台本概要

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タイトル 眠れない夜(一人称「僕」バージョン)
作者名 Danzig
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 ひとり読み(朗読)台本
この作品には、一人称が「僕」と「私」の2つのバージョンがあります。
読み手さんの都合で選んでください。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
語り 不問 -
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0:眠れない夜がある 0: 0:特に何があるわけでもなく 0:眠たくないわけでもない 0:でも、なぜだか 0:眠れない夜がある 0: 0:何かの予感のような 0:胸騒ぎのような 0:そんな気持ちの高ぶりもなく 0:ただ、眠れない夜がある 0: 0:そんな夜は 0:無理に抗(あらが)う事をせず、紅茶を一杯入れる事にしている 0:こういう時は、僕の好きなセイロンに少しだけ砂糖を入れる 0:いつもは入れない甘みが、不思議な時間に誘ってくれるような気がするから 0:明日の事は考えず、ただ「夜」という時間に心をゆだねる。 0: 0:そして、ベランダに椅子を出し、のんびりと星空を眺めてみる 0:どこまでも続いているだろう、この星空の下のどこかに 0:君がいる事を想いながら 0: 0:君は今 0:どこで何をしているのだろうか 0:君のいる場所は 0:今は昼間なのだろうか 0:それとも夜だろうか 0:もし夜だとしたら 0:君は僕と同じこの星空を見ているだろうか 0:そんな事に想いを馳(は)せる・・・ 0: 0:君が旅に出ると言い出した時、僕は正直驚いた 0:自分の事を「寂しがりやで、一人が嫌い」 0:そう言っていた君が、まさか旅に出るなんて 0: 0:君のいない時間は 0:もう三か月ほどになるだろうか 0:君のいないこの空間には 0:君の気配のするものが2つある 0:君が僕にくれた2通の便(たよ)り 0: 0:一つは、君が旅立だった直ぐ後に、僕に届いたもの 0: 0:君が教えてくれた旅立ちの日 0:僕は君のアパートに君を見送りに行った 0:でも、君はもうそこにはいなかった 0:慌てて空港にも行ってみた 0:空港を隅々まで探し回ったけれど、 0:僕は君を見つける事は出来なかった 0: 0:残念な思いを抱えながら部屋に帰ると、 0:君からの手紙がポストに届いていた 0: 0: 0:拝啓、友人殿 0:君を騙(だま)すように、旅立つ僕を許して欲しい 0:君は強くて優しい人だから 0:別れ際には、きっと僕に、笑顔を見せてくれると思う 0:でも、君の笑顔はきっと 0:僕の旅の終わりを早めてしまうだろう 0:僕は目的を終えるまで、何とか旅を続けたい 0:僕は弱い人間だから 0:今は、君の笑顔から逃げる事にするよ 0: 0: 0:そんな手紙だった 0:この手紙を受け取った時 0:君が教えてくれた旅立ちの日が嘘だったという事に気が付いた 0:君らしいといえば、君らしいのかな 0: 0:眠れない夜には、僕はこの手紙を読み返す 0:そして、紅茶を少し口にしながらいつも思う 0: 0:僕は君が思うほど強い人間ではないのだけどなぁ・・・ 0: 0:でもやはり、君の言う通り 0:僕は別れ際には、きっと笑顔を見せていただろう 0:だって、君の旅立ちなのだから・・・ 0:何度読み返しても答えは変わらない 0: 0:そして、もう少し紅茶を口にする。 0: 0:君の旅の目的とは、一体何だったのだろう 0:何かを知る為なのか 0:何かを忘れる為なのか 0:それとも 0:何かを得る為なのか 0:何かを棄てる為なのか 0:その目的はいつ終わりを迎えるのだろうか 0: 0:そんな 0:君しか持っていない筈(はず)のその答えを 0:この手紙を読む度に 0:星空の下でいつも僕は考える 0: 0:この国で君の目的が果たせないのは 0:ひょっとして 0:僕がいるからなのだろうか 0:だとしたら 0:君にとっての僕とは 0:どんな存在なのだろう 0:そんな想いが何度も頭を過(よぎ)る 0: 0:やっぱり、僕たちは少し離れた方がよかったのだろうか 0: 0:そう思う時 0:僕はもう一つのはがきを読む 0:もう一つの便りは、 0:君が旅立って二か月程してから届いたもの 0: 0:どこにでもありそうな 0:海辺の町の絵ハガキに 0:ただ一行 0:『元気かい?僕は元気でいるよ』 0:とだけ書かれている 0: 0:まるで小説にでも出てくるようなこの便りに 0:とても君らしさを感じて微笑ましくなる 0: 0:それと同時に 0:この気の置けない友からの手紙が 0:「あんまり考えすぎないで」 0:と言ってくれているようで、少し気持ちが落ち着く 0: 0:そして、紅茶をもう少し口にする。 0: 0:このはがきの消印(けしいん)は見ないようにしておくよ 0:消印を調べてしまうと 0:もう君が便りを出さなくなってしまうような気がする 0:そしてそれが 0:君と僕とのルールのような 0:そんな気がしているから 0: 0:ただ僕は君の無事だけを祈る事にするよ 0: 0:紅茶がなくなる頃 0:そろそろ眠りにつくようにベッドに入る 0:まだ暫くは眠れないかもしれないけれど 0:星空と君を重ね合わせながら 0:眠るまで目を閉じている事にするよ 0: 0:旅先の君に 0:僕が届けられるものは何もないけれど 0:今日は小さな灯りをともしたまま 0:眠ることにするよ 0: 0:完

