台本概要
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タイトル | あなたが私を愛すなら |
---|---|
作者名 | 橘りょう (@tachibana390) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
シーズンがはずれた時期に帰省してしてきた幼馴染。 昔の通りかと思いきや、様子がおかしく感じ… 大きな波もない、ともすればつまらない会話劇かもしれません。 ジャンルに悩み、ヒューマンドラマかな、と思います。 読み手の性別は問いませんが、登場人物の性別変更は不可 作品名、作者名、台本へのリンクの表記をお願いいたします。 余裕があれば後でも構わないのでTwitterなどで教えて下さると嬉しいです、 アーカイブが残っていたら喜んで聴きに行かせていただきます。 398 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
雄介 | 男 | 154 | ゆうすけ。めぐの幼馴染 在宅勤務をしている青年 |
めぐ | 女 | 155 | ふらりと顔を覗かせてきた、雄介の幼馴染。 つかみどころのない性格をしている |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
あなたがわたしを愛すなら
雄介
ゆうすけ。めぐの幼なじみ
めぐ
雄介の幼なじみ
ーーーー
めぐ:こんにちはー!おーい!
雄介:はぁーい…って…えっと…?
めぐ:よっ、久しぶり
雄介:………めぐ?
めぐ:どう見たって私でしょ、何言ってんの?馬鹿じゃない?
雄介:いやいやいやいや、何年ぶりだと思ってんだよ
めぐ:五年?
雄介:ほぼ十年だよ、馬鹿
めぐ:はぁ?そんな、久しぶりに再会する幼馴染に馬鹿とか酷すぎない?暴論だよ、暴論
雄介:先に人に馬鹿っつったのそっちだろ
めぐ:えー言ったかなぁ、全然覚えてない
雄介:痴呆か?若年性アルツハイマーか?
めぐ:こんな可愛い幼馴染の事、すぐに思い出せなかった人がー、なんか自己紹介してるー
雄介:………
めぐ:ご丁寧にどうもー
雄介:………
めぐ:……ごめんて
雄介:怒ってねーよ
めぐ:知ってるし
雄介:……ふっ
めぐ:…ふへっ
:
:笑い合う二人
:
雄介:あー笑った。めぐ、久しぶり
めぐ:うん、雄介も。元気してた?
雄介:お陰様でこのとおり
めぐ:なら良かった
雄介:ぶっちゃけ、一瞬誰か分かんなかったのはマジな話な
めぐ:え?嘘?本気で言ってる?
雄介:本気と書いて
めぐ:マジと読む
雄介:そゆこと
めぐ:えぇー?全然変わってないでしょ
雄介:こう見たらそんなに変わってないなって思うけど…いや、やっぱり十年近く経ったら大人になったなって思うし…
めぐ:綺麗になった?
雄介:自分で言うなよ
めぐ:言うのが照れ臭いかなって思って
雄介:お前…ホントそういう所な
めぐ:どういう所よ
雄介:そういう所
めぐ:んー、よくわかんないなー
雄介:もういいや、疲れた
めぐ:諦めるの早っ
雄介:不毛なんだよ
めぐ:失礼な。…んー雄介も
雄介:おん?
めぐ:さすがに十年近く経つとさ…
雄介:お?
めぐ:びっくりするくらい変わらないね
雄介:えぇえ…
めぐ:あー大人にはなったなー位には思うけど
雄介:かっこよくなったーとかの感想ないの?
めぐ:………
雄介:………
めぐ:……ごめんね?
雄介:普通に傷付く。やめて
めぐ:野暮ったくはなってないから安心していいと思うよ
雄介:何基準だよ
めぐ:私基準
雄介:で?
めぐ:何が?
雄介:何がって?
めぐ:何が
雄介:…何しに来たのかってこと
めぐ:久しぶりに帰省するのに理由いる?
雄介:十年近く戻らなかったのに?
めぐ:そういう事もあると思うんだけど
雄介:まぁ、そりゃ無いとは言わないけど
めぐ:って言うかさ
雄介:なに?
めぐ:いつまで玄関先で立ち話させてんの?中に入ってお茶くらい〜とか気の利いたこと言えないの?
雄介:あぁ、忘れてた
めぐ:忘れる?!やっぱり1回病院行ってきな?
雄介:お前相手に気を使うのが馬鹿馬鹿しいんだよ
めぐ:綺麗で可愛い、久しぶりに再会した幼馴染に気を使えないとは何事か!
雄介:なんか余計な単語が増えたな
めぐ:おじゃましまーす
雄介:あー、もう。はいどーぞ
:
:
めぐ:うわっ!懐かしい賞状飾ってる!
雄介:書道のやつか。そういや完全に風景になってたから、なんとも思わなかった
めぐ:これ、小学生の頃のやつだよね?
雄介:そうだな
めぐ:これを飾ってるということは〜?
雄介:…なんだよ
めぐ:賞状の更新がなされていないという証明である
雄介:うっ…!
めぐ:人生で一番輝いてたのが小学生とか…
雄介:いやいやいや、それは違うだろ。そういう事じゃないだろ
めぐ:優秀な成績を収めた最後が小学生…
雄介:やめろ?ナイーブなハートが傷つくから辞めろ?
めぐ:ナイーブってなんだっけ?
雄介:繊細で優しいって意味だな
めぐ:へー、そーなんだー
雄介:なんか段々腹立ってきたな
めぐ:ねぇ、雄介
雄介:なんだよ
めぐ:喉乾いた
雄介:あーはいはい。すぐ用意するから大人しく座ってろ
めぐ:贅沢は言わない、麦茶でいいよ
雄介:麺つゆ出してやろうか、全く
めぐ:素麺はもう食べ飽きたから冷麦がいいなー
雄介:出さねぇよ!座ってろ!
めぐ:なんかカリカリしてるなぁ。カルシウム足りてる?
雄介:あーもう、マジで疲れるんだけど
めぐ:引きこもって他人と交流しないからだぞ?
雄介:引きこもって無いよ!在宅ワークなだけ!
めぐ:一緒じゃん
雄介:仕事してますー
めぐ:でも人との交流ってホント大事だよ?
雄介:いきなりまともなこと言い出したな、ったく…。ほらよ、お茶
めぐ:おっ?綺麗な緑
雄介:抹茶入り玄米茶。最近これハマってんの
めぐ:いただきまーす……うん、いいね、すごく美味しい
雄介:だろ?
めぐ:あー、美味しい。おかわり頂戴
雄介:ん、どーぞ
めぐ:いいなぁ、私もこれ欲しいなぁ
雄介:そこのスーパーで売ってるティーパックだぞ
めぐ:ふぅん…買っていこうかな
雄介:……で?
めぐ:ん?
雄介:…いや、だから……で?
めぐ:は?
雄介:え?何か用事があったんじゃないの?
めぐ:無いけど
雄介:マジ?
めぐ:マジ
雄介:本気で顔見に来ただけなの?
めぐ:そうだけど…なんか問題あった?
雄介:無い…けど
めぐ:なら問題なくない?
雄介:うん…無い
めぐ:じゃあそれでいいじゃん
雄介:……いや、なんかあったろ
めぐ:なんでそう思うの?
雄介:ずっと不自然だから
めぐ:どこが?
雄介:表情硬いんだよ。ずっと目逸らしてる感じするし
めぐ:…そう?
雄介:そう
めぐ:そっかァ…
雄介:帰省も、なんかタイミングおかしいだろ
めぐ:正しいタイミングとは
雄介:茶化すな。何年の付き合いだと思ってんだ
めぐ:ブランクあるじゃん
雄介:ブランクより、近くにいた時間の方が長い
めぐ:まァ…そう言われたら確かに?
雄介:なんか、あったのか?向こうで体壊したとか
めぐ:体は見ての通り元気
雄介:……
めぐ:仕事は順調でー
雄介:……
めぐ:あ、彼氏が自殺した
雄介:……は?
めぐ:諸々片付いて。で、なんか久しぶりに親の顔でも見るかーって
雄介:ちょ…
めぐ:そしたらアンタの家、隣でしょ?居るならついでに顔見ていくかーって
雄介:え、ちょっと、待って
めぐ:ん?
雄介:さらっと事も無げに、とんでもない爆弾投下して行くな
めぐ:大したことじゃないでしょ
雄介:大したことだよ、馬鹿
めぐ:あのさー、さっきから人の事、馬鹿馬鹿言い過ぎじゃない?さすがの私でも傷つくよ?
雄介:…なんで
めぐ:何が?
雄介:彼氏さん…
めぐ:それ言う必要ある?
雄介:あ、そうだよな…ごめん
めぐ:ベランダから飛び降りた
雄介:言うのかよ
めぐ:聞きたそうだったから
雄介:……
めぐ:それも私の目の前で
雄介:……まじかよ
めぐ:マジマジ。これから飛ぶからって
雄介:はぁ?!
めぐ:うち七階だから、まぁ確率は高かったよね。無事に本懐を遂げて、彼はお空へ昇っていきましたとさ。めでたしめでたし
雄介:……そいつ、何考えてんだ…
めぐ:私にトラウマ的な何かを残したかったんじゃない?
雄介:…それなのに肝心のお前は
めぐ:ケロッとしてるように見える?
雄介:見える
めぐ:…向こうのお母さんにもめちゃくちゃ怒鳴られた。なんでそんな平気そうな顔してるんだって
雄介:……
めぐ:お前が殺したんだろってさ
雄介:それは…!
めぐ:まぁ半分事実だし?可愛い我が子が死んだんだから取り乱しもするよね。とりあえず大人しく殴られといた
雄介:お前のせいじゃないだろ!なんで…
めぐ:半分事実って言ったでしょ
雄介:え…
めぐ:愛してるーって言われてさ、気持ち悪いなって
雄介:…どう、いうこと…
めぐ:彼が私のことを愛してるって言ってきたの。だから私はそれに対して気持ち悪いって返してた。それを繰り返してて…病んじゃったみたい
雄介:気持ち悪い…って、恋人だったんだろ?
めぐ:そうだね
雄介:なんで…
めぐ:さぁ?
雄介:さぁって…
めぐ:私も好きだったはずなんだけどさ、愛してるって言われて急に冷めちゃって。この人すごく気持ち悪いなって
雄介:好きだったのに…
めぐ:そう。好きだったのに
雄介:……
めぐ:(お茶を飲み干す)ごちそーさまでした。じゃあ私帰るね
雄介:えっ、ちょ…
めぐ:目的果たしたし。もう帰るよ
雄介:帰るって…どこに
めぐ:自分の家。あ、実家じゃなくてあっちね
雄介:彼氏が、死んだ部屋、に?
めぐ:正確には飛び降りた部屋、だね
雄介:引っ越さないのか…?
めぐ:なんで?
雄介:そりゃ…
めぐ:引越し費用高いじゃん。別に部屋の中で死んだとかじゃないから良いかなって。実際数日そこで過ごしてたし
雄介:お前のメンタル、どうなってんだよ…
めぐ:昔っからこうじゃなかったっけ
雄介:…感情が死んでる気がするけどな
めぐ:そう?…んじゃーね
雄介:待って…!
めぐ:んー?今度はなにー?
雄介:……
めぐ:雄介は優しいから何か言わなきゃって思ってるんだよね。慰めなきゃって
雄介:……
めぐ:自覚がないだけで、めちゃくちゃ傷ついてるんだからって。違う?
雄介:……
めぐ:当たってるでしょ?
雄介:……うん
めぐ:学校で嫌なことあって凹んでたら、いつも手握って慰めてくれてたもんね。優しいよね雄介は
雄介:優しいとか…
めぐ:子供じゃないんだよ、私もあんたも
雄介:…っ
めぐ:慰めて欲しくて来たんじゃないの
雄介:……
めぐ:どうせ慰めるなら…(顔を近付ける)
雄介:っ?!
めぐ:(首元を広げて胸元を見せる)こっちの方、慰めてよ。1人でスるの、もう飽きちゃったから
雄介:く、そっ…!
:
:めぐを押し倒す雄介
:
めぐ:していいよ
雄介:めぐ、お前…!
めぐ:あんたが昔から私の事好きだったの知ってた
雄介:…うるさい…
めぐ:今、彼女いるのかどうか知らないけど…したかったらすればいい
雄介:なんなんだよ、お前…!
めぐ:好きだったでしょ、私の事
雄介:…っ、好きだったよ!クソっ!
めぐ:純情ボーイかよ、青いなぁ。可愛い可愛い
雄介:お前…どうしたんだよ…
めぐ:何が
雄介:確かにさ、昔っから掴み所のない奴だって思ってたけど…
めぐ:……
雄介:向こうで…何あったんだよ…
めぐ:雄介
雄介:……なに
めぐ:私達さ、最後に会ってから十年近く経ってるわけよ
雄介:…それが、何
めぐ:人が変わるには十分過ぎる時間だと思わない?
