台本概要

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タイトル マンホール・ジンクス
作者名 机の上の地球儀  (@tsukuenoueno)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 学園ラブコメ/ミュージカル・叫び有

商用・非商用利用に問わず連絡不要。
告知画像・動画の作成もお好きにどうぞ。
(その際各画像・音源の著作権等にご注意・ご配慮ください)
ただし、有料チケット販売による公演の場合は、可能ならTwitterにご一報いただけますと嬉しいです。
台本の一部を朗読・練習する配信なども問題ございません。
兼ね役OK。1人での演じ分けやアドリブ・語尾変・方言変換などもご自由に。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
124 女の幼馴染み。高校生。
125 男の幼馴染み。高校生。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
男:(M)「マンホールを踏むと失恋する」 男:   俺の通う学校で、男子生徒を中心にまことしやかに語られるジンクス。マンホールイコール穴、穴イコール落ちる、落ちるイコール失敗、失敗する、恋、恋に失敗するイコール失恋……まあ、成り立ちはそんな所だろう。こういう噂の始まりは、いつだって思った以上に適当なものだから。 男:   …………え?お前はそれを信じているのか、って?……いやいやいや、そんな訳ないだろ?うんうんうん、いやー、こんなジンクス信じる奴いる?いないよなーないないない。 男:  男:   (息をスーッと吸って)……でもさ?たぁまぁにぃは?こういうのを?信じちゃうのも?面白いかなーなんてさ?さぁ!はは、はははははは……。 男:   ……え?ジンクスってのは、一般的に女が好きなものなんじゃないのか?そんなものを信じるなんて、女々しいのではないか?…………ふ、ふふ、ふはははははは!ほうほうほう、確かに一理ある。だが!だがしかし!漢にも!まじないの類(たぐい)にすがりたい時がぁ……ある!花の高校生活!それを彩(いろど)るのに絶対的圧倒的に必要不可欠なもの!それは……! 男:   彼女……! 男:   恋人無くして青春(せいしゅん)を満喫できようか?答えは否!恋人無くして……アオハルを語ることなど出来んのだ!よって!その必須アイテム「彼女」を手に入れる為ならば!……アッいやこれは別に女性を道具扱いしているとかではなくて単純な言葉の綾で……あーーーとにかく!彼女をゲットし!めくるめく桃色の高校生活を送る為には、だ! 男:   (半泣きで)ワラにもすがりたいし猫の手も借りたい!以上! 男:  男:   ……「マンホールを踏むと失恋する」……言い換えれば……過大解釈すれば!……「マンホールを踏まなければ失恋しない」とも言えなくもなくもなくもない。ない!マンホール踏まなければ!失恋は!しない!(段々自信を失いつつ)……きっと、多分、ほとんどの確率で……。  :  女:……○○(男の名前・もしくはあだ名)? 女:○○ってば! 男:お、おお、ごめん。何の話だった? 女:もー。ちゃんと聴いててよね。学祭の買い出し!足りないものがあったから、今日の放課後私達が行くって決まったでしょ?忘れて勝手に帰らないでよ? 男:お、おう。 女:頼むぞ、荷物持ち! 男:お、おう……。 男: 男:(M)そう、学祭。正式名称は学園祭……!告白して上手くいくイベントランキング堂々の第一位カッコ俺調べ……!それがもう、あと一週間後に迫っているのだ。つまりぃ!一世一代の大勝負、告白の大大大チャンス!俺は学祭で!幼馴染みであるこいつ……□□(女の名前・もしくはあだ名)に告白する……! 男:   ゆえにあと一週間……あと一週間は絶対に、絶対にマンホールを踏む訳にはいかないのだ!  :  女:歯っ切れ悪いなあ。変なの。学祭なんて、○○でもはちゃめちゃにテンション上がるイベントじゃん?なのにさっきから一人で百面相してるし、何度呼んでもまるで聞こえてないみたいだったし……。もしかして準備忙しくて、頭おかしくなっちゃった?……って、頭おかしいのは前からか。 男:お前な。口悪いぞ。 女:学校では清楚可憐で通ってるもん。 男:(小声で)……だから変な男どもが湧くんだろうが。 女:え? 男:だから可哀想な男子生徒諸君が騙されるんだよなあ、って! 女:何よ、それ。 男:じゃあモテる女は大変だなって話? 女:んんんんん?なんでそんな話になった? 男:人気投票でシンデレラに選ばれるのは、陽キャ女子代表の証拠だろ。陽キャ女子代表ってことは、つまり、あれだ。モッテモテってことだろ?眼鏡で陰キャ代表の俺と違って。 女:(笑いながら)なにその理屈。……その理屈でいくとつまり、モテモテで困っちゃう陽キャ男子代表は、王子様に選ばれた……、 男:(憎々しく)上田……。 女:と、なる訳だけれど? 男:まあ実際、あいつ、顔だけはめちゃくちゃに良いし……。 女:先輩とか後輩には人気だよね。同級生からはちょっと……あの。 女:……一目置かれてるけど。 男:引かれてるってハッキリ言えよ。 女:いや、んー、なんだろうな?上田くん格好いいし、優しいんだけどね?けどちょっと……パンスト?だしそれにそれに、えっと……成人病?だし……あ!あとあれ!ボイコネ! 男:……あーうん。ちょっと待ってな。……ナルシストだろ。厨二病だろ。……あとなんだ。ボイコネ……?あ、もしかしてマザコンか! 女:それだ! 男:どういう間違いだよ……。 女:すっごい!よく分かったね! 男:付き合い長いからな、お前のポンコツな言い間違いには慣れて……いや、それにしてもよく分かったな、俺……。 男:(ため息をついて)……で? 女:で……って? 男:ナルシスト、厨二病、マザコン。上田がどれでちょっと、って?  :(間) 女:……………ぜんぶ。 男:……つまり総括して痛いってことな……。 女:そうねえ……残念だよねえ……。 男:でも、観賞用には良いって、女子達みんな言ってるだろ。お前意外と面食いだから、イケメンの上田が相手に決まって喜んでると思ってた。 女:んー、確かに上田くん、顔は格好いいけど……、 女:……(はにかみながら)私は○○が王子様だったら良かったなー、なんて。 男:……っ!(焦って咳き込む) 女:な、何よ、その反応。……あーもう、大丈夫?水持ってるよ、飲む?  :  男:(M)……!いける……!この反応はいける!いけるぞ、俺!少なくともあの上田よりは遥かにリードしていると言って過言ではない! 男:   ……そう。ナルシストで厨二病でマザコンの上田よりは、だが。  :  女:ほら、水。 男:(まだ咳き込みつつ)さ、サンキュ……。(はたと気付いて)あれ。こ、これってもしかして、間接キス……? 女:……ば、ばばば馬鹿じゃないの!新品!まだ私は飲んでない!蓋だってまだ開いてないでしょうが! 男:あ、ほんとだ。なーんだ……。 女:……なーんだ、って……へんたい。 男:まあ、年頃の男の子なもんで……。 女:誰とでも間接キスしたい年頃ってなによ。 男:誰とでもしたくないけど。したい相手とだけだけど。 女:え? 男:あぁあああいや!