台本概要

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タイトル 破戒僧「覚超」、物の怪退治 分冊版1
作者名 Danzig
ジャンル 時代劇
演者人数 3人用台本(男1、女1、不問1)
時間 10 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 分冊版1は、男×女×男女不問の3人劇です。

妖怪、怪異、物の怪(ものの怪)・・・
そういった類を退治する事を生業とする男がいた
その男の名は「覚超(かくちょう)」

ある夜
覚超の元に物の怪を退治して欲しいという女が現れる

※この話に出てくる妖怪は性別不問です。
女と妖怪は、セリフが重なるところが少ないので、1だけやるのであれば、兼ね役でもいいかもしれません。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
覚超 59 物の怪退治を生業とする破戒僧
36 覚超に物の怪退治を依頼する女
妖怪 不問 26 覚超と知り合いの妖怪
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0:破戒僧覚超の物の怪退治 1 0: 0:今にも壊れそうなボロ寺 0:そこに女が訪ねてくる 0: 覚超:ほう、このような古寺(ふるでら)に、訪ねてくる御仁がおるとは・・・珍しいな 覚超:しかも、こんな夜更けに、女性(にょしょう)一人とはな 0: 0:女をしげしげと見つめる覚超(かくちょう) 0: 覚超:おい、女 0: 0:覚超の声にビクつく女 0: 女:は・・・はい・・・ : 覚超:名は? : 女:ち、千代と申します。 : 覚超:で、そちは、何故(なにゆえ)この寺へ参った : 女:実は、あなた様に、折り入ってお願いしたい事がございます。 女:私の住む村の峠に、物の怪(もののけ)が出るようになりまして、峠を通る村人を襲(おそ)うのでございます。 : 覚超:ほう、それは難儀(なんぎ)な話だな 覚超:それで? 覚超:拙僧(せっそう)に何をしろと・・・ : 女:あなた様に、その物の怪を退治しては頂けないかと・・・・ : 覚超:ふむ、どこで聞いて参ったかは知らぬが・・・ 0: 0:値踏みをするような目でお千代をみる覚超 0: 女:実は村で、たいそう腕が立つといわれる、お武家様(ぶけさま)にお願いして、 女:物の怪を退治して頂こうとしたのですが、 女:そのお武家様も物の怪に殺されてしまい・・・ : 覚超:ほう : 女:ですが、そのお武家様が出立される前に、自分が敵(かな)わぬ時には、覚超(かくちょう)という僧侶を探してみろと・・・ : 覚超:なるほどのぉ : 女:ですから、もう、あなた様しか、頼(たよ)れる御仁(ごじん)は、いないのです。 女:お願いでございます。 女:どうか、物の怪を退治しては頂けないでしょうか : 覚超:うむ、確かに拙僧なら、物の怪の類(たぐい)を退治する事は出来るやもしれん・・・・ 覚超:だが、無代(むだい)ではないぞ。 覚超:それも聞いておろう : 女:はい・・・それは存じております 女:それで、如何(いか)ほどあれば・・・ : 覚超:ほう、払う気があるのか 覚超:そうよのう・・・まぁ五十両と言ったところか : 女:ご・・・・ごじゅ・・・・ 女:そ、そのような大金は・・・とても・・・ : 覚超:ははは 覚超:普通は、払えるような金ではないわな 覚超:まぁ、諦(あきら)めて、その物の怪とは関わりを持たぬか、 覚超:はたまた、もっと徳の高い僧にでも頼んでみる事だな 0: 0:お千代に背を向ける覚超 0:狼狽するお千代 0: 女:あああ・・・ 女:そんな・・・ 女:わ、私はどうすれば・・・ : 覚超:ん? 