台本概要

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タイトル 恋愛成就の処方箋3
作者名 Danzig
ジャンル ラブストーリー
演者人数 3人用台本(男1、女1、不問1)
時間 20 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 オクテで両思いなのに前に進まない男女が、人外の力を借りてカップルになるというファンタジック・ラブストーリーです。

このシリーズの1~4まであります
1:男性主人公編
2:BL編
3:女性主人公編
4:GL編

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
千秋 118 主人公
64 主人公が思いを寄せる同期入社の男性
白狐 不問 65 人外
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0:恋愛成就の処方箋3 女性主人公編 0: 0:同期入社の二人 0:残業を終えて会社からの帰り道 0:女性 斎藤 千秋(さいとう ちあき) 0:男性 沖田 俊(おきた しゅん) 0: 0: 千秋:もう、随分暖かくなって来たね : 俊:うん、そろそろ桜が咲くころだね : 千秋:桜かぁ・・・今年はお花見行きたいよねぇ・・・ : 俊:そうだね・・・ : 千秋:・・・ 千秋:そういえばさ、私達、同期入社して5年経つじゃない 千秋:もう女の同期は、私だけになっちゃったのよ 千秋:皆、結婚しちゃってさ : 俊:そうだね・・・ 俊:男の同期も、転職したりで殆ど残ってないよ : 千秋:そうね・・・ : 俊:うん・・・ 俊: 俊:そうだ、千秋ちゃん今日、晩御飯どうする? 俊:何か食べて帰る? : 千秋:うーん、そうね、行こうかな 俊:うわっ(千秋の声を遮るように) : 俊:急に風が・・・ 俊:目に砂が入っちゃって : 千秋:ちょっと、大丈夫? : 俊:あぁ、何とか取れたよ 俊:春の風は突然ふくからなぁ 俊: 俊:で、どうする? : 千秋:あ・・・いや、今日は辞めておこうかな : 俊:そっか・・・ 俊:じゃぁ、また明日ね 俊:僕、こっちだから : 千秋:う、うん・・じゃぁ・・・ : 俊と別れて一人になる千秋 : 千秋:あああああああ 千秋:どうして「行く」って言わなかったのさ、私! 千秋: 千秋:折角、最初は勇気を出して、行くって言えたのに 千秋:あんな所で、風が吹くなんて・・・ 千秋: 千秋:でも、改めて聞かれたら言えなくなるなんて・・・ホント情けないな・・・ 千秋: 千秋:あぁーあ、俊君との食事が・・・ 千秋:仕方ない・・・コンビニで弁当でも買って帰ろ・・・ 0: 0:見慣れない古い神社の前を通る 0: 千秋:ん? 千秋:何ここ・・・神社? 千秋:何か古い感じだけど・・・ 千秋:赤い鳥居がいくつも連なってて、幻想的というか・・・ 千秋:でも、こんな所に、神社なんてあったかな? 千秋: 千秋:鳥居がずっと奥まで続いてるのね・・・ 千秋:狛犬の代りにキツネ・・・・ 千秋:でも、ここで神社の前を通ったのも、何かの縁だし、拝んでいこうかな・・・ 0: 0:パンパン(柏手) 0: 千秋:俊君と友達になって、もう五年 千秋:どうか、今年こそ、出来れば俊君とお付き合いがしたいです。 千秋:俊君に告白出来るように・・・・私に勇気をください 千秋:というか、俊君が私に告白してくれるというのも「あり」です。 0: 0:パンパン(柏手) 0: 0: 0:俊帰宅(アパートに一人暮らし) 0: 俊:ただいまぁ・・・ 俊:はぁ・・・疲れた・・・ 俊: 俊:あぁ・・千秋ちゃん・・・ 俊: 俊:もうちょっとで食事行けたのに・・・ 俊:あの時、絶対「行く」って言ったよなぁ。 俊: 俊:あああああ、どうしてあの時、聞き返しちゃったんだよ! 俊: 俊:それに、千秋ちゃんも、千秋ちゃんだよ 俊:聞き返したら、帰るっていうなんて・・・ 俊: 俊:折角、勇気を出して誘ったのに・・・・ 俊:はぁ・・・自分が情けない・・ 俊: 俊: 俊:でも、千秋ちゃんって、僕の事どう思ってるんだろう・・・ 俊:やっぱり、ただの友達としか思ってないのかな? 俊: 俊:五年も友達でいるけど、千秋ちゃんの態度を見ても、僕の事嫌ってるわけじゃなさそうだし、 俊:食事とか、遠回しなやりかたじゃなくて、 俊:やっぱり、明日、勇気をだして告白を・・・ 俊:つぅ・・・たたた(頭痛) 俊:また、頭痛が・・・ 俊: 俊:ここ最近、時折この変な頭痛がするんだよ・・ 俊:この頭痛がすると、折角盛り上がった気分がなえちゃうんだよなぁ 俊:ストレスかなぁ・・・ 俊:もう、今日は薬のんで早く寝よ 0: 0: 0:千秋帰宅(アパートに一人暮らし) 0: 0: 千秋:ただいまぁ・・・ 千秋:はぁ・・・疲れた・・・・ 千秋: 千秋:今日も、俊君と食事に行けなかった・・・ 千秋: 千秋:あぁーあ、もう一度誘ってくれないかなぁ・・・ 千秋: 千秋:私から誘おうと思うと、喉が固まっちゃうんだよねぇ 千秋:なんか、蛇に睨まれたカエルというか・・ 千秋:やっぱり、女から誘うってのは勇気がいるよねぇ 千秋: 千秋:それに、タイミングも悪いのよ、急に風が吹いたりとかさ 千秋: 千秋:でも、今日の、お花見の話・・・ 千秋:あれってやっぱり、もっと具体的に言わなきゃダメかなぁ・・・ : 白狐:そんなもん、そうに決まってるだろ! : 千秋:え! 千秋:なに?声? 千秋:どこから? 千秋:えーーーー! : 白狐:まぁ、落ち着け : 千秋:お、お、落ち着ける訳ないでしょ! 千秋:何よ、この声! : 白狐:俺の声だよ 白狐:俺は狐(きつね)、名は白狐(びゃっこ) 白狐:「びゃっこ」って言ってもトラじゃねぇからな 白狐:あんな猫と、一緒にするんじゃねぇぞ : 千秋:狐? 千秋:何で、声だけ聞こえるのよ : 白狐:俺は霊だからな、 白狐:まぁ、そのうち、お前にも姿を見せてやるよ : 千秋:霊? 幽霊! : 白狐:霊って言っても、別にお前を取って食うわけじゃねぇよ。 