台本概要

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タイトル 時間よ止まれ
作者名 Danzig
ジャンル 童話
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 海で不思議な壺を拾った男
その壺からは、物語に出て来るような魔人が現れた。
なんでも願いを叶えてやるという魔人に対して、男の望んだものとは・・・
3000字程度の短いお話です。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
読み手 不問 -
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0: 0:時間よ止まれ 0: 0: 0:俺は悩んでいた。 0:この人生最大のチャンスをどう活かそうかと・・・ 0: 0: 0: 0:「ねぇ、気持ちは分かるけどさ、そろそろ決めて欲しいんだけど」 0: 0:「もう少し待ってくれよ、折角なんだからさ」 0: 0:「あぁ~あ、変な人に拾われちゃったなぁ・・・」 0: 0:俺は一カ月前、海で奇妙な形の壺を拾った。 0:下の方はでっぷりと太く、上に行くほど細くなっている、まるでアラビアンナイトの物語に出て来そうな奇妙な形の壺。 0: 0:何処(どこ)からか流れ着いたであろうその壺には、硬く栓がされており、封印のような紙が貼られていた。 0: 0:「まるで、魔人でも出て来そうな壺だな」 0: 0:俺は壺を振ってみたが、壺は軽く、音はなく、まるで中身が入っている様子はない。 0: 0:今度は栓を抜いて、中を見ようと壺の口を覗き込んだ。 0:すると、その途端、壺の中からモクモクと煙が出始め、なんと、本当に魔人が現れたのだった。 0: 0:「初めまして、ご主人様。 0:壺の封印を解いて下さり、ありがとうございます」 0: 0:壺から出てきた魔人は、身の丈(みのたけ)が2メートル程、 0:全身が青く、胸板が厚い、本当に物語に出て来る魔人そのものだった。 0: 0:「まさかとは思ったけど、本当に壺の中に魔人が入っていたなんて。 0:でも、そうなると、ひょっとして・・・・」 0: 0:俺は魔人に驚きながらも「物語と同じだったら・・・」と、淡い期待を抱いて魔人を見た。 0: 0: 0:「封印を解いて下さったお礼に、あなたの願いを一つ叶えて差し上げましょう」 0: 0:という魔人の言葉に俺は思わず 0:「やったぁ~!」 0:と喜びの声を上げた。 0: 0:俺の予感は正しかった。 0:やっぱり、この壺は物語に出て来る壺だった。 0:そして、俺に人生最大のチャンスが巡って来たのだ。 0: 0: 0:しかし、俺は直ぐに我に返った。 0: 0:「あれ? 願いは一つなんですか? 三つじゃなくて?」 0: 0: 0:「え? 三つ? 0:どうして三つなんですか? 願いは一つですよ?」 0: 0:「でも、物語では三つですよ」 0: 0:「物語? 何の話ですか?」 0: 0:「いや、何でもないです」 0: 0:そこまで物語と一緒ではなかったか・・・ 0:少々残念ではあったが、でもまぁ、たとえ一つでも、願いを叶えてくれるのなら有難い。 0: 0:そんな俺を見て魔人は言う 0: 0:「さぁご主人様、なんなりとお申し付け下さいませ。 0:願い事は何でもよいですよ。 0:世界の王になりたいですか? 0:使いきれない程の財宝が欲しいですか? 0:それとも、永遠の命を望みますか?」 0: 0:魔人の提案は、どれも魅力的だった。 0:だが、「一つだけ」となると、何を願えばいいのか悩んでしまう。 0: 0:「待ってくれ、もう少し考えさせてくれないか、 0:あ、でも、今の『待ってくれ』というのは、その、願いという訳じゃなくて・・・」 0: 0:「分かってますから、大丈夫ですよ。 0:そんな姑息な事はしませんから、安心してください」 0: 0:「あぁ、よかった・・・」 0: 0:でも結局、俺はその日のうちには決められず、一旦、魔人と共に自宅のアパートに帰って、じっくりと考える事にした。 0: 0:しかし、それから一カ月たった今でも、俺はまだ願いを決められずにいた。 0: 0:「ねぇ、もうお金でいいんじゃないの? 0:ほら、お金があれば大概(たいがい)の事は出来るしさ」 0: 0:壺から出てきたばかりの頃、俺の事を「ご主人様」と呼んでいた魔人は、一カ月の間に、すっかりだらけ切ってしまい、もう、敬語すら使ってくれなくなっていた。 0: 0:「でもさ、沢山のお金があっても、病気ですぐに死んじゃったら勿体ないじゃない」 0: 0:「いや、それは分かるけどさ・・・ 0:それなら、永遠の命にすればいいじゃない」 0: 0:「でも、永遠に命があったって、お金がなかったら辛いだけじゃないか」 0: 0:「もう・・・」 0: 0:「あ、そうだ 0:明日、大切な取引があるんだった。 0:朝9時に取引先の会社に行かなきゃいけないから、今日はもう寝るよ」 0: 0:「はいはい、そうですか。 じゃぁ、おやすみなさい」 0: 0:「明日、もし時間になっても、俺が寝てたら、起こしてくれない?」 0: 0:「それが望み?」 0: 0:「いやいや、危ない危ない、そういうのは望んでないから」 0: 0:「あぁ、そうですか・・・ですよね・・・」 0: 0:「まぁ、近いうちにちゃんとお願いするから、もう少しまっててよ」 0: 0:そう言って、俺は眠りについた。 0:そして翌朝 0: 0:「あぁぁぁもうこんな時間だ! 9時まであと5分しかない!」 0: 0:「そりゃ、目覚ましが鳴っても起きないからだよ」 0: 0:「知ってたなら、起こしてくれても良かったじゃないか」 0: 0:「そういうのは望んでないって、君が言ったんじゃない」 0: 0:「そりゃ、そうだけど・・・・あぁ、このままじゃ取引がダメになっちゃうよ」 0: 0:「そりゃ寝坊したんだから、仕方がないでしょ」 0: 0:「そんな事分かってるよ、あぁ、でもどうしよう」 0: 0:「もう諦めたら?」 0: 0:「そんな訳にはいかないんだよ、どうしよう・・・ 0:あ! そうだ! 0:ねぇ、魔人。 時間を止めてよ、出来るでしょ?」 0: 0:「時間を止めるの? そりゃ出来るけど・・・」 0: 0:「じゃぁ、頼むよ、このままだと俺、会社をクビになっちゃうんだよ」 0: 0:「分かったよ、じゃぁ、時間を止めるね。 0:むにゃむにゃむにゃ、ほい!」 0: 0:魔人が呪文を唱えたその瞬間、部屋の目覚まし時計が8時59分で止まった。 0:腕時計も見てみたが、やはり8時59分で止まっている。 0: 0:「時間が止まっている・・・すごい」 0: 0:「これで、取引には間に合うから、ゆっくり用意しなよ」 0: 0:「ありがとう、助かったよ」 0: 0:「これで、もう君とはお別れになっちゃうから、最後に取引先の会社まで連れて行ってあげるよ。 これはサービスね」 0: 0:俺は安心し、時間の止まっている世界の中で、ゆっくりと身支度を整えた。 0:その後、魔人の魔法で一瞬のうちに取引先のドアの前に移動した。 0: 0:「さぁ、これで約束は果たせたね。 0:一カ月は長かったけど、案外楽しかったよ」 0: 0:「うん、ありがとう。 俺も楽しかったよ」 0: 0:「じゃぁ、時間を動かすね」 0: 0:そう言って、魔人は軽く呪文を唱えた後、姿を消した 0: 0:そして魔人が消えた後、腕時計の針が8時59分から、再び動き始めた。 0:俺は扉を開けて取引先の会社へと入る。 0: 0:部屋では取引先の部長が俺を出迎えてくれた。 0: 0:「おはようございます。 いやぁ、時間ピッタリですね、流石です」 0: 0:「いえいえ、それ程でもありませんよ」 0: 0:「それにしても、大変だったでしょ。 0:しかし、よくここまで来れられましたね」 0: 0:取引先の部長は、なんとも不思議な事を言い始めた。 0: 0:「どういう事ですか?」 0: 0:「え! ご存じないんですか? 今、世界中がパニックになってますよ」 0: 0:部長の話によると、世界中の時計が一斉に動かなくなったというのだ。 0:アナログ時計も、デジタル時計も、パソコンやスマホの時計も全て動かなくなってしまった。 0:当然、時間制御のシステムは停止し、電車やバスなどの交通機関も全てストップした。 0: 0:「魔人のいう『時間を止める』って、そういう意味だったのか」 0: 0:時間の止め方については、俺のイメージとは違っていたが、魔人のお陰で、なんとか無事に取引を終える事が出来た。 0:会社を出る頃には、電車も少しずつ動き出しており、俺はどうにかその日のうちに自宅のアパートに帰る事が出来た。 0: 0:アパートの部屋に入り、灯りをつける。 0:魔人がいなくなった部屋は、やけに静かで、少し寂しい感じがした。 0: 0:部屋で一人、遅めの夕食を食べながら、テレビのニュース番組を見る。 0:まだパニックの続く世界の様子を画面で見ながら、俺は魔人の事を想い出していた。 0: 0:「あぁ、お金にしておけば、会社をクビになっても良かったんだよなぁ・・・」 0: 0: 0:終わり

0: 0: 0:時間よ止まれ 0: 0: 0:俺は悩んでいた。 0:この人生最大のチャンスをどう活かそうかと・・・ 0: 0: 0: 0:「ねぇ、気持ちは分かるけどさ、そろそろ決めて欲しいんだけど」 0: 0:「もう少し待ってくれよ、折角なんだからさ」 0: 0:「あぁ~あ、変な人に拾われちゃったなぁ・・・」 0: 0:俺は一カ月前、海で奇妙な形の壺を拾った。 0:下の方はでっぷりと太く、上に行くほど細くなっている、まるでアラビアンナイトの物語に出て来そうな奇妙な形の壺。 0: 0:何処(どこ)からか流れ着いたであろうその壺には、硬く栓がされており、封印のような紙が貼られていた。 0: 0:「まるで、魔人でも出て来そうな壺だな」 0: 0:俺は壺を振ってみたが、壺は軽く、音はなく、まるで中身が入っている様子はない。 0: 0:今度は栓を抜いて、中を見ようと壺の口を覗き込んだ。 0:すると、その途端、壺の中からモクモクと煙が出始め、なんと、本当に魔人が現れたのだった。 0: 0:「初めまして、ご主人様。 0:壺の封印を解いて下さり、ありがとうございます」 0: 0:壺から出てきた魔人は、身の丈(みのたけ)が2メートル程、 0:全身が青く、胸板が厚い、本当に物語に出て来る魔人そのものだった。 0: 0:「まさかとは思ったけど、本当に壺の中に魔人が入っていたなんて。 0:でも、そうなると、ひょっとして・・・・」 0: 0:俺は魔人に驚きながらも「物語と同じだったら・・・」と、淡い期待を抱いて魔人を見た。 0: 0: 0:「封印を解いて下さったお礼に、あなたの願いを一つ叶えて差し上げましょう」 0: 0:という魔人の言葉に俺は思わず 0:「やったぁ~!」 0:と喜びの声を上げた。 0: 0:俺の予感は正しかった。 0:やっぱり、この壺は物語に出て来る壺だった。 0:そして、俺に人生最大のチャンスが巡って来たのだ。 0: 0: 0:しかし、俺は直ぐに我に返った。 0: 0:「あれ? 願いは一つなんですか? 三つじゃなくて?」 0: 0: 0:「え? 三つ? 0:どうして三つなんですか? 願いは一つですよ?」 0: 0:「でも、物語では三つですよ」 0: 0:「物語? 何の話ですか?」 0: 0:「いや、何でもないです」 0: 0:そこまで物語と一緒ではなかったか・・・ 0:少々残念ではあったが、でもまぁ、たとえ一つでも、願いを叶えてくれるのなら有難い。 0: 0:そんな俺を見て魔人は言う 0: 0:「さぁご主人様、なんなりとお申し付け下さいませ。 0:願い事は何でもよいですよ。 0:世界の王になりたいですか? 0:使いきれない程の財宝が欲しいですか? 0:それとも、永遠の命を望みますか?」 0: 0:魔人の提案は、どれも魅力的だった。 0:だが、「一つだけ」となると、何を願えばいいのか悩んでしまう。 0: 0:「待ってくれ、もう少し考えさせてくれないか、 0:あ、でも、今の『待ってくれ』というのは、その、願いという訳じゃなくて・・・」 0: 0:「分かってますから、大丈夫ですよ。 0:そんな姑息な事はしませんから、安心してください」 0: 0:「あぁ、よかった・・・」 0: 0:でも結局、俺はその日のうちには決められず、一旦、魔人と共に自宅のアパートに帰って、じっくりと考える事にした。 0: 0:しかし、それから一カ月たった今でも、俺はまだ願いを決められずにいた。 0: 0:「ねぇ、もうお金でいいんじゃないの? 0:ほら、お金があれば大概(たいがい)の事は出来るしさ」 0: 0:壺から出てきたばかりの頃、俺の事を「ご主人様」と呼んでいた魔人は、一カ月の間に、すっかりだらけ切ってしまい、もう、敬語すら使ってくれなくなっていた。 0: 0:「でもさ、沢山のお金があっても、病気ですぐに死んじゃったら勿体ないじゃない」 0: 0:「いや、それは分かるけどさ・・・ 0:それなら、永遠の命にすればいいじゃない」 0: 0:「でも、永遠に命があったって、お金がなかったら辛いだけじゃないか」 0: 0:「もう・・・」 0: 0:「あ、そうだ 0:明日、大切な取引があるんだった。 0:朝9時に取引先の会社に行かなきゃいけないから、今日はもう寝るよ」 0: 0:「はいはい、そうですか。 じゃぁ、おやすみなさい」 0: 0:「明日、もし時間になっても、俺が寝てたら、起こしてくれない?」 0: 0:「それが望み?」 0: 0:「いやいや、危ない危ない、そういうのは望んでないから」 0: 0:「あぁ、そうですか・・・ですよね・・・」 0: 0:「まぁ、近いうちにちゃんとお願いするから、もう少しまっててよ」 0: 0:そう言って、俺は眠りについた。 0:そして翌朝 0: 0:「あぁぁぁもうこんな時間だ! 9時まであと5分しかない!」 0: 0:「そりゃ、目覚ましが鳴っても起きないからだよ」 0: 0:「知ってたなら、起こしてくれても良かったじゃないか」 0: 0:「そういうのは望んでないって、君が言ったんじゃない」 0: 0:「そりゃ、そうだけど・・・・あぁ、このままじゃ取引がダメになっちゃうよ」 0: 0:「そりゃ寝坊したんだから、仕方がないでしょ」 0: 0:「そんな事分かってるよ、あぁ、でもどうしよう」 0: 0:「もう諦めたら?」 0: 0:「そんな訳にはいかないんだよ、どうしよう・・・ 0:あ! そうだ! 0:ねぇ、魔人。 時間を止めてよ、出来るでしょ?」 0: 0:「時間を止めるの? そりゃ出来るけど・・・」 0: 0:「じゃぁ、頼むよ、このままだと俺、会社をクビになっちゃうんだよ」 0: 0:「分かったよ、じゃぁ、時間を止めるね。 0:むにゃむにゃむにゃ、ほい!」 0: 0:魔人が呪文を唱えたその瞬間、部屋の目覚まし時計が8時59分で止まった。 0:腕時計も見てみたが、やはり8時59分で止まっている。 0: 0:「時間が止まっている・・・すごい」 0: 0:「これで、取引には間に合うから、ゆっくり用意しなよ」 0: 0:「ありがとう、助かったよ」 0: 0:「これで、もう君とはお別れになっちゃうから、最後に取引先の会社まで連れて行ってあげるよ。 これはサービスね」 0: 0:俺は安心し、時間の止まっている世界の中で、ゆっくりと身支度を整えた。 0:その後、魔人の魔法で一瞬のうちに取引先のドアの前に移動した。 0: 0:「さぁ、これで約束は果たせたね。 0:一カ月は長かったけど、案外楽しかったよ」 0: 0:「うん、ありがとう。 俺も楽しかったよ」 0: 0:「じゃぁ、時間を動かすね」 0: 0:そう言って、魔人は軽く呪文を唱えた後、姿を消した 0: 0:そして魔人が消えた後、腕時計の針が8時59分から、再び動き始めた。 0:俺は扉を開けて取引先の会社へと入る。 0: 0:部屋では取引先の部長が俺を出迎えてくれた。 0: 0:「おはようございます。 いやぁ、時間ピッタリですね、流石です」 0: 0:「いえいえ、それ程でもありませんよ」 0: 0:「それにしても、大変だったでしょ。 0:しかし、よくここまで来れられましたね」 0: 0:取引先の部長は、なんとも不思議な事を言い始めた。 0: 0:「どういう事ですか?」 0: 0:「え! ご存じないんですか? 今、世界中がパニックになってますよ」 0: 0:部長の話によると、世界中の時計が一斉に動かなくなったというのだ。 0:アナログ時計も、デジタル時計も、パソコンやスマホの時計も全て動かなくなってしまった。 0:当然、時間制御のシステムは停止し、電車やバスなどの交通機関も全てストップした。 0: 0:「魔人のいう『時間を止める』って、そういう意味だったのか」 0: 0:時間の止め方については、俺のイメージとは違っていたが、魔人のお陰で、なんとか無事に取引を終える事が出来た。 0:会社を出る頃には、電車も少しずつ動き出しており、俺はどうにかその日のうちに自宅のアパートに帰る事が出来た。 0: 0:アパートの部屋に入り、灯りをつける。 0:魔人がいなくなった部屋は、やけに静かで、少し寂しい感じがした。 0: 0:部屋で一人、遅めの夕食を食べながら、テレビのニュース番組を見る。 0:まだパニックの続く世界の様子を画面で見ながら、俺は魔人の事を想い出していた。 0: 0:「あぁ、お金にしておけば、会社をクビになっても良かったんだよなぁ・・・」 0: 0: 0:終わり