台本概要
738 views
タイトル | 御伽噺に幕切れを |
---|---|
作者名 | Alice (@Alice15827178) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
吸血鬼ファンタジー×ラブストーリー 「あんたの血なんて飲めるわけないでしょ!?」 「化け物の仲間に身を落としてでも、叶えたい願いがあるんだよ」 (M)はモノローグです ☆お願い☆ キャスト様の性別不問 アドリブ可 世界観が崩れるような大幅な改変のみ不可 どなた様も自由に演じてください 738 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
テイル | 男 | 81 | 英語表記:tale。 吸血鬼ハンター。 昔大切な人を、とある吸血鬼に殺された。 年齢設定自由。 |
フィン | 女 | 86 | 英語表記:fin。 吸血鬼。 家族・仲間を吸血鬼ハンターに殺されている。 年齢設定自由。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
テイル:助けてやれなかった…
テイル:俺が弱かったから…
テイル:ごめん…ごめんな…
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0:月の明るい夜
0:とある街の路地裏
0:血まみれのフィンが、フラつきながら歩いている
0:
0:
フィン:はぁはぁ…
フィン:あいつが同胞殺しの…
フィン:本当に、人間も吸血鬼も見境なく襲うなんて…
フィン:う…傷が深い…血が足りない…
テイル:ん?誰かいるのか?
フィン:人、間…!?なんでこんな所に…
テイル:おい!どうした!?
フィン:どうもしない…!来ないで!
テイル:どうもしないわけないだろう!?
テイル:こんな血まみれで…
テイル:怪我でもしてるの…か…
テイル:っ!お前、吸血鬼か…!?
フィン:離して…!
フィン:(払い除けようと、押し返す)
フィン:この紋章、あんたまさか…!
テイル:血か…?
フィン:っ…!
テイル:血が足りないんだな?
フィン:うるさい!
テイル:俺の血を吸え
フィン:あんた、自分が何言ってるかわかってるの…!?
フィン:飲めるわけないでしょ…!
フィン:あんたの血なんて…
テイル:いいから飲め!
フィン:嫌!やめて!
0:
0:
テイル:(M)俺は吸血鬼の女を抱き寄せ、
テイル:無理矢理、自分の首元に牙を押しつけた
テイル:牙が触れ、皮膚が裂ける
テイル:流れ出す血の芳醇(ほうじゅん)な香りに抗いきれなくなったのか、
テイル:腕の中で暴れていた吸血鬼は、自ら牙を突き立てた
テイル:首筋に痛みが走り、身体から力が抜けていくのを感じながら、
テイル:ふと吸血鬼の顔を見る
テイル:そいつは、泣いていた…
0:
0:
0:
0:翌朝
0:
0:
0:
フィン:う…、ここは…?
テイル:目が覚めたか?
フィン:どうしてあんたが…!
テイル:ご挨拶だな
テイル:命の恩人に向かって
フィン:命の恩人…?
テイル:…俺の首筋を見ても、思い出さないか?
フィン:まさか…その傷跡…
フィン:私は…あんたの血を吸って、生きながらえた…の…?
テイル:あぁ
フィン:は…はは…
フィン:私はそこまで堕ちたのね…
テイル:そんなに嫌か、俺の血を吸って生きながらえたことが
フィン:当たり前よ!
フィン:昨日見た紋章、
フィン:あんた吸血鬼ハンターでしょう!?
フィン:私の家族や友達を殺した悪魔が!!
フィン:そんなやつの施しを受けるなんて…
テイル:お前の知人を、直接手にかけた記憶はないけどな
フィン:同じことよ!あんたたちのせいで私達は…
テイル:ふっ…
フィン:何がおかしいの…?
テイル:いや?
テイル:人間を食い物にしている化け物にも、
テイル:仲間を大切にする気持ちがあるんだなと思ってな
フィン:…馬鹿にしているの!?
テイル:(遮るように)お前の言葉、そっくりそのまま返してやるよ
テイル:お前たち吸血鬼に、何人の人間が食い殺されたと思っている?
フィン:…っ
フィン:じゃあ…じゃあ…なんで私を助けたのよ!?
フィン:見殺しにすればよかったでしょ!?
テイル:…
フィン:答えてよ!
テイル:俺の目的のために利用させてもらう
フィン:…目的?
テイル:そうだ
テイル:吸血鬼の眷属になれば、五感の活性化に加えて、
テイル:脅威的な回復力と力が手に入る
テイル:俺は化け物の仲間に身を落としてでも、叶えたい願いがあるんだよ
フィン:…
テイル:あぁ、それと
テイル:お前にはまだここにいてもらう
フィン:はぁ!?
テイル:お前にはまだ利用価値がある
テイル:その時がくるまで、部屋で大人しくしておけ
フィン:待って!
