台本概要

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タイトル 【創作童話】コロックと短冊
作者名 Danzig
ジャンル 童話
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 七夕の読み聞かせ用にとのリクエストで書いた作品です。

七夕の日に雨になると、織姫と彦星が会えなくなってしまう。
これは、昔昔、七夕の日何年も雨になっていた頃の話です。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
読み手 不問 -
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:七夕の話 0: 0:昔、昔の話です。 0: 0:みなさんは、七夕という行事を知っていますか? 0:七夕は、離れ離れにされてしまった、織姫と彦星が、年に一度だけ、天の川を渡って、会う事を許された、特別な日です。 0: 0:でも、その特別な日に雨が降ってしまうと、天の川の水が増えてしまうので、天の川を渡る事が出来なくなって、二人は会えなくなってしまうのです。 0: 0:このお話は、昔、昔に、何年も七夕の日が雨になったいた時のお話です。 0: 0:この村には、とてもやんちゃなコロックという子どもがいました。 0:コロックは、悪戯(いたずら)が大好きで、勉強が大嫌い、遊ぶのが大好きで、じっとしている事が大嫌いな子どもでした。 0: 0:そんなやんちゃなコロックですから、友達があまりいません。 0:でも、コロックは、そんな事をちっとも気にしていませんでした。 0: 0:コロックは一人になると、星見(ほしみ)の丘と呼ばれる高台(たかだい)に行っては、一人で空を眺めていました。 0:この星見の丘は、周りに遮(さえぎ)るものが何もなく、空がとても大きく見える所です。 0:夜になると、満天の星が見える事から、星見の丘と名付けられました。 0: 0:コロックは、この丘に来て、昼には雲を、夜には星を見るのが大好きでした。 0:雲や星を見ていると、コロックは、どこか、お話の世界にいるような、そんな気持ちになれました。 0:ですから、友達があまり出来なくても、寂しくはなかったのです。 0: 0:コロックは特に夏の空が大好きでした。 0:昼間の入道雲は、もくもくと大きく、真っ白な棉で作った山のようで、恰好よく。 0:夜の天の川は、キラキラ輝いて、まるで宝石を散りばめたように、とても綺麗で魅力的でした。 0: 0:夏の空は、コロックをとても楽しい気持ちにさせてくれます。 0:ですが、そんな夏でも、コロックにとって、凄く不満に思っている事がありました。 0:それは、毎年、七夕の日に雨が降る事でした。 0: 0:雨が降ると、織姫と彦星が合う事が出来ません。 0:一年に一度しか会えないのに、その日に雨が降るなんて、 0:それも、何年も雨が降るなんて 0:コロックは、織姫と彦星の事を想うと、七夕の雨がとても不満でした。 0: 0:夏になると、コロックはいつも、その事を考えていました。 0:そして、その年の七夕も雨が降ったのです。 0: 0:「どうして雨がふるんだろう・・・」 0: 0:コロックは不思議に思いました。 0:どうして雨が降るのかが分かれば、雨を降らせなくする事も出来るかもしれません。 0: 0:「そうだ、じいじに聞いてみよう!」 0: 0:コロックは、村で一番の物知りじいじに、どうして雨が降るのかを聞いてみる事にしました。 0: 0:「ねぇじいじ、どうして雨ってふるの?」 0: 0:「そうじゃな、 0:雨はな、水の神様が、雨雲を作るのじゃ 0:そして、その雨雲を竜(りゅう)が運んで雨を降らせるのじゃよ」 0: 0:「そうなんだ・・・ 0:じゃぁ、その竜にお願いすれば、七夕の日が雨にならずにすむのかな?」 0: 0:「さぁ、それはどうじゃろうな」 0: 0:「じゃぁ、その竜ってどこに住んでるの?」 0: 0:「うーん、何でも、西の方にある、一番高い「竜門山(りゅうもんざん)」という山の上の方におるらしいな」 0: 0:「わかった、オイラ行ってみるよ」 0: 0:そういうと、コロックは西に向かいました。 0:そして、一番高い竜門山を見つけて、登り始めました。 0: 0:竜門山はとても高い山で、登っても、登っても、頂上には着きません。 0:コロックは、段々足が痛くなってきましたが、それを我慢して登りました。 0: 0:どれだけ登ったでしょうか 0:へとへとになって、もう登れないと思った頃、コロックはようやく、竜の住む社(やしろ)を見つけました。 0: 0:コロックが社に近づくと、竜が雨雲を運ぶ準備をしていました。 0:コロックは、竜にいいました。 0: 0:「こんにちは、竜さん」 0: 0:「誰だね、君は?」 0: 0:「オイラ、コロックっていいます」 0: 0:「コロックか・・・ 0:それで、コロックは何の用でここに来たんだね」 0: 0:「竜さんにお願いがあって来ました」 0: 0:「私にお願い? それは何だね?」 0: 0:「はい、七夕の日に雨が降ると、織姫と彦星が会えなくなってしまいます。 0:だから、雨を降らせるのを、やめてはくれませんか」 0: 0:「雨をやめる? 0:雨は、君たちの田んぼや畑に必要だから、水の神様が用意して下さっているんだよ。 0:君たちに必要なものなんだ、だから、そんな事を言うもんじゃないよ」 0: 0:「いえ、七夕の日だけでいいんです。 その日だけ、雨を降らせないで欲しいんです」 0: 0:「うーん」 0:竜は少し考えて言いました。 0: 0:「雨の予定を何日か変える事なら出来るよ」 0: 0:コロックはその言葉を聞いて、とても喜びました。 0:「ありがとう 0:じゃぁ、来年の七夕は雨をやめてくれますか」 0: 0:コロックの願いに、竜が難しい顔をして答えます。 0:「だけどね、その日に雨をやめるかどうかは、君次第だよ」 0: 0:竜の言葉を聞いて、コロックは驚(おどろ)きました。 0: 0:「え? オイラ? 0:雨雲を運ぶのは竜さんなのに、どうしてオイラなの?」 0: 0:竜はコロックを見つめて話します。 0:「君は、私にお願いをするんだよね? 0:人にお願いをするのなら、君もそれと同じだけの何かを用意しないといけないよ」 0: 0:「そんな事を言われても、オイラ、お金もないし 0:何も持ってないよ」 0: 0:人にあげられるものを何も持っていないコロックは、もう願いは叶えられないのかと思って、悲しくなりました。 0:でも、そんなコロックを見て、竜が言いました。 0: 0:「そんなに悲しまなくてもいいんだよ 0:私はお金や物が欲しい訳じゃないんだ、君の想いが見たいだけのさ」 0: 0:「オイラの想い?」 0: 0:「あぁそうだ、どれだけ願いを叶えて欲しいかという、君の想いだよ。 0:いい加減な気持ちでお願いをするのなら、私はそんなお願いを叶えてやろうとは思わない」 0: 0:「いい加減な気持ちじゃなよ。 0:オイラ、本当に織姫と彦星を会わせてあげたいんだ」 0: 0:「そうか、では、その想いを私に見せて欲しい」 0: 0:「オイラはどうすればいいの?」 0: 0:「そうだな・・・」 0: 0:そういうと、竜は、コロックの事をしげしげと見つめました。 0: 0:「ふむふむ 0:どうやら君は、じっとしている事が苦手なようだね。 0:そして、字も綺麗に書けないようだ」 0: 0:「それは、そうだけど・・・」 0: 0:「では、コロックよ、君は字を練習しなさい。 0:君がどれだけ、字を上手に書けるようになるか、 0:それで、願いを叶えるかどうかを決めよう。 0: 0:ちょうど私の子どもも字を習っているから、 0:私の子どもよりも上手な字が書ければ、君の願いを叶えてあげよう」 0: 0:「字で勝負をするの?」 0: 0:「あぁ、字は勝負をするようなものではないが、 0:君がどれだけ上達したかを見る為に、比べてみようという事だ。 0:できるかい?」 0: 0:コロックは少し考えて 0: 0:「わかった、オイラ字を練習するよ。 0:オイラが綺麗な字を書けるようになったら、願いを叶えてくれるんだね」 0: 0:「あぁ、それは約束しよう 0:だが、字の練習は、机の前にずっと座っていなければならないよ。 0:今の君にはとても辛い習い事になるよ」 0: 0:「うん、でも、オイラ頑張るよ」 0: 0:そう言って、コロックは山を下りました。 0:そして、次の日からコロックは字を習い始めました。 0: 0:でも、字を習う事は、山で竜が言ったように、コロックにとって、とても辛いものでした。 0: 0:まず、机に向かってじっと座っていないといけません、 0:そして、丁寧に丁寧に筆を動かさないといけません。 0:先生の説明をよく聞いていないといけません。 0: 0:それは、コロックには苦手なものばかりでした。 0: 0:それでも、コロックは織姫と彦星のためにと思って、一生懸命頑張りました。 0: 0:「あのコロックが、字を習うなんて」 0:「一カ所にじっとしていられない、あのコロックが」 0:村のみんなは、コロックを見て驚きました。 0: 0:「どうしたんだよ、コロック、字なんて習って。 0:そんな事より、いつも見たいに、遊びに行ったらどうなんだい」 0: 0:そんな言葉を掛けられても、コロックは、字の練習を続けました。 0: 0:そして、一年が過ぎました。 0: 0:竜との約束の日、 0:今日は七夕の前日です。 0: 0:コロックは、一番上手に書けた字をもって、竜門山(りゅうもんざん)に登りました。 0: 0: 0:「コロックよ、綺麗な字は書けたかね」 0: 0:竜が言います。 0: 0:「うん、書いて来たよ。 0:これがオイラの一番上手に書けた字です」 0: 0:そう言って、コロックは自分の書いた字を竜に渡しました。 0: 0:「ほう、上手に書けたじゃないか、では、比べて見ようか」 0: 0:そういうと竜は、コロックの字と、竜の子どもの書いた字を比べました。 0:そして、竜は言いました。 0: 0:「コロックよ、残念ながら、私の子どもの字の方が上手なようだ 0:だから、君の願いは叶られないよ」 0: 0:コロックが丁寧に、一生懸命に書いた、一番上手に書けた字は、負けてしまいました。 0:コロックは悔しくて悔しくて涙が出ました。 0: 0:もっと頑張っていれば、もっと丁寧に書いていれば。 0:コロックは、織姫と彦星に申し訳がない気持ちで一杯になりました。 0: 0:そして、コロックは竜に言いました。 0: 0:「もう一度、勝負をさせて下さい。」 0: 0:竜は言います。 0: 0:「あぁ、何度でも勝負をするがいい。 0:但し、勝負は一年に一度だけだよ。」 0: 0:コロックは泣きながら山を下りました。 0: 0:そして、その年の七夕は雨が降ってしまいました。 0: 0:「次こそは」 0: 0:コロックは、もう一度、一生懸命に字を練習しました。 0: 0:「今度は、もっと真剣に、もって丁寧に」 0: 0:何度も何度も、そう自分に言い聞かせながら、コロックは字を書き続けました。 0:コロックは、いつしか星見の丘にも行かなくなっていました。 0: 0:そんな真剣なコロックの姿を見て、 0:もう誰もコロックの事を笑う人は居なくなっていました。 0: 0:それどころか、コロックを見習って、字を習い始める子ども達が増えて行きました。 0: 0:そして、また一年が過ぎました。 0: 0:七夕の前日 0:コロックは、今年も竜門山に上りました。 0: 0:「コロックよ、綺麗な字は書けたかね」 0: 0:竜が言います。 0:コロックは、竜に一番上手に書けた字を渡しました。 0: 0:「ほう、とても上手に書けるようになったんだね」 0: 0:「オイラ、一生懸命頑張ったよ」 0: 0:「お前の頑張りは、この字を見れば分かるよ。 0:では、比べてみよう」 0: 0:そういうと竜は、コロックの字と、竜の子どもの書いた字を比べました。 0:コロックは、どうか願いが叶いますようにと、祈るような思いで竜を見つめていました。 0: 0:そして 0: 0:「コロックよ、今年も、私の子どもの字の方が、ほんの少しだけ上手だったようだ」 0: 0:竜は少し申し訳なさそうな顔で言いました。 0: 0:竜のこの言葉を聞いて、コロックはその場にペタンと座りこんでしまいました。 0:あんなに一生懸命やったのに、竜の子どもには届かなかったのです。 0:コロックの目には、涙が溢れてきました。 0: 0:「コロックよ、これは約束だからね。 0:残念ながら・・・」 0: 0:竜がそう言いかけた時 0: 0:「僕も字を書いて来たよ!」 0: 0:コロックの後ろから子どもの声がしました。 0:そこには、村の子どもが立っていたのです。 0: 0:「私も字を書いて来ました」 0:「俺の字も見て下さい。」 0: 0:子どもは一人ではありません。 0:村中の子ども達が後から後から、どんどんと登って来ては、コロックの後ろに立って、 0:竜に自分の書いて来た字を見せているではありませんか。 0: 0:みんな、はぁはぁと息をしながら、疲れた様子でした。 0:それは無理もありません。 0:この竜門山は、やんちゃなコロックでも、疲れきってしまう程の高い山です。 0:それでも、みんなは頑張って、この高い山を登り、コロックを応援する為に追いかけて来たのです。 0: 0:そして、登って来た子ども達は、次々に竜に向かって言いました。 0:「僕の字だって見てください」 0:「コロックだけじゃないんです」 0:「みんなが、書いたんです」 0:「みんなで、一生懸命書いたんです」 0:「だから、私達の字も見てください」 0: 0:その様子に竜も驚きを隠(かく)せませんでした。 0: 0:「これは何という事だ」 0: 0:村中の子ども達の真剣な眼差しが、竜を見つめているのです。 0:それには、竜も関心をしました。。 0: 0:「わかった、わかった 0:今回の勝負は君たちの勝ちとしよう。 0:約束通り、明日の七夕には雨を降らすのをやめよう」 0: 0:その言葉を聞いた瞬間、 0:村の子ども達は一斉に飛び上がって喜びました。 0:みんなが手を取り合って喜んでいます。 0:その中にコロックもいました。 0:コロックも皆と一緒に手を取り合って喜びました。 0: 0:そして、みんなが喜んだ後に竜がいいました。 0: 0:「もし、来年も勝負をするのであれば、今度は君たちの村の中で、一番上手に書けた字を持って来なさい。 0:その字と勝負をしょう。」 0: 0:その言葉に、村のみんなは、竜を見て頷(うなづき)きました。 0: 0:「今回は、みんなにご褒美(ほうび)を上げよう。 0:そこに生えている、笹竹(ささだけ)を持って行きなさい。 0: 0:七夕の日に、その笹竹に願い事を書いた短冊(たんざく)を飾れば、その願い事を叶えてあげよう 0:竜はそういうと、社(やしろ)の中に消えていきました。 0: 0:子ども達は、笹竹を持って帰り、七夕の日に短冊を飾りました。 0: 0:短冊には 0:「字が綺麗になりますように」 0:「習い事が上達しますように」 0:という願いが書かれていました。 0: 0:それからというもの、七夕に飾る笹竹には、習い事の上達を願う短冊が飾られるようになったという事です。 0: 0: 0:さて、今度の勝負はどちらが勝つのでしょうか? 0: 0:おしまい。

0:七夕の話 0: 0:昔、昔の話です。 0: 0:みなさんは、七夕という行事を知っていますか? 0:七夕は、離れ離れにされてしまった、織姫と彦星が、年に一度だけ、天の川を渡って、会う事を許された、特別な日です。 0: 0:でも、その特別な日に雨が降ってしまうと、天の川の水が増えてしまうので、天の川を渡る事が出来なくなって、二人は会えなくなってしまうのです。 0: 0:このお話は、昔、昔に、何年も七夕の日が雨になったいた時のお話です。 0: 0:この村には、とてもやんちゃなコロックという子どもがいました。 0:コロックは、悪戯(いたずら)が大好きで、勉強が大嫌い、遊ぶのが大好きで、じっとしている事が大嫌いな子どもでした。 0: 0:そんなやんちゃなコロックですから、友達があまりいません。 0:でも、コロックは、そんな事をちっとも気にしていませんでした。 0: 0:コロックは一人になると、星見(ほしみ)の丘と呼ばれる高台(たかだい)に行っては、一人で空を眺めていました。 0:この星見の丘は、周りに遮(さえぎ)るものが何もなく、空がとても大きく見える所です。 0:夜になると、満天の星が見える事から、星見の丘と名付けられました。 0: 0:コロックは、この丘に来て、昼には雲を、夜には星を見るのが大好きでした。 0:雲や星を見ていると、コロックは、どこか、お話の世界にいるような、そんな気持ちになれました。 0:ですから、友達があまり出来なくても、寂しくはなかったのです。 0: 0:コロックは特に夏の空が大好きでした。 0:昼間の入道雲は、もくもくと大きく、真っ白な棉で作った山のようで、恰好よく。 0:夜の天の川は、キラキラ輝いて、まるで宝石を散りばめたように、とても綺麗で魅力的でした。 0: 0:夏の空は、コロックをとても楽しい気持ちにさせてくれます。 0:ですが、そんな夏でも、コロックにとって、凄く不満に思っている事がありました。 0:それは、毎年、七夕の日に雨が降る事でした。 0: 0:雨が降ると、織姫と彦星が合う事が出来ません。 0:一年に一度しか会えないのに、その日に雨が降るなんて、 0:それも、何年も雨が降るなんて 0:コロックは、織姫と彦星の事を想うと、七夕の雨がとても不満でした。 0: 0:夏になると、コロックはいつも、その事を考えていました。 0:そして、その年の七夕も雨が降ったのです。 0: 0:「どうして雨がふるんだろう・・・」 0: 0:コロックは不思議に思いました。 0:どうして雨が降るのかが分かれば、雨を降らせなくする事も出来るかもしれません。 0: 0:「そうだ、じいじに聞いてみよう!」 0: 0:コロックは、村で一番の物知りじいじに、どうして雨が降るのかを聞いてみる事にしました。 0: 0:「ねぇじいじ、どうして雨ってふるの?」 0: 0:「そうじゃな、 0:雨はな、水の神様が、雨雲を作るのじゃ 0:そして、その雨雲を竜(りゅう)が運んで雨を降らせるのじゃよ」 0: 0:「そうなんだ・・・ 0:じゃぁ、その竜にお願いすれば、七夕の日が雨にならずにすむのかな?」 0: 0:「さぁ、それはどうじゃろうな」 0: 0:「じゃぁ、その竜ってどこに住んでるの?」 0: 0:「うーん、何でも、西の方にある、一番高い「竜門山(りゅうもんざん)」という山の上の方におるらしいな」 0: 0:「わかった、オイラ行ってみるよ」 0: 0:そういうと、コロックは西に向かいました。 0:そして、一番高い竜門山を見つけて、登り始めました。 0: 0:竜門山はとても高い山で、登っても、登っても、頂上には着きません。 0:コロックは、段々足が痛くなってきましたが、それを我慢して登りました。 0: 0:どれだけ登ったでしょうか 0:へとへとになって、もう登れないと思った頃、コロックはようやく、竜の住む社(やしろ)を見つけました。 0: 0:コロックが社に近づくと、竜が雨雲を運ぶ準備をしていました。 0:コロックは、竜にいいました。 0: 0:「こんにちは、竜さん」 0: 0:「誰だね、君は?」 0: 0:「オイラ、コロックっていいます」 0: 0:「コロックか・・・ 0:それで、コロックは何の用でここに来たんだね」 0: 0:「竜さんにお願いがあって来ました」 0: 0:「私にお願い? それは何だね?」 0: 0:「はい、七夕の日に雨が降ると、織姫と彦星が会えなくなってしまいます。 0:だから、雨を降らせるのを、やめてはくれませんか」 0: 0:「雨をやめる? 0:雨は、君たちの田んぼや畑に必要だから、水の神様が用意して下さっているんだよ。 0:君たちに必要なものなんだ、だから、そんな事を言うもんじゃないよ」 0: 0:「いえ、七夕の日だけでいいんです。 その日だけ、雨を降らせないで欲しいんです」 0: 0:「うーん」 0:竜は少し考えて言いました。 0: 0:「雨の予定を何日か変える事なら出来るよ」 0: 0:コロックはその言葉を聞いて、とても喜びました。 0:「ありがとう 0:じゃぁ、来年の七夕は雨をやめてくれますか」 0: 0:コロックの願いに、竜が難しい顔をして答えます。 0:「だけどね、その日に雨をやめるかどうかは、君次第だよ」 0: 0:竜の言葉を聞いて、コロックは驚(おどろ)きました。 0: 0:「え? オイラ? 0:雨雲を運ぶのは竜さんなのに、どうしてオイラなの?」 0: 0:竜はコロックを見つめて話します。 0:「君は、私にお願いをするんだよね? 0:人にお願いをするのなら、君もそれと同じだけの何かを用意しないといけないよ」 0: 0:「そんな事を言われても、オイラ、お金もないし 0:何も持ってないよ」 0: 0:人にあげられるものを何も持っていないコロックは、もう願いは叶えられないのかと思って、悲しくなりました。 0:でも、そんなコロックを見て、竜が言いました。 0: 0:「そんなに悲しまなくてもいいんだよ 0:私はお金や物が欲しい訳じゃないんだ、君の想いが見たいだけのさ」 0: 0:「オイラの想い?」 0: 0:「あぁそうだ、どれだけ願いを叶えて欲しいかという、君の想いだよ。 0:いい加減な気持ちでお願いをするのなら、私はそんなお願いを叶えてやろうとは思わない」 0: 0:「いい加減な気持ちじゃなよ。 0:オイラ、本当に織姫と彦星を会わせてあげたいんだ」 0: 0:「そうか、では、その想いを私に見せて欲しい」 0: 0:「オイラはどうすればいいの?」 0: 0:「そうだな・・・」 0: 0:そういうと、竜は、コロックの事をしげしげと見つめました。 0: 0:「ふむふむ 0:どうやら君は、じっとしている事が苦手なようだね。 0:そして、字も綺麗に書けないようだ」 0: 0:「それは、そうだけど・・・」 0: 0:「では、コロックよ、君は字を練習しなさい。 0:君がどれだけ、字を上手に書けるようになるか、 0:それで、願いを叶えるかどうかを決めよう。 0: 0:ちょうど私の子どもも字を習っているから、 0:私の子どもよりも上手な字が書ければ、君の願いを叶えてあげよう」 0: 0:「字で勝負をするの?」 0: 0:「あぁ、字は勝負をするようなものではないが、 0:君がどれだけ上達したかを見る為に、比べてみようという事だ。 0:できるかい?」 0: 0:コロックは少し考えて 0: 0:「わかった、オイラ字を練習するよ。 0:オイラが綺麗な字を書けるようになったら、願いを叶えてくれるんだね」 0: 0:「あぁ、それは約束しよう 0:だが、字の練習は、机の前にずっと座っていなければならないよ。 0:今の君にはとても辛い習い事になるよ」 0: 0:「うん、でも、オイラ頑張るよ」 0: 0:そう言って、コロックは山を下りました。 0:そして、次の日からコロックは字を習い始めました。 0: 0:でも、字を習う事は、山で竜が言ったように、コロックにとって、とても辛いものでした。 0: 0:まず、机に向かってじっと座っていないといけません、 0:そして、丁寧に丁寧に筆を動かさないといけません。 0:先生の説明をよく聞いていないといけません。 0: 0:それは、コロックには苦手なものばかりでした。 0: 0:それでも、コロックは織姫と彦星のためにと思って、一生懸命頑張りました。 0: 0:「あのコロックが、字を習うなんて」 0:「一カ所にじっとしていられない、あのコロックが」 0:村のみんなは、コロックを見て驚きました。 0: 0:「どうしたんだよ、コロック、字なんて習って。 0:そんな事より、いつも見たいに、遊びに行ったらどうなんだい」 0: 0:そんな言葉を掛けられても、コロックは、字の練習を続けました。 0: 0:そして、一年が過ぎました。 0: 0:竜との約束の日、 0:今日は七夕の前日です。 0: 0:コロックは、一番上手に書けた字をもって、竜門山(りゅうもんざん)に登りました。 0: 0: 0:「コロックよ、綺麗な字は書けたかね」 0: 0:竜が言います。 0: 0:「うん、書いて来たよ。 0:これがオイラの一番上手に書けた字です」 0: 0:そう言って、コロックは自分の書いた字を竜に渡しました。 0: 0:「ほう、上手に書けたじゃないか、では、比べて見ようか」 0: 0:そういうと竜は、コロックの字と、竜の子どもの書いた字を比べました。 0:そして、竜は言いました。 0: 0:「コロックよ、残念ながら、私の子どもの字の方が上手なようだ 0:だから、君の願いは叶られないよ」 0: 0:コロックが丁寧に、一生懸命に書いた、一番上手に書けた字は、負けてしまいました。 0:コロックは悔しくて悔しくて涙が出ました。 0: 0:もっと頑張っていれば、もっと丁寧に書いていれば。 0:コロックは、織姫と彦星に申し訳がない気持ちで一杯になりました。 0: 0:そして、コロックは竜に言いました。 0: 0:「もう一度、勝負をさせて下さい。」 0: 0:竜は言います。 0: 0:「あぁ、何度でも勝負をするがいい。 0:但し、勝負は一年に一度だけだよ。」 0: 0:コロックは泣きながら山を下りました。 0: 0:そして、その年の七夕は雨が降ってしまいました。 0: 0:「次こそは」 0: 0:コロックは、もう一度、一生懸命に字を練習しました。 0: 0:「今度は、もっと真剣に、もって丁寧に」 0: 0:何度も何度も、そう自分に言い聞かせながら、コロックは字を書き続けました。 0:コロックは、いつしか星見の丘にも行かなくなっていました。 0: 0:そんな真剣なコロックの姿を見て、 0:もう誰もコロックの事を笑う人は居なくなっていました。 0: 0:それどころか、コロックを見習って、字を習い始める子ども達が増えて行きました。 0: 0:そして、また一年が過ぎました。 0: 0:七夕の前日 0:コロックは、今年も竜門山に上りました。 0: 0:「コロックよ、綺麗な字は書けたかね」 0: 0:竜が言います。 0:コロックは、竜に一番上手に書けた字を渡しました。 0: 0:「ほう、とても上手に書けるようになったんだね」 0: 0:「オイラ、一生懸命頑張ったよ」 0: 0:「お前の頑張りは、この字を見れば分かるよ。 0:では、比べてみよう」 0: 0:そういうと竜は、コロックの字と、竜の子どもの書いた字を比べました。 0:コロックは、どうか願いが叶いますようにと、祈るような思いで竜を見つめていました。 0: 0:そして 0: 0:「コロックよ、今年も、私の子どもの字の方が、ほんの少しだけ上手だったようだ」 0: 0:竜は少し申し訳なさそうな顔で言いました。 0: 0:竜のこの言葉を聞いて、コロックはその場にペタンと座りこんでしまいました。 0:あんなに一生懸命やったのに、竜の子どもには届かなかったのです。 0:コロックの目には、涙が溢れてきました。 0: 0:「コロックよ、これは約束だからね。 0:残念ながら・・・」 0: 0:竜がそう言いかけた時 0: 0:「僕も字を書いて来たよ!」 0: 0:コロックの後ろから子どもの声がしました。 0:そこには、村の子どもが立っていたのです。 0: 0:「私も字を書いて来ました」 0:「俺の字も見て下さい。」 0: 0:子どもは一人ではありません。 0:村中の子ども達が後から後から、どんどんと登って来ては、コロックの後ろに立って、 0:竜に自分の書いて来た字を見せているではありませんか。 0: 0:みんな、はぁはぁと息をしながら、疲れた様子でした。 0:それは無理もありません。 0:この竜門山は、やんちゃなコロックでも、疲れきってしまう程の高い山です。 0:それでも、みんなは頑張って、この高い山を登り、コロックを応援する為に追いかけて来たのです。 0: 0:そして、登って来た子ども達は、次々に竜に向かって言いました。 0:「僕の字だって見てください」 0:「コロックだけじゃないんです」 0:「みんなが、書いたんです」 0:「みんなで、一生懸命書いたんです」 0:「だから、私達の字も見てください」 0: 0:その様子に竜も驚きを隠(かく)せませんでした。 0: 0:「これは何という事だ」 0: 0:村中の子ども達の真剣な眼差しが、竜を見つめているのです。 0:それには、竜も関心をしました。。 0: 0:「わかった、わかった 0:今回の勝負は君たちの勝ちとしよう。 0:約束通り、明日の七夕には雨を降らすのをやめよう」 0: 0:その言葉を聞いた瞬間、 0:村の子ども達は一斉に飛び上がって喜びました。 0:みんなが手を取り合って喜んでいます。 0:その中にコロックもいました。 0:コロックも皆と一緒に手を取り合って喜びました。 0: 0:そして、みんなが喜んだ後に竜がいいました。 0: 0:「もし、来年も勝負をするのであれば、今度は君たちの村の中で、一番上手に書けた字を持って来なさい。 0:その字と勝負をしょう。」 0: 0:その言葉に、村のみんなは、竜を見て頷(うなづき)きました。 0: 0:「今回は、みんなにご褒美(ほうび)を上げよう。 0:そこに生えている、笹竹(ささだけ)を持って行きなさい。 0: 0:七夕の日に、その笹竹に願い事を書いた短冊(たんざく)を飾れば、その願い事を叶えてあげよう 0:竜はそういうと、社(やしろ)の中に消えていきました。 0: 0:子ども達は、笹竹を持って帰り、七夕の日に短冊を飾りました。 0: 0:短冊には 0:「字が綺麗になりますように」 0:「習い事が上達しますように」 0:という願いが書かれていました。 0: 0:それからというもの、七夕に飾る笹竹には、習い事の上達を願う短冊が飾られるようになったという事です。 0: 0: 0:さて、今度の勝負はどちらが勝つのでしょうか? 0: 0:おしまい。