台本概要

 891 views 

タイトル シャンプーハットとエリザベス
作者名 akodon  (@akodon1)
ジャンル コメディ
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 【アドリブ大歓迎!】
いのちみじかし、イチャつけカップル。

突如思いついたネタを綴ってみたところ、何やらラブコメっぽいものができあがりました。
どっちに投げる?どっちに投げる?ええい!コメディじゃい!!
コメディとラブが7:3くらい(当社比)
全国のイチャつきたい方々、思う存分イチャつきボイスを聞かせてくれればいいと思うよ(^ω^)

 891 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
カップルA 78 彼女の方。実の所、彼氏とイチャつきたくて仕方ない。
カップルB 81 彼氏の方。好きな人の前では隠し事ができない。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
カップルA:「・・・」 カップルB:「・・・」 カップルA:「・・・今、私たちはかつてない問題に直面しております」 カップルB:「・・・はい」 カップルA:「・・・これは大変由々しき自体です」 カップルB:「・・・はい」 カップルA:「・・・これを乗り越えられなければ、この先私たちには未来がないと言っても過言ではありません」 カップルB:「・・・いや、そんな大袈裟な・・・」 カップルA:(食い気味に) カップルA:「シャラップ!!」 カップルB:「・・・はい」 カップルA:「・・・とりあえず、冷静に。一旦状況を整理しましょう」 カップルB:「わかりました」 カップルA:「私たちは本日朝十時ごろ、お家デートをしようという名目で、この部屋に集合しましたね」 カップルB:「はい」 カップルA:「のんびり二人でくつろぎながら、観たいと言っていた映画のDVDを観たり、私の手作り料理を堪能したり、ちょっと早い時間からお酒を飲んだりしたりしつつ、適度にいちゃいちゃして過ごしましたね」 カップルB:「はい」 カップルA:「そして、あっという間に楽しい時間は過ぎ、終電の時間も迫ってきた頃、私はあなたにこう言いました。 カップルA:『ねぇ・・・今日は朝まで一緒に居たいな』と」 カップルB:「・・・あの上目遣いの威力は抜群でしたね」 カップルA:「はい。何度も脳内シュミレーションを重ね、理想の角度とシチュエーションを小数点以下まで計算した、完璧なお誘いだったと自負しております」 カップルB:「ええ、服の裾をそっと掴まれた瞬間、 カップルB:『こ、これは漫画とかでよく見るやつゥ!!』と密かに興奮しました。ありがとうございました」 カップルA:「・・・しかし、その時、問題が起こりました」 カップルB:「(ごくりと生唾をのむ)」 カップルA:「それは、お風呂ができあがった直後。 カップルA:互いにそわそわしながら、めくるめくときめきトゥナイトからのミッドナイトに想いを馳せていた、その時のことでしたね」 カップルB:「はい」 カップルA:「湯はり完了のブザーに少々ドキッとしつつ、私はあなたに言いました。 カップルA:『お風呂・・・先にどうぞ』と」 カップルB:「ええ。少し恥じらいを感じさせる初々しいその言い方に、私の中の審査員たちが拍手喝采、全員満点の札を上げました」 カップルA:「そう・・・満点。満点だったのですよ。 カップルA:何もかも、私が事前に行っていたシュミレーション通りでした。 カップルA:・・・そこまでは、ね」 カップルB:「(ハッと息をのむ)」 カップルA:「・・・ねぇ」 カップルB:「はい」 カップルA:「あなた、風呂場へ向かった後、何故か間髪(かんはつ)入れずにすぐ戻ってきましたよね」 カップルB:「はい」 カップルA:「脱衣所には着替えからタオルから全て用意しておいたのに、まさか落ち度があったのではないかと心配して私、あなたに声をかけましたよね。 カップルA:『どうしたの?』と」 カップルB:「はい」 カップルA:「・・・その時、あなた。なんて言ったか覚えてますか?」 カップルB:「・・・『シャンプーハット』」 カップルA:「・・・は?」 カップルB:「・・・『ねぇ、この家シャンプーハット、置いてないの?』」 カップルA:「・・・」 カップルB:「・・・」 カップルA:「・・・嘘でしょ?」 カップルB:「・・・だから言ってるじゃん。さっきから何度も、嘘じゃないって」 カップルA:「使うの?マジで?」 カップルB:「いやぁ、シャンプーしてる時、目つぶると幽霊が背後に立ってそうで怖くなるじゃん。だからね」 カップルA:「・・・子どもか?」 カップルB:「心はいつまでも永遠の少年だよ」 カップルA:「シャラップ!!」 カップルB:「・・・はい」 0:(少し間) カップルA:「・・・まぁ、シャンプーハットについては百歩譲って気にしないことにしましょう。 カップルA:問題はそこからよ」 カップルB:「はい」 カップルA:「とりあえず、もうこんな時間じゃお店もほとんど空いてないから、私言ったよね。 カップルA:『もういっそ、頭洗わなくてもいいから、お風呂入ってきてよ』って」 カップルB:「はい」 カップルA:「そうしたらさ。あなた、何て言ったっけ?」 カップルB:「『俺、一日頭洗わないと野球したくなる呪いにかかってるんだよね』」 カップルA:「・・・なんなの?その呪い」 カップルB:「いやぁ、ビックリでしょ。ひいひいじいちゃんの代から受け継いでてさ」 カップルA:「嫌な遺伝だな」 カップルB:「でしょ? カップルB:まぁ、最終的に髪が全部抜け落ちれば、自動的にそのまま子孫に受け継がれるんだけど」 カップルA:「子々孫々、とんでもねぇ負の遺産を残すんじゃないよ。 カップルA:色んな意味で」 カップルB:「大丈夫。おかげで身体を洗うの忘れても、頭洗うのだけは忘れたことないから」 カップルA:「いや、忘れず洗えよ。身体も」 カップルB:「そうだね。てへへ・・・」 カップルA:「というかさ、野球したくなる呪いって何よ。 カップルA:髪を洗う行為と全く結びつかないんだけど」 カップルB:「うん。俺もさぁ、ずっとそう思ってきたんだけどさ。 カップルB:洗わないと、翌日はもう疼いて疼いて仕方なくなるのよ。 カップルB:肩が」 カップルA:「・・・肩が?」 カップルB:「そう。なんかもう、ボールを投げなきゃいけないって使命感がさ。すごいの。 カップルB:もう誰よりも真っ先にマウンドに立って、一番最初に投げなきゃ!三振とるぞー!おー!みたいな謎のやる気がさ」 カップルA:「(しばらく考え込んでから)・・・もしかして、先発?」 カップルB:「ハッ!洗髪だけに!? カップルB:ははは!やべぇな!ご先祖様のギャグセンス・・・」 カップルA:(食い気味に) カップルA:「シャラァップ!!」 カップルB:「・・・はい」 0:(少し間) カップルA:「・・・もうさ。台無しだよ」 カップルB:「なにが?」 カップルA:「来るべきこの日の為にさ。私、わざわざ新しいパジャマ用意したんだよ。 カップルA:年甲斐もなく。可愛いもこもこのやつ。ジェロピコの」 カップルB:「へぇ・・・」 カップルA:「下着もさ。超気合い入れたの。 カップルA:三枚組、税込398円のセール品じゃなくて。 カップルA:上下揃いの、ちょっと気合い入れすぎちゃったかも〜♡くらいのやつ」 カップルB:「・・・ちなみに色は?」 カップルA:「・・・白(お好きな色を入れてください)」 カップルB:「・・・ほぉん」 カップルA:「それを着てさ。完全武装で挑もうと思ってたわけ。 カップルA:もう気分は武士よ。戦じゃ、者どもであえー!って感じ。 カップルA:頭の中で法螺貝(ほらがい)が鳴り響いてんの。 カップルA:それはもう高らかに。ロックに」 カップルB:「ロックに」 カップルA:「それなのに酷くない? カップルA:なんでそこまで気分盛り上げておいてさ。 カップルA:シャンプーハットって。呪いって。意味わかんないんだけど。 カップルA:据え膳(すえぜん)ぞ?我据え膳ぞ? カップルA:それなのに、貴様このまま高楊枝(たかようじ)でも決め込もうってか?ええ?」 カップルB:「いや、そんなこともないですけど・・・」 カップルA:「じゃあ、頭くらいシャンプーハット無しで洗ってよ! カップルA:幽霊なんかに怯えず、男見せなさいよ!!」 カップルB:「・・・っ・・・見せようと・・・したじゃないか・・・!」 カップルA:「(息をのむ)」 カップルB:「けど、さすがに翌朝俺が起きた瞬間、呪いの影響でマウンドに走って行っちゃったら情緒も何も無いよね、って話になって、仕方なくシャンプーハット買いに行ったじゃないか・・・! カップルB:そしたら、お前何買ってきた?」 カップルA:「・・・え」 カップルB:「え?」 カップルA:「・・・エリザベスカラー(犬用)」 カップルB:「いや、なんでだよ」 カップルA:「だって、この時間だとシャンプーハット売ってるお店、みつからなくて」 カップルB:「むしろ、なんでエリザベスカラー(犬用)が売ってる店があるんだよ。 カップルB:よく見つけたな」 カップルA:「でしょ〜?ちょっとテンション上がったぁ〜」 カップルB:「へぇ〜そうなんだぁ〜!・・・じゃなくて」 : カップルB:「これじゃあ、どう考えても洗えないでしょ、頭」 カップルA:「・・・嘘」 カップルB:「嘘じゃないよ。 カップルB:わがまま言っておいて何だけどさ。どう考えたって入らないよ。頭に」 カップルA:「当たり前じゃん。 カップルA:頭に被るんじゃなくて、首周りにつけるんだよ。エリザベスカラーは」 カップルB:「知ってるよ。けど、そんな状態で頭洗ってみなよ。 カップルB:シャンプー目に入るどころか、カラーの内側に溜まって溺れちゃうから」 カップルA:「あー・・・なるほど?」 カップルB:「なるほど?じゃないよ。 カップルB:てか、エリザベスもビックリだと思うよ。 カップルB:まさか自分がオシャレの為に首元に巻いたアレが、シャンプーハットの代わりにされるなんてさぁ」 カップルA:「大丈夫。心広そうじゃん。ザベス」 カップルB:「いや、ザベスって愛称初めて聞いたわ。 カップルB:普通、エリーとかベスじゃないの?こういう場合」 カップルA:「そうなんザベス?」 カップルB:「なんだよその語尾。 カップルB:急にエセ金持ちマダムみたいになってんじゃん。腹立つなぁ」 カップルA:「腹立つなぁ・・・?それはこっちのセリフよ。 カップルA:というかさぁ!元はと言えば、あんたが変なこだわり見せなきゃこんな事にはならなかったんだからね!」 カップルB:「なっ・・・!『変な』ってなんだよ。 カップルB:仕方ねぇだろ、そういう体質なんだから。諦めて受け入れてください!」 カップルA:「受け入れたじゃない! カップルA:それなのに、またごちゃごちゃ変な理由つけて、ぶち壊しにするから!」 カップルB:「まーた『変な』って言った! カップルB:っていうか、お前だってちょっと悪ノリしただろうが! カップルB:とりあえず、エリザベスには謝ってください!」 カップルA:「いやザベス!」 カップルB:「ねぇ!各所に怒られそうなその語尾やめてってば!怒るよ!」 カップルA:「はんっ!かかってきなさいよ。シャンプーハット男」 カップルB:「おお?やる気か?脳内法螺貝女」 0:(二人、しばらくいがみ合う) カップルB:「(ため息)・・・俺、やっぱり今日帰るわ」 カップルA:「えっ・・・」 カップルB:「もう終電なんかとっくに無いけどさ、歩いて帰ろうと思えば帰れるし。 カップルB:それに、なんかもうこのままだとマジでケンカになりそうだしさ」 カップルA:「で、でも、それにしたって遅すぎるよ。 カップルA:もう深夜二時だよ?丑三つ時だよ?お化け出るかもよ?」 カップルB:「いいよ。帰るよ。 カップルB:・・・というか、少し頭冷やすべきだよ、俺たち。 カップルB:このままギスギスした空気で朝を迎えるより、ずっといいよ。お互いの為に」 カップルA:「・・・やだ」 カップルB:「ん?」 カップルA:「やだ。一緒にいてよ。 カップルA:別にこのまま朝まで何も無くたっていいから。一緒にいてよ」 カップルB:「お前・・・」 カップルA:「・・・ごめん」 カップルB:「え?」 カップルA:「なんか、この土壇場(どたんば)になって急にあれこれ理由つけて、待たされて・・・ カップルA:私のこと、実は嫌いなのかな、って思っちゃったの。 カップルA:そのせいで、キツく当たっちゃって・・・ごめん」 カップルB:「・・・」 カップルA:「・・・けど、そうだよね。 カップルA:人には色々事情があるのにね。 カップルA:それなのに、自分の気持ちばっかり押し付けて、それを受け入れることができないこんな心の狭いヤツなんて、嫌だよね・・・」 カップルB:「・・・っ」 カップルA:「(涙をこらえながら)うん・・・!やっぱりあなたの言うとおり、一旦距離を置こう・・・! カップルA:あ、そうだ。待ってて、すぐにタクシー呼ぶからさ・・・」 カップルB:(食い気味に) カップルB:「待って!」 カップルA:「・・・え?」 カップルB:「・・・その・・・俺も色々言いすぎた。 カップルB:せっかく、一緒に居たいって言ってくれたお前の気持ち、全く考えずにあれこれ自分の事情ばっかり押し付けて・・・。 カップルB:そりゃあ不安にさせて当たり前だよな・・・ごめん」 カップルA:「・・・」 カップルB:「・・・好きだよ」 カップルA:「・・・っ」 カップルB:「好きだよ。俺、お前の事。 カップルB:この日の為に、一生懸命準備をしてくれた健気なところも、相手のことを必死に受け止めようとする、その優しくて可愛いところも」 カップルA:「ホントに・・・?」 カップルB:「ホントだよ。だからこそ俺、お前の前では包み隠さず何でも話しちゃうんだよ」 カップルA:「・・・シャンプーハットのこととか?」 カップルB:「シャンプーハットのこととか(笑)」 0:(二人、笑い合う) カップルB:「・・・あのさ」 カップルA:「ん?」 カップルB:「やっぱり、今日泊まっていってもいい?」 カップルA:「いいよ。 カップルA:・・・って言っても、朝までもう殆ど時間ないけど」 カップルB:「いいじゃん。お互い明日休みだろ? カップルB:昼過ぎまでのんびり寝ちゃおうぜ」 カップルA:「贅沢な休日だなぁ」 カップルB:「だろ?」 カップルA:「ドヤ顔、ムカつく(笑)」 カップルB:「(笑)」 カップルB:「・・・ところで、あの・・・つきましては」 カップルA:「はい」 カップルB:「ええとですね・・・せっかくご用意してくださった、可愛らしいパジャマとやらをお披露目して頂くことは・・・可能でしょうか?」 カップルA:「・・・えーっ・・・どうしようかなぁ・・・」 カップルB:「ここまできて、まさかのお預け?」 カップルA:「うーん・・・あっ、そうだ。 カップルA:じゃあ、今からシャンプーハット無しで頭を洗う特訓しよう。 カップルA:ちゃんとできたら見せてあげる」 カップルB:「えっ・・・いや、いきなりはその・・・難易度高いかなぁ・・・」 カップルA:「私の為に頑張って」 カップルB:「・・・善処します。いずれ」 カップルA:「もー仕方ないなぁ・・・。 カップルA:それなら・・・あっ、じゃあこれ!これ使おう!」 カップルB:「・・・だからぁ!それエリザベスカラー!」 : : 0:〜FIN〜

カップルA:「・・・」 カップルB:「・・・」 カップルA:「・・・今、私たちはかつてない問題に直面しております」 カップルB:「・・・はい」 カップルA:「・・・これは大変由々しき自体です」 カップルB:「・・・はい」 カップルA:「・・・これを乗り越えられなければ、この先私たちには未来がないと言っても過言ではありません」 カップルB:「・・・いや、そんな大袈裟な・・・」 カップルA:(食い気味に) カップルA:「シャラップ!!」 カップルB:「・・・はい」 カップルA:「・・・とりあえず、冷静に。一旦状況を整理しましょう」 カップルB:「わかりました」 カップルA:「私たちは本日朝十時ごろ、お家デートをしようという名目で、この部屋に集合しましたね」 カップルB:「はい」 カップルA:「のんびり二人でくつろぎながら、観たいと言っていた映画のDVDを観たり、私の手作り料理を堪能したり、ちょっと早い時間からお酒を飲んだりしたりしつつ、適度にいちゃいちゃして過ごしましたね」 カップルB:「はい」 カップルA:「そして、あっという間に楽しい時間は過ぎ、終電の時間も迫ってきた頃、私はあなたにこう言いました。 カップルA:『ねぇ・・・今日は朝まで一緒に居たいな』と」 カップルB:「・・・あの上目遣いの威力は抜群でしたね」 カップルA:「はい。何度も脳内シュミレーションを重ね、理想の角度とシチュエーションを小数点以下まで計算した、完璧なお誘いだったと自負しております」 カップルB:「ええ、服の裾をそっと掴まれた瞬間、 カップルB:『こ、これは漫画とかでよく見るやつゥ!!』と密かに興奮しました。ありがとうございました」 カップルA:「・・・しかし、その時、問題が起こりました」 カップルB:「(ごくりと生唾をのむ)」 カップルA:「それは、お風呂ができあがった直後。 カップルA:互いにそわそわしながら、めくるめくときめきトゥナイトからのミッドナイトに想いを馳せていた、その時のことでしたね」 カップルB:「はい」 カップルA:「湯はり完了のブザーに少々ドキッとしつつ、私はあなたに言いました。 カップルA:『お風呂・・・先にどうぞ』と」 カップルB:「ええ。少し恥じらいを感じさせる初々しいその言い方に、私の中の審査員たちが拍手喝采、全員満点の札を上げました」 カップルA:「そう・・・満点。満点だったのですよ。 カップルA:何もかも、私が事前に行っていたシュミレーション通りでした。 カップルA:・・・そこまでは、ね」 カップルB:「(ハッと息をのむ)」 カップルA:「・・・ねぇ」 カップルB:「はい」 カップルA:「あなた、風呂場へ向かった後、何故か間髪(かんはつ)入れずにすぐ戻ってきましたよね」 カップルB:「はい」 カップルA:「脱衣所には着替えからタオルから全て用意しておいたのに、まさか落ち度があったのではないかと心配して私、あなたに声をかけましたよね。 カップルA:『どうしたの?』と」 カップルB:「はい」 カップルA:「・・・その時、あなた。なんて言ったか覚えてますか?」 カップルB:「・・・『シャンプーハット』」 カップルA:「・・・は?」 カップルB:「・・・『ねぇ、この家シャンプーハット、置いてないの?』」 カップルA:「・・・」 カップルB:「・・・」 カップルA:「・・・嘘でしょ?」 カップルB:「・・・だから言ってるじゃん。さっきから何度も、嘘じゃないって」 カップルA:「使うの?マジで?」 カップルB:「いやぁ、シャンプーしてる時、目つぶると幽霊が背後に立ってそうで怖くなるじゃん。だからね」 カップルA:「・・・子どもか?」 カップルB:「心はいつまでも永遠の少年だよ」 カップルA:「シャラップ!!」 カップルB:「・・・はい」 0:(少し間) カップルA:「・・・まぁ、シャンプーハットについては百歩譲って気にしないことにしましょう。 カップルA:問題はそこからよ」 カップルB:「はい」 カップルA:「とりあえず、もうこんな時間じゃお店もほとんど空いてないから、私言ったよね。 カップルA:『もういっそ、頭洗わなくてもいいから、お風呂入ってきてよ』って」 カップルB:「はい」 カップルA:「そうしたらさ。あなた、何て言ったっけ?」 カップルB:「『俺、一日頭洗わないと野球したくなる呪いにかかってるんだよね』」 カップルA:「・・・なんなの?その呪い」 カップルB:「いやぁ、ビックリでしょ。ひいひいじいちゃんの代から受け継いでてさ」 カップルA:「嫌な遺伝だな」 カップルB:「でしょ? カップルB:まぁ、最終的に髪が全部抜け落ちれば、自動的にそのまま子孫に受け継がれるんだけど」 カップルA:「子々孫々、とんでもねぇ負の遺産を残すんじゃないよ。 カップルA:色んな意味で」 カップルB:「大丈夫。おかげで身体を洗うの忘れても、頭洗うのだけは忘れたことないから」 カップルA:「いや、忘れず洗えよ。身体も」 カップルB:「そうだね。てへへ・・・」 カップルA:「というかさ、野球したくなる呪いって何よ。 カップルA:髪を洗う行為と全く結びつかないんだけど」 カップルB:「うん。俺もさぁ、ずっとそう思ってきたんだけどさ。 カップルB:洗わないと、翌日はもう疼いて疼いて仕方なくなるのよ。 カップルB:肩が」 カップルA:「・・・肩が?」 カップルB:「そう。なんかもう、ボールを投げなきゃいけないって使命感がさ。すごいの。 カップルB:もう誰よりも真っ先にマウンドに立って、一番最初に投げなきゃ!三振とるぞー!おー!みたいな謎のやる気がさ」 カップルA:「(しばらく考え込んでから)・・・もしかして、先発?」 カップルB:「ハッ!洗髪だけに!? カップルB:ははは!やべぇな!ご先祖様のギャグセンス・・・」 カップルA:(食い気味に) カップルA:「シャラァップ!!」 カップルB:「・・・はい」 0:(少し間) カップルA:「・・・もうさ。台無しだよ」 カップルB:「なにが?」 カップルA:「来るべきこの日の為にさ。私、わざわざ新しいパジャマ用意したんだよ。 カップルA:年甲斐もなく。可愛いもこもこのやつ。ジェロピコの」 カップルB:「へぇ・・・」 カップルA:「下着もさ。超気合い入れたの。 カップルA:三枚組、税込398円のセール品じゃなくて。 カップルA:上下揃いの、ちょっと気合い入れすぎちゃったかも〜♡くらいのやつ」 カップルB:「・・・ちなみに色は?」 カップルA:「・・・白(お好きな色を入れてください)」 カップルB:「・・・ほぉん」 カップルA:「それを着てさ。完全武装で挑もうと思ってたわけ。 カップルA:もう気分は武士よ。戦じゃ、者どもであえー!って感じ。 カップルA:頭の中で法螺貝(ほらがい)が鳴り響いてんの。 カップルA:それはもう高らかに。ロックに」 カップルB:「ロックに」 カップルA:「それなのに酷くない? カップルA:なんでそこまで気分盛り上げておいてさ。 カップルA:シャンプーハットって。呪いって。意味わかんないんだけど。 カップルA:据え膳(すえぜん)ぞ?我据え膳ぞ? カップルA:それなのに、貴様このまま高楊枝(たかようじ)でも決め込もうってか?ええ?」 カップルB:「いや、そんなこともないですけど・・・」 カップルA:「じゃあ、頭くらいシャンプーハット無しで洗ってよ! カップルA:幽霊なんかに怯えず、男見せなさいよ!!」 カップルB:「・・・っ・・・見せようと・・・したじゃないか・・・!」 カップルA:「(息をのむ)」 カップルB:「けど、さすがに翌朝俺が起きた瞬間、呪いの影響でマウンドに走って行っちゃったら情緒も何も無いよね、って話になって、仕方なくシャンプーハット買いに行ったじゃないか・・・! カップルB:そしたら、お前何買ってきた?」 カップルA:「・・・え」 カップルB:「え?」 カップルA:「・・・エリザベスカラー(犬用)」 カップルB:「いや、なんでだよ」 カップルA:「だって、この時間だとシャンプーハット売ってるお店、みつからなくて」 カップルB:「むしろ、なんでエリザベスカラー(犬用)が売ってる店があるんだよ。 カップルB:よく見つけたな」 カップルA:「でしょ〜?ちょっとテンション上がったぁ〜」 カップルB:「へぇ〜そうなんだぁ〜!・・・じゃなくて」 : カップルB:「これじゃあ、どう考えても洗えないでしょ、頭」 カップルA:「・・・嘘」 カップルB:「嘘じゃないよ。 カップルB:わがまま言っておいて何だけどさ。どう考えたって入らないよ。頭に」 カップルA:「当たり前じゃん。 カップルA:頭に被るんじゃなくて、首周りにつけるんだよ。エリザベスカラーは」 カップルB:「知ってるよ。けど、そんな状態で頭洗ってみなよ。 カップルB:シャンプー目に入るどころか、カラーの内側に溜まって溺れちゃうから」 カップルA:「あー・・・なるほど?」 カップルB:「なるほど?じゃないよ。 カップルB:てか、エリザベスもビックリだと思うよ。 カップルB:まさか自分がオシャレの為に首元に巻いたアレが、シャンプーハットの代わりにされるなんてさぁ」 カップルA:「大丈夫。心広そうじゃん。ザベス」 カップルB:「いや、ザベスって愛称初めて聞いたわ。 カップルB:普通、エリーとかベスじゃないの?こういう場合」 カップルA:「そうなんザベス?」 カップルB:「なんだよその語尾。 カップルB:急にエセ金持ちマダムみたいになってんじゃん。腹立つなぁ」 カップルA:「腹立つなぁ・・・?それはこっちのセリフよ。 カップルA:というかさぁ!元はと言えば、あんたが変なこだわり見せなきゃこんな事にはならなかったんだからね!」 カップルB:「なっ・・・!『変な』ってなんだよ。 カップルB:仕方ねぇだろ、そういう体質なんだから。諦めて受け入れてください!」 カップルA:「受け入れたじゃない! カップルA:それなのに、またごちゃごちゃ変な理由つけて、ぶち壊しにするから!」 カップルB:「まーた『変な』って言った! カップルB:っていうか、お前だってちょっと悪ノリしただろうが! カップルB:とりあえず、エリザベスには謝ってください!」 カップルA:「いやザベス!」 カップルB:「ねぇ!各所に怒られそうなその語尾やめてってば!怒るよ!」 カップルA:「はんっ!かかってきなさいよ。シャンプーハット男」 カップルB:「おお?やる気か?脳内法螺貝女」 0:(二人、しばらくいがみ合う) カップルB:「(ため息)・・・俺、やっぱり今日帰るわ」 カップルA:「えっ・・・」 カップルB:「もう終電なんかとっくに無いけどさ、歩いて帰ろうと思えば帰れるし。 カップルB:それに、なんかもうこのままだとマジでケンカになりそうだしさ」 カップルA:「で、でも、それにしたって遅すぎるよ。 カップルA:もう深夜二時だよ?丑三つ時だよ?お化け出るかもよ?」 カップルB:「いいよ。帰るよ。 カップルB:・・・というか、少し頭冷やすべきだよ、俺たち。 カップルB:このままギスギスした空気で朝を迎えるより、ずっといいよ。お互いの為に」 カップルA:「・・・やだ」 カップルB:「ん?」 カップルA:「やだ。一緒にいてよ。 カップルA:別にこのまま朝まで何も無くたっていいから。一緒にいてよ」 カップルB:「お前・・・」 カップルA:「・・・ごめん」 カップルB:「え?」 カップルA:「なんか、この土壇場(どたんば)になって急にあれこれ理由つけて、待たされて・・・ カップルA:私のこと、実は嫌いなのかな、って思っちゃったの。 カップルA:そのせいで、キツく当たっちゃって・・・ごめん」 カップルB:「・・・」 カップルA:「・・・けど、そうだよね。 カップルA:人には色々事情があるのにね。 カップルA:それなのに、自分の気持ちばっかり押し付けて、それを受け入れることができないこんな心の狭いヤツなんて、嫌だよね・・・」 カップルB:「・・・っ」 カップルA:「(涙をこらえながら)うん・・・!やっぱりあなたの言うとおり、一旦距離を置こう・・・! カップルA:あ、そうだ。待ってて、すぐにタクシー呼ぶからさ・・・」 カップルB:(食い気味に) カップルB:「待って!」 カップルA:「・・・え?」 カップルB:「・・・その・・・俺も色々言いすぎた。 カップルB:せっかく、一緒に居たいって言ってくれたお前の気持ち、全く考えずにあれこれ自分の事情ばっかり押し付けて・・・。 カップルB:そりゃあ不安にさせて当たり前だよな・・・ごめん」 カップルA:「・・・」 カップルB:「・・・好きだよ」 カップルA:「・・・っ」 カップルB:「好きだよ。俺、お前の事。 カップルB:この日の為に、一生懸命準備をしてくれた健気なところも、相手のことを必死に受け止めようとする、その優しくて可愛いところも」 カップルA:「ホントに・・・?」 カップルB:「ホントだよ。だからこそ俺、お前の前では包み隠さず何でも話しちゃうんだよ」 カップルA:「・・・シャンプーハットのこととか?」 カップルB:「シャンプーハットのこととか(笑)」 0:(二人、笑い合う) カップルB:「・・・あのさ」 カップルA:「ん?」 カップルB:「やっぱり、今日泊まっていってもいい?」 カップルA:「いいよ。 カップルA:・・・って言っても、朝までもう殆ど時間ないけど」 カップルB:「いいじゃん。お互い明日休みだろ? カップルB:昼過ぎまでのんびり寝ちゃおうぜ」 カップルA:「贅沢な休日だなぁ」 カップルB:「だろ?」 カップルA:「ドヤ顔、ムカつく(笑)」 カップルB:「(笑)」 カップルB:「・・・ところで、あの・・・つきましては」 カップルA:「はい」 カップルB:「ええとですね・・・せっかくご用意してくださった、可愛らしいパジャマとやらをお披露目して頂くことは・・・可能でしょうか?」 カップルA:「・・・えーっ・・・どうしようかなぁ・・・」 カップルB:「ここまできて、まさかのお預け?」 カップルA:「うーん・・・あっ、そうだ。 カップルA:じゃあ、今からシャンプーハット無しで頭を洗う特訓しよう。 カップルA:ちゃんとできたら見せてあげる」 カップルB:「えっ・・・いや、いきなりはその・・・難易度高いかなぁ・・・」 カップルA:「私の為に頑張って」 カップルB:「・・・善処します。いずれ」 カップルA:「もー仕方ないなぁ・・・。 カップルA:それなら・・・あっ、じゃあこれ!これ使おう!」 カップルB:「・・・だからぁ!それエリザベスカラー!」 : : 0:〜FIN〜