0:
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0:テイル、部屋に鍵をかけて出て行く
0:
0:
フィン:(M)それから、悪夢のような日々が始まった
フィン:テイルと名乗った吸血鬼ハンターは、
フィン:私を四六時中、部屋に閉じ込めた
フィン:出入り口に銀が使われた部屋
フィン:自力で出ることはおろか、扉に触ることもできない
フィン:人間に生かされ、飼い殺しにされる日々…
フィン:こんな屈辱的な思いをしてまで、
フィン:どうして私は生きているんだろう…
0:
0:
テイル:飲め(コップに入った血液を渡そうとする)
フィン:いらない
テイル:飲まなければ、怪我も治らないし、
テイル:いずれ死ぬぞ
フィン:あんたなんかの血で生かされるくらいなら、
フィン:死んだ方がマシよ
テイル:…
フィン:私が死んだら困るんでしょ?
フィン:あんたに一矢報いれるんなら、
フィン:そっちの方がずっといい
テイル:はぁ…(ため息)
テイル:フィン、そんなに死にたいか?
テイル:なら、もういい。勝手にしろ
フィン:いいの?
フィン:私に利用価値があるから助けたんでしょ?
テイル:お前が本当に死ねるんなら、諦めてやるよ
フィン:どういう意味よ
テイル:飢えと渇きの苦しみは、甘くないってことだ
フィン:私達吸血鬼は、いつだって飢えに苦しんでいる
フィン:知った風な口を聞かないで
テイル:死ぬほどの飢餓感は、お前の想像以上だぞ
テイル:どこまで耐えられるか、試してみるか?
0:
0:
テイル:(M)俺は自分の腕にナイフを突き立て、線を引いた
テイル:赤黒い血が流れ出す
テイル:それは、赤い雫になって
テイル:絨毯に匂いと一緒にこびりついていく
0:
0:
フィン:何のつもり?
フィン:生き血だったら、私が飛びつくとでも?
テイル:いや?
テイル:また明日くる
フィン:なんなの、あいつ…
0:
0:
フィン:(M)それから毎日同じことが繰り返された
フィン:絨毯の血のシミは、広がり続け、
フィン:狭い部屋に血の匂いが少しずつ充満していく
フィン:一切血を接種していない私の身体は、
フィン:次第に限界に近づいていた
フィン:日に日に意識が朦朧(もうろう)とし、
フィン:内側から凍っていくように身体の自由がきかなくなる
フィン:部屋に充満する血の匂いにさえ耐えられず、
フィン:理性を失いそうになっていた
0:
0:
0:ノックする音
テイル:入るぞ
フィン:ぜぇ…っ、出て、いって!(苦しそうな息遣い)
テイル:ずいぶんいい格好になったな
フィン:う…るさい!
テイル:(腕を切りながら)今日も飲まないつもりか?
フィン:当たり前…だ…!
フィン:あんたの血なんか…さっさと出てい…
フィン:(足がもつれて倒れる)
テイル:おっと(抱き止める)
テイル:大口叩いておいて、このザマか
フィン:はぁ…はぁ…
テイル:どうした?血が飲みたいのか?
フィン:うるさい…!
フィン:その血まみれの腕を近づけないで…!
テイル:強がりはよせ
テイル:もう限界なはずだ
テイル:諦めろ
フィン:嫌だ…!
テイル:じゃあ死ぬまでこの苦しみを味わい続けるか?
フィン:っ…
フィン:…
フィン:(小声)嫌だ…
0:
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フィン:(M)私はテイルの腕から流れ出る血を口にした
フィン:温かい血が私の身体を満たしていく
フィン:あぁ…美味しい…
フィン:血を啜り(すすり)ながら、私の頬を涙が伝う
フィン:私は…自らこいつの軍門に下ったんだ…
0:
0:
テイル:(M)翌日から、
テイル:フィンは嫌そうな顔をしながらも、俺の血を飲むようになった
テイル:怪我も回復し、体力も徐々に戻ってきていた
テイル:相変わらず口は悪いが、
テイル:反抗するような素振りは見せなくなった
テイル:…屈辱だろう
テイル:吸血鬼は、何より誇りを大事にする
テイル:…本当は、こんな卑怯な手を使いたくはなかった
テイル:でも今はこうするしかないんだ
テイル:あいつを見つけるには…
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0:数日後
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テイル:おい、街に行くぞ
フィン:はぁ?なんで私が
フィン:一人で行けばいいでしょ?
テイル:いい加減、怪我も治ってきただろう
テイル:閉じこもってばかりだと、脳まで腐るぞ
フィン:閉じ込めてるあんたに言われたくないんだけど
テイル:ははっ
フィン:いいの?逃げるかもしれないよ?
テイル:逃げられるなら、とっくに逃げてるだろ?
