台本概要
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タイトル | 【創作落語】珈琲(コーヒー) |
---|---|
作者名 | Danzig |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 1人用台本(不問1) ※兼役あり |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず連絡不要 |
説明 |
この話は、オリジナルの落語です。 【まくら】と【本編】がありますが、【まくら】は演じても演じなくても問題ありません。 登場人物は二人出来てますが、落語なので、男女不問の一人読む台本です。 290 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
噺家 | 不問 | 2 | |
熊五郎 | 男 | 49 | |
八五郎 | 男 | 56 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
噺家:えー、毎度バカバカしいお笑いを一席お付き合い願いたいと思います。
噺家:世の中には、嗜好品(しこうひん)と呼ばれるものがあります。
噺家:嗜好品とは、匂いとか味、そう言ったのもを楽しむものだそうですね。
噺家:嗜好品の代表的なものといえば、最近は少なくなりましたが、やはりタバコですかね。
噺家:外国にはシガーバーなんて呼ばれる、タバコや葉巻を楽しむ為のお店もあるようですね。
噺家:
噺家:その他には、ガムですとか、お酒、ジュースですとか、
噺家:あと、お漬物なんてのも嗜好品の中に入るのだそうです。
噺家:
噺家:そして嗜好品と言えば、何と言っても、お茶の類(たぐい)ですね。
噺家:日本茶に始まり、紅茶、中国茶など、大変愛好者が多いそうです。
噺家:中でも、コーヒーなんてのは、もう大変沢山な愛好者がいて、
噺家:しかも、こだわりとかも凄いらしいですね。
噺家:
噺家:「コーヒーとは、悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、愛のように甘い」
噺家:なんて言われてるそうで、
噺家:なんだか格好いいですね。
噺家:
噺家:日本にも大変沢山のコーヒー好きがいるようなんですが、
噺家:このコーヒーが日本に伝わったのは、江戸時代なんだそうです。
噺家:長崎の出島で飲まれていたそうなんですね。
噺家:
噺家:それから時が経って、横浜に黒船が来航してからでしょうか、
噺家:江戸でもコーヒーが飲まれる事があったようです。
:
:
熊五郎:おう八、いるかい?
:
八五郎;そりゃ、いるけど、熊さんどうしたんだい。
:
熊五郎:ちょっと八に聞きてぇ事があってよ。
:
八五郎:俺に聞きたい事?
:
熊五郎:そうなんだよ、
熊五郎:八、お前、コーヒーっていう飲み物、知っているか?
:
八五郎:コーヒー? 何だいそりゃ
:
熊五郎:南蛮のお茶だよ
:
八五郎:へー、南蛮の? 知らねぇなぁそんなお茶は
:
熊五郎:そうか、やっぱりお前は知らねぇか・・・
:
八五郎:やっぱりってなんだよ・・・ったく
八五郎:それで、美味いのかい、その格子(こうし)ってのは
:
熊五郎:格子じゃねぇよ、コーヒーだよ、コーヒー
:
八五郎:あぁ・・まぁ、名前何てどうでもいいや、で、美味いのかい、そのお茶は
:
熊五郎:いや、それが、俺も飲んだ事はないんだよ
:
八五郎:なんでぇ、熊さんも知らねぇんじゃねぇか
:
熊五郎:まぁ、そうなんだけどな
:
八五郎:じゃぁ、どこで知ったんだい、そんなお茶の事を
:
熊五郎:俺の妹のお千代いるだろ?
:
八五郎:あぁ、お千代ちゃんな。 お千代ちゃんがどうしたんだい?
:
熊五郎:いや、お千代がどうしたって訳じゃぁねぇんだけどよ
熊五郎:この前、お千代が勤めてるお茶屋に、ちょっと、お千代の顔を見に行ったんだよ
:
八五郎:熊さん、またお千代ちゃんに、小遣いせびりに行ったのかい?