覚超:何故そちは、そうまでして、その物の怪とやらを退治(たいじ)したいのだ? : 女:実は・・・ 女:私は早くに母を亡くし、これまで父と兄に育てられてきました 女:父も兄も、私には、とても優しく、私は幸せでした 女:ですが先日、その父と兄がその物の怪に・・・・ : 覚超:そうであったか・・・ 覚超: 覚超:事情は分かった 覚超:しかし、無代という訳にもいかぬしな・・・ 覚超:そうよのう・・・ 0: 0:考えながらちらりとお千代を見る覚超 0: 覚超:一夜(いちや)の夜伽(よとぎ)でもあれば、その代わりにもなるやもしれんな・・・ : 女:えっ・・・ 0: 0:ハッとするお千代 0:ニヤケる僧侶 0: 覚超:若い女性(にょしょう)の身体であれば、金銭(きんせん)はいらぬが・・・ 覚超:ふむ、見たところ、そちは若い上に器量もよさそうだ 覚超: 覚超: 覚超:そちにその気があるのであれば、十分報酬の代わりになるが・・・・ 覚超:どうだ? : 女:そ、そんな・・・ : 覚超:ん? 覚超:やはり、嫌か 0: 0:しばし考え 0: 女:わ・・・・分かりました 女:私でよろしければ・・・どうぞ・・・ 0: 0:震えながらも了承するお千代 0: 覚超:そうか、そうか・・・・ははははは 覚超:今宵(こよい)は楽しくなりそうだな : 女:・・・・ 0: 0:恥ずかしさで返事のできないお千代 0: 覚超:しばしまて 覚超: 覚超:確か、ここいらに・・・ 覚超:お、あった、あった 0: 0:端においてある廿楽(つづら)から服を取り出す 0: 覚超:では、これに着替えてもらおうか 0: 0:服をお千代の足元に放り投げる 0: 覚超:着替えたら、場所を変えるぞ 覚超:こんな所では気分が出んのでな 0: 0:夜道をあるく二人 0:暫く無言で歩く 0: 女:あの・・・覚超(かくちょう)様・・・ : 覚超:どうした、お千代、 覚超:目的の場所は、もうそろそろだが、今になって臆(おく)したか? : 女:いえ・・・そうではございません 女:あの・・どこまで行かれるのでしょうか? 女:それに、何故、私が小姓(こしょう)の姿に : 覚超:ははは、場所が変われば、気分も変わるものよ 覚超:それに、何故そちに、そのような小姓の格好をさせたかだが・・・ 覚超: 覚超:なぁに、大した事ではない 覚超:拙僧(せっそう)にも少しばかり『好み』というものがあってな、 覚超:はははは : 女:は・・はぁ : 覚超:男だと思っておったところが、一皮剥(む)けば女だった・・・ 覚超:それも一興(いっきょう)じゃろうて、はははは : 女:・・・ : 覚超:なぁに、お主にとっては、初めての事だろうが 覚超:拙僧の言うた通りにしておればよい 覚超:怖ければ、目でも瞑っておれば、直に済むわ : 女:・・・はい : 覚超:今、お主の顔が見えてしまうと、気分が出んのでな、その時がくるまで、傘は深くかぶっておれよ : 女:・・・はい 0: 0:しばらく歩き、ボロボロの御堂の前で止まる。 0: 覚超:さぁ、着いたぞ : 女:・・・ここ・・・ですか? : 覚超:そうじゃ : 女:先程のお寺と、あまり変わらないような佇(たたず)まいですが・・・ : 覚超:あぁ、どちらもボロ寺だがな、場所が変われば、気分も変わるというものよ : 女:そうですか・・・ : 覚超:よいな、目を瞑っていてもいいが、身体は拙僧のいう通りにするのだぞ : 女:・・・はい 0: 0:息をのむお千代。 0: 0:扉を開けて中にはいる 0: 覚超:さぁ、拙僧について入ってまいれ : 女:・・・はい : 覚超:暗いので足元に気を付けてな 0: 0:御堂の中に入る二人 0:薄暗い御堂の中 0: 女:ここは・・・ 女:暗くてなにも・・・ 0: 0:奥からうっすらと浮かび上がる蒼白い光 0:そこから姿を現す妖艶な女性 0: 妖怪:誰じゃ・・・ : 女:ひぃ 0: 0:驚き、覚超にしがみつく千代 0: 覚超:心配するな、拙僧の後ろに隠れておれ : 女:はい : 妖怪:おや、どこか聞いた声だが・・・ : 覚超:久しぶりだな : 妖怪:なんじゃ、覚超か 妖怪:一体、何の用じゃ : 覚超:時雨烏(しぐれがらす)をもらい受けに参った : 妖怪:ほう、 妖怪:で、金は? : 覚超:金はない : 妖怪:ははは、全く・・・ 妖怪:話にならんな 妖怪:なんじゃお前、似非坊主(えせぼうず)なんぞに、なり腐って、ついに頭まで逝(い)ってしもうたか : 覚超:拙僧にも、事情というものがあってな : 妖怪:とにかく、金が無いならお前に用はない 妖怪:さっさと帰れ : 覚超:あぁ、確かに金はない・・・ 覚超:金はないがが、その代わり、こいつを持ってきた : 妖怪:何? 0: 0:お千代の背中を押して相手に投げつけるかのように付きつける 0:勢い余って崩れる二人の女 0: 女:あ・・・ : 妖怪:なっ・・・ : 覚超:お千代、そいつにしがみつけ、早く : 女:え?・・・は、はい! ん・・・ 0: 0:必死にしがみつくお千代 0: 覚超:ほれ、そいつをくれてやる : 妖怪:え? 妖怪:・・・・なっ! 妖怪:こ、こいつは・・ 0: 0:傘を取ると、小姓の格好をした者が女だと分かる 0:妖艶な態度が一変し、急に蒼ざめて狼狽する女 0: 妖怪:お、お、お、女!・・・ 妖怪:うわぁぁぁああわわわわ 妖怪:は、離れろ、は、早く、離れろ・・・離れろ : 覚超:お千代、決して離すでないぞ 覚超:それが今宵(こよい)の夜伽(よとぎ)じゃ : 女:はい!・・んんん : 妖怪:やめろ、離れろ、離れろって : 覚超:どうじゃ、十分な報酬であろう 覚超:お千代は器量のよい女性(にょしょう)じゃ、嬉しかろう : 妖怪:て、てめぇ、どどどどどどういうつもりだ 妖怪:俺が女が、だだダメなのを、ししし知ってやがるだろが 妖怪:あわわわ、離れろ、離れろって言ってるだろ 0: 0:狼狽しながら悪態をつく女 0: 覚超:ははははは、そうであった、そうであった 覚超:御主は、女が苦手であったな 覚超:お千代、今お前が抱きついている、そ奴も、物の怪の類(たぐい)じゃ : 女:え? : 覚超:そいつはの名は火狐(かこ)、火を操る狐の物の怪でな、 覚超:物の怪のくせに、女性(にょしょう)に触れると腰が抜けるそうだ 覚超: 覚超:それゆえ、女性(にょしょう)に近づかれぬよう、自らを女性(にょしょう)に扮(ふん)しておるのだ 0: 0:狼狽する火狐に近づく覚超 0: 覚超:ところで火狐、いや、その格好をしておる時は朱火狐(あかね)と呼んだ方がよいかな 覚超:どうした? 動けぬのか? : 妖怪:みみみ見りゃわかるだろ : 覚超:我が愛刀(あいとう)『時雨烏(しぐれがらす)』が、ちょいと入用(いりよう)になってな 覚超:時雨烏(しぐれがらす)を返すというのであれば、その女性(にょしょう)をお主から引きはがしてやってもよいが? : 妖怪:ななな何言ってんだ 妖怪:あれは、おおお前が俺から借りた五十両のかたとして、俺が預かってるんだろ 妖怪:ごご五十両もって来なきゃ返すが訳ないだろが : 覚超:そうか、それは残念だ、邪魔をしたな、では・・・ 0: 0:帰ろうとする僧侶 0: 妖怪:ま、まてよ覚超、何処へ行く : 覚超:何処って、お主に『金がないなら用はない』と言われたからな、帰るのじゃ : 妖怪:か、帰る前に、こ、この女を何んとかしろ、このまま帰るなんて、ひでぇだろ : 覚超:ほう、そうか 覚超:では、拙僧が刀をお主に預けて、五十両を借り受けた・・・ 覚超:しかし、そんな話はなかった・・・ 覚超:そういう事でよいかな : 妖怪:は、はぁ? 妖怪:な、何言ってんだお前 妖怪:そ、そんなバカな話があるか 妖怪:お、俺は確かに五十両お前に貸したぞ : 覚超:いや、まて : 妖怪:人の話を聞け! : 覚超:確か、お主がどうしても、拙僧の時雨烏(しぐれがらす)を貸して欲しいと言うたので、拙僧が仕方なく、五十両でお主に貸した・・・ 覚超:そうであったかな? : 妖怪:おい、人の話聞いてんのかよ 妖怪:何でそんな話になるんだよ、 妖怪:都合のいい事ばかり言ってんじゃねぇぞ、くそ坊主 : 覚超:そうか拙僧の記憶違いであったか・・・ 覚超:そうか、そうか、それは残念だった・・・では 0: 0:帰ろうとする僧侶 0: 妖怪:まて・・まて・・ 妖怪:わかった、わかったから 妖怪:も、もうお前のいう通りでいいから、この女をどけてくれ 妖怪:頼む、早く・・・ : 覚超:やはりそうであったか 覚超:そうか、そうか、それであれば・・・ 覚超:お千代、もうよいぞ 0: 0:女を火狐から引きはがす 0: 覚超:よっと : 女:あ・・・ : 妖怪:はぁ・・・はぁ・・・ 妖怪:助かった・・・ : 女:あの・・・覚超様 : 覚超:ああ、そちはもう帰っても良いぞ、夜道ゆえ、気をつけてな 覚超: 覚超:物の怪は、拙僧と朱火狐(あかね)で退治しておく故(ゆえ)、安心しておれ : 女:はい、ありがとうございます : 妖怪:おい、何言ってんだ覚超 妖怪:何で俺が、五十両踏み倒された挙句に、妖怪退治までしなきゃならないんだよ : 覚超:何を言うておる、お主に貸した時雨烏(しぐれがらす)の利子を、まだ貰(もら)い受けておらん。 覚超:お主には、利子分働いて貰(もら)わぬとな : 妖怪:はぁ? 妖怪:金を貸したのはこっちだぞ、それを、人の弱みを利用して、こっちが借りたなんて話にしやがって 妖怪:しかも何が利子だ、バカも休み休み言え : 覚超:まぁ、そう怒るでない 覚超:坊主を助けておくと後々よい事があるやもしれぬぞ : 妖怪:ったく、何が坊主だ、似非坊主(えせぼうず)のくせに 妖怪:お前を助けたって、ご利益なんてありゃしないだろ! : 覚超:さて、では参るとするか、朱火狐(あかね) : 妖怪:人の話を聞けって! : 覚超:久しぶりの物の怪退治と行こうではないか 覚超:お主も心が躍るであろう : 妖怪:躍らねぇよ、この戦狂い(いくさぐるい)が! : 覚超:はははは、腕が鳴るのう 覚超:さて、この度(たび)はどんな戦(いくさ)になるだろうなぁ 覚超:楽しみじゃて

0: 0:破戒僧覚超の物の怪退治 1 0: 0:今にも壊れそうなボロ寺 0:そこに女が訪ねてくる 0: 覚超:ほう、このような古寺(ふるでら)に、訪ねてくる御仁がおるとは・・・珍しいな 覚超:しかも、こんな夜更けに、女性(にょしょう)一人とはな 0: 0:女をしげしげと見つめる覚超(かくちょう) 0: 覚超:おい、女 0: 0:覚超の声にビクつく女 0: 女:は・・・はい・・・ : 覚超:名は? : 女:ち、千代と申します。 : 覚超:で、そちは、何故(なにゆえ)この寺へ参った : 女:実は、あなた様に、折り入ってお願いしたい事がございます。 女:私の住む村の峠に、物の怪(もののけ)が出るようになりまして、峠を通る村人を襲(おそ)うのでございます。 : 覚超:ほう、それは難儀(なんぎ)な話だな 覚超:それで? 覚超:拙僧(せっそう)に何をしろと・・・ : 女:あなた様に、その物の怪を退治しては頂けないかと・・・・ : 覚超:ふむ、どこで聞いて参ったかは知らぬが・・・ 0: 0:値踏みをするような目でお千代をみる覚超 0: 女:実は村で、たいそう腕が立つといわれる、お武家様(ぶけさま)にお願いして、 女:物の怪を退治して頂こうとしたのですが、 女:そのお武家様も物の怪に殺されてしまい・・・ : 覚超:ほう : 女:ですが、そのお武家様が出立される前に、自分が敵(かな)わぬ時には、覚超(かくちょう)という僧侶を探してみろと・・・ : 覚超:なるほどのぉ : 女:ですから、もう、あなた様しか、頼(たよ)れる御仁(ごじん)は、いないのです。 女:お願いでございます。 女:どうか、物の怪を退治しては頂けないでしょうか : 覚超:うむ、確かに拙僧なら、物の怪の類(たぐい)を退治する事は出来るやもしれん・・・・ 覚超:だが、無代(むだい)ではないぞ。 覚超:それも聞いておろう : 女:はい・・・それは存じております 女:それで、如何(いか)ほどあれば・・・ : 覚超:ほう、払う気があるのか 覚超:そうよのう・・・まぁ五十両と言ったところか : 女:ご・・・・ごじゅ・・・・ 女:そ、そのような大金は・・・とても・・・ : 覚超:ははは 覚超:普通は、払えるような金ではないわな 覚超:まぁ、諦(あきら)めて、その物の怪とは関わりを持たぬか、 覚超:はたまた、もっと徳の高い僧にでも頼んでみる事だな 0: 0:お千代に背を向ける覚超 0:狼狽するお千代 0: 女:あああ・・・ 女:そんな・・・ 女:わ、私はどうすれば・・・ : 覚超:ん? 覚超:何故そちは、そうまでして、その物の怪とやらを退治(たいじ)したいのだ? : 女:実は・・・ 女:私は早くに母を亡くし、これまで父と兄に育てられてきました 女:父も兄も、私には、とても優しく、私は幸せでした 女:ですが先日、その父と兄がその物の怪に・・・・ : 覚超:そうであったか・・・ 覚超: 覚超:事情は分かった 覚超:しかし、無代という訳にもいかぬしな・・・ 覚超:そうよのう・・・ 0: 0:考えながらちらりとお千代を見る覚超 0: 覚超:一夜(いちや)の夜伽(よとぎ)でもあれば、その代わりにもなるやもしれんな・・・ : 女:えっ・・・ 0: 0:ハッとするお千代 0:ニヤケる僧侶 0: 覚超:若い女性(にょしょう)の身体であれば、金銭(きんせん)はいらぬが・・・ 覚超:ふむ、見たところ、そちは若い上に器量もよさそうだ 覚超: 覚超: 覚超:そちにその気があるのであれば、十分報酬の代わりになるが・・・・ 覚超:どうだ? : 女:そ、そんな・・・ : 覚超:ん? 覚超:やはり、嫌か 0: 0:しばし考え 0: 女:わ・・・・分かりました 女:私でよろしければ・・・どうぞ・・・ 0: 0:震えながらも了承するお千代 0: 覚超:そうか、そうか・・・・ははははは 覚超:今宵(こよい)は楽しくなりそうだな : 女:・・・・ 0: 0:恥ずかしさで返事のできないお千代 0: 覚超:しばしまて 覚超: 覚超:確か、ここいらに・・・ 覚超:お、あった、あった 0: 0:端においてある廿楽(つづら)から服を取り出す 0: 覚超:では、これに着替えてもらおうか 0: 0:服をお千代の足元に放り投げる 0: 覚超:着替えたら、場所を変えるぞ 覚超:こんな所では気分が出んのでな 0: 0:夜道をあるく二人 0:暫く無言で歩く 0: 女:あの・・・覚超(かくちょう)様・・・ : 覚超:どうした、お千代、 覚超:目的の場所は、もうそろそろだが、今になって臆(おく)したか? : 女:いえ・・・そうではございません 女:あの・・どこまで行かれるのでしょうか? 女:それに、何故、私が小姓(こしょう)の姿に : 覚超:ははは、場所が変われば、気分も変わるものよ 覚超:それに、何故そちに、そのような小姓の格好をさせたかだが・・・ 覚超: 覚超:なぁに、大した事ではない 覚超:拙僧(せっそう)にも少しばかり『好み』というものがあってな、 覚超:はははは : 女:は・・はぁ : 覚超:男だと思っておったところが、一皮剥(む)けば女だった・・・ 覚超:それも一興(いっきょう)じゃろうて、はははは : 女:・・・ : 覚超:なぁに、お主にとっては、初めての事だろうが 覚超:拙僧の言うた通りにしておればよい 覚超:怖ければ、目でも瞑っておれば、直に済むわ : 女:・・・はい : 覚超:今、お主の顔が見えてしまうと、気分が出んのでな、その時がくるまで、傘は深くかぶっておれよ : 女:・・・はい 0: 0:しばらく歩き、ボロボロの御堂の前で止まる。 0: 覚超:さぁ、着いたぞ : 女:・・・ここ・・・ですか? : 覚超:そうじゃ : 女:先程のお寺と、あまり変わらないような佇(たたず)まいですが・・・ : 覚超:あぁ、どちらもボロ寺だがな、場所が変われば、気分も変わるというものよ : 女:そうですか・・・ : 覚超:よいな、目を瞑っていてもいいが、身体は拙僧のいう通りにするのだぞ : 女:・・・はい 0: 0:息をのむお千代。 0: 0:扉を開けて中にはいる 0: 覚超:さぁ、拙僧について入ってまいれ : 女:・・・はい : 覚超:暗いので足元に気を付けてな 0: 0:御堂の中に入る二人 0:薄暗い御堂の中 0: 女:ここは・・・ 女:暗くてなにも・・・ 0: 0:奥からうっすらと浮かび上がる蒼白い光 0:そこから姿を現す妖艶な女性 0: 妖怪:誰じゃ・・・ : 女:ひぃ 0: 0:驚き、覚超にしがみつく千代 0: 覚超:心配するな、拙僧の後ろに隠れておれ : 女:はい : 妖怪:おや、どこか聞いた声だが・・・ : 覚超:久しぶりだな : 妖怪:なんじゃ、覚超か 妖怪:一体、何の用じゃ : 覚超:時雨烏(しぐれがらす)をもらい受けに参った : 妖怪:ほう、 妖怪:で、金は? : 覚超:金はない : 妖怪:ははは、全く・・・ 妖怪:話にならんな 妖怪:なんじゃお前、似非坊主(えせぼうず)なんぞに、なり腐って、ついに頭まで逝(い)ってしもうたか : 覚超:拙僧にも、事情というものがあってな : 妖怪:とにかく、金が無いならお前に用はない 妖怪:さっさと帰れ : 覚超:あぁ、確かに金はない・・・ 覚超:金はないがが、その代わり、こいつを持ってきた : 妖怪:何? 0: 0:お千代の背中を押して相手に投げつけるかのように付きつける 0:勢い余って崩れる二人の女 0: 女:あ・・・ : 妖怪:なっ・・・ : 覚超:お千代、そいつにしがみつけ、早く : 女:え?・・・は、はい! ん・・・ 0: 0:必死にしがみつくお千代 0: 覚超:ほれ、そいつをくれてやる : 妖怪:え? 妖怪:・・・・なっ! 妖怪:こ、こいつは・・ 0: 0:傘を取ると、小姓の格好をした者が女だと分かる 0:妖艶な態度が一変し、急に蒼ざめて狼狽する女 0: 妖怪:お、お、お、女!・・・ 妖怪:うわぁぁぁああわわわわ 妖怪:は、離れろ、は、早く、離れろ・・・離れろ : 覚超:お千代、決して離すでないぞ 覚超:それが今宵(こよい)の夜伽(よとぎ)じゃ : 女:はい!・・んんん : 妖怪:やめろ、離れろ、離れろって : 覚超:どうじゃ、十分な報酬であろう 覚超:お千代は器量のよい女性(にょしょう)じゃ、嬉しかろう : 妖怪:て、てめぇ、どどどどどどういうつもりだ 妖怪:俺が女が、だだダメなのを、ししし知ってやがるだろが 妖怪:あわわわ、離れろ、離れろって言ってるだろ 0: 0:狼狽しながら悪態をつく女 0: 覚超:ははははは、そうであった、そうであった 覚超:御主は、女が苦手であったな 覚超:お千代、今お前が抱きついている、そ奴も、物の怪の類(たぐい)じゃ : 女:え? : 覚超:そいつはの名は火狐(かこ)、火を操る狐の物の怪でな、 覚超:物の怪のくせに、女性(にょしょう)に触れると腰が抜けるそうだ 覚超: 覚超:それゆえ、女性(にょしょう)に近づかれぬよう、自らを女性(にょしょう)に扮(ふん)しておるのだ 0: 0:狼狽する火狐に近づく覚超 0: 覚超:ところで火狐、いや、その格好をしておる時は朱火狐(あかね)と呼んだ方がよいかな 覚超:どうした? 動けぬのか? : 妖怪:みみみ見りゃわかるだろ : 覚超:我が愛刀(あいとう)『時雨烏(しぐれがらす)』が、ちょいと入用(いりよう)になってな 覚超:時雨烏(しぐれがらす)を返すというのであれば、その女性(にょしょう)をお主から引きはがしてやってもよいが? : 妖怪:ななな何言ってんだ 妖怪:あれは、おおお前が俺から借りた五十両のかたとして、俺が預かってるんだろ 妖怪:ごご五十両もって来なきゃ返すが訳ないだろが : 覚超:そうか、それは残念だ、邪魔をしたな、では・・・ 0: 0:帰ろうとする僧侶 0: 妖怪:ま、まてよ覚超、何処へ行く : 覚超:何処って、お主に『金がないなら用はない』と言われたからな、帰るのじゃ : 妖怪:か、帰る前に、こ、この女を何んとかしろ、このまま帰るなんて、ひでぇだろ : 覚超:ほう、そうか 覚超:では、拙僧が刀をお主に預けて、五十両を借り受けた・・・ 覚超:しかし、そんな話はなかった・・・ 覚超:そういう事でよいかな : 妖怪:は、はぁ? 妖怪:な、何言ってんだお前 妖怪:そ、そんなバカな話があるか 妖怪:お、俺は確かに五十両お前に貸したぞ : 覚超:いや、まて : 妖怪:人の話を聞け! : 覚超:確か、お主がどうしても、拙僧の時雨烏(しぐれがらす)を貸して欲しいと言うたので、拙僧が仕方なく、五十両でお主に貸した・・・ 覚超:そうであったかな? : 妖怪:おい、人の話聞いてんのかよ 妖怪:何でそんな話になるんだよ、 妖怪:都合のいい事ばかり言ってんじゃねぇぞ、くそ坊主 : 覚超:そうか拙僧の記憶違いであったか・・・ 覚超:そうか、そうか、それは残念だった・・・では 0: 0:帰ろうとする僧侶 0: 妖怪:まて・・まて・・ 妖怪:わかった、わかったから 妖怪:も、もうお前のいう通りでいいから、この女をどけてくれ 妖怪:頼む、早く・・・ : 覚超:やはりそうであったか 覚超:そうか、そうか、それであれば・・・ 覚超:お千代、もうよいぞ 0: 0:女を火狐から引きはがす 0: 覚超:よっと : 女:あ・・・ : 妖怪:はぁ・・・はぁ・・・ 妖怪:助かった・・・ : 女:あの・・・覚超様 : 覚超:ああ、そちはもう帰っても良いぞ、夜道ゆえ、気をつけてな 覚超: 覚超:物の怪は、拙僧と朱火狐(あかね)で退治しておく故(ゆえ)、安心しておれ : 女:はい、ありがとうございます : 妖怪:おい、何言ってんだ覚超 妖怪:何で俺が、五十両踏み倒された挙句に、妖怪退治までしなきゃならないんだよ : 覚超:何を言うておる、お主に貸した時雨烏(しぐれがらす)の利子を、まだ貰(もら)い受けておらん。 覚超:お主には、利子分働いて貰(もら)わぬとな : 妖怪:はぁ? 妖怪:金を貸したのはこっちだぞ、それを、人の弱みを利用して、こっちが借りたなんて話にしやがって 妖怪:しかも何が利子だ、バカも休み休み言え : 覚超:まぁ、そう怒るでない 覚超:坊主を助けておくと後々よい事があるやもしれぬぞ : 妖怪:ったく、何が坊主だ、似非坊主(えせぼうず)のくせに 妖怪:お前を助けたって、ご利益なんてありゃしないだろ! : 覚超:さて、では参るとするか、朱火狐(あかね) : 妖怪:人の話を聞けって! : 覚超:久しぶりの物の怪退治と行こうではないか 覚超:お主も心が躍るであろう : 妖怪:躍らねぇよ、この戦狂い(いくさぐるい)が! : 覚超:はははは、腕が鳴るのう 覚超:さて、この度(たび)はどんな戦(いくさ)になるだろうなぁ 覚超:楽しみじゃて