台本概要

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タイトル ロストソルジャー
作者名 あまくケイ  (@amak0331)
ジャンル その他
演者人数 5人用台本(男1、女2、不問2) ※兼役あり
時間 40 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 「愛と平和は守れない」

異形の怪物「ドウル」が現れる伊名場町(いなばちょう)
平愛機関に所属する神音 舞輝(かみね まいき)は、ドウル達と戦っていた。
しかし突如、ロストソルジャーと呼ばれる戦士が現れる


変身ヒーローアクションです
5人劇(兼ね役有)
40分程度
雰囲気を崩さない程度のアドリブ言い換えは可

※最初の前口上は読んでも読まなくても、どちらでもOK
※途中、住民、ニュースキャスターそれぞれ1台詞のみどなたか兼ね役お願いします
※セルーペ役は、渚役が兼ね役お願いします
※赤城、マガツは性転換可
※また、セルーペ役を男性がやっていただいて構いませんが、その場合は、渚との兼ね役を切りはなして、男性の方が兼ね役をお願いいたします

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
赤城 178 赤城 陶也(あかぎ とうや) 赤い戦士「ロストソルジャー」に変身できる青年 神音たちの前に現れて、ドウル達を倒す ぶっきらぼうで、口の悪いところがある バイト先の後輩である渚がなにかと赤城によく迫り、赤城自身もそれを煙たがっている
神音 115 神音 舞輝(かみね まいき) ドウルを倒す組織「平愛機関(へいあいきかん)」に所属する少女 ピスラシステムと呼ばれる装置で、武装少女「ピスラトルーパー」になる 毒を吐いたり容赦がない一面がある清楚少女だが、愛と平和がある世界を理想としている
美鳩 不問 84 九条 美鳩(くじょう みはと) 平愛機関に所属するオペレーターさん 知的欲求のある、ノリのいい少女(または少年) 冗談好きではあるが、町の安全を守るため、やる時は真剣になる 神音をおちょくってはよく怒られる 女性として書いてますが、性転換可で、その際は一人称「僕」に変更可
67 渚 由紀奈(なぎさ ゆきな) 伊名場町に住んでいる少女 バイト先の先輩である赤城に思いを寄せている 健気だが、グイっと押していく一面がある ドウルや、特に赤い化物に対して恐怖心を抱いている セルーペ役と兼ね役
セルーペ 33 マガツに協力しているドウル ロストソルジャーではないが、普通のドウル体より強力な個体 赤城や神音の前に立ちはだかる 渚役が兼ね役
マガツ 68 謎の黒いロストソルジャーになれる人間 口調は荒く、快楽主義者のように見えるが、常に余裕があり、どこか達観した部分がある 人間の不安や恐怖などを好み、滅びこそ極上の味と豪語する
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:街に群がる異形の怪物、「ドウル」 0:それを見据える1人の青年 0:赤い炎を胸に宿し、今日も敵を倒しゆく! 赤城:とっとと燃やして終わらせるぜ 0:そう言って、青年は構える 赤城:…「魔血 転命(まけつ てんめい)」! 0:青年の周りに段々と、赤い炎がまとわれていく 0:やがて、赤い戦士に姿を変えた 赤城:焼かれる覚悟は、できてるか? 0: 0: 0:数時間前 赤城:…… ニュース:先日、伊名場町(いなばちょう)内で、ドウルが出現し、平愛機関(へいあいきかん)が対処したとの情報が入りました。しかし、機関によれば、既にドウルは居なくなっており…… 赤城:連日だな…… 渚:何がですか? 赤城:休憩か? 渚:お疲れさまです!赤城先輩! 赤城:今日もさっぱり、にぎやかだな、渚は 渚:ていうか、何見てるんです? 赤城:ドウルのニュース 渚:最近、多いですよね…… 赤城:……。でも、平愛(へいあい)が守っている。この町は安全だ。不安になることはない 渚:赤城先輩が言うと、なんか安心するなぁ 赤城:べつに何もしてないぜ? 渚:じゃあ、私がもしドウルに襲われたら、助けてくださいね? 赤城:一般人だぞ、俺は 渚:あっ、ていうかそう! 明日、空いてます? 赤城:明日? どうだったかな 渚:もし空いてたら、一緒にお祭り行きませんか? 赤城:あぁ。町内祭りか、退屈そうだ 渚:うわぁー、そういう事いうー 赤城:1人で行って来いよ、それかほかの友達と…… 渚:先輩じゃないと駄目なんです 赤城:はっきり言うな…… 渚:(小声)だって、先輩と仲良くなれるチャンスだし…… 赤城:? 何か言ったか? 渚:何でもないです! じゃ、私買い出しいってくるので! 赤城:なんで怒ってんだよ。はいはい、いってら 0:そう言って、渚は買い出しへ向かった 赤城:俺が隣にいるのは、本当に場違いだぜ、渚 0: 0: 0:平愛(へいあい)機関 伊名場町拠点 訓練場 神音:…はぁっ! 美鳩:タイムアップ! お疲れ、神音さん 神音:どうだった? 美鳩:昨日に引き続き、動きも鈍くない。流石でございます 神音:ただ、データが弱いわ 美鳩:先週現れたドウルの戦闘データ、すでに読み込ませているはずだけど 神音:そうなの? 美鳩:数、増やす? 神音:数が増えても、1体1体の攻撃パターンが毛並み程度だと、何とも言えないわ 美鳩:じゃあ、無限増殖で、どこまで神音さんの体力が持つか、限界チャレンジするのはどう? 神音:今の訓練よりはマシかもね 美鳩:どM~。愛と平和を守るその固い強さ。見習わないといけませんねぇ 神音:へぇ…。そういえば美鳩、最近実践経験足りてないんじゃない? 美鳩:ほぇ? 神音:たまには一緒に訓練してもいいのよ? 何回でもなぶってあげるから 美鳩:神音さんと? いやぁ無理ってぇ~ 神音:それとも……生で斬られたい? 美鳩:ごめん~!ごめんて~神音さん~! 神音:謝罪の気持ちが足りないわね 美鳩:ごめんなさい…神音様! 美鳩:貴方の神々しき戦い方! お供をしていて心にキュンときますわ! 神音:全く……暇な時こそ、用心にこしたことはないのよ、美鳩 美鳩:へーい…… 0:そこで、サイレンがなる 神音:っ! 美鳩:神音さん! 街にドウルが、すぐ近く! 神音:了解 0: 0:伊名場町内 神音:避難状況は? 美鳩:大丈夫。……よし、今日もオールオッケーですな。システムにも問題なし 0:美鳩の声が、神音が腕につけている「装置」から聞こえてくる 美鳩:神音さん、いつでも行きたいときに、行っちゃって~! 0;神音は中に向かって、手をかざす 神音:ピスラシステム、起動 0:神音の体に、青色と水色で構成された、機械の鎧が展開される 0:神音は空中に剣が生成し、手に持った 美鳩:さてさて、今日のピスラシステム、いってみますか! 0:神音の目前には、灰色に、白や黒がまざった異様な人型の怪物がいた 神音:このまま……回転率を上げていく 美鳩:マギアルギーの回転率……70,80……いーよいーよ! 0:神音は「水」を噴射させ、素早い動きを展開する 神音:「水刃撃、烈(すいじんげき れつ)」! 美鳩:よし!一体撃破! 神音:そのまま二体目も、斬る…! 神音:「水刃撃、斬(すいじんげき ざん)」! 美鳩:最後にラス1、いっちゃえ~! 神音:水(すい)へ転じて、空(くう)を裂(さ)く! 神音:「水転 空烈斬(すいてん くうれつざん)」! 美鳩:よし、ドウル撃破! コンディションもばっちりで 神音:美鳩のおかげよ 美鳩:嬉しいね。それにしても、まるでため込んでたストレスを解放したみたいな動きだったね~ 神音:ラブ&ピースが保たれてなきゃ、ストレスだもの 美鳩:…?  神音:美鳩? 美鳩:ちょっと待って! これは…別の…熱源反応…? 0: 渚:…はぁ、はぁ 0:街中、渚は後ろを見ながら逃げていた マガツ:オイオイ。鬼ごっこ、苦手か? マガツ:まるで喰いがいがないぜ? 渚:(足が、もたつく) 渚:(目の前にいる、怪人たちは、ゆっくりとその足で、追いかけてきていた) マガツ:まだ、まだだ。つまらねえな。もうちょい逃げろ マガツ:加熱が足りねぇ 渚:…? マガツ:最近、生は喰いあきちまってな マガツ:だから、その震えあがった面で走って、あっためてくれよ マガツ:恐怖の熱で調理した人間は、格別の美味だ 渚:あ……あ…! マガツ:…? マガツ:誰だ? 0:マガツは後ろを振り向くと、マガツと似ているようでどこか違う赤い戦士が歩いてきた 赤城:お前が親玉か? マガツ:はっは。…喰えない面(つら)、してんな 渚:……あ……あれは……っ! マガツ:オレと同じ…。ロストソルジャーか 赤城:そういう名前か、これ マガツ:なんだ、新人か? 赤城:先輩が出来た覚えはないぜ マガツ:悪くねえ。みどころがあるな 赤城:これから殺し合いするってのに、悠長だな マガツ:いきなり仕留めてもつまらねえだろ?  0:そこに、神音がやってくる 神音:どういうこと、この状況!? 美鳩:熱源反応が、2体?  美鳩:しかも、見たことないタイプ……赤と、黒い個体…… 美鳩:…いや、違う……!!  セルーペ:あーらぁ、楽しそうじゃないの~、マガツ! 美鳩:も、もう1体…!? 今日はマジの本気で、厄日なのこれ~!? マガツ:体が疼(うず)くか? セルーペ? セルーペ:あんたばっかり退屈よ。交代してくれない? マガツ:……ま、いいだろう マガツ:これで死ぬようじゃ、大したことがねえわけだからな マガツ:せいぜい観戦させてもらうぜ 0:マガツは笑みを浮かべた後、黒い霧を放ち、消える セルーペ:じゃあ、さっそく始めようかしら! 0:セルーペが指を鳴らすと、地上からドウルが出てきた 神音:…ドウルが出現した? 美鳩:出現っていうより…これは、まるで、あいつが出したような…? セルーペ:さぁ、ドウル達、たっぷりと暴れなさい! 神音:あなた、立てる!? 渚:っ……え? 神音:このまま真っ直ぐ走りなさい! 避難場所がある 神音:それまでこの身をかけても、全力で私が守るから 神音:「平愛(へいあい)機関」の名に懸けて…! 渚:は、はい! 0:渚は神音に連れられながら、赤い戦士とをみやった 渚:(逃げていく中で見たのは) 渚:(血のような赤い、炎) 渚:(それは、今まで体験した事のない) 渚:(異様で、底の見えない感覚だった) 0: セルーペ:ほーれ、さっそく! 赤城:血の気が多いな セルーペ:それが快感なのに 赤城:快感の矛先、ズレすぎだぜ? セルーペ:いいクチの、聞き方ねぇ!! セルーペ:噛み捉えろ、シャドウスネイカー! 赤城:これは…蛇か!? セルーペ:逃げたところで、どんどん追っていくわよ、それは! 赤城:くっ……! セルーペ:ほら掴まえた! そのまま大人しく、嚙み砕かれなさ……っ? 赤城:……はぁぁっ! セルーペ:拳から、炎……?  赤城:黒い蛇ごと、燃え破いてやる! セルーペ:なんて勢いのある。恐ろしいくらいに燃えるじゃないの…… 赤城:殴り燃えろ! 破炎掌(はえんしょう)! セルーペ:ちょっといやーな熱さね、これ セルーペ:すずみたいから、ここで喰らわずに消えるわ、バイバ~イ 赤城:っ! 消えた……か 0: 美鳩:神音さん! 雑魚ドウルがきてる! 神音:なら、一気に蹴散らす……! 神音:水来 地烈斬(すいらい じれつざん)! 美鳩:よし! ドウル撃墜…ってまだ出てくる!? 神音:邪魔くさいわね…… 渚:あ、足が… 神音:大丈夫、あと少しよ……! 赤城:まだのようだな 神音:…っ、あなた!? 赤城:どけ 渚:…ぁ 0: 渚:(一瞬の出来事か、時間が長かったのか、分からない) 渚:(血のように赤い存在は、出てきた灰色の化物を、「潰していく」) 渚:(いや、潰すような、壊すような、殺すような) 渚:(どう形容すればいいか、分からない) 渚:(底のない暴力に屈している化物たちが) 渚:(血のように赤く、無惨(むざん)に焼かれていくその様(さま)は) 渚:(私の記憶に、また強く刻まれる) 0: 美鳩:すごい…… 赤城:これで全部か 美鳩:ドウルの形状とも違うし、ピスラシステムとも違う…… 赤城:とっとと失せろ 神音:…そう言って失せる人、いる? 神音:ドウルは消えたわ。あとは貴方だけよ 赤城:… 0: 神音:? 何処に行くつもり!? 赤城:ドウル、ってやつはもう居ないんだろ 赤城:だから帰るんだよ 神音:待ちなさい! 赤城:待たねえよ 0:神音と赤城はにらみ合う 神音:…もし、私達の敵であるなら 赤城:容赦はしない、か 神音:… 赤城:俺は、どう見える? 神音:…え? 赤城:人間か? 化物か? 神音:…それは 渚:…ば…ばけ、もの… 0:渚の声が、冷たく響いた 赤城:…だとよ 神音:…貴方、何者なの 赤城:「ロストソルジャー」 赤城:……らしいぜ 美鳩:…ロストソルジャー 0:赤城はそう言って、神音たちの前から立ち去った 0: 0: 赤城:……ここまでこれば、大丈夫か 0:赤城は変身状態を解いた 赤城:……渚 赤城:当たり前だ。俺に、普通は許されない 赤城:この力を手にした時から、決まってんだ 美鳩:なんだかすごーい言葉が聞こえちゃったねぇ~ 赤城:誰だ!? 0:赤城が振り向くと、1人の少女が出てきた 美鳩:何者か!ときかれたら、答えるしかあるまいと! 美鳩:我ら! 平愛機関(へいあいきかん)特殊迎撃(とくしゅげいげき)団~! 美鳩:シャキーン! 赤城:……ああ? 美鳩:さっきまで怪物ばっかりいたのに、なんでこんなところに1人、ポツンといるのかな~ 赤城:逃げ遅れたんだ 美鳩:ふぅん。良く生き延びれたねぇ~、「ロストソルジャー」 赤城:……! 美鳩:リアクション、分かりやすいよ~。反応が消えた辺りを探してて良かった 赤城:……つけてたのか 美鳩:君、まさかあの赤い戦士なのかな? 怪我もしてるみたいだし? 赤城:だったら? 美鳩:事情聴取をします 赤城:なんだと? 美鳩:不審者放って置く警察なんかいる? もし、来なければ…… 赤城:撃つってか? 美鳩:これはピリッと痺れる電撃銃。ピスラを展開したら使えるんだけどね~。こうやって武器だけでも、出せちゃう 赤城:警察がすぐ銃抜くのかよ 美鳩:僕ら、平愛機関だから。それに君、普通の人間じゃないし 赤城:生身で喰らったら痛そうだ 美鳩:そんじょそこらにあるスタンガンのビリビリとは、違うけどねぇ~ 美鳩:大丈夫、お話するだけだから 赤城:勘弁するぜ……! 美鳩:あっこら! 逃げるな! 赤城:っ、あいつ…速い……!  美鳩:ただのオペレーターと思ったら、大間違い!「ライティール・ショット」! 赤城:あっぶねぇ、ガチで撃ちやがる……。なら、角を曲がって……っ!? 美鳩:あっちゃ~残念。君、逃げるの苦手? 赤城:行き止まりか……クソ 美鳩:それじゃ、大人しくしなさいな 0:美鳩は鋭い目つきで、赤城に銃を向けた 0:とあるビルの屋上 マガツ:いやぁ、味わいのあるショーだったぜ。おかげでニューカマーを見つけた セルーペ:高みの見物しちゃって、こっちは必死なのに マガツ:おいおい、代わったのはお前のほうだろ。ただその様子じゃ、楽しみの一つも感じれなかったようだな、ドウル代表? セルーペ:嫌味な言い方。……近づきたくないくらいの熱さよ。あの”新入り”君は マガツ:なんだ、加熱役にはもってこいだな セルーペ:勧誘でもする気? マガツ:どうだかな? なら、次は俺がやるとするか セルーペ:せいぜい、気を付けなさいな 0: 0:平愛機関 伊名場町拠点内 0: 美鳩:赤城陶也(あかぎとうや)、男性、飲食店員……ふむふむ、メモメモ 美鳩:こうやって履歴とると、ごく普通のフリーターにしか見えない 神音:なぜあなたは、「あれ」になれるの? 赤城:こっちばっかり喋らせて、そっちは自己紹介もなしかよ 神音:私は神音舞輝(かみねまいき)。こっちは、九条美鳩(くじょうみはと)。これでいいでしょ 赤城:適当だな……。それで?  神音:質問に質問で返さないでくれる? 赤城:……これだ 美鳩:ほぇ? なんか、すごい装置だね………見たことないなぁ。平愛機関のものでもないし 神音:この装置で、あれになれると? 赤城:ああ 美鳩:うぅ……ん、この装置……どういう構造なんだろう…… 神音:没収よ、それは 美鳩:えっ!? あぁ……じゃあ、ってうわっ急に燃えて! 赤城:俺が意識したら、そいつは手元に戻ってくる。残念だが、没収はできねえな 美鳩:どうなってんの 神音:誰からもらったのよ、それ 赤城:開発者だ。あの日から、これを使って…俺は、戦っていた 神音:開発者? それに、あの日というのは 赤城:俺がこの力を使えるようになった日だよ。……これ以上は言う気にならない 神音:黙秘するつもりね 赤城:わざわざ思い出したくないんだよ 神音:……? 美鳩:神音さん。無理に問いただすのは…… 神音:あんな化物になれたのよ? 何をしでかすか分からないわ。ここは徹底して…… 美鳩:確かに知りたい気持ちも分かるけど。仮にも一般人なわけだし 神音:……それは 美鳩:それにこの人、ドウルだけを倒しているみたいだから、機関にとって敵である可能性は、低いと思うし。今は、この人があの赤い戦士と同一人物っていう情報だけでも、価値がある 神音:……分かったわ。でも、驚異的な力を持っていることは確実。もし住民に被害が出たらシャレにならない 神音:だから、あなたは機関の管理下におかせてもらうわ 赤城:監視ってことか 美鳩:ってことで、事情聴取はここまで! いったん開放! 赤城:そりゃどうも 神音:言っておくけど、何も終わってないから……もし何かすれば 赤城:殺すってか、いいぜ 神音:えっ? 赤城:もし俺が、一線を超えるようなことがあったら、ひと思いにやってくれ 0: 0:赤城は平愛機関から出て、バイト先に戻ってくる 0: 赤城:……店の中は、めちゃくちゃだな。ドウルに荒らされたか 渚:先輩……! 赤城:……よう 渚:無事だったんですね! 良かった 赤城:時間はかかりそうだな 渚:これから数日は休業みたいです 赤城:だろうな 渚:…… 赤城:大丈夫か? 渚:えっ 赤城:震えてるぞ、手 渚:……店に帰ってきた時、遭遇して。一目散に逃げていたら……赤い化物と目が合って 赤城:怖かったんだな? 渚:怖かった、です。私も、焼かれるんじゃないかって 赤城:無理に明かるくすんな 渚:大丈夫です。赤城先輩の顔を見たら……っ、良かったって。つい、安心して 赤城:渚…… 渚:ごめんなさい。無事なのに泣くなんて、おかしいですよね 赤城:……何もおかしいことじゃない 渚:え? 赤城:……明日、祭りあったんだったな。一緒に、行くか 渚:……! はい! 0: 0:翌日。伊名場町。町内祭り 赤城:人が多いな 渚:人がいない祭りなんて、祭りじゃないですよ 赤城:冗談だ、冗談。行くか 0: 渚:はい!わたあめ 赤城:好きだな、それ 渚:美味しいですよ? 赤城:焼き鳥1つ、喰えれば十分だ、俺は 渚:買ってありますよ。はい 赤城:はやいな……。さんきゅ 渚:一緒に食べましょ 0: 渚:はぁー。美味しかった! 赤城:だな 渚:……良い空 赤城:……悪い空じゃないな 渚:先輩 赤城:っ?  0:渚が赤城の肩にゆっくり寄せる 渚:……あったかい 赤城:渚? 渚:夢に出てくるんです。赤い怪物が、あの目で、追いかけてくる夢を 赤城:……! 渚:私はそれが怖くて、逃げてて、叫んでて……。でも、最後には 渚:最後には、助けてくれた人がいて、それで夢は終わりました 0:渚はぎゅっと、赤城の裾を握る。透き通った渚の目が、赤城の眼をとらえた 渚:先輩の温度が欲しいんです。少しでも離れたら、あの眼を思い出しちゃうから 赤城:あったかいなんてものじゃねえよ 赤城:俺と居たら、焼かれちまうぞ 渚:なんですか、その冗談 0:そこで、赤城の携帯がなる 赤城:…悪い渚、ちょっと電話が 渚:…あっ 0:赤城はすぐに渚から離れる 赤城:……すぐに戻ってくる 渚:じゃ、じゃぁ。私、別の屋台、行ってきますね! 赤城:まだ喰わせる気かよ 渚:当たり前です。そういう時間ですから、今は 0:渚が先に行ったのを確認してから、電話に出る 赤城:……もしもし? 神音:悠長ね 赤城:お前、まさか 神音:何処にいるかくらい、分からないとでも思った? 赤城:徹底してやがるぜ 神音:ラブ&ピースのためだもの、いくらでも言いなさい 赤城:……渚が行きたがってたからな 神音:あぁ……あの時の。ドウルから保護した時も、ずっと震えていたわね 赤城:俺が与えちまったんだよ、あいつに 神音:えっ? 0: 0:数週間前 赤城:これで今日は、全部か……グッ 住民:ば、化物……っ! 赤城:逃げ遅れた……住民か……馬鹿やろう……はやくにげ……ッ!? 赤城:クソ…まだ、制御がきかねぇ…か…グゥ……ウウウッ! 赤城:グ…ウゥ……スベテ………コロ……ス!! グゥ……ガアアアア! 渚:あっ……ぁ 赤城:あれは……なぎ……さ? グゥ……ウゥ……! 0: 0:赤城は暴れる力に抵抗するように、渚のもとから離れた 0: 赤城:あいつの平和を、あいつの気持ちを、もう俺は踏みにじってんだ 神音:…… 赤城:だからこれは、せめてもの報いなのかもしれねえ 美鳩:じゃあ、思いっきり楽しんじゃいなよ! 神音:美鳩……。通信に割り込んできたと思えばあなた 美鳩:デートは邪魔するもんじゃないよ、神音さん 神音:私は万が一のことがあると思って 赤城:痴話喧嘩ならよそでやってくれないか? 神音:言ってくれるわねぇ……? 美鳩:まーまーまー! とりあえず、祭りも私らが見回りしてっから! 神音:調子のいい子ね…… 美鳩:平和を楽しんでもらうのが一番! それが我ら、平愛(へいあい)機関の理想の形でしょ! 神音:赤城君。もし何かあっても、変身しないこと 赤城:変身? 神音:あの姿になることよ 赤城:……何もなかったらな 神音:ふざけないで 赤城:ふざけてねえよ 神音:ッ。……この 赤城:(さえぎる)もう用はすんだろ。きるぞ 0: 0:赤城に電話を切られる 神音:(舌打ち)。あいつ 美鳩:そんなにギスギスしないでってば。ラブ&ピースが守られれば、それでいいわけだし 神音:……そうだけど。いちいちシャクにさわるわ 0: 0: 赤城:渚のやつ……どこいったんだか 0:そこで、遠くのほうから悲鳴が聞こえた 赤城:っ……? 悲鳴……!? 0: 0:祭りの喧騒から離れ、建物の上で、祭りの様子を眺めている影があった マガツ:いやぁ、賑やかいなぁ。高い所から眺めると、なお感じる マガツ:日常のちょっとしたイベントっていうのは、飽きた時に喰う菓子みたいなモンだ セルーペ:人間も平和ボケしてるわよねぇ。刺激があるまで、思考停止の生き物だもの マガツ:……お、あれは?   マガツ:はは、面白い食材がいるじゃねえか セルーペ:物好きねぇ マガツ:ああ、なにせ新人のお気に入りだ、ありゃ。挨拶にいってくるか。景気良くなァ 0:マガツは奇妙なデザインのバックルを腰につけ、構えを取る マガツ:……魔血、転命(まけつ てんめい)! 0:マガツの周りに黒いオーラが経ちこみ、黒い怪人のような姿に変わる マガツ:クク……さぁ、軽く滅日(ほろび)を、始めるか 0:祭り中の街中、ドウルが人々を襲おうとぞろぞろと現れる 赤城:クソッ! ドウルか! こんな時に…っ! 赤城:渚っ……! どこだ……! 神音:赤城君! 赤城:お前……! 神音:あなたは逃げなさい! 赤城:そんなことできるか! 神音:ッ! 一般人が、でしゃばらないで! 赤城:っ…!! 神音:そのわけの分からない力で、被害者が出たらどうするつもりよ! 赤城:持ってても、使わなきゃ意味がねえだろ! 渚:きゃあああっ! 赤城:っ! 渚の声……! 0: マガツ:なんだなんだ、シビれるじゃねえの 渚:っ……あ 美鳩:彼女をはなせ! マガツ:そう言われて簡単に離すやつはいねえ。悪の立ち回りは、いつの時代も決まってんのさ 美鳩:だったらもっと、ビリビリさせてやるっての。 マガツ:ほう……? 美鳩:ピスラシステム……起動! 0:美鳩は、腕に着けていた装置を起動させ、武装を展開する マガツ:平愛の兵器か…… 美鳩:これであんたをぶち抜く! マガツ:ほれ、やってみろ 美鳩:……っ! 「ライティール・ショット」!! マガツ:冥間(めいかん)を防げ。防黒ノ怨壁(ぼうこくのおんへき) 美鳩:っ、防がれた!? マガツ:こんなもんか? 喰らっても不味い飯だな、こりゃ 美鳩:片手で……? だったら、もっと出力を! セルーペ:それなら、私が相手しましょうかしらねぇ!! 美鳩:っ! こいつもいるのか……!  セルーペ:噛み捉えろ、「シャドウスネイカー!」 0:美鳩が銃攻撃で、蛇を消していくが、まだ現れる セルーペ:おーっほっほっほ! 残念! そっちばっかり意識してたら、ほら! 美鳩:があっ……! 0:美鳩が蛇を撃っている最中に、セルーペが蹴りをくわえ、飛ばされる 神音:美鳩ッ! 美鳩:ごめん、ミスった…… 神音:……あいつは、昨日の黒い個体! マガツ:おお、怖い怖い。 愛と平和を好(この)んでるのに、向けるのはしかめっ面か マガツ:矛盾した味を提供してくれるじゃねえのさ 神音:……なめてるの? マガツ:褒めてんだよ。守ってくれなきゃ、悲鳴という名の料理が楽しめない 神音:……こいつ 美鳩:熱源反応が、あまりにも違う。あいつら……やっぱり普通のドウルじゃない。油断は禁物だよ、神音さん マガツ:客人が揃ったな。さっさと喰っちまうところだったぜ? 赤城:渚!! マガツ:さて。さすれば、そこの新人。俺の興味を満たせ。 赤城:相手をしろってことか マガツ:察しがいいのは嫌いじゃない。もし断るなら、この女は……食材だ 0:マガツは渚の髪を引っ張った 渚:っ……! 美鳩:渚さん……! 赤城:……上等だよ 神音:っ……あなたまさか……渚さんがいるのよ!! 赤城:それでも、黙って見ているわけにはいかねえんだよ!! マガツ:……そうだよなァ。自分の姿は、さらさねえと 0:マガツは不敵に笑う マガツ:人間、キレイ事を求めちまいたくなる……何もクセのない味ばっかりをな。 マガツ:だが、それは真実の味じゃあねえ。見えないもの、隠したいもの、それを隠せば隠すほど…見えなくすればするほど、影の味は、どんどんと深みを増していく……。熟成された味を、提供してくれるんだなぁ、これが 渚:……えっ? 神音:辞めなさい!! 0:赤城はバックルと腰に装着し、構えを取る。 0: 渚:…せん……ぱい……? 0: 赤城:魔血 転命(まけつ てんめい) 0:瞬間、赤城の周りに炎が現れた 渚:……あ……あ………そんな……うそ 0:渚の震えたことあいはんするように、赤城の体は、赤い戦士へと変貌した 赤城:ごめんな、渚 0: マガツ:いいねぇ……。こいつは美味だ 赤城:場所を変えろ、てめぇとのサシだ マガツ:ああ。お望みどおりに。この女の絶望は味わった。腹八分目にしねえとな 赤城:…っ! 0:マガツは黒い霧を展開し、赤城と共に姿を消した 0:消えたと同時に、渚がマガツから解放される セルーペ:本当に食いしん坊ねぇ、あの人は。胸やけ起こしそう 美鳩:……2人が、消えた。熱源反応が移動してる 神音:ふざけるのも、たいがいにしなさいよ… 0:神音は、渚に声をかける。渚の表情は見えない 神音:…渚さん 渚:……はい 神音:前にも言ったと思うけど、何回でも言う。あなたはどんなことがあっても、最後まで守り抜く。