台本概要

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タイトル 恋愛成就の処方箋1
作者名 Danzig
ジャンル ラブストーリー
演者人数 3人用台本(男1、女1、不問1)
時間 20 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 オクテで両思いなのに前に進まない男女が、人外の力を借りてカップルになるというファンタジック・ラブストーリーです。

このシリーズの1~4まであります
1:男性主人公編
2:BL編
3:女性主人公編
4:GL編

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
慎也 108 主人公
千秋 57 慎也が思いを寄せる同期入社の女性
白狐 不問 61 人外
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0:恋愛成就の処方箋1(男性主人公編) 0: 0:同期入社の二人 0:残業を終えて会社からの帰り道 0:男性 慎也(しんや) 0:女性 千秋(ちあき) 0: 0: 千秋:もう、随分暖かくなって来たわね : 慎也:うん、そろそろ桜が咲くころだね : 千秋:桜かぁ・・・今年はお花見行きたいなぁ・・・ : 慎也:そうだね・・・ : 千秋:・・・ 千秋:そういえば、私達、同期入社して5年経つわね 千秋:もう女の同期は、私だけになっちゃったのよ 千秋:皆、結婚しちゃってさ : 慎也:そうだね・・・ 慎也:男の同期も、転職したりで殆ど残ってないよ : 千秋:そうね・・・ 千秋: 千秋:そうだ、今日、晩御飯どうするの? 千秋:何か食べて帰る? : 慎也:うーん、そうだね、行こうか 千秋:キャぁ(慎也の声を遮るように) : 千秋:急に風が・・・ 千秋:もう、春の風は突然ふくから・・・ 千秋:スカートの天敵ね 千秋:あ、慎也君、ゴメン 千秋:で、どうする? : 慎也:・・・いや、今日は辞めておこうかな : 千秋:そう・・・ 千秋:じゃぁ、また明日ね 千秋:私、こっちだから : 慎也:うん、じゃぁ・・・ : 千秋と別れて一人になる慎也 : 慎也:あああああああ 慎也:どうして「行く」って言わなかったんだよ、俺! 慎也: 慎也:折角、最初は勇気を出して、行くって言えたのに 慎也:あんな所で、風が吹くなんて・・・ 慎也: 慎也:でも、改めて聞かれたら言えなくなるなんて・・・ホント情けないな・・・ 慎也:「いざ」という時に、勇気が出ないなんて 慎也:あぁーあ、千秋ちゃんとの食事が・・・ 慎也:仕方ない・・・コンビニで弁当でも買って帰るか・・・ 0: 0:見慣れない古い神社の前を通る 0: 慎也:ん? 慎也:なんだここ・・・神社? 慎也:こんな所に、神社なんてあったかな? 慎也: 慎也:なんか、古ぼけたというか、なんとゆうか・・・ 慎也:でも、ここで神社の前を通ったのも、何かの縁だし、拝んでいくか・・・ 0: 0:パンパン(柏手) 0: 慎也:千秋ちゃんと友達になって、もう五年 慎也:どうか、今年こそ、千秋ちゃんとお付き合いが出来ますように、僕に勇気をください 0: 0:パンパン(柏手) 0: 0: 0:千秋帰宅(アパートに一人暮らし) 0: 千秋:ただいまぁ・・・ 千秋:はぁ・・・疲れた・・・ 千秋: 千秋:もう、慎也君たら 千秋:こっちが、あんなにアピールしているのに・・・ 千秋:どうして、気づいてくれないのかしら 千秋: 千秋:もう少し、具体的に言わないと、分からないのかしらね 千秋: 千秋:・・・でも 千秋:いざ、具体的に話そうとすると、声が詰まっちゃうのよね・・・ 千秋: 千秋:あぁーあ、慎也君、早く気づいてくれないかなぁ・・・ 千秋: 千秋:つぅ・・・たたた(頭痛) 千秋:ここ最近、時折この変な頭痛がするのよね・・ 千秋:ストレスかなぁ・・・ 千秋:もう、今日は薬のんで早く寝よ 0: 0: 0:慎也帰宅(アパートに一人暮らし) 0: 0: 慎也:ただいまぁ・・・ 慎也:はぁ・・・疲れた・・・・ 慎也: 慎也:今日も、千秋ちゃんを誘えなかった・・・ 慎也:いざ誘おうと思うと、喉が固まっちゃうんだよなぁ 慎也:なんか、蛇に睨まれたカエルというか・・ 慎也:それに、タイミングも悪いんだよ、急に風が吹いたりとかさ 慎也: 慎也:でも、今日の、千秋ちゃんの、お花見の話・・・ 慎也:あれってやっぱり、お花見に連れて行けって事かな・・・ : 白狐:そんなもん、そうに決まってるだろ! : 慎也:え! 慎也:なに?声? 慎也:どこから? 慎也:えーーーー! : 白狐:まぁ、落ち着け : 慎也:お、お、落ち着ける訳ないだろ! 慎也:何だよ、この声! : 白狐:俺の声だよ 白狐:俺は狐(きつね)、名は白狐(びゃっこ) 白狐:「びゃっこ」って言ってもトラじゃねぇからな 白狐:あんな猫と、一緒にするんじゃねぇぞ : 慎也:狐? 慎也:何で、声だけ聞こえるんだよ : 白狐:俺は霊だからな、 白狐:まぁ、そのうち、お前にも姿を見せてやるよ : 慎也:霊? 幽霊! : 白狐:霊って言っても、別にお前を取って食うわけじゃねぇよ 白狐:俺は、お前が頼むから、わざわざ、来てやったんじゃないか : 慎也:僕は、幽霊なんかに、ものを頼んでないぞ : 白狐:幽霊じゃねぇよ! 