台本概要

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タイトル つくも神は恩返ししたい
作者名 ハスキ  (@e8E3z1ze9Yecxs2)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(不問5)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 長い年月を経た道具には精霊が宿ると言う話がある。人をたぶらかす存在だと言われてるが今回は良い神様の恩返しのお話。道具を大事に扱う人の前に現れる、そんな摩訶不思議なお話。
全役男女不問。共演者の方が不快にならない範囲のアドリブOK!

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
主人公 不問 80 日頃から道具を大事にする主人公。道具に名前とか付けゃうタイプ
時計の神 不問 37 時計に宿りし時計の神。リーダー的存在だが抜けてる所がある。
スマホの神 不問 33 スマホに宿りしスマホの神。元気いっぱいの僕っ子。食いしん坊。イタズラ好き。
サイフの神 不問 34 サイフに宿りしサイフの神。ひょうひょうとした性格。お兄さんお姉さんポジション。買い物中毒。
万年筆の神 不問 30 万年筆に宿りし万年筆の神。このメンバーの中で一番古い神。知識豊富で頼れる存在だがツンデレ。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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- つくも神は恩返したい - 主人公:えーと…スマホよし、鍵よし…サイフに…メモ用の万年筆よしと。 主人公:出勤時間にも全然余裕だけど、たまには早く出かけてゆっくり行くのもアリかな。 :間 主人公:う~ん、天気も良いし、気持ちの良い朝。早起きは三文の徳ってこの事だね。 時計の神:待たれよ、そこの若者よ。 主人公:え?…ん?わ、私ですか?? 時計の神:無論だ。他に誰がいる? 主人公:いや、確かに他には誰もいませんが…。それで、何でしょうか? 時計の神:慌てるな若者。まだ全員揃ってないので待たれよ。 主人公:え?全員って…まだ誰か… スマホの神:お!居た居た、お~い! 時計の神:スー、また迷子になっていたのか? 主人公:ス、スー?なんで子供が…? スマホの神:いやー人間界に現れるの初めてだったからさ~メンゴ! 時計の神:無事に合流出来たから問題は無い、ほら、この若者が例の。 スマホの神:お!君がそうなんだね!毎日ありがとう~!握手握手! 主人公:え、ちょ!う、腕が!もげちゃうから!ストップ!スト~ップ! スマホの神:あらら、体力ないね君~ 主人公:はぁ、はぁ、な、何なのこの子供… サイフの神:よいしょ、ふー。あ、お待たせー 主人公:今度は誰!?ていうか、すっごい荷物だけど大丈夫ですか!? 時計の神:サー、また買い物してたのか? サイフの神:いやー、たまにしか人間界に来れないからね。目新しい物が多すぎて困っちゃうねー スマホの神:サー、それは買い過ぎだよー。お菓子なら僕がもらってあげるよ~? サイフの神:まったくちゃっかりしてるね、スーは。 主人公:あ、あの、さっきから人間界とかなんか変な事言ってますが貴方達は誰なんですか? 万年筆の神:それについては、私が詳しいぞ 主人公:うわっ!い、いつの間に背後に!? 万年筆の神:最初から後ろにいたぞ 主人公:なら声かけて下さいよ、心臓に悪いですから 万年筆の神:最近の若いのは軟弱だな 主人公:若いとか関係ないのでは… 万年筆の神:何か言ったか? 主人公:な、何でもないです! 時計の神:よし、みんな揃ったようだな。では若者よ、願いを言うがいい。 主人公:え、いきなりどういう事ですか?願い…? 万年筆の神:ウーよ、何の説明も無しにそれでは、訳が分からないだろう? サイフの神:そうだね、まだ我々の事も、何も言ってないんだろう? スマホの神:ウーったら、慌てんぼだね~ 時計の神:…ゴホン(咳)。そうだったな。すまない若者よ。 主人公:いや、それはいいんです、これからちゃんと説明してくれたら… 時計の神:ん?どうした、変な顔して、まだ何か気に触る事でもあったか? 主人公:い、いや、この状況を見てる周りの人の視線が、その、痛いと言いますか。 スマホの神:あー、確かにみんなこっち見てるねー。ヤッホー!ヤッホー! 主人公:君!よけい恥ずかしいからやめて! 万年筆の神:絵面的には、怪しい格好した四人組に取り囲まれてる一般人だからね サイフの神:おっ、ちょうどそこにファミレスがあるからそこに入って話しない? スマホの神:あ、サー、それナーイス! 時計の神:そうだな、とりあえずそうしよう。若者よ、同行を頼む。 主人公:え、で、でも… 万年筆の神:若者よ、怪しい勧誘などではないので、安心してくれ。 主人公:…わ、分かりました。 :間 スマホの神:あ、僕チョコレートパフェ! サイフの神:じゃあ私はカプチーノを頂こうかな 時計の神:うーむ、では私はアイスコーヒーにしよう 主人公:いや呑気(のんき)か! 時計の神:どうした若者?若者も何か頼まないのか? 主人公:いやこの異様な状態でゆっくり出来ないですよ!それにこれから仕事行くから時間ないんですよ!? 万年筆の神:それについては大丈夫だから心配無用だ。あ、私は抹茶ラテを頼む 主人公:…ちゃっかり頼んでるし。 :間 スマホの神:う~ん!このチョコレートパフェサイコ~! 主人公:…で、そろそろ貴方達が誰か説明してくれるんですよね? 時計の神:うむ、それは私から説明させてもらおう。…端的に言うと、我々は「つくも神」だ。 主人公:え…?つくも神って、あの、物に宿るっていう、つくも神? サイフの神:そう、今の時代ではあまり信じる人は減ってると思うけど、その神で合ってるよ。 主人公:騙された…やっぱり変な勧誘じゃないですか! 万年筆の神:信じられんか? 主人公:そんなの当たり前じゃないですか! 万年筆の神:スー、ちょっと力を見せてやってくれ スマホの神:はぐ、はぐ…ん?力?いいよ~ 主人公:え…?何を… スマホの神:僕はスマホの神なんだ!見ててね~。ん~…ホイッ! 主人公:ん、電話?こんな朝から誰だろ…。はい、誰ですか? スマホの神:アハハ!君、名前見てみなよ 主人公:え?…って電話掛けてきた人の名前、スー!? スマホの神:それ僕だよ~ 主人公:な、なんで…電話番号教えて無いのに…。 サイフの神:お疲れスー。これで僕達の事信じてもらえたでしょ? 主人公:私の知り合いから聞き出したんですね!回りくどい事して、騙されませんよ! サイフの神:ああ…名前表示されてる所は気にならないんだね。じゃあ今度は私の番だね。 サイフの神:私はサイフの神だよ。…よし。フフ、サイフの中を見てご覧。 主人公:サイフ?私のサイフがどうだって…えっ!? 主人公:さ、3万円入ってたのに!3千円になってる~!? サイフの神:どうだい?びっくりしたかい? 主人公:違う意味でびっくりですよ!私の3万どこにやったんですか!? サイフの神:え、そこ!? 主人公:あれ私の今月の全財産なんですよ!どこにやったんですか!?ハッ、警察に… サイフの神:ま、待った~!今すぐ戻すから!警察だけは勘弁して! 主人公:ほ、本当ですね? サイフの神:ん~…よし!サイフの中を見てご覧 主人公:え?…あ!3万!私の全財産3万円!よ、良かった~ サイフの神:ふー、危なかった。神が警察に厄介になるとか前代未聞(ぜんだいみもん)だからね。 サイフの神:どうかな?これで信じてもらえたかな? 主人公:分かった…貴方、マジシャンの詐欺師でしょ!そうやって知らない内にお金を他人から巻き上げてるんでしょ!? サイフの神:え〜!?ち、違うよー、ほんとに神なんだよ~! 万年筆の神:まったく、お前達はなってないな。 サイフの神:面目ないです… スマホの神:僕は悪くないよ~ 万年筆の神:私は万年筆の神だ。若者、お主に私の力を見せてやろう。 主人公:な、なんだ…空気が…震えてる…? 万年筆の神:はぁぁぁぁ~……ぬんっ! 主人公:えっ!?着てる服から光が!? ま、眩しい!! 万年筆の神:ふー…。服を見てみろ。 主人公:え…?…ああっ!?…「万・年・筆・の・神・ラ・ヴ!?」なんですかこれーー!? 万年筆の神:サービスだ。オシャレだろう? 主人公:いや意味分からない上にダッサいですよ!どうするんですか!これ仕事着なんですよ!? 万年筆の神:ダ、ダサい…うぅ… サイフの神:あららー、神が精神的ダメージで落ちこんじゃったよ。 スマホの神:マーさん、どんまいだよ~ 時計の神:うーむ、私の番、と言いたい所だが。ここでは見せられないから、どうしたものか… 主人公:いや、もういいですよ。 時計の神:む? 主人公:流石にこれだけのものを見せられたら信じますよ。今まで失礼な態度を取ってすみませんでした、神様の皆さん。 サイフの神:お、良かったねマーさん、貴方の力だよ。 万年筆の神:ほんとか…?ゴホン(咳)、や、やっと信じる気になったか若者よ。 スマホの神:アッハッハ!切り替え早~ 主人公:それで、神様達はなんで私の前に現れて下さったんですか? 万年筆の神:つくも神は、長い年月を経た道具に精霊が宿ると言うのは知っているか? 主人公:はい、でもたしかつくも神って…その… サイフの神:人をたぶらかす…話でしょ? 主人公:あ…はい、そう聞いた事があります。 スマホの神:まったく、それ、風評被害だよね~ 主人公:え…?違うんですか? 万年筆の神:少し違うな。我々つくも神は、道具に宿る神だが、道具を粗末に扱う者には天罰を、大事にする者にはその行いに感謝し、その者の願いを叶えるのだよ。 主人公:そ、そうだったんですね… 時計の神:説明ありがとうマー。私が言いたかった事がこれで分かったかな? 主人公:はい。最初はびっくりしましたけど、こうやってちゃんと話をしてたら納得出来ました。 時計の神:では、何でもいいから願い事を言うといい。 主人公:… 時計の神:ん?どうした。 主人公:え、いや…その、無いんです。 時計の神:無い?とはどういう事だ 主人公:色々考えたんですけど、どの願い事も私には必要ないかなって。 時計の神:ほぅ。 主人公:不老不死も一人だけ長生きしてもいずれ寂しくなるだろうし、お金も自分で稼いでこそ有難みを感じると言うか、恋人も…その、運命の相手と自然に出会いたいなと…。 サイフの神:聞いた?こんなに無欲な人間見た事ないんだけど スマホの神:ハグハグ、え?なんか言った? サイフの神:…なんでもないよ。残さず食べるんだよ、スー。 主人公:私、今は健康ですし、仕事にも友人関係にも恵まれてて、とくに不自由は感じてません。なので、お気持ちは大変嬉しいのですが… 万年筆の神:ううむ、困ったな。それでは我々の使命が果たせないんだがな… 主人公:なので、せっかく来て頂いて申し訳ないんですが、仕事があるのでこの辺で失礼します! 時計の神:あ!待ってくれ!みんな、行くぞ! サイフの神:あらら、みんなの分まで払って行ってくれちゃって。サイフの神失格だよー 万年筆の神:ほら、いつまで食べてる、行くぞ スマホの神:はぐ、んぐ、ちょ、ちょっと待ってよ~! :間 時計の神:く、あの若者はどこに行った? サイフの神:ん?あれじゃないかい? 時計の神:む、確かに。良かった、あの若者だ スマホの神:でも、道の真ん中で、何かしてるよ~? 主人公:さっきの人、危ないなー。なんでこんな所にナイフなんて捨てたんだ? 万年筆の神:誰かが捨てたナイフを拾ってやってるようだな。 主人公:…ああ、なるほど。刃(は)こぼれしてるんだな。まったく、刃(は)を研(とげ)ばまだ使えるのに勿体ないなー。 スマホの神:すごーい、あんな事言ってるよ? 時計の神:…さすが、我々の見込んだ通り、道具を大切にする素晴らしい心の持ち主だ。 主人公:確か家に研石(といし)があったな…よし、家に持って帰ってあげるよ。こんな所に捨てられたままじゃ、可哀想だしね。 サイフの神:いやーほんと、すごいね。道具を大切にしない他の人間もあの若者を見習うべきだよ。 主人公:さて、信号が変わる前に渡らないと… 万年筆の神:むっ!まずいぞ!皆あれを!! スマホの神:げっ!信号無視した車があの人に向かってるよ!? サイフの神:ど、どうするのさ!?僕の力じゃこの距離は届かないよ! スマホの神:僕も無理ー!! 万年筆の神:く!どうすれば! 主人公:え…う、うわーー!! 時計の神:「時よ止まれ」 主人公:うわー!…あ、あれ…?なんだ?車が、止まってる?なんで…? 時計の神:ふー、間に合ったようだな スマホの神:そっかー!ウーは時計の神様だったね! 万年筆の神:あの若者以外の時間を止めたのか。相変わらず、すごい力だな サイフの神:そ、そうだったー…。めちゃくちゃ焦っちゃったよ~ 主人公:あ!あれは神様達!?てことは…これは神様の力…? 時計の神:びっくりさせてすまないね。先程は見せれなかったが、これが私の力だ。 主人公:あ、ありがとうございます!おかげでこの子(ナイフ)を助けられました。 万年筆の神:自分の心配より道具の心配とは…まったく今どき信じられれん若者だ。 サイフの神:あの人間の事、もっと好きになったんじゃない? 万年筆の神:ふん… スマホの神:僕ももっと好きになっちゃったな!握手握手~! 主人公:ちょ、うわわ! 時計の神:スー、それぐらいにしておけ、困っているだろう? スマホの神:はーい、今度は一緒に遊ぼうね! 主人公:え、今度…? 時計の神:若者よ、道具を代表してこのナイフを救ってくれてありがとう。このナイフに宿っている神も感謝している。そのうち、お礼に行くと言っている。 主人公:いや、そんな。当たり前の事をしただけなんで、気にしないでって、言って上げてください。 万年筆:まったく、そこは素直に受け取っておけば良いのに… スマホの神:マーさんは素直じゃないね~ 万年筆:うるさい! 主人公:あ、時間が動き出した。 時計の神:時間を取らせて悪かったな若者。仕事はいいのか? 主人公:仕事…あっ!ち、遅刻だ~!! 時計の神:ふ、それなら大丈夫だ。 主人公:え…? 時計の神:む~…ハーッ! 主人公:え!あれ!?た、太陽の位置が!? 時計の神:一時間前に戻しておいた。これで間に合うだろ? 主人公:あ…はい!そ、それじゃ、ありがとうございました!これからも道具大事に使わせて頂きます!それじゃ! スマホの神:バイバ~イ!!また、あっそっぼう~ね~!! サイフの神:今度は危ない事は控えるんだぞ若者~! 万年筆の神:ふん、その道具を愛する気持ち、いつまでも忘れるなよ 主人公:っ!はい! :間 スマホの神:…行っちゃったね。 サイフの神:寂しいのかい? スマホの神:そ、そんな事ないよ!ていうか…あっちの方が 万年筆の神:くぅ…心の美しい素晴らしい若者だった…うぅ… サイフの神:うん…そっとしといてやろう。でも、結局願いは叶えられずじまいだねー 時計の神:ん?サー、何をもう終わったみたいな事を言っている? サイフの神:え…?それって… :間 主人公:はあ、疲れた~。今日もたくさん働いたな~。 主人公:でも、好きな仕事だしやりがいもあるんだよね~ :少しの間 主人公:さーて。待たせたけど、今から研(と)いであげるからね~ナイフちゃん 時計の神:ほー、これが砥石(といし)というやつか 万年筆の神:なるほど、今は電動で動かせる物があるのか、便利だな スマホの神:ねー!ねー!僕もやった事ないから試してみてもいい~? サイフの神:おいおい。君がやると、ナイフの神を怒らせてしまうから止めときなー スマホの神:ケチー! 主人公:え?え?神様達…どうして…? 時計の神:それは、まだ君の願いを叶えられてないからね。 主人公:そんな…いや、ほんとに願い事とか、大丈夫ですよ? 時計の神:あー、それと…みんな君の事が気に入ったとさ。 完

- つくも神は恩返したい - 主人公:えーと…スマホよし、鍵よし…サイフに…メモ用の万年筆よしと。 主人公:出勤時間にも全然余裕だけど、たまには早く出かけてゆっくり行くのもアリかな。 :間 主人公:う~ん、天気も良いし、気持ちの良い朝。早起きは三文の徳ってこの事だね。 時計の神:待たれよ、そこの若者よ。 主人公:え?…ん?わ、私ですか?? 時計の神:無論だ。他に誰がいる? 主人公:いや、確かに他には誰もいませんが…。それで、何でしょうか? 時計の神:慌てるな若者。まだ全員揃ってないので待たれよ。 主人公:え?全員って…まだ誰か… スマホの神:お!居た居た、お~い! 時計の神:スー、また迷子になっていたのか? 主人公:ス、スー?なんで子供が…? スマホの神:いやー人間界に現れるの初めてだったからさ~メンゴ! 時計の神:無事に合流出来たから問題は無い、ほら、この若者が例の。 スマホの神:お!君がそうなんだね!毎日ありがとう~!握手握手! 主人公:え、ちょ!う、腕が!もげちゃうから!ストップ!スト~ップ! スマホの神:あらら、体力ないね君~ 主人公:はぁ、はぁ、な、何なのこの子供… サイフの神:よいしょ、ふー。あ、お待たせー 主人公:今度は誰!?ていうか、すっごい荷物だけど大丈夫ですか!? 時計の神:サー、また買い物してたのか? サイフの神:いやー、たまにしか人間界に来れないからね。目新しい物が多すぎて困っちゃうねー スマホの神:サー、それは買い過ぎだよー。お菓子なら僕がもらってあげるよ~? サイフの神:まったくちゃっかりしてるね、スーは。 主人公:あ、あの、さっきから人間界とかなんか変な事言ってますが貴方達は誰なんですか? 万年筆の神:それについては、私が詳しいぞ 主人公:うわっ!い、いつの間に背後に!? 万年筆の神:最初から後ろにいたぞ 主人公:なら声かけて下さいよ、心臓に悪いですから 万年筆の神:最近の若いのは軟弱だな 主人公:若いとか関係ないのでは… 万年筆の神:何か言ったか? 主人公:な、何でもないです! 時計の神:よし、みんな揃ったようだな。では若者よ、願いを言うがいい。 主人公:え、いきなりどういう事ですか?願い…? 万年筆の神:ウーよ、何の説明も無しにそれでは、訳が分からないだろう? サイフの神:そうだね、まだ我々の事も、何も言ってないんだろう? スマホの神:ウーったら、慌てんぼだね~ 時計の神:…ゴホン(咳)。そうだったな。すまない若者よ。 主人公:いや、それはいいんです、これからちゃんと説明してくれたら… 時計の神:ん?どうした、変な顔して、まだ何か気に触る事でもあったか? 主人公:い、いや、この状況を見てる周りの人の視線が、その、痛いと言いますか。 スマホの神:あー、確かにみんなこっち見てるねー。ヤッホー!ヤッホー! 主人公:君!よけい恥ずかしいからやめて! 万年筆の神:絵面的には、怪しい格好した四人組に取り囲まれてる一般人だからね サイフの神:おっ、ちょうどそこにファミレスがあるからそこに入って話しない? スマホの神:あ、サー、それナーイス! 時計の神:そうだな、とりあえずそうしよう。若者よ、同行を頼む。 主人公:え、で、でも… 万年筆の神:若者よ、怪しい勧誘などではないので、安心してくれ。 主人公:…わ、分かりました。 :間 スマホの神:あ、僕チョコレートパフェ! サイフの神:じゃあ私はカプチーノを頂こうかな 時計の神:うーむ、では私はアイスコーヒーにしよう 主人公:いや呑気(のんき)か! 時計の神:どうした若者?若者も何か頼まないのか? 主人公:いやこの異様な状態でゆっくり出来ないですよ!それにこれから仕事行くから時間ないんですよ!? 万年筆の神:それについては大丈夫だから心配無用だ。あ、私は抹茶ラテを頼む 主人公:…ちゃっかり頼んでるし。 :間 スマホの神:う~ん!このチョコレートパフェサイコ~! 主人公:…で、そろそろ貴方達が誰か説明してくれるんですよね? 時計の神:うむ、それは私から説明させてもらおう。…端的に言うと、我々は「つくも神」だ。 主人公:え…?つくも神って、あの、物に宿るっていう、つくも神? サイフの神:そう、今の時代ではあまり信じる人は減ってると思うけど、その神で合ってるよ。 主人公:騙された…やっぱり変な勧誘じゃないですか! 万年筆の神:信じられんか? 主人公:そんなの当たり前じゃないですか! 万年筆の神:スー、ちょっと力を見せてやってくれ スマホの神:はぐ、はぐ…ん?力?いいよ~ 主人公:え…?何を… スマホの神:僕はスマホの神なんだ!見ててね~。ん~…ホイッ! 主人公:ん、電話?こんな朝から誰だろ…。はい、誰ですか? スマホの神:アハハ!君、名前見てみなよ 主人公:え?…って電話掛けてきた人の名前、スー!? スマホの神:それ僕だよ~ 主人公:な、なんで…電話番号教えて無いのに…。 サイフの神:お疲れスー。これで僕達の事信じてもらえたでしょ? 主人公:私の知り合いから聞き出したんですね!回りくどい事して、騙されませんよ! サイフの神:ああ…名前表示されてる所は気にならないんだね。じゃあ今度は私の番だね。 サイフの神:私はサイフの神だよ。…よし。フフ、サイフの中を見てご覧。 主人公:サイフ?私のサイフがどうだって…えっ!? 主人公:さ、3万円入ってたのに!3千円になってる~!? サイフの神:どうだい?びっくりしたかい? 主人公:違う意味でびっくりですよ!私の3万どこにやったんですか!? サイフの神:え、そこ!? 主人公:あれ私の今月の全財産なんですよ!どこにやったんですか!?ハッ、警察に… サイフの神:ま、待った~!今すぐ戻すから!警察だけは勘弁して! 主人公:ほ、本当ですね? サイフの神:ん~…よし!サイフの中を見てご覧 主人公:え?…あ!3万!私の全財産3万円!よ、良かった~ サイフの神:ふー、危なかった。神が警察に厄介になるとか前代未聞(ぜんだいみもん)だからね。 サイフの神:どうかな?これで信じてもらえたかな? 主人公:分かった…貴方、マジシャンの詐欺師でしょ!そうやって知らない内にお金を他人から巻き上げてるんでしょ!? サイフの神:え〜!?ち、違うよー、ほんとに神なんだよ~! 万年筆の神:まったく、お前達はなってないな。 サイフの神:面目ないです… スマホの神:僕は悪くないよ~ 万年筆の神:私は万年筆の神だ。若者、お主に私の力を見せてやろう。 主人公:な、なんだ…空気が…震えてる…? 万年筆の神:はぁぁぁぁ~……ぬんっ! 主人公:えっ!?着てる服から光が!? ま、眩しい!! 万年筆の神:ふー…。服を見てみろ。 主人公:え…?…ああっ!?…「万・年・筆・の・神・ラ・ヴ!?」なんですかこれーー!? 万年筆の神:サービスだ。オシャレだろう? 主人公:いや意味分からない上にダッサいですよ!どうするんですか!これ仕事着なんですよ!? 万年筆の神:ダ、ダサい…うぅ… サイフの神:あららー、神が精神的ダメージで落ちこんじゃったよ。 スマホの神:マーさん、どんまいだよ~ 時計の神:うーむ、私の番、と言いたい所だが。ここでは見せられないから、どうしたものか… 主人公:いや、もういいですよ。 時計の神:む? 主人公:流石にこれだけのものを見せられたら信じますよ。今まで失礼な態度を取ってすみませんでした、神様の皆さん。 サイフの神:お、良かったねマーさん、貴方の力だよ。 万年筆の神:ほんとか…?ゴホン(咳)、や、やっと信じる気になったか若者よ。 スマホの神:アッハッハ!切り替え早~ 主人公:それで、神様達はなんで私の前に現れて下さったんですか? 万年筆の神:つくも神は、長い年月を経た道具に精霊が宿ると言うのは知っているか? 主人公:はい、でもたしかつくも神って…その… サイフの神:人をたぶらかす…話でしょ? 主人公:あ…はい、そう聞いた事があります。 スマホの神:まったく、それ、風評被害だよね~ 主人公:え…?違うんですか? 万年筆の神:少し違うな。我々つくも神は、道具に宿る神だが、道具を粗末に扱う者には天罰を、大事にする者にはその行いに感謝し、その者の願いを叶えるのだよ。 主人公:そ、そうだったんですね… 時計の神:説明ありがとうマー。私が言いたかった事がこれで分かったかな? 主人公:はい。最初はびっくりしましたけど、こうやってちゃんと話をしてたら納得出来ました。 時計の神:では、何でもいいから願い事を言うといい。 主人公:… 時計の神:ん?どうした。 主人公:え、いや…その、無いんです。 時計の神:無い?とはどういう事だ 主人公:色々考えたんですけど、どの願い事も私には必要ないかなって。 時計の神:ほぅ。 主人公:不老不死も一人だけ長生きしてもいずれ寂しくなるだろうし、お金も自分で稼いでこそ有難みを感じると言うか、恋人も…その、運命の相手と自然に出会いたいなと…。 サイフの神:聞いた?こんなに無欲な人間見た事ないんだけど スマホの神:ハグハグ、え?なんか言った? サイフの神:…なんでもないよ。残さず食べるんだよ、スー。 主人公:私、今は健康ですし、仕事にも友人関係にも恵まれてて、とくに不自由は感じてません。なので、お気持ちは大変嬉しいのですが… 万年筆の神:ううむ、困ったな。それでは我々の使命が果たせないんだがな… 主人公:なので、せっかく来て頂いて申し訳ないんですが、仕事があるのでこの辺で失礼します! 時計の神:あ!待ってくれ!みんな、行くぞ! サイフの神:あらら、みんなの分まで払って行ってくれちゃって。サイフの神失格だよー 万年筆の神:ほら、いつまで食べてる、行くぞ スマホの神:はぐ、んぐ、ちょ、ちょっと待ってよ~! :間 時計の神:く、あの若者はどこに行った? サイフの神:ん?あれじゃないかい? 時計の神:む、確かに。良かった、あの若者だ スマホの神:でも、道の真ん中で、何かしてるよ~? 主人公:さっきの人、危ないなー。なんでこんな所にナイフなんて捨てたんだ? 万年筆の神:誰かが捨てたナイフを拾ってやってるようだな。 主人公:…ああ、なるほど。刃(は)こぼれしてるんだな。まったく、刃(は)を研(とげ)ばまだ使えるのに勿体ないなー。 スマホの神:すごーい、あんな事言ってるよ? 時計の神:…さすが、我々の見込んだ通り、道具を大切にする素晴らしい心の持ち主だ。 主人公:確か家に研石(といし)があったな…よし、家に持って帰ってあげるよ。こんな所に捨てられたままじゃ、可哀想だしね。 サイフの神:いやーほんと、すごいね。道具を大切にしない他の人間もあの若者を見習うべきだよ。 主人公:さて、信号が変わる前に渡らないと… 万年筆の神:むっ!まずいぞ!皆あれを!! スマホの神:げっ!信号無視した車があの人に向かってるよ!? サイフの神:ど、どうするのさ!?僕の力じゃこの距離は届かないよ! スマホの神:僕も無理ー!! 万年筆の神:く!どうすれば! 主人公:え…う、うわーー!! 時計の神:「時よ止まれ」 主人公:うわー!…あ、あれ…?なんだ?車が、止まってる?なんで…? 時計の神:ふー、間に合ったようだな スマホの神:そっかー!ウーは時計の神様だったね! 万年筆の神:あの若者以外の時間を止めたのか。相変わらず、すごい力だな サイフの神:そ、そうだったー…。めちゃくちゃ焦っちゃったよ~ 主人公:あ!あれは神様達!?てことは…これは神様の力…? 時計の神:びっくりさせてすまないね。先程は見せれなかったが、これが私の力だ。 主人公:あ、ありがとうございます!おかげでこの子(ナイフ)を助けられました。 万年筆の神:自分の心配より道具の心配とは…まったく今どき信じられれん若者だ。 サイフの神:あの人間の事、もっと好きになったんじゃない? 万年筆の神:ふん… スマホの神:僕ももっと好きになっちゃったな!握手握手~! 主人公:ちょ、うわわ! 時計の神:スー、それぐらいにしておけ、困っているだろう? スマホの神:はーい、今度は一緒に遊ぼうね! 主人公:え、今度…? 時計の神:若者よ、道具を代表してこのナイフを救ってくれてありがとう。このナイフに宿っている神も感謝している。そのうち、お礼に行くと言っている。 主人公:いや、そんな。当たり前の事をしただけなんで、気にしないでって、言って上げてください。 万年筆:まったく、そこは素直に受け取っておけば良いのに… スマホの神:マーさんは素直じゃないね~ 万年筆:うるさい! 主人公:あ、時間が動き出した。 時計の神:時間を取らせて悪かったな若者。仕事はいいのか? 主人公:仕事…あっ!ち、遅刻だ~!! 時計の神:ふ、それなら大丈夫だ。 主人公:え…? 時計の神:む~…ハーッ! 主人公:え!あれ!?た、太陽の位置が!? 時計の神:一時間前に戻しておいた。これで間に合うだろ? 主人公:あ…はい!そ、それじゃ、ありがとうございました!これからも道具大事に使わせて頂きます!それじゃ! スマホの神:バイバ~イ!!また、あっそっぼう~ね~!! サイフの神:今度は危ない事は控えるんだぞ若者~! 万年筆の神:ふん、その道具を愛する気持ち、いつまでも忘れるなよ 主人公:っ!はい! :間 スマホの神:…行っちゃったね。 サイフの神:寂しいのかい? スマホの神:そ、そんな事ないよ!ていうか…あっちの方が 万年筆の神:くぅ…心の美しい素晴らしい若者だった…うぅ… サイフの神:うん…そっとしといてやろう。でも、結局願いは叶えられずじまいだねー 時計の神:ん?サー、何をもう終わったみたいな事を言っている? サイフの神:え…?それって… :間 主人公:はあ、疲れた~。今日もたくさん働いたな~。 主人公:でも、好きな仕事だしやりがいもあるんだよね~ :少しの間 主人公:さーて。待たせたけど、今から研(と)いであげるからね~ナイフちゃん 時計の神:ほー、これが砥石(といし)というやつか 万年筆の神:なるほど、今は電動で動かせる物があるのか、便利だな スマホの神:ねー!ねー!僕もやった事ないから試してみてもいい~? サイフの神:おいおい。君がやると、ナイフの神を怒らせてしまうから止めときなー スマホの神:ケチー! 主人公:え?え?神様達…どうして…? 時計の神:それは、まだ君の願いを叶えられてないからね。 主人公:そんな…いや、ほんとに願い事とか、大丈夫ですよ? 時計の神:あー、それと…みんな君の事が気に入ったとさ。 完