台本概要

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タイトル 劇バカの壁
作者名 机の上の地球儀  (@tsukuenoueno)
ジャンル コメディ
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 壁越し勘違いコメディ

商用・非商用利用に問わず連絡不要。
告知画像・動画の作成もお好きにどうぞ。
(その際各画像・音源の著作権等にご注意・ご配慮ください)
ただし、有料チケット販売による公演の場合は、可能ならTwitterにご一報いただけますと嬉しいです。
台本の一部を朗読・練習する配信なども問題ございません。
兼ね役OK。1人での演じ分けやアドリブ・語尾変・方言変換などもご自由に。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
誠子 27 せいこ。声劇大好きな大学生。21歳。
29 しげき。誠子の隣人。社畜。27歳。※アナウンサーとアイドルの兼ね役があります。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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 :   :   :   :「劇バカの壁」  :    作:机の上の地球儀  :   :   :   :   :  誠子:せいこ。声劇大好きな大学生。二十一歳。 茂:しげき。誠子の隣人。社畜。二十七歳。(アナウンサーと、アイドルの兼ね役があります)  :   :   :   :   :   :【台本開始】  :   :   :   :  茂:(兼役・アナウンサー)ニュースの時間です。今朝未明、大本区(だいほんく)の路上で、三十歳前後と見られる女性が倒れているのが見つかり、搬送先の病院で死亡しました。 茂:現場近くの防犯カメラには、何者かが、女性の腹部を、刃物で切りつける様子が映っていたということです。その切り口が、前夜見区(まえよみく)や美宇都区(みうとく)で起きた殺人事件のものと一致した為、警視庁は越蘭町(えつらんちょう)連続殺人事件対策本部を設立。逃げた犯人の行方を探しています。 茂:また警察は、越蘭町の住人に、不要不急の外出は避け、夜道や人通りの少ない場所などを歩く際には、十分に注意をするよう呼びかけています。 誠子:ほへー、物騒な世の中ー……。  :(間)  :  誠子:ふ、ふふ、ふふふふふ! 誠子:でもでも〜?引きこもりの私に死角はないのだ!今日は両親の結婚記念日で親フラなし!我が家はマンションだけど角部屋だし、隣りの人は出張か何かでしばらく家開けてるっぽい!つまり!今日の私は最強無敵!今夜は思う存分劇狂って、劇廃するぞぉおおお!  :(間)  :  誠子:と、その前に……夕ご飯用にピザを注文して……っと。 誠子:……ふむ。到着時刻まで四十五分か……。こりゃ届くまでにぃ、かるーく一本出来ますなあぁあ?んふ、んふふふふふふ……!  :(誠子、パソコンの前に座る)  :  誠子:……よいしょ。んじゃ裏劇サーバーのチャットに書き込んで、っと……。「サクサク前読なし、サシで二〜三十分希望」と……。  :(間)  :  誠子:…………お。レス来た。「性別男。ジェイドと申します。はじめましてですが良ければ」って……え? 誠子:ぇえええええ!?ジェイドさん!?ジェイドさんって……あのはちゃめちゃに演技がお上手なジェイドさん!?はわわわわ!と、とんでもないお方が釣れてもーた……!  :(誠子の隣りの部屋で、茂が目を覚ます)  :  茂:……ん、んん……あ、やべ、寝てた。(大きなあくび) 誠子:えー何やろう?どれやろう!?あー折角だし、ずっとやりたかったあの台本を第一希望に挙げて、と……。 誠子:…………わ!「その台本で大丈夫です」?くぅー!ジェイドさん優しいー!ありがてぇ! 茂:んん?