台本概要
183 views
タイトル | 眠れない夜(一人称「僕」バージョン) |
---|---|
作者名 | Danzig |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 1人用台本(不問1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず連絡不要 |
説明 |
ひとり読み(朗読)台本 この作品には、一人称が「僕」と「私」の2つのバージョンがあります。 読み手さんの都合で選んでください。 183 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
語り | 不問 | - |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:
0:眠れない夜がある
0:
0:特に何があるわけでもなく
0:眠たくないわけでもない
0:でも、なぜだか
0:眠れない夜がある
0:
0:何かの予感のような
0:胸騒ぎのような
0:そんな気持ちの高ぶりもなく
0:ただ、眠れない夜がある
0:
0:そんな夜は
0:無理に抗(あらが)う事をせず、紅茶を一杯入れる事にしている
0:こういう時は、僕の好きなセイロンに少しだけ砂糖を入れる
0:いつもは入れない甘みが、不思議な時間に誘ってくれるような気がするから
0:明日の事は考えず、ただ「夜」という時間に心をゆだねる。
0:
0:そして、ベランダに椅子を出し、のんびりと星空を眺めてみる
0:どこまでも続いているだろう、この星空の下のどこかに
0:君がいる事を想いながら
0:
0:君は今
0:どこで何をしているのだろうか
0:君のいる場所は
0:今は昼間なのだろうか
0:それとも夜だろうか
0:もし夜だとしたら
0:君は僕と同じこの星空を見ているだろうか
0:そんな事に想いを馳(は)せる・・・
0:
0:君が旅に出ると言い出した時、僕は正直驚いた
0:自分の事を「寂しがりやで、一人が嫌い」
0:そう言っていた君が、まさか旅に出るなんて
0:
0:君のいない時間は
0:もう三か月ほどになるだろうか
0:君のいないこの空間には
0:君の気配のするものが2つある
0:君が僕にくれた2通の便(たよ)り
0:
0:一つは、君が旅立だった直ぐ後に、僕に届いたもの
0:
0:君が教えてくれた旅立ちの日
0:僕は君のアパートに君を見送りに行った
0:でも、君はもうそこにはいなかった
0:慌てて空港にも行ってみた
0:空港を隅々まで探し回ったけれど、
0:僕は君を見つける事は出来なかった
0:
0:残念な思いを抱えながら部屋に帰ると、
0:君からの手紙がポストに届いていた
0:
0:
0:拝啓、友人殿
0:君を騙(だま)すように、旅立つ僕を許して欲しい
0:君は強くて優しい人だから
0:別れ際には、きっと僕に、笑顔を見せてくれると思う
0:でも、君の笑顔はきっと
0:僕の旅の終わりを早めてしまうだろう
0:僕は目的を終えるまで、何とか旅を続けたい
0:僕は弱い人間だから
0:今は、君の笑顔から逃げる事にするよ
0:
0:
0:そんな手紙だった
0:この手紙を受け取った時
0:君が教えてくれた旅立ちの日が嘘だったという事に気が付いた
0:君らしいといえば、君らしいのかな
0:
0:眠れない夜には、僕はこの手紙を読み返す
0:そして、紅茶を少し口にしながらいつも思う
0:
0:僕は君が思うほど強い人間ではないのだけどなぁ・・・
0:
0:でもやはり、君の言う通り
0:僕は別れ際には、きっと笑顔を見せていただろう
0:だって、君の旅立ちなのだから・・・
0:何度読み返しても答えは変わらない
0:
0:そして、もう少し紅茶を口にする。
0:
0:君の旅の目的とは、一体何だったのだろう
0:何かを知る為なのか
0:何かを忘れる為なのか
0:それとも
0:何かを得る為なのか
0:何かを棄てる為なのか
0:その目的はいつ終わりを迎えるのだろうか
0:
0:そんな
0:君しか持っていない筈(はず)のその答えを
0:この手紙を読む度に
0:星空の下でいつも僕は考える
0:
0:この国で君の目的が果たせないのは
0:ひょっとして
0:僕がいるからなのだろうか
0:だとしたら
0:君にとっての僕とは
0:どんな存在なのだろう
0:そんな想いが何度も頭を過(よぎ)る
0:
0:やっぱり、僕たちは少し離れた方がよかったのだろうか
0:
0:そう思う時
0:僕はもう一つのはがきを読む
0:もう一つの便りは、
0:君が旅立って二か月程してから届いたもの
0:
0:どこにでもありそうな
0:海辺の町の絵ハガキに
0:ただ一行
0:『元気かい?僕は元気でいるよ』
0:とだけ書かれている
0:
0:まるで小説にでも出てくるようなこの便りに
0:とても君らしさを感じて微笑ましくなる
0:
0:それと同時に
0:この気の置けない友からの手紙が
0:「あんまり考えすぎないで」
0:と言ってくれているようで、少し気持ちが落ち着く
0:
0:そして、紅茶をもう少し口にする。
0:
0:このはがきの消印(けしいん)は見ないようにしておくよ
0:消印を調べてしまうと
0:もう君が便りを出さなくなってしまうような気がする
0:そしてそれが
0:君と僕とのルールのような
0:そんな気がしているから
0:
0:ただ僕は君の無事だけを祈る事にするよ