なんでもない! 女:……そ、そう。 男:(水を飲んで一息つく)で、話を戻すけど……なんで王子様が俺だったら良いわけ? 女:……え?だ、だって幼馴染みだもん。気心しれてるし、掛け合うのも楽じゃん。 男:あー……そういう……期待して損した。 女:劇なんて、学祭で一年に一回やるかやらないかじゃない?しかもラブストーリーなんてただでさえ緊張するし……。でも相手が○○なら、自然に出来るかな、って。 男:幼馴染みだから? 女:……幼馴染み、だから。 男:王子様ねえ……。まず自分とは違う誰かを演じる、ってのが難しいよな。 女:その辺は難しく考えずに楽しんじゃえばいいんだよ!自分以外の誰かになれるって考えたら、面白そうって思えない? 男:た、確かに。 女:ふふ。……あ!ねえ、ちょっとここ読んでみてよ。 男:えっ?ここで? 女:ちょっとだけ!練習付き合って。ねっ? 男:お、おう……。  :  0:男、女から台本を受け取る。以下、劇中劇。 女:「おお王子様、あなたはどうして王子様なの?」 男:シンデレラってそんなんだっけ……。えぇっと……、 男:「私は私、他の何者でもありません。美しい姫よ!どうか私と踊ってください!」 女:「えぇ良いわ、踊りましょう、王子様」 男:「今宵、貴女に忘れられない夜をプレゼント致しましょう。ミュージック、スタート!」 男:…………ん?  : 0:突如、二人にスポットライトが当たる。  :(以下、時折ある歌うシーンでは、歌っても読んでもふざけても何しても構いません) 女:「ダンシング・キングダム!」 男:え、なにこれなにこの音楽。怖い怖い怖い。  : 女:「惹かれ合う二人 繋ぎ合う手と手」 男:何これ?何これ?歌えば良いの?読めば良いの?えっとえっと……、 男:「ジアゼパム使う 手ブレなくなる」 女:「光さす二人 掴み取る未来」 男:「睨み合う二人 頭蓋骨粉砕」 女:「嗚呼、貴方の瞳に射抜かれた」 男:「嗚呼、僕の心を撃ち抜いた」 女:「ねえどうか、私の全てを連れ去……、  : 男:(女のセリフに被せて)待って、お願いちょっと待って……? 女:えぇ?なに?ここからが盛り上がるのにぃ……。 男:いや、ちょっと整理させて……。え、イキナリ何。なにこれ。 女:え?いや、普通のシンデレラじゃ面白くないし、今回の劇、ミュージカル調にしようって話になって。 男:みゅーじかる。これが。……い、いや、とりあえずミュージカルが何かとかそういう話は置いておいて……うん。続けて。 女:だから、曲を作ろうって話になって。 男:そうだよな。曲は必要だよな。ミュージカルだもんな。 女:うん!それで、それぞれちゃんと韻踏むように作詞したんだよ!ほら。惹かれ合う、ジアゼパム。光さす、睨み合う。掴み取る、頭蓋骨。……ね!韻踏んでる! 男:いや!韻は踏めてるかもしれないけど……、 女:こちらが手と手と言えばあちらは手ブレ、あちらが頭蓋骨粉砕と言えばこちらは射抜かれ、そしてあちらが撃ち抜かれ……いやー、関連付けも流石だよねえ、うんうん。 男:関連付け云々の前に内容が物騒すぎるだろ!? 女:まあ、もう少し修正もするから! 男:待て、さっき「それぞれ作詞した」って言ってたけどまさか……! 女:うん、シンデレラ側は私の作詞だよ。 男:ということは王子側は……、 女:上田くん! 男:(頭を抱える) 女:ねね、内容は微調整もあるだろうからとりあえず置いといて、どう?ちょっとは面白かったんじゃない? 男:微調整か……微かにしか調整しないのか……。……いや、うん。結構楽しかった。不覚にも。 女:でっしょー?こういうの、意外と好きだろうなってずっと思ってたんだよねー。ほら、○○って戦隊もののヒーローごっこだけじゃなくて、私達と魔法少女ごっこするのにも嫌な顔せず付き合ってくれてたじゃん? 男:まあ、確かに……。お前、俺のことよく分かってんのな。 女:あったりまえじゃん。幼馴染みだもん!(満面の笑み) 男:う、ぐ……!(胸のあたりをおさえて動悸を抑えようとする)  : 男:(M)もん、もんって……か、かわいいかよ……!いや分かってる。幼馴染みが恋の相手だなんてそんなベタ。ベタ中のベタ。ベタオブベタ。最強のベタどうなんだってんだろ?手近で済ませるなって言いたいんだろ?……いやいやいやでも待ってください考えてもみてください!相手は幼馴染み!小さい頃から勝手知ってる仲で、俺のことを誰よりも理解してくれる。それに、いくら学校で雑な口調やポンコツな性分を隠していても、それでも変な男が次から次へと湧いてきてしまう……ということはだ。つまり! 男:   この女、とてつもなく……とてつもなく……!  :  女:な、なによ、ジッと見つめて……。  : 男:(M)顔が、良い。  :  女:え?なに?もしかして体調悪い?どこかでちょっと休む?  : 男:(M)そして性格も、良い。 男:   そんなん……!  :  男:(小声で)好きになっちゃうだろぉ……。 女:え?なに?なんて言った? 男:(取り繕うように)え?いや!全然!全く!なーんにも! 女:変なの。 女:(笑って)ほら、行くよ王子様! 男:トゥンク……! 女:え、なに?なに今の音……? 男:あぁあああああ!  : 0:突如、男にスポットライトが当たる。  :(曲名は読んでも読まなくても良いです) 男:(M)「君は僕の宝石〜それは恋のエーデルシュタイン〜」 男: 男:   おっととっとっと危ねえぜ 男:   マジで危機一髪だったぜ 男:   とっととっとっと告ろうぜ 男:   体勢ジーザスだったぜ 男:  男:   危うく俺もフォーリンマンホール 男:   そしたら俺はブロークンハート 男:  男:   二人の関係は未だ曖昧 男:   そんな関係に今だバイバイ 男:   俺の反撃まさか大敗? 男:   恋の判定今は何点? 男:  男:   この恋はまるで単純な複雑骨折 男:   頭の頭痛が痛くてたまらねえ 男:   一瞬で落ちたのにもう戻れないウォウウォー 男:   :  女:び、ビックリしたあ……!なによイキナリ叫んだりして。……ん?てか何か寒気が……なんなの、この、まるで学生の初デートで、タキシードバッチリキメて、百本の赤いバラを持って迎えに来られたかような薄ら寒さは……! 男:(小声で)ハッ、ついミュージカル気分が抜けずに、モノローグで歌っちまった……! 女:あ。おさまった。今日はなんなのほんと……あ!やっば!ねえほら遅刻しちゃう。急ご! 男:え?あぁもうそんな時間、って……。 女:何? 男:あ、いや……この道はちょっと……。 女:道?この道が何?通学路じゃない。 男:きょ、今日はあっちの道通っていかないか。たまにはゆっくり行くのも良いだろ。色々話したいこともあるし……! 女:子供の頃からずっと一緒にいて、今更わざわざ、回り道してまで話すこともないでしょ。ってかそもそも時間がないってば。ほら、遅刻しちゃう。 男:た、頼む!な? 女:いやいや。なんでそんな必死に……、 男:神様仏様□□様!どうか、どうかこの道は、この道だけは……! 女:ええいうるさい!ほら!行くよ!  : 男:(M)この道は!御都合県主義市立日和見高校前万歳通り(ごつごうけんしゅぎしりつひよりみこうこうまえばんざいどおり)! 男:   別名「トラップ・ゾーン」……! 男:   何故こんな異名がついたか、というと……いや、これは言わずもがな。言わなくても見れば分かる。見よ、この……! 男:   マンホールの、数ッ! 男:   何故だかなんでか、この通りには異様な数のマンホールが設置されている。まれにある、市のゆるキャラが描かれた色付きのマンホールなどは、某遊園地の隠れネズミのようで、殊更腹が立つ。 男: 男:   (咳払いをして)とにかく!決戦を一週間後に控えた恋する乙男(おとめん)としては、このトラップ・ゾーンは、否が応にも、どーうしても避けたい道なのだ……! 男:   ……そうこうしている間に、同じクラスの上田が、さりげなくトラップ・ゾーンを避け、坂道の方に抜けていくのが見えた。本来近道である道でなく、わざわざ遠回りの、しかも坂道へ、だ。ぐぬぬ、上田、お前もか。お前も恋する乙男なのか。流石は初デートでタキシードバッチリキメて、百本の赤いバラを持って迎えに行きドン引きされた伝説の勇者……目がガチだ。  :  :◇  :  女:(M)「マンホールの上に同時に立つとその二人は結ばれる」 女:   私の通う学校で、女子生徒を中心にまことしやかに語られるジンクス。マンホールイコール穴、穴イコール落ちる、落ちる、恋、恋、落ちる……恋に落ちる……!女の子はえてしてこういったおまじないの類(たぐい)が大好きで、こんな風に無理矢理無理くり意味を後付けしては、どうしようもないくだらないジンクスを量産し続けている。……え?お前はこれを信じているのか、って?……いやいやいや、そんな訳ないでしょ、こんな……こんな……く、くだらない眉唾物のジンクス……(段々と小声になっていく)。 女:  女:   (息をスーッと吸って)……ま、まぁでも?確かめもせずに嘘だって決めつけるのも〜良くない、よね?だってほら、映画の批評とかと同じでさ、観る前からダメだ駄作だって言ったりするのは……ねえ?だから!一度は試してあげてもいいかな〜なんて……はは、はははははは……。 女:   ……え?ジンクスってのは、一般的に自信のない人間が頼るものなんじゃないのか?そんなものを頼るなんて、邪道なのではないか?…………ふ、ふふ、ふはははははは!ほうほうほう、確かに一理ある。けど!だけど!私にも!まじないの類(たぐい)にすがりたい時がぁ……ある!花の高校生活!それを彩(いろど)るのに絶対的圧倒的に必要不可欠なもの!それは……! 女:   彼氏……! 女:   恋人無くして青春(せいしゅん)を満喫できようか?答えは否!恋人無くして……アオハルを語ることなど出来んのだ!よって!その必須アイテム「彼氏」を手に入れる為ならば!……アッいやこれは別に男性をアクセサリー扱いしているとかではなくて単純な言葉の綾で……あーーーとにかく!彼氏をゲットし!めくるめく桃色の高校生活を送る為には、だ! 女:   (半泣きで)ブラ紐にもすがりたいし孫の手も借りたい!以上!……ん?あれ?何か違うような……まいっか! 女:  女:   …… 「マンホールの上に同時に立つとその二人は結ばれる」……つまり!……「マンホールの上に二人で立って告白すれば百発百中上手くいく」とも言えなくもなくもなくもない。ない!マンホールの上にさえ立てば!立つことさえ出来れば!勝利は自ずとこの手に落ちる!(段々自信を失いつつ)……きっと、多分、ほとんどの確率で……。  :  男:□□(女の名前かあだ名)? 男:おい□□! 女:は、はひぃ! 男:なんだよ、今度はお前がボーッとして。 女:ご、ごめん……。 男:(笑って)変なやつ。 女:う、ぐ……!(胸のあたりをおさえて動悸を抑えようとする)  : 女:(M)眼鏡男子のはにかみ笑顔……!そんなん反則でしょきゅんきゅんきちゃうでしょ……!……いや、いや分かってる。幼馴染みが恋の相手だなんてそんなベタ。ベタ中のベタ。ベタオブベタ。最強のベタだってんでしょ?恋愛を井戸の中で済ませるなって言いたいんでしょ?……いやいやいやでも待ってください考えてもみてください!相手は幼馴染み!確かに目立つようなタイプではないけれど、でも、男女誰に訊いても悪口の「わ」の字も出ないような、ちょーーーう良い奴。前の人がポイ捨てしたゴミはわざわざ拾って持ち帰ってまで捨てるし、道に迷って困っているおばあさんがいればその荷物を持って目的地まで直接案内する……まるで少女漫画から出てきたかような優男……ということは例に漏れず! 女:   この男、とてつもなく……とてつもなく……!  :  男:な、なんだよ、ジッと見つめて……。  : 女:(M)眼鏡に隠れて分かりにくいが、この男……! 女:   顔も、良い……!  :  男:え?なに?もしかしてお前が体調悪いんじゃねーの?どこかに座って休むか?あ、水俺が飲んじゃったから買ってこなきゃだな。ごめん、ちょっと一人で待てるか?  : 女:(M)そして性格が良いを通り越して神。マジ神。 女:   こんなの……!  :  女:(早口かつ小声で)ほんとなんなの少女漫画かよ萌えるだろ好きになっちゃうだろぉ……。 男:え?なに?なんつった? 女:(取り繕うように)え?いや!全然!全く!なーんにも! 男:ほ、ほんとに大丈夫か? 女:うん!元気!ちょーう元気! 男:そ、そうか。あんまり無理すんなよ?……俺が心配だから。 女:ズッキュン……! 男:え、なんだ?なんだ今の音……? 女:あぁあああああ!  : 0:突如、女にスポットライトが当たる。  :(曲名は読んでも読まなくても良いです) 女:(M)「恋はコズミック・レボリューション」 女:  女:   なんでどうしてどういうこと! 女:   どうしたら落ちるの恋の罠 女:  女:   なんでどうしてどういうこと! 女:   どうしたら気付くのこの魅力 女:  女:   男が肉食で女が草食? 女:   Hold me tight(ほーみたい)なんてアホみたい 女:   男が攻め側で女が受ける? 女:   そんなの古いわぽぽいのぽいっ! 女:  女:   なんでどうしてどういうこと! 女:   どうしたら落ちるの恋の罠 女:  女:   なんでどうしてどういうこと! 女:   どうしたら気付くのこの魅力  :  男:び、ビックリしたあ……!なんだよイキナリ叫んだりして。 男:……ん?てかなんだその感覚……感じる、感じるぞ……およそ他人事とは思えないような……お笑いコンテストでドン滑りした若手芸人を見る生暖かい視線のような何かを……! 女:(小声で)ハッ、ついシンデレラ気分が抜けずに、モノローグで歌ってしまった……! 女:……って、あんたもさっきイキナリ叫んだでしょうが!(照れ隠しに男を殴る) 男:いって!  : 女:(M)はあ……ついいつもこうして雑な口調や態度になってしまう……。ここで「ごめんね、大声出して……!キュルルルンッ!」くらい言えたなら、○○も私のこと女の子として意識してくれるかもしれないのに……。よ、よし、告白前にここらで一発、私の好意をアピールしておかねば……!  :  女:劇なんて、学祭で一年に一回やるかやらないかじゃない?しかもラブストーリーなんてただでさえ緊張するし……。でも相手が○○なら、自然に出来るかな、って。  : 女:(M)どどどどどうだ……!これは攻撃決まったでしょ!ホームランでしょ!私頑張ったでしょ……!ラブストーリー!恋愛!カップル!恋をする相手!それを、「あなたとなら」自然に出来るかも、だぞ?あなたが好きだから!あなたに既に恋をしてるから!慣れない演技も、あなた相手なら自然に演じられるかもっていうこの乙女心ッ!必殺上目遣い!届け、私のこの想い……!  :  男:幼馴染みだから? 女:……幼馴染み、だから。  : 女:(M)はいストライクバッターアウト。……鈍感!間抜け!おたんこなす!でもそんなとこも好き……!クッ……やはりここは、あの作戦でマンホールに頼るしかないのか……ッ?  :  女:ほら、遅刻しちゃう。 男:た、頼む!な? 女:いやいや。なんでそんな必死に……、 男:神様仏様□□様!どうか、どうかこの道は、この道だけは……! 女:ええいうるさい!ほら!行くよ!  : 女:(M)この道は!御都合県主義市立日和見高校前万歳通り(ごつごうけんしゅぎしりつひよりみこうこうまえばんざいどおり)! 女:   別名「キューピッド・ロード」……! 女:   何故こんな異名がついたか、というと……いや、これは言わずもがな。言わなくても見れば分かる。見よ、この……! 女:   マンホールの、数ッ! 女:   何故だかなんでか、この通りには異様な数のマンホールが設置されている。たまーにある、市のゆるキャラが描かれた色付きのマンホールなどは、某遊園地の隠れネズミくんの如く、そのレア度から通常以上のキューピッド力を発揮するとかしないとか。 女:   (咳払いをして)とにかく!恋する乙女としては、どーうしてもこのキューピッド・ロードで、告白のチャンスを掴むしかない、ということ……!よって作戦ベータ、「ゴリ押しでマンホールを踏ませる大作戦」!……まあつまり、ただの力技。  :  女:(わざとらしく)あー!よく考えたらぁ?そもそもこんな道のど真ん中歩いてるの良くないよね!うんうん良くないよねえ! 男:え?いや、遅刻ギリギリだし、まだここ歩いてるのって俺らくらいだろ?周りだーれもいないぞ? 女:いやいやいや!ほら!マネーとモグラ的に良くないからさあ! 男:……マナーとモラル的に、な。 女:ほらほらほら!良いから寄った寄った! 男:あ、おいちょっと……!  : 0:以下、男はマンホールに乗らないように、女は男をマンホールに乗せるように互いに押し合う。攻防戦。 男:おいおいおい押すなよ力強ぇなあおいゴリラかお前……! 女:はぁあああん?か弱い!繊細な乙女に向かってゴリラはないでしょゴリラはぁああああ! 男:いやいやいやだって待て、運動部ではないとはいえ押されてるから、十七歳の健康的な男子が押されちゃってるからぁあ! 女:そもそもなぁんで抵抗するかなぁあああ?邪魔になるし端に寄ろうって言ってるだけなんだけどなあこっちはぁあああ! 男:スペースならそっちにもあるだろうが!なんでわざわざこっちに……!マジで強いなお前!いやもうギリギリだから!ギリギリだからこっち!頼むからこれ以上押すな、って……! 女:いやいやいや!まだ全然そっち空いてるでしょお!ね?こっちにも!段取りってものがあるからさぁあああ!  : 0:突如、二人にスポットライトが当たる。 男:(M)「マンホール☆」 女:(M)「戦争(ウォー)!」  :  男:(M)ズンチャッズンチャッ 女:(M)ズンチャカズンチャッ 男:(M)ア〜! 女:(M)ア〜〜〜! 男:(M)このマンホール〜! 女:(M)このマンホール〜! 男:(M)踏む訳には決していかない 女:(M)踏ませないと話にならない  :  男:(M)そう!恋はまるで! 男:   わくわくのスパイス 男:   やめられない止まらない 男:   それはまるでエンドレスドラッグ  :  女:(M)そう!恋はまるで! 女:   ふわふわのカステラ 女:   食べ始めたらキリがない 女:   それはまるでエンドレススクロール  :  男:(M)カスカスの能力 女:(M)スカスカの語彙力 男:(M)それでも好きなんだ君が 女:(M)それでも好きなのよ君が  :  男:(M)さあ 女:(M)さあ 男:(M)どうする? 女:(M)どうする! 男:(M)どーうーーー? 女:(M)すーーーるぅっ!ジャジャンッ!  :  男:俺はぁ!マンホールだけはッ、絶対に踏む訳にはいかないんだよぉおお! 女:私はぁ!どうしてもこのマンホールをッ、踏んでもらわなきゃ困るのよぉおおおお!  : 男:……え? 女:……え?あ、わ、わわわわ……!(突然互いの動きが止まったので転びそうになる) 男:え?……!危ない!  : 0:男、転びそうになった女を引き寄せて尻餅をつく。 男:(M)どすん。彼女が後ろに倒れそうになり、咄嗟にこちらに引き寄せてしまった。これが少女漫画のヒーローなら、格好良く抱き寄せて体制も崩さないだろう。が、俺は眼鏡で陰キャのモブ。人一人引き寄せた反動で、ものの見事に尻餅をついた。さっきまで、マンホールギリギリのところで攻防戦を繰り広げていたのだ……当然のことながら……俺は、いや、俺と彼女の二人は、思いきりマンホールの上に、乗ってしまっていた……。  :  男:あぁあああ……もう駄目だ……! 女:好き……! 男:…………へ。 女:イキナリごめんなさい!私、○○のことが、好き……! 男:え、あ、な、何故このタイミング……? 女:い、いいの!このタイミングが絶好のチャンスだったの! 男:いや、あるだろもっとロマンチックなタイミングが……! 女:(男のセリフに被せるように)ない! 男:……ッ! 女:なかったの!私には! 男:……。 女:今が、勇気を出す……出さなきゃいけないタイミングだったの……! 男:そ、そうか……。 女:……で? 男:……で、って……? 女:告白の答え!……ま、まさか保留とかないわよねッ?こんなに頑張ったんだから、生殺しとかやめてよね……ッ? 男:え!アッハイ……! 女:女の子が勇気出して告白したんだから……ちゃんと、その……答えなさいよね。 男:はい……えっと……(咳払い)俺も、○○のことが、好き、です。 女:……無理やり言わせた? 男:いやいやいや!ない!言わせてない! 女:……ほんと?ほんとは断ろうとしてたけど、とかない……? 男:……え?なに?断った方がいいのか? 女:それはいや! 男:ぷっ、ふふ……。 女:(半泣きで)な、なによぅ。え?や、やっぱり嫌々オーケーしてくれたの……?私がちゃんと答えなさいとか言ったから……? 男:(堪えきれず)あはははは! 女:あ、ちょ、笑うなぁ!  : 男:(M)あーほんと、ジンクスってやつは、当てにならない……。  :  男:好きだよ。 女:……うん。 男:ちゃんと、□□のこと、好きだよ。 女:……うん、分かった……。 男:あー俺、学祭で告白しようと思ってたんだけど……。 女:えっ、そ、そうなの……? 男:うん……。 女:私、○○の告白待ってたら、おばあちゃんになっちゃうかもって思ってた……いや、そもそも、私のことを好きかどうかも不安だったし……。 男:俺、分かりやすいと思うんだけどなあ。 女:私だって、分かりやすかったと思うけど……。 男:……お互い鈍感、ってことで。 女:ふふ。 男:泣いたり笑ったり忙しいやつだな。 女:だって。 男:なに?どうした? 女:んーん。……ただ……、 女:ジンクスって肴(さかな)になるんだなあって思って! 男:それを言うなら「ジンクスって当てになるんだなあ」だろ……って、え?……えぇっ?  :   :   :   :   :   :.

男:(M)「マンホールを踏むと失恋する」 男:   俺の通う学校で、男子生徒を中心にまことしやかに語られるジンクス。マンホールイコール穴、穴イコール落ちる、落ちるイコール失敗、失敗する、恋、恋に失敗するイコール失恋……まあ、成り立ちはそんな所だろう。こういう噂の始まりは、いつだって思った以上に適当なものだから。 男:   …………え?お前はそれを信じているのか、って?……いやいやいや、そんな訳ないだろ?うんうんうん、いやー、こんなジンクス信じる奴いる?いないよなーないないない。 男:  男:   (息をスーッと吸って)……でもさ?たぁまぁにぃは?こういうのを?信じちゃうのも?面白いかなーなんてさ?さぁ!はは、はははははは……。 男:   ……え?ジンクスってのは、一般的に女が好きなものなんじゃないのか?そんなものを信じるなんて、女々しいのではないか?…………ふ、ふふ、ふはははははは!ほうほうほう、確かに一理ある。だが!だがしかし!漢にも!まじないの類(たぐい)にすがりたい時がぁ……ある!花の高校生活!それを彩(いろど)るのに絶対的圧倒的に必要不可欠なもの!それは……! 男:   彼女……! 男:   恋人無くして青春(せいしゅん)を満喫できようか?答えは否!恋人無くして……アオハルを語ることなど出来んのだ!よって!その必須アイテム「彼女」を手に入れる為ならば!……アッいやこれは別に女性を道具扱いしているとかではなくて単純な言葉の綾で……あーーーとにかく!彼女をゲットし!めくるめく桃色の高校生活を送る為には、だ! 男:   (半泣きで)ワラにもすがりたいし猫の手も借りたい!以上! 男:  男:   ……「マンホールを踏むと失恋する」……言い換えれば……過大解釈すれば!……「マンホールを踏まなければ失恋しない」とも言えなくもなくもなくもない。ない!マンホール踏まなければ!失恋は!しない!(段々自信を失いつつ)……きっと、多分、ほとんどの確率で……。  :  女:……○○(男の名前・もしくはあだ名)? 女:○○ってば! 男:お、おお、ごめん。何の話だった? 女:もー。ちゃんと聴いててよね。学祭の買い出し!足りないものがあったから、今日の放課後私達が行くって決まったでしょ?忘れて勝手に帰らないでよ? 男:お、おう。 女:頼むぞ、荷物持ち! 男:お、おう……。 男: 男:(M)そう、学祭。正式名称は学園祭……!告白して上手くいくイベントランキング堂々の第一位カッコ俺調べ……!それがもう、あと一週間後に迫っているのだ。つまりぃ!一世一代の大勝負、告白の大大大チャンス!俺は学祭で!幼馴染みであるこいつ……□□(女の名前・もしくはあだ名)に告白する……! 男:   ゆえにあと一週間……あと一週間は絶対に、絶対にマンホールを踏む訳にはいかないのだ!  :  女:歯っ切れ悪いなあ。変なの。学祭なんて、○○でもはちゃめちゃにテンション上がるイベントじゃん?なのにさっきから一人で百面相してるし、何度呼んでもまるで聞こえてないみたいだったし……。もしかして準備忙しくて、頭おかしくなっちゃった?……って、頭おかしいのは前からか。 男:お前な。口悪いぞ。 女:学校では清楚可憐で通ってるもん。 男:(小声で)……だから変な男どもが湧くんだろうが。 女:え? 男:だから可哀想な男子生徒諸君が騙されるんだよなあ、って! 女:何よ、それ。 男:じゃあモテる女は大変だなって話? 女:んんんんん?なんでそんな話になった? 男:人気投票でシンデレラに選ばれるのは、陽キャ女子代表の証拠だろ。陽キャ女子代表ってことは、つまり、あれだ。モッテモテってことだろ?眼鏡で陰キャ代表の俺と違って。 女:(笑いながら)なにその理屈。……その理屈でいくとつまり、モテモテで困っちゃう陽キャ男子代表は、王子様に選ばれた……、 男:(憎々しく)上田……。 女:と、なる訳だけれど? 男:まあ実際、あいつ、顔だけはめちゃくちゃに良いし……。 女:先輩とか後輩には人気だよね。同級生からはちょっと……あの。 女:……一目置かれてるけど。 男:引かれてるってハッキリ言えよ。 女:いや、んー、なんだろうな?上田くん格好いいし、優しいんだけどね?けどちょっと……パンスト?だしそれにそれに、えっと……成人病?だし……あ!あとあれ!ボイコネ! 男:……あーうん。ちょっと待ってな。……ナルシストだろ。厨二病だろ。……あとなんだ。ボイコネ……?あ、もしかしてマザコンか! 女:それだ! 男:どういう間違いだよ……。 女:すっごい!よく分かったね! 男:付き合い長いからな、お前のポンコツな言い間違いには慣れて……いや、それにしてもよく分かったな、俺……。 男:(ため息をついて)……で? 女:で……って? 男:ナルシスト、厨二病、マザコン。上田がどれでちょっと、って?  :(間) 女:……………ぜんぶ。 男:……つまり総括して痛いってことな……。 女:そうねえ……残念だよねえ……。 男:でも、観賞用には良いって、女子達みんな言ってるだろ。お前意外と面食いだから、イケメンの上田が相手に決まって喜んでると思ってた。 女:んー、確かに上田くん、顔は格好いいけど……、 女:……(はにかみながら)私は○○が王子様だったら良かったなー、なんて。 男:……っ!(焦って咳き込む) 女:な、何よ、その反応。……あーもう、大丈夫?水持ってるよ、飲む?  :  男:(M)……!いける……!この反応はいける!いけるぞ、俺!少なくともあの上田よりは遥かにリードしていると言って過言ではない! 男:   ……そう。ナルシストで厨二病でマザコンの上田よりは、だが。  :  女:ほら、水。 男:(まだ咳き込みつつ)さ、サンキュ……。(はたと気付いて)あれ。こ、これってもしかして、間接キス……? 女:……ば、ばばば馬鹿じゃないの!新品!まだ私は飲んでない!蓋だってまだ開いてないでしょうが! 男:あ、ほんとだ。なーんだ……。 女:……なーんだ、って……へんたい。 男:まあ、年頃の男の子なもんで……。 女:誰とでも間接キスしたい年頃ってなによ。 男:誰とでもしたくないけど。したい相手とだけだけど。 女:え? 男:あぁあああいや!なんでもない! 女:……そ、そう。 男:(水を飲んで一息つく)で、話を戻すけど……なんで王子様が俺だったら良いわけ? 女:……え?だ、だって幼馴染みだもん。気心しれてるし、掛け合うのも楽じゃん。 男:あー……そういう……期待して損した。 女:劇なんて、学祭で一年に一回やるかやらないかじゃない?しかもラブストーリーなんてただでさえ緊張するし……。でも相手が○○なら、自然に出来るかな、って。 男:幼馴染みだから? 女:……幼馴染み、だから。 男:王子様ねえ……。まず自分とは違う誰かを演じる、ってのが難しいよな。 女:その辺は難しく考えずに楽しんじゃえばいいんだよ!自分以外の誰かになれるって考えたら、面白そうって思えない? 男:た、確かに。 女:ふふ。……あ!ねえ、ちょっとここ読んでみてよ。 男:えっ?ここで? 女:ちょっとだけ!練習付き合って。