雄介:……
めぐ:人の汚い所を山ほど見て、散々な目にあって、助けてって言う余裕すらなかったなぁ
雄介:めぐ…
めぐ:そんな時間をさ、ほんの少しでも経験すれば、死ぬこと以外はかすり傷なんだなーって思うようになる
雄介:……
めぐ:深く考えて、悩んで頭抱える時間はもうとっくに終わってるの、私の中で
雄介:めぐ…
めぐ:言っとくけど感情が死んでるとかじゃないから。切り捨てるのも諦めるのも早くなったってだけ
雄介:……
めぐ:…しないならどいてくれない?重い
雄介:そんな、言い方…!
めぐ:言ったでしょ?慰めるならこっちって
雄介:出来るわけないだろ!
めぐ:どうして?
雄介:こんな、形で…
めぐ:どんなに形を取り繕っても、やってる事は一緒だよ
雄介:…っ、こっち来い!
めぐ:わっ?!何?!
雄介:俺の部屋いくぞ
めぐ:へ?
雄介:そこまで言うなら、慰めてやるって言ってんだよ!
めぐ:……へへ
雄介:言っとくけど…二桁レベルの片思い、舐めんなよ
めぐ:うわ、重た。童貞?
雄介:残念ながら卒業済み!
めぐ:なーんだ
:
:
雄介:…もう帰るの?
めぐ:うん。やる事やったし
雄介:情緒どうなってんだよ…
めぐ:甘いピロートークご希望だった?
雄介:…少しだけ
めぐ:夢見がち
雄介:めぐ…こっち、帰ってこいよ…
めぐ:んー、その選択肢はないかなぁ
雄介:今から選択肢入れたら良いじゃん
めぐ:…今じゃないなぁって思うから
雄介:そっか…
めぐ:雄介
雄介:なに
めぐ:あんたが私のことを愛すってなら、私はあんたのこと嫌いになるからね
雄介:…どうして
めぐ:…愛は、気持ち悪い
雄介:めぐ…
めぐ:あんたのこと、嫌いになりたくないからさ
雄介:……
めぐ:思ってくれるなら、好きだけのままでいてよ。…じゃーね
雄介:めぐ!
めぐ:んー?
雄介:…また、帰ってこいよ
めぐ:…そーだね、気が向けば
雄介:気向けろよ
めぐ:待っててくれるつもり?
雄介:いつになるか分からねぇもの、待つわけねぇだろ
めぐ:それもそうだ。じゃ、今度こそ…ばいばい
雄介:またな
めぐ:うん、またね
:
:終
あなたがわたしを愛すなら
雄介
ゆうすけ。めぐの幼なじみ
めぐ
雄介の幼なじみ
ーーーー
めぐ:こんにちはー!おーい!
雄介:はぁーい…って…えっと…?
めぐ:よっ、久しぶり
雄介:………めぐ?
めぐ:どう見たって私でしょ、何言ってんの?馬鹿じゃない?
雄介:いやいやいやいや、何年ぶりだと思ってんだよ
めぐ:五年?
雄介:ほぼ十年だよ、馬鹿
めぐ:はぁ?そんな、久しぶりに再会する幼馴染に馬鹿とか酷すぎない?暴論だよ、暴論
雄介:先に人に馬鹿っつったのそっちだろ
めぐ:えー言ったかなぁ、全然覚えてない
雄介:痴呆か?若年性アルツハイマーか?
めぐ:こんな可愛い幼馴染の事、すぐに思い出せなかった人がー、なんか自己紹介してるー
雄介:………
めぐ:ご丁寧にどうもー
雄介:………
めぐ:……ごめんて
雄介:怒ってねーよ
めぐ:知ってるし
雄介:……ふっ
めぐ:…ふへっ
:
:笑い合う二人
:
雄介:あー笑った。めぐ、久しぶり
めぐ:うん、雄介も。元気してた?
雄介:お陰様でこのとおり
めぐ:なら良かった
雄介:ぶっちゃけ、一瞬誰か分かんなかったのはマジな話な
めぐ:え?嘘?本気で言ってる?
雄介:本気と書いて
めぐ:マジと読む
雄介:そゆこと
めぐ:えぇー?全然変わってないでしょ
雄介:こう見たらそんなに変わってないなって思うけど…いや、やっぱり十年近く経ったら大人になったなって思うし…
めぐ:綺麗になった?
