台本概要

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タイトル 月光浴 ~夜のレシピ~
作者名 Danzig
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 ひとり読み(朗読)台本

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
語り 不問 -
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0: 0:月光浴(げっこうよく) 0: 0: 0: 0:月光浴について、少しの話をしましょう。 0: 0: 0:私は月光浴に幾つかの楽しみ方を持っている 0: 0: 0:月光浴に出かけるのに 0:本来、何も準備はいらない 0: 0:でも 0:準備をしても楽しいものがある 0: 0: 0:私は時折 0:紅茶を持って月光浴へ出かけていく。 0: 0: 0:水筒に紅茶を入れて持っていき 0:月の光に浄化された後に、それを飲む 0: 0:すると 0:何ともいえない贅沢な時間を過ごす事ができる。 0: 0: 0:月光浴には、やはり紅茶が似合うと、私は思う。 0: 0: 0:私は季節によって 0:月光浴に連れていく紅茶を変えている 0: 0:そして廻(めぐ)る季節を楽しむのなら 0:紅茶はダージリンがいいかな 0: 0: 0: 0: 0:春の夜の月光浴 0: 0: 0:春の夜の月光浴は 0: 0:まだ若い葉の香りと 0:淡い花の香の混じったような 0: 0:ふわりとした温かさと 0:透き通った冷たさを 0:幾重(いくえ)にも重ね合わせたような 0:そんな空気の中にいる 0: 0: 0:そんな夜には、 0:春摘(はるづ)みの 0:「ファーストフレッシュ」が、よく似合う 0: 0: 0:少し黄色の入った 0:淡いオレンジ色をしたこの紅茶は 0: 0:時に緑茶を思わせる青みが 0:若々しい緑や花々を想像させて 0: 0:春の匂いとよく合うと思う 0: 0: 0: 0:猫の恋 0:やむとき 閨(ねや)の 0:朧月(おぼろづき) 0: 0: 0:松尾芭蕉(まつおばしょう)も、 0:春の月を見て 0:人恋しさを詠(よ)んでいる。 0: 0: 0:春の夜空は霞(かすみ)がかかり 0:朧月(おぼろづき)になる事が多く 0: 0:幻想的(げんそうてき)な 0:雰囲気(ふんいき)を醸(かも)し出す。 0: 0: 0:なんとも人恋しく 0:趣(おもむき)のある季節 0: 0: 0:それが春の月光浴 0: 0: 0: 0: 0: 0:夏の夜の月光浴 0: 0: 0:夏の夜の月光浴は 0: 0:昼間に強い日差しに照らされて 0:色濃い緑の香りを放った草のそれが 0: 0:日暮れに和らぎ 0:夜と共にその香りを落ち着かせる 0: 0:重くのしかかるような空気を 0:草の香りのするその風が 0:押し退けていく 0: 0:そして 0:月の光が 0:少しの涼しさを感じさせてくれる 0: 0: 0:そんな夜には 0: 0:夏摘(なつづ)みの 0:「セカンドフレッシュ」がいいと思う 0: 0:力強いコクと 0:まるで成熟した果実を思わせる風味は 0: 0:夏の匂いに負けない 0:紅茶の楽しさを教えてくれる 0: 0: 0:そんな紅茶が、夏の夜にはよく似合う 0: 0: 0:「夏は夜、月のころはさらなり」と 0:枕草子(まくらのそうし)にも詠まれているように 0: 0:人は昔から夏の夜の月を楽しんでいた 0: 0: 0:夏の夜(よ)は 0:まだ 宵(よひ)ながら 0:明けぬるを 0:雲の いづこに 0:月 宿(やど)るらむ 0: 0: 0:これは、もう千年以上前に読まれた和歌 