白狐:俺は、お前が頼むから、わざわざ、来てやったんじゃないか : 千秋:私は、幽霊なんかに、ものを頼んでないわよ : 白狐:幽霊じゃねぇよ! 白狐:まぁ、細かい事は、面倒だからいいや。 白狐:お前、今日の会社帰りに、神社に寄(よ)って、お参(まい)りしただろ? 白狐:んでもって、「勇気をください」とかって、願掛(がんか)けしただろ? : 千秋:まぁ、たしかに、頼んだけど・・・ : 白狐:だから、来てやったんじゃねぇか 白狐:お前、何とか君(くん)と、デートしたいんだろ? 白狐:だったら、俺が協力してやるよ : 千秋:ホント? : 白狐:あぁ、そうさ 白狐:だから、大丈夫だ、 白狐:俺が、何とかしてやる 白狐:で、お前、名前は? : 千秋:私は千秋・・・ : 白狐:千秋、お前は、勇気が欲しいんだって? 白狐:でも、勇気なんて、お前次第だからなぁ・・・ : 千秋:そうなんだけど、何かないの? 千秋:道具とか薬とか・・・ : 白狐:まぁ、そういうのが、あることは、あるんだが・・ 白狐:お勧めはしないぞ : 千秋:そんなのがあるなら、教えてよ 千秋:どんなの? : 白狐:うーん、「武者玉(むしゃだま)」って言うんだけどな 白狐:ほら、こんなやつ 0: 0:武者玉を取り出して見せる白狐 0: 千秋:光る玉が、浮いてる・・・ : 白狐:あぁ、これを使うと、勇気が千倍になる 白狐:今は、これ一つしかないがな : 千秋:何それ! 凄いじゃない 千秋:私に使わせてよ! : 白狐:ただし、これを使うには、条件があるんだよ。 白狐:使う人間の魂と交換しなきゃいけないんだ : 千秋:魂と交換? 千秋:それって死んじゃうって事? : 白狐:そういう事 白狐:武者玉を使って、事を成した後に、魂を貰(もら)って天に届ける : 千秋:それじゃ、意味ないじゃない 千秋:誰が使うの、そんなもの : 白狐:そう言うけどな、昔は割と使われたんだぞ。 白狐:そもそも「武者玉」ってのは、大勢の敵を相手に、戦わなきゃならない武者が使うんだ 白狐:どうせ死ぬなら、沢山の敵を倒して、武勲(ぶくん)を立ててから死ぬって感じでな 白狐: 白狐:まぁ、だから、告白には、お勧めしないって言ったんだよ : 千秋:そりゃ、恋が成就しても、死んじゃったら意味ないしね 千秋:あぁ・・・やっぱり、そんな便利なものは、ないか・・ : 白狐:そうガッカリするなよ 白狐:俺が長年の経験で、助言してやるからよ 白狐: 白狐:いいか千秋、やっぱり女から誘うと、男ってのは嬉しいもんだ 白狐:そもそも、男ってのはな・・・ 0: 0:次の日の会社帰り 0: 俊:今日も遅くなっちゃったね : 千秋:そうだね 千秋: 千秋:(心の声) 千秋:俊君、デートに行こう、俊君、デートに行こう、俊君、デートに行こう・・・・ : 俊:今日はまだ、木曜日か・・・ 俊:あぁーあ、今週の週末、どうしようかなぁ・・・ : 千秋:俊君・・・ : 俊:何? : 千秋:今度の日曜日なんだけどさ、 千秋:私と、デ・・ : 俊:デ? : 千秋:デ・デ・デ・・・ 千秋:デ・・ひぃ・・・ 千秋:デ・デパートで安売りがあるのよ、行かなきゃなぁって・・・ : 俊:デパート? 俊:千秋ちゃんって、そういう所で、買い物するんだね : 千秋:いや・・・私も、ほら、チラシで見ただけで・・・ははは 千秋:はぁ・・・(ため息) : 俊:そっか・・・ 0: 0:俊が意を決したように 0: 俊:それじゃぁさ、千秋ちゃん 俊:週末、僕とあそ・・う(頭痛の痛み)・・ : 千秋:え? 0: 0:痛みをこらえる俊 0: 俊:・・・・ : 千秋:大丈夫? : 俊:うん、大丈夫・・・ 俊:今日はもう帰るよ、じゃぁ、また : 千秋:うん・・・ 0: 0:俊の部屋 0: 俊:ただいま・・・ 俊:はぁ・・(ため息) 俊:もう、千秋ちゃん! 俊:もうちょっとだったのに・・・ 俊: 俊:千秋ちゃんのあれは、絶対「デート!」だったでしょ。 俊:こっちはOKの準備して待ってたのに・・・ 俊: 俊:あの時の千秋ちゃんの顔、可愛かったなぁ・・ 俊:デートしたかったなぁ・・・ 俊: 俊:っていうか、俺からも誘うと思ったんだけど 俊:急に頭痛がするんだもんなぁ・・・ 俊:タイミング悪いよなぁ 俊: 俊:やっぱり、もう一度、勇気を出した千秋ちゃんに告白を・・・ 俊:うっ、痛ぁーー(前よりひどい頭痛) 俊:何か、頭痛が、だんだん酷くなってくる・・ 俊:嫌だな・・・何かの病気だろうか・・ 俊: 俊:今度、病院に行ってみようかなぁ 俊:今日はとりあえず、薬飲んで、もう寝よう 俊:明日までに治ってるといいけど・・・ 0: 0: 0:千秋の部屋 0: 千秋:ただいま・・・ : 白狐:千秋、どうだった? 白狐:うまくデートに誘えたか? : 千秋:ダメだった・・・ 千秋:やっぱり「いざ」って時に、どうしても、縮(ちぢ)こまっちゃって・・・ : 白狐:そうか・・・ 白狐:俺と話している時の千秋は、それほど勇気がないとも思えないけどなぁ : 千秋:私も不思議でさ・・・ : 白狐:まぁ、でも、こういうのは、場数(ばかず)だからな 白狐:次、頑張ればいいさ : 千秋:次って言ってもさ、あんまり女から誘うのも・・・ 千秋:なんか「飢えてる女」みたいに見えないかなぁ : 白狐:そんな事気にしてどうすんだよ 白狐:お目当ての兄ちゃんと、付き合いたいんだろ? : 千秋:やっぱ見えるんだ・・・・ : 白狐:いやいや、大丈夫だって : 千秋:・・・うん・・そうかなぁ・・・ 0: 0:数日して 0:会社に出社した千秋 0: 千秋:おはようございます。 千秋:あれ? 千秋:今日も沖田さん、お休みなんですか? 千秋:もう3日ですよね? 千秋:どうしたんだろう・・・ : 白狐:千秋、チャンスだ! : 千秋:あわわわ、白狐、どうしたのよ突然 千秋:会社の人に聞かれたら・・ : 白狐:それは大丈夫、お前以外には聞こえねぇよ 白狐:そんな事より、千秋、チャンスだぞ! : 千秋:チャンスって何がよ 千秋:俊君は、病気で休んでるんだよ : 白狐:だから、チャンスなんだよ 白狐:千秋、お見舞いに行け 白狐:病気で弱っている人間は、落としやすいぞ : 千秋:そんな姑息(こそく)な・・・ : 白狐:そんな事言ってるからダメなんだよ 白狐:お見舞いに行けよ、絶対に行け! 白狐:昼間の方がいいから、会社は早退しろ 白狐:俺も付いてってやるから : 千秋:えーー分かったよ 0: 0:俊のアパート付近の公園 0: 千秋:ごめんね、体調悪いのに : 俊:ううん、僕の方こそ、ごめんね 俊:折角、お見舞いに来てくれたのに、近くの公園でだなんて 俊:部屋にあがって貰えればよかったんだけど、 俊:今、部屋がかなり散らかってて、女の子に見せられる状態じゃないんだ・・・ : 千秋:ううん、私の方こそ、ごめんね、突然・・・ : 俊:そんな事ないよ、 俊:千秋ちゃんがお見舞いに来てくれて、嬉しかったよ・・・・ : 白狐:(無声音)今だ千秋、行け! : 千秋:俊君、こんな時に、あれだけどさ・・・ : 俊:え? : 千秋:私、俊君の事が好きなの 俊:うわっ(言葉を遮るように) 俊:急に風が・・・ : 千秋:また・・・ : 俊:千秋ちゃん、今、何か言った? : 千秋:いや、だから・・ひぃ 千秋: 千秋:・・いや・・なにも・・・ : 俊:そう・・・ : 白狐:なるほど、そういう事か・・・ : 千秋:俊君・・・えっと・・ : 俊:うううう・・痛い(激しい頭痛) : 千秋:大丈夫? : 俊:ちょっと頭痛が・・・ 俊:このところ酷くてさ、起き上がるのも辛い時があるんだ : 千秋:そうなんだ・・ : 俊:うん、ごめんね千秋ちゃん、折角、お見舞いに来てくれたのに : 千秋:何言ってるのよ、私の方こそ、ごめんね 千秋:もう、部屋に帰ったほうがいいよ : 俊:ごめん、そうさせて貰うよ 俊:今日は、来てくれてありがとうね 俊:会社の人にも、「迷惑かけてすみません」って伝えておいてくれないかな : 千秋:うん、分かった・・ 千秋:お大事にね・・・ 0: 0:自分の部屋に帰る俊 0:一人残される千秋 0: 千秋:あぁーあ、やっぱり告白できなかった・・・ 千秋:しかも、俊君に、悪い事しちゃったよ 千秋:白狐! あなたがお見舞いなんて・・ : 白狐:おい、千秋 白狐:あの兄ちゃん、死ぬぞ : 千秋:ちょ、何言ってんのよ 千秋:どういう事? : 白狐:お前には、見えないかもしれないが 白狐:あの兄ちゃんには、蛇の怪異が付いている。 : 千秋:蛇の怪異? : 白狐:あぁ、蛇の怪異だ 白狐:あの蛇はな「人恋しくて寂しい人間」に取りつくんだ 白狐:そして、ジワジワと弱らせていって、最終的には殺す。 白狐:殺した後、その魂を冥界に連れ去っていくんだよ。 : 千秋:そんな・・・ : 白狐:あの兄ちゃんの体調が悪い原因は、それだな 白狐:それと、 白狐:お前が、あの兄ちゃんに近づこうとする度(たび)に、あいつが邪魔をしているのさ 白狐:自分の取りついた得物を、お前に渡したくないんだろうな : 千秋:だから、突然、風が吹いたりしたのか・・・ : 白狐:そういう事だ 白狐:自分の大事な得物(えもの)だからな : 千秋:俊君が得物・・・ 千秋:白狐、あなたなら、その蛇を何とかできる? : 白狐:あぁ、俺なら問題なく倒せる。 白狐:あいつは、それ程強くないからな : 千秋:じゃぁ、お願いよ、白狐 千秋:俊君を助けてあげて : 白狐:ただ、あの兄(にい)ちゃんに取りついている今の状態じゃ 白狐:衝撃が、直接、兄ちゃんも伝わっちまって、 白狐:兄ちゃんも、死んじまうよ 白狐:奴を倒すには、まず、兄ちゃんから、奴を引き剥(は)がさなきゃいけないな : 千秋:どうやったら、引き剥がせるの? : 白狐:千秋が、奴に「こいつは私の得物だ」って見せつけてやればいい 白狐:そうすれば、奴は嫉妬に狂って、お前を殺そうと、あの兄ちゃんから離れる : 千秋:でも、見せつけるって、どうやって : 白狐:うーん、例えば 白狐:お前が、あの兄ちゃんを抱きしめて「千秋の恋人」だって言わせればいいんじゃないか? : 千秋:え?、女の私から? 千秋:そんなの恥ずかしいよ・・・ : 白狐:そんな事言ってる場合じゃないだろ? : 千秋:そうだけど・・・ 千秋:でも、それに、あの蛇が邪魔してくるでしょ? : 白狐:お前が、奴に負けないくらいの気合で、兄ちゃんを抱きしめてやれば、いけるんじゃないか? 白狐:これは、腕力じゃなくて勇気の問題だからな、女の千秋にだってやれる筈(はず)さ。 : 千秋:でも、そんな事・・・ : 白狐:まぁ、お前次第だな 白狐:こうしている間にも、あの兄ちゃんの体力は、どんどん弱っていくぞ : 千秋:私にはそんな勇気・・・ 0: 0:暫く考える千秋 0: 千秋:そうだ白狐、私に武者玉を頂戴! : 白狐:そりゃ、武者玉を使えば、千秋でも、引き剥がすくらいは、出来るだろうけど・・・ 白狐:武者玉を使うって、どういう事か知ってるだろ 白狐:お前の魂と交換だぞ : 千秋:分かってる : 白狐:分かってるって・・・ 白狐:それでお兄ちゃんは助かるだろうけど 白狐:千秋が死んだら、意味がないだろ : 千秋:それでも、俊君を冥界に連れて行かれるよりは、よっぽどましよ。 : 白狐:でもよ、兄ちゃんは悲しむんじゃないか? : 千秋:それは・・・ 千秋:彼には、ちゃんと説明するよ 千秋:今は、その方法しかないでしょ? : 白狐:確かにな・・・ 白狐: 白狐:わかった 白狐:でも、本当に、それでいいんだな? : 千秋:ええ、いいよ : 白狐:千秋、一つ言っておくが 白狐:武者玉ってのは、それを使う人間の勇気を増幅させるものだ 白狐:だから、元々の勇気がなければ、幾ら武者玉を使ったって、大して効き目はないぞ 白狐:つまり、お前自身がしっかりと勇気を奮い起こさないと 白狐:奴には勝てないって事だ 白狐:やれるのか? : 千秋:え・・・・ 千秋:うん・・分かった、 千秋:や、やるよ : 白狐:わかった、じゃぁ行くぞ 0: 0:俊の部屋の前まで来る 0: 白狐:ここが、あの兄ちゃんの部屋か? : 千秋:うん、ここで間違いないはず : 白狐:よし、カギは俺が開けてやる 白狐:千秋、覚悟はいいか? 白狐:俺が「武者玉」入れてやるからな : 千秋:うん : 白狐:よし、いけ! 0: 0:パン! 背中をたたく白狐 0: 千秋:よし! いくよ! 0: 0:白狐が俊の部屋の鍵を開ける 0:千秋が俊の部屋のドアを開ける 0: 千秋:俊君、入るわよ : 俊:千秋ちゃん・・・どうして、痛っ頭が・・(ひどい頭痛) : 千秋:俊君! 0: 0:俊に近づこうとするが、蛇が姿を現し、千秋を近づけさせないように邪魔をする 0: 千秋:う・・近づけない 千秋:もう・・・蛇め・・ : 白狐:お、正体見せやがったな 白狐:千秋、行け! : 千秋:うううう 千秋:そんな事いっても・・・ : 白狐:何やってんだ、好きな男が持っていかれるぞ : 千秋:あああ、俊君! 0: 0:俊を抱きしめる千秋 0: 俊:千秋ちゃん・・・ちょっ・・・ 俊:どうしたんだよ、抱きついたりして・・・ : 千秋:俊君、あなたは、私の恋人よ、いいね! : 俊:え? : 千秋:あなたは、私の恋人なの : 俊:千秋ちゃん、どうしt・・ : 千秋:俊君、あなたは、 千秋:私が「死ぬまで」 千秋:あなたは、私の恋人よ : 俊:千秋・・ : 千秋:「恋人だ」って言って! : 俊:あぁ・・・ : 千秋:言って! : 俊:僕は千秋の恋人だ! 0: 0:俊の身体からスッと何かが抜ける 0: 俊:あ・・・体が・・・ : 千秋:俊君、どうしたの? 千秋:大丈夫? : 俊:あれ? 俊:痛くない・・・あの頭痛がまるで嘘みたいに 俊:どうして 俊:これ、千秋ちゃんのおかげなの? : 千秋:ま、まぁ・・・ : 俊:ありがとう : 千秋:苦しかったでしょ? 千秋:遅くなってゴメンね : 俊:ううん・・・ : 白狐:おい千秋、こっちも仕留めたぞ 白狐:見ろ、こんなにでかい蛇だ : 千秋:そっか、良かった・・って、そんな蛇をこっちに見せないでよ、もう・・ : 白狐:ごめん、ごめん、ははは : 千秋:白狐、あなたって、そんな姿をしてたのね : 白狐:へへへ、まぁな 0: 0:そこには大きな蛇を担いだ白狐がいた 0: 俊:うわぁ! 俊:何っ! 俊:誰! : 千秋:大丈夫。 千秋:あれは、白狐っていう狐の霊よ : 俊:白狐? : 千秋:俊君に取りついていた、あの蛇を見つけてくれて 千秋:退治の仕方まで教えてくれたんだ : 俊:あの蛇が僕に・・・あんなに大きい : 白狐:そうだぜ兄ちゃん 白狐:もう少しで、あんたは、こいつに殺されるところだったんだ 白狐:でも、その女が勇気をだして、あんたの身体から、この蛇を引っ剥がしたんだよ 白狐:そして、俺が仕留めたって訳さ : 俊:白狐さん 俊:ありがとうございます。 : 白狐:お礼なら、千秋に言いな 白狐:まさに命がけで戦ったんだ 白狐:そうだろ? : 千秋:う、うん : 俊:え? 俊:どういう事? : 千秋:俊君・・・ 千秋:実は、俊君に話さなきゃいけない事があるんだ : 俊:話さないといけない事? : 千秋:うん 千秋:私が蛇に立ち向かえたのは、その白狐がくれた「武者玉」のおかげなんだ 千秋:この武者玉を使うと、どんな強大な敵にも、立ち向かう勇気が湧いて来るの 千秋:そのかわり・・・ 千秋:私の魂を、捧げないといけないの : 俊:魂って・・・まさか : 千秋:うん、私はもう、生きていられないだ : 俊:そんな : 千秋:でも、俊君を助けられてよかった 千秋:だから、私の命はもういいんだ 千秋:どうしても、俊君を死なせたくなかったの 千秋:ましてや、あんな蛇なんかに、俊君を連れて行かせるなんて 千秋:絶対に嫌だった 千秋:だから、後悔はしてないよ : 俊:そんな、 俊:幾ら僕に命があったって、千秋ちゃんがいないなら、同じじゃないか 俊:勝手だよ、千秋ちゃん : 千秋:俊君・・・ごめんね : 俊:白狐さん! 俊:何とかする方法は、ないんですか? : 白狐:うーん・・・ 白狐:武者玉が魂と引き換えってのは、俺じゃなくて、もっと上の神様が決めた事だからなぁ 白狐:俺じゃ、何とも出来ないんだよ : 俊:それじゃ、僕の魂を、代わりにする事は出来ないんですか! : 千秋:俊君、ダメだよ折角助かった命なんだから : 俊:何をいうんだよ 俊:こんな勝手なことやっておいて 俊:僕の気持ちも分かってよ : 白狐:うーん、 白狐:武者玉は使った人間の魂と交換だからなぁ・・・ 白狐:代わりの人間って訳にはいかないなぁ : 俊:それなら、僕にも武者玉をくれないか! 俊:僕も武者玉を使う 俊:それなら、千秋ちゃんと同じだろ : 千秋:俊君、そんな事しちゃダメ 千秋:それに、白狐は武者玉を1つしか持ってないから、俊君の分はないよ : 俊:そんな・・・ 俊:僕はどうすれば : 千秋:俊君には、これからずっと 千秋:私の分まで、生きて欲しい : 俊:千秋ちゃん・・・ : 千秋:俊君、大好きだよ : 白狐:えーと・・・なんだ・・・その・・・あれだ・・ 白狐:武者玉ならあるよ 白狐:ほら 0: 0:武者玉を見せる白狐 0: 俊:白狐さん 俊:それを、僕に下さい。 : 千秋:ダメだって俊君 千秋:白狐! 千秋:あなた、武者玉は一つしかないって、言ったじゃない : 白狐:あぁ言ったよ : 千秋:だったらどうして、もう一つ持ってるのよ : 白狐:だって、お前、武者玉使ってないもん : 千秋:え? : 白狐:言葉の通りだよ 白狐:どうしてもの時に、お前に投げつけてやろうと思ってたけど 白狐:使わずに済んだんだよ : 千秋:どうして、黙ってたの : 白狐:まぁ・・あれだ 白狐:お前たちが、そんなイチャイチャやってるから 白狐:言い出しにくくてな 白狐:悪い悪い : 千秋:イチャイチャって・・・ : 白狐:って事で、兄ちゃん 白狐:そいつは死なないよ : 俊:そうか 俊:それはよかった・・・ : 白狐:千秋、これで、約束は守れたな 白狐:んじゃ、俺はこいつを持って帰るわ : 千秋:白狐、あなたのおかげで人生が変えられた 千秋:本当にありがとう : 白狐:これから先も上手くやれよ 白狐:じゃぁな : 白狐の身体が消えていく : 俊:千秋ちゃん、 俊:僕、なんか、夢を見ているみたいだ : 千秋:これは、夢じゃないよ : 俊:そっか 俊:やっぱり夢じゃないんだ : 千秋:ええ : 俊:千秋ちゃん・・・ありがとう : 千秋:ううん : 俊:千秋ちゃん・・・これからもよろしくね : 千秋:・・・うん : 俊:千秋、大好きだよ : 千秋:私・・・も : 俊:千秋 : 千秋:え? : 俊:チュ(唇に軽いキスをする) 0: 0:終わり 0:

0: 0:恋愛成就の処方箋3 女性主人公編 0: 0:同期入社の二人 0:残業を終えて会社からの帰り道 0:女性 斎藤 千秋(さいとう ちあき) 0:男性 沖田 俊(おきた しゅん) 0: 0: 千秋:もう、随分暖かくなって来たね : 俊:うん、そろそろ桜が咲くころだね : 千秋:桜かぁ・・・今年はお花見行きたいよねぇ・・・ : 俊:そうだね・・・ : 千秋:・・・ 千秋:そういえばさ、私達、同期入社して5年経つじゃない 千秋:もう女の同期は、私だけになっちゃったのよ 千秋:皆、結婚しちゃってさ : 俊:そうだね・・・ 俊:男の同期も、転職したりで殆ど残ってないよ : 千秋:そうね・・・ : 俊:うん・・・ 俊: 俊:そうだ、千秋ちゃん今日、晩御飯どうする? 俊:何か食べて帰る? : 千秋:うーん、そうね、行こうかな 俊:うわっ(千秋の声を遮るように) : 俊:急に風が・・・ 俊:目に砂が入っちゃって : 千秋:ちょっと、大丈夫? : 俊:あぁ、何とか取れたよ 俊:春の風は突然ふくからなぁ 俊: 俊:で、どうする? : 千秋:あ・・・いや、今日は辞めておこうかな : 俊:そっか・・・ 俊:じゃぁ、また明日ね 俊:僕、こっちだから : 千秋:う、うん・・じゃぁ・・・ : 俊と別れて一人になる千秋 : 千秋:あああああああ 千秋:どうして「行く」って言わなかったのさ、私! 千秋: 千秋:折角、最初は勇気を出して、行くって言えたのに 千秋:あんな所で、風が吹くなんて・・・ 千秋: 千秋:でも、改めて聞かれたら言えなくなるなんて・・・ホント情けないな・・・ 千秋: 千秋:あぁーあ、俊君との食事が・・・ 千秋:仕方ない・・・コンビニで弁当でも買って帰ろ・・・ 0: 0:見慣れない古い神社の前を通る 0: 千秋:ん? 千秋:何ここ・・・神社? 千秋:何か古い感じだけど・・・ 千秋:赤い鳥居がいくつも連なってて、幻想的というか・・・ 千秋:でも、こんな所に、神社なんてあったかな? 千秋: 千秋:鳥居がずっと奥まで続いてるのね・・・ 千秋:狛犬の代りにキツネ・・・・ 千秋:でも、ここで神社の前を通ったのも、何かの縁だし、拝んでいこうかな・・・ 0: 0:パンパン(柏手) 0: 千秋:俊君と友達になって、もう五年 千秋:どうか、今年こそ、出来れば俊君とお付き合いがしたいです。 千秋:俊君に告白出来るように・・・・私に勇気をください 千秋:というか、俊君が私に告白してくれるというのも「あり」です。 0: 0:パンパン(柏手) 0: 0: 0:俊帰宅(アパートに一人暮らし) 0: 俊:ただいまぁ・・・ 俊:はぁ・・・疲れた・・・ 俊: 俊:あぁ・・千秋ちゃん・・・ 俊: 俊:もうちょっとで食事行けたのに・・・ 俊:あの時、絶対「行く」って言ったよなぁ。 俊: 俊:あああああ、どうしてあの時、聞き返しちゃったんだよ! 俊: 俊:それに、千秋ちゃんも、千秋ちゃんだよ 俊:聞き返したら、帰るっていうなんて・・・ 俊: 俊:折角、勇気を出して誘ったのに・・・・ 俊:はぁ・・・自分が情けない・・ 俊: 俊: 俊:でも、千秋ちゃんって、僕の事どう思ってるんだろう・・・ 俊:やっぱり、ただの友達としか思ってないのかな? 俊: 俊:五年も友達でいるけど、千秋ちゃんの態度を見ても、僕の事嫌ってるわけじゃなさそうだし、 俊:食事とか、遠回しなやりかたじゃなくて、 俊:やっぱり、明日、勇気をだして告白を・・・ 俊:つぅ・・・たたた(頭痛) 俊:また、頭痛が・・・ 俊: 俊:ここ最近、時折この変な頭痛がするんだよ・・ 俊:この頭痛がすると、折角盛り上がった気分がなえちゃうんだよなぁ 俊:ストレスかなぁ・・・ 俊:もう、今日は薬のんで早く寝よ 0: 0: 0:千秋帰宅(アパートに一人暮らし) 0: 0: 千秋:ただいまぁ・・・ 千秋:はぁ・・・疲れた・・・・ 千秋: 千秋:今日も、俊君と食事に行けなかった・・・ 千秋: 千秋:あぁーあ、もう一度誘ってくれないかなぁ・・・ 千秋: 千秋:私から誘おうと思うと、喉が固まっちゃうんだよねぇ 千秋:なんか、蛇に睨まれたカエルというか・・ 千秋:やっぱり、女から誘うってのは勇気がいるよねぇ 千秋: 千秋:それに、タイミングも悪いのよ、急に風が吹いたりとかさ 千秋: 千秋:でも、今日の、お花見の話・・・ 千秋:あれってやっぱり、もっと具体的に言わなきゃダメかなぁ・・・ : 白狐:そんなもん、そうに決まってるだろ! : 千秋:え! 千秋:なに?声? 千秋:どこから? 千秋:えーーーー! : 白狐:まぁ、落ち着け : 千秋:お、お、落ち着ける訳ないでしょ! 千秋:何よ、この声! : 白狐:俺の声だよ 白狐:俺は狐(きつね)、名は白狐(びゃっこ) 白狐:「びゃっこ」って言ってもトラじゃねぇからな 白狐:あんな猫と、一緒にするんじゃねぇぞ : 千秋:狐? 千秋:何で、声だけ聞こえるのよ : 白狐:俺は霊だからな、 白狐:まぁ、そのうち、お前にも姿を見せてやるよ : 千秋:霊? 幽霊! : 白狐:霊って言っても、別にお前を取って食うわけじゃねぇよ。 白狐:俺は、お前が頼むから、わざわざ、来てやったんじゃないか : 千秋:私は、幽霊なんかに、ものを頼んでないわよ : 白狐:幽霊じゃねぇよ! 白狐:まぁ、細かい事は、面倒だからいいや。 白狐:お前、今日の会社帰りに、神社に寄(よ)って、お参(まい)りしただろ? 白狐:んでもって、「勇気をください」とかって、願掛(がんか)けしただろ? : 千秋:まぁ、たしかに、頼んだけど・・・ : 白狐:だから、来てやったんじゃねぇか 白狐:お前、何とか君(くん)と、デートしたいんだろ? 白狐:だったら、俺が協力してやるよ : 千秋:ホント? : 白狐:あぁ、そうさ 白狐:だから、大丈夫だ、 白狐:俺が、何とかしてやる 白狐:で、お前、名前は? : 千秋:私は千秋・・・ : 白狐:千秋、お前は、勇気が欲しいんだって? 白狐:でも、勇気なんて、お前次第だからなぁ・・・ : 千秋:そうなんだけど、何かないの? 千秋:道具とか薬とか・・・ : 白狐:まぁ、そういうのが、あることは、あるんだが・・ 白狐:お勧めはしないぞ : 千秋:そんなのがあるなら、教えてよ 千秋:どんなの? : 白狐:うーん、「武者玉(むしゃだま)」って言うんだけどな 白狐:ほら、こんなやつ 0: 0:武者玉を取り出して見せる白狐 0: 千秋:光る玉が、浮いてる・・・ : 白狐:あぁ、これを使うと、勇気が千倍になる 白狐:今は、これ一つしかないがな : 千秋:何それ! 凄いじゃない 千秋:私に使わせてよ! : 白狐:ただし、これを使うには、条件があるんだよ。 白狐:使う人間の魂と交換しなきゃいけないんだ : 千秋:魂と交換? 千秋:それって死んじゃうって事? : 白狐:そういう事 白狐:武者玉を使って、事を成した後に、魂を貰(もら)って天に届ける : 千秋:それじゃ、意味ないじゃない 千秋:誰が使うの、そんなもの : 白狐:そう言うけどな、昔は割と使われたんだぞ。 白狐:そもそも「武者玉」ってのは、大勢の敵を相手に、戦わなきゃならない武者が使うんだ 白狐:どうせ死ぬなら、沢山の敵を倒して、武勲(ぶくん)を立ててから死ぬって感じでな 白狐: 白狐:まぁ、だから、告白には、お勧めしないって言ったんだよ : 千秋:そりゃ、恋が成就しても、死んじゃったら意味ないしね 千秋:あぁ・・・やっぱり、そんな便利なものは、ないか・・ : 白狐:そうガッカリするなよ 白狐:俺が長年の経験で、助言してやるからよ 白狐: 白狐:いいか千秋、やっぱり女から誘うと、男ってのは嬉しいもんだ 白狐:そもそも、男ってのはな・・・ 0: 0:次の日の会社帰り 0: 俊:今日も遅くなっちゃったね : 千秋:そうだね 千秋: 千秋:(心の声) 千秋:俊君、デートに行こう、俊君、デートに行こう、俊君、デートに行こう・・・・ : 俊:今日はまだ、木曜日か・・・ 俊:あぁーあ、今週の週末、どうしようかなぁ・・・ : 千秋:俊君・・・ : 俊:何? : 千秋:今度の日曜日なんだけどさ、 千秋:私と、デ・・ : 俊:デ? : 千秋:デ・デ・デ・・・ 千秋:デ・・ひぃ・・・ 千秋:デ・デパートで安売りがあるのよ、行かなきゃなぁって・・・ : 俊:デパート? 俊:千秋ちゃんって、そういう所で、買い物するんだね : 千秋:いや・・・私も、ほら、チラシで見ただけで・・・ははは 千秋:はぁ・・・(ため息) : 俊:そっか・・・ 0: 0:俊が意を決したように 0: 俊:それじゃぁさ、千秋ちゃん 俊:週末、僕とあそ・・う(頭痛の痛み)・・ : 千秋:え? 0: 0:痛みをこらえる俊 0: 俊:・・・・ : 千秋:大丈夫? : 俊:うん、大丈夫・・・ 俊:今日はもう帰るよ、じゃぁ、また : 千秋:うん・・・ 0: 0:俊の部屋 0: 俊:ただいま・・・ 俊:はぁ・・(ため息) 俊:もう、千秋ちゃん! 俊:もうちょっとだったのに・・・ 俊: 俊:千秋ちゃんのあれは、絶対「デート!」だったでしょ。 俊:こっちはOKの準備して待ってたのに・・・ 俊: 俊:あの時の千秋ちゃんの顔、可愛かったなぁ・・ 俊:デートしたかったなぁ・・・ 俊: 俊:っていうか、俺からも誘うと思ったんだけど 俊:急に頭痛がするんだもんなぁ・・・ 俊:タイミング悪いよなぁ 俊: 俊:やっぱり、もう一度、勇気を出した千秋ちゃんに告白を・・・ 俊:うっ、痛ぁーー(前よりひどい頭痛) 俊:何か、頭痛が、だんだん酷くなってくる・・ 俊:嫌だな・・・何かの病気だろうか・・ 俊: 俊:今度、病院に行ってみようかなぁ 俊:今日はとりあえず、薬飲んで、もう寝よう 俊:明日までに治ってるといいけど・・・ 0: 0: 0:千秋の部屋 0: 千秋:ただいま・・・ : 白狐:千秋、どうだった? 白狐:うまくデートに誘えたか? : 千秋:ダメだった・・・ 千秋:やっぱり「いざ」って時に、どうしても、縮(ちぢ)こまっちゃって・・・ : 白狐:そうか・・・ 白狐:俺と話している時の千秋は、それほど勇気がないとも思えないけどなぁ : 千秋:私も不思議でさ・・・ : 白狐:まぁ、でも、こういうのは、場数(ばかず)だからな 白狐:次、頑張ればいいさ : 千秋:次って言ってもさ、あんまり女から誘うのも・・・ 千秋:なんか「飢えてる女」みたいに見えないかなぁ : 白狐:そんな事気にしてどうすんだよ 白狐:お目当ての兄ちゃんと、付き合いたいんだろ? : 千秋:やっぱ見えるんだ・・・・ : 白狐:いやいや、大丈夫だって : 千秋:・・・うん・・そうかなぁ・・・ 0: 0:数日して 0:会社に出社した千秋 0: 千秋:おはようございます。 千秋:あれ? 千秋:今日も沖田さん、お休みなんですか? 千秋:もう3日ですよね? 千秋:どうしたんだろう・・・ : 白狐:千秋、チャンスだ! : 千秋:あわわわ、白狐、どうしたのよ突然 千秋:会社の人に聞かれたら・・ : 白狐:それは大丈夫、お前以外には聞こえねぇよ 白狐:そんな事より、千秋、チャンスだぞ! : 千秋:チャンスって何がよ 千秋:俊君は、病気で休んでるんだよ : 白狐:だから、チャンスなんだよ 白狐:千秋、お見舞いに行け 白狐:病気で弱っている人間は、落としやすいぞ : 千秋:そんな姑息(こそく)な・・・ : 白狐:そんな事言ってるからダメなんだよ 白狐:お見舞いに行けよ、絶対に行け! 白狐:昼間の方がいいから、会社は早退しろ 白狐:俺も付いてってやるから : 千秋:えーー分かったよ 0: 0:俊のアパート付近の公園 0: 千秋:ごめんね、体調悪いのに : 俊:ううん、僕の方こそ、ごめんね 俊:折角、お見舞いに来てくれたのに、近くの公園でだなんて 俊:部屋にあがって貰えればよかったんだけど、 俊:今、部屋がかなり散らかってて、女の子に見せられる状態じゃないんだ・・・ : 千秋:ううん、私の方こそ、ごめんね、突然・・・ : 俊:そんな事ないよ、 俊:千秋ちゃんがお見舞いに来てくれて、嬉しかったよ・・・・ : 白狐:(無声音)今だ千秋、行け! : 千秋:俊君、こんな時に、あれだけどさ・・・ : 俊:え? : 千秋:私、俊君の事が好きなの 俊:うわっ(言葉を遮るように) 俊:急に風が・・・ : 千秋:また・・・ : 俊:千秋ちゃん、今、何か言った? : 千秋:いや、だから・・ひぃ 千秋: 千秋:・・いや・・なにも・・・ : 俊:そう・・・ : 白狐:なるほど、そういう事か・・・ : 千秋:俊君・・・えっと・・ : 俊:うううう・・痛い(激しい頭痛) : 千秋:大丈夫? : 俊:ちょっと頭痛が・・・ 俊:このところ酷くてさ、起き上がるのも辛い時があるんだ : 千秋:そうなんだ・・ : 俊:うん、ごめんね千秋ちゃん、折角、お見舞いに来てくれたのに : 千秋:何言ってるのよ、私の方こそ、ごめんね 千秋:もう、部屋に帰ったほうがいいよ : 俊:ごめん、そうさせて貰うよ 俊:今日は、来てくれてありがとうね 俊:会社の人にも、「迷惑かけてすみません」って伝えておいてくれないかな : 千秋:うん、分かった・・ 千秋:お大事にね・・・ 0: 0:自分の部屋に帰る俊 0:一人残される千秋 0: 千秋:あぁーあ、やっぱり告白できなかった・・・ 千秋:しかも、俊君に、悪い事しちゃったよ 千秋:白狐! あなたがお見舞いなんて・・ : 白狐:おい、千秋 白狐:あの兄ちゃん、死ぬぞ : 千秋:ちょ、何言ってんのよ 千秋:どういう事? : 白狐:お前には、見えないかもしれないが 白狐:あの兄ちゃんには、蛇の怪異が付いている。 : 千秋:蛇の怪異? : 白狐:あぁ、蛇の怪異だ 白狐:あの蛇はな「人恋しくて寂しい人間」に取りつくんだ 白狐:そして、ジワジワと弱らせていって、最終的には殺す。 白狐:殺した後、その魂を冥界に連れ去っていくんだよ。 : 千秋:そんな・・・ : 白狐:あの兄ちゃんの体調が悪い原因は、それだな 白狐:それと、 白狐:お前が、あの兄ちゃんに近づこうとする度(たび)に、あいつが邪魔をしているのさ 白狐:自分の取りついた得物を、お前に渡したくないんだろうな : 千秋:だから、突然、風が吹いたりしたのか・・・ : 白狐:そういう事だ 白狐:自分の大事な得物(えもの)だからな : 千秋:俊君が得物・・・ 千秋:白狐、あなたなら、その蛇を何とかできる? : 白狐:あぁ、俺なら問題なく倒せる。 白狐:あいつは、それ程強くないからな : 千秋:じゃぁ、お願いよ、白狐 千秋:俊君を助けてあげて : 白狐:ただ、あの兄(にい)ちゃんに取りついている今の状態じゃ 白狐:衝撃が、直接、兄ちゃんも伝わっちまって、 白狐:兄ちゃんも、死んじまうよ 白狐:奴を倒すには、まず、兄ちゃんから、奴を引き剥(は)がさなきゃいけないな : 千秋:どうやったら、引き剥がせるの? : 白狐:千秋が、奴に「こいつは私の得物だ」って見せつけてやればいい 白狐:そうすれば、奴は嫉妬に狂って、お前を殺そうと、あの兄ちゃんから離れる : 千秋:でも、見せつけるって、どうやって : 白狐:うーん、例えば 白狐:お前が、あの兄ちゃんを抱きしめて「千秋の恋人」だって言わせればいいんじゃないか? : 千秋:え?、女の私から? 千秋:そんなの恥ずかしいよ・・・ : 白狐:そんな事言ってる場合じゃないだろ? : 千秋:そうだけど・・・ 千秋:でも、それに、あの蛇が邪魔してくるでしょ? : 白狐:お前が、奴に負けないくらいの気合で、兄ちゃんを抱きしめてやれば、いけるんじゃないか? 白狐:これは、腕力じゃなくて勇気の問題だからな、女の千秋にだってやれる筈(はず)さ。 : 千秋:でも、そんな事・・・ : 白狐:まぁ、お前次第だな 白狐:こうしている間にも、あの兄ちゃんの体力は、どんどん弱っていくぞ : 千秋:私にはそんな勇気・・・ 0: 0:暫く考える千秋 0: 千秋:そうだ白狐、私に武者玉を頂戴! : 白狐:そりゃ、武者玉を使えば、千秋でも、引き剥がすくらいは、出来るだろうけど・・・ 白狐:武者玉を使うって、どういう事か知ってるだろ 白狐:お前の魂と交換だぞ : 千秋:分かってる : 白狐:分かってるって・・・ 白狐:それでお兄ちゃんは助かるだろうけど 白狐:千秋が死んだら、意味がないだろ : 千秋:それでも、俊君を冥界に連れて行かれるよりは、よっぽどましよ。 : 白狐:でもよ、兄ちゃんは悲しむんじゃないか? : 千秋:それは・・・ 千秋:彼には、ちゃんと説明するよ 千秋:今は、その方法しかないでしょ? : 白狐:確かにな・・・ 白狐: 白狐:わかった 白狐:でも、本当に、それでいいんだな? : 千秋:ええ、いいよ : 白狐:千秋、一つ言っておくが 白狐:武者玉ってのは、それを使う人間の勇気を増幅させるものだ 白狐:だから、元々の勇気がなければ、幾ら武者玉を使ったって、大して効き目はないぞ 白狐:つまり、お前自身がしっかりと勇気を奮い起こさないと 白狐:奴には勝てないって事だ 白狐:やれるのか? : 千秋:え・・・・ 千秋:うん・・分かった、 千秋:や、やるよ : 白狐:わかった、じゃぁ行くぞ 0: 0:俊の部屋の前まで来る 0: 白狐:ここが、あの兄ちゃんの部屋か? : 千秋:うん、ここで間違いないはず : 白狐:よし、カギは俺が開けてやる 白狐:千秋、覚悟はいいか? 白狐:俺が「武者玉」入れてやるからな : 千秋:うん : 白狐:よし、いけ! 0: 0:パン! 背中をたたく白狐 0: 千秋:よし! いくよ! 0: 0:白狐が俊の部屋の鍵を開ける 0:千秋が俊の部屋のドアを開ける 0: 千秋:俊君、入るわよ : 俊:千秋ちゃん・・・どうして、痛っ頭が・・(ひどい頭痛) : 千秋:俊君! 0: 0:俊に近づこうとするが、蛇が姿を現し、千秋を近づけさせないように邪魔をする 0: 千秋:う・・近づけない 千秋:もう・・・蛇め・・ : 白狐:お、正体見せやがったな 白狐:千秋、行け! : 千秋:うううう 千秋:そんな事いっても・・・ : 白狐:何やってんだ、好きな男が持っていかれるぞ : 千秋:あああ、俊君! 0: 0:俊を抱きしめる千秋 0: 俊:千秋ちゃん・・・ちょっ・・・ 俊:どうしたんだよ、抱きついたりして・・・ : 千秋:俊君、あなたは、私の恋人よ、いいね! : 俊:え? : 千秋:あなたは、私の恋人なの : 俊:千秋ちゃん、どうしt・・ : 千秋:俊君、あなたは、 千秋:私が「死ぬまで」 千秋:あなたは、私の恋人よ : 俊:千秋・・ : 千秋:「恋人だ」って言って! : 俊:あぁ・・・ : 千秋:言って! : 俊:僕は千秋の恋人だ! 0: 0:俊の身体からスッと何かが抜ける 0: 俊:あ・・・体が・・・ : 千秋:俊君、どうしたの? 千秋:大丈夫? : 俊:あれ? 俊:痛くない・・・あの頭痛がまるで嘘みたいに 俊:どうして 俊:これ、千秋ちゃんのおかげなの? : 千秋:ま、まぁ・・・ : 俊:ありがとう : 千秋:苦しかったでしょ? 千秋:遅くなってゴメンね : 俊:ううん・・・ : 白狐:おい千秋、こっちも仕留めたぞ 白狐:見ろ、こんなにでかい蛇だ : 千秋:そっか、良かった・・って、そんな蛇をこっちに見せないでよ、もう・・ : 白狐:ごめん、ごめん、ははは : 千秋:白狐、あなたって、そんな姿をしてたのね : 白狐:へへへ、まぁな 0: 0:そこには大きな蛇を担いだ白狐がいた 0: 俊:うわぁ! 俊:何っ! 俊:誰! : 千秋:大丈夫。 千秋:あれは、白狐っていう狐の霊よ : 俊:白狐? : 千秋:俊君に取りついていた、あの蛇を見つけてくれて 千秋:退治の仕方まで教えてくれたんだ : 俊:あの蛇が僕に・・・あんなに大きい : 白狐:そうだぜ兄ちゃん 白狐:もう少しで、あんたは、こいつに殺されるところだったんだ 白狐:でも、その女が勇気をだして、あんたの身体から、この蛇を引っ剥がしたんだよ 白狐:そして、俺が仕留めたって訳さ : 俊:白狐さん 俊:ありがとうございます。 : 白狐:お礼なら、千秋に言いな 白狐:まさに命がけで戦ったんだ 白狐:そうだろ? : 千秋:う、うん : 俊:え? 俊:どういう事? : 千秋:俊君・・・ 千秋:実は、俊君に話さなきゃいけない事があるんだ : 俊:話さないといけない事? : 千秋:うん 千秋:私が蛇に立ち向かえたのは、その白狐がくれた「武者玉」のおかげなんだ 千秋:この武者玉を使うと、どんな強大な敵にも、立ち向かう勇気が湧いて来るの 千秋:そのかわり・・・ 千秋:私の魂を、捧げないといけないの : 俊:魂って・・・まさか : 千秋:うん、私はもう、生きていられないだ : 俊:そんな : 千秋:でも、俊君を助けられてよかった 千秋:だから、私の命はもういいんだ 千秋:どうしても、俊君を死なせたくなかったの 千秋:ましてや、あんな蛇なんかに、俊君を連れて行かせるなんて 千秋:絶対に嫌だった 千秋:だから、後悔はしてないよ : 俊:そんな、 俊:幾ら僕に命があったって、千秋ちゃんがいないなら、同じじゃないか 俊:勝手だよ、千秋ちゃん : 千秋:俊君・・・ごめんね : 俊:白狐さん! 俊:何とかする方法は、ないんですか? : 白狐:うーん・・・ 白狐:武者玉が魂と引き換えってのは、俺じゃなくて、もっと上の神様が決めた事だからなぁ 白狐:俺じゃ、何とも出来ないんだよ : 俊:それじゃ、僕の魂を、代わりにする事は出来ないんですか! : 千秋:俊君、ダメだよ折角助かった命なんだから : 俊:何をいうんだよ 俊:こんな勝手なことやっておいて 俊:僕の気持ちも分かってよ : 白狐:うーん、 白狐:武者玉は使った人間の魂と交換だからなぁ・・・ 白狐:代わりの人間って訳にはいかないなぁ : 俊:それなら、僕にも武者玉をくれないか! 俊:僕も武者玉を使う 俊:それなら、千秋ちゃんと同じだろ : 千秋:俊君、そんな事しちゃダメ 千秋:それに、白狐は武者玉を1つしか持ってないから、俊君の分はないよ : 俊:そんな・・・ 俊:僕はどうすれば : 千秋:俊君には、これからずっと 千秋:私の分まで、生きて欲しい : 俊:千秋ちゃん・・・ : 千秋:俊君、大好きだよ : 白狐:えーと・・・なんだ・・・その・・・あれだ・・ 白狐:武者玉ならあるよ 白狐:ほら 0: 0:武者玉を見せる白狐 0: 俊:白狐さん 俊:それを、僕に下さい。 : 千秋:ダメだって俊君 千秋:白狐! 千秋:あなた、武者玉は一つしかないって、言ったじゃない : 白狐:あぁ言ったよ : 千秋:だったらどうして、もう一つ持ってるのよ : 白狐:だって、お前、武者玉使ってないもん : 千秋:え? : 白狐:言葉の通りだよ 白狐:どうしてもの時に、お前に投げつけてやろうと思ってたけど 白狐:使わずに済んだんだよ : 千秋:どうして、黙ってたの : 白狐:まぁ・・あれだ 白狐:お前たちが、そんなイチャイチャやってるから 白狐:言い出しにくくてな 白狐:悪い悪い : 千秋:イチャイチャって・・・ : 白狐:って事で、兄ちゃん 白狐:そいつは死なないよ : 俊:そうか 俊:それはよかった・・・ : 白狐:千秋、これで、約束は守れたな 白狐:んじゃ、俺はこいつを持って帰るわ : 千秋:白狐、あなたのおかげで人生が変えられた 千秋:本当にありがとう : 白狐:これから先も上手くやれよ 白狐:じゃぁな : 白狐の身体が消えていく : 俊:千秋ちゃん、 俊:僕、なんか、夢を見ているみたいだ : 千秋:これは、夢じゃないよ : 俊:そっか 俊:やっぱり夢じゃないんだ : 千秋:ええ : 俊:千秋ちゃん・・・ありがとう : 千秋:ううん : 俊:千秋ちゃん・・・これからもよろしくね : 千秋:・・・うん : 俊:千秋、大好きだよ : 千秋:私・・・も : 俊:千秋 : 千秋:え? : 俊:チュ(唇に軽いキスをする) 0: 0:終わり 0: