台本概要
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タイトル | 一葉の詩が綾なす出会いは。-3- |
---|---|
作者名 | なぎ@泣き虫保護者 (@fuyu_number10) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 3人用台本(男1、女2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
雫が丘学園。 転入生の椎名 綾子。彼女は少々おどおどしすぎなのではないか。 一葉のお節介は続く。 ※台本をご利用になる際は、Twitterにてぜひお報せくださいませ。 お伺いできる限りお邪魔させていただければと存じます。 特に商用利用の場合において、著作権は放棄していません。無断での転載はお断りします。 97 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
一葉 | 女 | 66 | 深山 一葉(みやま ひとは)。委員長。 |
綾子 | 女 | 66 | 椎名 綾子(しいな あやこ)。転入生。 |
怜央 | 男 | 8 | 坂口 怜央(さかぐち れお)。一葉の腐れ縁。一葉・綾子と同級生。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
一葉:(N)私は結構朝早めに登校する人間で。
一葉:(N)っていうか、登校中に何かトラブルが起こって遅刻するのが嫌なだけだけど。
一葉:
一葉:(N)それでも私のクラスには何人かが登校していて、
一葉:(N)ちらほらと会話の輪が出来ている。
一葉:
一葉:(N)つくづく、「真面目な人たちだな」と思う。
一葉:
一葉:(N)そんな真面目人間の中に、もう一人加わってきた。
一葉:(N)「あーや」だ。
綾子:おっ、おはよう、ございます!
一葉:(N)まだ挙動不審なところがなくはないけれど・・・。
一葉:(N)それでも皆は、「あーや、おはよー!」とか声をかけてる。
一葉:(N)もう「あーや」って呼び方、浸透してるのか・・・。
一葉:
一葉:(N)ぺこぺことお辞儀しながら私の隣まで来たあーやは、開口一番。
綾子:ひっ、一葉、さん!おはようございます!昨日は、ごめんなさい!
一葉:(N)なぜか謝罪してきたのだ。
一葉:
一葉:おはよ、あーや。ってか、なぜに謝罪?
綾子:その、昨日、「委員長さん」って呼んじゃって・・・!
一葉:ん?そうだっけ?
一葉:
一葉:(N)たぶん、だけど、あーやは気にしすぎなのだと思っている。
一葉:(N)だから、私はあえて、とぼけてみる。
綾子:はい、なので・・・ごめんなさい、しとかないと、って。
一葉:そうだったのね。でも大丈夫だよあーや。全然気にしてないから!
綾子:だったら、いいん、ですけど・・・。
一葉:(N)それでも不安げなあーや。それじゃあ・・・。
一葉:
一葉:っていうか、あーやってさ?
綾子:はい・・・?
一葉:誰にでもそんな感じ?敬語でしゃべってくれてるけど。
綾子:んと・・・親しい友達にはタメ口でお話出来るんですけど・・・。
一葉:なるほどねー。ま、来たばっかりだもんね。でもだからって、気にしなくっていいよ。
一葉:私は全然タメ口でも平気だし。
綾子:はい、ありがとうございます!
一葉:(N)やっと笑顔が見れたぁ。
一葉:(N)やっぱりあーやって、か、かわi・・・っと。
一葉:
一葉:あの、さ。もしよかったら、なんだけど・・・。
綾子:何ですか・・・?
一葉:今日のお昼、一緒していい?
綾子:えええ!?私と、ですか!?
一葉:そんな驚かんでも・・・ダメかな?
綾子:いえいえ、全然!ぜひ!よろしくおねがいします!
一葉:(N)両手を前に突き出しながら、ぱたぱたさせるあーや。
一葉:(N)こうして見ていると、小動物みたいでかわ・・・いい。
綾子:あの、一葉さん・・・?
一葉:へ?あー、ごめんごめん!どこで食べよっか・・・?
綾子:そうですね・・・食堂、ですかね・・・?
一葉:(N)せっかくの晴天だし、外もいいかなと提案しようとしたところで。
怜央:おっす、委員長さん、椎名さん!
一葉:(N)邪魔者、現る。
綾子:おはよう、ございます、坂口君・・・!
一葉:あのさー、私言ったよねぇ?委員長って呼ぶなって。
怜央:まぁまぁ、んで?何の話?
綾子:えっと、今日のお昼ご飯のお話です・・・。
一葉:今日はあーやと一緒に食べようと思ってね。
怜央:なるほどねー。だったらさ・・・講堂とかどう?
綾子:講堂、ですか?
一葉:(N)講堂か・・・思いつかなかったなぁ・・・盲点だった・・・。
怜央:そーそー。椎名さん入ったことある?
綾子:いえ、まだないんです・・・!
怜央:いいとこだよ?ステンドグラスとか使ってて結構きれいなの。ウチの名物。
一葉:はいはーい!じゃあ講堂で決まり!いいよね、あーや?
綾子:は、はいっ!よろしくお願いします!
怜央:んまぁ、決まったんならよかったよかった。
綾子:坂口君、教えてくれてありがとうございます!
一葉:(N)怜央は照れ臭そうに右手をひらひらして。
怜央:あーうん、まぁ他にもいろいろ名物あるから、委員長さんと探検してみるといいよ。
一葉:一応言っておくわ。怜央、さんきゅ、助かったわ。
怜央:二人で楽しんで来~い。
一葉:(N)こういう「いいやつ」だったりするから、
一葉:(N)私も何だかんだ居心地がい・・・(咳払い)んんっ。
一葉:(N)でも、コイツに先に提案されたのが悔しいのも、本心だったりする。
一葉:(N)あれ?なんで私こんなこと考えてるんだろう・・・?
一葉:(N)あー、いやいや、考えるのよそう。
一葉:(N)先生に頼まれた以上に、
一葉:(N)あーやのコトが気になっている、私なのだった。
0:場面転換。2限目終了後の中休み。
綾子:(N)私は何となく、廊下から外を眺めていました。
綾子:(N)クラスの皆はとても優しくて。
綾子:(N)授業で難しいところも、一葉さんや皆がいろいろサポートしてくれて。
綾子:(N)一葉(ひとは)さんに聞いた話だけれど、この学校はどのクラスもアットホームで、
綾子:(N)いわゆる「不良」な人がいないんだ、と。
一葉:まぁ校則違反の処分がキツすぎて、うっかり違反できない、っていうね・・・。
綾子:(N)遠い目をする一葉さんを見て、私はその時、引きつった笑顔だった、と思う・・・。
綾子:(N)その時だった。私の肩がそっと「とんとん」と指で叩かれた。
綾子:
綾子:えっ?一葉さん?
綾子:
綾子:(N)彼女は窓から「ぐいー」と目いっぱい身体を外に乗り出すと、
一葉:あっちにさ、教会っぽいレンガの建物あるでしょ?あれが講堂だよ!
綾子:ひっ、一葉さん!あぶ、危ないですっ!
綾子:
綾子:(N)私は必死に一葉さんを廊下に戻します!
一葉:やー、あははっ、あーやって意外に力あるんだね~!
綾子:感心してる場合じゃ・・・ないですよぉ・・・。
綾子:落ちたらどうするんですか・・・!
一葉:いやまぁ・・・ここ1階だしね。
綾子:(N)落ち方によっては大ケガするのに・・・。
綾子:(N)一葉さん、意外にアクティブで・・・お転婆(おてんば)?
一葉:っていうか、あーやこそぼーっとしてたよ?どうしたの?具合悪い?
綾子:えっ?いえ、そう言うわけじゃなくて・・・。
綾子:
綾子:(N)本当にちょっと休憩、と思っていただけなのだけど・・・。
一葉:そっか。ならよかったー!
綾子:(N)にぱー、と笑顔の一葉さん。失礼だけど、可愛いなぁ・・・。
一葉:講堂ね、外から見るのもいいけど、中身も凄いからね。楽しみにしててね!
綾子:(N)そう一言残して、一葉さんが教室に戻っていくとき、丁度予鈴が鳴りました。
0:場面転換、お昼休み。
綾子:(N)お昼休み。一葉さんと、お昼ご飯です!
綾子:(N)数分歩くと、講堂の厳かな姿がはっきりと見えてきました。
一葉:さっきも聞いたけど、あーやってお昼はお弁当なのね。
綾子:(N)朝買ってきたというパンと飲み物が入ったトートバッグを持って、
綾子:(N)一葉さんが話しかけてくれました。
綾子:
綾子:そうですね、父のもあるので、基本はお弁当ですね。
一葉:えっ?
綾子:えっ?
一葉:ということは、お弁当ってあーやの手作り?すご・・・!
綾子:いえいえ、中学のころからやってますし、慣れっこですよ?
一葉:いいなぁ・・・あたし、将来あーやと結婚しようかなぁ・・・。
綾子:はぇ?
一葉:何てね、冗談冗談!てへぺろー!ほら、着いたよー!
綾子:(N)悪戯っぽくそう言うと、一葉さんは先に講堂に入っていきます。
綾子:(N)うん、冗談、・・・・だよ、ね・・・?それよりも。
綾子:
綾子:ふあぁ・・・!すごい・・・!!
綾子:
綾子:(N)この講堂、いつ建てられたんだろう・・・とっても歴史がある感じがするし、
綾子:(N)何より・・・キレイ・・・!なんて、入り口で圧倒されていると。
一葉:ほら、あーや!こっちー!
綾子:(N)一葉さんに手招きされて、ベンチのような長椅子に横に並んで座ります。
綾子:(N)外からの光が、ステンドグラスでキラキラ、たくさんの色を産みだして。
綾子:(N)そして、中の空気はとっても澄んでいて、清らかな雰囲気がすごい・・・。
綾子:
綾子:一葉さんの言ってた通り、ですね・・・すごく、素敵です・・・!
綾子:
綾子:(N)私は思わず、スマホを取り出して、あちこち撮影してしまいます。
綾子:(N)そして、この景色を・・・。
一葉:どしたのあーや、ノートなんか出して。
綾子:(N)水色の表紙のノートに、赤いボディのボールペン。
綾子:(N)感じた気持ちを、そのままメモしていきます。
綾子:
綾子:あ、えと。
綾子:
綾子:(N)どう説明しようかな。
綾子:
綾子:実は、ですね。私、将来何かを書く仕事がしたくって。
綾子:それで、色んなヒントになりそうなことを、ノートに書いておいて、
綾子:後で使えるといいな、って・・・友達に手紙も書きたいですし・・・。
綾子:
綾子:(N)一瞬きょとん、とした一葉さんですが、さっきの「にぱー」っていう笑顔で、
一葉:あーやって、そう言うのが好きなんだね!
一葉:ってか、それって取材じゃない!どれどれ、どんなの書いてるの?
綾子:わわ、だだ、だめ、です!秘密、です!
一葉:むー、そっかぁ・・・残念・・・
綾子:(N)本気で残念そうな一葉さんを見ていると、ちょっと可哀想かも、
綾子:(N)と思いましたけど、ダメです・・・ここに書いている中身は、内緒。
綾子:
綾子:それより、ご飯、・・・食べませんか?
一葉:あ、そだね、ぱぱっと食べちゃって、今日は講堂を探検しよ?
綾子:はいっ!
0:場面転換、次の日の朝。
綾子:はぁっ、は、はっ!
綾子:
綾子:(N)私は慌てていました。
綾子:(N)寝坊してしまって、もはや朝のホームルームぎりぎり・・・!
綾子:(N)でもあと少し、あの角を曲がれば教室・・・!
綾子:
綾子:きゃあっ!!
一葉:わっと・・・あっ、あーや!?大丈夫!?
一葉:あーあーもう・・・色々飛び散っちゃって・・・。
綾子:(N)どうして一葉さんが・・・?
綾子:(N)わ、カバンの中身、散乱してる・・・。
綾子:(N)カバン、焦っててしっかり閉じてなかったんだ・・・。
一葉:お、このノート・・・あれ?これって・・・
綾子:ひっ、一葉さん、それは見ないで・・・!
綾子:
綾子:(N)なるべくそっと、一葉さんから水色表紙のノートを取り返します。
一葉:あ、ごめんねあーや!えっと・・・
綾子:(N)とりあえず、といった感じで、一葉さんは散乱したノートや筆記用具を
綾子:(N)集めてくれました。
綾子:
綾子:ありがとうございます・・・一葉さん、怪我してませんか?
一葉:アタシは大丈夫。あーやこそ大丈夫?
綾子:はい、大丈夫です。ご迷惑、おかけしました・・・。
一葉:いーのいーの!ほら、あーや立てる?
綾子:あ、はい・・・。
綾子:
綾子:(N)一葉さんが私の手を引いて立たせてくれます。
綾子:(N)と、そこでチャイムが鳴ってしまいました。
一葉:ありゃ、チャイム鳴っちゃった。
一葉:まぁ、あーやが来なくって探してたから、良かったよ!
綾子:そうだったん、ですね。本当にごめんなさい。
一葉:いいっていいって!さ、教室行こ!
綾子:はい・・・!
綾子:
綾子:(N)一葉さん、私のこと気にしてくれてて、いつも嫌な顔とか、
綾子:(N)怒った顔とか全然しないなぁ・・・すごいなぁ・・・。
綾子:(N)私には、大げさかもしれないけど、女神様、みたいに一瞬、見えちゃった。
綾子:(N)そして、お昼休み。
一葉:ねー、あーや?
綾子:はい?
一葉:カニのウィンナー、おいしそうだね・・・?
綾子:え?あっ!
綾子:
綾子:(N)流れるような割り箸(わりばし)さばき・・・。
綾子:(N)さらわれるカニさんウィンナー・・・。
一葉:んふふ・・・あーん・・・
綾子:(N)そしてカニさんは哀れ、一葉さんのお腹の中に・・・。
綾子:
綾子:・・・一葉さん。
一葉:・・・ごめん。
綾子:力作だったのにぃ・・・。
一葉:ほんとごめんて・・・唐揚げあげるから・・・はいっ。
一葉:そだ、力作といえば、あーや。
綾子:はい?
一葉:あーやは将来作家さんみたいなことしたい、って言ってたじゃない?
綾子:あ、はい、モノ書きのお仕事がしたいな、って。
一葉:だったら、このサイト、知ってる?
綾子:(N)そう言って一葉さんが見せてくれたスマホのサイト。
綾子:(N)そこは・・・。
綾子:
綾子:あ、「monokaki(ものかき)」ですよね。
綾子:知ってますよ!
一葉:お、そうなの?あたし、ここに詩をアップしてる人のファンなんだー。
一葉:でもね、最近あんまり更新されてなくってね・・・。
綾子:そうなんですか・・・でもその方の事情もあるでしょうし・・・。
一葉:そだよね。でもいつも力作アップしてるからさ、楽しみにしてるの。
綾子:作家さんの力になりますよ、それ!「好きです!」とか押してます?
一葉:いっぱい押してあげたいんだけどね・・・あれ1回しか押せないじゃない?
綾子:んー、だったらDMはどうでしょう?
一葉:それも考えたんだけどね。私の気持ちを押し付けてるみたいでなんか・・・ねぇ・・・。
綾子:なるほど・・・そうですねー。
綾子:(N)二人でウンウンと唸っていると。
一葉:ところであーや、いきなりなんだけどさ?
綾子:はい?
一葉:良かったらさ、連絡先交換しない?緑のアレ。
綾子:あっ、はいっ!一葉さんならぜひ!
一葉:えへへ~。んじゃ・・・はい、これアタシのアカウント。
綾子:ありがとうございます!
綾子:
綾子:(N)緑のアプリの連絡先を交換して、早速スタンプを送ってみます。
一葉:え・・・?なにこれ・・・?
綾子:えっと、・・・変、でした?
一葉:なんというか・・・個性的、だねぇ・・・?
綾子:(N)あれ・・・?安全帽のネコのスタンプ、ヘンなのかな・・・?
綾子:
綾子:シュールな感じがすごく好きなんですけど・・・。
一葉:ああ・・・そうなんだ・・・。
一葉:それはそれとして・・・あーや?
綾子:はい?
一葉:あたしさ、今朝あーやとぶつかった時に、
一葉:あーやのノート見えちゃったのね?
一葉:それでね・・・?
綾子:はい・・・
一葉:「風」っていう詩が、見えちゃったのね。
綾子:あっ、はい・・・
一葉:あーやってもしかして作者さんの・・・「皆鶴姫(みなづるひめ)」さん?
綾子:あ・・・えと・・・
綾子:
綾子:(N)どうしよう、どうしよう!?
0:-続く-
一葉:(N)私は結構朝早めに登校する人間で。
一葉:(N)っていうか、登校中に何かトラブルが起こって遅刻するのが嫌なだけだけど。
一葉:
一葉:(N)それでも私のクラスには何人かが登校していて、
一葉:(N)ちらほらと会話の輪が出来ている。
一葉:
一葉:(N)つくづく、「真面目な人たちだな」と思う。
一葉:
一葉:(N)そんな真面目人間の中に、もう一人加わってきた。
一葉:(N)「あーや」だ。
綾子:おっ、おはよう、ございます!
一葉:(N)まだ挙動不審なところがなくはないけれど・・・。
一葉:(N)それでも皆は、「あーや、おはよー!」とか声をかけてる。
一葉:(N)もう「あーや」って呼び方、浸透してるのか・・・。
一葉:
一葉:(N)ぺこぺことお辞儀しながら私の隣まで来たあーやは、開口一番。
綾子:ひっ、一葉、さん!おはようございます!昨日は、ごめんなさい!
一葉:(N)なぜか謝罪してきたのだ。
一葉:
一葉:おはよ、あーや。ってか、なぜに謝罪?
綾子:その、昨日、「委員長さん」って呼んじゃって・・・!
一葉:ん?そうだっけ?
一葉:
一葉:(N)たぶん、だけど、あーやは気にしすぎなのだと思っている。
一葉:(N)だから、私はあえて、とぼけてみる。
綾子:はい、なので・・・ごめんなさい、しとかないと、って。
一葉:そうだったのね。でも大丈夫だよあーや。全然気にしてないから!
綾子:だったら、いいん、ですけど・・・。
一葉:(N)それでも不安げなあーや。それじゃあ・・・。
一葉:
一葉:っていうか、あーやってさ?
綾子:はい・・・?
一葉:誰にでもそんな感じ?敬語でしゃべってくれてるけど。
綾子:んと・・・親しい友達にはタメ口でお話出来るんですけど・・・。
一葉:なるほどねー。ま、来たばっかりだもんね。でもだからって、気にしなくっていいよ。
一葉:私は全然タメ口でも平気だし。
綾子:はい、ありがとうございます!
一葉:(N)やっと笑顔が見れたぁ。
一葉:(N)やっぱりあーやって、か、かわi・・・っと。
一葉:
一葉:あの、さ。もしよかったら、なんだけど・・・。
綾子:何ですか・・・?
一葉:今日のお昼、一緒していい?
綾子:えええ!?私と、ですか!?
一葉:そんな驚かんでも・・・ダメかな?
綾子:いえいえ、全然!ぜひ!よろしくおねがいします!
一葉:(N)両手を前に突き出しながら、ぱたぱたさせるあーや。
一葉:(N)こうして見ていると、小動物みたいでかわ・・・いい。
綾子:あの、一葉さん・・・?
一葉:へ?あー、ごめんごめん!どこで食べよっか・・・?
綾子:そうですね・・・食堂、ですかね・・・?
一葉:(N)せっかくの晴天だし、外もいいかなと提案しようとしたところで。
怜央:おっす、委員長さん、椎名さん!
一葉:(N)邪魔者、現る。
綾子:おはよう、ございます、坂口君・・・!
一葉:あのさー、私言ったよねぇ?委員長って呼ぶなって。
怜央:まぁまぁ、んで?何の話?
綾子:えっと、今日のお昼ご飯のお話です・・・。
一葉:今日はあーやと一緒に食べようと思ってね。
怜央:なるほどねー。だったらさ・・・講堂とかどう?
綾子:講堂、ですか?
一葉:(N)講堂か・・・思いつかなかったなぁ・・・盲点だった・・・。
怜央:そーそー。椎名さん入ったことある?
綾子:いえ、まだないんです・・・!
怜央:いいとこだよ?ステンドグラスとか使ってて結構きれいなの。ウチの名物。
一葉:はいはーい!じゃあ講堂で決まり!いいよね、あーや?
綾子:は、はいっ!よろしくお願いします!
怜央:んまぁ、決まったんならよかったよかった。
綾子:坂口君、教えてくれてありがとうございます!
一葉:(N)怜央は照れ臭そうに右手をひらひらして。
怜央:あーうん、まぁ他にもいろいろ名物あるから、委員長さんと探検してみるといいよ。
一葉:一応言っておくわ。怜央、さんきゅ、助かったわ。
怜央:二人で楽しんで来~い。
一葉:(N)こういう「いいやつ」だったりするから、
一葉:(N)私も何だかんだ居心地がい・・・(咳払い)んんっ。
一葉:(N)でも、コイツに先に提案されたのが悔しいのも、本心だったりする。
一葉:(N)あれ?なんで私こんなこと考えてるんだろう・・・?
一葉:(N)あー、いやいや、考えるのよそう。
一葉:(N)先生に頼まれた以上に、
一葉:(N)あーやのコトが気になっている、私なのだった。
0:場面転換。2限目終了後の中休み。
綾子:(N)私は何となく、廊下から外を眺めていました。
綾子:(N)クラスの皆はとても優しくて。
綾子:(N)授業で難しいところも、一葉さんや皆がいろいろサポートしてくれて。
綾子:(N)一葉(ひとは)さんに聞いた話だけれど、この学校はどのクラスもアットホームで、
綾子:(N)いわゆる「不良」な人がいないんだ、と。
一葉:まぁ校則違反の処分がキツすぎて、うっかり違反できない、っていうね・・・。
綾子:(N)遠い目をする一葉さんを見て、私はその時、引きつった笑顔だった、と思う・・・。
綾子:(N)その時だった。私の肩がそっと「とんとん」と指で叩かれた。
綾子:
綾子:えっ?一葉さん?
綾子:
綾子:(N)彼女は窓から「ぐいー」と目いっぱい身体を外に乗り出すと、
一葉:あっちにさ、教会っぽいレンガの建物あるでしょ?あれが講堂だよ!
綾子:ひっ、一葉さん!あぶ、危ないですっ!
綾子:
綾子:(N)私は必死に一葉さんを廊下に戻します!
一葉:やー、あははっ、あーやって意外に力あるんだね~!
綾子:感心してる場合じゃ・・・ないですよぉ・・・。
綾子:落ちたらどうするんですか・・・!
一葉:いやまぁ・・・ここ1階だしね。
綾子:(N)落ち方によっては大ケガするのに・・・。
綾子:(N)一葉さん、意外にアクティブで・・・お転婆(おてんば)?
一葉:っていうか、あーやこそぼーっとしてたよ?どうしたの?具合悪い?
綾子:えっ?いえ、そう言うわけじゃなくて・・・。
綾子:
綾子:(N)本当にちょっと休憩、と思っていただけなのだけど・・・。
一葉:そっか。ならよかったー!
綾子:(N)にぱー、と笑顔の一葉さん。失礼だけど、可愛いなぁ・・・。
一葉:講堂ね、外から見るのもいいけど、中身も凄いからね。楽しみにしててね!
綾子:(N)そう一言残して、一葉さんが教室に戻っていくとき、丁度予鈴が鳴りました。
0:場面転換、お昼休み。
綾子:(N)お昼休み。一葉さんと、お昼ご飯です!
綾子:(N)数分歩くと、講堂の厳かな姿がはっきりと見えてきました。
一葉:さっきも聞いたけど、あーやってお昼はお弁当なのね。
綾子:(N)朝買ってきたというパンと飲み物が入ったトートバッグを持って、
綾子:(N)一葉さんが話しかけてくれました。
綾子:
綾子:そうですね、父のもあるので、基本はお弁当ですね。
一葉:えっ?
綾子:えっ?
一葉:ということは、お弁当ってあーやの手作り?すご・・・!
綾子:いえいえ、中学のころからやってますし、慣れっこですよ?
一葉:いいなぁ・・・あたし、将来あーやと結婚しようかなぁ・・・。
綾子:はぇ?
一葉:何てね、冗談冗談!てへぺろー!ほら、着いたよー!
綾子:(N)悪戯っぽくそう言うと、一葉さんは先に講堂に入っていきます。
綾子:(N)うん、冗談、・・・・だよ、ね・・・?それよりも。
綾子:
綾子:ふあぁ・・・!すごい・・・!!
綾子:
綾子:(N)この講堂、いつ建てられたんだろう・・・とっても歴史がある感じがするし、
綾子:(N)何より・・・キレイ・・・!なんて、入り口で圧倒されていると。
一葉:ほら、あーや!こっちー!
綾子:(N)一葉さんに手招きされて、ベンチのような長椅子に横に並んで座ります。
綾子:(N)外からの光が、ステンドグラスでキラキラ、たくさんの色を産みだして。
綾子:(N)そして、中の空気はとっても澄んでいて、清らかな雰囲気がすごい・・・。
綾子:
綾子:一葉さんの言ってた通り、ですね・・・すごく、素敵です・・・!
綾子:
綾子:(N)私は思わず、スマホを取り出して、あちこち撮影してしまいます。
綾子:(N)そして、この景色を・・・。
一葉:どしたのあーや、ノートなんか出して。
綾子:(N)水色の表紙のノートに、赤いボディのボールペン。
綾子:(N)感じた気持ちを、そのままメモしていきます。
綾子:
綾子:あ、えと。
綾子:
綾子:(N)どう説明しようかな。
綾子:
綾子:実は、ですね。私、将来何かを書く仕事がしたくって。
綾子:それで、色んなヒントになりそうなことを、ノートに書いておいて、
綾子:後で使えるといいな、って・・・友達に手紙も書きたいですし・・・。
綾子:
綾子:(N)一瞬きょとん、とした一葉さんですが、さっきの「にぱー」っていう笑顔で、
一葉:あーやって、そう言うのが好きなんだね!
一葉:ってか、それって取材じゃない!どれどれ、どんなの書いてるの?
綾子:わわ、だだ、だめ、です!秘密、です!
一葉:むー、そっかぁ・・・残念・・・
綾子:(N)本気で残念そうな一葉さんを見ていると、ちょっと可哀想かも、
綾子:(N)と思いましたけど、ダメです・・・ここに書いている中身は、内緒。
綾子:
綾子:それより、ご飯、・・・食べませんか?
一葉:あ、そだね、ぱぱっと食べちゃって、今日は講堂を探検しよ?
綾子:はいっ!
0:場面転換、次の日の朝。
綾子:はぁっ、は、はっ!
綾子:
綾子:(N)私は慌てていました。
綾子:(N)寝坊してしまって、もはや朝のホームルームぎりぎり・・・!
綾子:(N)でもあと少し、あの角を曲がれば教室・・・!
綾子:
綾子:きゃあっ!!
一葉:わっと・・・あっ、あーや!?大丈夫!?
一葉:あーあーもう・・・色々飛び散っちゃって・・・。
綾子:(N)どうして一葉さんが・・・?
綾子:(N)わ、カバンの中身、散乱してる・・・。
綾子:(N)カバン、焦っててしっかり閉じてなかったんだ・・・。
一葉:お、このノート・・・あれ?これって・・・
綾子:ひっ、一葉さん、それは見ないで・・・!
綾子:
綾子:(N)なるべくそっと、一葉さんから水色表紙のノートを取り返します。
一葉:あ、ごめんねあーや!えっと・・・
綾子:(N)とりあえず、といった感じで、一葉さんは散乱したノートや筆記用具を
綾子:(N)集めてくれました。
綾子:
綾子:ありがとうございます・・・一葉さん、怪我してませんか?
一葉:アタシは大丈夫。あーやこそ大丈夫?
綾子:はい、大丈夫です。ご迷惑、おかけしました・・・。
一葉:いーのいーの!ほら、あーや立てる?
綾子:あ、はい・・・。
綾子:
綾子:(N)一葉さんが私の手を引いて立たせてくれます。
綾子:(N)と、そこでチャイムが鳴ってしまいました。
一葉:ありゃ、チャイム鳴っちゃった。
一葉:まぁ、あーやが来なくって探してたから、良かったよ!
綾子:そうだったん、ですね。本当にごめんなさい。
一葉:いいっていいって!さ、教室行こ!
綾子:はい・・・!
綾子:
綾子:(N)一葉さん、私のこと気にしてくれてて、いつも嫌な顔とか、
綾子:(N)怒った顔とか全然しないなぁ・・・すごいなぁ・・・。
綾子:(N)私には、大げさかもしれないけど、女神様、みたいに一瞬、見えちゃった。
綾子:(N)そして、お昼休み。
一葉:ねー、あーや?
綾子:はい?
一葉:カニのウィンナー、おいしそうだね・・・?
綾子:え?あっ!
綾子:
綾子:(N)流れるような割り箸(わりばし)さばき・・・。
綾子:(N)さらわれるカニさんウィンナー・・・。
一葉:んふふ・・・あーん・・・
綾子:(N)そしてカニさんは哀れ、一葉さんのお腹の中に・・・。
綾子:
綾子:・・・一葉さん。
一葉:・・・ごめん。
綾子:力作だったのにぃ・・・。
一葉:ほんとごめんて・・・唐揚げあげるから・・・はいっ。
一葉:そだ、力作といえば、あーや。
綾子:はい?
一葉:あーやは将来作家さんみたいなことしたい、って言ってたじゃない?
綾子:あ、はい、モノ書きのお仕事がしたいな、って。
一葉:だったら、このサイト、知ってる?
綾子:(N)そう言って一葉さんが見せてくれたスマホのサイト。
綾子:(N)そこは・・・。
綾子:
綾子:あ、「monokaki(ものかき)」ですよね。
綾子:知ってますよ!
一葉:お、そうなの?あたし、ここに詩をアップしてる人のファンなんだー。
一葉:でもね、最近あんまり更新されてなくってね・・・。
綾子:そうなんですか・・・でもその方の事情もあるでしょうし・・・。
一葉:そだよね。でもいつも力作アップしてるからさ、楽しみにしてるの。
綾子:作家さんの力になりますよ、それ!「好きです!」とか押してます?
一葉:いっぱい押してあげたいんだけどね・・・あれ1回しか押せないじゃない?
綾子:んー、だったらDMはどうでしょう?
一葉:それも考えたんだけどね。私の気持ちを押し付けてるみたいでなんか・・・ねぇ・・・。
綾子:なるほど・・・そうですねー。
綾子:(N)二人でウンウンと唸っていると。
一葉:ところであーや、いきなりなんだけどさ?
綾子:はい?
一葉:良かったらさ、連絡先交換しない?緑のアレ。
綾子:あっ、はいっ!一葉さんならぜひ!
一葉:えへへ~。んじゃ・・・はい、これアタシのアカウント。
綾子:ありがとうございます!
綾子:
綾子:(N)緑のアプリの連絡先を交換して、早速スタンプを送ってみます。
一葉:え・・・?なにこれ・・・?
綾子:えっと、・・・変、でした?
一葉:なんというか・・・個性的、だねぇ・・・?
綾子:(N)あれ・・・?安全帽のネコのスタンプ、ヘンなのかな・・・?
綾子:
綾子:シュールな感じがすごく好きなんですけど・・・。
一葉:ああ・・・そうなんだ・・・。
一葉:それはそれとして・・・あーや?
綾子:はい?
一葉:あたしさ、今朝あーやとぶつかった時に、
一葉:あーやのノート見えちゃったのね?
一葉:それでね・・・?
綾子:はい・・・
一葉:「風」っていう詩が、見えちゃったのね。
綾子:あっ、はい・・・
一葉:あーやってもしかして作者さんの・・・「皆鶴姫(みなづるひめ)」さん?
綾子:あ・・・えと・・・
綾子:
綾子:(N)どうしよう、どうしよう!?
0:-続く-