ねっ? 男:お、おう……。  :  0:男、女から台本を受け取る。以下、劇中劇。 女:「おお王子様、あなたはどうして王子様なの?」 男:シンデレラってそんなんだっけ……。えぇっと……、 男:「私は私、他の何者でもありません。美しい姫よ!どうか私と踊ってください!」 女:「えぇ良いわ、踊りましょう、王子様」 男:「今宵、貴女に忘れられない夜をプレゼント致しましょう。ミュージック、スタート!」 男:…………ん?  : 0:突如、二人にスポットライトが当たる。  :(以下、時折ある歌うシーンでは、歌っても読んでもふざけても何しても構いません) 女:「ダンシング・キングダム!」 男:え、なにこれなにこの音楽。怖い怖い怖い。  : 女:「惹かれ合う二人 繋ぎ合う手と手」 男:何これ?何これ?歌えば良いの?読めば良いの?えっとえっと……、 男:「ジアゼパム使う 手ブレなくなる」 女:「光さす二人 掴み取る未来」 男:「睨み合う二人 頭蓋骨粉砕」 女:「嗚呼、貴方の瞳に射抜かれた」 男:「嗚呼、僕の心を撃ち抜いた」 女:「ねえどうか、私の全てを連れ去……、  : 男:(女のセリフに被せて)待って、お願いちょっと待って……? 女:えぇ?なに?ここからが盛り上がるのにぃ……。 男:いや、ちょっと整理させて……。え、イキナリ何。なにこれ。 女:え?いや、普通のシンデレラじゃ面白くないし、今回の劇、ミュージカル調にしようって話になって。 男:みゅーじかる。これが。……い、いや、とりあえずミュージカルが何かとかそういう話は置いておいて……うん。続けて。 女:だから、曲を作ろうって話になって。 男:そうだよな。曲は必要だよな。ミュージカルだもんな。 女:うん!それで、それぞれちゃんと韻踏むように作詞したんだよ!ほら。惹かれ合う、ジアゼパム。光さす、睨み合う。掴み取る、頭蓋骨。……ね!韻踏んでる! 男:いや!韻は踏めてるかもしれないけど……、 女:こちらが手と手と言えばあちらは手ブレ、あちらが頭蓋骨粉砕と言えばこちらは射抜かれ、そしてあちらが撃ち抜かれ……いやー、関連付けも流石だよねえ、うんうん。 男:関連付け云々の前に内容が物騒すぎるだろ!? 女:まあ、もう少し修正もするから! 男:待て、さっき「それぞれ作詞した」って言ってたけどまさか……! 女:うん、シンデレラ側は私の作詞だよ。 男:ということは王子側は……、 女:上田くん! 男:(頭を抱える) 女:ねね、内容は微調整もあるだろうからとりあえず置いといて、どう?ちょっとは面白かったんじゃない? 男:微調整か……微かにしか調整しないのか……。……いや、うん。結構楽しかった。不覚にも。 女:でっしょー?こういうの、意外と好きだろうなってずっと思ってたんだよねー。ほら、○○って戦隊もののヒーローごっこだけじゃなくて、私達と魔法少女ごっこするのにも嫌な顔せず付き合ってくれてたじゃん? 男:まあ、確かに……。お前、俺のことよく分かってんのな。 女:あったりまえじゃん。幼馴染みだもん!(満面の笑み) 男:う、ぐ……!(胸のあたりをおさえて動悸を抑えようとする)  : 男:(M)もん、もんって……か、かわいいかよ……!いや分かってる。幼馴染みが恋の相手だなんてそんなベタ。ベタ中のベタ。ベタオブベタ。最強のベタどうなんだってんだろ?手近で済ませるなって言いたいんだろ?……いやいやいやでも待ってください考えてもみてください!相手は幼馴染み!小さい頃から勝手知ってる仲で、俺のことを誰よりも理解してくれる。それに、いくら学校で雑な口調やポンコツな性分を隠していても、それでも変な男が次から次へと湧いてきてしまう……ということはだ。つまり! 男:   この女、とてつもなく……とてつもなく……!  :  女:な、なによ、ジッと見つめて……。  : 男:(M)顔が、良い。  :  女:え?なに?もしかして体調悪い?どこかでちょっと休む?  : 男:(M)そして性格も、良い。 男:   そんなん……!  :  男:(小声で)好きになっちゃうだろぉ……。 女:え?なに?なんて言った? 男:(取り繕うように)え?いや!全然!全く!なーんにも! 女:変なの。 女:(笑って)ほら、行くよ王子様! 男:トゥンク……! 女:え、なに?なに今の音……? 男:あぁあああああ!  : 0:突如、男にスポットライトが当たる。  :(曲名は読んでも読まなくても良いです) 男:(M)「君は僕の宝石〜それは恋のエーデルシュタイン〜」 男: 男:   おっととっとっと危ねえぜ 男:   マジで危機一髪だったぜ 男:   とっととっとっと告ろうぜ 男:   体勢ジーザスだったぜ 男:  男:   危うく俺もフォーリンマンホール 男:   そしたら俺はブロークンハート 男:  男:   二人の関係は未だ曖昧 男:   そんな関係に今だバイバイ 男:   俺の反撃まさか大敗? 男:   恋の判定今は何点? 男:  男:   この恋はまるで単純な複雑骨折 男:   頭の頭痛が痛くてたまらねえ 男:   一瞬で落ちたのにもう戻れないウォウウォー 男:   :  女:び、ビックリしたあ……!なによイキナリ叫んだりして。……ん?てか何か寒気が……なんなの、この、まるで学生の初デートで、タキシードバッチリキメて、百本の赤いバラを持って迎えに来られたかような薄ら寒さは……! 男:(小声で)ハッ、ついミュージカル気分が抜けずに、モノローグで歌っちまった……! 女:あ。おさまった。今日はなんなのほんと……あ!やっば!ねえほら遅刻しちゃう。急ご! 男:え?あぁもうそんな時間、って……。 女:何? 男:あ、いや……この道はちょっと……。 女:道?この道が何?通学路じゃない。 男:きょ、今日はあっちの道通っていかないか。たまにはゆっくり行くのも良いだろ。色々話したいこともあるし……! 女:子供の頃からずっと一緒にいて、今更わざわざ、回り道してまで話すこともないでしょ。ってかそもそも時間がないってば。ほら、遅刻しちゃう。 男:た、頼む!な? 女:いやいや。なんでそんな必死に……、 男:神様仏様□□様!どうか、どうかこの道は、この道だけは……! 女:ええいうるさい!ほら!行くよ!  : 男:(M)この道は!御都合県主義市立日和見高校前万歳通り(ごつごうけんしゅぎしりつひよりみこうこうまえばんざいどおり)! 男:   別名「トラップ・ゾーン」……! 男:   何故こんな異名がついたか、というと……いや、これは言わずもがな。言わなくても見れば分かる。見よ、この……! 男:   マンホールの、数ッ! 男:   何故だかなんでか、この通りには異様な数のマンホールが設置されている。まれにある、市のゆるキャラが描かれた色付きのマンホールなどは、某遊園地の隠れネズミのようで、殊更腹が立つ。 男: 男:   (咳払いをして)とにかく!決戦を一週間後に控えた恋する乙男(おとめん)としては、このトラップ・ゾーンは、否が応にも、どーうしても避けたい道なのだ……! 男:   ……そうこうしている間に、同じクラスの上田が、さりげなくトラップ・ゾーンを避け、坂道の方に抜けていくのが見えた。本来近道である道でなく、わざわざ遠回りの、しかも坂道へ、だ。ぐぬぬ、上田、お前もか。お前も恋する乙男なのか。流石は初デートでタキシードバッチリキメて、百本の赤いバラを持って迎えに行きドン引きされた伝説の勇者……目がガチだ。  :  :◇  :  女:(M)「マンホールの上に同時に立つとその二人は結ばれる」 女:   私の通う学校で、女子生徒を中心にまことしやかに語られるジンクス。マンホールイコール穴、穴イコール落ちる、落ちる、恋、恋、落ちる……恋に落ちる……!女の子はえてしてこういったおまじないの類(たぐい)が大好きで、こんな風に無理矢理無理くり意味を後付けしては、どうしようもないくだらないジンクスを量産し続けている。……え?お前はこれを信じているのか、って?……いやいやいや、そんな訳ないでしょ、こんな……こんな……く、くだらない眉唾物のジンクス……(段々と小声になっていく)。 女:  女:   (息をスーッと吸って)……ま、まぁでも?確かめもせずに嘘だって決めつけるのも〜良くない、よね?だってほら、映画の批評とかと同じでさ、観る前からダメだ駄作だって言ったりするのは……ねえ?だから!一度は試してあげてもいいかな〜なんて……はは、はははははは……。 女:   ……え?ジンクスってのは、一般的に自信のない人間が頼るものなんじゃないのか?そんなものを頼るなんて、邪道なのではないか?…………ふ、ふふ、ふはははははは!ほうほうほう、確かに一理ある。けど!だけど!私にも!まじないの類(たぐい)にすがりたい時がぁ……ある!花の高校生活!それを彩(いろど)るのに絶対的圧倒的に必要不可欠なもの!それは……! 女:   彼氏……! 女:   恋人無くして青春(せいしゅん)を満喫できようか?答えは否!恋人無くして……アオハルを語ることなど出来んのだ!よって!その必須アイテム「彼氏」を手に入れる為ならば!……アッいやこれは別に男性をアクセサリー扱いしているとかではなくて単純な言葉の綾で……あーーーとにかく!彼氏をゲットし!めくるめく桃色の高校生活を送る為には、だ! 女:   (半泣きで)ブラ紐にもすがりたいし孫の手も借りたい!以上!……ん?あれ?何か違うような……まいっか! 女:  女:   …… 「マンホールの上に同時に立つとその二人は結ばれる」……つまり!……「マンホールの上に二人で立って告白すれば百発百中上手くいく」とも言えなくもなくもなくもない。ない!マンホールの上にさえ立てば!立つことさえ出来れば!勝利は自ずとこの手に落ちる!(段々自信を失いつつ)……きっと、多分、ほとんどの確率で……。  :  男:□□(女の名前かあだ名)? 男:おい□□! 女:は、はひぃ! 男:なんだよ、今度はお前がボーッとして。 女:ご、ごめん……。 男:(笑って)変なやつ。 女:う、ぐ……!(胸のあたりをおさえて動悸を抑えようとする)  : 女:(M)眼鏡男子のはにかみ笑顔……!そんなん反則でしょきゅんきゅんきちゃうでしょ……!……いや、いや分かってる。幼馴染みが恋の相手だなんてそんなベタ。ベタ中のベタ。ベタオブベタ。最強のベタだってんでしょ?恋愛を井戸の中で済ませるなって言いたいんでしょ?……いやいやいやでも待ってください考えてもみてください!相手は幼馴染み!確かに目立つようなタイプではないけれど、でも、男女誰に訊いても悪口の「わ」の字も出ないような、ちょーーーう良い奴。前の人がポイ捨てしたゴミはわざわざ拾って持ち帰ってまで捨てるし、道に迷って困っているおばあさんがいればその荷物を持って目的地まで直接案内する……まるで少女漫画から出てきたかような優男……ということは例に漏れず! 女:   この男、とてつもなく……とてつもなく……!  :  男:な、なんだよ、ジッと見つめて……。  : 女:(M)眼鏡に隠れて分かりにくいが、この男……! 女:   顔も、良い……!  :  男:え?なに?もしかしてお前が体調悪いんじゃねーの?どこかに座って休むか?あ、水俺が飲んじゃったから買ってこなきゃだな。ごめん、ちょっと一人で待てるか?  : 女:(M)そして性格が良いを通り越して神。マジ神。 女:   こんなの……!  :  女:(早口かつ小声で)ほんとなんなの少女漫画かよ萌えるだろ好きになっちゃうだろぉ……。 男:え?なに?なんつった? 女:(取り繕うように)え?いや!全然!全く!なーんにも! 男:ほ、ほんとに大丈夫か? 女:うん!元気!ちょーう元気! 男:そ、そうか。あんまり無理すんなよ?……俺が心配だから。 女:ズッキュン……! 男:え、なんだ?なんだ今の音……? 女:あぁあああああ!  : 0:突如、女にスポットライトが当たる。  :(曲名は読んでも読まなくても良いです) 女:(M)「恋はコズミック・レボリューション」 女:  女:   なんでどうしてどういうこと! 女:   どうしたら落ちるの恋の罠 女:  女:   なんでどうしてどういうこと! 女:   どうしたら気付くのこの魅力 女:  女:   男が肉食で女が草食? 女:   Hold me tight(ほーみたい)なんてアホみたい 女:   男が攻め側で女が受ける? 女:   そんなの古いわぽぽいのぽいっ! 女:  女:   なんでどうしてどういうこと! 女:   どうしたら落ちるの恋の罠 女:  女:   なんでどうしてどういうこと! 女:   どうしたら気付くのこの魅力  :  男:び、ビックリしたあ……!なんだよイキナリ叫んだりして。 男:……ん?てかなんだその感覚……感じる、感じるぞ……およそ他人事とは思えないような……お笑いコンテストでドン滑りした若手芸人を見る生暖かい視線のような何かを……! 女:(小声で)ハッ、ついシンデレラ気分が抜けずに、モノローグで歌ってしまった……! 女:……って、あんたもさっきイキナリ叫んだでしょうが!(照れ隠しに男を殴る) 男:いって!  : 女:(M)はあ……ついいつもこうして雑な口調や態度になってしまう……。ここで「ごめんね、大声出して……!キュルルルンッ!」くらい言えたなら、○○も私のこと女の子として意識してくれるかもしれないのに……。よ、よし、告白前にここらで一発、私の好意をアピールしておかねば……!  :  女:劇なんて、学祭で一年に一回やるかやらないかじゃない?しかもラブストーリーなんてただでさえ緊張するし……。でも相手が○○なら、自然に出来るかな、って。  : 女:(M)どどどどどうだ……!これは攻撃決まったでしょ!ホームランでしょ!私頑張ったでしょ……!ラブストーリー!恋愛!カップル!恋をする相手!それを、「あなたとなら」自然に出来るかも、だぞ?あなたが好きだから!あなたに既に恋をしてるから!慣れない演技も、あなた相手なら自然に演じられるかもっていうこの乙女心ッ!必殺上目遣い!届け、私のこの想い……!  :  男:幼馴染みだから? 女:……幼馴染み、だから。  : 女:(M)はいストライクバッターアウト。……鈍感!間抜け!おたんこなす!でもそんなとこも好き……!クッ……やはりここは、あの作戦でマンホールに頼るしかないのか……ッ?  :  女:ほら、遅刻しちゃう。 男:た、頼む!な? 女:いやいや。なんでそんな必死に……、 男:神様仏様□□様!どうか、どうかこの道は、この道だけは……! 女:ええいうるさい!ほら!行くよ!  : 女:(M)この道は!御都合県主義市立日和見高校前万歳通り(ごつごうけんしゅぎしりつひよりみこうこうまえばんざいどおり)! 女:   別名「キューピッド・ロード」……! 女:   何故こんな異名がついたか、というと……いや、これは言わずもがな。言わなくても見れば分かる。見よ、この……! 女:   マンホールの、数ッ! 女:   何故だかなんでか、この通りには異様な数のマンホールが設置されている。たまーにある、市のゆるキャラが描かれた色付きのマンホールなどは、某遊園地の隠れネズミくんの如く、そのレア度から通常以上のキューピッド力を発揮するとかしないとか。 女:   (咳払いをして)とにかく!恋する乙女としては、どーうしてもこのキューピッド・ロードで、告白のチャンスを掴むしかない、ということ……!よって作戦ベータ、「ゴリ押しでマンホールを踏ませる大作戦」!……まあつまり、ただの力技。  :  女:(わざとらしく)あー!よく考えたらぁ?そもそもこんな道のど真ん中歩いてるの良くないよね!うんうん良くないよねえ! 男:え?いや、遅刻ギリギリだし、まだここ歩いてるのって俺らくらいだろ?周りだーれもいないぞ? 女:いやいやいや!ほら!マネーとモグラ的に良くないからさあ! 男:……マナーとモラル的に、な。 女:ほらほらほら!良いから寄った寄った! 男:あ、おいちょっと……!  : 0:以下、男はマンホールに乗らないように、女は男をマンホールに乗せるように互いに押し合う。攻防戦。 男:おいおいおい押すなよ力強ぇなあおいゴリラかお前……! 女:はぁあああん?か弱い!繊細な乙女に向かってゴリラはないでしょゴリラはぁああああ! 男:いやいやいやだって待て、運動部ではないとはいえ押されてるから、十七歳の健康的な男子が押されちゃってるからぁあ! 女:そもそもなぁんで抵抗するかなぁあああ?邪魔になるし端に寄ろうって言ってるだけなんだけどなあこっちはぁあああ! 男:スペースならそっちにもあるだろうが!なんでわざわざこっちに……!マジで強いなお前!いやもうギリギリだから!ギリギリだからこっち!頼むからこれ以上押すな、って……! 女:いやいやいや!まだ全然そっち空いてるでしょお!ね?こっちにも!段取りってものがあるからさぁあああ!  : 0:突如、二人にスポットライトが当たる。 男:(M)「マンホール☆」 女:(M)「戦争(ウォー)!」  :  男:(M)ズンチャッズンチャッ 女:(M)ズンチャカズンチャッ 男:(M)ア〜! 女:(M)ア〜〜〜! 男:(M)このマンホール〜! 女:(M)このマンホール〜! 男:(M)踏む訳には決していかない 女:(M)踏ませないと話にならない  :  男:(M)そう!恋はまるで! 男:   わくわくのスパイス 男:   やめられない止まらない 男:   それはまるでエンドレスドラッグ  :  女:(M)そう!恋はまるで! 女:   ふわふわのカステラ 女:   食べ始めたらキリがない 女:   それはまるでエンドレススクロール  :  男:(M)カスカスの能力 女:(M)スカスカの語彙力 男:(M)それでも好きなんだ君が 女:(M)それでも好きなのよ君が  :  男:(M)さあ 女:(M)さあ 男:(M)どうする? 女:(M)どうする! 男:(M)どーうーーー? 女:(M)すーーーるぅっ!ジャジャンッ!  :  男:俺はぁ!マンホールだけはッ、絶対に踏む訳にはいかないんだよぉおお! 女:私はぁ!どうしてもこのマンホールをッ、踏んでもらわなきゃ困るのよぉおおおお!  : 男:……え? 女:……え?あ、わ、わわわわ……!(突然互いの動きが止まったので転びそうになる) 男:え?……!危ない!  : 0:男、転びそうになった女を引き寄せて尻餅をつく。 男:(M)どすん。彼女が後ろに倒れそうになり、咄嗟にこちらに引き寄せてしまった。これが少女漫画のヒーローなら、格好良く抱き寄せて体制も崩さないだろう。が、俺は眼鏡で陰キャのモブ。人一人引き寄せた反動で、ものの見事に尻餅をついた。さっきまで、マンホールギリギリのところで攻防戦を繰り広げていたのだ……当然のことながら……俺は、いや、俺と彼女の二人は、思いきりマンホールの上に、乗ってしまっていた……。  :  男:あぁあああ……もう駄目だ……! 女:好き……! 男:…………へ。 女:イキナリごめんなさい!私、○○のことが、好き……! 男:え、あ、な、何故このタイミング……? 女:い、いいの!このタイミングが絶好のチャンスだったの! 男:いや、あるだろもっとロマンチックなタイミングが……! 女:(男のセリフに被せるように)ない! 男:……ッ! 女:なかったの!私には! 男:……。 女:今が、勇気を出す……出さなきゃいけないタイミングだったの……! 男:そ、そうか……。 女:……で? 男:……で、って……? 女:告白の答え!……ま、まさか保留とかないわよねッ?こんなに頑張ったんだから、生殺しとかやめてよね……ッ? 男:え!アッハイ……! 女:女の子が勇気出して告白したんだから……ちゃんと、その……答えなさいよね。 男:はい……えっと……(咳払い)俺も、○○のことが、好き、です。 女:……無理やり言わせた? 男:いやいやいや!ない!言わせてない! 女:……ほんと?ほんとは断ろうとしてたけど、とかない……? 男:……え?なに?断った方がいいのか? 女:それはいや! 男:ぷっ、ふふ……。 女:(半泣きで)な、なによぅ。え?や、やっぱり嫌々オーケーしてくれたの……?私がちゃんと答えなさいとか言ったから……? 男:(堪えきれず)あはははは! 女:あ、ちょ、笑うなぁ!  : 男:(M)あーほんと、ジンクスってやつは、当てにならない……。  :  男:好きだよ。 女:……うん。 男:ちゃんと、□□のこと、好きだよ。 女:……うん、分かった……。 男:あー俺、学祭で告白しようと思ってたんだけど……。 女:えっ、そ、そうなの……? 男:うん……。 女:私、○○の告白待ってたら、おばあちゃんになっちゃうかもって思ってた……いや、そもそも、私のことを好きかどうかも不安だったし……。 男:俺、分かりやすいと思うんだけどなあ。 女:私だって、分かりやすかったと思うけど……。 男:……お互い鈍感、ってことで。 女:ふふ。 男:泣いたり笑ったり忙しいやつだな。 女:だって。 男:なに?どうした? 女:んーん。……ただ……、 女:ジンクスって肴(さかな)になるんだなあって思って! 男:それを言うなら「ジンクスって当てになるんだなあ」だろ……って、え?……えぇっ?  :   :   :   :   :   :.