0:
0:紅茶がなくなる頃
0:そろそろ眠りにつくようにベッドに入る
0:まだ暫くは眠れないかもしれないけれど
0:星空と君を重ね合わせながら
0:眠るまで目を閉じている事にするよ
0:
0:旅先の君に
0:僕が届けられるものは何もないけれど
0:今日は小さな灯りをともしたまま
0:眠ることにするよ
0:
0:完
0:
0:眠れない夜がある
0:
0:特に何があるわけでもなく
0:眠たくないわけでもない
0:でも、なぜだか
0:眠れない夜がある
0:
0:何かの予感のような
0:胸騒ぎのような
0:そんな気持ちの高ぶりもなく
0:ただ、眠れない夜がある
0:
0:そんな夜は
0:無理に抗(あらが)う事をせず、紅茶を一杯入れる事にしている
0:こういう時は、僕の好きなセイロンに少しだけ砂糖を入れる
0:いつもは入れない甘みが、不思議な時間に誘ってくれるような気がするから
0:明日の事は考えず、ただ「夜」という時間に心をゆだねる。
0:
0:そして、ベランダに椅子を出し、のんびりと星空を眺めてみる
0:どこまでも続いているだろう、この星空の下のどこかに
0:君がいる事を想いながら
0:
0:君は今
0:どこで何をしているのだろうか
0:君のいる場所は
0:今は昼間なのだろうか
0:それとも夜だろうか
0:もし夜だとしたら
0:君は僕と同じこの星空を見ているだろうか
0:そんな事に想いを馳(は)せる・・・
0:
0:君が旅に出ると言い出した時、僕は正直驚いた
0:自分の事を「寂しがりやで、一人が嫌い」
0:そう言っていた君が、まさか旅に出るなんて
0:
0:君のいない時間は
0:もう三か月ほどになるだろうか
0:君のいないこの空間には
0:君の気配のするものが2つある
0:君が僕にくれた2通の便(たよ)り
0:
0:一つは、君が旅立だった直ぐ後に、僕に届いたもの
0:
0:君が教えてくれた旅立ちの日
0:僕は君のアパートに君を見送りに行った
0:でも、君はもうそこにはいなかった
0:慌てて空港にも行ってみた
0:空港を隅々まで探し回ったけれど、
0:僕は君を見つける事は出来なかった
0:
0:残念な思いを抱えながら部屋に帰ると、
0:君からの手紙がポストに届いていた
0:
0:
0:拝啓、友人殿
0:君を騙(だま)すように、旅立つ僕を許して欲しい
0:君は強くて優しい人だから
0:別れ際には、きっと僕に、笑顔を見せてくれると思う
0:でも、君の笑顔はきっと
0:僕の旅の終わりを早めてしまうだろう
0:僕は目的を終えるまで、何とか旅を続けたい
0:僕は弱い人間だから
0:今は、君の笑顔から逃げる事にするよ
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0:
0:そんな手紙だった
0:この手紙を受け取った時
0:君が教えてくれた旅立ちの日が嘘だったという事に気が付いた
0:君らしいといえば、君らしいのかな
0:
0:眠れない夜には、僕はこの手紙を読み返す
0:そして、紅茶を少し口にしながらいつも思う
0:
0:僕は君が思うほど強い人間ではないのだけどなぁ・・・
0:
0:でもやはり、君の言う通り
0:僕は別れ際には、きっと笑顔を見せていただろう
0:だって、君の旅立ちなのだから・・・
0:何度読み返しても答えは変わらない
0:
0:そして、もう少し紅茶を口にする。
0:
0:君の旅の目的とは、一体何だったのだろう
0:何かを知る為なのか
0:何かを忘れる為なのか
0:それとも
0:何かを得る為なのか
0:何かを棄てる為なのか
0:その目的はいつ終わりを迎えるのだろうか
0:
0:そんな
0:君しか持っていない筈(はず)のその答えを
0:この手紙を読む度に
0:星空の下でいつも僕は考える
0:
0:この国で君の目的が果たせないのは
0:ひょっとして
0:僕がいるからなのだろうか
0:だとしたら
0:君にとっての僕とは
0:どんな存在なのだろう
0:そんな想いが何度も頭を過(よぎ)る
0:
0:やっぱり、僕たちは少し離れた方がよかったのだろうか
0:
0:そう思う時
0:僕はもう一つのはがきを読む
0:もう一つの便りは、
0:君が旅立って二か月程してから届いたもの
0:
0:どこにでもありそうな
0:海辺の町の絵ハガキに
0:ただ一行
0:『元気かい?僕は元気でいるよ』
0:とだけ書かれている
0:
0:まるで小説にでも出てくるようなこの便りに
0:とても君らしさを感じて微笑ましくなる
0:
0:それと同時に
0:この気の置けない友からの手紙が
0:「あんまり考えすぎないで」
0:と言ってくれているようで、少し気持ちが落ち着く
0:
0:そして、紅茶をもう少し口にする。
0:
0:このはがきの消印(けしいん)は見ないようにしておくよ
0:消印を調べてしまうと
0:もう君が便りを出さなくなってしまうような気がする
0:そしてそれが
0:君と僕とのルールのような
0:そんな気がしているから
0:
0:ただ僕は君の無事だけを祈る事にするよ
0:
0:紅茶がなくなる頃
0:そろそろ眠りにつくようにベッドに入る
0:まだ暫くは眠れないかもしれないけれど
0:星空と君を重ね合わせながら
0:眠るまで目を閉じている事にするよ
0:
0:旅先の君に
0:僕が届けられるものは何もないけれど
0:今日は小さな灯りをともしたまま
0:眠ることにするよ
0:
0:完