0: 0:夏の夜は明けるのが早い 0: 0:それが 0:どことなく儚(はかな)げな 0:雰囲気(ふんいき)を漂(ただよ)わせる 0: 0: 0:夏はそんな季節だと思う 0: 0: 0: 0:それが夏の月光浴 0: 0: 0: 0: 0: 0:秋の夜の月光浴 0: 0: 0:秋の夜の月光浴は 0: 0:夏の名残(なごり)と 0:冬の訪(おとず)れが交差する 0: 0:ふくよかな香りを帯びた空気 0: 0: 0:日ごとに乾(かわ)いていく風 0: 0:虫の声が混じり 0: 0:少し透明度が増したような温度のそれは 0: 0:清明(さやけ)さと 0:もの悲しさを感じさせる 0: 0:秋の夜長の月光浴 0: 0: 0:そんな夜には 0:秋摘(あきづ)みの 0:「オータムナル」はどうだろう 0: 0:赤味を帯びたオレンジ色は 0:花のような香りと 0:円熟したまろやかな、コクと甘み 0: 0:そして少しの渋みが溶け合い 0:長い夜をたっぷり楽しめる紅茶 0: 0: 0:香りの抜けやすいオータムナルは 0:この季節だけに輝(かがや)く 0:儚(はかな)げな茶葉(ちゃば) 0: 0:もの悲しい秋の風には、なんともよく似あう 0: 0:月と言えば秋と思うくらい 0:古来から秋と月は欠かせぬもの 0: 0:十三夜(じゅうさんや) 0:十六夜(いざよい) 0:立待月(たちまちづき) 0: 0:決して満月だけではない月の魅力 0: 0:秋には一層それを感じる 0: 0: 0:秋の夜の 0:月 まちかねて 0:おもひやる 0:こころ いくたび 0:山を こゆらむ 0: 0: 0:秋の月を詠んだ和歌はとても多く 0:中でも 0:月の出るのを待っている歌も数多い 0: 0:昔の人は 0:どれだけ秋の月を楽しんでいたのだろう 0: 0: 0:そんな事に 0:想いを馳(はせ)せる 0: 0:長い夜の秋の魅力 0: 0: 0:それが秋の月光浴 0: 0: 0: 0: 0: 0:冬の夜の月光浴 0: 0: 0:冬の夜の月光浴は 0: 0:ピンと張りつめた冷たさが覆(おお)う 0:限りなく透き通った空間。 0: 0:小さな音が 0:どこまでも届いていきそうな 0:冷えた空気。 0: 0:そんな夜は 0:月の引力までも感じてしまう感覚にとらわれる。 0: 0:全てが眠りにつくような 0:冬の夜に 0:私だけが月の光を浴びているという 0:特別な感じを味わえる月光浴 0: 0: 0:そんな夜には 0: 0:秋摘(あきづ)みの中でも 0:最後に摘(つ)まれる 0:「レイトハーベスト」がいいかもしれない 0: 0:もう冬茶(ふゆちゃ)と呼んでもよいこの紅茶は 0: 0:口の中に広がる 0:ほんのりとしながらも確かな甘さ 0: 0:後から追いかけてくるように 0:満たされていく複雑な香り 0: 0:全てが濃縮されたような 0:贅沢(ぜいたく)な味わい 0: 0:とてもレアなこの茶葉(ちゃば)は 0:寒い冬の中で 0:味だけではない贅沢感を与えてくれる 0: 0:そんな紅茶が冬の月光浴にはよく似合う 0: 0: 0:大空(おほぞら)の 0:月の光(ひかり)し 0:清(きよ)ければ 0:影見(かげみ)し 水ぞ 0:まづ こほりける 0: 0: 0:昔も今も 0:冬の月は清く澄んで美しく 0: 0:その光は 0:鋭(するど)く刺(さ)してくる事を知っている 0: 0:冬の月には 0:他の季節のように 0:身を投げ出して光を浴びるような 0:月光浴はできない 0: 0:でも 0:たとえ暖(あたた)かな恰好をして 0:毛布にくるまっていたとしても 0: 0:暖房の利いた車の中だったとしても 0: 0:冬の月の光は 0:確実に私の体をすり抜け 0: 0:そして 0:冬の空気と同じように 0: 0:私を透明にしてくれる 0: 0: 0:冬には 0:この季節にしか出来ない月光浴がある 0: 0: 0:それが冬の月光浴 0: 0: 0:月光浴 0: 0: 0:季節を廻(めぐ)り月を愛でる 0: 0:ロマンチックな夜のレシピ 0: 0: 0:完

0: 0: 0:月光浴(げっこうよく) 0: 0: 0: 0:月光浴について、少しの話をしましょう。 0: 0: 0:私は月光浴に幾つかの楽しみ方を持っている 0: 0: 0:月光浴に出かけるのに 0:本来、何も準備はいらない 0: 0:でも 0:準備をしても楽しいものがある 0: 0: 0:私は時折 0:紅茶を持って月光浴へ出かけていく。 0: 0: 0:水筒に紅茶を入れて持っていき 0:月の光に浄化された後に、それを飲む 0: 0:すると 0:何ともいえない贅沢な時間を過ごす事ができる。 0: 0: 0:月光浴には、やはり紅茶が似合うと、私は思う。 0: 0: 0:私は季節によって 0:月光浴に連れていく紅茶を変えている 0: 0:そして廻(めぐ)る季節を楽しむのなら 0:紅茶はダージリンがいいかな 0: 0: 0: 0: 0:春の夜の月光浴 0: 0: 0:春の夜の月光浴は 0: 0:まだ若い葉の香りと 0:淡い花の香の混じったような 0: 0:ふわりとした温かさと 0:透き通った冷たさを 0:幾重(いくえ)にも重ね合わせたような 0:そんな空気の中にいる 0: 0: 0:そんな夜には、 0:春摘(はるづ)みの 0:「ファーストフレッシュ」が、よく似合う 0: 0: 0:少し黄色の入った 0:淡いオレンジ色をしたこの紅茶は 0: 0:時に緑茶を思わせる青みが 0:若々しい緑や花々を想像させて 0: 0:春の匂いとよく合うと思う 0: 0: 0: 0:猫の恋 0:やむとき 閨(ねや)の 0:朧月(おぼろづき) 0: 0: 0:松尾芭蕉(まつおばしょう)も、 0:春の月を見て 0:人恋しさを詠(よ)んでいる。 0: 0: 0:春の夜空は霞(かすみ)がかかり 0:朧月(おぼろづき)になる事が多く 0: 0:幻想的(げんそうてき)な 0:雰囲気(ふんいき)を醸(かも)し出す。 0: 0: 0:なんとも人恋しく 0:趣(おもむき)のある季節 0: 0: 0:それが春の月光浴 0: 0: 0: 0: 0: 0:夏の夜の月光浴 0: 0: 0:夏の夜の月光浴は 0: 0:昼間に強い日差しに照らされて 0:色濃い緑の香りを放った草のそれが 0: 0:日暮れに和らぎ 0:夜と共にその香りを落ち着かせる 0: 0:重くのしかかるような空気を 0:草の香りのするその風が 0:押し退けていく 0: 0:そして 0:月の光が 0:少しの涼しさを感じさせてくれる 0: 0: 0:そんな夜には 0: 0:夏摘(なつづ)みの 0:「セカンドフレッシュ」がいいと思う 0: 0:力強いコクと 0:まるで成熟した果実を思わせる風味は 0: 0:夏の匂いに負けない 0:紅茶の楽しさを教えてくれる 0: 0: 0:そんな紅茶が、夏の夜にはよく似合う 0: 0: 0:「夏は夜、月のころはさらなり」と 0:枕草子(まくらのそうし)にも詠まれているように 0: 0:人は昔から夏の夜の月を楽しんでいた 0: 0: 0:夏の夜(よ)は 0:まだ 宵(よひ)ながら 0:明けぬるを 0:雲の いづこに 0:月 宿(やど)るらむ 0: 0: 0:これは、もう千年以上前に読まれた和歌 0: 0:夏の夜は明けるのが早い 0: 0:それが 0:どことなく儚(はかな)げな 0:雰囲気(ふんいき)を漂(ただよ)わせる 0: 0: 0:夏はそんな季節だと思う 0: 0: 0: 0:それが夏の月光浴 0: 0: 0: 0: 0: 0:秋の夜の月光浴 0: 0: 0:秋の夜の月光浴は 0: 0:夏の名残(なごり)と 0:冬の訪(おとず)れが交差する 0: 0:ふくよかな香りを帯びた空気 0: 0: 0:日ごとに乾(かわ)いていく風 0: 0:虫の声が混じり 0: 0:少し透明度が増したような温度のそれは 0: 0:清明(さやけ)さと 0:もの悲しさを感じさせる 0: 0:秋の夜長の月光浴 0: 0: 0:そんな夜には 0:秋摘(あきづ)みの 0:「オータムナル」はどうだろう 0: 0:赤味を帯びたオレンジ色は 0:花のような香りと 0:円熟したまろやかな、コクと甘み 0: 0:そして少しの渋みが溶け合い 0:長い夜をたっぷり楽しめる紅茶 0: 0: 0:香りの抜けやすいオータムナルは 0:この季節だけに輝(かがや)く 0:儚(はかな)げな茶葉(ちゃば) 0: 0:もの悲しい秋の風には、なんともよく似あう 0: 0:月と言えば秋と思うくらい 0:古来から秋と月は欠かせぬもの 0: 0:十三夜(じゅうさんや) 0:十六夜(いざよい) 0:立待月(たちまちづき) 0: 0:決して満月だけではない月の魅力 0: 0:秋には一層それを感じる 0: 0: 0:秋の夜の 0:月 まちかねて 0:おもひやる 0:こころ いくたび 0:山を こゆらむ 0: 0: 0:秋の月を詠んだ和歌はとても多く 0:中でも 0:月の出るのを待っている歌も数多い 0: 0:昔の人は 0:どれだけ秋の月を楽しんでいたのだろう 0: 0: 0:そんな事に 0:想いを馳(はせ)せる 0: 0:長い夜の秋の魅力 0: 0: 0:それが秋の月光浴 0: 0: 0: 0: 0: 0:冬の夜の月光浴 0: 0: 0:冬の夜の月光浴は 0: 0:ピンと張りつめた冷たさが覆(おお)う 0:限りなく透き通った空間。 0: 0:小さな音が 0:どこまでも届いていきそうな 0:冷えた空気。 0: 0:そんな夜は 0:月の引力までも感じてしまう感覚にとらわれる。 0: 0:全てが眠りにつくような 0:冬の夜に 0:私だけが月の光を浴びているという 0:特別な感じを味わえる月光浴 0: 0: 0:そんな夜には 0: 0:秋摘(あきづ)みの中でも 0:最後に摘(つ)まれる 0:「レイトハーベスト」がいいかもしれない 0: 0:もう冬茶(ふゆちゃ)と呼んでもよいこの紅茶は 0: 0:口の中に広がる 0:ほんのりとしながらも確かな甘さ 0: 0:後から追いかけてくるように 0:満たされていく複雑な香り 0: 0:全てが濃縮されたような 0:贅沢(ぜいたく)な味わい 0: 0:とてもレアなこの茶葉(ちゃば)は 0:寒い冬の中で 0:味だけではない贅沢感を与えてくれる 0: 0:そんな紅茶が冬の月光浴にはよく似合う 0: 0: 0:大空(おほぞら)の 0:月の光(ひかり)し 0:清(きよ)ければ 0:影見(かげみ)し 水ぞ 0:まづ こほりける 0: 0: 0:昔も今も 0:冬の月は清く澄んで美しく 0: 0:その光は 0:鋭(するど)く刺(さ)してくる事を知っている 0: 0:冬の月には 0:他の季節のように 0:身を投げ出して光を浴びるような 0:月光浴はできない 0: 0:でも 0:たとえ暖(あたた)かな恰好をして 0:毛布にくるまっていたとしても 0: 0:暖房の利いた車の中だったとしても 0: 0:冬の月の光は 0:確実に私の体をすり抜け 0: 0:そして 0:冬の空気と同じように 0: 0:私を透明にしてくれる 0: 0: 0:冬には 0:この季節にしか出来ない月光浴がある 0: 0: 0:それが冬の月光浴 0: 0: 0:月光浴 0: 0: 0:季節を廻(めぐ)り月を愛でる 0: 0:ロマンチックな夜のレシピ 0: 0: 0:完