なんだ、隣りの部屋騒がしいな……。ハァ、ここ壁うっすいからなあ……。仕事の修羅場終わって、ようやく帰ってこれたとこだってのに……。 茂:(寝返りして)頼むからゆっくり寝かせてくれえ……。 誠子:では!「ウォール」開始まで〜!三、二、一、アクト! 茂:ん〜?なんか楽しそうだなおい……。一体なに盛り上がってるんだ……?(壁に耳を当てる) 誠子:「あの……突然ごめんなさい!私……私!隣りに住んでるあなたのこと……ずっとずっと好きでした!私と、お付き合いしてください!」 茂:(驚いて壁から離れて)……ぇえ!?と、隣りに住んでるって……お、俺!?嘘だろ!?え!?隣りの子ってアレだよな!?今時のすっげえお洒落な!あの!胸のでかい……!あの子が俺のことを好き……? 茂:……(思わずにやけて)え、まじかあ……。 茂:ん?でもどうして壁越しの告白……? 誠子:ミュートっと。 誠子:……うっはー!冒頭すぐに告白シーンとか恥ずかしすぎ!それにしても……あーーーーー、ジェイド様の長台詞最ッ高……!ずっとリスしてたいやばい。 誠子:……ってか、前読なしって言ったのは私だけど、読み込みたかったなーコレ。せめて少しは練習してから掛け合いたかった……! 茂:れんしゅ、う……?今、練習って聞こえたな……。 茂:え?まさか。まさかまさかまさか、告白の練習をしている、とか……? 茂:えー健気!それもこれも俺のため?俺のために?ぐっはーやばい!もうそれだけで惚れちゃいそう! 茂:(スッと息を抜く)盗み聴くのはフェアじゃないかもしれないけれど、でも気になるものは気になる……!(再度壁に耳を当てる) 誠子:「歳の差なんて関係ないです!私……ずっと貴方のこと見てました……!私のこと、タイプじゃないですか……?」 茂:いやいやいやいや!俺なんかを好きになってくれるなら、それだけでもうど真ん中どストライクホームランです!タイプです! 茂:……ってあれ?でも確か、隣りの子って大学生くらいだったよな……。歳の差気にしないっつっても、二十歳超えてないと犯罪になっちゃうよな……。 茂:ってかどんな顔してたっけ……可愛かった……よな?ブスではないよな多分……。 茂:カーーーッ!駄目だ!胸しか思い出せねえ! 誠子:ん?いま何か聞こえた……?あれ?もしかしてお隣りさん帰ってる……?……いや。そんな訳ないか〜。空耳空耳。 誠子:それにしても……お隣りさんが、このジェイドさんのキャラくらい格好良ければな〜。実際は?どよーんと暗くて、モサくてださーい陰キャ男子だもんなー。 誠子:はーリアルは厳しいっ!……あ。おっと出番だ(咳払い)。 誠子:「良かった。お隣りさんの初めての彼女になれるなんて……私嬉しいっ」 茂:えー俺だって、君みたいなスタイルいい彼女が出来るなんて嬉しいよお! 茂:……ん?ってかなんで初めての彼女ってバレてんだ?どうせこちとら年齢=彼女いない歴の童貞だよチクショウ! 茂:…………って、ん?待て?待て待て待て待て。この声……え?お隣りさんの声、俺の推し、キャスキュア・ムーンのココナちゃんに似てないか……?えっ、意識したらマジで似てるぞやばぁい!  :(間)  :  茂:……ハッ!やっべ閃いちゃった……閃いちゃったなこれ……。お隣さんとココナちゃんの声が似てるなら……壁にココナちゃんのフィギュアを立て掛けてみるとぉー? 誠子:「ほんっと優しい……。 誠子: 周りの女性、見る目ないんじゃないですか?……まあでも、そのおかげで、貴方に悪ーい虫がつかなくて済むんだから、トントンですかね。ふふっ」 茂:あぁあああココナちゃあぁあああん!俺がココナちゃん以外の女の子を見る訳ないだろぉおおおおおお!!!!! 茂:……えーこれやば。推しが喋ってる。推しが俺に語りかけてる……!さては俺天才か?こんなん閃くの天才か俺! 茂:ってかこの声でそんなん言われたらしんどい無理ぃ!(暫く悶える)  :(間)  :  茂:(冷静になって)ハーーー。最近俺ツイてなかったからなあ……。