雄介:自分で言うなよ
めぐ:言うのが照れ臭いかなって思って
雄介:お前…ホントそういう所な
めぐ:どういう所よ
雄介:そういう所
めぐ:んー、よくわかんないなー
雄介:もういいや、疲れた
めぐ:諦めるの早っ
雄介:不毛なんだよ
めぐ:失礼な。…んー雄介も
雄介:おん?
めぐ:さすがに十年近く経つとさ…
雄介:お?
めぐ:びっくりするくらい変わらないね
雄介:えぇえ…
めぐ:あー大人にはなったなー位には思うけど
雄介:かっこよくなったーとかの感想ないの?
めぐ:………
雄介:………
めぐ:……ごめんね?
雄介:普通に傷付く。やめて
めぐ:野暮ったくはなってないから安心していいと思うよ
雄介:何基準だよ
めぐ:私基準
雄介:で?
めぐ:何が?
雄介:何がって?
めぐ:何が
雄介:…何しに来たのかってこと
めぐ:久しぶりに帰省するのに理由いる?
雄介:十年近く戻らなかったのに?
めぐ:そういう事もあると思うんだけど
雄介:まぁ、そりゃ無いとは言わないけど
めぐ:って言うかさ
雄介:なに?
めぐ:いつまで玄関先で立ち話させてんの?中に入ってお茶くらい〜とか気の利いたこと言えないの?
雄介:あぁ、忘れてた
めぐ:忘れる?!やっぱり1回病院行ってきな?
雄介:お前相手に気を使うのが馬鹿馬鹿しいんだよ
めぐ:綺麗で可愛い、久しぶりに再会した幼馴染に気を使えないとは何事か!
雄介:なんか余計な単語が増えたな
めぐ:おじゃましまーす
雄介:あー、もう。はいどーぞ
:
:
めぐ:うわっ!懐かしい賞状飾ってる!
雄介:書道のやつか。そういや完全に風景になってたから、なんとも思わなかった
めぐ:これ、小学生の頃のやつだよね?
雄介:そうだな
めぐ:これを飾ってるということは〜?
雄介:…なんだよ
めぐ:賞状の更新がなされていないという証明である
雄介:うっ…!
めぐ:人生で一番輝いてたのが小学生とか…
雄介:いやいやいや、それは違うだろ。そういう事じゃないだろ
めぐ:優秀な成績を収めた最後が小学生…
雄介:やめろ?ナイーブなハートが傷つくから辞めろ?
めぐ:ナイーブってなんだっけ?
雄介:繊細で優しいって意味だな
めぐ:へー、そーなんだー
雄介:なんか段々腹立ってきたな
めぐ:ねぇ、雄介
雄介:なんだよ
めぐ:喉乾いた
雄介:あーはいはい。すぐ用意するから大人しく座ってろ
めぐ:贅沢は言わない、麦茶でいいよ
雄介:麺つゆ出してやろうか、全く
めぐ:素麺はもう食べ飽きたから冷麦がいいなー
雄介:出さねぇよ!座ってろ!
めぐ:なんかカリカリしてるなぁ。カルシウム足りてる?
雄介:あーもう、マジで疲れるんだけど
めぐ:引きこもって他人と交流しないからだぞ?
雄介:引きこもって無いよ!在宅ワークなだけ!
めぐ:一緒じゃん
雄介:仕事してますー
めぐ:でも人との交流ってホント大事だよ?
雄介:いきなりまともなこと言い出したな、ったく…。ほらよ、お茶
めぐ:おっ?綺麗な緑
雄介:抹茶入り玄米茶。最近これハマってんの
めぐ:いただきまーす……うん、いいね、すごく美味しい
雄介:だろ?
めぐ:あー、美味しい。おかわり頂戴
雄介:ん、どーぞ
めぐ:いいなぁ、私もこれ欲しいなぁ
雄介:そこのスーパーで売ってるティーパックだぞ
めぐ:ふぅん…買っていこうかな
雄介:……で?
めぐ:ん?
雄介:…いや、だから……で?
めぐ:は?
雄介:え?何か用事があったんじゃないの?
めぐ:無いけど
雄介:マジ?
めぐ:マジ
雄介:本気で顔見に来ただけなの?
めぐ:そうだけど…なんか問題あった?
雄介:無い…けど
めぐ:なら問題なくない?
雄介:うん…無い
めぐ:じゃあそれでいいじゃん
雄介:……いや、なんかあったろ
めぐ:なんでそう思うの?
雄介:ずっと不自然だから
めぐ:どこが?
雄介:表情硬いんだよ。ずっと目逸らしてる感じするし
めぐ:…そう?
雄介:そう
めぐ:そっかァ…
雄介:帰省も、なんかタイミングおかしいだろ
めぐ:正しいタイミングとは
雄介:茶化すな。何年の付き合いだと思ってんだ
めぐ:ブランクあるじゃん
雄介:ブランクより、近くにいた時間の方が長い
めぐ:まァ…そう言われたら確かに?
雄介:なんか、あったのか?向こうで体壊したとか
めぐ:体は見ての通り元気
雄介:……
めぐ:仕事は順調でー
雄介:……
めぐ:あ、彼氏が自殺した
雄介:……は?
めぐ:諸々片付いて。で、なんか久しぶりに親の顔でも見るかーって
雄介:ちょ…
めぐ:そしたらアンタの家、隣でしょ?居るならついでに顔見ていくかーって
雄介:え、ちょっと、待って
めぐ:ん?
雄介:さらっと事も無げに、とんでもない爆弾投下して行くな
めぐ:大したことじゃないでしょ
雄介:大したことだよ、馬鹿
めぐ:あのさー、さっきから人の事、馬鹿馬鹿言い過ぎじゃない?さすがの私でも傷つくよ?
雄介:…なんで
めぐ:何が?
雄介:彼氏さん…
めぐ:それ言う必要ある?
雄介:あ、そうだよな…ごめん
めぐ:ベランダから飛び降りた
雄介:言うのかよ
めぐ:聞きたそうだったから
雄介:……
めぐ:それも私の目の前で
雄介:……まじかよ
めぐ:マジマジ。これから飛ぶからって
雄介:はぁ?!
めぐ:うち七階だから、まぁ確率は高かったよね。無事に本懐を遂げて、彼はお空へ昇っていきましたとさ。めでたしめでたし
雄介:……そいつ、何考えてんだ…
めぐ:私にトラウマ的な何かを残したかったんじゃない?
雄介:…それなのに肝心のお前は
めぐ:ケロッとしてるように見える?
雄介:見える
めぐ:…向こうのお母さんにもめちゃくちゃ怒鳴られた。なんでそんな平気そうな顔してるんだって
雄介:……
めぐ:お前が殺したんだろってさ
雄介:それは…!
めぐ:まぁ半分事実だし?可愛い我が子が死んだんだから取り乱しもするよね。とりあえず大人しく殴られといた
雄介:お前のせいじゃないだろ!なんで…
めぐ:半分事実って言ったでしょ
雄介:え…
めぐ:愛してるーって言われてさ、気持ち悪いなって
雄介:…どう、いうこと…
めぐ:彼が私のことを愛してるって言ってきたの。だから私はそれに対して気持ち悪いって返してた。それを繰り返してて…病んじゃったみたい
雄介:気持ち悪い…って、恋人だったんだろ?
めぐ:そうだね
雄介:なんで…
めぐ:さぁ?
雄介:さぁって…
めぐ:私も好きだったはずなんだけどさ、愛してるって言われて急に冷めちゃって。この人すごく気持ち悪いなって
雄介:好きだったのに…
めぐ:そう。好きだったのに
雄介:……
めぐ:(お茶を飲み干す)ごちそーさまでした。じゃあ私帰るね
雄介:えっ、ちょ…
めぐ:目的果たしたし。もう帰るよ
雄介:帰るって…どこに
めぐ:自分の家。あ、実家じゃなくてあっちね
雄介:彼氏が、死んだ部屋、に?
めぐ:正確には飛び降りた部屋、だね
雄介:引っ越さないのか…?
めぐ:なんで?
雄介:そりゃ…
めぐ:引越し費用高いじゃん。別に部屋の中で死んだとかじゃないから良いかなって。実際数日そこで過ごしてたし
雄介:お前のメンタル、どうなってんだよ…
めぐ:昔っからこうじゃなかったっけ
雄介:…感情が死んでる気がするけどな
めぐ:そう?…んじゃーね
雄介:待って…!