テイル:そんな体力をつけさせるほど、
テイル:血を与えたつもりもないしな
フィン:嫌なやつ…
テイル:憎まれ口を叩けるようなら大丈夫だ
テイル:行くぞ
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0:テイルはフィンを連れて街へ
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フィン:夜なのに人が多い…
テイル:もうすぐ皆既月食の祭事だからな
テイル:露天も出てるし、日夜問わず、町中お祭り騒ぎだよ
フィン:ふーん…
フィン:あっ…(露天に目を留める)
テイル:何か気になる物でもあったのか?
フィン:別に…
テイル:なんだ、そのブレスレット気に入ったのか?
フィン:そ…そんなわけない…でしょ
フィン:人間が作った物なんて…
テイル:ふっ、素直じゃないやつだな
テイル:店主、これをもらおう
フィン:ちょっ…人の話し聞いて…
テイル:ほらっ(ブレスレットを投げる)
フィン:ぅわっ…
テイル:『御守り』だ
フィン:御守り…?
テイル:行くぞ
フィン:あ…待ってよ…!
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フィン:(M)何をするわけでもない
フィン:祭りで賑わう街を、テイルは私を連れて歩いた
フィン:次の日も、その次の日も
フィン:逃げようと思えば逃げられたのかもしれない
フィン:けれど、なぜか私はそんな気にならなかった
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0:皆既月食の夜
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フィン:あのさ…
テイル:ん?
フィン:その…、最近、なんで毎晩私を外に連れ出すの?
テイル:なんだ、嫌だったのか?
フィン:そうじゃない…けど、なんでかな…って
フィン:この前も、このブレスレット買ってくれたし…
テイル:(被せて)探している奴がいた
フィン:…え?
テイル:そいつは人間も吸血鬼も見境いなく殺す、
テイル:頭のイカれた吸血鬼だ
フィン:どうして、そんな奴、探してる、の…?
テイル:…昔、大切な人を殺された
テイル:俺はずっとその復讐のために生きてきた
テイル:フィン、お前もそいつに襲われたんだろう?
フィン:なんで、知って…
テイル:お前を助けた時、奴と同じ匂いがした
テイル:あいつは一度狙った獲物は絶対に逃がさない
テイル:必ずお前を狙ってまたやってくる
フィン:っ…
テイル:闇に隠れてる吸血鬼を探し出すのは、至難の業だからな
テイル:向こうから来てくれるなら都合がいい
フィン:はは…そっか…じゃあ私はそのための…
テイル:だが、それももう、今夜で終わりだ
フィン:…え?
テイル:昨日奴の匂いがした
テイル:今夜も街に出てくるだろう
テイル:必ず見つける
フィン:…
テイル:さて、そろそろ時間だな(立ち上がりながら)
テイル:フィン、お前の役目はもう終わった
テイル:刺し違えてでも、俺は俺の願いを叶える
テイル:お前は好きに出て行け
テイル:(小声)今まで、ありがとう
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0:テイル部屋を出て行く
0:
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フィン:(M)テイルが出ていった後も、
フィン:私は何時間経っても部屋を動けなかった
フィン:悔しくて、惨めで、情けなくて…
フィン:何を、勘違いしていたんだろう
フィン:私はただのエサだったんだ…
フィン:わかってたことじゃない…最初から
0:
フィン:(M)きつく握りしめた拳を壁に叩きつける
フィン:鈍い音に混ざって、
フィン:シャランと微かな音が響いて目をあけると
フィン:痺れるように痛む右手には、
フィン:テイルがくれたブレスレットが、キラキラと揺れていた
0:
テイル:(回想)御守りだ
0:
フィン:(独り言のように)御守り…?
フィン:あれ…?
フィン:吸血鬼が私を探してるなら、
フィン:最後まで私を囮に使えばいいのに…
フィン:どうして、私を置いていったの…?
0:
テイル:(回想)刺し違えてでも、俺は俺の願いを叶える
0:
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フィン:(M)私は部屋を飛び出した
フィン:わからない…わからない…わからない…
フィン:テイルは私を利用していただけだった
フィン:そのはず…そのはずなのに…!
フィン:ブレスレットを握りしめ、必死にテイルを探した
フィン:見覚えのある路地裏が、
フィン:皆既月食に照らされて、赤く染まっている
フィン:そこにー、
フィン:街の赤に同化するように倒れているテイルを見つけた
0:
0:
フィン:テイル!生きてる!?
フィン:っ…!血が…!止血を…
フィン:(止まることなく血が流れ出ている)
フィン:ねぇ!テイル!返事して!
テイル:う…あぁ…フィン…?
フィン:良かった、生きて…
テイル:(被せて)良かった…今度は守れた…
フィン:え…?
フィン:何言ってるの…?
フィン:あんたの目的は、大切な人の仇討ち…でしょ…?
