台本概要

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タイトル 冬の月光浴
作者名 Danzig
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 ひとり読み(朗読)台本

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
語り 不問 -
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0:冬の月光浴 0: 0: 0:冬の夜 0: 0:眠れない、冬の夜がある 0:決して寒さのせいでなく 0: 0:真夜中になっても 0:眠りたくない気分がある 0: 0:そんな時には 0:私は車を走らせる 0: 0:ピンと張りつめた冷たさが覆(おお)う 0:限りなく透き通った空間。 0: 0:小さな音が 0:どこまでも届いていきそうな 0:冷えた空気。 0: 0:そんな冬の夜には 0:この時期だけの特別な楽しみがある 0: 0: 0:海岸線に車を止めて 0:車の中から外を眺(なが)める 0: 0:遮(さえぎ)るものの何もない 0:海の上に浮かぶ月 0: 0: 0:冬の月から溢(あふ)れる光は 0:どの季節よりも 0:鋭く私を刺してくる 0: 0:月光浴 0:月の光を浴びるそれは 0:私が私を楽しむ時間 0: 0:月光浴を楽しむ時 0:私はよく紅茶を飲む 0: 0:月の光を紅茶に溶かす 0:そんな飲み方が私は好きだ 0: 0:こんな冬の光には 0:とっておきの茶葉である 0:ダージリンの 0:レイトハーベストが良く似合う 0: 0:芳醇(ほうじゅん)で複雑な香りと甘み 0:他の茶葉よりも濃縮(のうしゅく)した味わい 0:とても贅沢な味覚のこれは 0:冬の夜空に良く似合う 0: 0: 0: 0:紅茶で身体が温まったころ 0:私は車の外に出る 0: 0:車の外は 0:冬の空気を肌で感じられる空間 0: 0:冷えた空気が、少し温まった私の身体を 0:引き裂くように爪を立てる 0: 0:しかし 0:そんな場所に身を置いてでも 0:月光を浴びる価値はあると思う 0: 0:透明な空気の中に浮かぶ光のそれは 0:引力さえも感じさせながら 0:私を貫(つらぬ)いていく 0: 0:白い息が、風の中に溶けていくように 0:私を透明に変えていく 0: 0: 0:そして透明感を感じたなら 0:車に戻って、紅茶をもう少し口にする 0: 0:茶葉の香りと 0:その湯気(ゆげ)が 0:ここが外とは別の空間だという事を教えてくれる 0: 0:後から追いかけて来る紅茶の熱と甘みが 0:冷えた身体を溶かしてくれる 0: 0: 0:身体が溶けきった頃に 0:胸に蟠(わだかま)る 0:幾(いく)つかの記憶たちが 0:まるで、あやふやだった約束のように 0:ふわりと想い浮かんでくる 0: 0:決して快(こころよ)いとは言えない 0:そんな記憶 0: 0:しかし月の光は、 0:その記憶の幻影(げんえい)を 0:ゆっくりと滲(にじ)ませて 0:遠くやすらかな思い出へと変えていく 0: 0:苦しみも、哀しみも、憂(うれ)いも、痛みも 0:まるで全てを許せるような 0:そんな気持ちにさせてくれる 0: 0: 0:紅茶を飲み干す頃に 0:私はもう一度ハンドルを握る 0: 0: 0:月光浴 0: 0:冬の 0:夜中の 0:特別な時間 0:

0: 0:冬の月光浴 0: 0: 0:冬の夜 0: 0:眠れない、冬の夜がある 0:決して寒さのせいでなく 0: 0:真夜中になっても 0:眠りたくない気分がある 0: 0:そんな時には 0:私は車を走らせる 0: 0:ピンと張りつめた冷たさが覆(おお)う 0:限りなく透き通った空間。 0: 0:小さな音が 0:どこまでも届いていきそうな 0:冷えた空気。 0: 0:そんな冬の夜には 0:この時期だけの特別な楽しみがある 0: 0: 0:海岸線に車を止めて 0:車の中から外を眺(なが)める 0: 0:遮(さえぎ)るものの何もない 0:海の上に浮かぶ月 0: 0: 0:冬の月から溢(あふ)れる光は 0:どの季節よりも 0:鋭く私を刺してくる 0: 0:月光浴 0:月の光を浴びるそれは 0:私が私を楽しむ時間 0: 0:月光浴を楽しむ時 0:私はよく紅茶を飲む 0: 0:月の光を紅茶に溶かす 0:そんな飲み方が私は好きだ 0: 0:こんな冬の光には 0:とっておきの茶葉である 0:ダージリンの 0:レイトハーベストが良く似合う 0: 0:芳醇(ほうじゅん)で複雑な香りと甘み 0:他の茶葉よりも濃縮(のうしゅく)した味わい 0:とても贅沢な味覚のこれは 0:冬の夜空に良く似合う 0: 0: 0: 0:紅茶で身体が温まったころ 0:私は車の外に出る 0: 0:車の外は 0:冬の空気を肌で感じられる空間 0: 0:冷えた空気が、少し温まった私の身体を 0:引き裂くように爪を立てる 0: 0:しかし 0:そんな場所に身を置いてでも 0:月光を浴びる価値はあると思う 0: 0:透明な空気の中に浮かぶ光のそれは 0:引力さえも感じさせながら 0:私を貫(つらぬ)いていく 0: 0:白い息が、風の中に溶けていくように 0:私を透明に変えていく 0: 0: 0:そして透明感を感じたなら 0:車に戻って、紅茶をもう少し口にする 0: 0:茶葉の香りと 0:その湯気(ゆげ)が 0:ここが外とは別の空間だという事を教えてくれる 0: 0:後から追いかけて来る紅茶の熱と甘みが 0:冷えた身体を溶かしてくれる 0: 0: 0:身体が溶けきった頃に 0:胸に蟠(わだかま)る 0:幾(いく)つかの記憶たちが 0:まるで、あやふやだった約束のように 0:ふわりと想い浮かんでくる 0: 0:決して快(こころよ)いとは言えない 0:そんな記憶 0: 0:しかし月の光は、 0:その記憶の幻影(げんえい)を 0:ゆっくりと滲(にじ)ませて 0:遠くやすらかな思い出へと変えていく 0: 0:苦しみも、哀しみも、憂(うれ)いも、痛みも 0:まるで全てを許せるような 0:そんな気持ちにさせてくれる 0: 0: 0:紅茶を飲み干す頃に 0:私はもう一度ハンドルを握る 0: 0: 0:月光浴 0: 0:冬の 0:夜中の 0:特別な時間 0: