台本概要
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タイトル | ■話 ぼくたちのねこ |
---|---|
作者名 | 野菜 (@irodlinatuyasai) |
ジャンル | ホラー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 30 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
コワレテ、いたのは。 リアル狂気ホラーです。悲鳴はありませんが・・・ 明るく騒がず、狂った演技をしたいときにどうぞ。 この世界に迷い込んでいる「ねこ」の話が『0話 ねことよばれて』になります。 376 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
亜理子 | 女 | 39 | コワレテイル女。原因は息子の有馬を亡くしたこと。庭でねこをひろってきた。 |
和馬 | 男 | 42 | コワレテイル妻を愛している。息子の有馬を愛していた。ねこの世話以外の全ての家事を担当している。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
和馬:ああ、これで、最後か。
和馬:家の鍵を開ける。ドアノブの鍵、ドアの上部の鍵、ドアの下に追加した鍵。面倒だが、こうしないと妻が徘徊してしまう。
0:
和馬:ただいまー
亜理子:おかえりなさい、和馬さん!
和馬:……どうしたの、その子。
亜理子:庭に迷い込んできたねこよ!ねえ…飼ってもいいでしょう?
和馬:うーん。とりあえず、いろいろ確認してからにしないとね?
亜理子:えー。
0:
和馬:帰ると、妻の亜理子はねこと手をつないでいた。
0:
和馬:あのね。捨て猫でも勝手に自分のものにしちゃいけないんだよ。迷子かもしれない。そうでなくても、法律で決まっていていろいろ手順をふまないといけないんだ。
亜理子:でもこの子怪我してる。
和馬:……明日、病院に連れていく。今日は遅いし、動くのは明日からにしよう。
亜理子:よかった!さあ、いこうね~ねこ。
和馬:…………。
0:
亜理子:それじゃあ、とりあえずお風呂入ろうか。どろんこだもんね。
和馬:ひとりで大丈夫?
亜理子:ええ!有馬をお風呂に入れるの、和馬も見てるでしょ?
和馬:そうだったね。
亜理子:ああ、ごめんね、ねこ。あのね、この家にはもう一人お兄ちゃんがいるのよ。有馬っていう子なの。私たちの大切な息子よ。ちょっとおとなしすぎるけれど。
和馬:ずいぶんとおとなしいみたいだね、ねこ。
亜理子:それでも傷口にしみるみたい、痛そう…………。あとで包帯巻こうね。
和馬:入っても、いいかな。
亜理子:うん。ほら、さっきも会ったけど、パパだよー。
和馬:こうしてみるとけっこう重症だな。保険証があればな…………。
亜理子:どういうこと?
和馬:あ、ああ。忘れて。ごはん作ってくるからね。ちゃんと髪乾かすんだよ。できる?
亜理子:できる!ありがと。
0:
和馬:まず、病院の住所とタクシー代。タクシーは明日予約するとして…………。診断書、書かせられるかな。
亜理子:お風呂あいたよー。
和馬:ねこ、暴れたりしなかった?
亜理子:本当におとなしかった。やっぱり弱ってるのかなあ。
和馬:かもね。あ、服どうしたの。
亜理子:お兄ちゃんのおさがりがぴったりだったの!
和馬:そっか、とっておいてよかったな。有馬もお兄ちゃんなんて呼ばれる日が来るとはな………。
亜理子:ねー。あ、ごめんね待たせたかな。ごはん食べる?
和馬:食事は、ねこの分と一緒に机の上に置いてある。何食べるかわかんないけど、口も怪我してるかもだから好きにさせてあげて。
亜理子:はーい。
和馬:僕はちょっと電話してくるから。先食べてて。
亜理子:こんな時間に電話なんて珍しいね。
和馬:まあ事が事だからね。
亜理子:あ……行っちゃった。
亜理子:ねえねこくん、あーん。……ダメか。牛乳は……これも嫌?うーん。好きなの食べていいんだからね?和馬の…パパの料理おいしいよ?あ、そうだ私も食べないとね。
和馬:おまたせ。
亜理子:おかえり。今日もごはんおいしいよ~。
和馬:薄味にしたけど気にならなかった?
亜理子:私は全然!ねこは……見ての通り。
和馬:警戒してるんだろうね。とりあえずそのねこの捜索願は出てなかったし、今夜はここで過ごしてもらって、連絡を待とう。
亜理子:任せるよ~。
和馬:そこでなんだが…亜理子、久しぶりだけど外に出られそうかな?僕は他に行かなきゃならない所がいくつかあってね。これがタクシーの運転手さんに渡す封筒、こっちが受付さんに渡す封筒。お財布にお金は入れておく。
亜理子:おおお。おそと!
和馬:ねこの診断書を書いてもらうんだよ。できそう?後日僕が行こうか?
亜理子:それだとねこの怪我がなかなか治らないよ!私行く!
和馬:それと、封筒は開けちゃだめだからね。
亜理子:え?うん!わかった!
和馬:…………(ねこを見て溜息)
亜理子:ねこが、どうかした?
和馬:このロープは、しばらくしまっておこうか。
亜理子:あ!すっかり忘れてた!準備してくれたのにごめんね。
和馬:いいんだよ。ねこがきて亜理子、嬉しそうだし。
亜理子:有馬、怒ってるかな。今日そっちに行くって言ってたのに。
和馬:どうだろうね。そうだ、今日はもう有馬の着替え終わらせた?
亜理子:そうだった!ねこくん、ゆっくり食べてね。行ってきます!
0:
和馬:なあ。
和馬:君はどこから庭に入ったんだい?
和馬:庭と外は人が出入りできないようにしてあるはずなんだけど…………ねえ。教えてくれないかな。
和馬:…………君は本当にしゃべらないね。それに。
亜理子:和馬ー!ねこくん有馬の部屋に寝かせていいかなー?
和馬:いいよー。
和馬:…………あの日の有馬みたいだ。
0:
0:次の日の夜
和馬:今日はおでかけ頑張ったね。診断書ありがとう。…………左目の近くに大きな切り傷、体中に打撲、あざ。そして左腕骨折、と。
亜理子:お医者さんは安静にしてれば後遺症は残らないって。
和馬:僕は警察署、役所、学校に行ってきた。その子を探してるって話は聞かなかったよ。
亜理子:飼える?飼える?
和馬:とりあえず傷が癒えるまでは家にいてもらうにしても、ずっと飼うとなると大変かな。
亜理子:そっか………
0:
亜理子:それから一か月くらい経った。ねこはだんだん慣れて、ごはんも食べるようになったし、だいぶ怪我も治ってきた。有馬にはなかなかなつかなかったけど、それでも怖がらないようにはなった。
亜理子:ん?ねこ、それ気になるの?それはね。お兄ちゃんの野球道具だよ。まだ骨折治ってないから危ないかな……ま、いいか。ボール、自由に遊んでいいからね。
亜理子:それじゃあ私、お兄ちゃんのお世話してくるから。いい子にしてるんだよ。
0:
0:ある夜の晩。和馬の布団の枕元。
和馬:夜中に、ふと、目が覚めた。枕元に立つ人影が、顔の見えない子供の影が、こちらを見ている。体が動かない。その子供は、左目のあたり、ぱっくりと、割れた頭蓋骨がのぞいている。
和馬:(嬉しそうに)久しぶりに、会いに来てくれたんだな。有馬。
和馬:有馬の亡霊は、壁をすりぬけて隣の部屋へと消えた。
0:
亜理子:おはよう、和馬さん。
和馬:…………亜理子?
亜理子:ああ、勝手に出しちゃってごめんね。タンスにしまっていた位牌とか、写真なんだけど。一緒に準備したらよかったね。
和馬:正気に。戻ったのか。
亜理子:あはは、そうだよね。どうかしてたよね。子供のマネキンを有馬だと思い込んだり、世話したり、有馬のこと探しに外に出て行っちゃったり。あの子が死んで…………九歳だったよね。
亜理子:もう五年近くも経つのにね。
和馬:僕はゆっくりと、振り慣れた、へこみのある金属バットを握る。
亜理子:昨日の晩ね、有馬が夢に出てきたの。狭い暗い所にしまわれて、きっと寂しかったよね。そういえば、ねこ、有馬に似てたような………。
和馬:そうかもしれないね。そういいながら愛しい亜理子の後ろに立つ。
亜理子:あ、そうそう。ねこって呼んでた男の子、さっき帰ったよ。ありがとうと………にげて、って言ってたかなあ。
和馬:僕は手に持っていた金属バットを振り上げた。
和馬:ああ、これで、最後か。
和馬:家の鍵を開ける。ドアノブの鍵、ドアの上部の鍵、ドアの下に追加した鍵。面倒だが、こうしないと妻が徘徊してしまう。
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和馬:ただいまー
亜理子:おかえりなさい、和馬さん!
和馬:……どうしたの、その子。
亜理子:庭に迷い込んできたねこよ!ねえ…飼ってもいいでしょう?
和馬:うーん。とりあえず、いろいろ確認してからにしないとね?
亜理子:えー。
0:
和馬:帰ると、妻の亜理子はねこと手をつないでいた。
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和馬:あのね。捨て猫でも勝手に自分のものにしちゃいけないんだよ。迷子かもしれない。そうでなくても、法律で決まっていていろいろ手順をふまないといけないんだ。
亜理子:でもこの子怪我してる。
和馬:……明日、病院に連れていく。今日は遅いし、動くのは明日からにしよう。
亜理子:よかった!さあ、いこうね~ねこ。
和馬:…………。
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亜理子:それじゃあ、とりあえずお風呂入ろうか。どろんこだもんね。
和馬:ひとりで大丈夫?
亜理子:ええ!有馬をお風呂に入れるの、和馬も見てるでしょ?
和馬:そうだったね。
亜理子:ああ、ごめんね、ねこ。あのね、この家にはもう一人お兄ちゃんがいるのよ。有馬っていう子なの。私たちの大切な息子よ。ちょっとおとなしすぎるけれど。
和馬:ずいぶんとおとなしいみたいだね、ねこ。
亜理子:それでも傷口にしみるみたい、痛そう…………。あとで包帯巻こうね。
和馬:入っても、いいかな。
亜理子:うん。ほら、さっきも会ったけど、パパだよー。
和馬:こうしてみるとけっこう重症だな。保険証があればな…………。
亜理子:どういうこと?
和馬:あ、ああ。忘れて。ごはん作ってくるからね。ちゃんと髪乾かすんだよ。できる?
亜理子:できる!ありがと。
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和馬:まず、病院の住所とタクシー代。タクシーは明日予約するとして…………。診断書、書かせられるかな。
亜理子:お風呂あいたよー。
和馬:ねこ、暴れたりしなかった?
亜理子:本当におとなしかった。やっぱり弱ってるのかなあ。
和馬:かもね。あ、服どうしたの。
亜理子:お兄ちゃんのおさがりがぴったりだったの!
和馬:そっか、とっておいてよかったな。有馬もお兄ちゃんなんて呼ばれる日が来るとはな………。
亜理子:ねー。あ、ごめんね待たせたかな。ごはん食べる?
和馬:食事は、ねこの分と一緒に机の上に置いてある。何食べるかわかんないけど、口も怪我してるかもだから好きにさせてあげて。
亜理子:はーい。
和馬:僕はちょっと電話してくるから。先食べてて。
亜理子:こんな時間に電話なんて珍しいね。
和馬:まあ事が事だからね。
亜理子:あ……行っちゃった。
亜理子:ねえねこくん、あーん。……ダメか。牛乳は……これも嫌?うーん。好きなの食べていいんだからね?和馬の…パパの料理おいしいよ?あ、そうだ私も食べないとね。
和馬:おまたせ。
亜理子:おかえり。今日もごはんおいしいよ~。
和馬:薄味にしたけど気にならなかった?
亜理子:私は全然!ねこは……見ての通り。
和馬:警戒してるんだろうね。とりあえずそのねこの捜索願は出てなかったし、今夜はここで過ごしてもらって、連絡を待とう。
亜理子:任せるよ~。
和馬:そこでなんだが…亜理子、久しぶりだけど外に出られそうかな?僕は他に行かなきゃならない所がいくつかあってね。これがタクシーの運転手さんに渡す封筒、こっちが受付さんに渡す封筒。お財布にお金は入れておく。
亜理子:おおお。おそと!
和馬:ねこの診断書を書いてもらうんだよ。できそう?後日僕が行こうか?
亜理子:それだとねこの怪我がなかなか治らないよ!私行く!
和馬:それと、封筒は開けちゃだめだからね。
亜理子:え?うん!わかった!
和馬:…………(ねこを見て溜息)
亜理子:ねこが、どうかした?
和馬:このロープは、しばらくしまっておこうか。
亜理子:あ!すっかり忘れてた!準備してくれたのにごめんね。
和馬:いいんだよ。ねこがきて亜理子、嬉しそうだし。
亜理子:有馬、怒ってるかな。今日そっちに行くって言ってたのに。
和馬:どうだろうね。そうだ、今日はもう有馬の着替え終わらせた?
亜理子:そうだった!ねこくん、ゆっくり食べてね。行ってきます!
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和馬:なあ。
和馬:君はどこから庭に入ったんだい?
和馬:庭と外は人が出入りできないようにしてあるはずなんだけど…………ねえ。教えてくれないかな。
和馬:…………君は本当にしゃべらないね。それに。
亜理子:和馬ー!ねこくん有馬の部屋に寝かせていいかなー?
和馬:いいよー。
和馬:…………あの日の有馬みたいだ。
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0:次の日の夜
和馬:今日はおでかけ頑張ったね。診断書ありがとう。…………左目の近くに大きな切り傷、体中に打撲、あざ。そして左腕骨折、と。
亜理子:お医者さんは安静にしてれば後遺症は残らないって。
和馬:僕は警察署、役所、学校に行ってきた。その子を探してるって話は聞かなかったよ。
亜理子:飼える?飼える?
和馬:とりあえず傷が癒えるまでは家にいてもらうにしても、ずっと飼うとなると大変かな。
亜理子:そっか………
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亜理子:それから一か月くらい経った。ねこはだんだん慣れて、ごはんも食べるようになったし、だいぶ怪我も治ってきた。有馬にはなかなかなつかなかったけど、それでも怖がらないようにはなった。
亜理子:ん?ねこ、それ気になるの?それはね。お兄ちゃんの野球道具だよ。まだ骨折治ってないから危ないかな……ま、いいか。ボール、自由に遊んでいいからね。
亜理子:それじゃあ私、お兄ちゃんのお世話してくるから。いい子にしてるんだよ。
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0:ある夜の晩。和馬の布団の枕元。
和馬:夜中に、ふと、目が覚めた。枕元に立つ人影が、顔の見えない子供の影が、こちらを見ている。体が動かない。その子供は、左目のあたり、ぱっくりと、割れた頭蓋骨がのぞいている。
和馬:(嬉しそうに)久しぶりに、会いに来てくれたんだな。有馬。
和馬:有馬の亡霊は、壁をすりぬけて隣の部屋へと消えた。
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亜理子:おはよう、和馬さん。
和馬:…………亜理子?
亜理子:ああ、勝手に出しちゃってごめんね。タンスにしまっていた位牌とか、写真なんだけど。一緒に準備したらよかったね。
和馬:正気に。戻ったのか。
亜理子:あはは、そうだよね。どうかしてたよね。子供のマネキンを有馬だと思い込んだり、世話したり、有馬のこと探しに外に出て行っちゃったり。あの子が死んで…………九歳だったよね。
亜理子:もう五年近くも経つのにね。
和馬:僕はゆっくりと、振り慣れた、へこみのある金属バットを握る。
亜理子:昨日の晩ね、有馬が夢に出てきたの。狭い暗い所にしまわれて、きっと寂しかったよね。そういえば、ねこ、有馬に似てたような………。
和馬:そうかもしれないね。そういいながら愛しい亜理子の後ろに立つ。
亜理子:あ、そうそう。ねこって呼んでた男の子、さっき帰ったよ。ありがとうと………にげて、って言ってたかなあ。
和馬:僕は手に持っていた金属バットを振り上げた。