テイル:あぁ…そうだ…
テイル:あの時、守れなくて…憎くて…悔しくて…
テイル:無力な自分が…一番許せなくて…
テイル:なのに、復讐する力もなくて…
テイル:ずっと…ずっと…苦…しくて…
テイル:死にたかった…
テイル:死んで、早くあいつのとこに行きたかった…
テイル:楽に、なりたかった…
テイル:俺にそんな権利なんかないのにな…
テイル:がはっ…!
フィン:テイル!
テイル:…そんな時、この路地裏で死にかけてるお前を見つけた
テイル:チャンスだと思った
テイル:吸血鬼の眷属になれば力が手に入る
テイル:仇をとれば、死んでも許される気がした…
テイル:お前なんかどうなってもよくて、
テイル:最後まで利用し尽くして、
テイル:用済みになったら、のたれ死んだって構わなかった…
テイル:そのはずだったのに…
テイル:いつのまにか…見捨てられなくなってた
テイル:お前だって憎い吸血鬼のはずなのにな…
テイル:げほっげほっ…うっ…(血を吐く)
フィン:なんで…今更そんなこと言うのよ…
テイル:ぜぇ…ぜぇ…、フィンごめんな…
テイル:お前は…もう自由だから…
フィン:なんで…なんであんたはそう自分勝手なのよ!?
フィン:自分の都合で私を生かしておいて、
フィン:今度は勝手に死ぬ!?
フィン:ふざけないでよ…!!
テイル:…(苦しい呼吸)
フィン:…もう…もう、一人は嫌だ…
フィン:一人は寂しい…よ
フィン:人から隠れて、怯えて、逃げて、殺して、血を求めて彷徨って…
フィン:そんな風に一人で生きていくのはもう嫌だよ…
テイル:フィン…?
フィン:テイルのせいで、
フィン:私は誰かといる暖かさを知っちゃったのよ!
フィン:もう一人になんて戻れない…
フィン:なんで…なんで死んじゃうの…
フィン:逝か…ないで…
テイル:っ…ごめん…ごめん…な
フィン:テイルなんて大っ嫌い…!
テイル:ごめん…
フィン:謝るくらいなら…死なないで…
フィン:お願いだから…
テイル:あぁ…死にたくない…なぁ…
テイル:なんで今そんなこと言うんだよ…
テイル:お前への気持ち…気づかないフリしてたのに…
テイル:どうしてくれる…お前のせいだ
テイル:お前のせいで、死ぬのが怖くなっちまったじゃないか…!
テイル:お前をおいて…死にたく…ない
フィン:じゃあ…死なないでよ…
フィン:意地でも生きてよ…!
テイル:がはっ…(苦しい呼吸音)
フィン:テイル…!
フィン:なんで…なんで…私は…!
0:
0:
0:静かに降り出す雨
0:
0:
テイル:な…ぁ、フィ…ン…
テイル:お前に…言…い、たい…ことが…ある…んだ…
フィン:なに…聞こえないよ…
テイル:もっとこっち…こい…
0:
フィン:(M)冷たい雨が頬を打つ
フィン:握った手がどんどん冷たくなっていく
フィン:やめて…
フィン:テイルの命を奪わないで…
フィン:静かに降りだした雨の音が、やけにうるさかった
フィン:雨音の隙間から、彼の言葉が途切れ途切れに聞こえる
フィン:静かにしてよ…
フィン:ねぇお願いだから…止んで…
フィン:少しの間でいいから
フィン:テイルの声がよく聞こえない
フィン:たったの一言も、聞き漏らしたくないの
フィン:声…これが…きっと…最後なん…だから…
0:
テイル:(M)静かに降る雨が、涙で醜く歪む俺の顔を隠してくれる
テイル:これでカッコ悪い泣き顔を見られなくて済む
テイル:雨のせいだって言い訳できる
テイル:最期に見せる顔、少しはマシになってるかな…
テイル:フィンの震えた唇が、血と雨と涙で濡れた俺の頬に触れる
0:
0:
テイル:フィン、泣くな
テイル:ーーーーー(間でも、何か言葉を入れてもいいです)
0:
0:
テイル:(M)声にならない声で、最期の言葉を紡ぐ
テイル:ちゃんと届いただろうか
テイル:薄れゆく意識の向こう側、
テイル:フィンの絶叫が雨に濡れた路地裏を、彩った
0:
0:
0:
0:長めの間
0:
0:
0:
フィン:(M)あれから、どれだけの時間が過ぎただろう
フィン:吸血鬼も吸血鬼ハンターも、
フィン:御伽噺(おとぎばなし)として語られる
フィン:空想の存在となるほどには、長い年月が経った
0:
フィン:(M)私はーー生きている
フィン:『あの日』、私はもう誰の血も吸わないと決めた
フィン:どれだけ苦しい思いをしても死ぬつもりだった
フィン:最後に口にした、
フィン:雨と涙まじりのテイルの血を、いつまでも覚えていたかったから
フィン:ーでも、いくら月日が流れても吸血衝動すら起こらず、私は死ななかった
フィン:何故だかはわからない
フィン:けれど、テイルが生きろと言っているような気がした
0:
0:
フィン:(M)私の時間が、
フィン:あと何年、何十年、何百年続くのか分からない
フィン:けれど、世界最後の吸血鬼として
フィン:私はこの世界の夜で生きていく
0:
フィン:『人に生かされた吸血鬼』
フィン:そんな御伽噺に自ら幕を下ろす、その時まで
0:
0:
0:タイトルコール
テイル:ー御伽噺に幕切れをー
テイル:助けてやれなかった…
テイル:俺が弱かったから…
テイル:ごめん…ごめんな…
0:
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0:月の明るい夜
0:とある街の路地裏
0:血まみれのフィンが、フラつきながら歩いている
0:
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フィン:はぁはぁ…
フィン:あいつが同胞殺しの…
フィン:本当に、人間も吸血鬼も見境なく襲うなんて…
フィン:う…傷が深い…血が足りない…
テイル:ん?誰かいるのか?
フィン:人、間…!?なんでこんな所に…
テイル:おい!どうした!?
フィン:どうもしない…!来ないで!
テイル:どうもしないわけないだろう!?
テイル:こんな血まみれで…
テイル:怪我でもしてるの…か…
テイル:っ!お前、吸血鬼か…!?
フィン:離して…!
フィン:(払い除けようと、押し返す)
フィン:この紋章、あんたまさか…!
テイル:血か…?
フィン:っ…!
テイル:血が足りないんだな?
フィン:うるさい!
テイル:俺の血を吸え
フィン:あんた、自分が何言ってるかわかってるの…!?
フィン:飲めるわけないでしょ…!
フィン:あんたの血なんて…
テイル:いいから飲め!
フィン:嫌!やめて!
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テイル:(M)俺は吸血鬼の女を抱き寄せ、
テイル:無理矢理、自分の首元に牙を押しつけた
テイル:牙が触れ、皮膚が裂ける
テイル:流れ出す血の芳醇(ほうじゅん)な香りに抗いきれなくなったのか、
テイル:腕の中で暴れていた吸血鬼は、自ら牙を突き立てた
テイル:首筋に痛みが走り、身体から力が抜けていくのを感じながら、
テイル:ふと吸血鬼の顔を見る
テイル:そいつは、泣いていた…
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0:翌朝
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フィン:う…、ここは…?
テイル:目が覚めたか?
フィン:どうしてあんたが…!
テイル:ご挨拶だな
テイル:命の恩人に向かって
フィン:命の恩人…?
テイル:…俺の首筋を見ても、思い出さないか?
フィン:まさか…その傷跡…
フィン:私は…あんたの血を吸って、生きながらえた…の…?
テイル:あぁ
フィン:は…はは…
フィン:私はそこまで堕ちたのね…
テイル:そんなに嫌か、俺の血を吸って生きながらえたことが
フィン:当たり前よ!
フィン:昨日見た紋章、
フィン:あんた吸血鬼ハンターでしょう!?
フィン:私の家族や友達を殺した悪魔が!!
フィン:そんなやつの施しを受けるなんて…
テイル:お前の知人を、直接手にかけた記憶はないけどな
フィン:同じことよ!あんたたちのせいで私達は…
テイル:ふっ…
フィン:何がおかしいの…?
テイル:いや?
テイル:人間を食い物にしている化け物にも、
テイル:仲間を大切にする気持ちがあるんだなと思ってな
フィン:…馬鹿にしているの!?
テイル:(遮るように)お前の言葉、そっくりそのまま返してやるよ
テイル:お前たち吸血鬼に、何人の人間が食い殺されたと思っている?
フィン:…っ
フィン:じゃあ…じゃあ…なんで私を助けたのよ!?
フィン:見殺しにすればよかったでしょ!?
テイル:…
フィン:答えてよ!
テイル:俺の目的のために利用させてもらう
フィン:…目的?
テイル:そうだ
テイル:吸血鬼の眷属になれば、五感の活性化に加えて、
テイル:脅威的な回復力と力が手に入る
テイル:俺は化け物の仲間に身を落としてでも、叶えたい願いがあるんだよ
フィン:…
テイル:あぁ、それと
テイル:お前にはまだここにいてもらう
フィン:はぁ!?
テイル:お前にはまだ利用価値がある
テイル:その時がくるまで、部屋で大人しくしておけ
フィン:待って!
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0:テイル、部屋に鍵をかけて出て行く
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フィン:(M)それから、悪夢のような日々が始まった
フィン:テイルと名乗った吸血鬼ハンターは、
フィン:私を四六時中、部屋に閉じ込めた
フィン:出入り口に銀が使われた部屋
フィン:自力で出ることはおろか、扉に触ることもできない
フィン:人間に生かされ、飼い殺しにされる日々…
フィン:こんな屈辱的な思いをしてまで、
フィン:どうして私は生きているんだろう…
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テイル:飲め(コップに入った血液を渡そうとする)
フィン:いらない
テイル:飲まなければ、怪我も治らないし、
テイル:いずれ死ぬぞ
フィン:あんたなんかの血で生かされるくらいなら、
フィン:死んだ方がマシよ
テイル:…
フィン:私が死んだら困るんでしょ?
フィン:あんたに一矢報いれるんなら、
フィン:そっちの方がずっといい
テイル:はぁ…(ため息)
テイル:フィン、そんなに死にたいか?
テイル:なら、もういい。勝手にしろ
フィン:いいの?
フィン:私に利用価値があるから助けたんでしょ?
テイル:お前が本当に死ねるんなら、諦めてやるよ
フィン:どういう意味よ
テイル:飢えと渇きの苦しみは、甘くないってことだ
フィン:私達吸血鬼は、いつだって飢えに苦しんでいる
フィン:知った風な口を聞かないで
テイル:死ぬほどの飢餓感は、お前の想像以上だぞ
テイル:どこまで耐えられるか、試してみるか?
0:
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テイル:(M)俺は自分の腕にナイフを突き立て、線を引いた
テイル:赤黒い血が流れ出す
テイル:それは、赤い雫になって
テイル:絨毯に匂いと一緒にこびりついていく
0:
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フィン:何のつもり?
フィン:生き血だったら、私が飛びつくとでも?
テイル:いや?
テイル:また明日くる
フィン:なんなの、あいつ…
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フィン:(M)それから毎日同じことが繰り返された
フィン:絨毯の血のシミは、広がり続け、
フィン:狭い部屋に血の匂いが少しずつ充満していく
フィン:一切血を接種していない私の身体は、
フィン:次第に限界に近づいていた
フィン:日に日に意識が朦朧(もうろう)とし、
フィン:内側から凍っていくように身体の自由がきかなくなる
フィン:部屋に充満する血の匂いにさえ耐えられず、
フィン:理性を失いそうになっていた
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0:ノックする音
テイル:入るぞ
フィン:ぜぇ…っ、出て、いって!(苦しそうな息遣い)
テイル:ずいぶんいい格好になったな
フィン:う…るさい!
テイル:(腕を切りながら)今日も飲まないつもりか?
フィン:当たり前…だ…!
フィン:あんたの血なんか…さっさと出てい…
フィン:(足がもつれて倒れる)
テイル:おっと(抱き止める)
テイル:大口叩いておいて、このザマか
フィン:はぁ…はぁ…
テイル:どうした?血が飲みたいのか?
フィン:うるさい…!
フィン:その血まみれの腕を近づけないで…!
テイル:強がりはよせ
テイル:もう限界なはずだ
テイル:諦めろ
フィン:嫌だ…!
テイル:じゃあ死ぬまでこの苦しみを味わい続けるか?
フィン:っ…
フィン:…
フィン:(小声)嫌だ…
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フィン:(M)私はテイルの腕から流れ出る血を口にした
フィン:温かい血が私の身体を満たしていく
フィン:あぁ…美味しい…
フィン:血を啜り(すすり)ながら、私の頬を涙が伝う
フィン:私は…自らこいつの軍門に下ったんだ…
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テイル:(M)翌日から、
テイル:フィンは嫌そうな顔をしながらも、俺の血を飲むようになった
テイル:怪我も回復し、体力も徐々に戻ってきていた
テイル:相変わらず口は悪いが、
テイル:反抗するような素振りは見せなくなった
テイル:…屈辱だろう
テイル:吸血鬼は、何より誇りを大事にする
テイル:…本当は、こんな卑怯な手を使いたくはなかった
テイル:でも今はこうするしかないんだ
テイル:あいつを見つけるには…
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0:数日後
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テイル:おい、街に行くぞ
フィン:はぁ?なんで私が
フィン:一人で行けばいいでしょ?
テイル:いい加減、怪我も治ってきただろう
テイル:閉じこもってばかりだと、脳まで腐るぞ
フィン:閉じ込めてるあんたに言われたくないんだけど
テイル:ははっ
フィン:いいの?逃げるかもしれないよ?
テイル:逃げられるなら、とっくに逃げてるだろ?
テイル:そんな体力をつけさせるほど、
テイル:血を与えたつもりもないしな
フィン:嫌なやつ…
テイル:憎まれ口を叩けるようなら大丈夫だ
テイル:行くぞ
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0:テイルはフィンを連れて街へ
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フィン:夜なのに人が多い…
テイル:もうすぐ皆既月食の祭事だからな
テイル:露天も出てるし、日夜問わず、町中お祭り騒ぎだよ
フィン:ふーん…
フィン:あっ…(露天に目を留める)
テイル:何か気になる物でもあったのか?
フィン:別に…
テイル:なんだ、そのブレスレット気に入ったのか?
フィン:そ…そんなわけない…でしょ
フィン:人間が作った物なんて…
テイル:ふっ、素直じゃないやつだな
テイル:店主、これをもらおう
フィン:ちょっ…人の話し聞いて…
テイル:ほらっ(ブレスレットを投げる)
フィン:ぅわっ…
テイル:『御守り』だ
フィン:御守り…?
テイル:行くぞ
フィン:あ…待ってよ…!
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フィン:(M)何をするわけでもない
フィン:祭りで賑わう街を、テイルは私を連れて歩いた
フィン:次の日も、その次の日も
フィン:逃げようと思えば逃げられたのかもしれない
フィン:けれど、なぜか私はそんな気にならなかった
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0:皆既月食の夜
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フィン:あのさ…
テイル:ん?
フィン:その…、最近、なんで毎晩私を外に連れ出すの?
テイル:なんだ、嫌だったのか?
フィン:そうじゃない…けど、なんでかな…って
フィン:この前も、このブレスレット買ってくれたし…
テイル:(被せて)探している奴がいた
フィン:…え?
テイル:そいつは人間も吸血鬼も見境いなく殺す、
テイル:頭のイカれた吸血鬼だ
フィン:どうして、そんな奴、探してる、の…?
テイル:…昔、大切な人を殺された
テイル:俺はずっとその復讐のために生きてきた
テイル:フィン、お前もそいつに襲われたんだろう?
フィン:なんで、知って…
テイル:お前を助けた時、奴と同じ匂いがした
テイル:あいつは一度狙った獲物は絶対に逃がさない
テイル:必ずお前を狙ってまたやってくる
フィン:っ…
テイル:闇に隠れてる吸血鬼を探し出すのは、至難の業だからな
テイル:向こうから来てくれるなら都合がいい
フィン:はは…そっか…じゃあ私はそのための…
テイル:だが、それももう、今夜で終わりだ
フィン:…え?
テイル:昨日奴の匂いがした
テイル:今夜も街に出てくるだろう
テイル:必ず見つける
フィン:…
テイル:さて、そろそろ時間だな(立ち上がりながら)
テイル:フィン、お前の役目はもう終わった
テイル:刺し違えてでも、俺は俺の願いを叶える
テイル:お前は好きに出て行け
テイル:(小声)今まで、ありがとう
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0:テイル部屋を出て行く
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フィン:(M)テイルが出ていった後も、
フィン:私は何時間経っても部屋を動けなかった
フィン:悔しくて、惨めで、情けなくて…
フィン:何を、勘違いしていたんだろう
フィン:私はただのエサだったんだ…
フィン:わかってたことじゃない…最初から
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フィン:(M)きつく握りしめた拳を壁に叩きつける
フィン:鈍い音に混ざって、
フィン:シャランと微かな音が響いて目をあけると
フィン:痺れるように痛む右手には、
フィン:テイルがくれたブレスレットが、キラキラと揺れていた
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テイル:(回想)御守りだ
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フィン:(独り言のように)御守り…?
フィン:あれ…?
フィン:吸血鬼が私を探してるなら、
フィン:最後まで私を囮に使えばいいのに…
フィン:どうして、私を置いていったの…?
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テイル:(回想)刺し違えてでも、俺は俺の願いを叶える
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フィン:(M)私は部屋を飛び出した
フィン:わからない…わからない…わからない…
フィン:テイルは私を利用していただけだった
フィン:そのはず…そのはずなのに…!
フィン:ブレスレットを握りしめ、必死にテイルを探した
フィン:見覚えのある路地裏が、
フィン:皆既月食に照らされて、赤く染まっている
フィン:そこにー、
フィン:街の赤に同化するように倒れているテイルを見つけた
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フィン:テイル!生きてる!?
フィン:っ…!血が…!止血を…
フィン:(止まることなく血が流れ出ている)
フィン:ねぇ!テイル!返事して!
テイル:う…あぁ…フィン…?
フィン:良かった、生きて…
テイル:(被せて)良かった…今度は守れた…
フィン:え…?
フィン:何言ってるの…?
フィン:あんたの目的は、大切な人の仇討ち…でしょ…?
テイル:あぁ…そうだ…
テイル:あの時、守れなくて…憎くて…悔しくて…
テイル:無力な自分が…一番許せなくて…
テイル:なのに、復讐する力もなくて…
テイル:ずっと…ずっと…苦…しくて…
テイル:死にたかった…
テイル:死んで、早くあいつのとこに行きたかった…
テイル:楽に、なりたかった…
テイル:俺にそんな権利なんかないのにな…
テイル:がはっ…!
フィン:テイル!