0: 0:眠れない夜がある 0: 0:特に何があるわけでもなく 0:眠たくないわけでもない 0:でも、なぜだか 0:眠れない夜がある 0: 0:何かの予感のような 0:胸騒ぎのような 0:そんな気持ちの高ぶりもなく 0:ただ、眠れない夜がある 0: 0:そんな夜は 0:無理に抗(あらが)う事をせず、紅茶を一杯入れる事にしている 0:こういう時は、僕の好きなセイロンに少しだけ砂糖を入れる 0:いつもは入れない甘みが、不思議な時間に誘ってくれるような気がするから 0:明日の事は考えず、ただ「夜」という時間に心をゆだねる。 0: 0:そして、ベランダに椅子を出し、のんびりと星空を眺めてみる 0:どこまでも続いているだろう、この星空の下のどこかに 0:君がいる事を想いながら 0: 0:君は今 0:どこで何をしているのだろうか 0:君のいる場所は 0:今は昼間なのだろうか 0:それとも夜だろうか 0:もし夜だとしたら 0:君は僕と同じこの星空を見ているだろうか 0:そんな事に想いを馳(は)せる・・・ 0: 0:君が旅に出ると言い出した時、僕は正直驚いた 0:自分の事を「寂しがりやで、一人が嫌い」 0:そう言っていた君が、まさか旅に出るなんて 0: 0:君のいない時間は 0:もう三か月ほどになるだろうか 0:君のいないこの空間には 0:君の気配のするものが2つある 0:君が僕にくれた2通の便(たよ)り 0: 0:一つは、君が旅立だった直ぐ後に、僕に届いたもの 0: 0:君が教えてくれた旅立ちの日 0:僕は君のアパートに君を見送りに行った 0:でも、君はもうそこにはいなかった 0:慌てて空港にも行ってみた 0:空港を隅々まで探し回ったけれど、 0:僕は君を見つける事は出来なかった 0: 0:残念な思いを抱えながら部屋に帰ると、 0:君からの手紙がポストに届いていた 0: 0: 0:拝啓、友人殿 0:君を騙(だま)すように、旅立つ僕を許して欲しい 0:君は強くて優しい人だから 0:別れ際には、きっと僕に、笑顔を見せてくれると思う 0:でも、君の笑顔はきっと 0:僕の旅の終わりを早めてしまうだろう 0:僕は目的を終えるまで、何とか旅を続けたい 0:僕は弱い人間だから 0:今は、君の笑顔から逃げる事にするよ 0: 0: 0:そんな手紙だった 0:この手紙を受け取った時 0:君が教えてくれた旅立ちの日が嘘だったという事に気が付いた 0:君らしいといえば、君らしいのかな 0: 0:眠れない夜には、僕はこの手紙を読み返す 0:そして、紅茶を少し口にしながらいつも思う 0: 0:僕は君が思うほど強い人間ではないのだけどなぁ・・・ 0: 0:でもやはり、君の言う通り 0:僕は別れ際には、きっと笑顔を見せていただろう 0:だって、君の旅立ちなのだから・・・ 0:何度読み返しても答えは変わらない 0: 0:そして、もう少し紅茶を口にする。 0: 0:君の旅の目的とは、一体何だったのだろう 0:何かを知る為なのか 0:何かを忘れる為なのか 0:それとも 0:何かを得る為なのか 0:何かを棄てる為なのか 0:その目的はいつ終わりを迎えるのだろうか 0: 0:そんな 0:君しか持っていない筈(はず)のその答えを 0:この手紙を読む度に 0:星空の下でいつも僕は考える 0: 0:この国で君の目的が果たせないのは 0:ひょっとして 0:僕がいるからなのだろうか 0:だとしたら 0:君にとっての僕とは 0:どんな存在なのだろう 0:そんな想いが何度も頭を過(よぎ)る 0: 0:やっぱり、僕たちは少し離れた方がよかったのだろうか 0: 0:そう思う時 0:僕はもう一つのはがきを読む 0:もう一つの便りは、 0:君が旅立って二か月程してから届いたもの 0: 0:どこにでもありそうな 0:海辺の町の絵ハガキに 0:ただ一行 0:『元気かい?僕は元気でいるよ』 0:とだけ書かれている 0: 0:まるで小説にでも出てくるようなこの便りに 0:とても君らしさを感じて微笑ましくなる 0: 0:それと同時に 0:この気の置けない友からの手紙が 0:「あんまり考えすぎないで」 0:と言ってくれているようで、少し気持ちが落ち着く 0: 0:そして、紅茶をもう少し口にする。 0: 0:このはがきの消印(けしいん)は見ないようにしておくよ 0:消印を調べてしまうと 0:もう君が便りを出さなくなってしまうような気がする 0:そしてそれが 0:君と僕とのルールのような 0:そんな気がしているから 0: 0:ただ僕は君の無事だけを祈る事にするよ 0: 0:紅茶がなくなる頃 0:そろそろ眠りにつくようにベッドに入る 0:まだ暫くは眠れないかもしれないけれど 0:星空と君を重ね合わせながら 0:眠るまで目を閉じている事にするよ 0: 0:旅先の君に 0:僕が届けられるものは何もないけれど 0:今日は小さな灯りをともしたまま 0:眠ることにするよ 0: 0:完