台本概要

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タイトル 破戒僧「覚超」、物の怪退治 分冊版2
作者名 Danzig
ジャンル 時代劇
演者人数 2人用台本(男1、不問1)
時間 10 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 破戒僧「覚超」の分冊版2です。
今回は、覚超と朱火狐(もののけ)の二人劇です。

退治する妖怪が「キー」という鳴き声を出します。
量は少ないので、兼ね役と考えております。
※もしくは読まなくても問題ありません。

お千代の依頼で、物の怪と戦う話です。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
覚超 72 物の怪退治を生業とする破戒僧
朱火狐 不問 74 朱火狐(あかね)、覚超と知り合いの妖怪
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0:破戒僧覚超の物の怪退治 2 0: 0:物の怪退治に向かう覚超と朱火狐(あかね) 0: 朱火狐:ところでよ、覚超(かくちょう) : 覚超:ん? 如何(いかが)した、朱火狐(あかね) : 朱火狐:今回の物の怪退治(たいじ)って、どこまで行くんだよ : 覚超:うむ 覚超:先日、お主の夜伽(よとぎ)をした娘がおったであろう : 朱火狐:おいおい 朱火狐:夜伽(よとぎ)とか言うなよ、気持ち悪い 朱火狐:思い出しただけでも、吐き気がするわ : 覚超:ははは、それは難儀(なんぎ)だったな : 朱火狐:何言ってやがる、お前のせいじぇねぇか : 覚超:はて、そうであったか : 朱火狐:ったく、とぼけやがって・・・ 朱火狐:で、その娘がどうした : 覚超:娘の名はお千代と言うてな 覚超: 覚超:そのお千代の村の、峠(とうげ)まで行くんじゃよ : 朱火狐:そんな事は、分かってんだよ : 覚超:なんじゃ、知っておるではないか : 朱火狐:俺も、その場にいただろうが 朱火狐:俺が聞いてるのは、その娘の村は、何処(どこ)なんだって話をしてんだよ : 覚超:そういう話であったか 覚超:確か、お千代の村は三条(さんじょう)の辺りだと言うておったな : 朱火狐:三条? 朱火狐:その辺りに物の怪なんていたか? : 覚超:一年程前から、出るようになったと、言うておったな : 朱火狐:新しく生まれた物の怪か・・・ : 覚超:さて、どうであろうな 覚超:まぁ、何にせよ、歯ごたえがある奴じゃと、良いのじゃがな 覚超:のう、朱火狐(あかね) 覚超:お主もそう思うじゃろ : 朱火狐:思わねぇよ 朱火狐:退治するなら、さっさと殺(や)っちまうに、越(こ)したことはないだろ : 覚超:それでは、面白味がなかろうて : 朱火狐:物の怪と戦(や)るのに、面白味なんざ、いらねぇんだよ、この戦狂(いくさぐる)いが : 覚超:ははは : 朱火狐:おい、覚超(かくちょう) 朱火狐:お前、長く闘(たたか)いたいからって、手加減(てかげん)なんか、するんじゃねぇぞ : 覚超:ところで朱火狐(あかね) : 朱火狐:人の話を聞けよ! : 覚超:お主は、何故、まだ女性(にょしょう)の恰好をしておるのだ? 覚超:その姿では、歩き辛(づら)かろうに : 朱火狐:こんな朝っぱらから、物の怪の恰好で、道を歩けるわけねぇだろ! 朱火狐:誰に見れらるかも、分からんのに : 覚超:そういうものか? 覚超:物の怪も難儀(なんぎ)な、ものよのう : 朱火狐:何言ってやがる、お前の為だろうが! : 覚超:拙僧のか? : 朱火狐:そうだよ 朱火狐:物の怪と一緒に歩いてたら、お前が怪しまれるだろ : 覚超:ははは、そうか、そうか 覚超:それは、すまんな : 朱火狐:ったく、面倒な奴だな : 覚超:朱火狐(あかね)、そろそろ三条に入る頃だぞ : 朱火狐:そうか・・・ 朱火狐:しかし、特に、物の怪の気配はないがな : 覚超:そうよのぉ 覚超:その辺りでないとすると 覚超:物の怪が出るのは、向こうに見える、あの峠あたりか・・・ : 朱火狐:まぁ、どのみち、行ってみるしかないな : 覚超:あぁ・・・ 0: 0:二人でしばらく歩く 0:しばらくして、物の怪が出るという峠にさしかかる 0: 朱火狐:そういえば、覚超 : 覚超:ん? 覚超:なんじゃ : 朱火狐:どうしてお前、坊主の恰好なんかしてるんだ? 朱火狐:お前、侍(さむらい)じゃなかったのかよ? : 覚超:侍(さむらい)か・・・ 覚超:そういう時もあったかのう : 朱火狐:出家(しゅっけ)でもしたのか? : 覚超:いや、出家はしておらんよ 覚超:ただ、髷(まげ)を結(ゆ)うのが、面倒(めんどう)になってな : 朱火狐:なんだ、そんな事で坊主になったのか : 覚超:そんな事というがな、朱火狐(あかね) 覚超:髷(まげ)を綺麗(きれい)に保つのは意外と面倒(めんどう)なのだぞ 覚超:坊主頭(ぼうずあたま)にしておる方が、何かと楽なのでな : 朱火狐:そういうのは、人間の嗜(たしな)みっていうんじゃないのか?  朱火狐:やっぱり「そんな事」じゃねぇか : 覚超:いやいや、それだけではないぞ 覚超:どうせなら、法力が使えるようになれば、とは思ったのだ : 朱火狐:で、法力は使えるように、なったのか? : 覚超:まぁ、そっちの方はな 覚超:形姿(なりかたち)を真似(まね)るだけではダメだったわ : 朱火狐:ケッ 朱火狐:当たり前だろ、そんな事。 朱火狐:服を着替えるだけで、法力が使えるなら 朱火狐:坊主は修行なんざ、しねぇだろ : 覚超:まったくだな、はははは 0: 0:朱火狐が何かに気づく 0: 朱火狐:覚超・・・ : 覚超:あぁ、分かっておる : 朱火狐:身は隠しても、殺気を隠す気はなさそうだな・・・・ : 覚超:これほど、剥(む)き出しの殺気とは 覚超:あまり、頭の良い「物の怪」では無さそうじゃな : 朱火狐:それか、お前のような、戦狂(いくさぐる)いかだな : 覚超:ほう、それは腕が鳴るのう : 朱火狐:呑気(のんき)な事言ってんじゃねぇよ 朱火狐:並(な)みの殺気じゃねぇぞ : 覚超:あぁ、それも分かっておる : 朱火狐:ふぅ・・・ 朱火狐:よっと 0: 0:朱火狐が火狐(かこ)にもどる 0:覚超は時雨烏(しぐれがらす)に手をかける 0: 覚超:火狐(かこ)、さすがに、朱火狐(あかね)の姿では戦えぬか : 朱火狐:当たり前だろ! 朱火狐:俺は戦いを楽しむ趣味はないんでね 朱火狐:さっさと片付(かたづ)けるぞ : 覚超:なんじゃ・・・つまらん奴じゃな : 朱火狐:放(ほ)っとけ : 覚超:さて、向こうが、どう出るか・・・ : 朱火狐:隠れてるなら、引きずり出せばいいだろう 0: 0:誰もいない場所に向かって火狐(かこ)が叫ぶ 0: 朱火狐:おい、隠れてねぇで出て来いよ : 覚超:出て来ぬな・・・ : 朱火狐:引きずり出せばいいって言ったろ 朱火狐:そこか! 朱火狐:火吹(ひぶ)き 朱火狐:はぁーー!  0: 0:火狐(かこ)が火を噴く 0: 妖怪:キキー : 朱火狐:ほら、お出ましだ : 妖怪:キーーー : 覚超:ほう、身体(からだ)は蜘蛛(くも)、 覚超:その蜘蛛の頭にヒヒの胴(どう)がついておるのか 覚超:変わった鵺(ぬえ)じゃな : 朱火狐:あぁ、俺も聞いた事がないな 朱火狐:新しく生まれた物の怪か : 覚超:ふふふ 覚超:知らぬ相手というのは、心躍(こころおど)るな : 朱火狐:おい、覚超 朱火狐:くれぐれも、変な気は起こすなよ : 覚超:見たところ、妖術はなさそうじゃな : 朱火狐:だから、人の話を聞けって! : 覚超:であれば・・・ 0: 0:覚超が刀を抜いて妖怪に近づく 0: 朱火狐:おい、覚超 朱火狐:そんな不用意(ふようい)に近づくな、危ねぇぞ : 覚超:さぁ、来い! : 妖怪:キーーーー 0: 0:妖怪が、振り上げた腕を覚超に向けて振り下ろす 0: 覚超:ぐはっ 0: 0:数メートル後ろの木まで飛ばされる 0: 朱火狐:おい 朱火狐:何、いきなり食らってんだよ、不用意にも程があるだろ : 覚超:あたたたた : 朱火狐:何やってんだよ 朱火狐:あんなもん、お前なら、かわせただろうが : 覚超:いや、何 覚超:初めての相手なのでな 覚超:この物の怪の力が如何(いか)程のものか 覚超:受けてみたかったのよ : 朱火狐:どれだけバカなんだよ、この戦狂いが 朱火狐:初見殺(しょけんごろ)しだったら、どうするつもりだったんだ : 覚超:ははは、 覚超:その時は、その時 覚超:その方が面白かろうて : 朱火狐:本当に狂ってるな : 覚超:なぁに、妖術(ようじゅつ)の類(たぐい)は、無さそうだったのでな 覚超:死にはせんだろ 覚超: 覚超:にしても・・・ : 朱火狐:あぁ、こいつ、強いな : 覚超:あぁ、面白いのう : 朱火狐:ったく、 朱火狐:付き合う、こっちの身にも、なって欲しいもんだぜ : 覚超:さて、相手の力も分かったところで 覚超:そろそろ真面目にやるとするかな : 朱火狐:最初から真面目にやれよ : 覚超:こういう性分なのでな : 朱火狐:ふっ 朱火狐:まぁいいさ 朱火狐:さっさと、こいつを片づけるぞ 朱火狐:妖術(ようじゅつ)がないのなら、幾(いく)ら力が強くても・・・ : 覚超:あぁ、所詮、ヒヒの知恵じゃろうて 覚超:たかが知れとるわ : 朱火狐:そうだな、 朱火狐:さぁ、いくぞ 朱火狐:火吹(ひぶ)き 朱火狐:はぁーー!  : 覚超:正眼中乱破(せいがん ちゅうらんぱ) 覚超:せりゃ : 妖怪:キーーー 0: 0:妖怪が振り返り、去ろうとする 0: 朱火狐:なんだ・・逃げる・・・のか : 覚超:チッ、逃がすか 0: 0:覚超が妖怪を追おうとする 0: 朱火狐:おい覚超、待て、早まるな : 覚超:まて、物の怪 0: 0:妖怪の尻から糸の玉が飛んできて、覚超の顔にあたる 0: 妖怪:キーーー : 覚超:ぐわっ : 妖怪:キキキッ 0: 0:喜ぶ妖怪 0: 朱火狐:チッ 朱火狐:だから、待てって言ったろ 朱火狐:もろ、初見殺(しょけんごろ)しじゃぁねぇか : 覚超:くっ、糸が顔に・・・ 覚超:背を向けて逃げると見せかけ、尻から糸を玉のように飛ばしすとは 覚超:ヒヒにばかり目を取られて、身体が蜘蛛(くも)だという事を忘れておったわ : 朱火狐:大丈夫か、覚超 : 覚超:糸が粘(ねば)ついて取れそうにない 覚超:息は出来るが、目は開けられんな・・・ : 朱火狐:気をつけろ 朱火狐:また、来るぞ : 覚超:くそ、このままでは・・・ 0: 0:妖怪が覚超を襲う 0: 朱火狐:ったく・・・ 朱火狐:朱炎爆(しゅえんばく)! 0: 0:妖怪の前で炎が爆発し、妖怪が飛ばされる 0: 妖怪:キーーー : 朱火狐:おい、おい、なめるなよ、若いの 朱火狐:幾(いく)ら、バカを騙(だま)せたからって 朱火狐:その程度で、いい気になられちゃ困るんだよ 朱火狐: 朱火狐:覚超、まだ出来るな? : 覚超:あぁ、無論(むろん)だ 0: 0:覚超が刀を鞘に納めて、居合の構えをとる 0: 朱火狐:さて、今度は俺が相手だ 朱火狐:来な 0: 0:ヒヒは朱火狐ではなく、覚超を襲おうとする 0: 朱火狐:なにっ・・・ 朱火狐:そっちへ行ったぞ、覚超、左だ! : 覚超:ん・・・はっ 覚超:岩浪発破(いわなみはっぱ) : 妖怪:キーーーー 0: 0:深い傷を負う妖怪 0: 朱火狐:バカだと思ってったが、 朱火狐:手負(てお)いの方を襲(おそ)う程度の、知恵はあるようだな : 覚超:あぁ、じゃが、相手が悪かったな 覚超:目が見えなくなった程度では、拙僧は殺せんよ : 朱火狐:おい、もう終わらせるぞ : 覚超:ちと残念じゃが、いた仕方がない : 朱火狐:ったく、その態(な)りで 朱火狐:よくそんな口が利けるな 朱火狐: 朱火狐:まぁいい、 朱火狐:覚超、お前、目が見えなくても 朱火狐:俺の後(あと)からなら行けるな : 覚超:あぁ、問題ない : 朱火狐:よし・・・ 朱火狐:行くぞ 朱火狐: 朱火狐:はーーーーー 朱火狐:食らえ 朱火狐:蒼雷火炎車駕(そうらい かえん しゃが) : 覚超:ふん! 覚超:これで終(しま)いじゃ物の怪 覚超:夢想霞時雨(むそう かすみしぐれ) 覚超:そりゃーー : 妖怪:キーーーー 0: 0:妖怪が絶命する 0: 朱火狐:ふー、これで仕留めたな : 覚超:あぁ、そのようじゃな : 朱火狐:やれやれ、 朱火狐:だいたい、お前がバカな事をしなかったら、 朱火狐:もっと早く終われたんだ : 覚超:まぁ、そう言うでない 覚超:面白かったではないか : 朱火狐:面白かねぇよ、これだから戦狂(いくさぐる)いは・・・ : 覚超:そうか・・ん・・・ 覚超:拙僧(せっそう)は・・ん・・・ 覚超:結構(けっこう)・・・ : 朱火狐:なにやってんだよ、お前 : 覚超:糸が粘(ねば)ついてな・・・取れんのじゃ 覚超:物の怪が死んでも、この糸はなくならないのだな・・・ : 朱火狐:まぁ、その糸は妖術じゃねぇかならなぁ 朱火狐:俺が焼いてやろうか、その糸 : 覚超:そんな事したら、顔も焼けてしまうであろうが 覚超:澤(さわ)で目を濯(そそ)げば、取れるじゃろうて 覚超:火狐(かこ)、すまぬが、拙僧(せっそう)を澤まで連れて行ってくれぬか・・・ : 朱火狐:ったく、世話が焼ける奴だな・・・ 0: 0:沢まで下りて、水で目を洗う覚超 0: 覚超:ふー 覚超:おお、取れた、取れた : 朱火狐:で、これからお前は、どうすんだよ : 覚超:お千代の村にいって、物の怪を退治した事を知らせてやらぬとな : 朱火狐:あぁ、そうかい 朱火狐:じゃぁ、俺はこれで帰るとするか : 覚超:まぁ、待て、火狐(かこ) : 朱火狐:なんだよ : 覚超:村まで、お主も一緒に付いてまいれ : 朱火狐:どうして、俺が一緒に行かなきゃいけないんだよ : 覚超:物の怪退治の謝礼として、酒が飲めるやもしれんぞ : 朱火狐:酒か・・・久しぶりだな : 覚超:ははは、今宵(こよい)は宴(うたげ)になるとよいな 覚超:物の怪退治の後の酒は、美味いからな 覚超:今から楽しみじゃて

0: 0:破戒僧覚超の物の怪退治 2 0: 0:物の怪退治に向かう覚超と朱火狐(あかね) 0: 朱火狐:ところでよ、覚超(かくちょう) : 覚超:ん? 如何(いかが)した、朱火狐(あかね) : 朱火狐:今回の物の怪退治(たいじ)って、どこまで行くんだよ : 覚超:うむ 覚超:先日、お主の夜伽(よとぎ)をした娘がおったであろう : 朱火狐:おいおい 朱火狐:夜伽(よとぎ)とか言うなよ、気持ち悪い 朱火狐:思い出しただけでも、吐き気がするわ : 覚超:ははは、それは難儀(なんぎ)だったな : 朱火狐:何言ってやがる、お前のせいじぇねぇか : 覚超:はて、そうであったか : 朱火狐:ったく、とぼけやがって・・・ 朱火狐:で、その娘がどうした : 覚超:娘の名はお千代と言うてな 覚超: 覚超:そのお千代の村の、峠(とうげ)まで行くんじゃよ : 朱火狐:そんな事は、分かってんだよ : 覚超:なんじゃ、知っておるではないか : 朱火狐:俺も、その場にいただろうが 朱火狐:俺が聞いてるのは、その娘の村は、何処(どこ)なんだって話をしてんだよ : 覚超:そういう話であったか 覚超:確か、お千代の村は三条(さんじょう)の辺りだと言うておったな : 朱火狐:三条? 朱火狐:その辺りに物の怪なんていたか? : 覚超:一年程前から、出るようになったと、言うておったな : 朱火狐:新しく生まれた物の怪か・・・ : 覚超:さて、どうであろうな 覚超:まぁ、何にせよ、歯ごたえがある奴じゃと、良いのじゃがな 覚超:のう、朱火狐(あかね) 覚超:お主もそう思うじゃろ : 朱火狐:思わねぇよ 朱火狐:退治するなら、さっさと殺(や)っちまうに、越(こ)したことはないだろ : 覚超:それでは、面白味がなかろうて : 朱火狐:物の怪と戦(や)るのに、面白味なんざ、いらねぇんだよ、この戦狂(いくさぐる)いが : 覚超:ははは : 朱火狐:おい、覚超(かくちょう) 朱火狐:お前、長く闘(たたか)いたいからって、手加減(てかげん)なんか、するんじゃねぇぞ : 覚超:ところで朱火狐(あかね) : 朱火狐:人の話を聞けよ! : 覚超:お主は、何故、まだ女性(にょしょう)の恰好をしておるのだ? 覚超:その姿では、歩き辛(づら)かろうに : 朱火狐:こんな朝っぱらから、物の怪の恰好で、道を歩けるわけねぇだろ! 朱火狐:誰に見れらるかも、分からんのに : 覚超:そういうものか? 覚超:物の怪も難儀(なんぎ)な、ものよのう : 朱火狐:何言ってやがる、お前の為だろうが! : 覚超:拙僧のか? : 朱火狐:そうだよ 朱火狐:物の怪と一緒に歩いてたら、お前が怪しまれるだろ : 覚超:ははは、そうか、そうか 覚超:それは、すまんな : 朱火狐:ったく、面倒な奴だな : 覚超:朱火狐(あかね)、そろそろ三条に入る頃だぞ : 朱火狐:そうか・・・ 朱火狐:しかし、特に、物の怪の気配はないがな : 覚超:そうよのぉ 覚超:その辺りでないとすると 覚超:物の怪が出るのは、向こうに見える、あの峠あたりか・・・ : 朱火狐:まぁ、どのみち、行ってみるしかないな : 覚超:あぁ・・・ 0: 0:二人でしばらく歩く 0:しばらくして、物の怪が出るという峠にさしかかる 0: 朱火狐:そういえば、覚超 : 覚超:ん? 覚超:なんじゃ : 朱火狐:どうしてお前、坊主の恰好なんかしてるんだ? 朱火狐:お前、侍(さむらい)じゃなかったのかよ? : 覚超:侍(さむらい)か・・・ 覚超:そういう時もあったかのう : 朱火狐:出家(しゅっけ)でもしたのか? : 覚超:いや、出家はしておらんよ 覚超:ただ、髷(まげ)を結(ゆ)うのが、面倒(めんどう)になってな : 朱火狐:なんだ、そんな事で坊主になったのか : 覚超:そんな事というがな、朱火狐(あかね) 覚超:髷(まげ)を綺麗(きれい)に保つのは意外と面倒(めんどう)なのだぞ 覚超:坊主頭(ぼうずあたま)にしておる方が、何かと楽なのでな : 朱火狐:そういうのは、人間の嗜(たしな)みっていうんじゃないのか?  朱火狐:やっぱり「そんな事」じゃねぇか : 覚超:いやいや、それだけではないぞ 覚超:どうせなら、法力が使えるようになれば、とは思ったのだ : 朱火狐:で、法力は使えるように、なったのか? : 覚超:まぁ、そっちの方はな 覚超:形姿(なりかたち)を真似(まね)るだけではダメだったわ : 朱火狐:ケッ 朱火狐:当たり前だろ、そんな事。 朱火狐:服を着替えるだけで、法力が使えるなら 朱火狐:坊主は修行なんざ、しねぇだろ : 覚超:まったくだな、はははは 0: 0:朱火狐が何かに気づく 0: 朱火狐:覚超・・・ : 覚超:あぁ、分かっておる : 朱火狐:身は隠しても、殺気を隠す気はなさそうだな・・・・ : 覚超:これほど、剥(む)き出しの殺気とは 覚超:あまり、頭の良い「物の怪」では無さそうじゃな : 朱火狐:それか、お前のような、戦狂(いくさぐる)いかだな : 覚超:ほう、それは腕が鳴るのう : 朱火狐:呑気(のんき)な事言ってんじゃねぇよ 朱火狐:並(な)みの殺気じゃねぇぞ : 覚超:あぁ、それも分かっておる : 朱火狐:ふぅ・・・ 朱火狐:よっと 0: 0:朱火狐が火狐(かこ)にもどる 0:覚超は時雨烏(しぐれがらす)に手をかける 0: 覚超:火狐(かこ)、さすがに、朱火狐(あかね)の姿では戦えぬか : 朱火狐:当たり前だろ! 朱火狐:俺は戦いを楽しむ趣味はないんでね 朱火狐:さっさと片付(かたづ)けるぞ : 覚超:なんじゃ・・・つまらん奴じゃな : 朱火狐:放(ほ)っとけ : 覚超:さて、向こうが、どう出るか・・・ : 朱火狐:隠れてるなら、引きずり出せばいいだろう 0: 0:誰もいない場所に向かって火狐(かこ)が叫ぶ 0: 朱火狐:おい、隠れてねぇで出て来いよ : 覚超:出て来ぬな・・・ : 朱火狐:引きずり出せばいいって言ったろ 朱火狐:そこか! 朱火狐:火吹(ひぶ)き 朱火狐:はぁーー!  0: 0:火狐(かこ)が火を噴く 0: 妖怪:キキー : 朱火狐:ほら、お出ましだ : 妖怪:キーーー : 覚超:ほう、身体(からだ)は蜘蛛(くも)、 覚超:その蜘蛛の頭にヒヒの胴(どう)がついておるのか 覚超:変わった鵺(ぬえ)じゃな : 朱火狐:あぁ、俺も聞いた事がないな 朱火狐:新しく生まれた物の怪か : 覚超:ふふふ 覚超:知らぬ相手というのは、心躍(こころおど)るな : 朱火狐:おい、覚超 朱火狐:くれぐれも、変な気は起こすなよ : 覚超:見たところ、妖術はなさそうじゃな : 朱火狐:だから、人の話を聞けって! : 覚超:であれば・・・ 0: 0:覚超が刀を抜いて妖怪に近づく 0: 朱火狐:おい、覚超 朱火狐:そんな不用意(ふようい)に近づくな、危ねぇぞ : 覚超:さぁ、来い! : 妖怪:キーーーー 0: 0:妖怪が、振り上げた腕を覚超に向けて振り下ろす 0: 覚超:ぐはっ 0: 0:数メートル後ろの木まで飛ばされる 0: 朱火狐:おい 朱火狐:何、いきなり食らってんだよ、不用意にも程があるだろ : 覚超:あたたたた : 朱火狐:何やってんだよ 朱火狐:あんなもん、お前なら、かわせただろうが : 覚超:いや、何 覚超:初めての相手なのでな 覚超:この物の怪の力が如何(いか)程のものか 覚超:受けてみたかったのよ : 朱火狐:どれだけバカなんだよ、この戦狂いが 朱火狐:初見殺(しょけんごろ)しだったら、どうするつもりだったんだ : 覚超:ははは、 覚超:その時は、その時 覚超:その方が面白かろうて : 朱火狐:本当に狂ってるな : 覚超:なぁに、妖術(ようじゅつ)の類(たぐい)は、無さそうだったのでな 覚超:死にはせんだろ 覚超: 覚超:にしても・・・ : 朱火狐:あぁ、こいつ、強いな : 覚超:あぁ、面白いのう : 朱火狐:ったく、 朱火狐:付き合う、こっちの身にも、なって欲しいもんだぜ : 覚超:さて、相手の力も分かったところで 覚超:そろそろ真面目にやるとするかな : 朱火狐:最初から真面目にやれよ : 覚超:こういう性分なのでな : 朱火狐:ふっ 朱火狐:まぁいいさ 朱火狐:さっさと、こいつを片づけるぞ 朱火狐:妖術(ようじゅつ)がないのなら、幾(いく)ら力が強くても・・・ : 覚超:あぁ、所詮、ヒヒの知恵じゃろうて 覚超:たかが知れとるわ : 朱火狐:そうだな、 朱火狐:さぁ、いくぞ 朱火狐:火吹(ひぶ)き 朱火狐:はぁーー!  : 覚超:正眼中乱破(せいがん ちゅうらんぱ) 覚超:せりゃ : 妖怪:キーーー 0: 0:妖怪が振り返り、去ろうとする 0: 朱火狐:なんだ・・逃げる・・・のか : 覚超:チッ、逃がすか 0: 0:覚超が妖怪を追おうとする 0: 朱火狐:おい覚超、待て、早まるな : 覚超:まて、物の怪 0: 0:妖怪の尻から糸の玉が飛んできて、覚超の顔にあたる 0: 妖怪:キーーー : 覚超:ぐわっ : 妖怪:キキキッ 0: 0:喜ぶ妖怪 0: 朱火狐:チッ 朱火狐:だから、待てって言ったろ 朱火狐:もろ、初見殺(しょけんごろ)しじゃぁねぇか : 覚超:くっ、糸が顔に・・・ 覚超:背を向けて逃げると見せかけ、尻から糸を玉のように飛ばしすとは 覚超:ヒヒにばかり目を取られて、身体が蜘蛛(くも)だという事を忘れておったわ : 朱火狐:大丈夫か、覚超 : 覚超:糸が粘(ねば)ついて取れそうにない 覚超:息は出来るが、目は開けられんな・・・ : 朱火狐:気をつけろ 朱火狐:また、来るぞ : 覚超:くそ、このままでは・・・ 0: 0:妖怪が覚超を襲う 0: 朱火狐:ったく・・・ 朱火狐:朱炎爆(しゅえんばく)! 0: 0:妖怪の前で炎が爆発し、妖怪が飛ばされる 0: 妖怪:キーーー : 朱火狐:おい、おい、なめるなよ、若いの 朱火狐:幾(いく)ら、バカを騙(だま)せたからって 朱火狐:その程度で、いい気になられちゃ困るんだよ 朱火狐: 朱火狐:覚超、まだ出来るな? : 覚超:あぁ、無論(むろん)だ 0: 0:覚超が刀を鞘に納めて、居合の構えをとる 0: 朱火狐:さて、今度は俺が相手だ 朱火狐:来な 0: 0:ヒヒは朱火狐ではなく、覚超を襲おうとする 0: 朱火狐:なにっ・・・ 朱火狐:そっちへ行ったぞ、覚超、左だ! : 覚超:ん・・・はっ 覚超:岩浪発破(いわなみはっぱ) : 妖怪:キーーーー 0: 0:深い傷を負う妖怪 0: 朱火狐:バカだと思ってったが、 朱火狐:手負(てお)いの方を襲(おそ)う程度の、知恵はあるようだな : 覚超:あぁ、じゃが、相手が悪かったな 覚超:目が見えなくなった程度では、拙僧は殺せんよ : 朱火狐:おい、もう終わらせるぞ : 覚超:ちと残念じゃが、いた仕方がない : 朱火狐:ったく、その態(な)りで 朱火狐:よくそんな口が利けるな 朱火狐: 朱火狐:まぁいい、 朱火狐:覚超、お前、目が見えなくても 朱火狐:俺の後(あと)からなら行けるな : 覚超:あぁ、問題ない : 朱火狐:よし・・・ 朱火狐:行くぞ 朱火狐: 朱火狐:はーーーーー 朱火狐:食らえ 朱火狐:蒼雷火炎車駕(そうらい かえん しゃが) : 覚超:ふん! 覚超:これで終(しま)いじゃ物の怪 覚超:夢想霞時雨(むそう かすみしぐれ) 覚超:そりゃーー : 妖怪:キーーーー 0: 0:妖怪が絶命する 0: 朱火狐:ふー、これで仕留めたな : 覚超:あぁ、そのようじゃな : 朱火狐:やれやれ、 朱火狐:だいたい、お前がバカな事をしなかったら、 朱火狐:もっと早く終われたんだ : 覚超:まぁ、そう言うでない 覚超:面白かったではないか : 朱火狐:面白かねぇよ、これだから戦狂(いくさぐる)いは・・・ : 覚超:そうか・・ん・・・ 覚超:拙僧(せっそう)は・・ん・・・ 覚超:結構(けっこう)・・・ : 朱火狐:なにやってんだよ、お前 : 覚超:糸が粘(ねば)ついてな・・・取れんのじゃ 覚超:物の怪が死んでも、この糸はなくならないのだな・・・ : 朱火狐:まぁ、その糸は妖術じゃねぇかならなぁ 朱火狐:俺が焼いてやろうか、その糸 : 覚超:そんな事したら、顔も焼けてしまうであろうが 覚超:澤(さわ)で目を濯(そそ)げば、取れるじゃろうて 覚超:火狐(かこ)、すまぬが、拙僧(せっそう)を澤まで連れて行ってくれぬか・・・ : 朱火狐:ったく、世話が焼ける奴だな・・・ 0: 0:沢まで下りて、水で目を洗う覚超 0: 覚超:ふー 覚超:おお、取れた、取れた : 朱火狐:で、これからお前は、どうすんだよ : 覚超:お千代の村にいって、物の怪を退治した事を知らせてやらぬとな : 朱火狐:あぁ、そうかい 朱火狐:じゃぁ、俺はこれで帰るとするか : 覚超:まぁ、待て、火狐(かこ) : 朱火狐:なんだよ : 覚超:村まで、お主も一緒に付いてまいれ : 朱火狐:どうして、俺が一緒に行かなきゃいけないんだよ : 覚超:物の怪退治の謝礼として、酒が飲めるやもしれんぞ : 朱火狐:酒か・・・久しぶりだな : 覚超:ははは、今宵(こよい)は宴(うたげ)になるとよいな 覚超:物の怪退治の後の酒は、美味いからな 覚超:今から楽しみじゃて