台本概要
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タイトル | 結婚したくて何が悪い! |
---|---|
作者名 | 天びん。 (@libra_micchan) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 5人用台本(男2、女2、不問1) ※兼役あり |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
「○○したくて何が悪い!」シリーズ 第6話 浮かない顔で実家に顔を出した悠莉。 母親の恵梨香が尋ねると、どうやら恋人の隆からプロポーズされたようで―? 果たして悠莉は何に悩んでいるのか。 そして隆のプロポーズは受け入れてもらえるのか? ※○○したくて何が悪い!シリーズの番外編に当たる話です。 329 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
悠莉 | 女 | 79 | 青山悠莉。普通の会社員。隆は大学時代から付き合っている恋人。 隆のことは普通に愛しているものの、自分がなかなか素直になれない事を気にしている。 恋人の隆にプロポーズされたものの、返事について悩んでいる。 名前の読みは「アオヤマユウリ」。 |
恵梨香 | 女 | 55 | 青山恵梨香。悠莉の母親。 性格は温厚で優しく、夫の大樹のことも愛しているのだが、容赦がない。 大樹が困惑したりしょげている時の顔を見るのが特に大好きな困った人。 名前の読みは「アオヤマエリカ」。 |
大樹 | 男 | 31 | 青山大樹。悠莉の父親。 話し方など結構ガラが悪く見られがちだが、その実心配性。 娘の悠莉のことが大好きなのに、当人からは疎まれている可哀想なお父さん。 悠莉の彼氏である隆とは、LINEで悠莉の情報をやり取りする程仲が良い。 名前の読みは「アオヤマタイキ」。 |
隆 | 男 | 34 | 四宮隆。普通の会社員。悠莉は大学時代から付き合っている恋人。 悠莉のことが好きすぎて頭の中がお花畑のように見られるものの、実のところかなり繊細で頭の中では常に何か考えている。 今回夜景の見えるレストランで悠莉にプロポーズした。 悠莉の父親である大樹とは、LINEで悠莉の情報をやり取りする程仲が良い。 名前の読みは「シノミヤタカシ」。 |
店員 | 不問 | 10 | 悠莉が行ってみたかったレストランの店員さん。 男女どちらでも可能です。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:【タイトル】
: 「○○したくて何が悪い!」シリーズ 第6話
: 結婚したくて何が悪い!
:
:
:【登場人物】
:
悠莉:青山悠莉。普通の会社員。隆は大学時代から付き合っている恋人。
悠莉:隆のことは普通に愛しているものの、自分がなかなか素直になれない事を気にしている。
悠莉:恋人の隆にプロポーズされたものの、返事について悩んでいる。
悠莉:名前の読みは「アオヤマユウリ」。
:
恵梨香:青山恵梨香。悠莉の母親。
恵梨香:性格は温厚で優しく、夫の大樹のことも愛しているのだが、容赦がない。
恵梨香:大樹が困惑したりしょげている時の顔を見るのが特に大好きな困った人。
恵梨香:名前の読みは「アオヤマエリカ」。
:
大樹:青山大樹。悠莉の父親。
大樹:話し方など結構ガラが悪く見られがちだが、その実心配性。
大樹:娘の悠莉のことが大好きなのに、当人からは疎まれている可哀想なお父さん。
大樹:悠莉の彼氏である隆とは、LINEで悠莉の情報をやり取りする程仲が良い。
大樹:名前の読みは「アオヤマタイキ」。
:
隆:四宮隆。普通の会社員。悠莉は大学時代から付き合っている恋人。
隆:悠莉のことが好きすぎて頭の中がお花畑のように見られるものの、実のところかなり繊細で頭の中では常に何か考えている。
隆:今回夜景の見えるレストランで悠莉にプロポーズした。
隆:悠莉の父親である大樹とは、LINEで悠莉の情報をやり取りする程仲が良い。
隆:名前の読みは「シノミヤタカシ」。
:
店員:悠莉が行ってみたかったレストランの店員さん。
店員:男女どちらでも可能です。
:
:
:
:
:
:【本編】
:
悠莉:ただいまぁ~。
:
恵梨香:あら、悠莉。早かったのね。
:
悠莉:うん、1本早いのに乗れたからね。久々の実家はやっぱり落ち着くなぁ~。
:
恵梨香:ふふふ…そう?じゃあ、戻ってくる?
:
悠莉:(恵梨香の台詞が言い終わる前に)それはない。
:
恵梨香:あらあら…残念ねぇ、お父さん♪
:
悠莉:そういえば、今日お父さんは?いつもなら私が帰ってくる時には決まって居るのに…。
:
恵梨香:あぁ、それはね…
:
恵梨香:あまりにも「悠莉が、悠莉が」って五月蠅いから、御使いに行ってきなさいって言って叩きだしてやったの♪
:
悠莉:あ、そう…。お母さんも相変わらずだね。
:
恵梨香:んー、でもそろそろ帰ってくるんじゃないかしら?出掛ける時なんて…「秒で終わらせてくるからな!!」って言ってたし。
:
恵梨香:でも、その時のお父さんの顔が必死すぎて可愛かったから、買い物リスト大量に書いて渡しちゃった♪
:
悠莉:…ほんのちょっとだけお父さんに同情するかも。
:
恵梨香:あら~?悠莉はお父さんに肩入れするの?
:
悠莉:そうじゃないけど…お母さんの愛情も歪んでるなって思ったの。確か…お父さんが困ったりしょげてる時の顔が好きなんだっけ?
:
恵梨香:あら、そんなことないわよ?お父さんが笑ってくれたら嬉しいし、私が何をしたらお父さんは喜んでくれるかしらって考えるのすごく好きよ?
:
恵梨香:…ただ、お父さんが困ったり、しょげてる時の顔が特別好きってだけで!!
:
悠莉:充分歪んでるよ。
:
:
0:悠莉、溜息を吐いてソファに腰掛ける。
:
:
悠莉:これじゃ、お母さんの意見聞きたかったけどあまり参考にならなさそうだね…
:
恵梨香:?何か悩んでるの?
:
:
0:このタイミングで大樹が静かに帰宅。
:
:
大樹:(玄関に靴があったということは、悠莉が帰ってるな…。恵梨香の殺人的な量の買い物リストには手を焼いたが、何とかこなして帰ってこれたぞ!)
:
大樹:(…せっかくだし、静かに入って驚かしてやろう。)
:
悠莉:実はね、一昨日…彼に、プ、プロポーズされたの…
:
恵梨香:あら!!
:
大樹:(あ、これ出れねぇやつだわ。)
:
大樹:(…しかも、隆君にプロポーズされて悩んでるだと?隆君から近々プロポーズをするつもりだと話は聞いていたが、一体何を悩んでいるんだ…?)
:
恵梨香:悠莉、良かったじゃない!おめでとう!!
:
悠莉:うん…。
:
恵梨香:…で?どんな風にプロポーズされたの?!丁度お父さん居ないし、詳しく教えてちょうだい!!
:
大樹:(いや…俺居るし、バリバリ聞こえてるからな?)
:
:
0:回想に入る
:
:
悠莉:隆、遅れてごめんね!(息を整えながら)…待った?
:
隆:ううん、俺もちょうど今来たところだよ。…それより仕事、大丈夫だった?
:
悠莉:うん、いきなり上司から連絡来て「工事の立会い代わってくれー」なんて言われたからビックリしたけど、何とかなったよ。
:
隆:そっか。…じゃあ、仕事を頑張ってきた悠莉にはご褒美をあげなくちゃね。
:
悠莉:え?そんな…気遣わなくて大丈夫だよ。むしろ本来ならお昼くらいから一緒に居る予定だったのに、こんなことになっちゃって…私がお詫びしないといけないくらいなのに。
:
隆:仕事じゃ仕方ないだろ、また時間のある時に来ればいいさ。…もうすぐ暗くなるし、何処かで飯でも食いながらゆっくりしよう。悠莉もお腹空いてるんだろ?
:
悠莉:…バレてた?
:
隆:昼前に連絡来たって言ってたし、昼飯食べられてないんじゃないのか?
:
悠莉:うぐ…そこまで見抜かれてるのね。
:
隆:悠莉はすぐ顔に出るからな~、思ってる事全部顔に書かれてるし。
:
悠莉:そ!そんなことないよ!!
:
隆:ハハハ…せっかくだし普段は行かないような所に行ってみるか?例えば…こことか。
:
悠莉:え…ここって…!
:
悠莉:(私が行ってみたかったコース料理のレストラン…!)
:
隆:悠莉、ここ気になってただろ?前通る時チラチラ見てたもんな。
:
悠莉:―っ、そうだけど…でも予約もしてないのに入れるの?
:
隆:まずは聞いてみよう。もしかしたら運良く入れるかもしれないし。
:
悠莉:…適わないなぁ。
:
:
:
隆:すみません。予約してないんですけど…今から入れたりしますか?
:
店員:確認いたしますので、少々お待ちください。…念のため、お名前と何名様か伺ってもよろしいですか?
:
隆:四宮です、2名なんですけど…。
:
店員:…えぇ、大丈夫ですよ。
:
悠莉:嘘…!ここ、いつも予約でいっぱいのはずなのに…
:
隆:良かったな、悠莉!
:
店員:当店で提供する料理は、全てコース料理でアラカルトのご注文は受け付けておりませんが、よろしいですか?
:
隆:大丈夫です。
:
店員:では四宮様、お席にご案内します。此方へどうぞ。
:
:
0:窓際の夜景が綺麗に見える席へ案内される。
:
:
悠莉:うわぁ…!すごく良い席…!!こんなに良い席、予約もしてない私達が使っちゃっていいんですか?
:
店員:大丈夫ですよ。お客様方は運がよろしいのでしょうね。
:
隆:ツイてて良かったな、悠莉。
:
悠莉:うん!
:
店員:今回提供させて頂くコース料理の内容は、和のコースとなっておりまして、先付(さきづけ)、前菜、焼物、揚物、主菜、食事、止椀(とめわん)、甘味の計8品です。
:
店員:…お料理でアレルギーが出てしまうなど、苦手なものはございませんか?
:
隆:俺は大丈夫です。
:
悠莉:あ、私も大丈夫…。
:
店員:かしこまりました。ではサービスの食前酒をお持ちしますのでしばらくお待ち下さい。
:
:
0:しばらくすると店員が食前酒のシャンパンを持ってきて、各々のグラスに注ぐ。
:
:
隆:じゃあ悠莉、お仕事お疲れ様。…乾杯。
:
悠莉:乾杯。
:
隆:…うん、美味いな。
:
悠莉:美味しい…あまりくどくないし、飲みやすいね。
:
隆:にしても、悠莉が苦手なもの聞かれた時、「大丈夫」って答えるとは思ってなかったな。マヨネーズとか、セロリとか、ブルーベリーとか…言っておかなくて大丈夫だったのか?
:
悠莉:別に食べられなくはないからね。それに運良くこのレストランに来られたんだし、ちゃんと食べるよ。
:
悠莉:隆こそ…トマト出てきてもちゃんと食べられるの?
:
隆:俺も食べられなくはないからな。それに…誰かさんみたいに好き嫌い激しくないしね★
:
悠莉:あ、酷い。もし出てきたら私が食べてあげようかと思ったけど、やっぱやーめた。
:
隆:別にいいよ?俺は食べられるから。(いい笑顔)
:
悠莉:むむむ…何かムカつく。
:
隆:ぷくぷくしてても可愛いなぁ、悠莉は。
:
:
0:次々にコース料理が運ばれて来る。特に双方の苦手なものもなく、後は甘味を残すだけとなった。
:
:
悠莉:料理美味しかったね!
:
隆:そうだな。
:
悠莉:茶碗蒸しとか絶品だったし、海鮮バラチラシは見た目も綺麗で食べちゃうのもったいなかった!!
:
隆:…気に入ってもらえたなら良かったよ。
:
悠莉:…?隆?
:
店員:失礼致します。
:
:
0:急に店内の至る所から拍手が鳴り始める。
:
:
悠莉:え?!え?!
:
:
0:店員、花火がついた小振りのケーキを持ってくる。ケーキの上に載っているチョコレートのプレートには「Happy Proposal」と書かれていた。
:
0:悠莉、驚いて隆の方を見るといつの間に用意したのか、赤いバラの花束を抱えた隆がいつになく真剣な顔で立っている。
:
:
隆:悠莉。
:
悠莉:は、ははは…はい!!
:
隆:学生の頃からずっと一緒にいて、悠莉と一緒なら何をしてても楽しいと思えた。これからもずっと一緒に…俺の隣にいて欲しい。
:
悠莉:…。
:
隆:―青山悠莉さん、俺と結婚して下さい。
:
:
0:隆、悠莉にバラの花束を差し出す。
:
:
悠莉:~っ!!
:
悠莉:ありがとう、こちらこそ…よろしくお願いします…!!
:
:
0:再び店内の至る所から大きな拍手が送られる。
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:
0:回想終了、舞台は現実の青山家へ。
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:
恵梨香:あらあら、まぁまぁ…!すごく素敵じゃない~!!
:
悠莉:うん…、素敵でしょ。
:
恵梨香:隆君、頑張ってくれたのね…。レストランだって本当は予約してたんでしょ?
:
悠莉:うん。プロポーズの1ヶ月前から予約してくれてて、店員さん達には「予約しないで運良くフラッと入れたようにみせてほしい」ってあらかじめ話しておいたんだって。
:
恵梨香:キャー!素敵ねぇ!!根回し完璧じゃない!!
:
悠莉:…。
:
恵梨香:…で。悠莉は何をそんなに悩んでいるの?
:
悠莉:…隆はね、本当に完璧なの。勉強も仕事も出来るし、運動も得意で…その、カ…カッコいいし。それなのに隆は私なんかのことを「可愛い!好きだ!」って言ってくれる。
:
悠莉:でも私は…!私には隆の言葉とか行動がくすぐったくて恥ずかしくて…キツい言葉で返したり、つれない態度を取ったり…素直になれないから隆と同じだけの愛情を返せない…。
:
悠莉:こんな私と結婚しても隆は嬉しくないんじゃないかって…、結婚して、一緒に暮らし始めて、いい奥さんになれるかって考えたらそんな自信ないし。幻滅されたらどうしようって思ったら…怖くて。それならやっぱり…結婚の返事を考え直した方が良いんじゃないかって思い始めて…!!
:
:
0:悠莉、泣き出す。
:
:
恵梨香:悠莉…。
:
大樹:(まったく、うちの娘は…。)
:
大樹:(―仕方ねぇな。)
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0:大樹、パンツのポケットからスマホを取り出して少し操作すると、またすぐにポケットにしまう。
:
:
恵梨香:―マリッジブルーね。
:
悠莉:…。
:
恵梨香:悠莉、あなた複雑に考えすぎなのよ。もう少し単純に考えなさい。
:
悠莉:お母さん…。
:
恵梨香:でもまぁ、そっかぁ…。悠莉は隆君のプロポーズが完璧すぎて、逆に不安になっちゃったのね。
:
悠莉:…まぁ、そんなところ。
:
恵梨香:そんなこと言ったら、お父さんなんか酷かったわよ~♪
:
大樹:(…はぁ?!?!)
:
悠莉:え?そうなの…?
:
恵梨香:ふふふ…そうよ。悠莉にはまだ話したことなかったかしらね。
:
大樹:(お、おい…まさか恵梨香…アレ言うんじゃねぇだろうな…!!)
:
恵梨香:私がお父さんにプロポーズされたのは横浜だったんだけど、隆君と同じようにお父さんがレストランの予約をしてくれていたの。
:
悠莉:え?普段予約取るの苦手なあのお父さんが?!
:
恵梨香:そう。だから「もしかしたら今日プロポーズされちゃうのかな?」って思ってたんだけど、レストランに入ってコース料理の内容聞いたら確信しちゃって。
:
恵梨香:最後に同じようにケーキが出てきたんだけど、お父さんたら「コース選ぶ時に見てたらケーキがつくコースがあったからな…恵梨香、甘いの好きだろ?」ってごまかしたのよ。
:
悠莉:え?!じゃあレストランでプロポーズされたんじゃないの?
:
恵梨香:そう、レストランではただコース料理を食べただけ。それで食べ終わって帰ろうとしたら、「帰る前にちょっと寄りたい所あるから…少しついて来てくれ」って言うのよ。
:
恵梨香:何かと思ってついていったら、レストランが入ってるデパートのコインロッカーで大きな紙袋を取り出し始めて…。頑張って隠そうとしてたのね、紙袋の中を覆ってた布がズレちゃって中に入れられてたバラの花が見えちゃったの。
:
悠莉:うわぁ…。
:
恵梨香:それで夜の赤レンガ倉庫に連れて行かれて、夜景が綺麗な中、真っ赤なバラの花束を渡されてプロポーズされたのよ。
:
大樹:(チクショウ、恵梨香ぁぁぁぁぁ!!お前俺がやらかした恥ずかしい所全部言いやがったなぁぁぁぁぁ!!)
:
悠莉:その、何ていうか…こんなこと言っていいか分からないけど、グダグダだね…。
:
大樹:(悪かったな、グダグダで!!こっちは初めての事で、しかも断られるんじゃないかって、色々いっぱいいっぱいだったんだよ!!)
:
恵梨香:それと悠莉、隆君から貰った花束は赤いバラの花束だったのよね?
:
悠莉:うん、そうだけど。
:
恵梨香:花は色によっても花言葉が違ったりするけど、バラには本数にも意味があるのよ。
:
悠莉:え?!そうなの??
:
恵梨香:ええ。悠莉が貰った花束は何本だったのかしら?
:
悠莉:ちょっと待ってね、えっと…。
:
悠莉:(スマホで写真を確認しながら)19、20…21本…?
:
恵梨香:あらあら…ちょうどいい大きさね。21本だと「真実の愛」っていう意味になるわ。
:
悠莉:し…真実の、愛…////
:
恵梨香:ちなみにお父さんは108本のバラを花束にして渡してきたわ♪
:
悠莉:ひゃく…はち…?
:
大樹:(おいぃぃぃ!!俺の黒歴史を娘に小出しでバラすんじゃねぇぇぇぇぇ!!)
:
恵梨香:そーよぉ、108本だと確かに「結婚して下さい」って意味にはなるけど、これだけの量になるとかなり大きいし重いしで、まともに抱えられなかったもの~。
:
悠莉:それは…かなり目立ったんだろうね…。
:
恵梨香:えぇ、とっても♪おかげで帰りの電車の中では注目の的だったわ~
:
恵梨香:―お父さんが♪
:
悠莉:…。
:
大樹:(やめろぉぉぉぉぉ!!やめてくれぇぇぇぇぇ…!!フォークで刺さらない程度に嬲られてる気分だ!!!やるならいっそ一思いにやってくれ!!!)
:
恵梨香:こんなプロポーズされたら誰でも将来に不安を覚えるでしょ?「この人と結婚して本当に大丈夫かしら…?」って。
:
悠莉:…まぁ、そう…だね。
:
恵梨香:…でもね、それがどれだけ周りの人から見てグダグダだろうと、目立っていようと…それってお父さんが私のために頑張ってくれた結果じゃない?
:
悠莉:―!
:
恵梨香:そのことに気付いたら、お母さん…お父さんのことをもっと好きになっちゃって。すぐにオーケーしちゃったわ♪
:
大樹:(…恵梨香。)
:
恵梨香:隆君だって同じ。男の子が一人でお花屋さんに入るのってかなり恥ずかしいし、緊張するものよ。それでも悠莉のためにこんなに頑張ってくれて…隆君に心の底から愛されてる、悠莉は幸せ者ね。
:
悠莉:…でも、だからこそ…そこまでしてくれる隆に私は、何も返せな―
:
:
0:大樹、我慢が出来なくなり、居間に入っていく。
:
:
大樹:―おい、悠莉。
:
悠莉:お、お父さん?!
:
恵梨香:あら、あなた。おかえりなさい~♪
:
大樹:お前、まだ分からねぇのか?今お前が言ってることは、そこまでしてくれたアイツの気持ちを踏みにじる行為なんだぞ。
:
悠莉:え…。
:
大樹:アイツがお前を可愛いと思っているからこそ、好きだからこそ!そこまで念入りに調べて、用意して…お前に気持ちを伝えたんじゃねぇのか?!
:
大樹:―それをお前は何だ!…自分はそれに見合う分を返せないからお断りする?アイツの一世一代の気持ちを何だと思ってやがる!!
:
悠莉:…。
:
大樹:アイツも言ってたんだろ?「悠莉と一緒なら何をしてても楽しいと思えた」って。別に対等でいて欲しいとは言ってねぇだろうが。…アイツにとっては、お前が隣に居てくれるだけでいいんじゃねぇのか?
:
悠莉:…。
:
大樹:…お前はどうなんだよ、悠莉。
:
悠莉:え…。
:
大樹:恵梨香も言ってただろうが…単純に考えろって。お前はアイツが好きじゃないのか?
:
悠莉:…好きだよ、好きに決まってるじゃん。
:
大樹:ならそれでいいじゃねぇか。自信がないならその分努力すればいい、ゆっくり自分の気持ちを相手に伝えて返していけばいいんだ。
:
大樹:…夫婦になるんだから、別に長い目で見たって問題ないだろ。
:
悠莉:うん…、うん…!
:
恵梨香:良かったわねぇ、悠莉。お父さんが一番、隆君のことを認めてくれてるみたいよ。
:
大樹:んなっ!!別にそういうわけじゃねぇよ!!
:
恵梨香:あなたのことだから、絶対認めないって言って乱入してくると思ったのに。乱入しないで最初から最後までずーっとそこで大人しく聞いてるんだもの♪
:
大樹:おまっ!気付いてるなら何で俺の話を入れた!!別に俺の話なんかしなくても良かっただろ!!
:
恵梨香:だってその方が、お・も・し・ろ・いから♪
:
大樹:(絶句)…。
:
:
0:玄関のチャイムが鳴る。
:
:
恵梨香:はぁーい…あら♪
:
恵梨香:…悠莉、お客さんよ。
:
悠莉:え?
:
隆:こんにちは。家族団らんのところ、お邪魔します。
:
悠莉:たっ…たた隆?!何でここに…。
:
恵梨香:何ででしょうね~。
:
大樹:…。
:
隆:悠莉、ごめんな。
:
悠莉:え?
:
隆:本当は一昨日、花束と一緒に渡したかったんだけど、どうしてもこれだけ間に合わなくて…
:
:
0:隆、上着の胸ポケットから小箱を取り出し、悠莉に向けて開くと、中にはツタのような装飾とダイヤモンドがあしらわれた細身のシンプルな指輪が収められていた。
:
:
悠莉:これって…!
:
隆:…婚約指輪。悠莉は普段アクセサリーしないタイプだから、こういうシンプルな方が良いかなって思って。ジュエリーショップに色々注文してたらプロポーズの日に間に合わなくなっちゃったんだ。
:
隆:本当は悠莉にカッコ良く見られたくて、全部完璧にしたかったんだけど…なかなか思うようにいかないね。
:
隆:…悠莉が良ければ、受け取ってもらえるかな?
:
悠莉:…隆。
:
隆:うん?
:
悠莉:私…可愛くないから、素直じゃないから…多分これからも隆に酷いこと言ったり、キツい態度取ったりして…かなり振り回すと思うよ。…それでもいいの?
:
隆:当たり前だろ、俺は悠莉が良いんだから。悠莉が嫌だって言っても離さないから安心してくれ。
:
悠莉:隆…!ありがとう!!
:
:
:
:
:
0:恵梨香、大樹と部屋の隅で並んで2人を見ているが、大樹にしか聞こえないくらいの小声で話しかける。
:
:
恵梨香:…なかなか粋なことするようになったのね。
:
大樹:何の話だ。
:
恵梨香:隆君。呼んだのあなたでしょう?
:
大樹:俺がアイツの連絡先を知ってる訳ないだろ…冗談もたいがいにしろ。
:
恵梨香:人一倍、隆君の肩持ってたくせに。
:
大樹:…さぁな。
:
恵梨香:ふふ…いいお父さんになったわね。
:
恵梨香:…やっぱりあの時あなたと結婚して良かった。
:【タイトル】
: 「○○したくて何が悪い!」シリーズ 第6話
: 結婚したくて何が悪い!
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:
:【登場人物】
:
悠莉:青山悠莉。普通の会社員。隆は大学時代から付き合っている恋人。
悠莉:隆のことは普通に愛しているものの、自分がなかなか素直になれない事を気にしている。
悠莉:恋人の隆にプロポーズされたものの、返事について悩んでいる。
悠莉:名前の読みは「アオヤマユウリ」。
:
恵梨香:青山恵梨香。悠莉の母親。
恵梨香:性格は温厚で優しく、夫の大樹のことも愛しているのだが、容赦がない。
恵梨香:大樹が困惑したりしょげている時の顔を見るのが特に大好きな困った人。
恵梨香:名前の読みは「アオヤマエリカ」。
:
大樹:青山大樹。悠莉の父親。
大樹:話し方など結構ガラが悪く見られがちだが、その実心配性。
大樹:娘の悠莉のことが大好きなのに、当人からは疎まれている可哀想なお父さん。
大樹:悠莉の彼氏である隆とは、LINEで悠莉の情報をやり取りする程仲が良い。
大樹:名前の読みは「アオヤマタイキ」。
:
隆:四宮隆。普通の会社員。悠莉は大学時代から付き合っている恋人。
隆:悠莉のことが好きすぎて頭の中がお花畑のように見られるものの、実のところかなり繊細で頭の中では常に何か考えている。
隆:今回夜景の見えるレストランで悠莉にプロポーズした。
隆:悠莉の父親である大樹とは、LINEで悠莉の情報をやり取りする程仲が良い。
隆:名前の読みは「シノミヤタカシ」。
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店員:悠莉が行ってみたかったレストランの店員さん。
店員:男女どちらでも可能です。
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:【本編】
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悠莉:ただいまぁ~。
:
恵梨香:あら、悠莉。早かったのね。
:
悠莉:うん、1本早いのに乗れたからね。久々の実家はやっぱり落ち着くなぁ~。
:
恵梨香:ふふふ…そう?じゃあ、戻ってくる?
:
悠莉:(恵梨香の台詞が言い終わる前に)それはない。
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恵梨香:あらあら…残念ねぇ、お父さん♪
:
悠莉:そういえば、今日お父さんは?いつもなら私が帰ってくる時には決まって居るのに…。
:
恵梨香:あぁ、それはね…
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恵梨香:あまりにも「悠莉が、悠莉が」って五月蠅いから、御使いに行ってきなさいって言って叩きだしてやったの♪
:
悠莉:あ、そう…。お母さんも相変わらずだね。
:
恵梨香:んー、でもそろそろ帰ってくるんじゃないかしら?出掛ける時なんて…「秒で終わらせてくるからな!!」って言ってたし。
:
恵梨香:でも、その時のお父さんの顔が必死すぎて可愛かったから、買い物リスト大量に書いて渡しちゃった♪
:
悠莉:…ほんのちょっとだけお父さんに同情するかも。
:
恵梨香:あら~?悠莉はお父さんに肩入れするの?
:
悠莉:そうじゃないけど…お母さんの愛情も歪んでるなって思ったの。確か…お父さんが困ったりしょげてる時の顔が好きなんだっけ?
:
恵梨香:あら、そんなことないわよ?お父さんが笑ってくれたら嬉しいし、私が何をしたらお父さんは喜んでくれるかしらって考えるのすごく好きよ?
:
恵梨香:…ただ、お父さんが困ったり、しょげてる時の顔が特別好きってだけで!!
:
悠莉:充分歪んでるよ。
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0:悠莉、溜息を吐いてソファに腰掛ける。
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悠莉:これじゃ、お母さんの意見聞きたかったけどあまり参考にならなさそうだね…
:
恵梨香:?何か悩んでるの?
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:
0:このタイミングで大樹が静かに帰宅。
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:
大樹:(玄関に靴があったということは、悠莉が帰ってるな…。恵梨香の殺人的な量の買い物リストには手を焼いたが、何とかこなして帰ってこれたぞ!)
:
大樹:(…せっかくだし、静かに入って驚かしてやろう。)
:
悠莉:実はね、一昨日…彼に、プ、プロポーズされたの…
:
恵梨香:あら!!
:
大樹:(あ、これ出れねぇやつだわ。)
:
大樹:(…しかも、隆君にプロポーズされて悩んでるだと?隆君から近々プロポーズをするつもりだと話は聞いていたが、一体何を悩んでいるんだ…?)
:
恵梨香:悠莉、良かったじゃない!おめでとう!!
:
悠莉:うん…。
:
恵梨香:…で?どんな風にプロポーズされたの?!丁度お父さん居ないし、詳しく教えてちょうだい!!
:
大樹:(いや…俺居るし、バリバリ聞こえてるからな?)
:
:
0:回想に入る
:
:
悠莉:隆、遅れてごめんね!(息を整えながら)…待った?
:
隆:ううん、俺もちょうど今来たところだよ。…それより仕事、大丈夫だった?
:
悠莉:うん、いきなり上司から連絡来て「工事の立会い代わってくれー」なんて言われたからビックリしたけど、何とかなったよ。
:
隆:そっか。…じゃあ、仕事を頑張ってきた悠莉にはご褒美をあげなくちゃね。
:
悠莉:え?そんな…気遣わなくて大丈夫だよ。むしろ本来ならお昼くらいから一緒に居る予定だったのに、こんなことになっちゃって…私がお詫びしないといけないくらいなのに。
:
隆:仕事じゃ仕方ないだろ、また時間のある時に来ればいいさ。…もうすぐ暗くなるし、何処かで飯でも食いながらゆっくりしよう。悠莉もお腹空いてるんだろ?
:
悠莉:…バレてた?
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隆:昼前に連絡来たって言ってたし、昼飯食べられてないんじゃないのか?
:
悠莉:うぐ…そこまで見抜かれてるのね。
:
隆:悠莉はすぐ顔に出るからな~、思ってる事全部顔に書かれてるし。
:
悠莉:そ!そんなことないよ!!
:
隆:ハハハ…せっかくだし普段は行かないような所に行ってみるか?例えば…こことか。
:
悠莉:え…ここって…!
:
悠莉:(私が行ってみたかったコース料理のレストラン…!)
:
隆:悠莉、ここ気になってただろ?前通る時チラチラ見てたもんな。
:
悠莉:―っ、そうだけど…でも予約もしてないのに入れるの?
:
隆:まずは聞いてみよう。もしかしたら運良く入れるかもしれないし。
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悠莉:…適わないなぁ。
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隆:すみません。予約してないんですけど…今から入れたりしますか?
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店員:確認いたしますので、少々お待ちください。…念のため、お名前と何名様か伺ってもよろしいですか?
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隆:四宮です、2名なんですけど…。
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店員:…えぇ、大丈夫ですよ。
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悠莉:嘘…!ここ、いつも予約でいっぱいのはずなのに…
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隆:良かったな、悠莉!
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店員:当店で提供する料理は、全てコース料理でアラカルトのご注文は受け付けておりませんが、よろしいですか?
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隆:大丈夫です。
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店員:では四宮様、お席にご案内します。此方へどうぞ。
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0:窓際の夜景が綺麗に見える席へ案内される。
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悠莉:うわぁ…!すごく良い席…!!こんなに良い席、予約もしてない私達が使っちゃっていいんですか?
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店員:大丈夫ですよ。お客様方は運がよろしいのでしょうね。
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隆:ツイてて良かったな、悠莉。
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悠莉:うん!
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店員:今回提供させて頂くコース料理の内容は、和のコースとなっておりまして、先付(さきづけ)、前菜、焼物、揚物、主菜、食事、止椀(とめわん)、甘味の計8品です。
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店員:…お料理でアレルギーが出てしまうなど、苦手なものはございませんか?
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隆:俺は大丈夫です。
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悠莉:あ、私も大丈夫…。
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店員:かしこまりました。ではサービスの食前酒をお持ちしますのでしばらくお待ち下さい。
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0:しばらくすると店員が食前酒のシャンパンを持ってきて、各々のグラスに注ぐ。
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隆:じゃあ悠莉、お仕事お疲れ様。…乾杯。
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悠莉:乾杯。
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隆:…うん、美味いな。
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悠莉:美味しい…あまりくどくないし、飲みやすいね。
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隆:にしても、悠莉が苦手なもの聞かれた時、「大丈夫」って答えるとは思ってなかったな。マヨネーズとか、セロリとか、ブルーベリーとか…言っておかなくて大丈夫だったのか?
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悠莉:別に食べられなくはないからね。それに運良くこのレストランに来られたんだし、ちゃんと食べるよ。
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悠莉:隆こそ…トマト出てきてもちゃんと食べられるの?
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隆:俺も食べられなくはないからな。それに…誰かさんみたいに好き嫌い激しくないしね★
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悠莉:あ、酷い。もし出てきたら私が食べてあげようかと思ったけど、やっぱやーめた。
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隆:別にいいよ?俺は食べられるから。(いい笑顔)
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悠莉:むむむ…何かムカつく。
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隆:ぷくぷくしてても可愛いなぁ、悠莉は。
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0:次々にコース料理が運ばれて来る。特に双方の苦手なものもなく、後は甘味を残すだけとなった。
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悠莉:料理美味しかったね!
:
隆:そうだな。
:
悠莉:茶碗蒸しとか絶品だったし、海鮮バラチラシは見た目も綺麗で食べちゃうのもったいなかった!!
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隆:…気に入ってもらえたなら良かったよ。
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悠莉:…?隆?
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店員:失礼致します。
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0:急に店内の至る所から拍手が鳴り始める。
:
:
悠莉:え?!え?!
:
:
0:店員、花火がついた小振りのケーキを持ってくる。ケーキの上に載っているチョコレートのプレートには「Happy Proposal」と書かれていた。
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0:悠莉、驚いて隆の方を見るといつの間に用意したのか、赤いバラの花束を抱えた隆がいつになく真剣な顔で立っている。
:
:
隆:悠莉。
:
悠莉:は、ははは…はい!!
:
隆:学生の頃からずっと一緒にいて、悠莉と一緒なら何をしてても楽しいと思えた。これからもずっと一緒に…俺の隣にいて欲しい。
:
悠莉:…。
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隆:―青山悠莉さん、俺と結婚して下さい。
:
:
0:隆、悠莉にバラの花束を差し出す。
:
:
悠莉:~っ!!
:
悠莉:ありがとう、こちらこそ…よろしくお願いします…!!
:
:
0:再び店内の至る所から大きな拍手が送られる。
:
:
:
0:回想終了、舞台は現実の青山家へ。
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:
恵梨香:あらあら、まぁまぁ…!すごく素敵じゃない~!!
:
悠莉:うん…、素敵でしょ。
:
恵梨香:隆君、頑張ってくれたのね…。レストランだって本当は予約してたんでしょ?
:
悠莉:うん。プロポーズの1ヶ月前から予約してくれてて、店員さん達には「予約しないで運良くフラッと入れたようにみせてほしい」ってあらかじめ話しておいたんだって。
:
恵梨香:キャー!素敵ねぇ!!根回し完璧じゃない!!
:
悠莉:…。
:
恵梨香:…で。悠莉は何をそんなに悩んでいるの?
:
悠莉:…隆はね、本当に完璧なの。勉強も仕事も出来るし、運動も得意で…その、カ…カッコいいし。それなのに隆は私なんかのことを「可愛い!好きだ!」って言ってくれる。
:
悠莉:でも私は…!私には隆の言葉とか行動がくすぐったくて恥ずかしくて…キツい言葉で返したり、つれない態度を取ったり…素直になれないから隆と同じだけの愛情を返せない…。
:
悠莉:こんな私と結婚しても隆は嬉しくないんじゃないかって…、結婚して、一緒に暮らし始めて、いい奥さんになれるかって考えたらそんな自信ないし。幻滅されたらどうしようって思ったら…怖くて。それならやっぱり…結婚の返事を考え直した方が良いんじゃないかって思い始めて…!!
:
:
0:悠莉、泣き出す。
:
:
恵梨香:悠莉…。
:
大樹:(まったく、うちの娘は…。)
:
大樹:(―仕方ねぇな。)
:
:
0:大樹、パンツのポケットからスマホを取り出して少し操作すると、またすぐにポケットにしまう。
:
:
恵梨香:―マリッジブルーね。
:
悠莉:…。
:
恵梨香:悠莉、あなた複雑に考えすぎなのよ。もう少し単純に考えなさい。
:
悠莉:お母さん…。
:
恵梨香:でもまぁ、そっかぁ…。悠莉は隆君のプロポーズが完璧すぎて、逆に不安になっちゃったのね。
:
悠莉:…まぁ、そんなところ。
:
恵梨香:そんなこと言ったら、お父さんなんか酷かったわよ~♪
:
大樹:(…はぁ?!?!)
:
悠莉:え?そうなの…?
:
恵梨香:ふふふ…そうよ。悠莉にはまだ話したことなかったかしらね。
:
大樹:(お、おい…まさか恵梨香…アレ言うんじゃねぇだろうな…!!)
:
恵梨香:私がお父さんにプロポーズされたのは横浜だったんだけど、隆君と同じようにお父さんがレストランの予約をしてくれていたの。
:
悠莉:え?普段予約取るの苦手なあのお父さんが?!
:
恵梨香:そう。だから「もしかしたら今日プロポーズされちゃうのかな?」って思ってたんだけど、レストランに入ってコース料理の内容聞いたら確信しちゃって。
:
恵梨香:最後に同じようにケーキが出てきたんだけど、お父さんたら「コース選ぶ時に見てたらケーキがつくコースがあったからな…恵梨香、甘いの好きだろ?」ってごまかしたのよ。
:
悠莉:え?!じゃあレストランでプロポーズされたんじゃないの?
:
恵梨香:そう、レストランではただコース料理を食べただけ。それで食べ終わって帰ろうとしたら、「帰る前にちょっと寄りたい所あるから…少しついて来てくれ」って言うのよ。
:
恵梨香:何かと思ってついていったら、レストランが入ってるデパートのコインロッカーで大きな紙袋を取り出し始めて…。頑張って隠そうとしてたのね、紙袋の中を覆ってた布がズレちゃって中に入れられてたバラの花が見えちゃったの。
:
悠莉:うわぁ…。
:
恵梨香:それで夜の赤レンガ倉庫に連れて行かれて、夜景が綺麗な中、真っ赤なバラの花束を渡されてプロポーズされたのよ。
:
大樹:(チクショウ、恵梨香ぁぁぁぁぁ!!お前俺がやらかした恥ずかしい所全部言いやがったなぁぁぁぁぁ!!)
:
悠莉:その、何ていうか…こんなこと言っていいか分からないけど、グダグダだね…。
:
大樹:(悪かったな、グダグダで!!こっちは初めての事で、しかも断られるんじゃないかって、色々いっぱいいっぱいだったんだよ!!)
:
恵梨香:それと悠莉、隆君から貰った花束は赤いバラの花束だったのよね?
:
悠莉:うん、そうだけど。
:
恵梨香:花は色によっても花言葉が違ったりするけど、バラには本数にも意味があるのよ。
:
悠莉:え?!そうなの??
:
恵梨香:ええ。悠莉が貰った花束は何本だったのかしら?
:
悠莉:ちょっと待ってね、えっと…。
:
悠莉:(スマホで写真を確認しながら)19、20…21本…?
:
恵梨香:あらあら…ちょうどいい大きさね。21本だと「真実の愛」っていう意味になるわ。
:
悠莉:し…真実の、愛…////
:
恵梨香:ちなみにお父さんは108本のバラを花束にして渡してきたわ♪
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悠莉:ひゃく…はち…?
:
大樹:(おいぃぃぃ!!俺の黒歴史を娘に小出しでバラすんじゃねぇぇぇぇぇ!!)
:
恵梨香:そーよぉ、108本だと確かに「結婚して下さい」って意味にはなるけど、これだけの量になるとかなり大きいし重いしで、まともに抱えられなかったもの~。
:
悠莉:それは…かなり目立ったんだろうね…。
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恵梨香:えぇ、とっても♪おかげで帰りの電車の中では注目の的だったわ~
:
恵梨香:―お父さんが♪
:
悠莉:…。
:
大樹:(やめろぉぉぉぉぉ!!やめてくれぇぇぇぇぇ…!!フォークで刺さらない程度に嬲られてる気分だ!!!やるならいっそ一思いにやってくれ!!!)
:
恵梨香:こんなプロポーズされたら誰でも将来に不安を覚えるでしょ?「この人と結婚して本当に大丈夫かしら…?」って。
:
悠莉:…まぁ、そう…だね。
:
恵梨香:…でもね、それがどれだけ周りの人から見てグダグダだろうと、目立っていようと…それってお父さんが私のために頑張ってくれた結果じゃない?
:
悠莉:―!
:
恵梨香:そのことに気付いたら、お母さん…お父さんのことをもっと好きになっちゃって。すぐにオーケーしちゃったわ♪
:
大樹:(…恵梨香。)
:
恵梨香:隆君だって同じ。男の子が一人でお花屋さんに入るのってかなり恥ずかしいし、緊張するものよ。それでも悠莉のためにこんなに頑張ってくれて…隆君に心の底から愛されてる、悠莉は幸せ者ね。
:
悠莉:…でも、だからこそ…そこまでしてくれる隆に私は、何も返せな―
:
:
0:大樹、我慢が出来なくなり、居間に入っていく。
:
:
大樹:―おい、悠莉。
:
悠莉:お、お父さん?!
:
恵梨香:あら、あなた。おかえりなさい~♪
:
大樹:お前、まだ分からねぇのか?今お前が言ってることは、そこまでしてくれたアイツの気持ちを踏みにじる行為なんだぞ。
:
悠莉:え…。
:
大樹:アイツがお前を可愛いと思っているからこそ、好きだからこそ!そこまで念入りに調べて、用意して…お前に気持ちを伝えたんじゃねぇのか?!
:
大樹:―それをお前は何だ!…自分はそれに見合う分を返せないからお断りする?アイツの一世一代の気持ちを何だと思ってやがる!!
:
悠莉:…。
:
大樹:アイツも言ってたんだろ?「悠莉と一緒なら何をしてても楽しいと思えた」って。別に対等でいて欲しいとは言ってねぇだろうが。…アイツにとっては、お前が隣に居てくれるだけでいいんじゃねぇのか?
:
悠莉:…。
:
大樹:…お前はどうなんだよ、悠莉。
:
悠莉:え…。
:
大樹:恵梨香も言ってただろうが…単純に考えろって。お前はアイツが好きじゃないのか?
:
悠莉:…好きだよ、好きに決まってるじゃん。
:
大樹:ならそれでいいじゃねぇか。自信がないならその分努力すればいい、ゆっくり自分の気持ちを相手に伝えて返していけばいいんだ。
:
大樹:…夫婦になるんだから、別に長い目で見たって問題ないだろ。
:
悠莉:うん…、うん…!
:
恵梨香:良かったわねぇ、悠莉。お父さんが一番、隆君のことを認めてくれてるみたいよ。
:
大樹:んなっ!!別にそういうわけじゃねぇよ!!
:
恵梨香:あなたのことだから、絶対認めないって言って乱入してくると思ったのに。乱入しないで最初から最後までずーっとそこで大人しく聞いてるんだもの♪
:
大樹:おまっ!気付いてるなら何で俺の話を入れた!!別に俺の話なんかしなくても良かっただろ!!
:
恵梨香:だってその方が、お・も・し・ろ・いから♪
:
大樹:(絶句)…。
:
:
0:玄関のチャイムが鳴る。
:
:
恵梨香:はぁーい…あら♪
:
恵梨香:…悠莉、お客さんよ。
:
悠莉:え?
:
隆:こんにちは。家族団らんのところ、お邪魔します。
:
悠莉:たっ…たた隆?!何でここに…。
:
恵梨香:何ででしょうね~。
:
大樹:…。
:
隆:悠莉、ごめんな。
:
悠莉:え?
:
隆:本当は一昨日、花束と一緒に渡したかったんだけど、どうしてもこれだけ間に合わなくて…
:
:
0:隆、上着の胸ポケットから小箱を取り出し、悠莉に向けて開くと、中にはツタのような装飾とダイヤモンドがあしらわれた細身のシンプルな指輪が収められていた。
:
:
悠莉:これって…!
:
隆:…婚約指輪。悠莉は普段アクセサリーしないタイプだから、こういうシンプルな方が良いかなって思って。ジュエリーショップに色々注文してたらプロポーズの日に間に合わなくなっちゃったんだ。
:
隆:本当は悠莉にカッコ良く見られたくて、全部完璧にしたかったんだけど…なかなか思うようにいかないね。
:
隆:…悠莉が良ければ、受け取ってもらえるかな?
:
悠莉:…隆。
:
隆:うん?
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悠莉:私…可愛くないから、素直じゃないから…多分これからも隆に酷いこと言ったり、キツい態度取ったりして…かなり振り回すと思うよ。…それでもいいの?
:
隆:当たり前だろ、俺は悠莉が良いんだから。悠莉が嫌だって言っても離さないから安心してくれ。
:
悠莉:隆…!ありがとう!!
:
:
:
:
:
0:恵梨香、大樹と部屋の隅で並んで2人を見ているが、大樹にしか聞こえないくらいの小声で話しかける。
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恵梨香:…なかなか粋なことするようになったのね。
:
大樹:何の話だ。
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恵梨香:隆君。呼んだのあなたでしょう?
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大樹:俺がアイツの連絡先を知ってる訳ないだろ…冗談もたいがいにしろ。
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恵梨香:人一倍、隆君の肩持ってたくせに。
:
大樹:…さぁな。
:
恵梨香:ふふ…いいお父さんになったわね。
:
恵梨香:…やっぱりあの時あなたと結婚して良かった。