めぐ:んー?今度はなにー?
雄介:……
めぐ:雄介は優しいから何か言わなきゃって思ってるんだよね。慰めなきゃって
雄介:……
めぐ:自覚がないだけで、めちゃくちゃ傷ついてるんだからって。違う?
雄介:……
めぐ:当たってるでしょ?
雄介:……うん
めぐ:学校で嫌なことあって凹んでたら、いつも手握って慰めてくれてたもんね。優しいよね雄介は
雄介:優しいとか…
めぐ:子供じゃないんだよ、私もあんたも
雄介:…っ
めぐ:慰めて欲しくて来たんじゃないの
雄介:……
めぐ:どうせ慰めるなら…(顔を近付ける)
雄介:っ?!
めぐ:(首元を広げて胸元を見せる)こっちの方、慰めてよ。1人でスるの、もう飽きちゃったから
雄介:く、そっ…!
:
:めぐを押し倒す雄介
:
めぐ:していいよ
雄介:めぐ、お前…!
めぐ:あんたが昔から私の事好きだったの知ってた
雄介:…うるさい…
めぐ:今、彼女いるのかどうか知らないけど…したかったらすればいい
雄介:なんなんだよ、お前…!
めぐ:好きだったでしょ、私の事
雄介:…っ、好きだったよ!クソっ!
めぐ:純情ボーイかよ、青いなぁ。可愛い可愛い
雄介:お前…どうしたんだよ…
めぐ:何が
雄介:確かにさ、昔っから掴み所のない奴だって思ってたけど…
めぐ:……
雄介:向こうで…何あったんだよ…
めぐ:雄介
雄介:……なに
めぐ:私達さ、最後に会ってから十年近く経ってるわけよ
雄介:…それが、何
めぐ:人が変わるには十分過ぎる時間だと思わない?
雄介:……
めぐ:人の汚い所を山ほど見て、散々な目にあって、助けてって言う余裕すらなかったなぁ
雄介:めぐ…
めぐ:そんな時間をさ、ほんの少しでも経験すれば、死ぬこと以外はかすり傷なんだなーって思うようになる
雄介:……
めぐ:深く考えて、悩んで頭抱える時間はもうとっくに終わってるの、私の中で
雄介:めぐ…
めぐ:言っとくけど感情が死んでるとかじゃないから。切り捨てるのも諦めるのも早くなったってだけ
雄介:……
めぐ:…しないならどいてくれない?重い
雄介:そんな、言い方…!
めぐ:言ったでしょ?慰めるならこっちって
雄介:出来るわけないだろ!
めぐ:どうして?
雄介:こんな、形で…
めぐ:どんなに形を取り繕っても、やってる事は一緒だよ
雄介:…っ、こっち来い!
めぐ:わっ?!何?!
雄介:俺の部屋いくぞ
めぐ:へ?
雄介:そこまで言うなら、慰めてやるって言ってんだよ!
めぐ:……へへ
雄介:言っとくけど…二桁レベルの片思い、舐めんなよ
めぐ:うわ、重た。童貞?
雄介:残念ながら卒業済み!
めぐ:なーんだ
:
:
雄介:…もう帰るの?
めぐ:うん。やる事やったし
雄介:情緒どうなってんだよ…
めぐ:甘いピロートークご希望だった?
雄介:…少しだけ
めぐ:夢見がち
雄介:めぐ…こっち、帰ってこいよ…
めぐ:んー、その選択肢はないかなぁ
雄介:今から選択肢入れたら良いじゃん
めぐ:…今じゃないなぁって思うから
雄介:そっか…
めぐ:雄介
雄介:なに
めぐ:あんたが私のことを愛すってなら、私はあんたのこと嫌いになるからね
雄介:…どうして
めぐ:…愛は、気持ち悪い
雄介:めぐ…
めぐ:あんたのこと、嫌いになりたくないからさ
雄介:……
めぐ:思ってくれるなら、好きだけのままでいてよ。…じゃーね
雄介:めぐ!
めぐ:んー?
雄介:…また、帰ってこいよ
めぐ:…そーだね、気が向けば
雄介:気向けろよ
めぐ:待っててくれるつもり?
雄介:いつになるか分からねぇもの、待つわけねぇだろ
めぐ:それもそうだ。じゃ、今度こそ…ばいばい
雄介:またな
めぐ:うん、またね
:
:終