イベ限キャラ引き当てるのに、ボーナスほとんど溶かしちゃったし……遠方即売会の戦利品は、帰りの電車に置き忘れるし……ライビュの担当の出番では、突然サイリウムの電池つかなくなるし……コラボカフェのコースターガチャも、コンビニの一番くじも悲惨な結果に……ハァ。 誠子:「どんな貴方でも素敵です。私が好きって言ってるんだから、自信持ってください!」 茂:ココナちゃん……!アッ違う。 茂:お隣りさん……!  :(間)  :  誠子:……あーそうそう、次のシーンから台本の空気がガラリと変わるんだった。よし。気合入れるぞお!(可能ならほっぺを二度叩く)  :(間)  :  誠子:「その子誰……?私のこと好きになるって言ったのは嘘だったの……?私だけを見るって言ったのに……。許さない……許さない許さない許さない許さない許さない。お隣さんのバカ……!殺す!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……!」 茂:は?お、お隣りさん、殺す……?途切れ途切れで聴こえなかったけど、好きがどうとかこうとかで、お隣りさん殺す……? 茂:え?殺したくなるほど好きってやつ?好きすぎて殺しちゃうってやつ?え?お隣りさんメンヘラ?俺殺されんの?女の子と手を繋いだこともないのに?まじ!? 誠子:そうそうそう……!最初普通のラブストーリーだと思ったものが、可愛いヒロインは実はメンヘラだった!という狂気展開! 誠子:はー怯えるジェイドさんすこー!えーこんな演技もできるの?役幅えぐくない?あーもー、てぇてぇ! 茂:いやいやいや!やっと訪れた恋愛チャンスが、何でこんな特殊設定!?俺別にベタでいいよベタで!普通が一番だよ!? 茂:(ココナのフィギュアを持って)「茂くん、もっと私のこと見て?」 茂:「俺は、ココナちゃんのことしか見てないよ」 茂:「ほんと?本当に私のことだけ?余所見したら……嫌いになっちゃうからね?」 茂:あぁああああ余所見なんてするかよココナちゃん大好きだぁああああ! 誠子:うおぉっ。びっ、くりした……え?今このポスター喋った?アイドルユニット「ボイ☆ドラ」のネフライトくん、「大好きだーーー!」って叫んだ……!? 誠子:……いや、んな訳ないか。 誠子:ん?え?え?やっぱりお隣りさん帰ってきてる?来ちゃってる? 誠子:って……ちょっと待って……?お隣りさんの声、ネフくんに似てない……?えっやば!お隣りさんの声まさかのイケボ!?えー……声は盲点だった……。ずっとあのもっさい顔しか見てなかったからな……。 誠子:(スッと息を抜く)いや、これはあの、盗み聞きとかじゃないからね、うん。ちょっと確認するだけだから……(壁に耳を当てる)ッ! 茂:もし、もしお隣りさんと付き合ったら〜……ココナちゃんの声で、いつでも好きって言ってもらえるんだよなあ……でへ、でへへへへ。 茂:……ハッ。いやでも、さっき「お隣りさん殺す殺す殺す殺す」って連呼してたよな!?聴き間違いじゃないよな!? 茂:……あーまあでも、ココナちゃんの声なら殺されても〜。でへ、でへへへへへ…………。 茂:……って駄目だよな!?駄目だな殺されるのは!?死んだら元も子もないもんな!? 誠子:ふぁっ!えっ!?「お隣りさん殺す殺す殺す」……!?お隣りさんって……えっうち? 誠子:お隣りさんの左隣りはうち。右隣りは……エレベーター……。そして今うちの両親は外出中、そもそもこの家にいるうら若き乙女は私だけ……ということは?つまるところ? 誠子:今、お隣りさんが言うお隣りさんって…………私!?ぇええええやばぁい!やばいやばいやばいやばい……! 茂:(途中から被せて)やばいやばいやばいやばい!なんかめっちゃ昂ってる!え、警察?警察って何番?一一七?あっやばい手が震えるタップできない……! 茂:ハッ。そう言えば最近テレビで……、 誠子:さっきニュースで……、 茂:連続殺人犯がどう、とか……、 誠子:もしかして?いやいや、確率は低いと思うけど、もしかして……? 茂:お隣りさんが連続殺人事件の犯人、とか……? 誠子:うわぁああああああ!ど、どどどどうしようどうしようどうしよう……アッ、これそもそも静かにして、隠れたりとかした方が良いのかな?そうした方がいいのかな?……って、どぅわ!リモコン踏んじゃった!!! 茂:(兼役・ネフライト)「殺す殺す殺す殺す殺す……!お前がいけないんだ!お前が俺をこんな目に……!どうして!どうしてだよ!どうして俺にあんなことさせたんだよ!なんで俺に、人殺しなんてさせたんだよ!なあ!」 誠子:ギャーネフライトくんんんんん! 誠子:って……ん?これって……去年やってたサスペンスドラマの再放送……?「殺す殺す殺す」って……あー!お隣りさん、もしかしてさっき、これ見てたんだ!? 誠子:はー……なーんだビックリした! 誠子:……それにしても……ふふっ。ネフくんやっぱり格好いいっ!圧倒的顔面偏差値! 茂:えーどうするどうするどうするどうする?あーもうどうしたらいい?ココナちゃあん! 茂:……っておぉお。改めて見ると、やっぱりこのフィギュア超精巧だなおい……スカートの下覗いちゃお、ペローン! 誠子:なるほどなー。こうやって、お隣りの声が聴こえ過ぎちゃうと、変な誤解が生まれたりしちゃう訳だなーうん。気をつけよ。 誠子:……って、うわ!やっぱり上手い人とやると時間経つの早いなー。あっという間にラストシーンだ……! 誠子:(咳払い)よ、よし。最後の台詞決めるぞお……!  :(間)  :  茂:あーどうする?とりあえずお隣りさんから逃げる?逃げちゃう?逃げた方がいい?いや、でも逃げるってどこへ……!? 誠子:「逃げちゃ駄目だよ?今行くから……待っててね、ダーリン?」 茂:…………え?  :(ピンポーンとインターフォンが鳴る)  :  茂:ヒッ!……え?このタイミングでインターフォンが鳴るって……。  :(再度ピンポーンと鳴る)  :  茂:ヒィッ!ま、また!?……ク、クソ……これってお隣りさん、だよな!?そうだよな!? 茂:……え、俺もしかして殺される……!?  :(間)  :  茂:……どうせ死ぬなら…………!せめて少しは良い思いをしてから死にたぁい!端的に言うとおっぱい揉みたぁい! 茂:……ハッ。お付き合いしたいって言えば、もしかしてワンチャン、死ぬ前にあーんなむふふ!なことや、そーんなんふふ!なことが出来たりして……? 茂:……ええい、ままよ!  :(茂、玄関へ走りドアを開ける)  :  誠子:あの〜……済みません家間違えてます、それ多分うちのピザです。 茂:付き合うから殺さないでください!…………って……へ? 誠子:え? 茂:へ?  :(間)  :  茂:ぇえええええええええ!?  :   :   :   :【台本終了】  :   :   :   :   : 

 :   :   :   :「劇バカの壁」  :    作:机の上の地球儀  :   :   :   :   :  誠子:せいこ。声劇大好きな大学生。二十一歳。 茂:しげき。誠子の隣人。社畜。二十七歳。(アナウンサーと、アイドルの兼ね役があります)  :   :   :   :   :   :【台本開始】  :   :   :   :  茂:(兼役・アナウンサー)ニュースの時間です。今朝未明、大本区(だいほんく)の路上で、三十歳前後と見られる女性が倒れているのが見つかり、搬送先の病院で死亡しました。 茂:現場近くの防犯カメラには、何者かが、女性の腹部を、刃物で切りつける様子が映っていたということです。その切り口が、前夜見区(まえよみく)や美宇都区(みうとく)で起きた殺人事件のものと一致した為、警視庁は越蘭町(えつらんちょう)連続殺人事件対策本部を設立。逃げた犯人の行方を探しています。 茂:また警察は、越蘭町の住人に、不要不急の外出は避け、夜道や人通りの少ない場所などを歩く際には、十分に注意をするよう呼びかけています。 誠子:ほへー、物騒な世の中ー……。  :(間)  :  誠子:ふ、ふふ、ふふふふふ! 誠子:でもでも〜?引きこもりの私に死角はないのだ!今日は両親の結婚記念日で親フラなし!我が家はマンションだけど角部屋だし、隣りの人は出張か何かでしばらく家開けてるっぽい!つまり!今日の私は最強無敵!今夜は思う存分劇狂って、劇廃するぞぉおおお!  :(間)  :  誠子:と、その前に……夕ご飯用にピザを注文して……っと。 誠子:……ふむ。到着時刻まで四十五分か……。こりゃ届くまでにぃ、かるーく一本出来ますなあぁあ?んふ、んふふふふふふ……!  :(誠子、パソコンの前に座る)  :  誠子:……よいしょ。んじゃ裏劇サーバーのチャットに書き込んで、っと……。「サクサク前読なし、サシで二〜三十分希望」と……。  :(間)  :  誠子:…………お。レス来た。「性別男。ジェイドと申します。はじめましてですが良ければ」って……え? 誠子:ぇえええええ!?ジェイドさん!?ジェイドさんって……あのはちゃめちゃに演技がお上手なジェイドさん!?はわわわわ!と、とんでもないお方が釣れてもーた……!  :(誠子の隣りの部屋で、茂が目を覚ます)  :  茂:……ん、んん……あ、やべ、寝てた。(大きなあくび) 誠子:えー何やろう?どれやろう!?あー折角だし、ずっとやりたかったあの台本を第一希望に挙げて、と……。 誠子:…………わ!「その台本で大丈夫です」?くぅー!ジェイドさん優しいー!ありがてぇ! 茂:んん?なんだ、隣りの部屋騒がしいな……。ハァ、ここ壁うっすいからなあ……。仕事の修羅場終わって、ようやく帰ってこれたとこだってのに……。 茂:(寝返りして)頼むからゆっくり寝かせてくれえ……。 誠子:では!「ウォール」開始まで〜!三、二、一、アクト! 茂:ん〜?なんか楽しそうだなおい……。一体なに盛り上がってるんだ……?(壁に耳を当てる) 誠子:「あの……突然ごめんなさい!私……私!隣りに住んでるあなたのこと……ずっとずっと好きでした!私と、お付き合いしてください!」 茂:(驚いて壁から離れて)……ぇえ!?と、隣りに住んでるって……お、俺!?嘘だろ!?え!?隣りの子ってアレだよな!?今時のすっげえお洒落な!あの!胸のでかい……!あの子が俺のことを好き……? 茂:……(思わずにやけて)え、まじかあ……。 茂:ん?でもどうして壁越しの告白……? 誠子:ミュートっと。 誠子:……うっはー!冒頭すぐに告白シーンとか恥ずかしすぎ!それにしても……あーーーーー、ジェイド様の長台詞最ッ高……!ずっとリスしてたいやばい。 誠子:……ってか、前読なしって言ったのは私だけど、読み込みたかったなーコレ。せめて少しは練習してから掛け合いたかった……! 茂:れんしゅ、う……?今、練習って聞こえたな……。 茂:え?まさか。まさかまさかまさか、告白の練習をしている、とか……? 茂:えー健気!それもこれも俺のため?俺のために?ぐっはーやばい!もうそれだけで惚れちゃいそう! 茂:(スッと息を抜く)盗み聴くのはフェアじゃないかもしれないけれど、でも気になるものは気になる……!(再度壁に耳を当てる) 誠子:「歳の差なんて関係ないです!私……ずっと貴方のこと見てました……!私のこと、タイプじゃないですか……?」 茂:いやいやいやいや!俺なんかを好きになってくれるなら、それだけでもうど真ん中どストライクホームランです!タイプです! 茂:……ってあれ?でも確か、隣りの子って大学生くらいだったよな……。歳の差気にしないっつっても、二十歳超えてないと犯罪になっちゃうよな……。 茂:ってかどんな顔してたっけ……可愛かった……よな?ブスではないよな多分……。 茂:カーーーッ!駄目だ!胸しか思い出せねえ! 誠子:ん?いま何か聞こえた……?あれ?もしかしてお隣りさん帰ってる……?……いや。そんな訳ないか〜。空耳空耳。 誠子:それにしても……お隣りさんが、このジェイドさんのキャラくらい格好良ければな〜。実際は?どよーんと暗くて、モサくてださーい陰キャ男子だもんなー。 誠子:はーリアルは厳しいっ!……あ。おっと出番だ(咳払い)。 誠子:「良かった。お隣りさんの初めての彼女になれるなんて……私嬉しいっ」 茂:えー俺だって、君みたいなスタイルいい彼女が出来るなんて嬉しいよお! 茂:……ん?ってかなんで初めての彼女ってバレてんだ?どうせこちとら年齢=彼女いない歴の童貞だよチクショウ! 茂:…………って、ん?待て?待て待て待て待て。この声……え?お隣りさんの声、俺の推し、キャスキュア・ムーンのココナちゃんに似てないか……?えっ、意識したらマジで似てるぞやばぁい!  :(間)  :  茂:……ハッ!やっべ閃いちゃった……閃いちゃったなこれ……。お隣さんとココナちゃんの声が似てるなら……壁にココナちゃんのフィギュアを立て掛けてみるとぉー? 誠子:「ほんっと優しい……。 誠子: 周りの女性、見る目ないんじゃないですか?……まあでも、そのおかげで、貴方に悪ーい虫がつかなくて済むんだから、トントンですかね。ふふっ」 茂:あぁあああココナちゃあぁあああん!俺がココナちゃん以外の女の子を見る訳ないだろぉおおおおおお!!!!! 茂:……えーこれやば。推しが喋ってる。推しが俺に語りかけてる……!さては俺天才か?こんなん閃くの天才か俺! 茂:ってかこの声でそんなん言われたらしんどい無理ぃ!(暫く悶える)  :(間)  :  茂:(冷静になって)ハーーー。最近俺ツイてなかったからなあ……。イベ限キャラ引き当てるのに、ボーナスほとんど溶かしちゃったし……遠方即売会の戦利品は、帰りの電車に置き忘れるし……ライビュの担当の出番では、突然サイリウムの電池つかなくなるし……コラボカフェのコースターガチャも、コンビニの一番くじも悲惨な結果に……ハァ。 誠子:「どんな貴方でも素敵です。私が好きって言ってるんだから、自信持ってください!」 茂:ココナちゃん……!アッ違う。 茂:お隣りさん……!  :(間)  :  誠子:……あーそうそう、次のシーンから台本の空気がガラリと変わるんだった。よし。気合入れるぞお!(可能ならほっぺを二度叩く)  :(間)  :  誠子:「その子誰……?私のこと好きになるって言ったのは嘘だったの……?私だけを見るって言ったのに……。許さない……許さない許さない許さない許さない許さない。お隣さんのバカ……!殺す!殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……!」 茂:は?お、お隣りさん、殺す……?途切れ途切れで聴こえなかったけど、好きがどうとかこうとかで、お隣りさん殺す……? 茂:え?殺したくなるほど好きってやつ?好きすぎて殺しちゃうってやつ?え?お隣りさんメンヘラ?俺殺されんの?女の子と手を繋いだこともないのに?まじ!? 誠子:そうそうそう……!最初普通のラブストーリーだと思ったものが、可愛いヒロインは実はメンヘラだった!という狂気展開! 誠子:はー怯えるジェイドさんすこー!えーこんな演技もできるの?役幅えぐくない?あーもー、てぇてぇ! 茂:いやいやいや!やっと訪れた恋愛チャンスが、何でこんな特殊設定!?俺別にベタでいいよベタで!普通が一番だよ!? 茂:(ココナのフィギュアを持って)「茂くん、もっと私のこと見て?」 茂:「俺は、ココナちゃんのことしか見てないよ」 茂:「ほんと?本当に私のことだけ?余所見したら……嫌いになっちゃうからね?」 茂:あぁああああ余所見なんてするかよココナちゃん大好きだぁああああ! 誠子:うおぉっ。びっ、くりした……え?今このポスター喋った?アイドルユニット「ボイ☆ドラ」のネフライトくん、「大好きだーーー!」って叫んだ……!? 誠子:……いや、んな訳ないか。 誠子:ん?え?え?やっぱりお隣りさん帰ってきてる?来ちゃってる? 誠子:って……ちょっと待って……?お隣りさんの声、ネフくんに似てない……?えっやば!お隣りさんの声まさかのイケボ!?えー……声は盲点だった……。ずっとあのもっさい顔しか見てなかったからな……。 誠子:(スッと息を抜く)いや、これはあの、盗み聞きとかじゃないからね、うん。ちょっと確認するだけだから……(壁に耳を当てる)ッ! 茂:もし、もしお隣りさんと付き合ったら〜……ココナちゃんの声で、いつでも好きって言ってもらえるんだよなあ……でへ、でへへへへ。 茂:……ハッ。いやでも、さっき「お隣りさん殺す殺す殺す殺す」って連呼してたよな!?聴き間違いじゃないよな!? 茂:……あーまあでも、ココナちゃんの声なら殺されても〜。でへ、でへへへへへ…………。 茂:……って駄目だよな!?駄目だな殺されるのは!?死んだら元も子もないもんな!? 誠子:ふぁっ!えっ!?「お隣りさん殺す殺す殺す」……!?お隣りさんって……えっうち? 誠子:お隣りさんの左隣りはうち。右隣りは……エレベーター……。そして今うちの両親は外出中、そもそもこの家にいるうら若き乙女は私だけ……ということは?つまるところ? 誠子:今、お隣りさんが言うお隣りさんって…………私!?ぇええええやばぁい!やばいやばいやばいやばい……! 茂:(途中から被せて)やばいやばいやばいやばい!なんかめっちゃ昂ってる!え、警察?警察って何番?一一七?あっやばい手が震えるタップできない……! 茂:ハッ。そう言えば最近テレビで……、 誠子:さっきニュースで……、 茂:連続殺人犯がどう、とか……、 誠子:もしかして?いやいや、確率は低いと思うけど、もしかして……? 茂:お隣りさんが連続殺人事件の犯人、とか……? 誠子:うわぁああああああ!ど、どどどどうしようどうしようどうしよう……アッ、これそもそも静かにして、隠れたりとかした方が良いのかな?そうした方がいいのかな?……って、どぅわ!リモコン踏んじゃった!!! 茂:(兼役・ネフライト)「殺す殺す殺す殺す殺す……!お前がいけないんだ!お前が俺をこんな目に……!どうして!どうしてだよ!どうして俺にあんなことさせたんだよ!なんで俺に、人殺しなんてさせたんだよ!なあ!」 誠子:ギャーネフライトくんんんんん! 誠子:って……ん?これって……去年やってたサスペンスドラマの再放送……?「殺す殺す殺す」って……あー!お隣りさん、もしかしてさっき、これ見てたんだ!? 誠子:はー……なーんだビックリした! 誠子:……それにしても……ふふっ。ネフくんやっぱり格好いいっ!圧倒的顔面偏差値! 茂:えーどうするどうするどうするどうする?あーもうどうしたらいい?ココナちゃあん! 茂:……っておぉお。改めて見ると、やっぱりこのフィギュア超精巧だなおい……スカートの下覗いちゃお、ペローン! 誠子:なるほどなー。こうやって、お隣りの声が聴こえ過ぎちゃうと、変な誤解が生まれたりしちゃう訳だなーうん。気をつけよ。 誠子:……って、うわ!やっぱり上手い人とやると時間経つの早いなー。あっという間にラストシーンだ……! 誠子:(咳払い)よ、よし。最後の台詞決めるぞお……!  :(間)  :  茂:あーどうする?とりあえずお隣りさんから逃げる?逃げちゃう?逃げた方がいい?いや、でも逃げるってどこへ……!? 誠子:「逃げちゃ駄目だよ?今行くから……待っててね、ダーリン?」 茂:…………え?  :(ピンポーンとインターフォンが鳴る)  :  茂:ヒッ!……え?このタイミングでインターフォンが鳴るって……。  :(再度ピンポーンと鳴る)  :  茂:ヒィッ!ま、また!?……ク、クソ……これってお隣りさん、だよな!?そうだよな!? 茂:……え、俺もしかして殺される……!?  :(間)  :  茂:……どうせ死ぬなら…………!せめて少しは良い思いをしてから死にたぁい!端的に言うとおっぱい揉みたぁい! 茂:……ハッ。お付き合いしたいって言えば、もしかしてワンチャン、死ぬ前にあーんなむふふ!なことや、そーんなんふふ!なことが出来たりして……? 茂:……ええい、ままよ!  :(茂、玄関へ走りドアを開ける)  :  誠子:あの〜……済みません家間違えてます、それ多分うちのピザです。 茂:付き合うから殺さないでください!…………って……へ? 誠子:え? 茂:へ?  :(間)  :  茂:ぇえええええええええ!?  :   :   :   :【台本終了】  :   :   :   :   :