テイル:…そんな時、この路地裏で死にかけてるお前を見つけた
テイル:チャンスだと思った
テイル:吸血鬼の眷属になれば力が手に入る
テイル:仇をとれば、死んでも許される気がした…
テイル:お前なんかどうなってもよくて、
テイル:最後まで利用し尽くして、
テイル:用済みになったら、のたれ死んだって構わなかった…
テイル:そのはずだったのに…
テイル:いつのまにか…見捨てられなくなってた
テイル:お前だって憎い吸血鬼のはずなのにな…
テイル:げほっげほっ…うっ…(血を吐く)
フィン:なんで…今更そんなこと言うのよ…
テイル:ぜぇ…ぜぇ…、フィンごめんな…
テイル:お前は…もう自由だから…
フィン:なんで…なんであんたはそう自分勝手なのよ!?
フィン:自分の都合で私を生かしておいて、
フィン:今度は勝手に死ぬ!?
フィン:ふざけないでよ…!!
テイル:…(苦しい呼吸)
フィン:…もう…もう、一人は嫌だ…
フィン:一人は寂しい…よ
フィン:人から隠れて、怯えて、逃げて、殺して、血を求めて彷徨って…
フィン:そんな風に一人で生きていくのはもう嫌だよ…
テイル:フィン…?
フィン:テイルのせいで、
フィン:私は誰かといる暖かさを知っちゃったのよ!
フィン:もう一人になんて戻れない…
フィン:なんで…なんで死んじゃうの…
フィン:逝か…ないで…
テイル:っ…ごめん…ごめん…な
フィン:テイルなんて大っ嫌い…!
テイル:ごめん…
フィン:謝るくらいなら…死なないで…
フィン:お願いだから…
テイル:あぁ…死にたくない…なぁ…
テイル:なんで今そんなこと言うんだよ…
テイル:お前への気持ち…気づかないフリしてたのに…
テイル:どうしてくれる…お前のせいだ
テイル:お前のせいで、死ぬのが怖くなっちまったじゃないか…!
テイル:お前をおいて…死にたく…ない
フィン:じゃあ…死なないでよ…
フィン:意地でも生きてよ…!
テイル:がはっ…(苦しい呼吸音)
フィン:テイル…!
フィン:なんで…なんで…私は…!
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0:静かに降り出す雨
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テイル:な…ぁ、フィ…ン…
テイル:お前に…言…い、たい…ことが…ある…んだ…
フィン:なに…聞こえないよ…
テイル:もっとこっち…こい…
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フィン:(M)冷たい雨が頬を打つ
フィン:握った手がどんどん冷たくなっていく
フィン:やめて…
フィン:テイルの命を奪わないで…
フィン:静かに降りだした雨の音が、やけにうるさかった
フィン:雨音の隙間から、彼の言葉が途切れ途切れに聞こえる
フィン:静かにしてよ…
フィン:ねぇお願いだから…止んで…
フィン:少しの間でいいから
フィン:テイルの声がよく聞こえない
フィン:たったの一言も、聞き漏らしたくないの
フィン:声…これが…きっと…最後なん…だから…
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テイル:(M)静かに降る雨が、涙で醜く歪む俺の顔を隠してくれる
テイル:これでカッコ悪い泣き顔を見られなくて済む
テイル:雨のせいだって言い訳できる
テイル:最期に見せる顔、少しはマシになってるかな…
テイル:フィンの震えた唇が、血と雨と涙で濡れた俺の頬に触れる
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テイル:フィン、泣くな
テイル:ーーーーー(間でも、何か言葉を入れてもいいです)
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テイル:(M)声にならない声で、最期の言葉を紡ぐ
テイル:ちゃんと届いただろうか
テイル:薄れゆく意識の向こう側、
テイル:フィンの絶叫が雨に濡れた路地裏を、彩った
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0:長めの間
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フィン:(M)あれから、どれだけの時間が過ぎただろう
フィン:吸血鬼も吸血鬼ハンターも、
フィン:御伽噺(おとぎばなし)として語られる
フィン:空想の存在となるほどには、長い年月が経った
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フィン:(M)私はーー生きている
フィン:『あの日』、私はもう誰の血も吸わないと決めた
フィン:どれだけ苦しい思いをしても死ぬつもりだった
フィン:最後に口にした、
フィン:雨と涙まじりのテイルの血を、いつまでも覚えていたかったから
フィン:ーでも、いくら月日が流れても吸血衝動すら起こらず、私は死ななかった
フィン:何故だかはわからない
フィン:けれど、テイルが生きろと言っているような気がした
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フィン:(M)私の時間が、
フィン:あと何年、何十年、何百年続くのか分からない
フィン:けれど、世界最後の吸血鬼として
フィン:私はこの世界の夜で生きていく
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フィン:『人に生かされた吸血鬼』
フィン:そんな御伽噺に自ら幕を下ろす、その時まで
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0:タイトルコール
テイル:ー御伽噺に幕切れをー