台本概要
186 views
タイトル | ハグがしたくて何が悪い! |
---|---|
作者名 | 天びん。 (@libra_micchan) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
「○○したくて何が悪い!」シリーズ 第3話 繁忙期に入り疲れ果てている奥さんと、どうにか癒してあげたい旦那さんの攻防戦。 ラブコメ的なお話です。 186 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
悠莉 | 女 | 65 | 四宮悠莉。普通の会社員。隆とは結婚2年目。 隆のことは普通に愛しているものの、押しに弱い性格であるため、隆に振り回される日々を送っている。 最近繁忙期に突入してしまい、身体はモチロンのこと、心に余裕がない。 素直になれない自分をもどかしく感じている。 名前の読みは「シノミヤユウリ」。 |
隆 | 男 | 56 | 四宮隆。普通の会社員。悠莉とは結婚2年目。 妻の悠莉を超溺愛している。 悠莉の仕事が繁忙期に入り、やつれていく姿を見て何とかしてあげたいと奔走する…が、案の定暴走もする。 また、悠莉不足が際立っているため、悠莉に癒されたいと切に願っている。 名前の読みは「シノミヤタカシ」。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:【タイトル】
: 「○○したくて何が悪い!」シリーズ 第3話
: ハグがしたくて何が悪い!
:
:
:【登場人物】
:
悠莉:四宮悠莉。普通の会社員。隆とは結婚2年目。
悠莉:隆のことは普通に愛しているものの、押しに弱い性格であるため、隆に振り回される日々を送っている。
悠莉:最近繁忙期に突入してしまい、身体はモチロンのこと、心に余裕がない。
悠莉:素直になれない自分をもどかしく感じている。
悠莉:名前の読みは「シノミヤユウリ」。
:
隆:四宮隆。普通の会社員。悠莉とは結婚2年目。
隆:妻の悠莉を超溺愛している。
隆:悠莉の仕事が繁忙期に入り、やつれていく姿を見て何とかしてあげたいと奔走する…が、案の定暴走もする。
隆:また、悠莉不足が際立っているため、悠莉に癒されたいと切に願っている。
隆:名前の読みは「シノミヤタカシ」。
:
:
:
:
:
:【本編】
:
悠莉:(端的に言って、繁忙期の一日は長い。朝は9時に出社し、12時までひたすら事務仕事をこなす。昼食を食べたら現場に向かい、作業の進捗確認・関係者による打合せ。それが終わり次第会社にとんぼ返りして課内ミーティングで進捗状況の共有や翌日の業務内容の確認を行い…ようやく仕事から解放されるのは決まって22時を回ってからだった。)
:
悠莉:あー…今日も何とかやり切った…。歩き回ってばかりだから足パンパンだし…。うわ!もうこんな時間?!早く家帰ってご飯作らないと、隆待ってるかも…。
:
:
0:スマホの通知音が鳴る。
:
:
悠莉:あれ?隆からLINE…何だろ?
:
隆:『悠莉、今日も一日お仕事お疲れ様。今日は早く帰れたから俺が夕食作っておいたよ。ある程度家事は引き受けておくから、ゆっくり帰っておいで☆』
:
悠莉:隆…!!ありがとうー!!
:
悠莉:(普段の愛情表現は過剰すぎて正直対応に困る時も多いけど、こうやって自然に私のことを気遣ってくれるから好きなんだよね…。ホント、これに関しては感謝しないとなぁ…。)
:
:
0:悠莉、自宅のマンションに到着。
:
:
悠莉:ただいまー。
:
隆:悠莉、お帰り。
:
悠莉:夜ご飯作ってくれてありがとう。もー、全身くたびれちゃって、身体が悲鳴上げてるよ…。
:
:
0:悠莉が肩を回すと、いかにも痛そうな音が鳴った。
:
:
隆:うわ、すごい音だね…肩凝り?デスクワークの時にちゃんと定期的に伸びをしたり、身体動かしたりしてる?
:
悠莉:事務仕事できる時間帯限られてるから、そんな暇ないよー。
:
隆:あらら。とりあえず風呂も沸いてるけど…飯と風呂どっちにする?
:
悠莉:ご飯かな。あまり遅い時間に食べると太っちゃうし。
:
隆:…悠莉はもう少し肉付けてもいいと思うけどな。
:
悠莉:おい、どこ見てんだコラ。(溜息)…やっぱり男性には女性の悩みなんて分からないんだろうね。隆なら体型気にして平日毎朝走ってるから「少しは私の気持ちが分かるかなー?」と思ったのに…。
:
隆:痩せて周りから良く見られたいって気持ちは分からなくもないけどね。でもそのせいで俺の悠莉が周りの有象無象からちょっかい出されるのは嫌だし、俺自身は悠莉がカッコいいと思ってくれているならそれでいいからさ。
:
悠莉:隆…。
:
隆:それにもう少し肉がついてた方が抱き心地が柔らかくてなんとも―
:
悠莉:(すごく嫌そうに)はい、台無し。
:
隆:ハハハ。ほら、熱いから火傷しないようにね。
:
悠莉:あ、シチューだ!メッチャ嬉しい!!
:
隆:野菜たっぷり入れて煮込んだから栄養もしっかり摂れるよ。
:
悠莉:うんうん!私、隆が作るシチュー本当に大好きなんだよね…ブロッコリーとか生じゃ絶対食べられないけど、シチューに入ってたら食べれるし。
:
隆:はいはい、感想は寝る前に聞くから。明日も早いんだし、早く食べて風呂入ってきなよ。
:
悠莉:うん、ありがとう!いただきまーす!!
:
:
0:ご飯を食べ終え、お風呂から上がった悠莉がリビングに戻ってくると、隆が悠莉の食べた食器を洗っていた。
:
:
悠莉:あ…ごめん、後片付けまでさせちゃって…。
:
隆:いいよ、いいよ。どうせ暇してたし。…これからホットミルク作るけど…悠莉も飲む?
:
悠莉:え!ありがとう。でも今日は頼りっぱなしだし、私にやらせて。
:
隆:そうか?…じゃあ、お願いしようかな。
:
:
0:牛乳を温め容器に注ぐと、洗い物を終えた隆と一緒にリビングに移動し、ソファに座る。
:
:
隆:そういえば、風呂でゆっくりして、少しは身体の疲れ取れた?
:
悠莉:うん、ちょっとは楽になったよ。ちゃんと足もマッサージしてきたし。
:
隆:そっか、良かった。
:
悠莉:やっぱりお風呂はいいよねー、忙しい時はシャワーでさっと済ませちゃうけど、この頃急に寒くなったし、暖を取りながら疲れを癒せるんだもん。
:
隆:そうだな。…今度お互い休みが取れたら久々に温泉にでも行くか。
:
悠莉:温泉?!行きたい!!
:
隆:今の時期なら紅葉も見れるし、平日ならそこまで混んでないだろうからな。
:
悠莉:うん、そうだね!楽しみだな~。
:
隆:あぁ。
:
:
:
隆:…話は変わるけど、悠莉。
:
悠莉:?何?
:
隆:ハグしていい?
:
悠莉:…は?
:
隆:ハグしていい?(キリッ)
:
悠莉:いや…聞き取れなかったから聞き返してるとかじゃないし、どっちかっていうと聞き間違いであってほしいと思って聞き返してるし、そして何故真顔で言い直した?
:
隆:今俺は、猛烈に悠莉にハグして癒されたいからだ。
:
悠莉:自分の欲望に忠実過ぎるでしょ!
:
隆:我、癒しを欲す。
:
悠莉:言い方を変えれば良いってものでもないから!そうだとしてもタイミング!何で今?!本当に急すぎ!!
:
隆:何言ってるんだ?俺はいつ、いかなる時でも常に悠莉とハグしたいし、隙あらばイチャつきたいと思っているぞ?(ドヤ)
:
悠莉:いや、だから怖いって!言葉の端々どころか全体から恐怖をひしひしと感じてるよ!!
:
隆:ハハハ、大袈裟だなぁ…。そもそも前に「どこぞの家庭では定期的にハグをするように習慣化してるらしい」って悠莉が言ってたんじゃないか。
:
悠莉:それ、フィクションの産物でしょうが!!その時やってたドラマの話をしただけだよ!!
:
隆:えー、「隆、私もハグしてほしいなー」って言ってなかったっけ?
:
悠莉:言ってないから!勝手に記憶を捏造しない!!
:
隆:え~、言った気がしないような、気がするような、(いい笑顔で)やっぱり言ってたような気がする☆
:
悠莉:言ってません。それは隆の幻聴です。
:
隆:なん…だと…?!
:
悠莉:いや…ショック受けすぎでしょ…。たかがハグが出来ないくらいで…。
:
隆:たかが?…たかが??(溜息)…。本当に悠莉は、もう…
:
悠莉:何?もしかしてまたハグの本当の価値に気付いていないとか言うの?
:
隆:そのまさかだ!
:
悠莉:…。
:
隆:いいか?ハグというのは、非常に意味のある行為なんだ。
:
悠莉:はぁ。
:
隆:ハグには感情面を安定させたり、ストレスを発散させたり…疲れた身体をリラックスさせる効果があると言われているんだ。ハグをするためにお互い密着するだろう?その時にお互いの体温が伝わって、「自分は一人じゃない」って触覚から認識させるんだ。そのおかげで相手のことをより信頼できるようになったり、守られているような感覚から心を許してより甘えられるようになったり…つまりは、大切な人との言葉を必要としない大事なコミュニケーションの1つなんだよ。
:
悠莉:うーん…?
:
隆:女性の中には男性から頭を撫でてほしいと思ったりする人もいるだろう?そういう人達も同じで、「好きな人に甘えたい」、「好きな人から甘えられたい」って想いの表れなんだよ。
:
悠莉:確かにそういう人達はいるってたまに聞くけど…。
:
隆:ここまで俺が話したことを踏まえて思い返してみると、何かしら思い当たることはあるんじゃないか?悠莉だって「ハグをしたい!ハグしてほしい!」と思うことはあるだろう?
:
悠莉:(隆の台詞が言い終わる前に)別に?
:
隆:また即答かよ…!少しは考える素振りをしてくれたっていいじゃないか!
:
悠莉:うーん…別にないかな?
:
隆:それはそれで悲しい!
:
悠莉:そんなこと言われても、私は言われたとおりにやっただけだし…。
:
隆:ってか、えっ?えっ??…悠莉冗談だよな?俺を動揺させて楽しんでるだけだよな??
:
悠莉:いや、大真面目に言ってるけど。
:
隆:ハグしたい、されたいと思ったことがない…だと!?
:
悠莉:仕方ないじゃない!事実そう思ったことがないんだから…じゃあどうしろっていうのよ。
:
隆:ハグして?
:
悠莉:断る。
:
隆:悠莉ー…。
:
悠莉:こ・と・わ・る!!
:
:
0:悠莉はソファから立ち上がると、隣の書斎に駆け込み、内側から鍵をかけた。
:
:
隆:あっ!?コラ、悠莉!鍵は掛けないって結婚前に約束したじゃないか!
:
悠莉:ハグしたいって…結局隆がしたいだけでしょ…?こうでもしないと気が休まらないのよ…許して。
:
:
0:扉から離れてふと視線を部屋の奥へ向けると、デスクスタンドの電気が点きっぱなしであることに気づく。
:
:
悠莉:(あれ?電気点きっぱなしじゃない…。隆にしては珍し…―!)
:
:
0:悠莉が机を見ると、普段何も置かれていないはずの机上は幾多の書類で溢れかえっており、それらすべてにたくさんの文字が書き込まれている。傍には隆が仕事で使っているノートパソコンと悠莉と共用で使っているタブレットも置いてあり、どれも使用した跡が見て取れた。
:
:
悠莉:(これ…隆こんなに仕事持ち帰ってきてたの?職種が違うから内容は分からないけど、この量が異常だってことくらいは誰にでも分かる…。もしかして、今日早く帰れたって…無理やり仕事切り上げて帰ってきたの?―でも、何のために?)
:
:
0:共用のタブレットを開くと、そこには身体の疲れを取る方法や体調を整える方法、リラックスする方法について書かれたサイトが数えきれないほど開かれていた。
:
:
悠莉:え…これって…。
:
悠莉:(『シャワーより湯船に浸かった方が血行が良くなり…』『ホットミルクなど温かい飲み物を飲むと従来よりも質の良い睡眠が…』『ストレスが溜まっていたり、余裕がなくて気が休まらない時にハグをすると、リラックスするだけでなく自律神経にも働きかけ…』これって全部今日隆がしてくれたことじゃ…もしかして、これ全部私のために?今日隆が仕事持ち帰ってでも早く帰ってきたのも、繁忙期の私を気遣って―)
:
悠莉:…。
:
:
0:悠莉が鍵を開けてリビングに行くと、隆は放心状態でソファに座っていたが、すぐに悠莉のところへ飛んで来る。
:
:
隆:悠莉、ごめん!ちょっとやりすぎちゃったよな…怖がらせちゃったか?
:
悠莉:…。
:
隆:あー、その…怖がらせるつもりなんてなかったんだ!むしろその逆っていうか…!悠莉に―
:
悠莉:(ギュッ)
:
隆:え?ゆ…悠莉…?
:
悠莉:(ギュー)
:
隆:―!…よしよし。
:
悠莉:…私子供じゃないし。
:
隆:はいはい。
:
悠莉:でも、ありがと。私のこと気遣ってくれて。
:
隆:んー…、悠莉は頑張り屋さんだからね。最近繁忙期に突入して結構疲れも溜まってやつれてるみたいだったからさ、俺が少しでも労わりたかったんだよ。
:
悠莉:あんなに仕事持ち帰ってたのに、それでも労わりたかったの?
:
隆:…あー、そっか。書斎に閉じ籠ってたんだからそりゃ見られるよな。俺にとっては仕事なんかと比べ物にならないくらい悠莉の方が大事なんだよ。それに仕事は家でもできる範囲のしか残さなかったから、問題ない。
:
悠莉:…でも、しつこすぎるのは嫌。
:
隆:だよなぁ…ごめん。
:
悠莉:ほどほどなら、考える。
:
隆:…善処するよ。
:
悠莉:…隆。
:
隆:ごめんごめん、だって悠莉のことが好きすぎて―
:
悠莉:好き。
:
隆:…。
:
悠莉:…。
:
隆:(ポカンとして)…夢?
:
悠莉:現実。
:
隆:(微笑む)…そっか。じゃあ、お礼に肩もみでもしてあげようかな。
:
悠莉:ありがとう。でも、あんまり気遣わなくて平気だよ?隆だって仕事忙しいだろうし…。
:
隆:俺がしたいんだよ。それに久々に言ってもらえて今メチャクチャ嬉しいからね。
:
悠莉:…口にしないだけで、いつも思ってるよ。
:
隆:…何なら全身マッサージしてあげようか―★
:
悠莉:(隆の台詞が言い終わる前に)調子に乗るな。
:【タイトル】
: 「○○したくて何が悪い!」シリーズ 第3話
: ハグがしたくて何が悪い!
:
:
:【登場人物】
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悠莉:四宮悠莉。普通の会社員。隆とは結婚2年目。
悠莉:隆のことは普通に愛しているものの、押しに弱い性格であるため、隆に振り回される日々を送っている。
悠莉:最近繁忙期に突入してしまい、身体はモチロンのこと、心に余裕がない。
悠莉:素直になれない自分をもどかしく感じている。
悠莉:名前の読みは「シノミヤユウリ」。
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隆:四宮隆。普通の会社員。悠莉とは結婚2年目。
隆:妻の悠莉を超溺愛している。
隆:悠莉の仕事が繁忙期に入り、やつれていく姿を見て何とかしてあげたいと奔走する…が、案の定暴走もする。
隆:また、悠莉不足が際立っているため、悠莉に癒されたいと切に願っている。
隆:名前の読みは「シノミヤタカシ」。
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:【本編】
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悠莉:(端的に言って、繁忙期の一日は長い。朝は9時に出社し、12時までひたすら事務仕事をこなす。昼食を食べたら現場に向かい、作業の進捗確認・関係者による打合せ。それが終わり次第会社にとんぼ返りして課内ミーティングで進捗状況の共有や翌日の業務内容の確認を行い…ようやく仕事から解放されるのは決まって22時を回ってからだった。)
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悠莉:あー…今日も何とかやり切った…。歩き回ってばかりだから足パンパンだし…。うわ!もうこんな時間?!早く家帰ってご飯作らないと、隆待ってるかも…。
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0:スマホの通知音が鳴る。
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悠莉:あれ?隆からLINE…何だろ?
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隆:『悠莉、今日も一日お仕事お疲れ様。今日は早く帰れたから俺が夕食作っておいたよ。ある程度家事は引き受けておくから、ゆっくり帰っておいで☆』
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悠莉:隆…!!ありがとうー!!
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悠莉:(普段の愛情表現は過剰すぎて正直対応に困る時も多いけど、こうやって自然に私のことを気遣ってくれるから好きなんだよね…。ホント、これに関しては感謝しないとなぁ…。)
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0:悠莉、自宅のマンションに到着。
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悠莉:ただいまー。
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隆:悠莉、お帰り。
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悠莉:夜ご飯作ってくれてありがとう。もー、全身くたびれちゃって、身体が悲鳴上げてるよ…。
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0:悠莉が肩を回すと、いかにも痛そうな音が鳴った。
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隆:うわ、すごい音だね…肩凝り?デスクワークの時にちゃんと定期的に伸びをしたり、身体動かしたりしてる?
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悠莉:事務仕事できる時間帯限られてるから、そんな暇ないよー。
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隆:あらら。とりあえず風呂も沸いてるけど…飯と風呂どっちにする?
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悠莉:ご飯かな。あまり遅い時間に食べると太っちゃうし。
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隆:…悠莉はもう少し肉付けてもいいと思うけどな。
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悠莉:おい、どこ見てんだコラ。(溜息)…やっぱり男性には女性の悩みなんて分からないんだろうね。隆なら体型気にして平日毎朝走ってるから「少しは私の気持ちが分かるかなー?」と思ったのに…。
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隆:痩せて周りから良く見られたいって気持ちは分からなくもないけどね。でもそのせいで俺の悠莉が周りの有象無象からちょっかい出されるのは嫌だし、俺自身は悠莉がカッコいいと思ってくれているならそれでいいからさ。
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悠莉:隆…。
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隆:それにもう少し肉がついてた方が抱き心地が柔らかくてなんとも―
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悠莉:(すごく嫌そうに)はい、台無し。
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隆:ハハハ。ほら、熱いから火傷しないようにね。
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悠莉:あ、シチューだ!メッチャ嬉しい!!
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隆:野菜たっぷり入れて煮込んだから栄養もしっかり摂れるよ。
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悠莉:うんうん!私、隆が作るシチュー本当に大好きなんだよね…ブロッコリーとか生じゃ絶対食べられないけど、シチューに入ってたら食べれるし。
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隆:はいはい、感想は寝る前に聞くから。明日も早いんだし、早く食べて風呂入ってきなよ。
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悠莉:うん、ありがとう!いただきまーす!!
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0:ご飯を食べ終え、お風呂から上がった悠莉がリビングに戻ってくると、隆が悠莉の食べた食器を洗っていた。
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悠莉:あ…ごめん、後片付けまでさせちゃって…。
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隆:いいよ、いいよ。どうせ暇してたし。…これからホットミルク作るけど…悠莉も飲む?
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悠莉:え!ありがとう。でも今日は頼りっぱなしだし、私にやらせて。
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隆:そうか?…じゃあ、お願いしようかな。
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0:牛乳を温め容器に注ぐと、洗い物を終えた隆と一緒にリビングに移動し、ソファに座る。
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隆:そういえば、風呂でゆっくりして、少しは身体の疲れ取れた?
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悠莉:うん、ちょっとは楽になったよ。ちゃんと足もマッサージしてきたし。
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隆:そっか、良かった。
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悠莉:やっぱりお風呂はいいよねー、忙しい時はシャワーでさっと済ませちゃうけど、この頃急に寒くなったし、暖を取りながら疲れを癒せるんだもん。
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隆:そうだな。…今度お互い休みが取れたら久々に温泉にでも行くか。
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悠莉:温泉?!行きたい!!
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隆:今の時期なら紅葉も見れるし、平日ならそこまで混んでないだろうからな。
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悠莉:うん、そうだね!楽しみだな~。
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隆:あぁ。
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隆:…話は変わるけど、悠莉。
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悠莉:?何?
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隆:ハグしていい?
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悠莉:…は?
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隆:ハグしていい?(キリッ)
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悠莉:いや…聞き取れなかったから聞き返してるとかじゃないし、どっちかっていうと聞き間違いであってほしいと思って聞き返してるし、そして何故真顔で言い直した?
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隆:今俺は、猛烈に悠莉にハグして癒されたいからだ。
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悠莉:自分の欲望に忠実過ぎるでしょ!
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隆:我、癒しを欲す。
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悠莉:言い方を変えれば良いってものでもないから!そうだとしてもタイミング!何で今?!本当に急すぎ!!
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隆:何言ってるんだ?俺はいつ、いかなる時でも常に悠莉とハグしたいし、隙あらばイチャつきたいと思っているぞ?(ドヤ)
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悠莉:いや、だから怖いって!言葉の端々どころか全体から恐怖をひしひしと感じてるよ!!
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隆:ハハハ、大袈裟だなぁ…。そもそも前に「どこぞの家庭では定期的にハグをするように習慣化してるらしい」って悠莉が言ってたんじゃないか。
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悠莉:それ、フィクションの産物でしょうが!!その時やってたドラマの話をしただけだよ!!
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隆:えー、「隆、私もハグしてほしいなー」って言ってなかったっけ?
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悠莉:言ってないから!勝手に記憶を捏造しない!!
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隆:え~、言った気がしないような、気がするような、(いい笑顔で)やっぱり言ってたような気がする☆
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悠莉:言ってません。それは隆の幻聴です。
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隆:なん…だと…?!
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悠莉:いや…ショック受けすぎでしょ…。たかがハグが出来ないくらいで…。
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隆:たかが?…たかが??(溜息)…。本当に悠莉は、もう…
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悠莉:何?もしかしてまたハグの本当の価値に気付いていないとか言うの?
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隆:そのまさかだ!
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悠莉:…。
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隆:いいか?ハグというのは、非常に意味のある行為なんだ。
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悠莉:はぁ。
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隆:ハグには感情面を安定させたり、ストレスを発散させたり…疲れた身体をリラックスさせる効果があると言われているんだ。ハグをするためにお互い密着するだろう?その時にお互いの体温が伝わって、「自分は一人じゃない」って触覚から認識させるんだ。そのおかげで相手のことをより信頼できるようになったり、守られているような感覚から心を許してより甘えられるようになったり…つまりは、大切な人との言葉を必要としない大事なコミュニケーションの1つなんだよ。
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悠莉:うーん…?
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隆:女性の中には男性から頭を撫でてほしいと思ったりする人もいるだろう?そういう人達も同じで、「好きな人に甘えたい」、「好きな人から甘えられたい」って想いの表れなんだよ。
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悠莉:確かにそういう人達はいるってたまに聞くけど…。
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隆:ここまで俺が話したことを踏まえて思い返してみると、何かしら思い当たることはあるんじゃないか?悠莉だって「ハグをしたい!ハグしてほしい!」と思うことはあるだろう?
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悠莉:(隆の台詞が言い終わる前に)別に?
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隆:また即答かよ…!少しは考える素振りをしてくれたっていいじゃないか!
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悠莉:うーん…別にないかな?
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隆:それはそれで悲しい!
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悠莉:そんなこと言われても、私は言われたとおりにやっただけだし…。
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隆:ってか、えっ?えっ??…悠莉冗談だよな?俺を動揺させて楽しんでるだけだよな??
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悠莉:いや、大真面目に言ってるけど。
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隆:ハグしたい、されたいと思ったことがない…だと!?
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悠莉:仕方ないじゃない!事実そう思ったことがないんだから…じゃあどうしろっていうのよ。
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隆:ハグして?
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悠莉:断る。
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隆:悠莉ー…。
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悠莉:こ・と・わ・る!!
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0:悠莉はソファから立ち上がると、隣の書斎に駆け込み、内側から鍵をかけた。
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隆:あっ!?コラ、悠莉!鍵は掛けないって結婚前に約束したじゃないか!
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悠莉:ハグしたいって…結局隆がしたいだけでしょ…?こうでもしないと気が休まらないのよ…許して。
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0:扉から離れてふと視線を部屋の奥へ向けると、デスクスタンドの電気が点きっぱなしであることに気づく。
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悠莉:(あれ?電気点きっぱなしじゃない…。隆にしては珍し…―!)
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0:悠莉が机を見ると、普段何も置かれていないはずの机上は幾多の書類で溢れかえっており、それらすべてにたくさんの文字が書き込まれている。傍には隆が仕事で使っているノートパソコンと悠莉と共用で使っているタブレットも置いてあり、どれも使用した跡が見て取れた。
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悠莉:(これ…隆こんなに仕事持ち帰ってきてたの?職種が違うから内容は分からないけど、この量が異常だってことくらいは誰にでも分かる…。もしかして、今日早く帰れたって…無理やり仕事切り上げて帰ってきたの?―でも、何のために?)
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0:共用のタブレットを開くと、そこには身体の疲れを取る方法や体調を整える方法、リラックスする方法について書かれたサイトが数えきれないほど開かれていた。
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悠莉:え…これって…。
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悠莉:(『シャワーより湯船に浸かった方が血行が良くなり…』『ホットミルクなど温かい飲み物を飲むと従来よりも質の良い睡眠が…』『ストレスが溜まっていたり、余裕がなくて気が休まらない時にハグをすると、リラックスするだけでなく自律神経にも働きかけ…』これって全部今日隆がしてくれたことじゃ…もしかして、これ全部私のために?今日隆が仕事持ち帰ってでも早く帰ってきたのも、繁忙期の私を気遣って―)
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悠莉:…。
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0:悠莉が鍵を開けてリビングに行くと、隆は放心状態でソファに座っていたが、すぐに悠莉のところへ飛んで来る。
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隆:悠莉、ごめん!ちょっとやりすぎちゃったよな…怖がらせちゃったか?
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悠莉:…。
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隆:あー、その…怖がらせるつもりなんてなかったんだ!むしろその逆っていうか…!悠莉に―
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悠莉:(ギュッ)
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隆:え?ゆ…悠莉…?
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悠莉:(ギュー)
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隆:―!…よしよし。
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悠莉:…私子供じゃないし。
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隆:はいはい。
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悠莉:でも、ありがと。私のこと気遣ってくれて。
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隆:んー…、悠莉は頑張り屋さんだからね。最近繁忙期に突入して結構疲れも溜まってやつれてるみたいだったからさ、俺が少しでも労わりたかったんだよ。
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悠莉:あんなに仕事持ち帰ってたのに、それでも労わりたかったの?
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隆:…あー、そっか。書斎に閉じ籠ってたんだからそりゃ見られるよな。俺にとっては仕事なんかと比べ物にならないくらい悠莉の方が大事なんだよ。それに仕事は家でもできる範囲のしか残さなかったから、問題ない。
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悠莉:…でも、しつこすぎるのは嫌。
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隆:だよなぁ…ごめん。
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悠莉:ほどほどなら、考える。
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隆:…善処するよ。
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悠莉:…隆。
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隆:ごめんごめん、だって悠莉のことが好きすぎて―
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悠莉:好き。
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隆:…。
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悠莉:…。
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隆:(ポカンとして)…夢?
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悠莉:現実。
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隆:(微笑む)…そっか。じゃあ、お礼に肩もみでもしてあげようかな。
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悠莉:ありがとう。でも、あんまり気遣わなくて平気だよ?隆だって仕事忙しいだろうし…。
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隆:俺がしたいんだよ。それに久々に言ってもらえて今メチャクチャ嬉しいからね。
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悠莉:…口にしないだけで、いつも思ってるよ。
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隆:…何なら全身マッサージしてあげようか―★
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悠莉:(隆の台詞が言い終わる前に)調子に乗るな。