台本概要

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タイトル 願わくはーーー
作者名 akodon  (@akodon1)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 千年の昔に想いを馳せつつ。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
不問 -
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
: : : :『願はくは 花の下にて 春死なむ』 :(ねがわくは はなのしたにて はるしなん) : : :そう歌うほど桜を愛した先人は、 :願い通り桜の頃に死を迎えられたのだと、 :そう知ったのはごく最近のことで。 : : :自分の望んだタイミングで、 :望みどおりの最期を迎えたいだなんて、そんな話。 :まるで良く出来たドラマみたいだね、と。 : : :満開の桜の下。 :そんなことを呟けば、 :夢がないなぁ、と隣を歩きながらキミは笑った。 : : : :そんな風に笑うけれど、 :自らの終わりを生きているうちに考えることの、どこに夢があるのだと。 : : :そう言いかけて、思い留まる。 : : : :確かに咲き誇る桜の花はとても美しくて。 :春の柔らかな陽射しに照らされて、 :この下で眠るように最期を迎えられたなら、それはそれで、なんて。 : : :考えてしまう程度には、 :自分もその花を想う心があると気付いて。 : : :それを見透かしていたかのように、 :キミはその花の下で笑っていて。 : : :なんだか少し頬が熱くなって。 : : :それを誤魔化すように視線を彷徨わせ(さまよわせ)ながら、ふと思い出す。 : : : :この国には言霊(ことだま)という考えがあるそうで。 :口に出して紡いだ願いは、言の葉(ことのは)にのって神の元へと届くのだという。 : : :だから、きっと先人も桜への想いを歌に込めて、何度も何度も歌ったのだろう。 : : :願わくは、ああ、どうか願わくは、と。 : : :それ程までに恋焦がれた花に見守られ、 :生涯を終えた彼は最期に何を思ったのだろうか。 :残念ながら今となっては、知る術(すべ)なんてないのだけれど。 : : : :そんな風に小賢しく(こざかしく)あれこれ考えるボクの耳に、不意に聞こえたキミの声。 : : :綺麗だね。 : : :それは真っ直ぐに届いて、響いて、シンプルに胸を打って。 : : :ああ、そうか。 :案外、単純だったかも、なんて。 :花のようなその笑顔を見ながら、ふと思い立つ。 : : :もしーーーもしも、言霊というものがあるとして。 :ボクは何を言の葉にのせて願おうか。 : : :うん。たとえば、そうだな。 :二番煎じは少し気恥ずかしいけれど。 :先人にあやかってみるのなら、 : : :願はくは キミの元にてーーー : : :口に出したところで、花の下。 :桜色のキミが、優しくボクの手を引いた。 : : :

: : : :『願はくは 花の下にて 春死なむ』 :(ねがわくは はなのしたにて はるしなん) : : :そう歌うほど桜を愛した先人は、 :願い通り桜の頃に死を迎えられたのだと、 :そう知ったのはごく最近のことで。 : : :自分の望んだタイミングで、 :望みどおりの最期を迎えたいだなんて、そんな話。 :まるで良く出来たドラマみたいだね、と。 : : :満開の桜の下。 :そんなことを呟けば、 :夢がないなぁ、と隣を歩きながらキミは笑った。 : : : :そんな風に笑うけれど、 :自らの終わりを生きているうちに考えることの、どこに夢があるのだと。 : : :そう言いかけて、思い留まる。 : : : :確かに咲き誇る桜の花はとても美しくて。 :春の柔らかな陽射しに照らされて、 :この下で眠るように最期を迎えられたなら、それはそれで、なんて。 : : :考えてしまう程度には、 :自分もその花を想う心があると気付いて。 : : :それを見透かしていたかのように、 :キミはその花の下で笑っていて。 : : :なんだか少し頬が熱くなって。 : : :それを誤魔化すように視線を彷徨わせ(さまよわせ)ながら、ふと思い出す。 : : : :この国には言霊(ことだま)という考えがあるそうで。 :口に出して紡いだ願いは、言の葉(ことのは)にのって神の元へと届くのだという。 : : :だから、きっと先人も桜への想いを歌に込めて、何度も何度も歌ったのだろう。 : : :願わくは、ああ、どうか願わくは、と。 : : :それ程までに恋焦がれた花に見守られ、 :生涯を終えた彼は最期に何を思ったのだろうか。 :残念ながら今となっては、知る術(すべ)なんてないのだけれど。 : : : :そんな風に小賢しく(こざかしく)あれこれ考えるボクの耳に、不意に聞こえたキミの声。 : : :綺麗だね。 : : :それは真っ直ぐに届いて、響いて、シンプルに胸を打って。 : : :ああ、そうか。 :案外、単純だったかも、なんて。 :花のようなその笑顔を見ながら、ふと思い立つ。 : : :もしーーーもしも、言霊というものがあるとして。 :ボクは何を言の葉にのせて願おうか。 : : :うん。たとえば、そうだな。 :二番煎じは少し気恥ずかしいけれど。 :先人にあやかってみるのなら、 : : :願はくは キミの元にてーーー : : :口に出したところで、花の下。 :桜色のキミが、優しくボクの手を引いた。 : : :