
沙紀:そんな事は分かってたのに・・・・
沙紀:でも、私にはもうどうする事も出来なかった
沙紀:
沙紀:
沙紀:しかし、不思議と優衣に告白した事を、後悔はしていなかった
沙紀:優衣への想いが、恋心だと気づいてから、
沙紀:いずれ、こうなるだろう事は、分かっていた事だから・・・
沙紀:それが、たまたま「今日になっただけ」なんだろうと思っていた
沙紀:
沙紀:
沙紀:少しの沈黙の後、私は優衣に別れを告げる事にした
沙紀:ごめんね優衣・・・
沙紀:もう一緒にはいられないね
:
:
沙紀:ゴメン優衣・・・・でも私、真剣だったの
沙紀:本当は、ずっと言わずに、我慢するつもりだったんだけど・・・
沙紀:
沙紀:でも、さっき優衣が「好き」って言ってくれたとき
沙紀:私の気持ち・・・もう抑えきれなくなっちゃって・・・
沙紀:
沙紀:こんな事打ち明けても、優衣が困るだけだって、分かってるし
沙紀:こんな事言い出しちゃったら、もう今までどおり、優衣と一緒にはいられなくなる事も分かってる
沙紀:
沙紀:でも・・・
沙紀:
沙紀:でも、このままじゃ、優衣を騙してるような気がして
沙紀:ううん、優衣だけじゃなくて、自分の気持ちにも嘘ついてる
沙紀:
沙紀:これ以上、嘘をつき続けるなんて・・・もう私には出来ない
沙紀:・・・・出来ないの
:
優衣:沙紀・・・
:
沙紀:ゴメンね優衣・・・
:
0:少しの沈黙
:
沙紀:私・・・もう行くわ
:
0:立ち去ろうとする沙紀
:
優衣:まって!
:
沙紀:え?
:
0:思わず衝動的に沙紀を呼び止めた優衣
:
優衣:あ・・・あの・・・さ
優衣:はは・・びっくりしちゃったw
優衣:
優衣:正直言うと、今でも、なんだか良くわかってないのかもしれない
:
沙紀:優衣・・・
:
優衣:でも・・・うれしかったわよ
優衣:
優衣:わ、私・・・沙紀の事が好きよ
優衣:勿論、今は親友として好きだけど・・・
優衣:
優衣:
優衣:私・・・ね
優衣:沙紀の恋人になれるかどうか、やってみる
優衣:だって・・・大切な沙紀とこのまま離れちゃうのは、イヤだもん
:
沙紀:優衣・・・
:
優衣:ね♪
:
沙紀:ありがとう、優衣
:
沙紀:(独白)
沙紀:自然と涙があふれてくる
沙紀:優衣の優しさが、大きさが、私にはとても救いになった
:
優衣:何よ
優衣:泣かなくてもいいでしょ
:
沙紀:うん
:
優衣:これじゃ、どっちがナイトだか分かんないじゃない
:
沙紀:うん
:
優衣:そっか、
優衣:これから遊びに出かけるときは、デートって事になるのね
:
沙紀:うん
:
沙紀:(独白)
沙紀:こうして私と優衣は、友人以上恋人未満の関係としてやっていく事になった
沙紀:
沙紀:
沙紀:そして数週間が過ぎていった
:
:
0:第二場 繁華街
0:
0:街を二人であるく沙紀と優衣
:
沙紀:(独白)
沙紀:私と優衣は、これまで通り、休みを利用して、定期的に会っていた
沙紀:以前と比べて、会う頻度が高くなったわけではないが
沙紀:そんな事は全く気にならなかった・・・
沙紀:
沙紀:でも、最近、優衣の元気がないように感じる
沙紀:電話でも、Lineでも、優衣の言葉数は少なくなっていた
沙紀:私はそんな優衣を、なんとか元気づけたいと思っていた
沙紀:
沙紀:そんな日曜日
:
沙紀:ねぇ、優衣、今日の映画面白かったね
:
優衣:うん・・・
:
沙紀:そういえばさ、今度の日曜で、二人が付き合い始めてから、ちょうど一ヶ月じゃない
:
優衣:そうね・・・
:
沙紀:だからさ、今度の日曜はお祝いに、ケーキバイキングなんてどう?