白狐:まぁ、細かい事は、面倒だからいいや 白狐:お前、今日の会社帰りに、神社に寄(よ)って、お参(まい)りしただろ? 白狐:んでもって、「勇気をください」とかって、願掛(がんか)けしただろ? : 慎也:たしかに、頼んだけど・・・ : 白狐:だから、来てやったんじゃねぇか 白狐:お前、何とかちゃんと、デートしたいんだろ? 白狐:だったら、俺が協力してやるよ : 慎也:ホント? : 白狐:あぁ 白狐:何とかしてやる 白狐:お前、名前は? : 慎也:僕は慎也・・・ : 白狐:慎也、お前は、勇気が欲しいんだって? 白狐:でも、勇気なんて、お前次第だからなぁ・・・ : 慎也:そうなんだけど、何かないの? 慎也:道具とか薬とか・・・ : 白狐:まぁ、そういうのが、あることは、あるんだが・・ 白狐:お勧めはしないぞ : 慎也:そんなのがあるなら、教えてよ 慎也:どんなの? : 白狐:うーん、「武者玉(むしゃだま)」って言うんだけどな 白狐:ほら、こんなやつ 0: 0:武者玉を取り出して見せる白狐 0: 慎也:光る玉が、浮いてる・・・ : 白狐:あぁ、これを使うと、勇気が千倍になる 白狐:今は、これ一つしかないがな : 慎也:何それ! 凄いじゃない 慎也:僕に使わせてよ! : 白狐:ただし、これを使うには、条件があるんだ 白狐:使う人間の魂と交換しなきゃいけないんだ : 慎也:魂と交換? 慎也:それって死んじゃうって事? : 白狐:そういう事 白狐:武者玉を使って、事を成した後に、魂を貰って天に届ける : 慎也:それじゃ、意味ないじゃない 慎也:誰が使うの、そんなもの : 白狐:そう言うけどな、昔は割と使われたんだぞ。 白狐:そもそも「武者玉」ってのは、大勢の敵を相手に、戦わなきゃならない武者が使うんだ 白狐:どうせ死ぬなら、沢山の敵を倒して、武勲(ぶくん)を立ててから死ぬって感じでな 白狐: 白狐:まぁ、だから、告白には、お勧めしないって言ったんだよ : 慎也:そりゃ、恋が成就しても、死んじゃったら意味ないしね 慎也:あぁ・・・やっぱり、そんな便利なものは、ないか・・ : 白狐:そうガッカリするなよ 白狐:俺が長年の経験で、助言してやるからよ 白狐: 白狐:いいか慎也、まず、女ってのはな・・・ 0: 0:次の日の会社帰り 0: 千秋:今日も遅くなっちゃったわね : 慎也:そうだね : 千秋:今日はまだ、木曜日か・・・ 千秋:あぁーあ、今週の週末、どうしようかなぁ・・・ : 慎也:千秋ちゃん : 千秋:何? : 慎也:今度の日曜日なんだけどさ、 慎也:僕とデ・・ : 千秋:デ? : 慎也:デ・デ・デ・・・ 慎也:デ・・ひぃ・・・ 慎也:デ・デパートで安売りがあるんだってね : 千秋:デパート? 千秋:そうなんだ 千秋:慎也君って、そういう所で、買い物するんだね : 慎也:いや・・・僕も、チラシで見ただけで・・・ははは 慎也:はぁ・・・(ため息) 0: 0: 0:千秋の部屋 0: 千秋:ただいま・・・ 千秋:はぁ・・(ため息) 千秋:もう、慎也君ったら、 千秋:もうちょっとだったのに・・・ 千秋: 千秋:うっ、痛ぁーー(前よりひどい頭痛) 千秋:何か、頭痛が、だんだん酷くなってくる・・ 千秋:嫌だな・・・何かの病気かな・・ 0: 0: 0:慎也の部屋 0: 慎也:ただいま・・・ : 白狐:慎也、どうだった? 白狐:うまくデートに誘えたか? : 慎也:ダメだった・・・ 慎也:やっぱり「いざ」って時に、どうしても、縮(ちぢ)こまっちゃって・・・ : 白狐:そうか・・・ 白狐:俺と話している時の慎也は、それほど腰抜けとも思えないけどなぁ : 慎也:僕も不思議なんだ・・・ : 白狐:まぁ、こういうのは、場数(ばかず)だからな 白狐:次、頑張ればいいさ : 慎也:・・・うん・・そうだね・・・ 0: 0:数日して 0:会社に出社した慎也 0: 慎也:おはようございます。 慎也:あれ? 慎也:今日も斎藤さん、お休みなんですか? 慎也:もう3日ですよね? 慎也:どうしたんだろう・・・ : 白狐:慎也、チャンスだ! : 慎也:あわわわ、白狐、どうしたんだよ突然 慎也:会社の人に聞かれたら・・ : 白狐:それは大丈夫、お前以外には聞こえねぇよ 白狐:そんな事より、慎也、チャンスだぞ! : 慎也:チャンスって何がだよ 慎也:千秋ちゃんは、病気で休んでるんだぞ : 白狐:だから、チャンスなんだよ 白狐:慎也、お見舞いに行け 白狐:病気で弱っている女は、落としやすいぞ : 慎也:そんな姑息(こそく)な・・・ : 白狐:そんな事言ってるからダメなんだよ 白狐:お見舞いに行けよ、絶対に行け! 白狐:昼間の方がいいから、会社は早退しろ 白狐:俺も付いてってやるから : 慎也:えーー分かったよ 0: 0:千秋のアパート付近の公園 0: 慎也:ごめんね、体調悪いのに : 千秋:ううん、私の方こそ、ごめんなさいね 千秋:折角、お見舞いに来てくれたのに、近くの公園でだなんて 千秋:部屋にあがって貰えれば、よかったんだけど 千秋:ちょっと散らかってて・・・ : 慎也:僕の方こそ、ごめん、突然・・・ : 千秋:ううん、嬉しかった・・・・ : 白狐:(無声音)今だ慎也、行け! : 慎也:千秋ちゃん、こんな時に、あれだけど・・・ : 千秋:え? : 慎也:僕と付き合って下さい 千秋:きゃぁ(言葉を遮るように) 千秋:急に風が・・・ : 慎也:また・・・ : 千秋:慎也君、今、何か言った? : 慎也:いや、だから・・ひぃ 慎也: 慎也:・・いや・・なにも・・・ : 千秋:そう・・・ : 白狐:なるほど、そういう事か・・・ : 慎也:千秋ちゃん・・・あの・・ : 千秋:うううう・・痛い(激しい頭痛) : 慎也:大丈夫 : 千秋:ちょっと頭痛が・・・ 千秋:このところ酷くて、起き上がるのも辛い時があるの 千秋:ごめんなさいね、折角、来てくれたのに : 慎也:何言ってんだよ、僕の方こそ、ごめん 慎也:もう、部屋に帰ったほうがいいよ : 千秋:ごめんね、そうさせて貰うわ 千秋:今日は、ありがとう : 慎也:うん、お大事にね・・・ 0: 0:自分の部屋に帰る千秋 0:一人残される慎也 0: 慎也:あぁーあ、やっぱり告白できなかった・・・ 慎也:しかも、千秋ちゃんに、悪い事しちゃったな 慎也:白狐! お前がお見舞いなんて・・ : 白狐:おい、慎也 白狐:あのお嬢ちゃん、死ぬぞ : 慎也:ちょ、何言ってんのさ 慎也:どういう事だよ : 白狐:お前には、見えないかもしれないが 白狐:あの嬢ちゃんには、蛇の怪異が付いている。 : 慎也:蛇の怪異? : 白狐:あぁ、蛇の怪異だ 白狐:あの蛇はな「人恋しくて寂しい女」に取りつくんだ 白狐:そして、ジワジワと弱らせていって、最終的には殺す 白狐:殺した後、その魂を冥界に連れ去っていくんだよ : 慎也:そんな・・・ : 白狐:あのお嬢ちゃんの、体調が悪い原因は、それだな 白狐:それと、 白狐:お前が、あのお嬢ちゃんに近づこうとする度(たび)に、あいつが邪魔をしているのさ 白狐:自分の取りついた得物を、お前に渡したくないんだろうな : 慎也:だから、突然、風が吹いたりしたのか・・・ : 白狐:そういう事だ 白狐:自分の大事な得物(えもの)だからな : 慎也:千秋ちゃんが得物・・・ 慎也:白狐、お前なら、その蛇を何とかできるのか? : 白狐:あぁ、俺なら問題なく倒せる。 白狐:あいつは、それ程強くないからな : 慎也:じゃぁ、頼むよ、白狐 : 白狐:ただ、お嬢ちゃんに取りついている今の状態じゃ 白狐:衝撃が、直接、お嬢ちゃんにも伝わっちまって、 白狐:お嬢ちゃんも、死んじまうよ 白狐:奴を倒すには、お嬢ちゃんから、引き剥(は)がさなきゃいけないな : 慎也:どうやったら、引き剥がせるんだよ : 白狐:慎也が、奴に「この女は俺の得物だ」って見せつけてやればいい 白狐:そうすれば、奴は嫉妬に狂って、お前を殺そうと、あのお嬢ちゃんから離れる : 慎也:でも、見せつけるって、どうやって : 白狐:うーん、例えば 白狐:お前が、あのお嬢ちゃんを抱きしめて「慎也の女」だって言わせればいいんじゃないか? : 慎也:でも、蛇が邪魔してくるんだろ? : 白狐:お前が、奴に負けないくらいの気合で、お嬢ちゃんを抱きしめてやれば、いけるんじゃないか? : 慎也:でも、そんな事・・・ : 白狐:まぁ、お前次第だな 白狐:こうしている間にも、お嬢ちゃんの体力は、どんどん弱っていくぞ : 慎也:僕にはそんな事・・・ 0: 0:暫く考える慎也 0: 慎也:そうだ白狐、俺に武者玉をくれ : 白狐:武者玉を使えば、お前でも、引き剥がすくらいは、出来るだろうけど・・・ 白狐:武者玉を使うって、どういう事か知ってるだろ 白狐:お前の魂と交換だぞ : 慎也:分かってる : 白狐:分かってるって・・・ 白狐:それでお嬢ちゃんは助かるだろうけど 白狐:お前が死んだら、意味がないだろ : 慎也:それでも、千秋ちゃんを、冥界に連れて行かれるよりは、よっぽどましだ : 白狐:でもよ、お嬢ちゃんは悲しむんじゃないか? : 慎也:それは・・・ 慎也:彼女には、ちゃんと説明するよ 慎也:今は、その方法しかないんだろ? : 白狐:確かにな・・・ 白狐: 白狐:わかった 白狐:でも、本当に、それでいいんだな? : 慎也:ああ、いいよ : 白狐:慎也、一つ言っておくが 白狐:武者玉ってのは、それを使う人間の勇気を増幅させるものだ 白狐:だから、元々の勇気がなければ、幾ら武者玉を使ったって、大して効き目はないぞ 白狐:つまり、お前自身がしっかりと勇気を奮い起こさないと 白狐:奴には勝てないって事だ 白狐:やれるのか? : 慎也:え・・・・ 慎也:うん・・分かった、 慎也:や、やるよ : 白狐:わかった、じゃぁ行くぞ 0: 0:千秋の部屋の前まで来る 0: 白狐:ここが、あのお嬢ちゃんの部屋か? : 慎也:うん、ここで間違いない : 白狐:よし、カギは俺が開けてやる 白狐:慎也、覚悟はいいか? 白狐:俺が「武者玉」入れてやるからな : 慎也:うん : 白狐:よし、いけ! 0: 0:パン! 背中をたたく白狐 0: 慎也:よし! いくぞ! 0: 0:白狐が千秋の部屋の鍵を開ける 0:慎也が千秋の部屋のドアを開ける 0: 慎也:千秋ちゃん、入るよ : 千秋:慎也君・・・どうして、痛っ頭が・・(ひどい頭痛) : 慎也:千秋ちゃん 0: 0:千秋に近づこうとするが、蛇が姿を現し、慎也を近づけさせないように邪魔をする 0: 慎也:く・・近づけない 慎也:くそう・・・蛇め・・ : 白狐:お、正体見せやがったな 白狐:慎也、行け! : 慎也:くうううう 慎也:そんな事いっても・・・ : 白狐:何やってんだ、女が持っていかれるぞ : 慎也:うおおお、千秋! 0: 0:千秋を抱きしめる慎也 0: 千秋:慎也君・・・ちょっと、なっ・・ 千秋:そんなに強く・・・ : 慎也:千秋、君は、僕の彼女だ、いいな! : 千秋:え? : 慎也:君は、僕の彼女だ : 千秋:慎也君! : 慎也:千秋、君は、 慎也:僕が「死ぬまで」 慎也:君は、僕の彼女だ : 千秋:慎也君・・ : 慎也:「はい」って言え! : 千秋:慎也(泣きながら) : 慎也:「はい」は! : 千秋:はい! 0: 0:千秋の身体からスッと何かが抜ける 0: 千秋:あ・・・体が・・・ : 慎也:千秋、どうした? 慎也:大丈夫か? : 千秋:あれ? 千秋:痛くない・・・あの頭痛がまるで嘘みたいに 千秋:どうして 千秋:これ、慎也のおかげなの? : 慎也:ま、まぁ・・・ : 千秋:ありがとう : 慎也:苦しかっただろ? 慎也:遅くなってゴメンね : 千秋:ううん・・・ : 白狐:おい慎也、こっちも仕留めたぞ 白狐:見ろ、こんなにでかい蛇だ : 慎也:そっか、良かった 慎也:白狐、お前って、そんな姿をしてたのか : 白狐:へへへ、まぁな 0: 0:そこには大きな蛇を担いだ白狐がいた 0: 千秋:キャぁ! 千秋:何! : 慎也:大丈夫 慎也:あれは、白狐っていう狐の霊だよ : 千秋:白狐? : 慎也:君に取りついていた、あの蛇を見つけてくれて 慎也:退治の仕方まで教えてくれたんだ : 千秋:あの蛇が私に・・・あんなに大きい : 白狐:そうだぜお嬢さん 白狐:もう少しで、あんたは、こいつに殺されるところだったんだ 白狐:でも、その男が勇気をだして、あんたの身体から、この蛇を引っ剥がしたんだよ 白狐:そして、俺が仕留めた訳さ : 千秋:白狐さん 千秋:ありがとうございます。 : 白狐:お礼なら、慎也に言いな 白狐:まさに命がけで戦ったんだ 白狐:そうだろ? : 慎也:う、うん : 千秋:え? 千秋:どういう事? : 慎也:千秋 慎也:君に話さないといけない事があるんだ : 千秋:話さないといけない事? : 慎也:うん 慎也:僕が蛇に立ち向かえたのは、その白狐がくれた「武者玉」のおかげなんだ 慎也:この武者玉を使うと、どんな強大な敵にも、立ち向かう勇気が湧いて来るんだ 慎也:そのかわり・・・ 慎也:僕の魂を、捧げないといけないんだ : 千秋:魂って・・・まさか : 慎也:うん、僕はもう、生きていられないんだ : 千秋:そんな : 慎也:でも、君を助けられてよかった 慎也:だから、僕の命はもういいんだ 慎也:どうしても、君を死なせたくなかったんだよ 慎也:ましてや、あんな蛇なんかに、君を連れて行かせるなんて 慎也:絶対に嫌だったんだ 慎也:だから、後悔はしてないよ : 千秋:そんな、 千秋:幾ら私に命があったって、慎也がいないなら、同じじゃない 千秋:勝手よ、慎也 : 慎也:千秋・・・ごめんね : 千秋:白狐さん! 千秋:何とかする方法は、ないんですか? : 白狐:うーん・・・ 白狐:武者玉が魂と引き換えってのは、俺じゃなくて、もっと上の神様が決めた事だからなぁ 白狐:俺じゃ、何とも出来ないんだよ : 千秋:それじゃ、私の魂を、代わりにする事は出来ないんですか! : 慎也:千秋、ダメだよ折角助かった命なんだ : 千秋:何をいうのよ 千秋:こんな勝手なことやっておいて 千秋:私の気持ちも分からないくせに : 白狐:うーん、 白狐:武者玉は使った人間の魂と交換だからなぁ・・・ 白狐:代わりの人間って訳にはいかないなぁ : 千秋:それなら、私にも武者玉をください! 千秋:私も武者玉を使います 千秋:それなら、慎也と同じでしょ : 慎也:千秋、そんな事しちゃダメだ 慎也:それに、白狐は武者玉を1つしか持ってないから、千秋の分はないよ : 千秋:そんな・・・ 千秋:私はどうすれば : 慎也:千秋には、これからずっと 慎也:俺の分まで、生きて欲しい : 千秋:慎也・・・ : 慎也:千秋、大好きだよ : 白狐:えーと・・・あれだ・・ 白狐:武者玉ならあるよ 白狐:ほら 0: 0:武者玉を見せる白狐 0: 千秋:白狐さん 千秋:それを、私に下さい。 : 慎也:ダメだって千秋 慎也:白狐! 慎也:お前、武者玉は一つしかないって、言ったじゃないか : 白狐:あぁ言ったよ : 慎也:だったらどうして、もう一つ持ってるんだよ : 白狐:だって、お前、武者玉使ってないもん : 慎也:え? : 白狐:言葉の通りだよ 白狐:どうしてもの時に、お前に投げつけてやろうと思ってたけど 白狐:使わずに済んだんだよ : 慎也:どうして、黙ってたんだよ : 白狐:まぁ・・あれだ 白狐:お前たちが、そんなイチャイチャやってるから 白狐:言い出しにくくてな 白狐:悪い悪い 白狐: 白狐:って事で、お嬢ちゃん 白狐:そいつは死なないよ : 千秋:そうですか 千秋:それはよかっ・・・ : 慎也:千秋! 慎也:白狐!、千秋が・・・ : 白狐:気絶しただけだよ、心配ない 白狐:まぁ、安心して緊張の糸が切れたんだろうな : 慎也:そっか : 白狐:まぁ、何せよかったじゃないか 白狐:これで、約束は守れたな 白狐:んじゃ、俺はこいつを持って帰るわ : 慎也:白狐、君のおかげで人生が変わったよ 慎也:本当にありがとう : 白狐:お嬢ちゃんによろしくな 白狐:これから先も上手くやれよ 白狐:じゃぁな 白狐: 白狐の身体が消えていく 0: 0:暫くして 0: 千秋:あれ、私・・・ : 慎也:千秋、気が付いた? : 千秋:慎也・・ : 慎也:よかった、心配してたんだよ : 千秋:さっきまで、私、夢を見てたような 千秋:白い狐と・・・ : 慎也:それは、夢じゃないよ : 千秋:ホント? 千秋:そっか 千秋:夢じゃなかったんだ!! : 慎也:うん : 千秋:慎也・・・ありがとう : 慎也:ううん、千秋、これからもよろしくね : 千秋:うん 0: 0:終わり 0:

0: 0:恋愛成就の処方箋1(男性主人公編) 0: 0:同期入社の二人 0:残業を終えて会社からの帰り道 0:男性 慎也(しんや) 0:女性 千秋(ちあき) 0: 0: 千秋:もう、随分暖かくなって来たわね : 慎也:うん、そろそろ桜が咲くころだね : 千秋:桜かぁ・・・今年はお花見行きたいなぁ・・・ : 慎也:そうだね・・・ : 千秋:・・・ 千秋:そういえば、私達、同期入社して5年経つわね 千秋:もう女の同期は、私だけになっちゃったのよ 千秋:皆、結婚しちゃってさ : 慎也:そうだね・・・ 慎也:男の同期も、転職したりで殆ど残ってないよ : 千秋:そうね・・・ 千秋: 千秋:そうだ、今日、晩御飯どうするの? 千秋:何か食べて帰る? : 慎也:うーん、そうだね、行こうか 千秋:キャぁ(慎也の声を遮るように) : 千秋:急に風が・・・ 千秋:もう、春の風は突然ふくから・・・ 千秋:スカートの天敵ね 千秋:あ、慎也君、ゴメン 千秋:で、どうする? : 慎也:・・・いや、今日は辞めておこうかな : 千秋:そう・・・ 千秋:じゃぁ、また明日ね 千秋:私、こっちだから : 慎也:うん、じゃぁ・・・ : 千秋と別れて一人になる慎也 : 慎也:あああああああ 慎也:どうして「行く」って言わなかったんだよ、俺! 慎也: 慎也:折角、最初は勇気を出して、行くって言えたのに 慎也:あんな所で、風が吹くなんて・・・ 慎也: 慎也:でも、改めて聞かれたら言えなくなるなんて・・・ホント情けないな・・・ 慎也:「いざ」という時に、勇気が出ないなんて 慎也:あぁーあ、千秋ちゃんとの食事が・・・ 慎也:仕方ない・・・コンビニで弁当でも買って帰るか・・・ 0: 0:見慣れない古い神社の前を通る 0: 慎也:ん? 慎也:なんだここ・・・神社? 慎也:こんな所に、神社なんてあったかな? 慎也: 慎也:なんか、古ぼけたというか、なんとゆうか・・・ 慎也:でも、ここで神社の前を通ったのも、何かの縁だし、拝んでいくか・・・ 0: 0:パンパン(柏手) 0: 慎也:千秋ちゃんと友達になって、もう五年 慎也:どうか、今年こそ、千秋ちゃんとお付き合いが出来ますように、僕に勇気をください 0: 0:パンパン(柏手) 0: 0: 0:千秋帰宅(アパートに一人暮らし) 0: 千秋:ただいまぁ・・・ 千秋:はぁ・・・疲れた・・・ 千秋: 千秋:もう、慎也君たら 千秋:こっちが、あんなにアピールしているのに・・・ 千秋:どうして、気づいてくれないのかしら 千秋: 千秋:もう少し、具体的に言わないと、分からないのかしらね 千秋: 千秋:・・・でも 千秋:いざ、具体的に話そうとすると、声が詰まっちゃうのよね・・・ 千秋: 千秋:あぁーあ、慎也君、早く気づいてくれないかなぁ・・・ 千秋: 千秋:つぅ・・・たたた(頭痛) 千秋:ここ最近、時折この変な頭痛がするのよね・・ 千秋:ストレスかなぁ・・・ 千秋:もう、今日は薬のんで早く寝よ 0: 0: 0:慎也帰宅(アパートに一人暮らし) 0: 0: 慎也:ただいまぁ・・・ 慎也:はぁ・・・疲れた・・・・ 慎也: 慎也:今日も、千秋ちゃんを誘えなかった・・・ 慎也:いざ誘おうと思うと、喉が固まっちゃうんだよなぁ 慎也:なんか、蛇に睨まれたカエルというか・・ 慎也:それに、タイミングも悪いんだよ、急に風が吹いたりとかさ 慎也: 慎也:でも、今日の、千秋ちゃんの、お花見の話・・・ 慎也:あれってやっぱり、お花見に連れて行けって事かな・・・ : 白狐:そんなもん、そうに決まってるだろ! : 慎也:え! 慎也:なに?声? 慎也:どこから? 慎也:えーーーー! : 白狐:まぁ、落ち着け : 慎也:お、お、落ち着ける訳ないだろ! 慎也:何だよ、この声! : 白狐:俺の声だよ 白狐:俺は狐(きつね)、名は白狐(びゃっこ) 白狐:「びゃっこ」って言ってもトラじゃねぇからな 白狐:あんな猫と、一緒にするんじゃねぇぞ : 慎也:狐? 慎也:何で、声だけ聞こえるんだよ : 白狐:俺は霊だからな、 白狐:まぁ、そのうち、お前にも姿を見せてやるよ : 慎也:霊? 幽霊! : 白狐:霊って言っても、別にお前を取って食うわけじゃねぇよ 白狐:俺は、お前が頼むから、わざわざ、来てやったんじゃないか : 慎也:僕は、幽霊なんかに、ものを頼んでないぞ : 白狐:幽霊じゃねぇよ! 白狐:まぁ、細かい事は、面倒だからいいや 白狐:お前、今日の会社帰りに、神社に寄(よ)って、お参(まい)りしただろ? 白狐:んでもって、「勇気をください」とかって、願掛(がんか)けしただろ? : 慎也:たしかに、頼んだけど・・・ : 白狐:だから、来てやったんじゃねぇか 白狐:お前、何とかちゃんと、デートしたいんだろ? 白狐:だったら、俺が協力してやるよ : 慎也:ホント? : 白狐:あぁ 白狐:何とかしてやる 白狐:お前、名前は? : 慎也:僕は慎也・・・ : 白狐:慎也、お前は、勇気が欲しいんだって? 白狐:でも、勇気なんて、お前次第だからなぁ・・・ : 慎也:そうなんだけど、何かないの? 慎也:道具とか薬とか・・・ : 白狐:まぁ、そういうのが、あることは、あるんだが・・ 白狐:お勧めはしないぞ : 慎也:そんなのがあるなら、教えてよ 慎也:どんなの? : 白狐:うーん、「武者玉(むしゃだま)」って言うんだけどな 白狐:ほら、こんなやつ 0: 0:武者玉を取り出して見せる白狐 0: 慎也:光る玉が、浮いてる・・・ : 白狐:あぁ、これを使うと、勇気が千倍になる 白狐:今は、これ一つしかないがな : 慎也:何それ! 凄いじゃない 慎也:僕に使わせてよ! : 白狐:ただし、これを使うには、条件があるんだ 白狐:使う人間の魂と交換しなきゃいけないんだ : 慎也:魂と交換? 慎也:それって死んじゃうって事? : 白狐:そういう事 白狐:武者玉を使って、事を成した後に、魂を貰って天に届ける : 慎也:それじゃ、意味ないじゃない 慎也:誰が使うの、そんなもの : 白狐:そう言うけどな、昔は割と使われたんだぞ。 白狐:そもそも「武者玉」ってのは、大勢の敵を相手に、戦わなきゃならない武者が使うんだ 白狐:どうせ死ぬなら、沢山の敵を倒して、武勲(ぶくん)を立ててから死ぬって感じでな 白狐: 白狐:まぁ、だから、告白には、お勧めしないって言ったんだよ : 慎也:そりゃ、恋が成就しても、死んじゃったら意味ないしね 慎也:あぁ・・・やっぱり、そんな便利なものは、ないか・・ : 白狐:そうガッカリするなよ 白狐:俺が長年の経験で、助言してやるからよ 白狐: 白狐:いいか慎也、まず、女ってのはな・・・ 0: 0:次の日の会社帰り 0: 千秋:今日も遅くなっちゃったわね : 慎也:そうだね : 千秋:今日はまだ、木曜日か・・・ 千秋:あぁーあ、今週の週末、どうしようかなぁ・・・ : 慎也:千秋ちゃん : 千秋:何? : 慎也:今度の日曜日なんだけどさ、 慎也:僕とデ・・ : 千秋:デ? : 慎也:デ・デ・デ・・・ 慎也:デ・・ひぃ・・・ 慎也:デ・デパートで安売りがあるんだってね : 千秋:デパート? 千秋:そうなんだ 千秋:慎也君って、そういう所で、買い物するんだね : 慎也:いや・・・僕も、チラシで見ただけで・・・ははは 慎也:はぁ・・・(ため息) 0: 0: 0:千秋の部屋 0: 千秋:ただいま・・・ 千秋:はぁ・・(ため息) 千秋:もう、慎也君ったら、 千秋:もうちょっとだったのに・・・ 千秋: 千秋:うっ、痛ぁーー(前よりひどい頭痛) 千秋:何か、頭痛が、だんだん酷くなってくる・・ 千秋:嫌だな・・・何かの病気かな・・ 0: 0: 0:慎也の部屋 0: 慎也:ただいま・・・ : 白狐:慎也、どうだった? 白狐:うまくデートに誘えたか? : 慎也:ダメだった・・・ 慎也:やっぱり「いざ」って時に、どうしても、縮(ちぢ)こまっちゃって・・・ : 白狐:そうか・・・ 白狐:俺と話している時の慎也は、それほど腰抜けとも思えないけどなぁ : 慎也:僕も不思議なんだ・・・ : 白狐:まぁ、こういうのは、場数(ばかず)だからな 白狐:次、頑張ればいいさ : 慎也:・・・うん・・そうだね・・・ 0: 0:数日して 0:会社に出社した慎也 0: 慎也:おはようございます。 慎也:あれ? 慎也:今日も斎藤さん、お休みなんですか? 慎也:もう3日ですよね? 慎也:どうしたんだろう・・・ : 白狐:慎也、チャンスだ! : 慎也:あわわわ、白狐、どうしたんだよ突然 慎也:会社の人に聞かれたら・・ : 白狐:それは大丈夫、お前以外には聞こえねぇよ 白狐:そんな事より、慎也、チャンスだぞ! : 慎也:チャンスって何がだよ 慎也:千秋ちゃんは、病気で休んでるんだぞ : 白狐:だから、チャンスなんだよ 白狐:慎也、お見舞いに行け 白狐:病気で弱っている女は、落としやすいぞ : 慎也:そんな姑息(こそく)な・・・ : 白狐:そんな事言ってるからダメなんだよ 白狐:お見舞いに行けよ、絶対に行け! 白狐:昼間の方がいいから、会社は早退しろ 白狐:俺も付いてってやるから : 慎也:えーー分かったよ 0: 0:千秋のアパート付近の公園 0: 慎也:ごめんね、体調悪いのに : 千秋:ううん、私の方こそ、ごめんなさいね 千秋:折角、お見舞いに来てくれたのに、近くの公園でだなんて 千秋:部屋にあがって貰えれば、よかったんだけど 千秋:ちょっと散らかってて・・・ : 慎也:僕の方こそ、ごめん、突然・・・ : 千秋:ううん、嬉しかった・・・・ : 白狐:(無声音)今だ慎也、行け! : 慎也:千秋ちゃん、こんな時に、あれだけど・・・ : 千秋:え? : 慎也:僕と付き合って下さい 千秋:きゃぁ(言葉を遮るように) 千秋:急に風が・・・ : 慎也:また・・・ : 千秋:慎也君、今、何か言った? : 慎也:いや、だから・・ひぃ 慎也: 慎也:・・いや・・なにも・・・ : 千秋:そう・・・ : 白狐:なるほど、そういう事か・・・ : 慎也:千秋ちゃん・・・あの・・ : 千秋:うううう・・痛い(激しい頭痛) : 慎也:大丈夫 : 千秋:ちょっと頭痛が・・・ 千秋:このところ酷くて、起き上がるのも辛い時があるの 千秋:ごめんなさいね、折角、来てくれたのに : 慎也:何言ってんだよ、僕の方こそ、ごめん 慎也:もう、部屋に帰ったほうがいいよ : 千秋:ごめんね、そうさせて貰うわ 千秋:今日は、ありがとう : 慎也:うん、お大事にね・・・ 0: 0:自分の部屋に帰る千秋 0:一人残される慎也 0: 慎也:あぁーあ、やっぱり告白できなかった・・・ 慎也:しかも、千秋ちゃんに、悪い事しちゃったな 慎也:白狐! お前がお見舞いなんて・・ : 白狐:おい、慎也 白狐:あのお嬢ちゃん、死ぬぞ : 慎也:ちょ、何言ってんのさ 慎也:どういう事だよ : 白狐:お前には、見えないかもしれないが 白狐:あの嬢ちゃんには、蛇の怪異が付いている。 : 慎也:蛇の怪異? : 白狐:あぁ、蛇の怪異だ 白狐:あの蛇はな「人恋しくて寂しい女」に取りつくんだ 白狐:そして、ジワジワと弱らせていって、最終的には殺す 白狐:殺した後、その魂を冥界に連れ去っていくんだよ : 慎也:そんな・・・ : 白狐:あのお嬢ちゃんの、体調が悪い原因は、それだな 白狐:それと、 白狐:お前が、あのお嬢ちゃんに近づこうとする度(たび)に、あいつが邪魔をしているのさ 白狐:自分の取りついた得物を、お前に渡したくないんだろうな : 慎也:だから、突然、風が吹いたりしたのか・・・ : 白狐:そういう事だ 白狐:自分の大事な得物(えもの)だからな : 慎也:千秋ちゃんが得物・・・ 慎也:白狐、お前なら、その蛇を何とかできるのか? : 白狐:あぁ、俺なら問題なく倒せる。 白狐:あいつは、それ程強くないからな : 慎也:じゃぁ、頼むよ、白狐 : 白狐:ただ、お嬢ちゃんに取りついている今の状態じゃ 白狐:衝撃が、直接、お嬢ちゃんにも伝わっちまって、 白狐:お嬢ちゃんも、死んじまうよ 白狐:奴を倒すには、お嬢ちゃんから、引き剥(は)がさなきゃいけないな : 慎也:どうやったら、引き剥がせるんだよ : 白狐:慎也が、奴に「この女は俺の得物だ」って見せつけてやればいい 白狐:そうすれば、奴は嫉妬に狂って、お前を殺そうと、あのお嬢ちゃんから離れる : 慎也:でも、見せつけるって、どうやって : 白狐:うーん、例えば 白狐:お前が、あのお嬢ちゃんを抱きしめて「慎也の女」だって言わせればいいんじゃないか? : 慎也:でも、蛇が邪魔してくるんだろ? : 白狐:お前が、奴に負けないくらいの気合で、お嬢ちゃんを抱きしめてやれば、いけるんじゃないか? : 慎也:でも、そんな事・・・ : 白狐:まぁ、お前次第だな 白狐:こうしている間にも、お嬢ちゃんの体力は、どんどん弱っていくぞ : 慎也:僕にはそんな事・・・ 0: 0:暫く考える慎也 0: 慎也:そうだ白狐、俺に武者玉をくれ : 白狐:武者玉を使えば、お前でも、引き剥がすくらいは、出来るだろうけど・・・ 白狐:武者玉を使うって、どういう事か知ってるだろ 白狐:お前の魂と交換だぞ : 慎也:分かってる : 白狐:分かってるって・・・ 白狐:それでお嬢ちゃんは助かるだろうけど 白狐:お前が死んだら、意味がないだろ : 慎也:それでも、千秋ちゃんを、冥界に連れて行かれるよりは、よっぽどましだ : 白狐:でもよ、お嬢ちゃんは悲しむんじゃないか? : 慎也:それは・・・ 慎也:彼女には、ちゃんと説明するよ 慎也:今は、その方法しかないんだろ? : 白狐:確かにな・・・ 白狐: 白狐:わかった 白狐:でも、本当に、それでいいんだな? : 慎也:ああ、いいよ : 白狐:慎也、一つ言っておくが 白狐:武者玉ってのは、それを使う人間の勇気を増幅させるものだ 白狐:だから、元々の勇気がなければ、幾ら武者玉を使ったって、大して効き目はないぞ 白狐:つまり、お前自身がしっかりと勇気を奮い起こさないと 白狐:奴には勝てないって事だ 白狐:やれるのか? : 慎也:え・・・・ 慎也:うん・・分かった、 慎也:や、やるよ : 白狐:わかった、じゃぁ行くぞ 0: 0:千秋の部屋の前まで来る 0: 白狐:ここが、あのお嬢ちゃんの部屋か? : 慎也:うん、ここで間違いない : 白狐:よし、カギは俺が開けてやる 白狐:慎也、覚悟はいいか? 白狐:俺が「武者玉」入れてやるからな : 慎也:うん : 白狐:よし、いけ! 0: 0:パン! 背中をたたく白狐 0: 慎也:よし! いくぞ! 0: 0:白狐が千秋の部屋の鍵を開ける 0:慎也が千秋の部屋のドアを開ける 0: 慎也:千秋ちゃん、入るよ : 千秋:慎也君・・・どうして、痛っ頭が・・(ひどい頭痛) : 慎也:千秋ちゃん 0: 0:千秋に近づこうとするが、蛇が姿を現し、慎也を近づけさせないように邪魔をする 0: 慎也:く・・近づけない 慎也:くそう・・・蛇め・・ : 白狐:お、正体見せやがったな 白狐:慎也、行け! : 慎也:くうううう 慎也:そんな事いっても・・・ : 白狐:何やってんだ、女が持っていかれるぞ : 慎也:うおおお、千秋! 0: 0:千秋を抱きしめる慎也 0: 千秋:慎也君・・・ちょっと、なっ・・ 千秋:そんなに強く・・・ : 慎也:千秋、君は、僕の彼女だ、いいな! : 千秋:え? : 慎也:君は、僕の彼女だ : 千秋:慎也君! : 慎也:千秋、君は、 慎也:僕が「死ぬまで」 慎也:君は、僕の彼女だ : 千秋:慎也君・・ : 慎也:「はい」って言え! : 千秋:慎也(泣きながら) : 慎也:「はい」は! : 千秋:はい! 0: 0:千秋の身体からスッと何かが抜ける 0: 千秋:あ・・・体が・・・ : 慎也:千秋、どうした? 慎也:大丈夫か? : 千秋:あれ? 千秋:痛くない・・・あの頭痛がまるで嘘みたいに 千秋:どうして 千秋:これ、慎也のおかげなの? : 慎也:ま、まぁ・・・ : 千秋:ありがとう : 慎也:苦しかっただろ? 慎也:遅くなってゴメンね : 千秋:ううん・・・ : 白狐:おい慎也、こっちも仕留めたぞ 白狐:見ろ、こんなにでかい蛇だ : 慎也:そっか、良かった 慎也:白狐、お前って、そんな姿をしてたのか : 白狐:へへへ、まぁな 0: 0:そこには大きな蛇を担いだ白狐がいた 0: 千秋:キャぁ! 千秋:何! : 慎也:大丈夫 慎也:あれは、白狐っていう狐の霊だよ : 千秋:白狐? : 慎也:君に取りついていた、あの蛇を見つけてくれて 慎也:退治の仕方まで教えてくれたんだ : 千秋:あの蛇が私に・・・あんなに大きい : 白狐:そうだぜお嬢さん 白狐:もう少しで、あんたは、こいつに殺されるところだったんだ 白狐:でも、その男が勇気をだして、あんたの身体から、この蛇を引っ剥がしたんだよ 白狐:そして、俺が仕留めた訳さ : 千秋:白狐さん 千秋:ありがとうございます。 : 白狐:お礼なら、慎也に言いな 白狐:まさに命がけで戦ったんだ 白狐:そうだろ? : 慎也:う、うん : 千秋:え? 千秋:どういう事? : 慎也:千秋 慎也:君に話さないといけない事があるんだ : 千秋:話さないといけない事? : 慎也:うん 慎也:僕が蛇に立ち向かえたのは、その白狐がくれた「武者玉」のおかげなんだ 慎也:この武者玉を使うと、どんな強大な敵にも、立ち向かう勇気が湧いて来るんだ 慎也:そのかわり・・・ 慎也:僕の魂を、捧げないといけないんだ : 千秋:魂って・・・まさか : 慎也:うん、僕はもう、生きていられないんだ : 千秋:そんな : 慎也:でも、君を助けられてよかった 慎也:だから、僕の命はもういいんだ 慎也:どうしても、君を死なせたくなかったんだよ 慎也:ましてや、あんな蛇なんかに、君を連れて行かせるなんて 慎也:絶対に嫌だったんだ 慎也:だから、後悔はしてないよ : 千秋:そんな、 千秋:幾ら私に命があったって、慎也がいないなら、同じじゃない 千秋:勝手よ、慎也 : 慎也:千秋・・・ごめんね : 千秋:白狐さん! 千秋:何とかする方法は、ないんですか? : 白狐:うーん・・・ 白狐:武者玉が魂と引き換えってのは、俺じゃなくて、もっと上の神様が決めた事だからなぁ 白狐:俺じゃ、何とも出来ないんだよ : 千秋:それじゃ、私の魂を、代わりにする事は出来ないんですか! : 慎也:千秋、ダメだよ折角助かった命なんだ : 千秋:何をいうのよ 千秋:こんな勝手なことやっておいて 千秋:私の気持ちも分からないくせに : 白狐:うーん、 白狐:武者玉は使った人間の魂と交換だからなぁ・・・ 白狐:代わりの人間って訳にはいかないなぁ : 千秋:それなら、私にも武者玉をください! 千秋:私も武者玉を使います 千秋:それなら、慎也と同じでしょ : 慎也:千秋、そんな事しちゃダメだ 慎也:それに、白狐は武者玉を1つしか持ってないから、千秋の分はないよ : 千秋:そんな・・・ 千秋:私はどうすれば : 慎也:千秋には、これからずっと 慎也:俺の分まで、生きて欲しい : 千秋:慎也・・・ : 慎也:千秋、大好きだよ : 白狐:えーと・・・あれだ・・ 白狐:武者玉ならあるよ 白狐:ほら 0: 0:武者玉を見せる白狐 0: 千秋:白狐さん 千秋:それを、私に下さい。 : 慎也:ダメだって千秋 慎也:白狐! 慎也:お前、武者玉は一つしかないって、言ったじゃないか : 白狐:あぁ言ったよ : 慎也:だったらどうして、もう一つ持ってるんだよ : 白狐:だって、お前、武者玉使ってないもん : 慎也:え? : 白狐:言葉の通りだよ 白狐:どうしてもの時に、お前に投げつけてやろうと思ってたけど 白狐:使わずに済んだんだよ : 慎也:どうして、黙ってたんだよ : 白狐:まぁ・・あれだ 白狐:お前たちが、そんなイチャイチャやってるから 白狐:言い出しにくくてな 白狐:悪い悪い 白狐: 白狐:って事で、お嬢ちゃん 白狐:そいつは死なないよ : 千秋:そうですか 千秋:それはよかっ・・・ : 慎也:千秋! 慎也:白狐!、千秋が・・・ : 白狐:気絶しただけだよ、心配ない 白狐:まぁ、安心して緊張の糸が切れたんだろうな : 慎也:そっか : 白狐:まぁ、何せよかったじゃないか 白狐:これで、約束は守れたな 白狐:んじゃ、俺はこいつを持って帰るわ : 慎也:白狐、君のおかげで人生が変わったよ 慎也:本当にありがとう : 白狐:お嬢ちゃんによろしくな 白狐:これから先も上手くやれよ 白狐:じゃぁな 白狐: 白狐の身体が消えていく 0: 0:暫くして 0: 千秋:あれ、私・・・ : 慎也:千秋、気が付いた? : 千秋:慎也・・ : 慎也:よかった、心配してたんだよ : 千秋:さっきまで、私、夢を見てたような 千秋:白い狐と・・・ : 慎也:それは、夢じゃないよ : 千秋:ホント? 千秋:そっか 千秋:夢じゃなかったんだ!! : 慎也:うん : 千秋:慎也・・・ありがとう : 慎也:ううん、千秋、これからもよろしくね : 千秋:うん 0: 0:終わり 0: