台本概要

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タイトル グラビティ・ニル【2:1:1】 -法外宙域ローヴァーゲイル #7
作者名 ろくしょうるり  (@ruri6syo)
ジャンル ファンタジー
演者人数 4人用台本(男2、女1、不問1) ※兼役あり
時間 50 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 人類の惑星間移民が始まって200。
母星地球を中心に惑星間物流も活発に行われるようになり、多くの『宙運船』が行き交う宇宙。
そんな宙運航路と積み荷の安全を守る、宙運私警団、人呼んで『アブサード』


このシナリオはシリーズシナリオですが、順序はありません。
どのシナリオからも読むことができますが、全てのシリーズは時系列に沿わず繋がっています。
ピースを拾い集めるように物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
リリ 60 ヤマモト・リリ 宙運私警団でロジー班所属。不思議な力を持つトラのぬいぐるみ、「トラちゃん」を抱いた少女。記憶をなくしているが虐待のトラウマを抱えている。 整備士と兼ね役
ロジー 137 ロジー・ガーウィン(26) 宙運私警団調査班 ロジー班の班長。 かつては「滅ぼされた宇宙キャラバン」ローヴァーゲイル・キャラバンに所属していた。
フウガ 不問 70 ロジー班のAI。 軽微な兼ね役あり
メイヤード 53 宙運私警団 総括(総括) 50代男性 軽微な兼ね役あり
整備士 21 宙運私警団 テクニカルフロアで宇宙船の整備をする女整備士。 リリ役の方がお願いします
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
メイヤード:5年前。 ローヴァーゲイルという一つの宙運キャラバンが、何者かにより殲滅された 0:  メイヤード:まずは地球とセカンドフロンティアを結ぶ第二航路船団が 0:  メイヤード:続いて、地球とファーストフロンティアを結ぶ第一航路船団、サードフロンティア航路開拓船が相次いで襲撃され、ローヴァーゲイルキャラバン・ファミリーは滅んだ 0:  メイヤード:最初に標的となった第二航路船団に一体何があったのか… それは恐らくこれだろう 0:  メイヤード:『E57(ごーなな)シリンダパーツ』 0:  メイヤード:ほぼ金銭的に無価値であろうこのありふれた機械部品は何故、ナリタ・ステイション・ポートで『抜き取り』されたのか 0:  メイヤード:ポートで取引される積み荷情報を盗み、海賊どもに情報を流す、通称『ホシ屋』は、何故このパーツに目をつけたのか 0:  0:  0:  フウガ:法外宙域ローヴァーゲイル ロジー:『グラビティ・ニル』 0:  0:  0:  リリ:うちゅう 0:  リリ:どこまでも… おわりなくつらなる…  …なみのかさなり。 ほしたちのグラビティ リリ:いま、わたし、そのなかのひとつになってる リリ:ここは『グラビティ・ゼロ』なんかじゃないね… 『なし』なんかじゃない… みんなとひとつになってる リリ: … だから … リリ:そう… 『NIL(ニル)』… … おおきなものも… ちいさなかけらも… わたしも …  リリ:みんなみんな、とけあって … グラビティのまにまに… 0:  リリ:ふふっ 0:  0:  ロジー:で、具合はどうなんだ? フウガ。 今、機体はドック入りして診てもらってるんだろ? フウガ:そうですね、ハウンドラプターに接触した擦り傷はたいしたことはありませんでしたが、大気圏、成層圏以下まで突入しましたから、外装はほとんど焼け落ちました。 フウガ:外装内部のE56シリンダセンサーユニットも大半を焼失。外装はすべてリペアです。私の機体は現在、トリートメントドックに収容されていますが、作業終了まではやや時間がかかりそうです ロジー:そうかぁー、まさか、あんなところで宇宙軍に襲撃されるとはね。総括のお目玉なしなのは良かったが、警戒の為しばらくはおれたち、内勤だって。あーあ フウガ:リペアが終わるまでは、どのみち外には出られませんしね ロジー:その間にリリの宇宙空間での活動訓練も進んでるわけだが、それにしてもすごいな、あいつ。恐れ知らずって言うか フウガ:そうですね。恐らく、『トラウィス』の力で自在に空間を行き来できるためと推測しますが、宇宙空間での彼女は、とても自由に見えます ロジー:ああ。まるで宙(そら)で生まれたみたいだ。動きの自在さだけで言ったらもう訓練っつーか、すでにただの外遊び リリ:ロジー、みてみて! こうやって… よいしょっ …こうするとね、くるってまわっても、ぴたってとまれる! ロジー:おー、すごいけどハーネスに気をつけてくれよ、絡むと大変だぞ あと通信だから。大きな声出さなくても普通に聞こえるからな? リリ:あそっか うー、でもこのひも、じゃま ロジー:ちょっ、リリ! こらこら、はずすんじゃないぞ?!  フウガ:ふふ。それに付き添うあなたは、まるでお父さんです。ロジー。 ロジー:ええ、フウガ、せめてお兄さんにして フウガ:ロジー、やはりあなたは子供あしらいがうまいのです。出会った頃のあなたは誰とも組まず、特に子供が嫌いなふりをしていました。でも、実際のあなたはそうではなく フウガ:…そうですね、特に子供との接し方にとても慣れている ロジー:・・・・・・ っ… そう、だったのなら、いいな 0:(間) フウガ:すみません。わたしは今、あなたに何かいけないことを言ってしまったようです ロジー:ん? はは。いや。なんでもない。 もしそう見えるとしたらそれは、おれを育ててくれたみんなのおかげだよ。 っと、それよりフウガ、リリはそろそろなんじゃないか? フウガ:ええ。そろそろ。リリのエア残量がラインを超えます ロジー:やっぱりね。 おーい、リリ。エア確認! リリ:えっ、もう? ロジー:もうだよ。いくつになってるか当ててやろうか。9か、そこまでじゃなけりゃ11パーセントくらいにはなってるだろ リリ:う、うう。ほんとだ フウガ:エア残量の規定は8から10パーセント。リリのエア残量は規定ラインを超えます。ハーネスケーブルに沿って帰還してください。トラちゃんで戻るのは、だめですよ ロジー:リリ、移動にエアを使いすぎてる。移動も呼吸も同じエアパックなんだ。残量の感覚を掴むのも大事な訓練だぞ? リリ:…はあい。 ね、ロジーはあとどのくらい? ロジーは、まだだいじょうぶなの? ロジー:んん? おれ? どのくらいだと思う? リリ:えっと、ロジーのほうが、こきゅうにつかってるエア、おおいよね。 でも、ずっとわたしのそばについててくれた… でも、ロジーのほうが、へってない… として、15パーセント、くらい? ロジー:15パーセントだな、よし。 戻ってフウガのモニタリングで確認してみるか。 フウガ:そういうところです、ロジー ロジー:ん? フウガ:いいえ。ロジー、あなたもリリに付いて帰還してくださいよ? ロジー:はいよっと 0:  0:  0:  ロジー:- 激しい爆発により飛び散ったカケラが、闇の中に溶けていく。 ロジー:- おれは反射的に、そのバラバラと闇に流れ出す白いカケラたちを追って飛んでいた。 ロジー:はやく、 はやく 、 はやく! ロジー:- エア残量アラームが鳴る。それでも追うことをやめたくなかった ロジー:- けれど… 爆発のエネルギーが産んだすさまじい慣性に追いつけるわけがなく、真っ白い光の粒は無情にも視界から少しずつ消えていく。 ロジー:まってくれ、この先に、みんなが…! おれたちのキャラバンが! 0:  ロジー:ケン! ロジー:っ …ナユ! 0:  ロジー:消えることのない慣性のまま、信じられない速度のままに、投げ出されたみんなの体が永遠にこの宙を飛び続けていくなんて 0:  ロジー:ハル、テレサさん ソフィおばさん… ゾア… レノじいさん… ヨン、アルファード、… おやっさん…! ロジー:ここから飛べば追いつけるかもしれない。せめて誰か一人でも! 0:  ロジー:- 限界まで加速したモビリティ・クラフトのロックを外し、身を乗り出して消えていく小さな光に向かって思い切り手を伸ばしたその時、誰かの腕がおれの体を引き留めた 0:  ロジー:あっ 0:  ロジー:- 引き留める腕は次第に増えた。事故処理に来た回収班の救護チームだった 0:  ロジー:やめてくれ、嫌だ、離してくれ! このままじゃ! 0:  ロジー:- おれは取り押さえられたまま、必死にもがいた。しかし、ハーネスを取り付けられた体は意思に反して少しずつ減速していく。 0:  ロジー:あ、 あ、 みんなが、 いってしまう、 消えてしまう 0:  ロジー:- 最後の一粒の光が消えた瞬間、全身の力がふわりと抜けた ロジー:- ただ視界だけが。 …みんなを吸い込んでいった闇に目を凝らしたまま、おれはされるがままに救護船へ引き込まれていった 0:  0:  0:  0: -テクニカルフロア フウガ機が拘留されたトリートメント・ドック- 0:  0:  0:  整備士:おーおー、見事に溶けたじゃないか。E56センサまで死んでる。 飛べるようになるには結構かかるよ?これは。 成層圏までダイブしたんだって? 大胆な選択肢だね、フウガ フウガ:ええ。 様々な事態が重なり、そうなりました 整備士:まったく。あたし達は毎日毎日、どの機体にだって万全の整備に誇りを賭けてるんだ。 だから自分の体をもっと大事にしてよ? フウガ:すみません。以後気をつけます 整備士:あっははは。AIもしょぼんとするんだ。でもなかなかとれない良いデータが見られそうだよ。精密検査が楽しみだ! メイヤード:ちょっと失礼するよ 整備士:? うわっ、 ちょちょちょちょちょっ! おっさん! だめだよ。ここ、関係者以外立ち入り禁止なんだけど? どっから入ったの メイヤード:んん? フウガ:これはこれは、メイヤード総括。わざわざお見舞いにいらしてくださるとは、大変恐縮です 整備士:ええっ?! 総括?! メイヤード:フウガ、お前が無事でなによりだ。システムに問題はなさそうだな フウガ:ええ。勿論です。システム、オールブルー。正常稼働しています。でなければ帰還できなかったでしょう メイヤード:そうだな 整備士:うあっちゃー、総括とは知らず失礼しました メイヤード:ふふふ、かまわんよ。確かにただのおっさんだ、総括という権限でここに入って来ちゃあいるがね 整備士:あー、えーーっとーーー…  すみません メイヤード:そう恐縮しなくてかまわん。今日は、ちょっと見てみたいパーツがあってね 整備士:? 見てみたいパーツですか? メイヤード:ああ。フウガの見舞いを口実にな フウガ:口実 メイヤード:わたしはお前さんの本体さえ無事ならそれでいい。それで、私が見てみたいパーツというのは、シリンダパーツのE57というものなのだが、どんなものかね 整備士:シリンダパーツの、E57(ごーなな)? メイヤード:ああ、E57シリンダパーツだ 整備士:E57… の、シリンダ…? メイヤード:んん? ここには置いていないのか? 整備士:E56とか… EM油圧用オイルの5753じゃなく? メイヤード:ああ、そうだな、違う。シリンダパーツのE57だ 整備士:そうですか・・・・うーん・・・ すみません、やっぱその品番、聞いたことないですね メイヤード:んん? 整備士:ええと。Eシリンダって、構造的に品番が全部偶数なんで、57はちょっと、考えられないですね メイヤード:そうか… いや、少し気になることがあってね、実物を見てみたいと思ったのだが… 無いというならかまわんさ 整備士:はあ。それ、どこから出てきたのかわかんないですけど、なんか間違いじゃないですか? メイヤード:そうか。そうかもしれないな。ありがとう。 要件はそれだけだ。 邪魔してすまなかったね 整備士:いえ… あっ ちょっと待って 間違い…? もしかしたら、あれかも…  メイヤード:うん? どうした 整備士:もしかしたらそのパーツ、ここじゃなくてラボのほうかも メイヤード:ラボ 整備士:あたし、ここに雇ってもらう前、中古パーツ屋にいたんです。そんとき、ヘンなパーツの箱があって メイヤード:ほう 整備士:品番が誤字ってる箱。 箱に書いてある中身の外観は普通に見たことあるやつなんですけど、微妙に違う品番になってて 整備士:中開けてみたら、全然違うのが出てきたんで、慌ててオーナーに報告したんですけどね メイヤード:ふむ 整備士:輸送を知られたくないAI関連のチップとか、特殊マテリアルを普通のパーツに偽装する素材があるんだ、って。そん時オーナーにめちゃくちゃ口止めされました メイヤード:それは、『闇』ということか? 整備士:やややや、そんなんじゃなくて。 あとでそのパーツ、フリーの技師が買ってったんですけど、海賊に襲われないための偽装としてその界隈では常識みたいでした メイヤード:ふぅむ。そうか… わかった。後でラボの方に行ってみることにしよう 整備士:すみません、E57がそれかどうかはわかりませんけど メイヤード:いやいや、充分だよ。ありがとう。仕事に戻ってくれ 0:  0:  0: - ロジー班 0:  0:  ロジー:ふふん。どうだ? リリ。 15パーセント、って予想だったが? リリ:…40%。 ロジー、いっしょにうごいてたのに、はんぶんちょっとしかへってない… ロジー:今はいろんな動きを試すのが大事だから、リリはそれでいいんだ。どんな動きでどれだけ減るのかがわかってくると、エアの無駄撃ちがなくなる。呼吸の仕方にしてもな。今は残量だけ気にして、好きに動けばいい リリ:わかった フウガ:ロジー、ちょっといいですか? ロジー:ん? なんだ? フウガ フウガ:すみません、あなたに少し話があります。リリ、申し訳ありませんが、少しだけ待っていてくれますか ロジー:フウガ、どんな話だ? リリはもう充分頼れるチームの一員だ。これからはどんな情報でも共有したい フウガ:そうですか。しかしこれはあなたのプライベートに深く関わることであり、このまま話を続けるとして、リリのために噛み砕かなければならない情報が多すぎます リリ:いいよ。わたし、そとにいる ロジー:そうかぁ… あ、聞かせらんないようなやつじゃないんだろ フウガ:ええ。その心配はありません ロジー:じゃ、リリはわからないなりに聴いててもいいし、聴いてなくてもいい。好きに過ごしててくれればいいさ リリ:ウン、わかった。 ふふ、きょう、ずっとあそんでてたのしい。おやすみのひみたい ロジー:そうだな、今のところリリの訓練くらいしかやることないし、お休みみたいなもんだ フウガ:ロジー? 始めていいですか? ロジー:あ、ああ。 0:  0:  0:  メイヤード:E56シリンダパーツ。 0:  メイヤード:航行ライセンスを持っていれば誰しも扱ったことがある、安価で日常的な部品の一つ メイヤード:E57もそれに類じたほぼ無価値な積み荷だろうと、安易に勝手な結論を下してしまう。 恐らく、誰もが メイヤード:『ローヴァーゲイル・キャラバン・ファミリー』も、同じように考え、この荷を受けたのだろう。何も知らずに 0:  メイヤード:E57シリンダパーツという名の箱。彼らはこれを運搬し、そしてナリタ・ステイション・ポートでたった1つを「抜き取り」された メイヤード:そしてその数ヶ月後、彼らは殲滅されたのだ 0:  0:  0:  ロジー:E57シリンダ? E系シリンダって言ったら、エレクトロ系センサーパーツだよな。急になんだよ、フウガ フウガ:先ほど、私の機体が格納されているトリートメント・ドックにメイヤード総括がいらっしゃいました ロジー:総括が? なんでまた フウガ:わたしの状態の視察を口実に、整備担当技師にあるパーツを見せて欲しいと ロジー:それがE57シリンダパーツってことか。総括はなんでそんなモノを。E系のシリンダなんてその辺に色々使われてるやつだろ フウガ:ええ。わたしも気になって、ライブラリを探ってみました ロジー:総括は何かの案件でそのパーツの記載を見つけて、確認しに来たのか リリ:・・・・・ふぅん? フウガ:検索の結果、ライブラリ中『E57シリンダパーツ』の記載があるのは、一件だけ フウガ:ローヴァーゲイル・キャラバン、セカンドフロンティア航路船団がナリタ・ステイション・ポートに提出した、盗難届です ロジー:ん? おれのいたキャラバンの? はー… やっぱり総括もローヴァーゲイル・キャラバンの事件を洗ってるのか…  フウガ:そのようです。 盗難届の日付は ロジー:っあ。わかった。あの時だ… ナリタで積み荷が抜き取りされたんだよ。確かナリタで卸すエルーシオのレアマテリアルが少し。 と、ナリタで荷受けしたなんてことない機械部品が1ケース フウガ:恐らくその件です リリ:・・・・・・ ふぅん…(退屈) ロジー:売りさばく価値もない安いパーツだったし、船のみんなで頭ひねったんだよな。なんであんなもんがって。 それで? フウガ:整備技師の答えは、アンノウンでした。 そんなパーツは存在しないと ロジー:存在しない。 ウードのおやっさん、書き間違えたのかな。 うーん…いや、それはないな。 積み荷の品名間違えるなんて、絶対ない フウガ:整備技師も、はじめは間違いの可能性を指摘しました。が、それをすぐに否定しました フウガ:彼女が言うには、輸送の安全のため、実際にはない品番をつけた汎用パーツに偽装する場合が、AI関連の技術者の中にあるのだということです。 ロジー、これをどう思いますか? ロジー:ふぅん…貴重なものを汎用パーツに偽装… ってことか …  リリ:・・・・・・・・ んんんんー フウガ:ええ。AI技術者が必要とする特殊な機材、情報の入ったメモリチップ、あるいは リリ:ね、トラちゃん、 そと、いこっか フウガ:非常に価値の高いエナジーマテリアル ロジー:…っ!  そうか、 そういう… ことだったのか…! フウガ:何か思い当たりましたか? ロジー:あれは…セカンドフロンティア。惑星エルーシオ近くの『ビット』に納入する個人配送の小包のひとつだった フウガ:ビット。人間が拠点にしている人工衛星を、セカンド・フロンティアではそう呼ぶそうですね。人工の街、施設、倉庫など。ここでは『フロート』と呼ばれるものですね。 ロジー:ああ。届け先は配送ターミナルのビット。 そこにからは小型船の宅配屋が他のビットに配達してまわる。そういうやつ ロジー:だけど… おれたちのキャラバンは… そこにたどり着く一歩手前で… 高速航路を出て… そのあと、…襲撃を受けた…  フウガ:なるほど。わかりました。 総括もその点に気がついたのですね ロジー:くっ… フウガ:ロジー? ロジー:そうか… あの箱が… おれたちのキャラバンを…  フウガ:ロジー、総括は、この情報をあなたと共有するつもりだったのでしょう。だから ロジー:くそっ… くそっ! ビットに卸したら見失っちまう。だからその前に仕掛けたんだ! おれたちの… おれの、家族を…! フウガ:ロジー、落ち着いてください ロジー:おれは落ち着いてる! フウガ:いいえロジー、あなたは(気が昂ぶっている、と言おうとして言葉を切る) フウガ:…あなたはもう、一人ではありません。わたしがいます ロジー:ああ? フウガ:わたしがいます。そして、リリも。私たちはチームです。あなたの家族です。そして一緒に追うことができる。あなたの苦しみも、リリの過去も ロジー:ああ (少し時間をかけて呼吸を整える) … そうだ。 そうだな。 お前がいて、リリもいる。 さっきは頼れるチームの一員とか言っておいて、情けないな フウガ:そうですね。少し頼りないリーダーです。 わたしたちを勝手に置いていかないでください? あなたはわたしたち『家族』の『柱』なのですから ロジー:おれが家族の・・・・ はしら…? って、フウガ、そんなセリフどっから拾ってくるんだよお前 フウガ:いろいろなところです。  ロジー:いろいろって… はー、でも ありがとな。おかげで頭冷えたみたいだ。ちょっと水でも飲んでくるよ っ … ん、あれ フウガ:どうかしましたか? ロジー:リリは? 0:  0:  0:  リリ:ふふ、トラちゃん、ここは、いいところだね リリ:だれにもなにも… きにしなくていい リリ:いたくされること、こわがらなくていい リリ:ひろくて、じゆうで… だれもいない 0:  リリ:でも… まっくら リリ:なのに、ここにうかぶものは、  リリ:ふねも… きちも … みんな… リリ:みんな、 みんなひかってみえるね リリ:どうして? リリ:わたしには、ひかりがみえないの? 0:  リリ:わたしが、『まっくら』… だから…? 0:  0:  フウガ:リリのウェアラブル端末情報ではこの室内にいることになっています ロジー:んん? …あちゃ、椅子の上! 外して置いたまんまだ。 あいつも水でも飲みに行ったのか? ったく、お休みみたい、とは言ったけど、一応勤務時間… フウガ:生体情報で探索します。リリを確認。 ロジー、あそこです! 外です! ロジー:うえ?! そ、外?! っ、あいつ、一人で! フウガ:リリは本当に宇宙が好きなのですね。 リリのウェアラブル端末から船外活動スーツの個別信号に入力を切り替えました。 音声による通信が可能です。 位置情報並びにバイタル情報、エア残量を取得。 0:  0:  リリ:あっ… 0:  リリ:ちいさい… ひかりのつぶが… きらきら… してる リリ:トラちゃん、みせてくれてるの? このうちゅうの …ほんとの  ひかり 0:  メイヤード:んん? なんだ、あれは… 0:  リリ:ふぁあ… きれいなひかり… そっか、『みんな』だね、トラちゃん リリ:『みんな』がわたしを… ううん、 わたしも… みんなと おなじように つつんでくれてるんだね… 0:  メイヤード:光っている。あれは リリ、 リリなのか? 0:  リリ:あかのひかり。 トラウィス。 もえる。 ねつのがいねん リリ:きんいろのひかり。イシュチュル。 ながれる。 りゅうし。 うんどうのがいねん リリ:あおのひかり。 カゥアーク。 うず。 かいてんする、しゃりん。 じかんのがいねん リリ:しろのひかり。 ムールーク。 しつりょう。グラビティ。 そんざいのがいねん リリ:いつだって… どこにだって… じかんもくうかんも… すべてをこえて そこにあるもの。 どこにでもみちているもの。 それは、『ほうそく』 0:  リリ:わたし、ここでは… ほかのひととちがくなんかない… そうなんだね、トラちゃん! 0:  メイヤード:あの光… あれは… 知っている。 ずっと昔… 私が見た光… そう、『トラウィス』を見つけた時の… あの光だ! 0:  ロジー:ったくあいつ… 確かにその辺で好きにしてって っあーーー! 0:  リリ:うふふ … ふふっ すてき … たのしい … あったかい リリ:まっくらい … こころのなかが… なにかでいっぱいになるみたい … 0:  フウガ:ロジー、リリを見てください。 とても、そう。 うつくしい。 そうですね。これはきっと『美しい』と言うのでしょう。 まるで、高い空を可憐に舞う、ゼフィルスのようです ロジー:あーーー  うん。 そうだな。 きれいだ。 まるで… そう、妖精が踊ってるみたいだ。 ん、フウガ。おれの目がおかしいのかな。 リリが動くと… 光の粉が散ってるみたいだ 0:  フウガ:私から見てリリの周囲を発光する粒子が取り巻いています。 赤、黄、青、白、4つの粒子を感知。 ロジー:危険か? うーん、多分『トラちゃん』だとは思うけどなあ フウガ:恐らくそうでしょう。未知の現象ですが熱反応はありません ロジー:あ、待て。フウガ フウガ:どうしましたか? ロジー:まさかと思うが、あいつ… ハーネスしてるか? 0:  0:  0:  リリ:うふふ リリ:こんなかんじ… きっとはじめて。 せかいがこんなにひろくて…  リリ:ふふ、たのしい。 『みんな』とずっといっしょがいい リリ:もっと、とおくに… いきたいな リリ:うん、いこう、トラちゃん。 ずっといっしょに… … … 0:  ロジー:あ! あいつ!  ダメだ… ! あれじゃ圏外に出ちまう! っ、フウガ 0:  メイヤード:! 光が離れていく! どうしたリリ、ロジー… ん フウガ:エマージェンシー。管制室、ロジー班、私用ライドクラフトの私用及び発進許可を申請します メイヤード:エマージェンシー? 0:  フウガ:ロジー、あなたのライドクラフトの発進許可が下りました。すぐに出られます ロジー:よっしゃフウガ、行ってくる! フウガ:私が迎えに行ければいいのですが…頼みましたよロジー、気をつけて。 リリの船外スーツの信号情報をあなたのライドクラフトへ転送しておきます ロジー:わかった! ロジー:…リリ、お前まで消えてくれるなよ … おれの前から! 0:  0:  リリ:うえもしたも、なにもない。 どんなふうにだって… なれる。 とても … いい、 きもち…  リリ:そう。  かも、しれない… これが。 『しあわせ』のきもち 0:  0:  ロジー:-きらきらしたものをまといながら遠ざかる小さな点が、否応なくあの日の光景と重なっていく 0:  リリ:わぁ… わくせいエデン… きれいだね、トラちゃん リリ:ほんぶきち、あんなに小さくなっちゃった。もっと、もっととおくにいこう? リリ:だれも、とどかないところに… ね? 0:  ロジー:もうたくさんだ! たくさんなんだよ! 光の粒を… ッ 追いかけるのは!  0:  フウガ:ロジー、管制室との回線が開いています ロジー:リリ、リリ! 今迎えに行く! フウガ:ロジー、ロジー? 管制室からの指示に応答してください 0:  0:  ロジー:育ったのは、大型の商船だった ロジー:両親は作業中の事故で亡くした ロジー:最寄りの停泊港で商船から追い出される子供のおれを見かねてか、キャプテン・ウードがおれを拾ってくれたんだ ロジー:ローヴァーゲイル・キャラバン。みんなと仲良くなれたわけじゃない。そりの合わなかった奴だっていた。 でもそれだって… それさえも! 0:  ロジー:ケンにもナユにも…ラドルにだってもっと優しくできたんだ。 おれは決して、いい兄貴分なんかじゃなかったよ! ほんとは… っ アーノルドさんみたいになりたかった! でも、おれは ロジー:ちょっとしたことでいらついて、意地悪したこともある。ひどい態度をとったことだって… たたいちまったことだってある! 0:  メイヤード:どうした フウガ:ロジーのメンタル波形が乱れています。 回線は双方向で正常に機能していますが、ロジーからの応答はありません 0:  ロジー:はあ、はあ… はぁ… はぁ まだだ… もっと … はやく ッ…! 0:  メイヤード:なんだと? ロジー、 おい、ロジー! 0:  ロジー:はやく、ッ ! はやく、 はやく、 はやく はやく! 0:  メイヤード:おい、救護班を準備! 管制室、呼びかけ続けろ、やつをなんとか引き戻せ! 0:  ロジー:ああああああ! 0:  0:  リリ:あ… エア… いつのまにか、こんなに少ない でも… リリ:ね、トラちゃん。 わたし、わたしね… ここで『みんな』ととけてしまえるなら… そのほうがいいかも、しれない 0:  0:  ロジー:両親の亡骸が宇宙に棄てられていく光を見送ったときも… 0:  リリ:ばいばい、ロジー、フウガ、メイヤード リリ:わたし、やっぱり、ひととはいられない。みんなとはいられない。 わたしは… そこにいないほうが… 0:  ロジー:ローヴァーゲイルの船を失ったときも! ロジー:おれは… ただ与えられた環境に甘えてただけだった みんなが作ってくれた優しさに… おれは… なにも返してなかった … なにも! ロジー:そんなのはもうごめんなんだ! 0:  リリ:どこにもいないほうが… いいよ リリ:トラちゃん、つれてって… だれも…とどかないところに 0:  0:  ロジー:うおおおおお! リリーーーーっ!!!! リリ:! (はっと我に返る) ろ、 じー… ? 0:  ロジー:光に手が… 届く! 0:  ロジー:(息を切らせている)はぁ… はぁ…  っ、リリ、 どこにも、行くな! おれの前から… もう誰も消えるな! リリ:ロジー… い、いたい… ロジー:あっ、 う… すまん …っ はーーー… ったく! 何してるんだよ、お前は! ほら、エア!(息を切らせている) リリ:ロジー? ロジー:なに(息を切らせている) リリ:… ないてる… の? ロジー:っあ… 泣いてるか? おれ リリ:・・・・・ロジー ロジー:っあ…! ごめんな、リリ。 消えてくお前を追いかけてたら…みんなのこと、思い出しちまって。 お前まで消えたらって思ったら… 怖くなって…  ロジー:はは。おかしいな! もっとこう、冷静に? 普通に? 迎えに来られるよな!   リリ:・・・・・ ロジー:二次遭難の危険だってあった。あー、ダメだな、おれ。ほんとに情けないや。冷静でなきゃいけない時に リリ:・・・・ ロジー:宙(そら)で生きてりゃ、こんなことなんてザラだってのに。仲間を、家族を失うなんて…ここじゃ特別なことなんかじゃないのさ ロジー:・・・・ただおれが。 乗り越えられないだけなんだ。はは リリ:…のりこえなくて、いい ロジー:ん リリ:のりこえなくていいよ。そんなこと ロジー:・・・・・・(深く息をつく) ロジー:(呟く)ありがとな、リリ。 っあーーーー!!! じゃ、帰るか。リリは後ろのシートに リリ:ね… つ、つかまってって… いい? ロジー:触って大丈夫なのか? リリ:だいじょうぶじゃない ロジー:おいおい リリ:でも、こうしてたい。いたいけど、すこしだけだから… がまんする ロジー:ん… じゃ、しっかり捕まってろよ? いつの間にかいないなんて、ごめんだからな リリ:もうそんなことしない。 ロジー、なくから ロジー:そうだぞ? おれが泣く リリ:・・・ろ、ロジー? ロジー:ん リリ:うれし、かった… どこにもいくなって… いって … くれて ロジー:お、おう。 あー。 なんか急に恥ずかしくなってきたな リリ:ふふっ ね、こののりもの、なに? かっこいい。 バイクみたい ロジー:あ? っふふー、 カッコいいだろ。 ロジー:モビリティ・クラフト。小型機の一種で『ライドクラフト』っていうんだ。クラフトシップ・レーシングの名チーム、サンストーン・クレアのリミテッドエディション、『イプシロン50th(フィフティース)』!  ロジー:はたちの時貯金して買ったおれの愛機だ。自前だぞ? ここの備品じゃないんだぞ? リリ:ふーん???  ロジー、こんなの、もってたんだ ロジー:あー、最近全然乗ってやれなかったからなー。 お、そうだ。次の休み、こいつで買い物でも行くか? 一緒に リリ:かいもの? ロジー:ああ。あっちのほうに新しいショッピングモールのフロートができたってさ。 リリもそろそろ新しい服とか買ったほうがいいだろ リリ:べつにいい。わたし、おかね、もってないし ロジー:んん? 何言ってるんだよ。 お前にもちゃあんと、給料入ってるぞ? リリ:えっ、 …そうなの? でも、わたし、メイヤードからもらったこと、ない。 ロジー:はは。総括が直接くれるわけじゃないさ。 あー、リリがいすの上に置いてったウェアラブル、あれに入るんだよ。帰ったら見てみるといい リリ:あ… しらなかった ロジー:いいか、リリ。 ウェアラブルはできるだけ身につけとけ。 それに買い物の時もそこから支払うからな? 宙運船の識別チップといっしょだ。あと リリ:あと? ロジー:フウガに、ちゃんと言うんだぞ? 「ごめんなさい」って。 総括には、おれが言っとく。 リリ:あ … っ … うん … あ う… …ろ、 ロジー、 ロジー:なんだ? リリ:ロジー・・・ご・・・ごめ、、ごめ、ん、なさ、 い… ふ… ううう…(泣きそう) ロジー:はいはい! ロジー:「おかえり、リリ」 リリ:ロジー、ただい…っ グスン ただっ… ふぇ… ただいまァアアアアー!(号泣) 0:  0:  メイヤード:(安堵の息)はーーーーーー…  フウガ:ロジーのメンタル値、回復。 総括、皆様、ご心配をおかけし申し訳ありませんでした メイヤード:ああ、いや。 かまわん。 事故がなければそれでいい。 救護班、元の業務に戻っていいぞ 0:  0: (総括室に赴くロジー) 0:  メイヤード:すまなかった ロジー:…え メイヤード:ロジー、辛い思いをさせたな ロジー:え、え、いやいやいや。 今回はおれの監督不行き届きで …って え、まさか え、総括? メイヤード:管制室からの呼びかけに一切応答しなかったからなあ ロジー:うえ?! っあーーー、  あああああーーー!!! え、 嘘ですよね メイヤード:(咳払い) まあ、 そういうことにしておきなさい ロジー:うああああ… ええと、 お見苦しいところを… メイヤード:いやいや。 私には何の話かさっぱりわからないな。 ああ、今度買い物、頼んだぞ。わたしもちょうど服を新調してやろうと思っていたところだ ロジー:あーーっ、やっぱ筒抜けじゃないですか! うわ、うわーーー… メイヤード:はっはっはっはっは ロジー:っはー…  それはそうと総括、ありがとうございました メイヤード:んん? 何のことかね。 ロジー:シリンダパーツの件ですよ。フウガを通して、教えてくれたんでしょう? メイヤード:そうか。お前たちにはすぐにわかってしまったか ロジー:そしてデータベースからロストしているリリに関する事件のデータも、総括が持っている メイヤード:ううむ ロジー:総括はなぜ、あの事件とリリについて調べているんですか? そしてどうしてそれを隠すんです メイヤード:・・・・それはだな… ロジー:あ、いや、すみません。 いいんです。今は知らなくとも メイヤード:んん? ロジー:今は公表できない理由があるんでしょう? データベースから抜き取ったのも、同じ目的の誰かからそれを守るためだ メイヤード:・・・ ロジー:待ってますよ、総括。 その時が来るのを。おれは、おれを… おれを救ってくれたあんたを信じてます 0:  0:  0:  フウガ:それで、言及しなかったのですか? ロジー ロジー:ああ。確かに総括はおれたちに何かを隠してる。いや、おれたちだけじゃなく、宙運連全体にだ フウガ:そうですね。彼は、宙運連そのものにに対しても、何かを隠蔽しています ロジー:でもな、フウガ。おれは信じることにしてる フウガ:信じる、ですか ロジー:総括が自分の思う何かを進めようとしてたとして、それはきっと悪い事じゃないってさ フウガ:ロジー ロジー:宙運私警団は、いい組織だよ。それはお前も感じてるだろ、フウガ フウガ:それは、…そうですね。 わたしはこの組織のために作られた、たとえばその事実が違ったとしても、わたしはここが好きです。 フウガ:わたしも、メイヤード総括が指揮するこの組織にいることを誇りと感じるくらいには、この組織を気に入っています ロジー:ふふっ。 総括も好きなんだよ。きっと ロジー:宙運船も、宙運航路も、そこにいる人たちも ロジー:宙運私警団がまだない頃、総括はフリーの護衛屋だったって聞いた。その時からずっと、きっとこの航路を行き交う船が、この宇宙が好きなんだよ。 みんなと同じようにさ フウガ:みんなと同じように、ですか? ロジー:ああ。みんな好きだよ。でなきゃ宇宙で仕事はできないさ。 宙(そら)での仕事ってさ、危険は多いが金持ちになれるわけじゃない。 ロジー:船のメンテ代、ポートの利用料、燃料代、クルーの食費と日用品、そういうのに大体消えちまう ロジー:宙が好きでもなけりゃ、海賊か、下に降りてるよ フウガ:なるほど ロジー:総括もそうだ。うまく説明できないしフウガにはわからないかもしれないが、好きでもなくてこの組織を作れっこない。 …おれはそう思う。だから、総括の考えてることは悪いことじゃない。そう信じることにしたよ フウガ:わかりました。 総括は、あなたにとって信頼における人物である、と ロジー:ああ。 だからお前も信じてくれ フウガ:了解しました。 わたしはあなたと共に総括の行動を信頼します ロジー:ありがとな、フウガ。 で、リリの様子はどうだ? フウガ:未だ目覚めません。 動悸が続いているものの、そのほかのバイタルは安定しています。 クリニックルームの担当医師の指示通り、明日の朝まで経過を観察します ロジー:ったく 無理するから。 たどり着いたとたんに… 0:  リリ:ただいま … フウガ… ごめん なさ … (バタリ) ロジー:うわあ?! リリが倒れたあ!! フウガ:リリ? リリ!! しっかりしてください! 0:  ロジー:だったもんなぁ… はあ、焦った フウガ:ええ。しかし ロジー:ん フウガ:リリは、「乗り越えなくてはならない」と思ったのかも知れませんね。 人と触れ合うことを。 ロジー:・・・・・ 乗り越えないといけない、か… それにしたって、… はぁ ロジー:ふあーーー、さて、おれはイプシロンの通信機能でもチェックしてから寝るかな! おっかしいな。整備はちゃんとしてたはずなんだけどなあ フウガ:残念ですが、通信機能は正しく動作していたことは発信中わたしが何度も確認していますし、あなたのメンタル値が異常な波形だった事も報告済みです。今日は早めに休むことをおすすめしますよ、ロジー ロジー:フウガ、追い打ちかけるのやめて 0:  0: (間 泣いているリリ) 0:  リリ:ううっ、 ぐすっ… ううう… メイヤード(謎の声・男):ごめんなさいだあ? だからどうしたってんだ、このくそガキ。 それで許されるつもりかよ リリ(謎の声・女):あああうるっさい!ギャアギャア泣きやがって。いいか、てめえでやったことはな 消えないんだよ 0:  リリ:・・・・パパ… ママ … … … ごめんな… さい… ごめん… なさい … 0:  0: (ベッドに転がるロジー) 0:  ロジー:あーーーー… ほんと今日は、とんだ1日だったよ 0:  ロジー:おやじとおふくろ、か… 0:  ロジー:大型商船の倉庫で起きた大火事。 作業員がたくさん…犠牲となった。 おやじとおふくろも 0:  ロジー:みんな、燃えた積み荷と一緒にばらばらと船から宙(そら)に棄てられていった。 多くはまだ、なんとか息があった 0: ロジー:真っ暗い中に、遠ざかっていく白点をみんなで見送った。 泣き叫ぶ声が溢れていた。 だれもみな、追いすがっていきたかった 0:  ロジー:宙運私警団がなかったあの頃、治療もできず、仕方がなかったってことは今ならわかる。 けど 0:  ロジー:… (深く長い息をつく) … いやな景色だ 0:  0:  0:  0: 法外宙域ローヴァーゲイル #7 『 グラビティ・ニル 』  - 終 -

メイヤード:5年前。 ローヴァーゲイルという一つの宙運キャラバンが、何者かにより殲滅された 0:  メイヤード:まずは地球とセカンドフロンティアを結ぶ第二航路船団が 0:  メイヤード:続いて、地球とファーストフロンティアを結ぶ第一航路船団、サードフロンティア航路開拓船が相次いで襲撃され、ローヴァーゲイルキャラバン・ファミリーは滅んだ 0:  メイヤード:最初に標的となった第二航路船団に一体何があったのか… それは恐らくこれだろう 0:  メイヤード:『E57(ごーなな)シリンダパーツ』 0:  メイヤード:ほぼ金銭的に無価値であろうこのありふれた機械部品は何故、ナリタ・ステイション・ポートで『抜き取り』されたのか 0:  メイヤード:ポートで取引される積み荷情報を盗み、海賊どもに情報を流す、通称『ホシ屋』は、何故このパーツに目をつけたのか 0:  0:  0:  フウガ:法外宙域ローヴァーゲイル ロジー:『グラビティ・ニル』 0:  0:  0:  リリ:うちゅう 0:  リリ:どこまでも… おわりなくつらなる…  …なみのかさなり。 ほしたちのグラビティ リリ:いま、わたし、そのなかのひとつになってる リリ:ここは『グラビティ・ゼロ』なんかじゃないね… 『なし』なんかじゃない… みんなとひとつになってる リリ: … だから … リリ:そう… 『NIL(ニル)』… … おおきなものも… ちいさなかけらも… わたしも …  リリ:みんなみんな、とけあって … グラビティのまにまに… 0:  リリ:ふふっ 0:  0:  ロジー:で、具合はどうなんだ? フウガ。 今、機体はドック入りして診てもらってるんだろ? フウガ:そうですね、ハウンドラプターに接触した擦り傷はたいしたことはありませんでしたが、大気圏、成層圏以下まで突入しましたから、外装はほとんど焼け落ちました。 フウガ:外装内部のE56シリンダセンサーユニットも大半を焼失。外装はすべてリペアです。私の機体は現在、トリートメントドックに収容されていますが、作業終了まではやや時間がかかりそうです ロジー:そうかぁー、まさか、あんなところで宇宙軍に襲撃されるとはね。総括のお目玉なしなのは良かったが、警戒の為しばらくはおれたち、内勤だって。あーあ フウガ:リペアが終わるまでは、どのみち外には出られませんしね ロジー:その間にリリの宇宙空間での活動訓練も進んでるわけだが、それにしてもすごいな、あいつ。恐れ知らずって言うか フウガ:そうですね。恐らく、『トラウィス』の力で自在に空間を行き来できるためと推測しますが、宇宙空間での彼女は、とても自由に見えます ロジー:ああ。まるで宙(そら)で生まれたみたいだ。動きの自在さだけで言ったらもう訓練っつーか、すでにただの外遊び リリ:ロジー、みてみて! こうやって… よいしょっ …こうするとね、くるってまわっても、ぴたってとまれる! ロジー:おー、すごいけどハーネスに気をつけてくれよ、絡むと大変だぞ あと通信だから。大きな声出さなくても普通に聞こえるからな? リリ:あそっか うー、でもこのひも、じゃま ロジー:ちょっ、リリ! こらこら、はずすんじゃないぞ?!  フウガ:ふふ。それに付き添うあなたは、まるでお父さんです。ロジー。 ロジー:ええ、フウガ、せめてお兄さんにして フウガ:ロジー、やはりあなたは子供あしらいがうまいのです。出会った頃のあなたは誰とも組まず、特に子供が嫌いなふりをしていました。でも、実際のあなたはそうではなく フウガ:…そうですね、特に子供との接し方にとても慣れている ロジー:・・・・・・ っ… そう、だったのなら、いいな 0:(間) フウガ:すみません。わたしは今、あなたに何かいけないことを言ってしまったようです ロジー:ん? はは。いや。なんでもない。 もしそう見えるとしたらそれは、おれを育ててくれたみんなのおかげだよ。 っと、それよりフウガ、リリはそろそろなんじゃないか? フウガ:ええ。そろそろ。リリのエア残量がラインを超えます ロジー:やっぱりね。 おーい、リリ。エア確認! リリ:えっ、もう? ロジー:もうだよ。いくつになってるか当ててやろうか。9か、そこまでじゃなけりゃ11パーセントくらいにはなってるだろ リリ:う、うう。ほんとだ フウガ:エア残量の規定は8から10パーセント。リリのエア残量は規定ラインを超えます。ハーネスケーブルに沿って帰還してください。トラちゃんで戻るのは、だめですよ ロジー:リリ、移動にエアを使いすぎてる。移動も呼吸も同じエアパックなんだ。残量の感覚を掴むのも大事な訓練だぞ? リリ:…はあい。 ね、ロジーはあとどのくらい? ロジーは、まだだいじょうぶなの? ロジー:んん? おれ? どのくらいだと思う? リリ:えっと、ロジーのほうが、こきゅうにつかってるエア、おおいよね。 でも、ずっとわたしのそばについててくれた… でも、ロジーのほうが、へってない… として、15パーセント、くらい? ロジー:15パーセントだな、よし。 戻ってフウガのモニタリングで確認してみるか。 フウガ:そういうところです、ロジー ロジー:ん? フウガ:いいえ。ロジー、あなたもリリに付いて帰還してくださいよ? ロジー:はいよっと 0:  0:  0:  ロジー:- 激しい爆発により飛び散ったカケラが、闇の中に溶けていく。 ロジー:- おれは反射的に、そのバラバラと闇に流れ出す白いカケラたちを追って飛んでいた。 ロジー:はやく、 はやく 、 はやく! ロジー:- エア残量アラームが鳴る。それでも追うことをやめたくなかった ロジー:- けれど… 爆発のエネルギーが産んだすさまじい慣性に追いつけるわけがなく、真っ白い光の粒は無情にも視界から少しずつ消えていく。 ロジー:まってくれ、この先に、みんなが…! おれたちのキャラバンが! 0:  ロジー:ケン! ロジー:っ …ナユ! 0:  ロジー:消えることのない慣性のまま、信じられない速度のままに、投げ出されたみんなの体が永遠にこの宙を飛び続けていくなんて 0:  ロジー:ハル、テレサさん ソフィおばさん… ゾア… レノじいさん… ヨン、アルファード、… おやっさん…! ロジー:ここから飛べば追いつけるかもしれない。せめて誰か一人でも! 0:  ロジー:- 限界まで加速したモビリティ・クラフトのロックを外し、身を乗り出して消えていく小さな光に向かって思い切り手を伸ばしたその時、誰かの腕がおれの体を引き留めた 0:  ロジー:あっ 0:  ロジー:- 引き留める腕は次第に増えた。事故処理に来た回収班の救護チームだった 0:  ロジー:やめてくれ、嫌だ、離してくれ! このままじゃ! 0:  ロジー:- おれは取り押さえられたまま、必死にもがいた。しかし、ハーネスを取り付けられた体は意思に反して少しずつ減速していく。 0:  ロジー:あ、 あ、 みんなが、 いってしまう、 消えてしまう 0:  ロジー:- 最後の一粒の光が消えた瞬間、全身の力がふわりと抜けた ロジー:- ただ視界だけが。 …みんなを吸い込んでいった闇に目を凝らしたまま、おれはされるがままに救護船へ引き込まれていった 0:  0:  0:  0: -テクニカルフロア フウガ機が拘留されたトリートメント・ドック- 0:  0:  0:  整備士:おーおー、見事に溶けたじゃないか。E56センサまで死んでる。 飛べるようになるには結構かかるよ?これは。 成層圏までダイブしたんだって? 大胆な選択肢だね、フウガ フウガ:ええ。 様々な事態が重なり、そうなりました 整備士:まったく。あたし達は毎日毎日、どの機体にだって万全の整備に誇りを賭けてるんだ。 だから自分の体をもっと大事にしてよ? フウガ:すみません。以後気をつけます 整備士:あっははは。AIもしょぼんとするんだ。でもなかなかとれない良いデータが見られそうだよ。精密検査が楽しみだ! メイヤード:ちょっと失礼するよ 整備士:? うわっ、 ちょちょちょちょちょっ! おっさん! だめだよ。ここ、関係者以外立ち入り禁止なんだけど? どっから入ったの メイヤード:んん? フウガ:これはこれは、メイヤード総括。わざわざお見舞いにいらしてくださるとは、大変恐縮です 整備士:ええっ?! 総括?! メイヤード:フウガ、お前が無事でなによりだ。システムに問題はなさそうだな フウガ:ええ。勿論です。システム、オールブルー。正常稼働しています。でなければ帰還できなかったでしょう メイヤード:そうだな 整備士:うあっちゃー、総括とは知らず失礼しました メイヤード:ふふふ、かまわんよ。確かにただのおっさんだ、総括という権限でここに入って来ちゃあいるがね 整備士:あー、えーーっとーーー…  すみません メイヤード:そう恐縮しなくてかまわん。今日は、ちょっと見てみたいパーツがあってね 整備士:? 見てみたいパーツですか? メイヤード:ああ。フウガの見舞いを口実にな フウガ:口実 メイヤード:わたしはお前さんの本体さえ無事ならそれでいい。それで、私が見てみたいパーツというのは、シリンダパーツのE57というものなのだが、どんなものかね 整備士:シリンダパーツの、E57(ごーなな)? メイヤード:ああ、E57シリンダパーツだ 整備士:E57… の、シリンダ…? メイヤード:んん? ここには置いていないのか? 整備士:E56とか… EM油圧用オイルの5753じゃなく? メイヤード:ああ、そうだな、違う。シリンダパーツのE57だ 整備士:そうですか・・・・うーん・・・ すみません、やっぱその品番、聞いたことないですね メイヤード:んん? 整備士:ええと。Eシリンダって、構造的に品番が全部偶数なんで、57はちょっと、考えられないですね メイヤード:そうか… いや、少し気になることがあってね、実物を見てみたいと思ったのだが… 無いというならかまわんさ 整備士:はあ。それ、どこから出てきたのかわかんないですけど、なんか間違いじゃないですか? メイヤード:そうか。そうかもしれないな。ありがとう。 要件はそれだけだ。 邪魔してすまなかったね 整備士:いえ… あっ ちょっと待って 間違い…? もしかしたら、あれかも…  メイヤード:うん? どうした 整備士:もしかしたらそのパーツ、ここじゃなくてラボのほうかも メイヤード:ラボ 整備士:あたし、ここに雇ってもらう前、中古パーツ屋にいたんです。そんとき、ヘンなパーツの箱があって メイヤード:ほう 整備士:品番が誤字ってる箱。 箱に書いてある中身の外観は普通に見たことあるやつなんですけど、微妙に違う品番になってて 整備士:中開けてみたら、全然違うのが出てきたんで、慌ててオーナーに報告したんですけどね メイヤード:ふむ 整備士:輸送を知られたくないAI関連のチップとか、特殊マテリアルを普通のパーツに偽装する素材があるんだ、って。そん時オーナーにめちゃくちゃ口止めされました メイヤード:それは、『闇』ということか? 整備士:やややや、そんなんじゃなくて。 あとでそのパーツ、フリーの技師が買ってったんですけど、海賊に襲われないための偽装としてその界隈では常識みたいでした メイヤード:ふぅむ。そうか… わかった。後でラボの方に行ってみることにしよう 整備士:すみません、E57がそれかどうかはわかりませんけど メイヤード:いやいや、充分だよ。ありがとう。仕事に戻ってくれ 0:  0:  0: - ロジー班 0:  0:  ロジー:ふふん。どうだ? リリ。 15パーセント、って予想だったが? リリ:…40%。 ロジー、いっしょにうごいてたのに、はんぶんちょっとしかへってない… ロジー:今はいろんな動きを試すのが大事だから、リリはそれでいいんだ。どんな動きでどれだけ減るのかがわかってくると、エアの無駄撃ちがなくなる。呼吸の仕方にしてもな。今は残量だけ気にして、好きに動けばいい リリ:わかった フウガ:ロジー、ちょっといいですか? ロジー:ん? なんだ? フウガ フウガ:すみません、あなたに少し話があります。リリ、申し訳ありませんが、少しだけ待っていてくれますか ロジー:フウガ、どんな話だ? リリはもう充分頼れるチームの一員だ。これからはどんな情報でも共有したい フウガ:そうですか。しかしこれはあなたのプライベートに深く関わることであり、このまま話を続けるとして、リリのために噛み砕かなければならない情報が多すぎます リリ:いいよ。わたし、そとにいる ロジー:そうかぁ… あ、聞かせらんないようなやつじゃないんだろ フウガ:ええ。その心配はありません ロジー:じゃ、リリはわからないなりに聴いててもいいし、聴いてなくてもいい。好きに過ごしててくれればいいさ リリ:ウン、わかった。 ふふ、きょう、ずっとあそんでてたのしい。おやすみのひみたい ロジー:そうだな、今のところリリの訓練くらいしかやることないし、お休みみたいなもんだ フウガ:ロジー? 始めていいですか? ロジー:あ、ああ。 0:  0:  0:  メイヤード:E56シリンダパーツ。 0:  メイヤード:航行ライセンスを持っていれば誰しも扱ったことがある、安価で日常的な部品の一つ メイヤード:E57もそれに類じたほぼ無価値な積み荷だろうと、安易に勝手な結論を下してしまう。 恐らく、誰もが メイヤード:『ローヴァーゲイル・キャラバン・ファミリー』も、同じように考え、この荷を受けたのだろう。何も知らずに 0:  メイヤード:E57シリンダパーツという名の箱。彼らはこれを運搬し、そしてナリタ・ステイション・ポートでたった1つを「抜き取り」された メイヤード:そしてその数ヶ月後、彼らは殲滅されたのだ 0:  0:  0:  ロジー:E57シリンダ? E系シリンダって言ったら、エレクトロ系センサーパーツだよな。急になんだよ、フウガ フウガ:先ほど、私の機体が格納されているトリートメント・ドックにメイヤード総括がいらっしゃいました ロジー:総括が? なんでまた フウガ:わたしの状態の視察を口実に、整備担当技師にあるパーツを見せて欲しいと ロジー:それがE57シリンダパーツってことか。総括はなんでそんなモノを。E系のシリンダなんてその辺に色々使われてるやつだろ フウガ:ええ。わたしも気になって、ライブラリを探ってみました ロジー:総括は何かの案件でそのパーツの記載を見つけて、確認しに来たのか リリ:・・・・・ふぅん? フウガ:検索の結果、ライブラリ中『E57シリンダパーツ』の記載があるのは、一件だけ フウガ:ローヴァーゲイル・キャラバン、セカンドフロンティア航路船団がナリタ・ステイション・ポートに提出した、盗難届です ロジー:ん? おれのいたキャラバンの? はー… やっぱり総括もローヴァーゲイル・キャラバンの事件を洗ってるのか…  フウガ:そのようです。 盗難届の日付は ロジー:っあ。わかった。あの時だ… ナリタで積み荷が抜き取りされたんだよ。確かナリタで卸すエルーシオのレアマテリアルが少し。 と、ナリタで荷受けしたなんてことない機械部品が1ケース フウガ:恐らくその件です リリ:・・・・・・ ふぅん…(退屈) ロジー:売りさばく価値もない安いパーツだったし、船のみんなで頭ひねったんだよな。なんであんなもんがって。 それで? フウガ:整備技師の答えは、アンノウンでした。 そんなパーツは存在しないと ロジー:存在しない。 ウードのおやっさん、書き間違えたのかな。 うーん…いや、それはないな。 積み荷の品名間違えるなんて、絶対ない フウガ:整備技師も、はじめは間違いの可能性を指摘しました。が、それをすぐに否定しました フウガ:彼女が言うには、輸送の安全のため、実際にはない品番をつけた汎用パーツに偽装する場合が、AI関連の技術者の中にあるのだということです。 ロジー、これをどう思いますか? ロジー:ふぅん…貴重なものを汎用パーツに偽装… ってことか …  リリ:・・・・・・・・ んんんんー フウガ:ええ。AI技術者が必要とする特殊な機材、情報の入ったメモリチップ、あるいは リリ:ね、トラちゃん、 そと、いこっか フウガ:非常に価値の高いエナジーマテリアル ロジー:…っ!  そうか、 そういう… ことだったのか…! フウガ:何か思い当たりましたか? ロジー:あれは…セカンドフロンティア。惑星エルーシオ近くの『ビット』に納入する個人配送の小包のひとつだった フウガ:ビット。人間が拠点にしている人工衛星を、セカンド・フロンティアではそう呼ぶそうですね。人工の街、施設、倉庫など。ここでは『フロート』と呼ばれるものですね。 ロジー:ああ。届け先は配送ターミナルのビット。 そこにからは小型船の宅配屋が他のビットに配達してまわる。そういうやつ ロジー:だけど… おれたちのキャラバンは… そこにたどり着く一歩手前で… 高速航路を出て… そのあと、…襲撃を受けた…  フウガ:なるほど。わかりました。 総括もその点に気がついたのですね ロジー:くっ… フウガ:ロジー? ロジー:そうか… あの箱が… おれたちのキャラバンを…  フウガ:ロジー、総括は、この情報をあなたと共有するつもりだったのでしょう。だから ロジー:くそっ… くそっ! ビットに卸したら見失っちまう。だからその前に仕掛けたんだ! おれたちの… おれの、家族を…! フウガ:ロジー、落ち着いてください ロジー:おれは落ち着いてる! フウガ:いいえロジー、あなたは(気が昂ぶっている、と言おうとして言葉を切る) フウガ:…あなたはもう、一人ではありません。わたしがいます ロジー:ああ? フウガ:わたしがいます。そして、リリも。私たちはチームです。あなたの家族です。そして一緒に追うことができる。あなたの苦しみも、リリの過去も ロジー:ああ (少し時間をかけて呼吸を整える) … そうだ。 そうだな。 お前がいて、リリもいる。 さっきは頼れるチームの一員とか言っておいて、情けないな フウガ:そうですね。少し頼りないリーダーです。 わたしたちを勝手に置いていかないでください? あなたはわたしたち『家族』の『柱』なのですから ロジー:おれが家族の・・・・ はしら…? って、フウガ、そんなセリフどっから拾ってくるんだよお前 フウガ:いろいろなところです。  ロジー:いろいろって… はー、でも ありがとな。おかげで頭冷えたみたいだ。ちょっと水でも飲んでくるよ っ … ん、あれ フウガ:どうかしましたか? ロジー:リリは? 0:  0:  0:  リリ:ふふ、トラちゃん、ここは、いいところだね リリ:だれにもなにも… きにしなくていい リリ:いたくされること、こわがらなくていい リリ:ひろくて、じゆうで… だれもいない 0:  リリ:でも… まっくら リリ:なのに、ここにうかぶものは、  リリ:ふねも… きちも … みんな… リリ:みんな、 みんなひかってみえるね リリ:どうして? リリ:わたしには、ひかりがみえないの? 0:  リリ:わたしが、『まっくら』… だから…? 0:  0:  フウガ:リリのウェアラブル端末情報ではこの室内にいることになっています ロジー:んん? …あちゃ、椅子の上! 外して置いたまんまだ。 あいつも水でも飲みに行ったのか? ったく、お休みみたい、とは言ったけど、一応勤務時間… フウガ:生体情報で探索します。リリを確認。 ロジー、あそこです! 外です! ロジー:うえ?! そ、外?! っ、あいつ、一人で! フウガ:リリは本当に宇宙が好きなのですね。 リリのウェアラブル端末から船外活動スーツの個別信号に入力を切り替えました。 音声による通信が可能です。 位置情報並びにバイタル情報、エア残量を取得。 0:  0:  リリ:あっ… 0:  リリ:ちいさい… ひかりのつぶが… きらきら… してる リリ:トラちゃん、みせてくれてるの? このうちゅうの …ほんとの  ひかり 0:  メイヤード:んん? なんだ、あれは… 0:  リリ:ふぁあ… きれいなひかり… そっか、『みんな』だね、トラちゃん リリ:『みんな』がわたしを… ううん、 わたしも… みんなと おなじように つつんでくれてるんだね… 0:  メイヤード:光っている。あれは リリ、 リリなのか? 0:  リリ:あかのひかり。 トラウィス。 もえる。 ねつのがいねん リリ:きんいろのひかり。イシュチュル。 ながれる。 りゅうし。 うんどうのがいねん リリ:あおのひかり。 カゥアーク。 うず。 かいてんする、しゃりん。 じかんのがいねん リリ:しろのひかり。 ムールーク。 しつりょう。グラビティ。 そんざいのがいねん リリ:いつだって… どこにだって… じかんもくうかんも… すべてをこえて そこにあるもの。 どこにでもみちているもの。 それは、『ほうそく』 0:  リリ:わたし、ここでは… ほかのひととちがくなんかない… そうなんだね、トラちゃん! 0:  メイヤード:あの光… あれは… 知っている。 ずっと昔… 私が見た光… そう、『トラウィス』を見つけた時の… あの光だ! 0:  ロジー:ったくあいつ… 確かにその辺で好きにしてって っあーーー! 0:  リリ:うふふ … ふふっ すてき … たのしい … あったかい リリ:まっくらい … こころのなかが… なにかでいっぱいになるみたい … 0:  フウガ:ロジー、リリを見てください。 とても、そう。 うつくしい。 そうですね。これはきっと『美しい』と言うのでしょう。 まるで、高い空を可憐に舞う、ゼフィルスのようです ロジー:あーーー  うん。 そうだな。 きれいだ。 まるで… そう、妖精が踊ってるみたいだ。 ん、フウガ。おれの目がおかしいのかな。 リリが動くと… 光の粉が散ってるみたいだ 0:  フウガ:私から見てリリの周囲を発光する粒子が取り巻いています。 赤、黄、青、白、4つの粒子を感知。 ロジー:危険か? うーん、多分『トラちゃん』だとは思うけどなあ フウガ:恐らくそうでしょう。未知の現象ですが熱反応はありません ロジー:あ、待て。フウガ フウガ:どうしましたか? ロジー:まさかと思うが、あいつ… ハーネスしてるか? 0:  0:  0:  リリ:うふふ リリ:こんなかんじ… きっとはじめて。 せかいがこんなにひろくて…  リリ:ふふ、たのしい。 『みんな』とずっといっしょがいい リリ:もっと、とおくに… いきたいな リリ:うん、いこう、トラちゃん。 ずっといっしょに… … … 0:  ロジー:あ! あいつ!  ダメだ… ! あれじゃ圏外に出ちまう! っ、フウガ 0:  メイヤード:! 光が離れていく! どうしたリリ、ロジー… ん フウガ:エマージェンシー。管制室、ロジー班、私用ライドクラフトの私用及び発進許可を申請します メイヤード:エマージェンシー? 0:  フウガ:ロジー、あなたのライドクラフトの発進許可が下りました。すぐに出られます ロジー:よっしゃフウガ、行ってくる! フウガ:私が迎えに行ければいいのですが…頼みましたよロジー、気をつけて。 リリの船外スーツの信号情報をあなたのライドクラフトへ転送しておきます ロジー:わかった! ロジー:…リリ、お前まで消えてくれるなよ … おれの前から! 0:  0:  リリ:うえもしたも、なにもない。 どんなふうにだって… なれる。 とても … いい、 きもち…  リリ:そう。  かも、しれない… これが。 『しあわせ』のきもち 0:  0:  ロジー:-きらきらしたものをまといながら遠ざかる小さな点が、否応なくあの日の光景と重なっていく 0:  リリ:わぁ… わくせいエデン… きれいだね、トラちゃん リリ:ほんぶきち、あんなに小さくなっちゃった。もっと、もっととおくにいこう? リリ:だれも、とどかないところに… ね? 0:  ロジー:もうたくさんだ! たくさんなんだよ! 光の粒を… ッ 追いかけるのは!  0:  フウガ:ロジー、管制室との回線が開いています ロジー:リリ、リリ! 今迎えに行く! フウガ:ロジー、ロジー? 管制室からの指示に応答してください 0:  0:  ロジー:育ったのは、大型の商船だった ロジー:両親は作業中の事故で亡くした ロジー:最寄りの停泊港で商船から追い出される子供のおれを見かねてか、キャプテン・ウードがおれを拾ってくれたんだ ロジー:ローヴァーゲイル・キャラバン。みんなと仲良くなれたわけじゃない。そりの合わなかった奴だっていた。 でもそれだって… それさえも! 0:  ロジー:ケンにもナユにも…ラドルにだってもっと優しくできたんだ。 おれは決して、いい兄貴分なんかじゃなかったよ! ほんとは… っ アーノルドさんみたいになりたかった! でも、おれは ロジー:ちょっとしたことでいらついて、意地悪したこともある。ひどい態度をとったことだって… たたいちまったことだってある! 0:  メイヤード:どうした フウガ:ロジーのメンタル波形が乱れています。 回線は双方向で正常に機能していますが、ロジーからの応答はありません 0:  ロジー:はあ、はあ… はぁ… はぁ まだだ… もっと … はやく ッ…! 0:  メイヤード:なんだと? ロジー、 おい、ロジー! 0:  ロジー:はやく、ッ ! はやく、 はやく、 はやく はやく! 0:  メイヤード:おい、救護班を準備! 管制室、呼びかけ続けろ、やつをなんとか引き戻せ! 0:  ロジー:ああああああ! 0:  0:  リリ:あ… エア… いつのまにか、こんなに少ない でも… リリ:ね、トラちゃん。 わたし、わたしね… ここで『みんな』ととけてしまえるなら… そのほうがいいかも、しれない 0:  0:  ロジー:両親の亡骸が宇宙に棄てられていく光を見送ったときも… 0:  リリ:ばいばい、ロジー、フウガ、メイヤード リリ:わたし、やっぱり、ひととはいられない。みんなとはいられない。 わたしは… そこにいないほうが… 0:  ロジー:ローヴァーゲイルの船を失ったときも! ロジー:おれは… ただ与えられた環境に甘えてただけだった みんなが作ってくれた優しさに… おれは… なにも返してなかった … なにも! ロジー:そんなのはもうごめんなんだ! 0:  リリ:どこにもいないほうが… いいよ リリ:トラちゃん、つれてって… だれも…とどかないところに 0:  0:  ロジー:うおおおおお! リリーーーーっ!!!! リリ:! (はっと我に返る) ろ、 じー… ? 0:  ロジー:光に手が… 届く! 0:  ロジー:(息を切らせている)はぁ… はぁ…  っ、リリ、 どこにも、行くな! おれの前から… もう誰も消えるな! リリ:ロジー… い、いたい… ロジー:あっ、 う… すまん …っ はーーー… ったく! 何してるんだよ、お前は! ほら、エア!(息を切らせている) リリ:ロジー? ロジー:なに(息を切らせている) リリ:… ないてる… の? ロジー:っあ… 泣いてるか? おれ リリ:・・・・・ロジー ロジー:っあ…! ごめんな、リリ。 消えてくお前を追いかけてたら…みんなのこと、思い出しちまって。 お前まで消えたらって思ったら… 怖くなって…  ロジー:はは。おかしいな! もっとこう、冷静に? 普通に? 迎えに来られるよな!   リリ:・・・・・ ロジー:二次遭難の危険だってあった。あー、ダメだな、おれ。ほんとに情けないや。冷静でなきゃいけない時に リリ:・・・・ ロジー:宙(そら)で生きてりゃ、こんなことなんてザラだってのに。仲間を、家族を失うなんて…ここじゃ特別なことなんかじゃないのさ ロジー:・・・・ただおれが。 乗り越えられないだけなんだ。はは リリ:…のりこえなくて、いい ロジー:ん リリ:のりこえなくていいよ。そんなこと ロジー:・・・・・・(深く息をつく) ロジー:(呟く)ありがとな、リリ。 っあーーーー!!! じゃ、帰るか。リリは後ろのシートに リリ:ね… つ、つかまってって… いい? ロジー:触って大丈夫なのか? リリ:だいじょうぶじゃない ロジー:おいおい リリ:でも、こうしてたい。いたいけど、すこしだけだから… がまんする ロジー:ん… じゃ、しっかり捕まってろよ? いつの間にかいないなんて、ごめんだからな リリ:もうそんなことしない。 ロジー、なくから ロジー:そうだぞ? おれが泣く リリ:・・・ろ、ロジー? ロジー:ん リリ:うれし、かった… どこにもいくなって… いって … くれて ロジー:お、おう。 あー。 なんか急に恥ずかしくなってきたな リリ:ふふっ ね、こののりもの、なに? かっこいい。 バイクみたい ロジー:あ? っふふー、 カッコいいだろ。 ロジー:モビリティ・クラフト。小型機の一種で『ライドクラフト』っていうんだ。クラフトシップ・レーシングの名チーム、サンストーン・クレアのリミテッドエディション、『イプシロン50th(フィフティース)』!  ロジー:はたちの時貯金して買ったおれの愛機だ。自前だぞ? ここの備品じゃないんだぞ? リリ:ふーん???  ロジー、こんなの、もってたんだ ロジー:あー、最近全然乗ってやれなかったからなー。 お、そうだ。次の休み、こいつで買い物でも行くか? 一緒に リリ:かいもの? ロジー:ああ。あっちのほうに新しいショッピングモールのフロートができたってさ。 リリもそろそろ新しい服とか買ったほうがいいだろ リリ:べつにいい。わたし、おかね、もってないし ロジー:んん? 何言ってるんだよ。 お前にもちゃあんと、給料入ってるぞ? リリ:えっ、 …そうなの? でも、わたし、メイヤードからもらったこと、ない。 ロジー:はは。総括が直接くれるわけじゃないさ。 あー、リリがいすの上に置いてったウェアラブル、あれに入るんだよ。帰ったら見てみるといい リリ:あ… しらなかった ロジー:いいか、リリ。 ウェアラブルはできるだけ身につけとけ。 それに買い物の時もそこから支払うからな? 宙運船の識別チップといっしょだ。あと リリ:あと? ロジー:フウガに、ちゃんと言うんだぞ? 「ごめんなさい」って。 総括には、おれが言っとく。 リリ:あ … っ … うん … あ う… …ろ、 ロジー、 ロジー:なんだ? リリ:ロジー・・・ご・・・ごめ、、ごめ、ん、なさ、 い… ふ… ううう…(泣きそう) ロジー:はいはい! ロジー:「おかえり、リリ」 リリ:ロジー、ただい…っ グスン ただっ… ふぇ… ただいまァアアアアー!(号泣) 0:  0:  メイヤード:(安堵の息)はーーーーーー…  フウガ:ロジーのメンタル値、回復。 総括、皆様、ご心配をおかけし申し訳ありませんでした メイヤード:ああ、いや。 かまわん。 事故がなければそれでいい。 救護班、元の業務に戻っていいぞ 0:  0: (総括室に赴くロジー) 0:  メイヤード:すまなかった ロジー:…え メイヤード:ロジー、辛い思いをさせたな ロジー:え、え、いやいやいや。 今回はおれの監督不行き届きで …って え、まさか え、総括? メイヤード:管制室からの呼びかけに一切応答しなかったからなあ ロジー:うえ?! っあーーー、  あああああーーー!!! え、 嘘ですよね メイヤード:(咳払い) まあ、 そういうことにしておきなさい ロジー:うああああ… ええと、 お見苦しいところを… メイヤード:いやいや。 私には何の話かさっぱりわからないな。 ああ、今度買い物、頼んだぞ。わたしもちょうど服を新調してやろうと思っていたところだ ロジー:あーーっ、やっぱ筒抜けじゃないですか! うわ、うわーーー… メイヤード:はっはっはっはっは ロジー:っはー…  それはそうと総括、ありがとうございました メイヤード:んん? 何のことかね。 ロジー:シリンダパーツの件ですよ。フウガを通して、教えてくれたんでしょう? メイヤード:そうか。お前たちにはすぐにわかってしまったか ロジー:そしてデータベースからロストしているリリに関する事件のデータも、総括が持っている メイヤード:ううむ ロジー:総括はなぜ、あの事件とリリについて調べているんですか? そしてどうしてそれを隠すんです メイヤード:・・・・それはだな… ロジー:あ、いや、すみません。 いいんです。今は知らなくとも メイヤード:んん? ロジー:今は公表できない理由があるんでしょう? データベースから抜き取ったのも、同じ目的の誰かからそれを守るためだ メイヤード:・・・ ロジー:待ってますよ、総括。 その時が来るのを。おれは、おれを… おれを救ってくれたあんたを信じてます 0:  0:  0:  フウガ:それで、言及しなかったのですか? ロジー ロジー:ああ。確かに総括はおれたちに何かを隠してる。いや、おれたちだけじゃなく、宙運連全体にだ フウガ:そうですね。彼は、宙運連そのものにに対しても、何かを隠蔽しています ロジー:でもな、フウガ。おれは信じることにしてる フウガ:信じる、ですか ロジー:総括が自分の思う何かを進めようとしてたとして、それはきっと悪い事じゃないってさ フウガ:ロジー ロジー:宙運私警団は、いい組織だよ。それはお前も感じてるだろ、フウガ フウガ:それは、…そうですね。 わたしはこの組織のために作られた、たとえばその事実が違ったとしても、わたしはここが好きです。 フウガ:わたしも、メイヤード総括が指揮するこの組織にいることを誇りと感じるくらいには、この組織を気に入っています ロジー:ふふっ。 総括も好きなんだよ。きっと ロジー:宙運船も、宙運航路も、そこにいる人たちも ロジー:宙運私警団がまだない頃、総括はフリーの護衛屋だったって聞いた。その時からずっと、きっとこの航路を行き交う船が、この宇宙が好きなんだよ。 みんなと同じようにさ フウガ:みんなと同じように、ですか? ロジー:ああ。みんな好きだよ。でなきゃ宇宙で仕事はできないさ。 宙(そら)での仕事ってさ、危険は多いが金持ちになれるわけじゃない。 ロジー:船のメンテ代、ポートの利用料、燃料代、クルーの食費と日用品、そういうのに大体消えちまう ロジー:宙が好きでもなけりゃ、海賊か、下に降りてるよ フウガ:なるほど ロジー:総括もそうだ。うまく説明できないしフウガにはわからないかもしれないが、好きでもなくてこの組織を作れっこない。 …おれはそう思う。だから、総括の考えてることは悪いことじゃない。そう信じることにしたよ フウガ:わかりました。 総括は、あなたにとって信頼における人物である、と ロジー:ああ。 だからお前も信じてくれ フウガ:了解しました。 わたしはあなたと共に総括の行動を信頼します ロジー:ありがとな、フウガ。 で、リリの様子はどうだ? フウガ:未だ目覚めません。 動悸が続いているものの、そのほかのバイタルは安定しています。 クリニックルームの担当医師の指示通り、明日の朝まで経過を観察します ロジー:ったく 無理するから。 たどり着いたとたんに… 0:  リリ:ただいま … フウガ… ごめん なさ … (バタリ) ロジー:うわあ?! リリが倒れたあ!! フウガ:リリ? リリ!! しっかりしてください! 0:  ロジー:だったもんなぁ… はあ、焦った フウガ:ええ。しかし ロジー:ん フウガ:リリは、「乗り越えなくてはならない」と思ったのかも知れませんね。 人と触れ合うことを。 ロジー:・・・・・ 乗り越えないといけない、か… それにしたって、… はぁ ロジー:ふあーーー、さて、おれはイプシロンの通信機能でもチェックしてから寝るかな! おっかしいな。整備はちゃんとしてたはずなんだけどなあ フウガ:残念ですが、通信機能は正しく動作していたことは発信中わたしが何度も確認していますし、あなたのメンタル値が異常な波形だった事も報告済みです。今日は早めに休むことをおすすめしますよ、ロジー ロジー:フウガ、追い打ちかけるのやめて 0:  0: (間 泣いているリリ) 0:  リリ:ううっ、 ぐすっ… ううう… メイヤード(謎の声・男):ごめんなさいだあ? だからどうしたってんだ、このくそガキ。 それで許されるつもりかよ リリ(謎の声・女):あああうるっさい!ギャアギャア泣きやがって。いいか、てめえでやったことはな 消えないんだよ 0:  リリ:・・・・パパ… ママ … … … ごめんな… さい… ごめん… なさい … 0:  0: (ベッドに転がるロジー) 0:  ロジー:あーーーー… ほんと今日は、とんだ1日だったよ 0:  ロジー:おやじとおふくろ、か… 0:  ロジー:大型商船の倉庫で起きた大火事。 作業員がたくさん…犠牲となった。 おやじとおふくろも 0:  ロジー:みんな、燃えた積み荷と一緒にばらばらと船から宙(そら)に棄てられていった。 多くはまだ、なんとか息があった 0: ロジー:真っ暗い中に、遠ざかっていく白点をみんなで見送った。 泣き叫ぶ声が溢れていた。 だれもみな、追いすがっていきたかった 0:  ロジー:宙運私警団がなかったあの頃、治療もできず、仕方がなかったってことは今ならわかる。 けど 0:  ロジー:… (深く長い息をつく) … いやな景色だ 0:  0:  0:  0: 法外宙域ローヴァーゲイル #7 『 グラビティ・ニル 』  - 終 -