:
優衣:うん・・・いいわよ
:
沙紀:うん、決まり!
沙紀:で、この後どうする?
沙紀:何か食べて帰る?
沙紀:それとも、カラオケでもいく?
:
優衣:うん・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:元気のない優衣
沙紀:どことなくどころではない
沙紀:見るからに元気がない
:
沙紀:どうしたの優衣? 元気ないじゃない。
沙紀:何かあったの?
:
優衣:ううん・・・
優衣:何でもないわよ
:
沙紀:そう?
沙紀:この頃の優衣、なんだか少し元気がないみたい
:
優衣:そんな事ないわよ
優衣:今日はちょっと、疲れちゃったのかな
:
沙紀:そっか、じゃ今日はもう帰りましょう
:
優衣:うん・・・ごめんね
:
沙紀:(独白)
沙紀:そして、私達は駅へ向かった
:
0:第三場 駅のホーム
:
沙紀:(独白)
沙紀:駅のホームで、しばらく二人はベンチに座って、電車を待っていた
沙紀:優衣は、始終なんだか落ち込んだ様子だった
沙紀:なぜだろう、体の具合がわるい訳ではなさそうなのに・・・
沙紀:何か落ち込んでいるような、悩んでいるような、そんな感じだった
沙紀:
沙紀:しばらくして、電車の到着をしらせるアナウンスがながれる
沙紀:私達は電車に乗ったが、座る席はなく、二人でドアの近くに立っていた
:
沙紀:心配だから家まで送るわね
:
優衣:いいわよ・・・そんな
:
沙紀:いいって、いいって
沙紀:私がそうしたいんだから ね。
:
優衣:・・・うん
:
沙紀:(独白)しばらくして、二人は地元の駅で降りた
:
:
0:第四場 帰り道
:
沙紀:(独白)
沙紀:優衣の家までの帰り道
沙紀:私達は並んで歩いていた
沙紀:遅れがちになる優衣の歩調に合わせながら
沙紀:何とか優衣に、元気になってもらいたい
沙紀:その事で私の頭の中はいっぱいになっていた
:
沙紀:優衣、ありがとうね。
沙紀:私、優衣がいてくれて、本当によかった
:
沙紀:(独白)
沙紀:優衣を見ず、もうすっかり暮れてしまった空を、見上げながら私は言った
沙紀:優衣の返事はなかった
:
沙紀:優衣、それでね、今度・・・
:
優衣:・・・・ぇ・・・・ぇ・・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:その時、私は優衣のすすり泣く声に気が付いた
:
沙紀:優衣?
:
優衣:・・・・ぇ・・・・ぇ・・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:優衣はすすり泣くばかりで返事をしてくれない
沙紀:本当にどうしてしまったんだろう
:
沙紀:優衣? 大丈夫?
:
優衣:・・・・ぇ・・・・ぇ・・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:優衣のすすり泣きは次第に大きくなっていく
沙紀:何かこらえきれなくなったような感じに・・・
:
沙紀:優衣? 気分でも悪いの?
:
優衣:そうじゃないの
:
沙紀:優衣・・・じゃぁどうしたの
:
優衣:そうじゃないの・・・
:
沙紀:そうじゃない・・・って、
沙紀:どういう事?
沙紀:何かあったの?
:
優衣:ごめんなさい・・・・
優衣:沙紀・・・・ごめんなさい・・・・
:
沙紀:優衣・・・そんな・・・
沙紀:何言ってるの?
沙紀:「ごめんなさい」じゃ分からないわよ
:
優衣:ごめんなさい・・・
優衣:やっぱり・・・・やっぱり・・・私・・・
:
沙紀:優衣・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:その時になって、私はようやく、すべてを理解した
沙紀:優衣の気持ちを
沙紀:あれから優衣が、どんなに悩んでいたのかを
沙紀:それを知らずに、私だけが浮かれていたのかを
沙紀:そして、それが、どれだけ優衣を苦しめていたのかを・・・
:
優衣:どうしても駄目なの
優衣:どんなに一生懸命に沙紀の事・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:泣きじゃくる優衣をみて、私は、どうする事もできなかった・・・
:
優衣:恋人に・・・恋人になろうって、どんなに思っても
優衣:どうしても、思えないの
:
優衣:大好きなのに・・・・
優衣:私、沙紀の事、こんなにも、大好きなのに・・・・
:
沙紀:優衣・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:もうこれ以上、優衣に無理強い(むりじい)をするわけにはいかない
沙紀:そして、私達の関係も、これでもう終わりだろう・・・
沙紀:この先、たとえ、どれだけ時間をかけたとしても
沙紀:多分、もう二度と、昔の関係に戻れる日は来ないだろう
沙紀:
沙紀:そして、私はただ、その事実を、受け入れるしかないのだ
:
優衣:どうして・・・どうして、あんな事言ったのよ
優衣:どうして、親友じゃいけなかったのよ
優衣:え~ん(泣き声)
優衣:沙紀のバカ
:
沙紀:本当にごめんね、優衣
:
優衣:バカ
:
沙紀:(独白)
沙紀:優衣の一生懸命だった気持ちが、痛いほどわかる
沙紀:本当に、優衣には苦しい思いをさせてしまった
:
沙紀:ごめんね優衣
沙紀:辛い想いさせちゃって
沙紀:本当にごめんなさい
:
優衣:どうして・・・
優衣:どうして、親友じゃいけないの?
優衣:親友なら、今まで通り、ずっと楽しくやっていけるじゃない
:
沙紀:ごめんなさい
:
沙紀:(独白)
沙紀:私には、ただ、謝る事しかできなかった
:
優衣:私、沙紀と離れたくないよ
:
沙紀:優衣・・・
:
優衣:お願いよ沙紀、親友として、もう一度はじめから・・・
:
沙紀:ごめんなさい、優衣・・・
沙紀:でも、 もう、駄目なの
:
優衣:沙紀・・・
:
沙紀:親友じゃ駄目なの
沙紀:私の気持ちが、その一線を越えてしまったの
沙紀:優衣・・・あなたを愛してるから もう親友じゃいられないの
:
優衣:わからない!
優衣:私、わからないわよ!
:
沙紀:ごめんなさい
沙紀:私の気持ちばかり押し付けちゃって・・・・
:
沙紀:優衣にこんなに辛い想いをさせるんだったら
沙紀:やっぱり、あの時に分かれてしまった方がよかったのかもね
:
沙紀:私のせいで、辛い想いさせちゃって、本当にごめんなさい
:
沙紀:(独白)
沙紀:ここで涙を流すわけにはいかない・・・
沙紀:ここで涙を流してしまったら、もっと優衣を苦しめてしまう
沙紀:お願い・・・もう少し・・我慢して・・
:
優衣:沙紀
:
沙紀:もう・・・ここで分かれましょう
沙紀:それがきっと、優衣の為にはいいと思うの
:
優衣:沙紀・・・
:
沙紀:ありがとう優衣、短い間だったけど、夢が叶った気がした
沙紀:優衣と心が通じ合えたと思えて、本当に嬉しかったわよ
沙紀:私はもうそれだけで十分・・・
:
優衣:沙紀・・・
:
沙紀:デート・・・楽しかったわよ
:
優衣:沙紀・・・イヤ・・・イヤ
優衣:沙紀と離れるなんて、イヤ
優衣:もうこれっきりなんて・・・
:
沙紀:さようなら優衣
沙紀:ゴメンね・・・・ありがとう・・・
:
優衣:沙紀・・・・いかないで、お願い
:
沙紀:もう送ってあげられないけど
沙紀:気をつけて帰ってね
:
優衣:イヤ・・・・イヤ
:
:
0:ゆっくりと立ち上がり歩き出す沙紀
:
沙紀:じゃぁ・・ね
:
優衣:沙紀~
:
:
沙紀を引き止めたいが理性と感情の狭間で身体が動かない優衣
:
優衣:沙紀~
:
沙紀:(独白)
沙紀:背中から聞こえる、優衣の声を聞きながら
沙紀:私は、もう二度と振り返ってはいけないと、自分に言い聞かせていた
沙紀:そして、優衣の視界から、私が消えてしまうまで、
沙紀:「止まってはいけない」と何度も言い聞かせていた
沙紀:そう言い続けていなければ、崩れ落ちてしまいそうだったから
沙紀:
沙紀:ごめんなさい、優衣
沙紀:そして、ありがとう
沙紀:私とずっと友達でいてくれて
沙紀:一時的でも、恋人になってくれて・・・
沙紀:
沙紀:もう・・・涙が・・・こらえていた涙が・・・
:
沙紀:・・・・ぇ・・・・ぇ・・・・・
沙紀:え~ん(声を上げて泣く)・・・・・
:
:
0:泣きながら、歩き続ける沙紀
0:
0:終わり
:
0:優衣と沙紀
:
:
0:登場人物
0:霧島沙紀(きりしま さき)
0:木之下優衣(きのした ゆい)
:
0:あらすじ
0:霧島沙紀と木之下優衣は、中学時代からの大の親友
0:気の合う二人は、何をするにもいつも一緒。
0:今日も休みを利用して二人で映画やカラオケを楽しんだ
:
0:第一場 公園
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沙紀:(独白)
沙紀:私の名前は霧島沙紀(きりしま さき)
沙紀:私には木之下優衣(きのした ゆい)という中学時代からの大親友がいる。
沙紀:私と優衣とは昔から何をするにもいつも一緒だった
沙紀:今日も休日を利用して、二人で映画とカラオケを楽しんできた
沙紀:その帰り道、公園の脇道(わきみち)を二人で並んで歩いてる
:
優衣:う~~ん
:
:
0:大きく伸びをする優衣
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沙紀:どうしたのw 優衣
:
優衣:いや~、何か久しぶりに、思いっ切り遊んだって感じがするわね
優衣:私歌いすぎて喉がw 明日ヤバイかもw
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沙紀:ははは 優衣はカラオケ好きだからね
:
優衣:もう大好き でも、歌は沙紀の方が上手けどね
:
沙紀:そんな事ないわよ
:
優衣:そんな事あるって、ははは
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:
沙紀:(独白)
沙紀:私は優衣の事が好きだ
沙紀:勿論、親友として、この気の置けない仲間としての優衣が好きだ
沙紀:
沙紀:でも、いつの頃からか、その想いの中に恋心が混じっている事に気が付いた。
沙紀:しかし、それを優衣に告げる事はない・・・
沙紀:
沙紀:
沙紀:公園を少し過ぎると、高校の野球グラウンドの横を通る
沙紀:そこには、野球の練習をしている高校生の姿が見える
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優衣:お! 高校生君達も、元気にやってますなぁ
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沙紀:ホント、土曜だというのに大変よね
:
優衣:ホント、ホント
優衣:いやぁ青春ですなぁ
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沙紀:でも私、あの子達の事、ちょっと羨(うらや)ましいなって思うんだ。
沙紀:私、男に生まれたかったんだよねぇ
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優衣:へー、そうなんだw
優衣:どうして?
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沙紀:私ね、力強いのって、ちょっと憧れるんだ。
沙紀:なんかこう・・・大切な時に、大好きな人を、ギュッと抱きしめてやれるのって、いいじゃない?
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優衣:そう?
優衣:私はどっちかっていうと、抱きしめられる方がいいけどな
優衣:あぁ、ナイト様♪
優衣:なんてねw
:
沙紀:ははは、優衣らしいわねw
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沙紀:(独白)
沙紀:私が優衣に、自分のこの想いを伝える事はないだろう
沙紀:優衣にとって、私は中学時代からの友人
沙紀:私も優衣との今の関係が大切
沙紀:もし、私が優衣に想いを告げてしまえば、おそらく今の関係は終わってしまうだろう
沙紀:私には、それがたまらなく怖い
沙紀:だから、優衣にこの想いを伝える事はないのだ
:
優衣:まぁでも、沙紀って、どっちかっていうと「ナイトタイプ」だもんねw
:
沙紀:そうかなぁ はは
:
優衣:そうよ
優衣:私、沙紀のそういうとこ好きよ、
優衣:ホント大好き♪
:
沙紀:え?・・・
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沙紀:(独白)
沙紀:ダメ・・・違う・・・
沙紀:違うの・・
沙紀:勘違いしちゃダメ!
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優衣:私の事を、ずっと守ってくださいね♪
優衣:ナイト様♪
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優衣:私、ナイト様の事を、お慕い申し上げておりますわ♪
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沙紀:優衣・・・・それって・・・
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沙紀:(独白)
沙紀:私の中で、何かが壊(こわ)れる音が聞こえた気がした
沙紀:優衣のいう『好き』という感情が、友人に向けてのものであることは、十分わかっている
沙紀:それでも、何か・・・
沙紀:まるでダムが決壊(けっかい)するような・・・
沙紀:そんな、破滅(はめつ)に向かう音が、聞こえた気がした
:
優衣:え?
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沙紀:(独白)
沙紀:しばらく、私達は黙っていた
沙紀:そして、少しして、優衣がようやく言葉の意味を理解した
:
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優衣:や・・・やだぁ~ もう、何勘違いしてるのよw
優衣:そんなんじゃないってw
優衣:女同士で、何言ってるのよ もうw
優衣:親友として、そういう「ナイト」みたいな沙紀が、好きよって事じゃない
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沙紀:・・・・うん
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沙紀:(独白)
沙紀:私には、それしか言えなかった
沙紀:言葉が見つからなかったのだ
沙紀:笑えばいいのか、冗談を言えばいいのか、
沙紀:どういう言葉を選べば、この雰囲気が元に戻るのか
沙紀:わからなかった
沙紀:それは、例えどんな言葉であったとしても
沙紀:何かを口に出してしまえば、全てが終わってしまう、そんな気がしていたから・・・
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優衣:どうしたの?
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沙紀:(独白)
沙紀:優衣が、私の顔を見つめている
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優衣:あ・・・ごめん、
優衣:私、何か変な事いっちゃった?
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沙紀:し・・・
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沙紀:(独白)
沙紀:ダメ、堪(こら)えて!
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優衣:え?
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沙紀:(独白)
沙紀:それ以上はダメ、やめて!
沙紀:
沙紀:
沙紀:しかし、いくら自分にそう言い聞かせても
沙紀:私にはもう自分をどうする事も出来なかった・・・
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沙紀:し・・・
沙紀:親友じゃなきゃ・・・ダメかな・・
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優衣:沙紀?
優衣:それ・・・どういう事?
優衣:私・・・沙紀の事、親友だと思ってたけど・・・
優衣:駄目・・・だった?
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沙紀:そ・・・そうじゃなくて
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優衣:え?
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沙紀:親友としての「好き」とかじゃなくて、
沙紀:れ・・れ・・恋愛の対象としての「好き」じゃ・・・駄目かな?
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優衣:え!
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沙紀:私さ、優衣の事が好きなんだ、ずっと前から・・・・
沙紀:その・・・親友としてじゃなく・・・恋愛の対象として
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沙紀:(独白)
沙紀:突然の私の言葉に、優衣が驚いている
沙紀:それは分かっていた事・・・
沙紀:優衣はそんな風に、私を見ていなかったのだから
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優衣:えっと・・・
優衣:沙紀が、そんな風に私の事思っててくれたなんて、私、考えた事もなかった
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沙紀:そう・・・よね
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沙紀:(独白)
沙紀:優衣の精一杯の優しさが、伝わってくる
沙紀:親友だと思っていた同姓から、突然告白をされれば、誰だって戸惑うでしょう
沙紀:そんな事は分かってたのに・・・・
沙紀:でも、私にはもうどうする事も出来なかった
沙紀:
沙紀:
沙紀:しかし、不思議と優衣に告白した事を、後悔はしていなかった
沙紀:優衣への想いが、恋心だと気づいてから、
沙紀:いずれ、こうなるだろう事は、分かっていた事だから・・・
沙紀:それが、たまたま「今日になっただけ」なんだろうと思っていた
沙紀:
沙紀:
沙紀:少しの沈黙の後、私は優衣に別れを告げる事にした
沙紀:ごめんね優衣・・・
沙紀:もう一緒にはいられないね
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沙紀:ゴメン優衣・・・・でも私、真剣だったの
沙紀:本当は、ずっと言わずに、我慢するつもりだったんだけど・・・
沙紀:
沙紀:でも、さっき優衣が「好き」って言ってくれたとき
沙紀:私の気持ち・・・もう抑えきれなくなっちゃって・・・
沙紀:
沙紀:こんな事打ち明けても、優衣が困るだけだって、分かってるし
沙紀:こんな事言い出しちゃったら、もう今までどおり、優衣と一緒にはいられなくなる事も分かってる
沙紀:
沙紀:でも・・・
沙紀:
沙紀:でも、このままじゃ、優衣を騙してるような気がして
沙紀:ううん、優衣だけじゃなくて、自分の気持ちにも嘘ついてる
沙紀:
沙紀:これ以上、嘘をつき続けるなんて・・・もう私には出来ない
沙紀:・・・・出来ないの
:
優衣:沙紀・・・
:
沙紀:ゴメンね優衣・・・
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0:少しの沈黙
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沙紀:私・・・もう行くわ
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0:立ち去ろうとする沙紀
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優衣:まって!
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沙紀:え?
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0:思わず衝動的に沙紀を呼び止めた優衣
:
優衣:あ・・・あの・・・さ
優衣:はは・・びっくりしちゃったw
優衣:
優衣:正直言うと、今でも、なんだか良くわかってないのかもしれない
:
沙紀:優衣・・・
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優衣:でも・・・うれしかったわよ
優衣:
優衣:わ、私・・・沙紀の事が好きよ
優衣:勿論、今は親友として好きだけど・・・
優衣:
優衣:
優衣:私・・・ね
優衣:沙紀の恋人になれるかどうか、やってみる
優衣:だって・・・大切な沙紀とこのまま離れちゃうのは、イヤだもん
:
沙紀:優衣・・・
:
優衣:ね♪
:
沙紀:ありがとう、優衣
:
沙紀:(独白)
沙紀:自然と涙があふれてくる
沙紀:優衣の優しさが、大きさが、私にはとても救いになった
:
優衣:何よ
優衣:泣かなくてもいいでしょ
:
沙紀:うん
:
優衣:これじゃ、どっちがナイトだか分かんないじゃない
:
沙紀:うん
:
優衣:そっか、
優衣:これから遊びに出かけるときは、デートって事になるのね
:
沙紀:うん
:
沙紀:(独白)
沙紀:こうして私と優衣は、友人以上恋人未満の関係としてやっていく事になった
沙紀:
沙紀:
沙紀:そして数週間が過ぎていった
:
:
0:第二場 繁華街
0:
0:街を二人であるく沙紀と優衣
:
沙紀:(独白)
沙紀:私と優衣は、これまで通り、休みを利用して、定期的に会っていた
沙紀:以前と比べて、会う頻度が高くなったわけではないが
沙紀:そんな事は全く気にならなかった・・・
沙紀:
沙紀:でも、最近、優衣の元気がないように感じる
沙紀:電話でも、Lineでも、優衣の言葉数は少なくなっていた
沙紀:私はそんな優衣を、なんとか元気づけたいと思っていた
沙紀:
沙紀:そんな日曜日
:
沙紀:ねぇ、優衣、今日の映画面白かったね
:
優衣:うん・・・
:
沙紀:そういえばさ、今度の日曜で、二人が付き合い始めてから、ちょうど一ヶ月じゃない
:
優衣:そうね・・・
:
沙紀:だからさ、今度の日曜はお祝いに、ケーキバイキングなんてどう?
:
優衣:うん・・・いいわよ
:
沙紀:うん、決まり!
沙紀:で、この後どうする?
沙紀:何か食べて帰る?
沙紀:それとも、カラオケでもいく?
:
優衣:うん・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:元気のない優衣
沙紀:どことなくどころではない
沙紀:見るからに元気がない
:
沙紀:どうしたの優衣? 元気ないじゃない。
沙紀:何かあったの?
:
優衣:ううん・・・
優衣:何でもないわよ
:
沙紀:そう?
沙紀:この頃の優衣、なんだか少し元気がないみたい
:
優衣:そんな事ないわよ
優衣:今日はちょっと、疲れちゃったのかな
:
沙紀:そっか、じゃ今日はもう帰りましょう
:
優衣:うん・・・ごめんね
:
沙紀:(独白)
沙紀:そして、私達は駅へ向かった
:
0:第三場 駅のホーム
:
沙紀:(独白)
沙紀:駅のホームで、しばらく二人はベンチに座って、電車を待っていた
沙紀:優衣は、始終なんだか落ち込んだ様子だった
沙紀:なぜだろう、体の具合がわるい訳ではなさそうなのに・・・
沙紀:何か落ち込んでいるような、悩んでいるような、そんな感じだった
沙紀:
沙紀:しばらくして、電車の到着をしらせるアナウンスがながれる
沙紀:私達は電車に乗ったが、座る席はなく、二人でドアの近くに立っていた
:
沙紀:心配だから家まで送るわね
:
優衣:いいわよ・・・そんな
:
沙紀:いいって、いいって
沙紀:私がそうしたいんだから ね。
:
優衣:・・・うん
:
沙紀:(独白)しばらくして、二人は地元の駅で降りた
:
:
0:第四場 帰り道
:
沙紀:(独白)
沙紀:優衣の家までの帰り道
沙紀:私達は並んで歩いていた
沙紀:遅れがちになる優衣の歩調に合わせながら
沙紀:何とか優衣に、元気になってもらいたい
沙紀:その事で私の頭の中はいっぱいになっていた
:
沙紀:優衣、ありがとうね。
沙紀:私、優衣がいてくれて、本当によかった
:
沙紀:(独白)
沙紀:優衣を見ず、もうすっかり暮れてしまった空を、見上げながら私は言った
沙紀:優衣の返事はなかった
:
沙紀:優衣、それでね、今度・・・
:
優衣:・・・・ぇ・・・・ぇ・・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:その時、私は優衣のすすり泣く声に気が付いた
:
沙紀:優衣?
:
優衣:・・・・ぇ・・・・ぇ・・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:優衣はすすり泣くばかりで返事をしてくれない
沙紀:本当にどうしてしまったんだろう
:
沙紀:優衣? 大丈夫?
:
優衣:・・・・ぇ・・・・ぇ・・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:優衣のすすり泣きは次第に大きくなっていく
沙紀:何かこらえきれなくなったような感じに・・・
:
沙紀:優衣? 気分でも悪いの?
:
優衣:そうじゃないの
:
沙紀:優衣・・・じゃぁどうしたの
:
優衣:そうじゃないの・・・
:
沙紀:そうじゃない・・・って、
沙紀:どういう事?
沙紀:何かあったの?
:
優衣:ごめんなさい・・・・
優衣:沙紀・・・・ごめんなさい・・・・
:
沙紀:優衣・・・そんな・・・
沙紀:何言ってるの?
沙紀:「ごめんなさい」じゃ分からないわよ
:
優衣:ごめんなさい・・・
優衣:やっぱり・・・・やっぱり・・・私・・・
:
沙紀:優衣・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:その時になって、私はようやく、すべてを理解した
沙紀:優衣の気持ちを
沙紀:あれから優衣が、どんなに悩んでいたのかを
沙紀:それを知らずに、私だけが浮かれていたのかを
沙紀:そして、それが、どれだけ優衣を苦しめていたのかを・・・
:
優衣:どうしても駄目なの
優衣:どんなに一生懸命に沙紀の事・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:泣きじゃくる優衣をみて、私は、どうする事もできなかった・・・
:
優衣:恋人に・・・恋人になろうって、どんなに思っても
優衣:どうしても、思えないの
:
優衣:大好きなのに・・・・
優衣:私、沙紀の事、こんなにも、大好きなのに・・・・
:
沙紀:優衣・・・
:
沙紀:(独白)
沙紀:もうこれ以上、優衣に無理強い(むりじい)をするわけにはいかない
沙紀:そして、私達の関係も、これでもう終わりだろう・・・
沙紀:この先、たとえ、どれだけ時間をかけたとしても
沙紀:多分、もう二度と、昔の関係に戻れる日は来ないだろう
沙紀:
沙紀:そして、私はただ、その事実を、受け入れるしかないのだ
:
優衣:どうして・・・どうして、あんな事言ったのよ
優衣:どうして、親友じゃいけなかったのよ
優衣:え~ん(泣き声)
優衣:沙紀のバカ
:
沙紀:本当にごめんね、優衣
:
優衣:バカ
:
沙紀:(独白)
沙紀:優衣の一生懸命だった気持ちが、痛いほどわかる
沙紀:本当に、優衣には苦しい思いをさせてしまった
:
沙紀:ごめんね優衣
沙紀:辛い想いさせちゃって
沙紀:本当にごめんなさい
:
優衣:どうして・・・
優衣:どうして、親友じゃいけないの?
優衣:親友なら、今まで通り、ずっと楽しくやっていけるじゃない
:
沙紀:ごめんなさい
:
沙紀:(独白)
沙紀:私には、ただ、謝る事しかできなかった
:
優衣:私、沙紀と離れたくないよ
:
沙紀:優衣・・・
:
優衣:お願いよ沙紀、親友として、もう一度はじめから・・・
:
沙紀:ごめんなさい、優衣・・・
沙紀:でも、 もう、駄目なの
:
優衣:沙紀・・・
:
沙紀:親友じゃ駄目なの
沙紀:私の気持ちが、その一線を越えてしまったの
沙紀:優衣・・・あなたを愛してるから もう親友じゃいられないの
:
優衣:わからない!
優衣:私、わからないわよ!
:
沙紀:ごめんなさい
沙紀:私の気持ちばかり押し付けちゃって・・・・
:
沙紀:優衣にこんなに辛い想いをさせるんだったら
沙紀:やっぱり、あの時に分かれてしまった方がよかったのかもね
:
沙紀:私のせいで、辛い想いさせちゃって、本当にごめんなさい
:
沙紀:(独白)
沙紀:ここで涙を流すわけにはいかない・・・
沙紀:ここで涙を流してしまったら、もっと優衣を苦しめてしまう
沙紀:お願い・・・もう少し・・我慢して・・
:
優衣:沙紀
:
沙紀:もう・・・ここで分かれましょう
沙紀:それがきっと、優衣の為にはいいと思うの
:
優衣:沙紀・・・
:
沙紀:ありがとう優衣、短い間だったけど、夢が叶った気がした
沙紀:優衣と心が通じ合えたと思えて、本当に嬉しかったわよ
沙紀:私はもうそれだけで十分・・・
:
優衣:沙紀・・・
:
沙紀:デート・・・楽しかったわよ
:
優衣:沙紀・・・イヤ・・・イヤ
優衣:沙紀と離れるなんて、イヤ
優衣:もうこれっきりなんて・・・
:
沙紀:さようなら優衣
沙紀:ゴメンね・・・・ありがとう・・・
:
優衣:沙紀・・・・いかないで、お願い
:
沙紀:もう送ってあげられないけど
沙紀:気をつけて帰ってね
:
優衣:イヤ・・・・イヤ
:
:
0:ゆっくりと立ち上がり歩き出す沙紀
:
沙紀:じゃぁ・・ね
:
優衣:沙紀~
:
:
沙紀を引き止めたいが理性と感情の狭間で身体が動かない優衣
:
優衣:沙紀~
:
沙紀:(独白)
沙紀:背中から聞こえる、優衣の声を聞きながら
沙紀:私は、もう二度と振り返ってはいけないと、自分に言い聞かせていた
沙紀:そして、優衣の視界から、私が消えてしまうまで、
沙紀:「止まってはいけない」と何度も言い聞かせていた
沙紀:そう言い続けていなければ、崩れ落ちてしまいそうだったから
沙紀:
沙紀:ごめんなさい、優衣
沙紀:そして、ありがとう
沙紀:私とずっと友達でいてくれて
沙紀:一時的でも、恋人になってくれて・・・
沙紀:
沙紀:もう・・・涙が・・・こらえていた涙が・・・
:
沙紀:・・・・ぇ・・・・ぇ・・・・・
沙紀:え~ん(声を上げて泣く)・・・・・
:
:
0:泣きながら、歩き続ける沙紀
0:
0:終わり
: