台本概要
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タイトル | 続!女児たちのお戯(たわむ)れ |
---|---|
作者名 | ふらん☆くりん (@Frank_lin01) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 5人用台本(女5) ※兼役あり |
時間 | 40 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
【あらすじ】 今日も幼稚園児仲良し女児5人組が何やら楽しいことを計画しているようですよ。 ※この作品は前作「女児たちのお戯(たわむ)れ」の続編となっております。1話完結なので本作だけでも楽しめますが、前作と併せて演じていただけるとより楽しめるかと思います。 【著作権について】 本作品の著作権は全て作者である「ふらん☆くりん」に帰属します。 また、いかなる場合であっても当方は著作権の放棄はいたしません。 【禁止事項】 ●商業目的での利用 ●台本の無断使用、無断転載、自作発言等 ●過度なアドリブ、セリフの大幅な改変等 【ご利用に際してのお願い】 ●台本の利用に際しては作者X(旧ツイッター)DMに連絡をお願いいたします。 ●配信等で利用される場合は①作品名、②作者名、③台本掲載URLを掲示していただけると嬉しいです。 ●たくさんの方の演技を聴きに行きたいので、可能であれば告知文にメンションを付けていただけると嬉しいです。 415 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
まさみ | 女 | 26 | さくら組の幼稚園児。少しお転婆な女の子。 |
ゆず子 | 女 | 31 | いちご組の幼稚園児。しっかり者でお姉さんタイプの女の子。 |
えりな | 女 | 45 | もも組の幼稚園児。少し幼い感じの女の子。 |
たえこ | 女 | 47 | ひまわり組の幼稚園児。元気いっぱいの女の子。 |
さゆり | 女 | 25 | ばら組の幼稚園児。優しくて真面目な性格の女の子。 |
ナレーション | 不問 | 3 | どなたかが兼役で読んでください。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
タイトル:続!女児たちのお*戯《たわむ》れ
:
登場人物:
まさみ:さくら組の幼稚園児。少しお転婆な女の子。
ゆず子:いちご組の幼稚園児。しっかり者でお姉さんタイプの女の子。
えりな:もも組の幼稚園児。少し幼い感じの女の子。
たえこ:ひまわり組の幼稚園児。元気いっぱいの女の子。
さゆり:ばら組の幼稚園児。優しくて真面目な性格の女の子。
ナレーション:どなたかが兼役で読んでください。
:『』のセリフ以外は基本的に幼稚園児の声で演じてください。
:(M)はモノローグです。、〈〉はト書き、漢字の読み仮名以外の( )は心の声です。
:
:
本編:
ナレーション:これは、とある幼稚園を舞台にした仲良し女児5人組が織り成すハートフルコメディの「続編」である。
:
たえこ:はぁ…。
ゆず子:たえこちゃんげんきないね。どうしたの?
たえこ:うん…。さいきんあめばっかりで、おそとであそべないなぁとおもってさ。
ゆず子:あー、それでげんきなかったのね。
たえこ:うん。
まさみ:わかるー。うんどうぶそくはおはだによくないもんね。
えりな:そうそう。すとれすたまっちゃうしね。
さゆり:たまるよねー。
えりな:すとれすといえばさ、こんどのえんそくのおやつなにもっていくかきまった?
たえこ:アタイまだきめてない。
ゆず子:わたしもー。
さゆり:あー、あたしもまだ。
まさみ:ぜんぜんきまってないよー。だいたいさぁ、300えんまでってむりだよね?
えりな:ねー。むりだよね。
えりな:〈急に大人口調になって〉『そもそも300円でどれだけのお菓子が買えるか大人は本当に理解しているのかしら。今の大人が子供だった頃とは物価だけじゃなくて、お菓子の売り方そのものさえも変わってしまっているというのにね。まったく…いくら食品が軽減税率の対象だからって物価自体が上がってちゃ意味ないわよね。あーあ、5円でチョコが買えた時代が羨ましいわ。』
ゆず子:ほんとだよね。
ゆず子:〈急に大人口調になって〉昔なんてさ、シール付きのウエハースチョコが1個30円で売られていたのにね。今の大人たちはシール欲しさに禁断の箱買い…通称「大人買い」なんてことまでやっていたらしいわ。しかも、小さい子が律儀にバラ売りの箱からどれにしようか悩んでいる目の前で箱ごと取り出してレジに持って行くの。ほんと、鬼畜の所業だわ。まあ、一箱30個入りだったらしいから箱で買っても900円。その程度でドヤ顔出来た時代の人たちには今の私たちの気持ちなんて到底理解出来ないでしょうね。』
たえこ:いいなぁ。アタイもそのじだいにうまれたかったなぁ…。
まさみ:ねー、わたしならえんそくにおかしまるまるひとはこもっていくのに。
えりな:まさみちゃん、それ300えんじゃかえないよ。
まさみ:あ!そっかー。てへへ。
さゆり:あのさ、いまぱっとおもいついたんだけど、みんなでおみせやさんごっこやらない?
ゆず子:おみせやさんごっこ?
たえこ:なになに?おもしろそう!
まさみ:どんなあそびなの?
さゆり:んーっとね。
さゆり:〈急に大人口調になって〉『そもそもお店屋さんごっことは、店員役とお客役に分かれて大人が実際に購入するシーンを疑似体験するごっこ遊びのことだが、単にモノを売り買いするという商品とお金のやり取りよりも、店員と客によって交わされる何気ない日常会話の裏で繰り広げられる*熾烈《しれつ》な価格交渉を楽しむことこそがこの遊びの醍醐味とも言えるわ。店員側はいかにして客の話を*逸《そ》らし、交渉の場に持ち込ませないかに頭を悩ませ、逆に客側はあらゆる話題とトークスキルを総動員して店員側の心を折り、自発的な値下げに誘導するかを試行錯誤する…そんな超高度心理戦術ゲームなの。機械化が進み、人と人とが直接やり取りをする場面が希薄になった現代だからこそ必要とされるべきゲームだわ。』
ゆず子:わぁ…なんかむずかしそうだね。
さゆり:そんなことないよ。やってみたらきっとたのしいとおもうよ。
えりな:でもさぁ、これってふたりしかあそべなくない?
さゆり:あ、そっかぁ。みんなでやるにはやくがたりないね。
たえこ:うーん…じゃあさ、こんなのはどうかな?
たえこ:〈急に大人口調になって〉『お店屋さんごっこを多人数で遊ぶにはどうしたらいいか。一番の問題点はこのゲームが店員役とお客役の二役しか存在しない点にある。しかし実際の現場においてはどうだろうか。店側には店側の、お客側にはお客側の、それぞれが抱える「事情」というものが存在するはずである。そして店員とお客が会計する場面は、店側とお客側という二つの存在が互いの命運を賭けて勝負する、言わば「決戦の場」なのだ。つまり、これは個人戦ではなくチーム戦。店員とお客はそれぞれの代表者であり、会計という最終決戦に行くまでのドラマも含めてトータルで考えれば*自《おの》ずと多人数で遊ぶ方法は見えてくるものよ。』
まさみ:う、うーん…つまり…どゆこと?
たえこ:〈大人口調で〉『つまり、店側の事情に登場する人物とお客側の事情に登場する人物を決めて、それぞれ別々のドラマを演じれば良いということよ。そうね…配役の人数比としては店側が2名でお客側が3名といったところかしら。』
えりな:わぁー!めっちゃ楽しそう!!
さゆり:たえこちゃんあたまいい!!
ゆず子:じゃあじゃあ、さっそくとうじょうじんぶつをかんがえてみようよ。
まさみ:うん!おみせがわは…てんちょうのおくさんでしょ、それとてんちょうのむすめさんかな?
たえこ:いいね、いいね!じゃあおきゃくさんがわは、おかあさんとふたりのむすめさんかな?
ゆず子:うん!わーい!これでやくがきまったね!
さゆり:あとはそれぞれのすとーりーだね!
まさみ:じゃあわたし、おみせがわのすとーりーかんがえてみたんだけどきいてくれる?
さゆり:ほんと?ききたい!
まさみ:じゃあいくね。
まさみ:〈急に大人口調になって〉『あれは雨がシトシトと降り続くジメジメした日だった…愛する夫が突然私と娘の前からいなくなってしまったのだ。朝、仕入れのために元気良く家を出て30分も経たないうちに起きた交通事故。夫は信号待ちをしていた所に後ろから来た居眠り運転の大型トラックに追突されたのだ。即死だった。
まさみ:------------私が夫と出会ったのは5年前だ。私の家は代々小さなお店を経営していて、野菜から雑貨まで何でも揃うと地域でも評判のお店だった。しかし、6年前に近くに出来た大型スーパーと乱立するコンビニエンスストアの*煽《あお》りを受けて客足は激減、経営は一気に傾いた。もういっそ店を畳んでしまおうかと悩んでいた矢先に出会ったのが夫だった。夫は昔からうちの店によく来てくれていた常連さんで、お互い*惹《ひ》かれあっていた。大恋愛の末結ばれた私たちの間には可愛い娘が生まれ、一時は廃業の危機にあったお店も夫のSNSを使用した斬新なアイデアにより徐々に客足を取り戻しつつあった。そんな絵に描いたような*順風満帆《じゅんぷうまんぱん》な時期に起きた突然の悲劇…。絶望に打ちひしがれる中、ある日私は、押入れから夫が私のために*密《ひそ》かに用意してくれていた誕生日プレゼントと手紙を発見する。その手紙には私に対する日頃の感謝の言葉と、これからも一緒にお店を続けていきたいという彼なりの夢が書かれていた。「夫と娘のためにもこの店は私が守る!」そう心に決めて今日も私はレジに立つのだった。』
まさみ:っていう感じなんだけどどうかな?
ゆず子:まさみちゃんすごいすごーい!きゅうにどうしちゃったの?
まさみ:えへへ。じつはね、さいきんひるどらにはまってて。
たえこ:そうなんだ!すごすぎてアタイびっくりしちゃったよ。
さゆり:あたしも。しょうせつかかとおもっちゃった。
えりな:じゃあこんどはアタチがかんがえたおきゃくがわのすとーりーきいてくれる?
ゆず子:わー!ききたい!このあいだもえりなちゃんのおはなしすごかったからたのしみだよ~!
えりな:えへへ。ありがとうゆず子ちゃん。じゃあきいててね。
えりな:〈大人口調で〉『先週、夫は私と二人の娘を残して家を出て行った。パート先から戻った私が目にしたのは机に残された一枚のメモだった。そこには汚い字で私への感謝とともに、別の女性と新しい人生を歩むので、もう私とは暮らせないといった内容が書かれていた。そう、夫は私がパートに出ていることを良いことに、影で別の女性と不倫をしていたのである。私は捨てられた…突きつけられた衝撃の事実に頭が真っ白になる。それと同時に、夫に裏切られた悔しさ、怒り、これから先の生活と残された二人の娘の将来への不安といった様々な負の感情が重く心にのしかかった。そんな中、ただ一つ幸いな事があるとすれば二人の娘はまだこの事実を知らないということだ。隠し通せるか…いや、いずれ分かることだとしても今は隠し通さなければならない。幸運にも夫は普段から出張と称して家を空けることが多かった。よし、これは使える…私は学校から帰宅した娘たちを前に、父が急遽海外に出張に行くことになり、しばらく戻って来ないことを告げた。あとはいかにして中学生と高校生の娘を育てつつ、生計を立てていくかだ。私は*暗澹《あんたん》たる思いを胸に、今日も行きつけのお店に食材の買い出しに行くのであった。』
えりな:っていうおはなしだよ。
さゆり:わぁー!!えりなちゃんやっぱりすごいや!
ゆず子:うぅ…わたしちょっとなきそうになっちゃった。
たえこ:アタイも…。じゃあおはなしはこれできまりね!つぎはだれがなんのやくをやるかきめていこっか。
まさみ:うん!そだね!
さゆり:あたし、ちゅうがくせいのむすめさんやりたい!
ゆず子:いいね!わたしは…てんちょうのむすめさんやりたいな。
たえこ:おお!ゆず子ちゃんがちいさいむすめさんやるんだね!たのしみ~!アタイはねぇ、おかあさんやりたい!
えりな:たえこちゃんのおかあさんすごくたのしみ!アタチは、てんちょうのおくさんやりたいな。
まさみ:わ〜!じゃあわたしはこうこうせいのむすめさんやる!
ゆず子:わーい!これできまったね!
たえこ:おはなしのながれはどうしよっか?
さゆり:さいしょにおみせがわのおはなしやって、そのままおきゃくがわのおはなしやって、さいごにおかいけいでてんちょうのおくさんとおかあさんがおはなしするかんじでどうかな?
えりな:うん!それでいいとおもう!
まさみ:すっごくわくわくするね!
ゆず子:はやくやろやろ!
たえこ:じゃあいくよ!3・2・1あくしょん!
:
:-------------------【リアルお店屋さんごっこスタート!】(ここからは『』以外は幼稚園児の声で演じてください)
:
:【 お店側の事情編 】
えりな:〈電話〉もしもし…はい。え!?おっとのくるまがとらっくについとつされた?はい!すぐにいきます!
えりな:ゆず子、いますぐびょういんにいくわよ!
ゆず子:どうしたの?
えりな:ぱぱがね…くるまにぶつけられて…けがしちゃったの。だから…ね。
ゆず子:わかった。あたしもいく。
えりな:いいこね。さ、いきましょう!
:
:-------------------病室にて
えりな:え…うそ…でしょ?あなた、うう…あなた!どうしてしんじゃったの?おねがい…めをあけて…わたしをおいていかないでよぉ!!うわぁぁぁ!!
ゆず子:まま…よしよし。だいじょぶ。だいじょぶ。
えりな:うぅ…ぐすん…うん、うん。ゆず子…ありがとね。そうね、ぱぱのぶんまでわたしがしっかりしないとね。めそめそしてごめんね。
えりな:〈大人口調で〉『追突事故により即死…私は突然訪れた夫の死を受け止めることが出来なかった。しかし、夫の遺体を前に泣きじゃくる私に、幼い娘ゆず子が掛けてくれた「だいじょぶ」という言葉が私を暗闇から連れ出してくれた。そうだ、私はこんな所で泣いている場合ではない。愛する夫がいなくなってしまった今、私がしっかりしなければゆず子だけじゃなく、あの人との思い出がいっぱい詰まったあの店さえも守り抜くことは出来ないのだから…。』
ゆず子:まま…なかないで。
えりな:うん、ありがとう。ままね、ゆず子のおかげでいっぱいげんきでた。もうなかないからだいじょうぶよ。
ゆず子:うん!
えりな:(M)それからのわたしはおさないゆず子とおみせをまもるため、ひっしのおもいではたらいた。せいぜん、おっとがおきゃくさんをよびもどすためにおこなったさまざまなくふうをべーすに、わたしなりにあたらしいあいであをもりこんでみたところ、これがおきゃくさんにひっとし、すこしずつではあるが、みせはいぜんのようなにぎわいをみせるまでにかいふくした。そんなあるひ…。
ゆず子:ままー、ここになんかありゅよ。
えりな:どうしたの、ゆず子?あら…これは!?
えりな:(M)そこでわたしがみたのは、おしいれのおくにだいじそうにしまってあった、きれいにらっぴんぐされたはこだった。
ゆず子:まっかなりぼん!きれい!
えりな:ほんときれいなりぼんね。なにかしら?え!これはもしかして…あのひとからのたんじょうびぷれぜんと?
ゆず子:ぷえぜんと?
えりな:そうよ。これはね、ぱぱがままにくれたぷれぜんとなの。さぁて、なにがはいっているのかなぁ~?いっしょにあけてみよっか?
ゆず子:うん!あけゆ!
えりな:どれどれ~。あ、これは…すかーふ?
ゆず子:とってもきれい~まっかっか!
えりな:そうね、なんてあざやかなあかいろなんでしょう!ほんと、すてき!
ゆず子:まま!おてがみあったよ!
えりな:おてがみ?えーっと…。
えりな:「だいすきなえりなへ、おたんじょうびおめでとう。えりながこのてがみをよんでいるということは、ついにみつかっちゃたんだね。ほんとうはちょくせつわたすつもりだったけど、えりなをびっくりさせたくて、みつかるまでここにしまっておいたんだ。いつもぼくやゆず子、そしておみせのためにがんばってくれてありがとう!えりなとゆず子がいるからぼくはまいにちしあわせでいられるんだ。ぼくのゆめはね、えりなとゆず子のさんにんでこのさきもずっとおみせをつづけていくことなんだよ。だからこれからもよろしくね!えりな、あいしてる!」
えりな:う…うぅ…うわぁぁぁん!!わたしも、わたしもあなたのことあいしてるよぉぉ!!
ゆず子:まま…なかないで…おねがい。ぐすん…うわーん!!
:
:-------------------(数分後)
えりな:ぐすん…あなた、ほんとうにありがとう。このすかーふ、ずっとずっとたいせつにするね。
ゆず子:まま…笑って。
えりな:うん。もう大丈夫よ。ゆず子、ありがとね。まま、がんばるからね。あなた、これからもわたしたちをみまもっててね。
:
えりな:(M)わたしはてんごくのおっとにみまもられながら、きょうもげんきにおみせにたちます。
:
えりな:いらっしゃいませ!
:
:【 お客側の事情編 】
たえこ:ただいまー!ふぅー、きょうもいちにちつかれたぁ。すこしゆっくりしたいところだけどみんながかえってくるまでにゆうはんのじゅんびしないとね。…ってあれ?てーぶるのうえにめもがおいてあるわ。なんだろ?
たえこ:「たえこへ。すきなひとができたから、そのひととあたらしいじんせいをあゆみます。だからここにはもうかえりません。いままでありがとう。さようなら。」
たえこ:なに…これ?どういうことなの?
:
たえこ:〈大人口調で〉『その字は汚いが、確かに彼の書いたものに間違いなかった。「私、捨てられたんだ…。」小さなメモ用紙に書かれた短い文章を見た時、私は瞬時に悟った。彼は私がパートに出ている間、仕事を理由にずっと不倫していたのだ。いつも帰宅は夜遅く、帰らない日も多かった。今思えばそれら全てに納得がいく。私は突然突きつけられた衝撃の事実を前にして、その場に立ち尽くすことしか出来なかった。』
たえこ:わたし…これからどうしたら…。
たえこ:(M)かれにうらぎられたことへのくやしさ、いかりとともに、わたしはべつのふあんをかんじていた。それは…。
:
:-------------------(1時間後)
さゆり:ただいまー!おかあさん、おなかすいたよー!おやつたべたい!
たえこ:さゆり、おかえりなさい。ほら、ちゃんとてをあらってからね。
さゆり:はーい!
まさみ:ただいま。ふう…つかれた。
たえこ:おかえりなさい。あら、まさみ。なんかげんきないわね。
まさみ:ちょっとがっこうでいやなことあって。
たえこ:そうなの。はなしきいてあげるからあなたもてをあらってきがえてきなさい。
まさみ:うん…わかった。
たえこ:(M)そう…ちちがふりんしていえをでていったということを、このふたりにきづかれてしまうのではないかというふあんだった。
:-------------------(数分後)
まさみ:…それでね、わたしなにもわるいことしてないのにせんせいにおこられたの。
たえこ:そう…そんなことがあったのね。でもきにしなさんな。だってまさみはなにもわるくないんだから。そうでしょ?
まさみ:うん…。そうだよね。わかった。もうきにしないことにする。はなしきいてくれてありがとう。すこしらくになった。
たえこ:よかった。
さゆり:ねぇ、おとうさんきょうもおそいの?
まさみ:しごとでいそがしいんでしょ。いまにはじまったことじゃないじゃん。
たえこ:あのね…おとうさんなんだけど。さっきれんらくがあって、これからすぐにしゅっちょうでがいこくにいかなければならなくなったから、しばらくいえにはかえれないって。
さゆり:またしゅっちょうかぁ…。
まさみ:ねぇおかあさん、おとうさんいつかえってくるの?
たえこ:さ、さあ…いつまでかな?ちょうきしゅっちょうっていってたから、しばらくはかえってこられないかもね。
まさみ:ふーん。そうなんだ。
さゆり:あたしさびしいなぁ。
たえこ:そうね。でもおとうさんはわたしたちのためにがんばってくれてるんだからがまんしないとね。
まさみ:はぁ…おとうさんにもいろいろはなしきいてもらいたいのになぁ。
さゆり:わたしも。おとうさんはやくかえってこないかな。
たえこ:そうね。はやくかえってきてくれるといいわね。
:
たえこ:(M)こんなうそ、いつまでもつきとおせるとはおもっていない。いつかはちゃんとはなさなければならないときがきっとくる。でもいまは、いまはまだそのときではない。
:
たえこ:あらやだ!かいわすれたものがあるから、ちょっとおかいものいってくるわね。ふたりのすきなものかってくるからちゃんとおるすばんしてるのよ。
さゆり:はーい!
まさみ:きをつけていってきてね!
:
たえこ:これからはわたしがふたりをりっぱにそだてるんだ。
たえこ:(M)そうけついして、きょうもわたしはおみせにむかうのだった。
:
さゆり:〈ナレーション風に〉そしてついに、りょうしゃのけっせんのぶたいはまくをあけるのであった。
:
:【 お会計編 】
たえこ:こんばんは。
えりな:あら、たえこさんじゃない。いらっしゃい。めずらしいわね、こんなじかんに。
たえこ:ちょっとかいわすれたものがあってよってみたの。
えりな:そうだったの。ゆっくりみていってちょうだい。
たえこ:ありがとう。え!?なにこれ!おいしそうなめろん!
えりな:ああ、それね。たまたまいいのがはいったのよ。
えりな:〈大人口調で〉『(ふふっ…食い付いたわね。)』
たえこ:わぁー!すごくおいしそうね!
たえこ:〈大人口調で〉『(これを買って帰ったら二人ともきっと喜ぶわ。)』
えりな:そのめろん、めったにはいらないものらしくてね。いちばでみつけたときはほんとうにおどろいたわ。
えりな:〈大人口調で〉『(さあ、買いなさい。この機会を逃したらもうチャンスは来ないわよ。)』
たえこ:ええ!そんなにきちょうなものなの!あー、ほしいわぁ。…でも1まんえんかぁ…ちょっとてがでないわね。
たえこ:〈大人口調で〉『(とりあえずここは興味のないフリをして様子見ね。)』
えりな:〈大人口調で〉『(さすがに定価じゃ買わないか。それなら。)』
えりな:そうよね、さすがにちょっとたかいわよね。でもすこしくらいならおやすくできるかも…。
たえこ:え!ほんと?おやすくしてくれるの?
たえこ:〈大人口調で〉『(よし!これで値段交渉の場に上がれたわ!あとはどれだけ引け下げられるかね。)』
えりな:〈大人口調で〉『(お!急に態度が変わったわね!作戦通りね。)』
えりな:ええ。おきゃくさんによろこんでもらえるなら、わたしがんばってみるわ。
たえこ:わぁ!うれしい!
えりな:ところで、むすめさんはおげんき?
たえこ:〈大人口調で〉『(なっ!急に話題を変えて来ただと!)』
たえこ:え、ええ…むすめはげんきよ。ただ…。
えりな:〈大人口調で〉『(ん?何か様子がおかしい。)』
えりな:どうしたの?げんきないじゃない。なにかあったの?
たえこ:ええ…ちょっといろいろあって。
たえこ:〈大人口調で〉『(言えない!さすがにこんな所でカミングアウトなんて出来ない)』
えりな:なにかあったのね。わたしでよかったら、おはなしきかせてくれないかしら?
たえこ:〈大人口調で〉『(ど、どうしよう…メロン欲しさに家庭の重大な秘密を暴露する訳にもいかないし…でも…でも…。)』
たえこ:じつは…わたし。おっとにすてられたんです。
えりな:〈大人口調で〉『(え…。まさかこれ聞いちゃいけない領域に片足踏み込んじゃった感じ?)』
えりな:だんなさんに?
たえこ:〈大人口調で〉『(やばい…もう止まんない…。)』
たえこ:きょうね、ぱーとからかえったら、つくえのうえにこれがおいてあって。〈えりなにメモを見せる〉
たえこ:わたし…なにがなんだかわからなくて…うう。くやしくて、かなしくて…でも、だれにもそうだんできなくて…うわぁぁぁん!!
えりな:〈大人口調で〉『(え…やだ。私まで泣きそうになってきちゃった)』
えりな:そうだったの。よくはなしてくれたわね。…ぐすん。
たえこ:でも!でも!むすめたちにはしられちゃいけないって、ずっとがまんして…ううう…。
えりな:〈大人口調で〉『(私も…もうダメ…)』
えりな:うう…そう…ほんとうにつらかったわね。じつはわたしもね…おっとがきゅうにじこでしんじゃって…うわぁぁぁん!!
たえこ:え…えりなさんも?…うう…うわぁぁぁん!
:しばらく二人で抱き合って号泣する。
:
えりな:ぐすん…たえこさん、これもっていきなさい。
たえこ:え…でも。
えりな:いいの。おたがいたいへんでしょうけど、まえをむいてがんばりましょう!
たえこ:えりなさぁぁん!!ありがとう!!うわぁぁぁん!!
えりな:もうなかないでよ…。わたしまでまたなきそうになるじゃない。うう…ぐすん。
:
さゆり:〈ナレーション風に〉こうしてふたりはこのさきもずっと、だいのしんゆうになりましたとさ。めでたしめでたし。
:
ゆず子:ううう…めっちゃかんどうした。
まさみ:うわぁぁぁん!わたしなみだがとまらなくて。
たえこ:アタイもだよ…うう…。
えりな:ぐすん…だめだ。なけてきちゃう。
さゆり:うん…うん。めっちゃよかった。ぐすん…。
ゆず子:ほんとだよね…。あ、そうだ!そういえば、えんそくのおやつどうしよっか?
まさみ:めろんで!〈同時に〉
えりな:めろんで!〈同時に〉
たえこ:めろんで!〈同時に〉
さゆり:めろんで!〈同時に〉
:
ゆず子:あはは…だよねぇ…。
:
ナレーション:こうして今日も女児たちのお*戯《たわむ》れは飽きることなく続くのであった。
:
:~完~
タイトル:続!女児たちのお*戯《たわむ》れ
:
登場人物:
まさみ:さくら組の幼稚園児。少しお転婆な女の子。
ゆず子:いちご組の幼稚園児。しっかり者でお姉さんタイプの女の子。
えりな:もも組の幼稚園児。少し幼い感じの女の子。
たえこ:ひまわり組の幼稚園児。元気いっぱいの女の子。
さゆり:ばら組の幼稚園児。優しくて真面目な性格の女の子。
ナレーション:どなたかが兼役で読んでください。
:『』のセリフ以外は基本的に幼稚園児の声で演じてください。
:(M)はモノローグです。、〈〉はト書き、漢字の読み仮名以外の( )は心の声です。
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本編:
ナレーション:これは、とある幼稚園を舞台にした仲良し女児5人組が織り成すハートフルコメディの「続編」である。
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たえこ:はぁ…。
ゆず子:たえこちゃんげんきないね。どうしたの?
たえこ:うん…。さいきんあめばっかりで、おそとであそべないなぁとおもってさ。
ゆず子:あー、それでげんきなかったのね。
たえこ:うん。
まさみ:わかるー。うんどうぶそくはおはだによくないもんね。
えりな:そうそう。すとれすたまっちゃうしね。
さゆり:たまるよねー。
えりな:すとれすといえばさ、こんどのえんそくのおやつなにもっていくかきまった?
たえこ:アタイまだきめてない。
ゆず子:わたしもー。
さゆり:あー、あたしもまだ。
まさみ:ぜんぜんきまってないよー。だいたいさぁ、300えんまでってむりだよね?
えりな:ねー。むりだよね。
えりな:〈急に大人口調になって〉『そもそも300円でどれだけのお菓子が買えるか大人は本当に理解しているのかしら。今の大人が子供だった頃とは物価だけじゃなくて、お菓子の売り方そのものさえも変わってしまっているというのにね。まったく…いくら食品が軽減税率の対象だからって物価自体が上がってちゃ意味ないわよね。あーあ、5円でチョコが買えた時代が羨ましいわ。』
ゆず子:ほんとだよね。
ゆず子:〈急に大人口調になって〉昔なんてさ、シール付きのウエハースチョコが1個30円で売られていたのにね。今の大人たちはシール欲しさに禁断の箱買い…通称「大人買い」なんてことまでやっていたらしいわ。しかも、小さい子が律儀にバラ売りの箱からどれにしようか悩んでいる目の前で箱ごと取り出してレジに持って行くの。ほんと、鬼畜の所業だわ。まあ、一箱30個入りだったらしいから箱で買っても900円。その程度でドヤ顔出来た時代の人たちには今の私たちの気持ちなんて到底理解出来ないでしょうね。』
たえこ:いいなぁ。アタイもそのじだいにうまれたかったなぁ…。
まさみ:ねー、わたしならえんそくにおかしまるまるひとはこもっていくのに。
えりな:まさみちゃん、それ300えんじゃかえないよ。
まさみ:あ!そっかー。てへへ。
さゆり:あのさ、いまぱっとおもいついたんだけど、みんなでおみせやさんごっこやらない?
ゆず子:おみせやさんごっこ?
たえこ:なになに?おもしろそう!
まさみ:どんなあそびなの?
さゆり:んーっとね。
さゆり:〈急に大人口調になって〉『そもそもお店屋さんごっことは、店員役とお客役に分かれて大人が実際に購入するシーンを疑似体験するごっこ遊びのことだが、単にモノを売り買いするという商品とお金のやり取りよりも、店員と客によって交わされる何気ない日常会話の裏で繰り広げられる*熾烈《しれつ》な価格交渉を楽しむことこそがこの遊びの醍醐味とも言えるわ。店員側はいかにして客の話を*逸《そ》らし、交渉の場に持ち込ませないかに頭を悩ませ、逆に客側はあらゆる話題とトークスキルを総動員して店員側の心を折り、自発的な値下げに誘導するかを試行錯誤する…そんな超高度心理戦術ゲームなの。機械化が進み、人と人とが直接やり取りをする場面が希薄になった現代だからこそ必要とされるべきゲームだわ。』
ゆず子:わぁ…なんかむずかしそうだね。
さゆり:そんなことないよ。やってみたらきっとたのしいとおもうよ。
えりな:でもさぁ、これってふたりしかあそべなくない?
さゆり:あ、そっかぁ。みんなでやるにはやくがたりないね。
たえこ:うーん…じゃあさ、こんなのはどうかな?
たえこ:〈急に大人口調になって〉『お店屋さんごっこを多人数で遊ぶにはどうしたらいいか。一番の問題点はこのゲームが店員役とお客役の二役しか存在しない点にある。しかし実際の現場においてはどうだろうか。店側には店側の、お客側にはお客側の、それぞれが抱える「事情」というものが存在するはずである。そして店員とお客が会計する場面は、店側とお客側という二つの存在が互いの命運を賭けて勝負する、言わば「決戦の場」なのだ。つまり、これは個人戦ではなくチーム戦。店員とお客はそれぞれの代表者であり、会計という最終決戦に行くまでのドラマも含めてトータルで考えれば*自《おの》ずと多人数で遊ぶ方法は見えてくるものよ。』
まさみ:う、うーん…つまり…どゆこと?
たえこ:〈大人口調で〉『つまり、店側の事情に登場する人物とお客側の事情に登場する人物を決めて、それぞれ別々のドラマを演じれば良いということよ。そうね…配役の人数比としては店側が2名でお客側が3名といったところかしら。』
えりな:わぁー!めっちゃ楽しそう!!
さゆり:たえこちゃんあたまいい!!
ゆず子:じゃあじゃあ、さっそくとうじょうじんぶつをかんがえてみようよ。
まさみ:うん!おみせがわは…てんちょうのおくさんでしょ、それとてんちょうのむすめさんかな?
たえこ:いいね、いいね!じゃあおきゃくさんがわは、おかあさんとふたりのむすめさんかな?
ゆず子:うん!わーい!これでやくがきまったね!
さゆり:あとはそれぞれのすとーりーだね!
まさみ:じゃあわたし、おみせがわのすとーりーかんがえてみたんだけどきいてくれる?
さゆり:ほんと?ききたい!
まさみ:じゃあいくね。
まさみ:〈急に大人口調になって〉『あれは雨がシトシトと降り続くジメジメした日だった…愛する夫が突然私と娘の前からいなくなってしまったのだ。朝、仕入れのために元気良く家を出て30分も経たないうちに起きた交通事故。夫は信号待ちをしていた所に後ろから来た居眠り運転の大型トラックに追突されたのだ。即死だった。
まさみ:------------私が夫と出会ったのは5年前だ。私の家は代々小さなお店を経営していて、野菜から雑貨まで何でも揃うと地域でも評判のお店だった。しかし、6年前に近くに出来た大型スーパーと乱立するコンビニエンスストアの*煽《あお》りを受けて客足は激減、経営は一気に傾いた。もういっそ店を畳んでしまおうかと悩んでいた矢先に出会ったのが夫だった。夫は昔からうちの店によく来てくれていた常連さんで、お互い*惹《ひ》かれあっていた。大恋愛の末結ばれた私たちの間には可愛い娘が生まれ、一時は廃業の危機にあったお店も夫のSNSを使用した斬新なアイデアにより徐々に客足を取り戻しつつあった。そんな絵に描いたような*順風満帆《じゅんぷうまんぱん》な時期に起きた突然の悲劇…。絶望に打ちひしがれる中、ある日私は、押入れから夫が私のために*密《ひそ》かに用意してくれていた誕生日プレゼントと手紙を発見する。その手紙には私に対する日頃の感謝の言葉と、これからも一緒にお店を続けていきたいという彼なりの夢が書かれていた。「夫と娘のためにもこの店は私が守る!」そう心に決めて今日も私はレジに立つのだった。』
まさみ:っていう感じなんだけどどうかな?
ゆず子:まさみちゃんすごいすごーい!きゅうにどうしちゃったの?
まさみ:えへへ。じつはね、さいきんひるどらにはまってて。
たえこ:そうなんだ!すごすぎてアタイびっくりしちゃったよ。
さゆり:あたしも。しょうせつかかとおもっちゃった。
えりな:じゃあこんどはアタチがかんがえたおきゃくがわのすとーりーきいてくれる?
ゆず子:わー!ききたい!このあいだもえりなちゃんのおはなしすごかったからたのしみだよ~!
えりな:えへへ。ありがとうゆず子ちゃん。じゃあきいててね。
えりな:〈大人口調で〉『先週、夫は私と二人の娘を残して家を出て行った。パート先から戻った私が目にしたのは机に残された一枚のメモだった。そこには汚い字で私への感謝とともに、別の女性と新しい人生を歩むので、もう私とは暮らせないといった内容が書かれていた。そう、夫は私がパートに出ていることを良いことに、影で別の女性と不倫をしていたのである。私は捨てられた…突きつけられた衝撃の事実に頭が真っ白になる。それと同時に、夫に裏切られた悔しさ、怒り、これから先の生活と残された二人の娘の将来への不安といった様々な負の感情が重く心にのしかかった。そんな中、ただ一つ幸いな事があるとすれば二人の娘はまだこの事実を知らないということだ。隠し通せるか…いや、いずれ分かることだとしても今は隠し通さなければならない。幸運にも夫は普段から出張と称して家を空けることが多かった。よし、これは使える…私は学校から帰宅した娘たちを前に、父が急遽海外に出張に行くことになり、しばらく戻って来ないことを告げた。あとはいかにして中学生と高校生の娘を育てつつ、生計を立てていくかだ。私は*暗澹《あんたん》たる思いを胸に、今日も行きつけのお店に食材の買い出しに行くのであった。』
えりな:っていうおはなしだよ。
さゆり:わぁー!!えりなちゃんやっぱりすごいや!
ゆず子:うぅ…わたしちょっとなきそうになっちゃった。
たえこ:アタイも…。じゃあおはなしはこれできまりね!つぎはだれがなんのやくをやるかきめていこっか。
まさみ:うん!そだね!
さゆり:あたし、ちゅうがくせいのむすめさんやりたい!
ゆず子:いいね!わたしは…てんちょうのむすめさんやりたいな。
たえこ:おお!ゆず子ちゃんがちいさいむすめさんやるんだね!たのしみ~!アタイはねぇ、おかあさんやりたい!
えりな:たえこちゃんのおかあさんすごくたのしみ!アタチは、てんちょうのおくさんやりたいな。
まさみ:わ〜!じゃあわたしはこうこうせいのむすめさんやる!
ゆず子:わーい!これできまったね!
たえこ:おはなしのながれはどうしよっか?
さゆり:さいしょにおみせがわのおはなしやって、そのままおきゃくがわのおはなしやって、さいごにおかいけいでてんちょうのおくさんとおかあさんがおはなしするかんじでどうかな?
えりな:うん!それでいいとおもう!
まさみ:すっごくわくわくするね!
ゆず子:はやくやろやろ!
たえこ:じゃあいくよ!3・2・1あくしょん!
:
:-------------------【リアルお店屋さんごっこスタート!】(ここからは『』以外は幼稚園児の声で演じてください)
:
:【 お店側の事情編 】
えりな:〈電話〉もしもし…はい。え!?おっとのくるまがとらっくについとつされた?はい!すぐにいきます!
えりな:ゆず子、いますぐびょういんにいくわよ!
ゆず子:どうしたの?
えりな:ぱぱがね…くるまにぶつけられて…けがしちゃったの。だから…ね。
ゆず子:わかった。あたしもいく。
えりな:いいこね。さ、いきましょう!
:
:-------------------病室にて
えりな:え…うそ…でしょ?あなた、うう…あなた!どうしてしんじゃったの?おねがい…めをあけて…わたしをおいていかないでよぉ!!うわぁぁぁ!!
ゆず子:まま…よしよし。だいじょぶ。だいじょぶ。
えりな:うぅ…ぐすん…うん、うん。ゆず子…ありがとね。そうね、ぱぱのぶんまでわたしがしっかりしないとね。めそめそしてごめんね。
えりな:〈大人口調で〉『追突事故により即死…私は突然訪れた夫の死を受け止めることが出来なかった。しかし、夫の遺体を前に泣きじゃくる私に、幼い娘ゆず子が掛けてくれた「だいじょぶ」という言葉が私を暗闇から連れ出してくれた。そうだ、私はこんな所で泣いている場合ではない。愛する夫がいなくなってしまった今、私がしっかりしなければゆず子だけじゃなく、あの人との思い出がいっぱい詰まったあの店さえも守り抜くことは出来ないのだから…。』
ゆず子:まま…なかないで。
えりな:うん、ありがとう。ままね、ゆず子のおかげでいっぱいげんきでた。もうなかないからだいじょうぶよ。
ゆず子:うん!
えりな:(M)それからのわたしはおさないゆず子とおみせをまもるため、ひっしのおもいではたらいた。せいぜん、おっとがおきゃくさんをよびもどすためにおこなったさまざまなくふうをべーすに、わたしなりにあたらしいあいであをもりこんでみたところ、これがおきゃくさんにひっとし、すこしずつではあるが、みせはいぜんのようなにぎわいをみせるまでにかいふくした。そんなあるひ…。
ゆず子:ままー、ここになんかありゅよ。
えりな:どうしたの、ゆず子?あら…これは!?
えりな:(M)そこでわたしがみたのは、おしいれのおくにだいじそうにしまってあった、きれいにらっぴんぐされたはこだった。
ゆず子:まっかなりぼん!きれい!
えりな:ほんときれいなりぼんね。なにかしら?え!これはもしかして…あのひとからのたんじょうびぷれぜんと?
ゆず子:ぷえぜんと?
えりな:そうよ。これはね、ぱぱがままにくれたぷれぜんとなの。さぁて、なにがはいっているのかなぁ~?いっしょにあけてみよっか?
ゆず子:うん!あけゆ!
えりな:どれどれ~。あ、これは…すかーふ?
ゆず子:とってもきれい~まっかっか!
えりな:そうね、なんてあざやかなあかいろなんでしょう!ほんと、すてき!
ゆず子:まま!おてがみあったよ!
えりな:おてがみ?えーっと…。
えりな:「だいすきなえりなへ、おたんじょうびおめでとう。えりながこのてがみをよんでいるということは、ついにみつかっちゃたんだね。ほんとうはちょくせつわたすつもりだったけど、えりなをびっくりさせたくて、みつかるまでここにしまっておいたんだ。いつもぼくやゆず子、そしておみせのためにがんばってくれてありがとう!えりなとゆず子がいるからぼくはまいにちしあわせでいられるんだ。ぼくのゆめはね、えりなとゆず子のさんにんでこのさきもずっとおみせをつづけていくことなんだよ。だからこれからもよろしくね!えりな、あいしてる!」
えりな:う…うぅ…うわぁぁぁん!!わたしも、わたしもあなたのことあいしてるよぉぉ!!
ゆず子:まま…なかないで…おねがい。ぐすん…うわーん!!
:
:-------------------(数分後)
えりな:ぐすん…あなた、ほんとうにありがとう。このすかーふ、ずっとずっとたいせつにするね。
ゆず子:まま…笑って。
えりな:うん。もう大丈夫よ。ゆず子、ありがとね。まま、がんばるからね。あなた、これからもわたしたちをみまもっててね。
:
えりな:(M)わたしはてんごくのおっとにみまもられながら、きょうもげんきにおみせにたちます。
:
えりな:いらっしゃいませ!
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:【 お客側の事情編 】
たえこ:ただいまー!ふぅー、きょうもいちにちつかれたぁ。すこしゆっくりしたいところだけどみんながかえってくるまでにゆうはんのじゅんびしないとね。…ってあれ?てーぶるのうえにめもがおいてあるわ。なんだろ?
たえこ:「たえこへ。すきなひとができたから、そのひととあたらしいじんせいをあゆみます。だからここにはもうかえりません。いままでありがとう。さようなら。」
たえこ:なに…これ?どういうことなの?
:
たえこ:〈大人口調で〉『その字は汚いが、確かに彼の書いたものに間違いなかった。「私、捨てられたんだ…。」小さなメモ用紙に書かれた短い文章を見た時、私は瞬時に悟った。彼は私がパートに出ている間、仕事を理由にずっと不倫していたのだ。いつも帰宅は夜遅く、帰らない日も多かった。今思えばそれら全てに納得がいく。私は突然突きつけられた衝撃の事実を前にして、その場に立ち尽くすことしか出来なかった。』
たえこ:わたし…これからどうしたら…。
たえこ:(M)かれにうらぎられたことへのくやしさ、いかりとともに、わたしはべつのふあんをかんじていた。それは…。
:
:-------------------(1時間後)
さゆり:ただいまー!おかあさん、おなかすいたよー!おやつたべたい!
たえこ:さゆり、おかえりなさい。ほら、ちゃんとてをあらってからね。
さゆり:はーい!
まさみ:ただいま。ふう…つかれた。
たえこ:おかえりなさい。あら、まさみ。なんかげんきないわね。
まさみ:ちょっとがっこうでいやなことあって。
たえこ:そうなの。はなしきいてあげるからあなたもてをあらってきがえてきなさい。
まさみ:うん…わかった。
たえこ:(M)そう…ちちがふりんしていえをでていったということを、このふたりにきづかれてしまうのではないかというふあんだった。
:-------------------(数分後)
まさみ:…それでね、わたしなにもわるいことしてないのにせんせいにおこられたの。
たえこ:そう…そんなことがあったのね。でもきにしなさんな。だってまさみはなにもわるくないんだから。そうでしょ?
まさみ:うん…。そうだよね。わかった。もうきにしないことにする。はなしきいてくれてありがとう。すこしらくになった。
たえこ:よかった。
さゆり:ねぇ、おとうさんきょうもおそいの?
まさみ:しごとでいそがしいんでしょ。いまにはじまったことじゃないじゃん。
たえこ:あのね…おとうさんなんだけど。さっきれんらくがあって、これからすぐにしゅっちょうでがいこくにいかなければならなくなったから、しばらくいえにはかえれないって。
さゆり:またしゅっちょうかぁ…。
まさみ:ねぇおかあさん、おとうさんいつかえってくるの?
たえこ:さ、さあ…いつまでかな?ちょうきしゅっちょうっていってたから、しばらくはかえってこられないかもね。
まさみ:ふーん。そうなんだ。
さゆり:あたしさびしいなぁ。
たえこ:そうね。でもおとうさんはわたしたちのためにがんばってくれてるんだからがまんしないとね。
まさみ:はぁ…おとうさんにもいろいろはなしきいてもらいたいのになぁ。
さゆり:わたしも。おとうさんはやくかえってこないかな。
たえこ:そうね。はやくかえってきてくれるといいわね。
:
たえこ:(M)こんなうそ、いつまでもつきとおせるとはおもっていない。いつかはちゃんとはなさなければならないときがきっとくる。でもいまは、いまはまだそのときではない。
:
たえこ:あらやだ!かいわすれたものがあるから、ちょっとおかいものいってくるわね。ふたりのすきなものかってくるからちゃんとおるすばんしてるのよ。
さゆり:はーい!
まさみ:きをつけていってきてね!
:
たえこ:これからはわたしがふたりをりっぱにそだてるんだ。
たえこ:(M)そうけついして、きょうもわたしはおみせにむかうのだった。
:
さゆり:〈ナレーション風に〉そしてついに、りょうしゃのけっせんのぶたいはまくをあけるのであった。
:
:【 お会計編 】
たえこ:こんばんは。
えりな:あら、たえこさんじゃない。いらっしゃい。めずらしいわね、こんなじかんに。
たえこ:ちょっとかいわすれたものがあってよってみたの。
えりな:そうだったの。ゆっくりみていってちょうだい。
たえこ:ありがとう。え!?なにこれ!おいしそうなめろん!
えりな:ああ、それね。たまたまいいのがはいったのよ。
えりな:〈大人口調で〉『(ふふっ…食い付いたわね。)』
たえこ:わぁー!すごくおいしそうね!
たえこ:〈大人口調で〉『(これを買って帰ったら二人ともきっと喜ぶわ。)』
えりな:そのめろん、めったにはいらないものらしくてね。いちばでみつけたときはほんとうにおどろいたわ。
えりな:〈大人口調で〉『(さあ、買いなさい。この機会を逃したらもうチャンスは来ないわよ。)』
たえこ:ええ!そんなにきちょうなものなの!あー、ほしいわぁ。…でも1まんえんかぁ…ちょっとてがでないわね。
たえこ:〈大人口調で〉『(とりあえずここは興味のないフリをして様子見ね。)』
えりな:〈大人口調で〉『(さすがに定価じゃ買わないか。それなら。)』
えりな:そうよね、さすがにちょっとたかいわよね。でもすこしくらいならおやすくできるかも…。
たえこ:え!ほんと?おやすくしてくれるの?
たえこ:〈大人口調で〉『(よし!これで値段交渉の場に上がれたわ!あとはどれだけ引け下げられるかね。)』
えりな:〈大人口調で〉『(お!急に態度が変わったわね!作戦通りね。)』
えりな:ええ。おきゃくさんによろこんでもらえるなら、わたしがんばってみるわ。
たえこ:わぁ!うれしい!
えりな:ところで、むすめさんはおげんき?
たえこ:〈大人口調で〉『(なっ!急に話題を変えて来ただと!)』
たえこ:え、ええ…むすめはげんきよ。ただ…。
えりな:〈大人口調で〉『(ん?何か様子がおかしい。)』
えりな:どうしたの?げんきないじゃない。なにかあったの?
たえこ:ええ…ちょっといろいろあって。
たえこ:〈大人口調で〉『(言えない!さすがにこんな所でカミングアウトなんて出来ない)』
えりな:なにかあったのね。わたしでよかったら、おはなしきかせてくれないかしら?
たえこ:〈大人口調で〉『(ど、どうしよう…メロン欲しさに家庭の重大な秘密を暴露する訳にもいかないし…でも…でも…。)』
たえこ:じつは…わたし。おっとにすてられたんです。
えりな:〈大人口調で〉『(え…。まさかこれ聞いちゃいけない領域に片足踏み込んじゃった感じ?)』
えりな:だんなさんに?
たえこ:〈大人口調で〉『(やばい…もう止まんない…。)』
たえこ:きょうね、ぱーとからかえったら、つくえのうえにこれがおいてあって。〈えりなにメモを見せる〉
たえこ:わたし…なにがなんだかわからなくて…うう。くやしくて、かなしくて…でも、だれにもそうだんできなくて…うわぁぁぁん!!
えりな:〈大人口調で〉『(え…やだ。私まで泣きそうになってきちゃった)』
えりな:そうだったの。よくはなしてくれたわね。…ぐすん。
たえこ:でも!でも!むすめたちにはしられちゃいけないって、ずっとがまんして…ううう…。
えりな:〈大人口調で〉『(私も…もうダメ…)』
えりな:うう…そう…ほんとうにつらかったわね。じつはわたしもね…おっとがきゅうにじこでしんじゃって…うわぁぁぁん!!
たえこ:え…えりなさんも?…うう…うわぁぁぁん!
:しばらく二人で抱き合って号泣する。
:
えりな:ぐすん…たえこさん、これもっていきなさい。
たえこ:え…でも。
えりな:いいの。おたがいたいへんでしょうけど、まえをむいてがんばりましょう!
たえこ:えりなさぁぁん!!ありがとう!!うわぁぁぁん!!
えりな:もうなかないでよ…。わたしまでまたなきそうになるじゃない。うう…ぐすん。
:
さゆり:〈ナレーション風に〉こうしてふたりはこのさきもずっと、だいのしんゆうになりましたとさ。めでたしめでたし。
:
ゆず子:ううう…めっちゃかんどうした。
まさみ:うわぁぁぁん!わたしなみだがとまらなくて。
たえこ:アタイもだよ…うう…。
えりな:ぐすん…だめだ。なけてきちゃう。
さゆり:うん…うん。めっちゃよかった。ぐすん…。
ゆず子:ほんとだよね…。あ、そうだ!そういえば、えんそくのおやつどうしよっか?
まさみ:めろんで!〈同時に〉
えりな:めろんで!〈同時に〉
たえこ:めろんで!〈同時に〉
さゆり:めろんで!〈同時に〉
:
ゆず子:あはは…だよねぇ…。
:
ナレーション:こうして今日も女児たちのお*戯《たわむ》れは飽きることなく続くのであった。
:
:~完~