貴方の命は、脅かさないから 0:神音は強く、渚に伝えた 神音:……ピスラシステム、起動! 0:神音は、腕に着けていた装置を起動させ、武装を展開する 神音:美鳩、いける? 美鳩:当然。そっちこそ、私のオペ、なくてもだいじょぶ? 神音:ええ 美鳩:よーし、ラブ&ピースのために、いっちょやりますか! セルーペ:準備できたかしら?  神音:待ってくれるなんて、優しいのね セルーペ:楽しみがいがないからねぇ……じゃあ、まとめて仕留めてあげるッ! 美鳩:来るっ! セルーペ:嚙み捉えろ……! 「シャドウスネイカー」ァァァ! 神音:数が……多すぎる! これじゃ、本体に攻撃が届かないっ! セルーペ:ほれほれ! 無様に!豪華に! 怯え続けるのよ!! それが人間が与える娯楽! セルーペ:さぁ、骨の髄(ずい)まで噛まれて、快楽の餌(えさ)となりなさいな! 美鳩:神音さん! 私が、あれを全部撃つ……! その隙に! 神音:頼むわ! 美鳩:マギアルギー……フル回転…電撃弾、作成完了! 美鳩:連(つら)なり痺(しび)れろ!「ライティール・フルショット」! セルーペ:なにっ!? 美鳩:さっきやられて……分析がすんでるんだよ! ……今だ!神音さん! 神音:マギアルギー、フル回転…はぁぁっ! セルーペ:奴の刀が……水に覆われて……いや、体も? 神音:青(あお)き調和(ちょうわ)へ、回(まわ)り穿(うが)つ! 神音:水波 羅旋突(すいは らせんとつ)! セルーペ:ぐっ! ぅぅ……。 セルーペ:あっちは熱い炎くんで……こっちは、鋭い水っ子に、ビリっと痺れる嬢ちゃん(坊ちゃん)ねぇ……温度差が、激しいのよ全く……! 神音:終わりよ! セルーペ:ノーエンド! 置き土産よ! 0:セルーペは目然に黒蛇を放ち、姿を消す 神音:っ!邪魔っ!!  ……美鳩、あのドウルは!? 美鳩:ドウルの反応、消失……。他のドウルも、一斉に消えたみたい 神音:目的は、あの黒い個体のため……ということかしら 0:神音は、渚に歩み寄った 神音:大丈夫?……じゃない、わね 渚:ごめん……なさい……もう 神音:無理に話さなくていいわ 渚:頭が……ぐちゃぐちゃになりそうで……もう、……いや…… 神音:……っ 美鳩:いったん拠点に戻ろ、神音さん 美鳩:今は……渚さんを落ち着かせないと 神音:ええ…… 0: 渚:(この日以降、私はあの夢を見る事は、なくなった) 渚:(そっか……ずっと最初から、おかしかったんだ) 渚:(私の知ってる赤城さんは、もうそこには居なかったんだ…) 0: 0:人気のない。廃ビルの近く マガツ:さて、昨日の続きといこうじゃねえか、新入り 赤城:とっととケリをつけてやる マガツ:まぁゆっくり行こうぜ……早食いは寿命が縮んじまう。 マガツ:……どうだ? ロストソルジャーになった気分は? 赤城:良いとは言えないな。ただ、前よりも力はなじんできたか マガツ:コントロールが効いてきたか。優秀だな 赤城:褒められても、特段嬉しくないぜ マガツ:……ピュアな関係だったんだろ?  あの女と 赤城:お前に言ったところでどうなる? マガツ:いやぁ、しっぽり味わいたくてなぁ 赤城:何? マガツ:愛していた人間が、最も恐怖するものだった……ひでぇ話じゃねえか……。絶望の物語は……非常にそそるぜ 赤城:そのために、わざわざ渚を掴まえたと? マガツ:お前と一度手合わせしたいってのは本音だ……。でもそれだけじゃつまらねぇ。せっかくなら食事もしたいだろ? 赤城:ふざけやがって…… マガツ:大真面目だぜ? 俺は。 ガキのように走り回らず、座ってしっかり食事をするさ。メニューの名前は……「隣り合わせの希望と絶望」。 マガツ:相手の光が見えた時、それは同時に闇を認識するってことだ。その隣り合わせになった、光と闇の狭間の中に、何ともいえねぇ味が秘められてるのさ。いいダシがとれるぜ? 赤城:そんな味はごめんだ マガツ:好みが合わねぇなぁ。……にしても、残念だったな。お前がバケモンになっちまったばかりに 赤城:構わねえさ マガツ:ほう? 赤城:どうせいつかはバレるんだ。自分がヒーローになれるなんざ、微塵も思ったことはないぜ マガツ:……いいね。面白い新人だ。先輩を楽しませるのは実に良き。それでこそやりがいがある!! 赤城:っ! 黒い爪!? マガツ:狂(くる)い乱(みだ)れろや……「邪狂 爪乱」(じゃきょう そうらん)! 赤城:ぐっ……くそ……ったれ! マガツ:ぼさっとしてたら、えぐられちまうぜ? 赤城:やらせねえよ……破炎掌(はえんしょう)! マガツ:おっと…。しょっぱなから熱い殴りだな 赤城:こういうのは好みか?!  マガツ:ああ、焼き物にされちまう 赤城:拳だけじゃねえぜ……はぁっ! 0:赤城は一回転して蹴りを放ち、マガツはそれを止める マガツ:ほぅ、大したもんだ。空を切っただけでも、「暴れ」を感じる マガツ:たぎってる…たぎってるな、はっは 赤城:何の話だよ? マガツ:守るなんて類(たぐい)じゃねえ。そう、これは…… マガツ:純粋な破壊(はかい)だ! 0:マガツはそう言い、赤城の攻撃をはねのけた後、反撃を繰り出す 赤城:違うな。それはお前が、勝手に決めてるだけだ! 0:赤城はそれを避けて、すかさず反撃を行う。マガツの胸部に赤城の拳がヒットした マガツ:…ぐっ 0:マガツはそれを受けつつ、距離を取る 赤城:愛と平和は守れない。人でも、なんでも。 赤城:守りに向いてねえのさ、俺は 赤城:でも、力をめいいっぱい入れて、目の前にいる敵を倒す事なら、できる マガツ:やってしまったほうが早い、と 赤城:殴る蹴るは、俺の性にあってるんだ。次は潰すぜ マガツ:なるほど…。個人的事情も介していないこの力…復讐の恨みでもない。期待の新人だな、こりゃ。 赤城:そいつはどうも マガツ:喰えないが、いい味だ……! 赤城:…!? なんだ…? 0:マガツは両手を広げて、目然に黒い大きな玉を形成し、大きくなっていく マガツ:黒(くろ)の中で、糧(かて)となれ マガツ:黒魔 焉冥波(こくま えんめいは)! 0:瞬間、黒い波のようなものが、勢いよく赤城に向かって放たれた 赤城:…っ! マガツ:爽快だぜ! 滅亡へ導く力は! マガツ:苦しみや絶望ってのは、これだから美味なんだよ……! 赤城:…赤(あか)に焼かれろ マガツ:…? 消えた? 0:赤城は炎の翼のようなものを広げ、天高く飛び上がっていた マガツ:いや…空中か…! 赤城:「赤魔 爆炎蹴(せきま ばくえんしゅう)」! 0:血のような赤い炎を伴い、マガツに向かって空中から勢いよく蹴りを放つ マガツ:ぐっ……がァァァ! 0: マガツ:はぁ……ハハ マガツ:良くない痛みだぜ。欲しくない味だ 赤城:くだばらねえか。いや、寸前で何か張ったか? マガツ:先輩は敬(うやま)ないとな……。んじゃ、このあたりで退散するとしようか… マガツ:冥(みょう)の霧となれ マガツ:「冥楼(めいろう)」 0:マガツは黒い霧を出し、その場から消えた 赤城:…消えやがったか 0: 0:それから数日後 0:伊名場町内 神音:遅いじゃない 赤城:別に時間は決まってねえだろ。ちゃんと来ただけでも褒めたらどうだ? 神音:うるさいわね。……あれからどうなったの? 赤城:逃げられた。そんだけ 神音:……そう 赤城:問いたださねえのか? 神音:その件はいいわ。あなたが話したいときに話なさい 神音:それに今日はそのつもりで来たわけではないのよ 赤城:なに? 神音:渚さんに伝えたわ。あなたが赤い化物になれること。そのことを口外しないようにと 赤城:それで、渚は? 神音:納得はしてくれた。整理はできてない、ようだけれど 赤城:…そうか。 0:そこで、赤城のスマホが鳴る 赤城:……電話? 渚から……? 神音:っ…… 0: 渚:……先輩 赤城:ああ、俺だ 渚:そうですね。声は、私の知ってる先輩です 赤城:……バイトは辞める 渚:えっ? 赤城:もうお前とは会わない 渚:…… 赤城:俺のことは忘れろ 赤城:そんなことすれば、お前が怖がっている化物も、一緒に思い出してしまう 渚:……ごめんなさい 赤城:無事で良かったよ。……じゃあな 0:赤城はそう言って電話を切る 神音:馬鹿じゃないの、あなた 赤城:あ? 神音:よりによって、彼女の前で、姿を変えて 赤城:俺がこの力を持った時から、いずれこうなると思っていた。それがはやかっただけだ 神音:あなたは……。いつ……穏やかになるつもりなのよ 赤城:っ? 神音:自分が化物だといって、彼女との繋がりを断ってまでして、それでまた戦って…… 神音:あなたの平和は、どこにあるの? 0:神音が真剣な表情で、かつどこかもの悲しげに、赤城を見る 赤城:そんなもの、いらねえよ 神音:……っ! ……はぁ 0:神音は一瞬怒りかけるも、ため息をつく 赤城:用がすんだなら帰るぜ 神音:待ちなさい 赤城:? まだあるのか 神音:平愛(へいあい)機関から、法来町(ほうきちょう)の拠点に来るように、言われたわ 赤城:法来町(ほうきちょう)……隣町か。わざわざ異動のことを伝えに来たのか? 神音:あなたは管理下って言ったの、忘れたわけじゃないよね? 赤城:それは変わらないと。成程、くぎを刺しにきたか 神音:ええ、あなたも拠点に来てもらうわ 赤城:……は? 神音:平愛機関の一員として働いてもらうのよ 赤城:……ちょっと待て 美鳩:おめでとう赤城さん! 赤城:うおっ!? 美鳩:これで機関の仲間入りです!! ドンドンパフパフ! 赤城:……いやだから! どういうことだ!? 美鳩:それはこの私からみーずから、説明しよう! あれから上層部に報告すると……「あくまで人を助けているなら、その力を正しい所に使った方がいい」って言われちゃって、あーなるほどそれもそうですねぇー納得でござるー! ってなったので……試しに神音さんと相談してみたら 神音:こういう結果よ。あなたと同じ組織の下なんて、クソみたいにシャクにさわるけど 神音:考えれば、貴方を監視できる上に、機関の役に立つわけだし 赤城:俺の許可は!?  神音:あなたに人権なんてないわよ。そんな力を持ってるんだし。機関にはすでに了承を受けたって返しておいたわ。 赤城:こ、こいつ……! 美鳩:まぁまぁ! というわけで、改めてよろしくね! 赤城さ~ん! 0: セルーペ:ぐっ…… マガツ:酷い顔だな セルーペ:少し、舐めていたわ マガツ:ま、あんだけドウルを狩ってりゃ、日に日に強くなるわな……人間も セルーペ:全然、飽きたりないって顔してるわよ、マガツ マガツ:そりゃそうだ。本調子じゃねえからな マガツ:こんなもん、ただの始まりだ。始まりがなきゃ……滅亡はない マガツ:そう、滅びこそ、極上の味だ…… 0:マガツは大きく手を広げ、笑う マガツ:さて、この世界が、どんな結果を見せ、どんな味をもたらしてくれるのか マガツ:せいぜい楽しみだぜ

0:街に群がる異形の怪物、「ドウル」 0:それを見据える1人の青年 0:赤い炎を胸に宿し、今日も敵を倒しゆく! 赤城:とっとと燃やして終わらせるぜ 0:そう言って、青年は構える 赤城:…「魔血 転命(まけつ てんめい)」! 0:青年の周りに段々と、赤い炎がまとわれていく 0:やがて、赤い戦士に姿を変えた 赤城:焼かれる覚悟は、できてるか? 0: 0: 0:数時間前 赤城:…… ニュース:先日、伊名場町(いなばちょう)内で、ドウルが出現し、平愛機関(へいあいきかん)が対処したとの情報が入りました。しかし、機関によれば、既にドウルは居なくなっており…… 赤城:連日だな…… 渚:何がですか? 赤城:休憩か? 渚:お疲れさまです!赤城先輩! 赤城:今日もさっぱり、にぎやかだな、渚は 渚:ていうか、何見てるんです? 赤城:ドウルのニュース 渚:最近、多いですよね…… 赤城:……。でも、平愛(へいあい)が守っている。この町は安全だ。不安になることはない 渚:赤城先輩が言うと、なんか安心するなぁ 赤城:べつに何もしてないぜ? 渚:じゃあ、私がもしドウルに襲われたら、助けてくださいね? 赤城:一般人だぞ、俺は 渚:あっ、ていうかそう! 明日、空いてます? 赤城:明日? どうだったかな 渚:もし空いてたら、一緒にお祭り行きませんか? 赤城:あぁ。町内祭りか、退屈そうだ 渚:うわぁー、そういう事いうー 赤城:1人で行って来いよ、それかほかの友達と…… 渚:先輩じゃないと駄目なんです 赤城:はっきり言うな…… 渚:(小声)だって、先輩と仲良くなれるチャンスだし…… 赤城:? 何か言ったか? 渚:何でもないです! じゃ、私買い出しいってくるので! 赤城:なんで怒ってんだよ。はいはい、いってら 0:そう言って、渚は買い出しへ向かった 赤城:俺が隣にいるのは、本当に場違いだぜ、渚 0: 0: 0:平愛(へいあい)機関 伊名場町拠点 訓練場 神音:…はぁっ! 美鳩:タイムアップ! お疲れ、神音さん 神音:どうだった? 美鳩:昨日に引き続き、動きも鈍くない。流石でございます 神音:ただ、データが弱いわ 美鳩:先週現れたドウルの戦闘データ、すでに読み込ませているはずだけど 神音:そうなの? 美鳩:数、増やす? 神音:数が増えても、1体1体の攻撃パターンが毛並み程度だと、何とも言えないわ 美鳩:じゃあ、無限増殖で、どこまで神音さんの体力が持つか、限界チャレンジするのはどう? 神音:今の訓練よりはマシかもね 美鳩:どM~。愛と平和を守るその固い強さ。見習わないといけませんねぇ 神音:へぇ…。そういえば美鳩、最近実践経験足りてないんじゃない? 美鳩:ほぇ? 神音:たまには一緒に訓練してもいいのよ? 何回でもなぶってあげるから 美鳩:神音さんと? いやぁ無理ってぇ~ 神音:それとも……生で斬られたい? 美鳩:ごめん~!ごめんて~神音さん~! 神音:謝罪の気持ちが足りないわね 美鳩:ごめんなさい…神音様! 美鳩:貴方の神々しき戦い方! お供をしていて心にキュンときますわ! 神音:全く……暇な時こそ、用心にこしたことはないのよ、美鳩 美鳩:へーい…… 0:そこで、サイレンがなる 神音:っ! 美鳩:神音さん! 街にドウルが、すぐ近く! 神音:了解 0: 0:伊名場町内 神音:避難状況は? 美鳩:大丈夫。……よし、今日もオールオッケーですな。システムにも問題なし 0:美鳩の声が、神音が腕につけている「装置」から聞こえてくる 美鳩:神音さん、いつでも行きたいときに、行っちゃって~! 0;神音は中に向かって、手をかざす 神音:ピスラシステム、起動 0:神音の体に、青色と水色で構成された、機械の鎧が展開される 0:神音は空中に剣が生成し、手に持った 美鳩:さてさて、今日のピスラシステム、いってみますか! 0:神音の目前には、灰色に、白や黒がまざった異様な人型の怪物がいた 神音:このまま……回転率を上げていく 美鳩:マギアルギーの回転率……70,80……いーよいーよ! 0:神音は「水」を噴射させ、素早い動きを展開する 神音:「水刃撃、烈(すいじんげき れつ)」! 美鳩:よし!一体撃破! 神音:そのまま二体目も、斬る…! 神音:「水刃撃、斬(すいじんげき ざん)」! 美鳩:最後にラス1、いっちゃえ~! 神音:水(すい)へ転じて、空(くう)を裂(さ)く! 神音:「水転 空烈斬(すいてん くうれつざん)」! 美鳩:よし、ドウル撃破! コンディションもばっちりで 神音:美鳩のおかげよ 美鳩:嬉しいね。それにしても、まるでため込んでたストレスを解放したみたいな動きだったね~ 神音:ラブ&ピースが保たれてなきゃ、ストレスだもの 美鳩:…?  神音:美鳩? 美鳩:ちょっと待って! これは…別の…熱源反応…? 0: 渚:…はぁ、はぁ 0:街中、渚は後ろを見ながら逃げていた マガツ:オイオイ。鬼ごっこ、苦手か? マガツ:まるで喰いがいがないぜ? 渚:(足が、もたつく) 渚:(目の前にいる、怪人たちは、ゆっくりとその足で、追いかけてきていた) マガツ:まだ、まだだ。つまらねえな。もうちょい逃げろ マガツ:加熱が足りねぇ 渚:…? マガツ:最近、生は喰いあきちまってな マガツ:だから、その震えあがった面で走って、あっためてくれよ マガツ:恐怖の熱で調理した人間は、格別の美味だ 渚:あ……あ…! マガツ:…? マガツ:誰だ? 0:マガツは後ろを振り向くと、マガツと似ているようでどこか違う赤い戦士が歩いてきた 赤城:お前が親玉か? マガツ:はっは。…喰えない面(つら)、してんな 渚:……あ……あれは……っ! マガツ:オレと同じ…。ロストソルジャーか 赤城:そういう名前か、これ マガツ:なんだ、新人か? 赤城:先輩が出来た覚えはないぜ マガツ:悪くねえ。みどころがあるな 赤城:これから殺し合いするってのに、悠長だな マガツ:いきなり仕留めてもつまらねえだろ?  0:そこに、神音がやってくる 神音:どういうこと、この状況!? 美鳩:熱源反応が、2体?  美鳩:しかも、見たことないタイプ……赤と、黒い個体…… 美鳩:…いや、違う……!!  セルーペ:あーらぁ、楽しそうじゃないの~、マガツ! 美鳩:も、もう1体…!? 今日はマジの本気で、厄日なのこれ~!? マガツ:体が疼(うず)くか? セルーペ? セルーペ:あんたばっかり退屈よ。交代してくれない? マガツ:……ま、いいだろう マガツ:これで死ぬようじゃ、大したことがねえわけだからな マガツ:せいぜい観戦させてもらうぜ 0:マガツは笑みを浮かべた後、黒い霧を放ち、消える セルーペ:じゃあ、さっそく始めようかしら! 0:セルーペが指を鳴らすと、地上からドウルが出てきた 神音:…ドウルが出現した? 美鳩:出現っていうより…これは、まるで、あいつが出したような…? セルーペ:さぁ、ドウル達、たっぷりと暴れなさい! 神音:あなた、立てる!? 渚:っ……え? 神音:このまま真っ直ぐ走りなさい! 避難場所がある 神音:それまでこの身をかけても、全力で私が守るから 神音:「平愛(へいあい)機関」の名に懸けて…! 渚:は、はい! 0:渚は神音に連れられながら、赤い戦士とをみやった 渚:(逃げていく中で見たのは) 渚:(血のような赤い、炎) 渚:(それは、今まで体験した事のない) 渚:(異様で、底の見えない感覚だった) 0: セルーペ:ほーれ、さっそく! 赤城:血の気が多いな セルーペ:それが快感なのに 赤城:快感の矛先、ズレすぎだぜ? セルーペ:いいクチの、聞き方ねぇ!! セルーペ:噛み捉えろ、シャドウスネイカー! 赤城:これは…蛇か!? セルーペ:逃げたところで、どんどん追っていくわよ、それは! 赤城:くっ……! セルーペ:ほら掴まえた! そのまま大人しく、嚙み砕かれなさ……っ? 赤城:……はぁぁっ! セルーペ:拳から、炎……?  赤城:黒い蛇ごと、燃え破いてやる! セルーペ:なんて勢いのある。恐ろしいくらいに燃えるじゃないの…… 赤城:殴り燃えろ! 破炎掌(はえんしょう)! セルーペ:ちょっといやーな熱さね、これ セルーペ:すずみたいから、ここで喰らわずに消えるわ、バイバ~イ 赤城:っ! 消えた……か 0: 美鳩:神音さん! 雑魚ドウルがきてる! 神音:なら、一気に蹴散らす……! 神音:水来 地烈斬(すいらい じれつざん)! 美鳩:よし! ドウル撃墜…ってまだ出てくる!? 神音:邪魔くさいわね…… 渚:あ、足が… 神音:大丈夫、あと少しよ……! 赤城:まだのようだな 神音:…っ、あなた!? 赤城:どけ 渚:…ぁ 0: 渚:(一瞬の出来事か、時間が長かったのか、分からない) 渚:(血のように赤い存在は、出てきた灰色の化物を、「潰していく」) 渚:(いや、潰すような、壊すような、殺すような) 渚:(どう形容すればいいか、分からない) 渚:(底のない暴力に屈している化物たちが) 渚:(血のように赤く、無惨(むざん)に焼かれていくその様(さま)は) 渚:(私の記憶に、また強く刻まれる) 0: 美鳩:すごい…… 赤城:これで全部か 美鳩:ドウルの形状とも違うし、ピスラシステムとも違う…… 赤城:とっとと失せろ 神音:…そう言って失せる人、いる? 神音:ドウルは消えたわ。あとは貴方だけよ 赤城:… 0: 神音:? 何処に行くつもり!? 赤城:ドウル、ってやつはもう居ないんだろ 赤城:だから帰るんだよ 神音:待ちなさい! 赤城:待たねえよ 0:神音と赤城はにらみ合う 神音:…もし、私達の敵であるなら 赤城:容赦はしない、か 神音:… 赤城:俺は、どう見える? 神音:…え? 赤城:人間か? 化物か? 神音:…それは 渚:…ば…ばけ、もの… 0:渚の声が、冷たく響いた 赤城:…だとよ 神音:…貴方、何者なの 赤城:「ロストソルジャー」 赤城:……らしいぜ 美鳩:…ロストソルジャー 0:赤城はそう言って、神音たちの前から立ち去った 0: 0: 赤城:……ここまでこれば、大丈夫か 0:赤城は変身状態を解いた 赤城:……渚 赤城:当たり前だ。俺に、普通は許されない 赤城:この力を手にした時から、決まってんだ 美鳩:なんだかすごーい言葉が聞こえちゃったねぇ~ 赤城:誰だ!? 0:赤城が振り向くと、1人の少女が出てきた 美鳩:何者か!ときかれたら、答えるしかあるまいと! 美鳩:我ら! 平愛機関(へいあいきかん)特殊迎撃(とくしゅげいげき)団~! 美鳩:シャキーン! 赤城:……ああ? 美鳩:さっきまで怪物ばっかりいたのに、なんでこんなところに1人、ポツンといるのかな~ 赤城:逃げ遅れたんだ 美鳩:ふぅん。良く生き延びれたねぇ~、「ロストソルジャー」 赤城:……! 美鳩:リアクション、分かりやすいよ~。反応が消えた辺りを探してて良かった 赤城:……つけてたのか 美鳩:君、まさかあの赤い戦士なのかな? 怪我もしてるみたいだし? 赤城:だったら? 美鳩:事情聴取をします 赤城:なんだと? 美鳩:不審者放って置く警察なんかいる? もし、来なければ…… 赤城:撃つってか? 美鳩:これはピリッと痺れる電撃銃。ピスラを展開したら使えるんだけどね~。こうやって武器だけでも、出せちゃう 赤城:警察がすぐ銃抜くのかよ 美鳩:僕ら、平愛機関だから。それに君、普通の人間じゃないし 赤城:生身で喰らったら痛そうだ 美鳩:そんじょそこらにあるスタンガンのビリビリとは、違うけどねぇ~ 美鳩:大丈夫、お話するだけだから 赤城:勘弁するぜ……! 美鳩:あっこら! 逃げるな! 赤城:っ、あいつ…速い……!  美鳩:ただのオペレーターと思ったら、大間違い!「ライティール・ショット」! 赤城:あっぶねぇ、ガチで撃ちやがる……。なら、角を曲がって……っ!? 美鳩:あっちゃ~残念。君、逃げるの苦手? 赤城:行き止まりか……クソ 美鳩:それじゃ、大人しくしなさいな 0:美鳩は鋭い目つきで、赤城に銃を向けた 0:とあるビルの屋上 マガツ:いやぁ、味わいのあるショーだったぜ。おかげでニューカマーを見つけた セルーペ:高みの見物しちゃって、こっちは必死なのに マガツ:おいおい、代わったのはお前のほうだろ。ただその様子じゃ、楽しみの一つも感じれなかったようだな、ドウル代表? セルーペ:嫌味な言い方。……近づきたくないくらいの熱さよ。あの”新入り”君は マガツ:なんだ、加熱役にはもってこいだな セルーペ:勧誘でもする気? マガツ:どうだかな? なら、次は俺がやるとするか セルーペ:せいぜい、気を付けなさいな 0: 0:平愛機関 伊名場町拠点内 0: 美鳩:赤城陶也(あかぎとうや)、男性、飲食店員……ふむふむ、メモメモ 美鳩:こうやって履歴とると、ごく普通のフリーターにしか見えない 神音:なぜあなたは、「あれ」になれるの? 赤城:こっちばっかり喋らせて、そっちは自己紹介もなしかよ 神音:私は神音舞輝(かみねまいき)。こっちは、九条美鳩(くじょうみはと)。これでいいでしょ 赤城:適当だな……。それで?  神音:質問に質問で返さないでくれる? 赤城:……これだ 美鳩:ほぇ? なんか、すごい装置だね………見たことないなぁ。平愛機関のものでもないし 神音:この装置で、あれになれると? 赤城:ああ 美鳩:うぅ……ん、この装置……どういう構造なんだろう…… 神音:没収よ、それは 美鳩:えっ!? あぁ……じゃあ、ってうわっ急に燃えて! 赤城:俺が意識したら、そいつは手元に戻ってくる。残念だが、没収はできねえな 美鳩:どうなってんの 神音:誰からもらったのよ、それ 赤城:開発者だ。あの日から、これを使って…俺は、戦っていた 神音:開発者? それに、あの日というのは 赤城:俺がこの力を使えるようになった日だよ。……これ以上は言う気にならない 神音:黙秘するつもりね 赤城:わざわざ思い出したくないんだよ 神音:……? 美鳩:神音さん。無理に問いただすのは…… 神音:あんな化物になれたのよ? 何をしでかすか分からないわ。ここは徹底して…… 美鳩:確かに知りたい気持ちも分かるけど。仮にも一般人なわけだし 神音:……それは 美鳩:それにこの人、ドウルだけを倒しているみたいだから、機関にとって敵である可能性は、低いと思うし。今は、この人があの赤い戦士と同一人物っていう情報だけでも、価値がある 神音:……分かったわ。でも、驚異的な力を持っていることは確実。もし住民に被害が出たらシャレにならない 神音:だから、あなたは機関の管理下におかせてもらうわ 赤城:監視ってことか 美鳩:ってことで、事情聴取はここまで! いったん開放! 赤城:そりゃどうも 神音:言っておくけど、何も終わってないから……もし何かすれば 赤城:殺すってか、いいぜ 神音:えっ? 赤城:もし俺が、一線を超えるようなことがあったら、ひと思いにやってくれ 0: 0:赤城は平愛機関から出て、バイト先に戻ってくる 0: 赤城:……店の中は、めちゃくちゃだな。ドウルに荒らされたか 渚:先輩……! 赤城:……よう 渚:無事だったんですね! 良かった 赤城:時間はかかりそうだな 渚:これから数日は休業みたいです 赤城:だろうな 渚:…… 赤城:大丈夫か? 渚:えっ 赤城:震えてるぞ、手 渚:……店に帰ってきた時、遭遇して。一目散に逃げていたら……赤い化物と目が合って 赤城:怖かったんだな? 渚:怖かった、です。私も、焼かれるんじゃないかって 赤城:無理に明かるくすんな 渚:大丈夫です。赤城先輩の顔を見たら……っ、良かったって。つい、安心して 赤城:渚…… 渚:ごめんなさい。無事なのに泣くなんて、おかしいですよね 赤城:……何もおかしいことじゃない 渚:え? 赤城:……明日、祭りあったんだったな。一緒に、行くか 渚:……! はい! 0: 0:翌日。伊名場町。町内祭り 赤城:人が多いな 渚:人がいない祭りなんて、祭りじゃないですよ 赤城:冗談だ、冗談。行くか 0: 渚:はい!わたあめ 赤城:好きだな、それ 渚:美味しいですよ? 赤城:焼き鳥1つ、喰えれば十分だ、俺は 渚:買ってありますよ。はい 赤城:はやいな……。さんきゅ 渚:一緒に食べましょ 0: 渚:はぁー。美味しかった! 赤城:だな 渚:……良い空 赤城:……悪い空じゃないな 渚:先輩 赤城:っ?  0:渚が赤城の肩にゆっくり寄せる 渚:……あったかい 赤城:渚? 渚:夢に出てくるんです。赤い怪物が、あの目で、追いかけてくる夢を 赤城:……! 渚:私はそれが怖くて、逃げてて、叫んでて……。でも、最後には 渚:最後には、助けてくれた人がいて、それで夢は終わりました 0:渚はぎゅっと、赤城の裾を握る。透き通った渚の目が、赤城の眼をとらえた 渚:先輩の温度が欲しいんです。少しでも離れたら、あの眼を思い出しちゃうから 赤城:あったかいなんてものじゃねえよ 赤城:俺と居たら、焼かれちまうぞ 渚:なんですか、その冗談 0:そこで、赤城の携帯がなる 赤城:…悪い渚、ちょっと電話が 渚:…あっ 0:赤城はすぐに渚から離れる 赤城:……すぐに戻ってくる 渚:じゃ、じゃぁ。私、別の屋台、行ってきますね! 赤城:まだ喰わせる気かよ 渚:当たり前です。そういう時間ですから、今は 0:渚が先に行ったのを確認してから、電話に出る 赤城:……もしもし? 神音:悠長ね 赤城:お前、まさか 神音:何処にいるかくらい、分からないとでも思った? 赤城:徹底してやがるぜ 神音:ラブ&ピースのためだもの、いくらでも言いなさい 赤城:……渚が行きたがってたからな 神音:あぁ……あの時の。ドウルから保護した時も、ずっと震えていたわね 赤城:俺が与えちまったんだよ、あいつに 神音:えっ? 0: 0:数週間前 赤城:これで今日は、全部か……グッ 住民:ば、化物……っ! 赤城:逃げ遅れた……住民か……馬鹿やろう……はやくにげ……ッ!? 赤城:クソ…まだ、制御がきかねぇ…か…グゥ……ウウウッ! 赤城:グ…ウゥ……スベテ………コロ……ス!! グゥ……ガアアアア! 渚:あっ……ぁ 赤城:あれは……なぎ……さ? グゥ……ウゥ……! 0: 0:赤城は暴れる力に抵抗するように、渚のもとから離れた 0: 赤城:あいつの平和を、あいつの気持ちを、もう俺は踏みにじってんだ 神音:…… 赤城:だからこれは、せめてもの報いなのかもしれねえ 美鳩:じゃあ、思いっきり楽しんじゃいなよ! 神音:美鳩……。通信に割り込んできたと思えばあなた 美鳩:デートは邪魔するもんじゃないよ、神音さん 神音:私は万が一のことがあると思って 赤城:痴話喧嘩ならよそでやってくれないか? 神音:言ってくれるわねぇ……? 美鳩:まーまーまー! とりあえず、祭りも私らが見回りしてっから! 神音:調子のいい子ね…… 美鳩:平和を楽しんでもらうのが一番! それが我ら、平愛(へいあい)機関の理想の形でしょ! 神音:赤城君。もし何かあっても、変身しないこと 赤城:変身? 神音:あの姿になることよ 赤城:……何もなかったらな 神音:ふざけないで 赤城:ふざけてねえよ 神音:ッ。……この 赤城:(さえぎる)もう用はすんだろ。きるぞ 0: 0:赤城に電話を切られる 神音:(舌打ち)。あいつ 美鳩:そんなにギスギスしないでってば。ラブ&ピースが守られれば、それでいいわけだし 神音:……そうだけど。いちいちシャクにさわるわ 0: 0: 赤城:渚のやつ……どこいったんだか 0:そこで、遠くのほうから悲鳴が聞こえた 赤城:っ……? 悲鳴……!? 0: 0:祭りの喧騒から離れ、建物の上で、祭りの様子を眺めている影があった マガツ:いやぁ、賑やかいなぁ。高い所から眺めると、なお感じる マガツ:日常のちょっとしたイベントっていうのは、飽きた時に喰う菓子みたいなモンだ セルーペ:人間も平和ボケしてるわよねぇ。刺激があるまで、思考停止の生き物だもの マガツ:……お、あれは?   マガツ:はは、面白い食材がいるじゃねえか セルーペ:物好きねぇ マガツ:ああ、なにせ新人のお気に入りだ、ありゃ。挨拶にいってくるか。景気良くなァ 0:マガツは奇妙なデザインのバックルを腰につけ、構えを取る マガツ:……魔血、転命(まけつ てんめい)! 0:マガツの周りに黒いオーラが経ちこみ、黒い怪人のような姿に変わる マガツ:クク……さぁ、軽く滅日(ほろび)を、始めるか 0:祭り中の街中、ドウルが人々を襲おうとぞろぞろと現れる 赤城:クソッ! ドウルか! こんな時に…っ! 赤城:渚っ……! どこだ……! 神音:赤城君! 赤城:お前……! 神音:あなたは逃げなさい! 赤城:そんなことできるか! 神音:ッ! 一般人が、でしゃばらないで! 赤城:っ…!! 神音:そのわけの分からない力で、被害者が出たらどうするつもりよ! 赤城:持ってても、使わなきゃ意味がねえだろ! 渚:きゃあああっ! 赤城:っ! 渚の声……! 0: マガツ:なんだなんだ、シビれるじゃねえの 渚:っ……あ 美鳩:彼女をはなせ! マガツ:そう言われて簡単に離すやつはいねえ。悪の立ち回りは、いつの時代も決まってんのさ 美鳩:だったらもっと、ビリビリさせてやるっての。 マガツ:ほう……? 美鳩:ピスラシステム……起動! 0:美鳩は、腕に着けていた装置を起動させ、武装を展開する マガツ:平愛の兵器か…… 美鳩:これであんたをぶち抜く! マガツ:ほれ、やってみろ 美鳩:……っ! 「ライティール・ショット」!! マガツ:冥間(めいかん)を防げ。防黒ノ怨壁(ぼうこくのおんへき) 美鳩:っ、防がれた!? マガツ:こんなもんか? 喰らっても不味い飯だな、こりゃ 美鳩:片手で……? だったら、もっと出力を! セルーペ:それなら、私が相手しましょうかしらねぇ!! 美鳩:っ! こいつもいるのか……!  セルーペ:噛み捉えろ、「シャドウスネイカー!」 0:美鳩が銃攻撃で、蛇を消していくが、まだ現れる セルーペ:おーっほっほっほ! 残念! そっちばっかり意識してたら、ほら! 美鳩:があっ……! 0:美鳩が蛇を撃っている最中に、セルーペが蹴りをくわえ、飛ばされる 神音:美鳩ッ! 美鳩:ごめん、ミスった…… 神音:……あいつは、昨日の黒い個体! マガツ:おお、怖い怖い。 愛と平和を好(この)んでるのに、向けるのはしかめっ面か マガツ:矛盾した味を提供してくれるじゃねえのさ 神音:……なめてるの? マガツ:褒めてんだよ。守ってくれなきゃ、悲鳴という名の料理が楽しめない 神音:……こいつ 美鳩:熱源反応が、あまりにも違う。あいつら……やっぱり普通のドウルじゃない。油断は禁物だよ、神音さん マガツ:客人が揃ったな。さっさと喰っちまうところだったぜ? 赤城:渚!! マガツ:さて。さすれば、そこの新人。俺の興味を満たせ。 赤城:相手をしろってことか マガツ:察しがいいのは嫌いじゃない。もし断るなら、この女は……食材だ 0:マガツは渚の髪を引っ張った 渚:っ……! 美鳩:渚さん……! 赤城:……上等だよ 神音:っ……あなたまさか……渚さんがいるのよ!! 赤城:それでも、黙って見ているわけにはいかねえんだよ!! マガツ:……そうだよなァ。自分の姿は、さらさねえと 0:マガツは不敵に笑う マガツ:人間、キレイ事を求めちまいたくなる……何もクセのない味ばっかりをな。 マガツ:だが、それは真実の味じゃあねえ。見えないもの、隠したいもの、それを隠せば隠すほど…見えなくすればするほど、影の味は、どんどんと深みを増していく……。熟成された味を、提供してくれるんだなぁ、これが 渚:……えっ? 神音:辞めなさい!! 0:赤城はバックルと腰に装着し、構えを取る。 0: 渚:…せん……ぱい……? 0: 赤城:魔血 転命(まけつ てんめい) 0:瞬間、赤城の周りに炎が現れた 渚:……あ……あ………そんな……うそ 0:渚の震えたことあいはんするように、赤城の体は、赤い戦士へと変貌した 赤城:ごめんな、渚 0: マガツ:いいねぇ……。こいつは美味だ 赤城:場所を変えろ、てめぇとのサシだ マガツ:ああ。お望みどおりに。この女の絶望は味わった。腹八分目にしねえとな 赤城:…っ! 0:マガツは黒い霧を展開し、赤城と共に姿を消した 0:消えたと同時に、渚がマガツから解放される セルーペ:本当に食いしん坊ねぇ、あの人は。胸やけ起こしそう 美鳩:……2人が、消えた。熱源反応が移動してる 神音:ふざけるのも、たいがいにしなさいよ… 0:神音は、渚に声をかける。渚の表情は見えない 神音:…渚さん 渚:……はい 神音:前にも言ったと思うけど、何回でも言う。あなたはどんなことがあっても、最後まで守り抜く。貴方の命は、脅かさないから 0:神音は強く、渚に伝えた 神音:……ピスラシステム、起動! 0:神音は、腕に着けていた装置を起動させ、武装を展開する 神音:美鳩、いける? 美鳩:当然。そっちこそ、私のオペ、なくてもだいじょぶ? 神音:ええ 美鳩:よーし、ラブ&ピースのために、いっちょやりますか! セルーペ:準備できたかしら?  神音:待ってくれるなんて、優しいのね セルーペ:楽しみがいがないからねぇ……じゃあ、まとめて仕留めてあげるッ! 美鳩:来るっ! セルーペ:嚙み捉えろ……! 「シャドウスネイカー」ァァァ! 神音:数が……多すぎる! これじゃ、本体に攻撃が届かないっ! セルーペ:ほれほれ! 無様に!豪華に! 怯え続けるのよ!! それが人間が与える娯楽! セルーペ:さぁ、骨の髄(ずい)まで噛まれて、快楽の餌(えさ)となりなさいな! 美鳩:神音さん! 私が、あれを全部撃つ……! その隙に! 神音:頼むわ! 美鳩:マギアルギー……フル回転…電撃弾、作成完了! 美鳩:連(つら)なり痺(しび)れろ!「ライティール・フルショット」! セルーペ:なにっ!? 美鳩:さっきやられて……分析がすんでるんだよ! ……今だ!神音さん! 神音:マギアルギー、フル回転…はぁぁっ! セルーペ:奴の刀が……水に覆われて……いや、体も? 神音:青(あお)き調和(ちょうわ)へ、回(まわ)り穿(うが)つ! 神音:水波 羅旋突(すいは らせんとつ)! セルーペ:ぐっ! ぅぅ……。 セルーペ:あっちは熱い炎くんで……こっちは、鋭い水っ子に、ビリっと痺れる嬢ちゃん(坊ちゃん)ねぇ……温度差が、激しいのよ全く……! 神音:終わりよ! セルーペ:ノーエンド! 置き土産よ! 0:セルーペは目然に黒蛇を放ち、姿を消す 神音:っ!邪魔っ!!  ……美鳩、あのドウルは!? 美鳩:ドウルの反応、消失……。他のドウルも、一斉に消えたみたい 神音:目的は、あの黒い個体のため……ということかしら 0:神音は、渚に歩み寄った 神音:大丈夫?……じゃない、わね 渚:ごめん……なさい……もう 神音:無理に話さなくていいわ 渚:頭が……ぐちゃぐちゃになりそうで……もう、……いや…… 神音:……っ 美鳩:いったん拠点に戻ろ、神音さん 美鳩:今は……渚さんを落ち着かせないと 神音:ええ…… 0: 渚:(この日以降、私はあの夢を見る事は、なくなった) 渚:(そっか……ずっと最初から、おかしかったんだ) 渚:(私の知ってる赤城さんは、もうそこには居なかったんだ…) 0: 0:人気のない。廃ビルの近く マガツ:さて、昨日の続きといこうじゃねえか、新入り 赤城:とっととケリをつけてやる マガツ:まぁゆっくり行こうぜ……早食いは寿命が縮んじまう。 マガツ:……どうだ? ロストソルジャーになった気分は? 赤城:良いとは言えないな。ただ、前よりも力はなじんできたか マガツ:コントロールが効いてきたか。優秀だな 赤城:褒められても、特段嬉しくないぜ マガツ:……ピュアな関係だったんだろ?  あの女と 赤城:お前に言ったところでどうなる? マガツ:いやぁ、しっぽり味わいたくてなぁ 赤城:何? マガツ:愛していた人間が、最も恐怖するものだった……ひでぇ話じゃねえか……。絶望の物語は……非常にそそるぜ 赤城:そのために、わざわざ渚を掴まえたと? マガツ:お前と一度手合わせしたいってのは本音だ……。でもそれだけじゃつまらねぇ。せっかくなら食事もしたいだろ? 赤城:ふざけやがって…… マガツ:大真面目だぜ? 俺は。 ガキのように走り回らず、座ってしっかり食事をするさ。メニューの名前は……「隣り合わせの希望と絶望」。 マガツ:相手の光が見えた時、それは同時に闇を認識するってことだ。その隣り合わせになった、光と闇の狭間の中に、何ともいえねぇ味が秘められてるのさ。いいダシがとれるぜ? 赤城:そんな味はごめんだ マガツ:好みが合わねぇなぁ。……にしても、残念だったな。お前がバケモンになっちまったばかりに 赤城:構わねえさ マガツ:ほう? 赤城:どうせいつかはバレるんだ。自分がヒーローになれるなんざ、微塵も思ったことはないぜ マガツ:……いいね。面白い新人だ。先輩を楽しませるのは実に良き。それでこそやりがいがある!! 赤城:っ! 黒い爪!? マガツ:狂(くる)い乱(みだ)れろや……「邪狂 爪乱」(じゃきょう そうらん)! 赤城:ぐっ……くそ……ったれ! マガツ:ぼさっとしてたら、えぐられちまうぜ? 赤城:やらせねえよ……破炎掌(はえんしょう)! マガツ:おっと…。しょっぱなから熱い殴りだな 赤城:こういうのは好みか?!  マガツ:ああ、焼き物にされちまう 赤城:拳だけじゃねえぜ……はぁっ! 0:赤城は一回転して蹴りを放ち、マガツはそれを止める マガツ:ほぅ、大したもんだ。空を切っただけでも、「暴れ」を感じる マガツ:たぎってる…たぎってるな、はっは 赤城:何の話だよ? マガツ:守るなんて類(たぐい)じゃねえ。そう、これは…… マガツ:純粋な破壊(はかい)だ! 0:マガツはそう言い、赤城の攻撃をはねのけた後、反撃を繰り出す 赤城:違うな。それはお前が、勝手に決めてるだけだ! 0:赤城はそれを避けて、すかさず反撃を行う。マガツの胸部に赤城の拳がヒットした マガツ:…ぐっ 0:マガツはそれを受けつつ、距離を取る 赤城:愛と平和は守れない。人でも、なんでも。 赤城:守りに向いてねえのさ、俺は 赤城:でも、力をめいいっぱい入れて、目の前にいる敵を倒す事なら、できる マガツ:やってしまったほうが早い、と 赤城:殴る蹴るは、俺の性にあってるんだ。次は潰すぜ マガツ:なるほど…。個人的事情も介していないこの力…復讐の恨みでもない。期待の新人だな、こりゃ。 赤城:そいつはどうも マガツ:喰えないが、いい味だ……! 赤城:…!? なんだ…? 0:マガツは両手を広げて、目然に黒い大きな玉を形成し、大きくなっていく マガツ:黒(くろ)の中で、糧(かて)となれ マガツ:黒魔 焉冥波(こくま えんめいは)! 0:瞬間、黒い波のようなものが、勢いよく赤城に向かって放たれた 赤城:…っ! マガツ:爽快だぜ! 滅亡へ導く力は! マガツ:苦しみや絶望ってのは、これだから美味なんだよ……! 赤城:…赤(あか)に焼かれろ マガツ:…? 消えた? 0:赤城は炎の翼のようなものを広げ、天高く飛び上がっていた マガツ:いや…空中か…! 赤城:「赤魔 爆炎蹴(せきま ばくえんしゅう)」! 0:血のような赤い炎を伴い、マガツに向かって空中から勢いよく蹴りを放つ マガツ:ぐっ……がァァァ! 0: マガツ:はぁ……ハハ マガツ:良くない痛みだぜ。欲しくない味だ 赤城:くだばらねえか。いや、寸前で何か張ったか? マガツ:先輩は敬(うやま)ないとな……。んじゃ、このあたりで退散するとしようか… マガツ:冥(みょう)の霧となれ マガツ:「冥楼(めいろう)」 0:マガツは黒い霧を出し、その場から消えた 赤城:…消えやがったか 0: 0:それから数日後 0:伊名場町内 神音:遅いじゃない 赤城:別に時間は決まってねえだろ。ちゃんと来ただけでも褒めたらどうだ? 神音:うるさいわね。……あれからどうなったの? 赤城:逃げられた。そんだけ 神音:……そう 赤城:問いたださねえのか? 神音:その件はいいわ。あなたが話したいときに話なさい 神音:それに今日はそのつもりで来たわけではないのよ 赤城:なに? 神音:渚さんに伝えたわ。あなたが赤い化物になれること。そのことを口外しないようにと 赤城:それで、渚は? 神音:納得はしてくれた。整理はできてない、ようだけれど 赤城:…そうか。 0:そこで、赤城のスマホが鳴る 赤城:……電話? 渚から……? 神音:っ…… 0: 渚:……先輩 赤城:ああ、俺だ 渚:そうですね。声は、私の知ってる先輩です 赤城:……バイトは辞める 渚:えっ? 赤城:もうお前とは会わない 渚:…… 赤城:俺のことは忘れろ 赤城:そんなことすれば、お前が怖がっている化物も、一緒に思い出してしまう 渚:……ごめんなさい 赤城:無事で良かったよ。……じゃあな 0:赤城はそう言って電話を切る 神音:馬鹿じゃないの、あなた 赤城:あ? 神音:よりによって、彼女の前で、姿を変えて 赤城:俺がこの力を持った時から、いずれこうなると思っていた。それがはやかっただけだ 神音:あなたは……。いつ……穏やかになるつもりなのよ 赤城:っ? 神音:自分が化物だといって、彼女との繋がりを断ってまでして、それでまた戦って…… 神音:あなたの平和は、どこにあるの? 0:神音が真剣な表情で、かつどこかもの悲しげに、赤城を見る 赤城:そんなもの、いらねえよ 神音:……っ! ……はぁ 0:神音は一瞬怒りかけるも、ため息をつく 赤城:用がすんだなら帰るぜ 神音:待ちなさい 赤城:? まだあるのか 神音:平愛(へいあい)機関から、法来町(ほうきちょう)の拠点に来るように、言われたわ 赤城:法来町(ほうきちょう)……隣町か。わざわざ異動のことを伝えに来たのか? 神音:あなたは管理下って言ったの、忘れたわけじゃないよね? 赤城:それは変わらないと。成程、くぎを刺しにきたか 神音:ええ、あなたも拠点に来てもらうわ 赤城:……は? 神音:平愛機関の一員として働いてもらうのよ 赤城:……ちょっと待て 美鳩:おめでとう赤城さん! 赤城:うおっ!? 美鳩:これで機関の仲間入りです!! ドンドンパフパフ! 赤城:……いやだから! どういうことだ!? 美鳩:それはこの私からみーずから、説明しよう! あれから上層部に報告すると……「あくまで人を助けているなら、その力を正しい所に使った方がいい」って言われちゃって、あーなるほどそれもそうですねぇー納得でござるー! ってなったので……試しに神音さんと相談してみたら 神音:こういう結果よ。あなたと同じ組織の下なんて、クソみたいにシャクにさわるけど 神音:考えれば、貴方を監視できる上に、機関の役に立つわけだし 赤城:俺の許可は!?  神音:あなたに人権なんてないわよ。そんな力を持ってるんだし。機関にはすでに了承を受けたって返しておいたわ。 赤城:こ、こいつ……! 美鳩:まぁまぁ! というわけで、改めてよろしくね! 赤城さ~ん! 0: セルーペ:ぐっ…… マガツ:酷い顔だな セルーペ:少し、舐めていたわ マガツ:ま、あんだけドウルを狩ってりゃ、日に日に強くなるわな……人間も セルーペ:全然、飽きたりないって顔してるわよ、マガツ マガツ:そりゃそうだ。本調子じゃねえからな マガツ:こんなもん、ただの始まりだ。始まりがなきゃ……滅亡はない マガツ:そう、滅びこそ、極上の味だ…… 0:マガツは大きく手を広げ、笑う マガツ:さて、この世界が、どんな結果を見せ、どんな味をもたらしてくれるのか マガツ:せいぜい楽しみだぜ