:
熊五郎:まぁ、いいじゃぁねぁか、そんな事は
熊五郎:でよ、そうしたら、そこに、南蛮人が居てな、コーヒーを飲んでたんだよ
熊五郎:それが、あんまりにも美味そうに飲んでやがるからよ、俺にも一杯くれよって言ってみたんだよ
熊五郎:そしたら、イヤだって言いやがってよ
:
八五郎:なんでぇ、ケチな野郎だな
:
熊五郎:まぁ、高価な飲み物らしいからな、銭(ぜに)よこせって言われても払えねぇし、まぁ仕方がないさ
:
八五郎:でも、そんな事聞いたら、お茶好きの俺としちゃ、飲みたくなるじゃねぇか、なぁ、その高知(こうち)ってやつ
:
熊五郎:高知じゃねぇよ、コーヒーだよ
:
八五郎:まぁ、名前はどうでもいいよ、飲みてぇなぁその・・・
:
熊五郎:コーヒーな
:
八五郎:あぁ、それそれ。何とかならねぇのかな
:
熊五郎:だろ?
熊五郎:だからよ、俺達で作ろうと思ってよ
:
八五郎:作れるのかい、その・・・あれを
:
熊五郎:まぁ、俺も分かんねぇけどよ、作ってみてぇじゃねぇか
熊五郎:だからよ八、おめぇも手伝え
:
八五郎:手伝えって、どうやって作るんだよ
:
熊五郎:作り方は聞いて来たんだよ
:
八五郎:へー、どうやって作るんだよ
:
熊五郎:何でも、コーヒー豆ってのを煮だすんだとさ
:
八五郎:コーヒー豆? どんな豆なんだい、そりゃ?
:
熊五郎:コーヒー豆ってのはこの国には無いらしいんだけどよ、
熊五郎:まぁ、豆っていうくらいだから、似たような形なら、似たような味だろ
:
八五郎:ふーん、そんなもんかねぇ
八五郎:で、どんな形した豆だったんだ?
:
熊五郎:俺が見せてもらったのは、大豆(だいず)を半分にしたようなやつだったよ
:
八五郎:大豆? 大豆ならあるよ、ちょっと待ってな
八五郎:確か台所のところに・・・おう、あったあった、ほら大豆
:
熊五郎:おう、よしよし
熊五郎:それを黒くなるまで煎(い)るんだってよ
:
八五郎:そうかい、それじゃ、煎(い)ってみるか・・・
八五郎:って、どうやって煎るんだよ、銀杏(ぎんなん)を煎るみたいな感じでいいのかな?
:
熊五郎:いいんじゃねぇか、そんな感じで
:
八五郎:おう分かった、やってみるよ
:
0:(大豆を煎る八五郎)
:
八五郎:お、だいぶ匂いがしてきたな
:
熊五郎:あぁ、香ばしいな
:
八五郎:でもよ、熊さん
八五郎;だいぶ焦げ目はついて来たけど、あと、どれくらい煎ればいいんだい?
:
熊五郎:うーん、もうそろそろいいんじゃねぇかな。
熊五郎:それ以上煎っても、焦げ臭くなるからよ。
:
八五郎:そっか、じゃぁ、この辺にしとくか。
八五郎:で、この後は、どうするんだい?
:
熊五郎:豆を煮(に)出すんだってよ
:
八五郎:煮出す?
八五郎:えーっと・・・じゃぁ、火鉢に鍋を乗っけてっと
八五郎:これで煮出していけばいいんだな
:
熊五郎:あぁ、それでいいと思うな
:
0:(大豆を煮だす八五郎)
:
八五郎:なぁ、熊さん
八五郎:大分煮詰めたけど、これ、あとどれくらい煮詰めればいいんだい?
:
熊五郎:そうだな・・・分からねぇから、ちょっくら飲んでみるか?
:
八五郎:そうだな
:
0:(二人でコーヒーを飲む)
:
八五郎:・・・熊さん、コーヒーってこんな味なのかい?
:
熊五郎:・・・うーん、煮出しが足らねぇのかな
:
八五郎:じゃぁ、もう少し煮出してみようか
:
0:(再び煮出す八五郎)
:
八五郎:もういいかな・・・どれどれ
:
0:(コーヒーを飲む二人)
:
八五郎:熊さん、これ美味いかい?
:
熊五郎:あんまり美味くねぇなぁ、
熊五郎:何だか薄い出汁汁(だしじる)飲んでるみてぇだな、こりゃ
:
八五郎:熊さん、騙されたんじゃぁねぇのか?
:
熊五郎:騙されたってどういう事だよ
熊五郎:お千代の所の客だぞ、いい成りしてたし、異国の金持ちが俺達を騙(だま)したって何の得にもなりゃしねぇだろ
熊五郎:それによ、そんなに悪い奴には見えなかったんだよ
:
八五郎:それじゃぁさ、熊さんが全部聞いて来なかっただよ
八五郎:きっと、もっと色々入れてんだよ?
:
熊五郎:あぁ、そうかもしれねぇな、俺もそそっかしいからなぁ
:
八五郎:しっかりしてくれよ、熊さん
八五郎:じゃぁ、何が足らねぇんだろうな?
:
熊五郎:そうだな・・やっぱり、味としては昆布(コブ)じゃぁねぇかな?
:
八五郎:昆布かぁ・・・そうかもしれねぇな。
八五郎:じゃぁ、昆布入れてみるか
:
熊五郎:あぁ、そうだな、入れてみるか
:
0:(昆布を入れて再び煮出す、熊五郎)
:
八五郎:熊さん、昆布もだいぶ煮出せてきたぞ
:
熊五郎:おおそうだな、じゃぁちょっくら飲んでみるか
:
0:(二人でコーヒーをのむ)
:
八五郎:うーん、少しは良くなったけど
:
熊五郎:そうだな・・・まだ何か足らねぇんじゃないかな
:
八五郎:何だろうな
:
熊五郎:じゃぁ、カツブシかな?
:
八五郎:カツブシか・・・そうかもな
八五郎:じゃぁ、入れてみるか
:
0:(カツオ節を入れて煮込む)
:
八五郎:これくらい煮出せばいいかな
:
熊五郎:じゃぁ、ちょっくら飲んでみるか
:
0:(二人でコーヒーを飲む)
:
八五郎:うーん、だいぶ良くなって来たけど
:
熊五郎:でも、やっぱりまだ何か足らねぇ気がするな
:
八五郎:なんだろうなぁ足らないものって・・・・
八五郎:熊さん、思い出して見なよ、何かあるだろ
:
熊五郎:そんな事言った・・て・・あっ!
:
八五郎:どうした熊さん、何か思い出したのかい
:
熊五郎:そういえば、コーヒーの色ってもっと黒かったよ
:
八五郎:黒かった?
:
熊五郎:あぁ、黒かった、真っ黒だったよ
:
八五郎:黒いってどうすりゃいいんだよ
:
熊五郎:うーん・・・そりゃ多分、醤油だな
:
八五郎:あぁ、そうだよ、きっと醤油だ!
八五郎:熊さん、やるじゃねぇか
:
熊五郎:おお、俺は料理がちょいと出来るんだよ
熊五郎:まぁ確かに、醤油みてぇな色してたな
:
八五郎:醤油か・・・ちょっと待てよ
:
0:(台所から醤油を持ってくる)
:
八五郎:よし、じゃぁ、醤油いれるぞ
:
0:(醤油を入れる八五郎)
:
八五郎:どうだい、熊さん、これぐらいかい?
:
熊五郎:うーん、もう少し黒かったかな
:
八五郎:ほう、結構入れるもんだな
:
熊五郎:あぁ、結構黒かったぞ
:
0:(醤油を入れる熊五郎)
:
八五郎:こんなもんでどうだい?
:
熊五郎:色はこんな感じかな
:
八五郎:そうかい、じゃぁちょっくら飲んでみるか
:
0:(二人でコーヒーを飲む)
:
熊五郎:・・・
:
八五郎:・・・
:
0:(二人で顔を見合わせる)
:
八五郎:・・・いいんじゃねぇか?
:
熊五郎:あぁ、ちょっと濃いめだがいい味だな
:
八五郎:何だか蕎麦(そば)が食いたくなる味だな、こりゃ
八五郎:南蛮人ってのは、こんなものを美味い美味いって飲んでるんだな
:
熊五郎:そりゃ、やっぱり、あれだな、
熊五郎:南蛮の奴らも、やっぱり美味いと思うものは同じって事なんだな
:
八五郎:ははは、そりゃ違いねぇや
:
噺家:それからというもの、熊さんは麺つゆの事をコーヒーと言って自慢したという、
噺家:おなじみ、コーヒーの一席、
噺家:お後がよろしいようで
:
噺家:えー、毎度バカバカしいお笑いを一席お付き合い願いたいと思います。
噺家:世の中には、嗜好品(しこうひん)と呼ばれるものがあります。
噺家:嗜好品とは、匂いとか味、そう言ったのもを楽しむものだそうですね。
噺家:嗜好品の代表的なものといえば、最近は少なくなりましたが、やはりタバコですかね。
噺家:外国にはシガーバーなんて呼ばれる、タバコや葉巻を楽しむ為のお店もあるようですね。
噺家:
噺家:その他には、ガムですとか、お酒、ジュースですとか、
噺家:あと、お漬物なんてのも嗜好品の中に入るのだそうです。
噺家:
噺家:そして嗜好品と言えば、何と言っても、お茶の類(たぐい)ですね。
噺家:日本茶に始まり、紅茶、中国茶など、大変愛好者が多いそうです。
噺家:中でも、コーヒーなんてのは、もう大変沢山な愛好者がいて、
噺家:しかも、こだわりとかも凄いらしいですね。
噺家:
噺家:「コーヒーとは、悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、愛のように甘い」
噺家:なんて言われてるそうで、
噺家:なんだか格好いいですね。
噺家:
噺家:日本にも大変沢山のコーヒー好きがいるようなんですが、
噺家:このコーヒーが日本に伝わったのは、江戸時代なんだそうです。
噺家:長崎の出島で飲まれていたそうなんですね。
噺家:
噺家:それから時が経って、横浜に黒船が来航してからでしょうか、
噺家:江戸でもコーヒーが飲まれる事があったようです。
:
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熊五郎:おう八、いるかい?
:
八五郎;そりゃ、いるけど、熊さんどうしたんだい。
:
熊五郎:ちょっと八に聞きてぇ事があってよ。
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八五郎:俺に聞きたい事?
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熊五郎:そうなんだよ、
熊五郎:八、お前、コーヒーっていう飲み物、知っているか?
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八五郎:コーヒー? 何だいそりゃ
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熊五郎:南蛮のお茶だよ
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八五郎:へー、南蛮の? 知らねぇなぁそんなお茶は
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熊五郎:そうか、やっぱりお前は知らねぇか・・・
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八五郎:やっぱりってなんだよ・・・ったく
八五郎:それで、美味いのかい、その格子(こうし)ってのは
:
熊五郎:格子じゃねぇよ、コーヒーだよ、コーヒー
:
八五郎:あぁ・・まぁ、名前何てどうでもいいや、で、美味いのかい、そのお茶は
:
熊五郎:いや、それが、俺も飲んだ事はないんだよ
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八五郎:なんでぇ、熊さんも知らねぇんじゃねぇか
:
熊五郎:まぁ、そうなんだけどな
:
八五郎:じゃぁ、どこで知ったんだい、そんなお茶の事を
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熊五郎:俺の妹のお千代いるだろ?
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八五郎:あぁ、お千代ちゃんな。 お千代ちゃんがどうしたんだい?
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熊五郎:いや、お千代がどうしたって訳じゃぁねぇんだけどよ
熊五郎:この前、お千代が勤めてるお茶屋に、ちょっと、お千代の顔を見に行ったんだよ
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八五郎:熊さん、またお千代ちゃんに、小遣いせびりに行ったのかい?
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熊五郎:まぁ、いいじゃぁねぁか、そんな事は
熊五郎:でよ、そうしたら、そこに、南蛮人が居てな、コーヒーを飲んでたんだよ
熊五郎:それが、あんまりにも美味そうに飲んでやがるからよ、俺にも一杯くれよって言ってみたんだよ
熊五郎:そしたら、イヤだって言いやがってよ
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八五郎:なんでぇ、ケチな野郎だな
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熊五郎:まぁ、高価な飲み物らしいからな、銭(ぜに)よこせって言われても払えねぇし、まぁ仕方がないさ
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八五郎:でも、そんな事聞いたら、お茶好きの俺としちゃ、飲みたくなるじゃねぇか、なぁ、その高知(こうち)ってやつ
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熊五郎:高知じゃねぇよ、コーヒーだよ
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八五郎:まぁ、名前はどうでもいいよ、飲みてぇなぁその・・・
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熊五郎:コーヒーな
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八五郎:あぁ、それそれ。何とかならねぇのかな
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熊五郎:だろ?
熊五郎:だからよ、俺達で作ろうと思ってよ
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八五郎:作れるのかい、その・・・あれを
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熊五郎:まぁ、俺も分かんねぇけどよ、作ってみてぇじゃねぇか
熊五郎:だからよ八、おめぇも手伝え
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八五郎:手伝えって、どうやって作るんだよ
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熊五郎:作り方は聞いて来たんだよ
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八五郎:へー、どうやって作るんだよ
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熊五郎:何でも、コーヒー豆ってのを煮だすんだとさ
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八五郎:コーヒー豆? どんな豆なんだい、そりゃ?
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熊五郎:コーヒー豆ってのはこの国には無いらしいんだけどよ、
熊五郎:まぁ、豆っていうくらいだから、似たような形なら、似たような味だろ
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八五郎:ふーん、そんなもんかねぇ
八五郎:で、どんな形した豆だったんだ?
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熊五郎:俺が見せてもらったのは、大豆(だいず)を半分にしたようなやつだったよ
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八五郎:大豆? 大豆ならあるよ、ちょっと待ってな
八五郎:確か台所のところに・・・おう、あったあった、ほら大豆
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熊五郎:おう、よしよし
熊五郎:それを黒くなるまで煎(い)るんだってよ
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八五郎:そうかい、それじゃ、煎(い)ってみるか・・・
八五郎:って、どうやって煎るんだよ、銀杏(ぎんなん)を煎るみたいな感じでいいのかな?
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熊五郎:いいんじゃねぇか、そんな感じで
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八五郎:おう分かった、やってみるよ
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0:(大豆を煎る八五郎)
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八五郎:お、だいぶ匂いがしてきたな
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熊五郎:あぁ、香ばしいな
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八五郎:でもよ、熊さん
八五郎;だいぶ焦げ目はついて来たけど、あと、どれくらい煎ればいいんだい?
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熊五郎:うーん、もうそろそろいいんじゃねぇかな。
熊五郎:それ以上煎っても、焦げ臭くなるからよ。
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八五郎:そっか、じゃぁ、この辺にしとくか。
八五郎:で、この後は、どうするんだい?
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熊五郎:豆を煮(に)出すんだってよ
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八五郎:煮出す?
八五郎:えーっと・・・じゃぁ、火鉢に鍋を乗っけてっと
八五郎:これで煮出していけばいいんだな
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熊五郎:あぁ、それでいいと思うな
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0:(大豆を煮だす八五郎)
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八五郎:なぁ、熊さん
八五郎:大分煮詰めたけど、これ、あとどれくらい煮詰めればいいんだい?
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熊五郎:そうだな・・・分からねぇから、ちょっくら飲んでみるか?
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八五郎:そうだな
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0:(二人でコーヒーを飲む)
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八五郎:・・・熊さん、コーヒーってこんな味なのかい?
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熊五郎:・・・うーん、煮出しが足らねぇのかな
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八五郎:じゃぁ、もう少し煮出してみようか
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0:(再び煮出す八五郎)
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八五郎:もういいかな・・・どれどれ
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0:(コーヒーを飲む二人)
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八五郎:熊さん、これ美味いかい?
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熊五郎:あんまり美味くねぇなぁ、
熊五郎:何だか薄い出汁汁(だしじる)飲んでるみてぇだな、こりゃ
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八五郎:熊さん、騙されたんじゃぁねぇのか?
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熊五郎:騙されたってどういう事だよ
熊五郎:お千代の所の客だぞ、いい成りしてたし、異国の金持ちが俺達を騙(だま)したって何の得にもなりゃしねぇだろ
熊五郎:それによ、そんなに悪い奴には見えなかったんだよ
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八五郎:それじゃぁさ、熊さんが全部聞いて来なかっただよ
八五郎:きっと、もっと色々入れてんだよ?
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熊五郎:あぁ、そうかもしれねぇな、俺もそそっかしいからなぁ
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八五郎:しっかりしてくれよ、熊さん
八五郎:じゃぁ、何が足らねぇんだろうな?
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熊五郎:そうだな・・やっぱり、味としては昆布(コブ)じゃぁねぇかな?
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八五郎:昆布かぁ・・・そうかもしれねぇな。
八五郎:じゃぁ、昆布入れてみるか
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熊五郎:あぁ、そうだな、入れてみるか
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0:(昆布を入れて再び煮出す、熊五郎)
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八五郎:熊さん、昆布もだいぶ煮出せてきたぞ
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熊五郎:おおそうだな、じゃぁちょっくら飲んでみるか
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0:(二人でコーヒーをのむ)
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八五郎:うーん、少しは良くなったけど
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熊五郎:そうだな・・・まだ何か足らねぇんじゃないかな
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八五郎:何だろうな
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熊五郎:じゃぁ、カツブシかな?
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八五郎:カツブシか・・・そうかもな
八五郎:じゃぁ、入れてみるか
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0:(カツオ節を入れて煮込む)
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八五郎:これくらい煮出せばいいかな
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熊五郎:じゃぁ、ちょっくら飲んでみるか
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0:(二人でコーヒーを飲む)
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八五郎:うーん、だいぶ良くなって来たけど
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熊五郎:でも、やっぱりまだ何か足らねぇ気がするな
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八五郎:なんだろうなぁ足らないものって・・・・
八五郎:熊さん、思い出して見なよ、何かあるだろ
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熊五郎:そんな事言った・・て・・あっ!
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八五郎:どうした熊さん、何か思い出したのかい
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熊五郎:そういえば、コーヒーの色ってもっと黒かったよ
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八五郎:黒かった?
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熊五郎:あぁ、黒かった、真っ黒だったよ
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八五郎:黒いってどうすりゃいいんだよ
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熊五郎:うーん・・・そりゃ多分、醤油だな
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八五郎:あぁ、そうだよ、きっと醤油だ!
八五郎:熊さん、やるじゃねぇか
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熊五郎:おお、俺は料理がちょいと出来るんだよ
熊五郎:まぁ確かに、醤油みてぇな色してたな
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八五郎:醤油か・・・ちょっと待てよ
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0:(台所から醤油を持ってくる)
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八五郎:よし、じゃぁ、醤油いれるぞ
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0:(醤油を入れる八五郎)
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八五郎:どうだい、熊さん、これぐらいかい?
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熊五郎:うーん、もう少し黒かったかな
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八五郎:ほう、結構入れるもんだな
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熊五郎:あぁ、結構黒かったぞ
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0:(醤油を入れる熊五郎)
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八五郎:こんなもんでどうだい?
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熊五郎:色はこんな感じかな
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八五郎:そうかい、じゃぁちょっくら飲んでみるか
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0:(二人でコーヒーを飲む)
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熊五郎:・・・
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八五郎:・・・
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0:(二人で顔を見合わせる)
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八五郎:・・・いいんじゃねぇか?
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熊五郎:あぁ、ちょっと濃いめだがいい味だな
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八五郎:何だか蕎麦(そば)が食いたくなる味だな、こりゃ
八五郎:南蛮人ってのは、こんなものを美味い美味いって飲んでるんだな
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熊五郎:そりゃ、やっぱり、あれだな、
熊五郎:南蛮の奴らも、やっぱり美味いと思うものは同じって事なんだな
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八五郎:ははは、そりゃ違いねぇや
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噺家:それからというもの、熊さんは麺つゆの事をコーヒーと言って自慢したという、
噺家:おなじみ、コーヒーの一席、
噺家:お後がよろしいようで
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