台本概要
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タイトル | 君の一番になりたくて 第2話 |
---|---|
作者名 | 天びん。 (@libra_micchan) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 5人用台本(男3、女2) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
大好きな人の一番になりたい。 青春時代には誰しもが考えたことがあるだろう。 青春時代真っただ中を生きる幼馴染5人のそれぞれの想いが交錯する… 161 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
和真 | 男 | 63 | 峰岸和真。高校2年生、天音の兄。 勉強、運動、家事、何でもござれの超人。バスケ部に所属。 口調はぶっきらぼうで、不愛想に感じられるが、根は優しい。 名前の読みは「ミネギシ カズマ」。 |
天音 | 女 | 100 | 峰岸天音。高校1年生、和真の妹。 朝が非常に弱く、起こしてもらえないと起きられないほど。 天然で昔からイジられやすいことを気にしている。 名前の読みは「ミネギシ アマネ」。 |
椎名 | 女 | 39 | 雛森椎名。和真と天音の幼馴染で、天音の親友。 しっかりしている反面、周りに振り回されがちな苦労者。 悠人の彼女。 名前の読みは「ヒナモリ シイナ」。 |
悠人 | 男 | 34 | 木嶋悠人。和真と天音の幼馴染で、結構なお調子者。 和真をからかいすぎて、いつも怒られている。 椎名の彼氏。 年の離れた姉がいるが、長期の仕事で最近は不在にしている。 名前の読みは「キジマ ユウト」。 |
徹 | 男 | 20 | 金津徹。和真と天音の幼馴染で、真面目な男の子。 成績は学年1位。 笑顔でブラックなことを言ったりする(被害者は主に悠人)。 名前の読みは「カネヅ トオル」。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
:【タイトル】
: 君の一番になりたくて 第2話
:
:
:【登場人物】
:
和真:峰岸和真。高校2年生、天音の兄。
和真:勉強、運動、家事、何でもござれの超人。バスケ部に所属。
和真:口調はぶっきらぼうで、不愛想に感じられるが、根は優しい。
和真:名前の読みは「ミネギシ カズマ」。
:
天音:峰岸天音。高校1年生、和真の妹。
天音:朝が非常に弱く、起こしてもらえないと起きられないほど。
天音:天然で昔からイジられやすいことを気にしている。
天音:名前の読みは「ミネギシ アマネ」。
:
椎名:雛森椎名。和真と天音の幼馴染で、天音の親友。
椎名:しっかりしている反面、周りに振り回されがちな苦労者。
椎名:悠人の彼女。
椎名:名前の読みは「ヒナモリ シイナ」。
:
悠人:木嶋悠人。和真と天音の幼馴染で、結構なお調子者。
悠人:和真をからかいすぎて、いつも怒られている。
悠人:椎名の彼氏。
悠人:年の離れた姉がいるが、長期の仕事で最近は不在にしている。
悠人:名前の読みは「キジマ ユウト」。
:
徹:金津徹。和真と天音の幼馴染で、真面目な男の子。
徹:成績は学年1位。
徹:笑顔でブラックなことを言ったりする(被害者は主に悠人)。
徹:名前の読みは「カネヅ トオル」。
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:
:【本編】
:
天音:うーん…あれ…?お兄ちゃん…?
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和真:おー、起きたか。
:
天音:…?
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0:見ると天音は和真に抱きしめられている。
:
:
天音:―え!?何で私お兄ちゃんに抱き締められてるの?!
:
和真:…ったく、俺がどんな思いで…。
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0:和真、額を押さえて溜息を吐くが、急に真面目な顔になると、そのまま天音に覆い被さるような体勢になる。
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:
天音:お、おにい…ちゃ…?
:
和真:あんな無防備な顔…他の奴には絶対にするなよ…。
:
天音:え?ちょっ…!お兄ちゃん!?
:
天音:(顔…顔近い…!これじゃあまるでキスするみたいな…!!)
:
和真:(切なく愛おしそうに)天音…好きだよ。
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天音:―ハッ!!
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0:天音、ベッドから起き上がり、周囲を見渡す。
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0:部屋には天音しかおらず、枕元に置いてあるスマホを確認すると珍しくアラームが鳴る前に目が覚めたようだった。
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天音:…ゆ、め…?
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0:天音、夢の最後の場面で和真からキスされそうになったことを思い出し、奇声を上げながら赤面する。
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:
天音:―ふっ!ぐぅぅぅ!!
:
天音:(―というか!何て夢見てるの私!!確かにお兄ちゃんは何でもできるしカッコいいけど…でもお兄ちゃんだし!そんな目で見たことなかったのに…!!あんな距離じゃ誰だって意識するしドキドキするよ…!)
:
天音:…まだドキドキいってる。早く着替えてご飯食べよ…。
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:
0:天音、階段を下りて居間に向かう途中で角を曲がってきた和真にぶつかる。
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天音:んぶっ!?
:
和真:―っと!…あ、天音…?
:
天音:(鼻を押さえながら)…おあおう(おはよう)。
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和真:お、う…。
:
和真:お前、まさか…アラーム通りに起きられたのか…?
:
天音:違うよ…たまたまアラーム鳴る前に目が覚めただけ。
:
和真:夢か…?天音が時間通りに起きているなんて、まさか現実なわけが…!今日は槍でも降るんじゃないか…?!
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天音:夢じゃないってば。まったく…私を何だと思って―
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:
0:天音、今朝の夢を思い出し、廊下の壁に頭を強く打ち付ける。
:
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和真:…おい。何、やってんだ…?
:
天音:まぁ…何ていうか、その…
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天音:汚れた妹でごめんナサイ…。
:
和真:…はぁ?
:
天音:いや、こっちの話だから…気にしないで。
:
和真:…朝っぱらから変な奴。
:
和真:―!(ちょっと焦り気味で)…まさか、お前まだ昨日の酒が残ってるんじゃねぇだろうな?
:
天音:…え?お酒?!
:
天音:何言ってるの、お兄ちゃん…。私まだ未成年だし、お酒なんか飲まないよ。
:
和真:…お前、昨日のこと、なんっっにも覚えてねぇの?
:
天音:…昨日?何かあったっけ??
:
和真:…。(溜息)
:
和真:昨日、放課後どこに行ってた?
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天音:…あ!しいちゃん達と駅前のチョコレート専門店に行ったんだった!!
:
和真:はい…、それで?
:
天音:自分用のチョコレートも買って、お兄ちゃんが帰ってくる前に食べてみたんだっけ。
:
和真:そうだな、俺が帰ってきたらチョコの包みが転がってたもんな。…そしたら?
:
天音:んー…疲れて寝ちゃってた、とか?
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:
0:天音、和真の顔を見るが形容できないほど険しい顔で自分を見ていることに気付く。
:
:
天音:…違ったみたいだね。
:
和真:お前が食ってたチョコ。あれは「ウイスキーボンボン」って言って、アルコール度数が高い酒を使ったチョコなんだよ。
:
天音:…え?
:
和真:だから…俺が帰ってきた時には、お前が酔っぱらって大変なことになってた訳だ。
:
天音:え、えぇぇ…。
:
和真:ったく…本当に大変だったんだからな。俺の言うことなんか聞きやしねーし、途中で寝始めたと思ったら、こっちが起こそうとしても起きねーし。
:
天音:そ、そんなことになってたなんて…。
:
和真:まぁ…こういうアルコールを使った商品は普通買う時に店員から一声かけられるものなんだが。何も言われなかったって言ってたし、お前も知らずに食っちまったんなら仕方ねぇけど今後は気を付けろよ?…お前は特に酒弱いみたいだし。
:
天音:うぅぅ…はい。
:
天音:(そっかぁ…じゃあ朝起きてすぐに動悸が収まらなかったのもお酒のせいだったりするのかも…)
:
和真:大方お前がアラーム止める前に起きたのも酒のせいだろ、酒飲むと睡眠は浅くなるらしいからな。
:
天音:そうなんだ…気を付けるね―って、ちょっと待って!
:
和真:ん?
:
天音:…お兄ちゃんから見て、私はお酒に弱い人だって思ったんだよね?
:
和真:あぁ。…というか、お前の酔い方からしてあれは誰の目から見ても明らかに弱いと思うだろうよ。
:
天音:そ、そそそそんなに酷い酔い方してたの…?
:
和真:(結構間をとって)…さぁな。
:
天音:ちょっと!何で教えてくれないの?!
:
和真:その方が想像が膨らんで自分で気を付けようとするだろ?…さーて、朝飯食うぞー、いい加減腹減った。
:
天音:話逸らさないでよ!!どんな酔い方だったか教えてってば!!
:
和真:…別に言ってもいいが、多分お前立ち直れなくなるぞ。
:
天音:え…。
:
和真:ふはっ!お前なんて顔してんだよ…、この世の終わりみたいな顔してるぞ。
:
天音:だってお兄ちゃんが意地悪したり私で遊ぶから…!!
:
和真:言っておくが俺は事実しか言ってないからな。…ほら、飯食おうぜ。お前も腹減ってるだろ。
:
:
0:2人が食卓に着くと同時にチャイムが鳴った。
:
:
和真:はい。
:
徹:あ、和兄おはよう。
:
和真:…お前ら今日は早くないか?
:
悠人:だって、和兄が言ったんじゃん。「他人の食いかけ食うぐらいなら今度ちゃんと作ってやるから~」って。
:
和真:…悠には言ってなかったがな?
:
悠人:やっぱり酷い!
:
椎名:でも和兄ご機嫌だね、何かあった?
:
和真:別に。
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和真:…まぁいい、上がれ。
:
:
:
椎名:お邪魔しまーす。
:
天音:え?しいちゃん?!おはよう。今日は早くない?
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徹:あれ!?天音が起きてる!!
:
悠人:え?マジ??
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椎名:えへへ…昨日言ってた通り、朝食頂きに来ました~
:
天音:なるほど…だからこんなに早いんだね。
:
徹:天音こそどうしたの、こんな時間に起きてるなんて珍しいよね。
:
天音:ちょっと目が冴えちゃってさ…。
:
悠人:あーちゃんが寝てる間に和兄のご飯食べさせてもらおうと思ってたんだけど、タイミング悪かったな。
:
天音:気にしないで、私は大丈夫だから。
:
悠人:それであーちゃんが寝坊したら普段和兄がどんな風に起こしてるかドアの陰からコッソリ見ようかと思ってたのに―
:
和真:だ・れ・が、させるか。
:
:
0:和真、悠人にアイアンクローをかける。(悠人の足は浮いている)
:
:
徹:うわぁ、悠サイテー…年頃の女の子の部屋覗くとかありえないよ。
:
椎名:ないわー、たった今浮気現場目撃したわー。
:
悠人:…あーちゃーん、助けてー。君のお兄さんのアイアンクローメッチャ痛いんだけど、頭蓋骨メキメキ言ってるんだけど。
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天音:自業自得だね。
:
椎名:あーあ、せっかく和兄の機嫌良かったのにねぇ。
:
天音:え?そうなの?
:
椎名:そうだよ、だってドアホンで会話してる時の声も弾んでたし、和兄滅多に笑わないのに玄関開けてくれた時、微笑んでたもん。
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天音:そういえば…。
:
天音:(さっき私の酔い方の話をしてた時、お兄ちゃん笑ってたっけ…。昔は結構笑ってたはずなのに、いつから笑わなくなったんだろう…。)
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和真:…(溜息)。お前ら、とにかく座れ。椅子がないから一人は向こうのソファになるが…
:
徹:んじゃあ、悠がソファで。
:
悠人:おい!!何が悲しゅうて俺だけ一人でポツンと食べにゃあならんのだ!!
:
徹:え、悠だから…?
:
悠人:あのー、徹サン?俺も一応人の心を持っているんですけど…。
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椎名:あーもう、…よしよし。
:
椎名:じゃあ私が悠人と一緒にソファで食べるから、徹がテーブルで食べて?
:
徹:そうだね。じゃあ椎名、悠のことは頼んだ。
:
和真:…ったく仕方ねぇやつだな。…今他の部屋から椅子持ってくるから待ってろ。全員こっちで食うぞ。
:
悠人:和兄…!やっぱり何だかんだ言いつつ優しい兄貴!!俺惚れちゃうかも―
:
和真:次気色悪いこと言ったら、お前だけ床で食うことになるぞ…。
:
悠人:あ…はい…。
:
徹:…ホント、和兄は優しいね。
:
和真:うっせ。…とにかくお前らは座って待ってろ。すぐに作ってやるから。
:
椎名:はーい!
:
:
0:和真が台所に入り、手際よく3人分の朝食を作り始めると、悠人がコンロに置かれている鍋に気が付く。
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悠人:ん?そういえば、その鍋は何なの?
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和真:!
:
天音:あ…!それってもしかして―
:
和真:…これは夕食に向けて仕込んでるんだ。お前らに出すにはまだ早過ぎる。
:
天音:(え…、でもそれって間違いなく昨日私が作ったシチューだよね…。)
:
和真:…。
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:
0:天音が驚いて和真を見ると、和真に視線で「何も言うな」と制される。
:
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天音:…。
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悠人:なぁんだ、残念。腹減ってるし、それも食わせてもらえるかと思ったのに~。
:
和真:お前は「遠慮」という言葉の意味を広辞苑で調べてこい。
:
徹:へぇ…でも興味あるなぁ…仕込みが必要な料理ってどんな物なんだろう…。
:
和真:…そっちはまた今度な。
:
悠人:和兄、ちょーっとだけ味見するのは―
:
和真:そうか…お前はそんなに床で食いたいか…!
:
悠人:(なるべく早口で)嘘です、冗談です、テーブルで食べたいです、ハイ!!
:
椎名:悠人はいい加減に懲りなよ…。和君ごめんね、毎回毎回…。
:
和真:俺は完成したものじゃないと人様に出したくねぇんだよ。…付き合い長いんだからいい加減分かるだろ。
:
徹:確かに、和兄って昔からそうだよね。こだわりが人一倍強いっていうか。
:
和真:…ほら、出来たぞ。
:
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0:和真、オムレツとベーコン、マッシュポテトが添えられた皿を持って現れる。
:
:
和真:パンはそこな、調味料は各自でかけろ。
:
椎名:うわぁぁぁ!!超美味しそう!!
:
徹:ありがとう和兄!
:
和真:…で、お前の皿はどこに置けばいい?
:
悠人:ちょっ…和兄待って!自然な流れで床に置こうとしないで!!…お前らも笑ってないで止めてくれ!!
:
和兄:…冗談だ。
:
悠人:今の間は何?!すんなり冗談だって言って!!
:
悠人:ってか、和兄が言うと冗談に聞こえな―嘘です、すみません、テーブルで食べたいです、お願いしまっす!!
:
和真:…ふっ。
:
椎名:(小声で)…ね?ご機嫌でしょ?
:
天音:うん…。
:
徹:椎名?天音?2人して何こそこそ話してんの?
:
椎名:べっつにー?
:
天音:あ、何でもないの。早く食べよ?
:
:
:
悠人:うっま!オムレツ中にチーズ入ってるしトロトロで最高!!
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和真:お前なぁ…、そんなに腹減ってるなら家でも食って来いよ。
:
悠人:いやー、和兄の朝飯が楽しみでさぁ~。お腹空かせてきたんだよ。
:
徹:あ、でもその気持ちわかるなぁ。僕も足らなかった時のことを考えて軽食だけ持ってきたけど、朝は食べてこなかったもん。
:
和真:…そうかよ。
:
椎名:でもホントに美味しい!!…いいなぁ、天音は。こんなに美味しい朝食が毎日食べられるなんて!
:
悠人:ホントにそうだぞ。まったくもって羨ましい!!
:
和真:…ま、天音が早く起きてこないから、必然的に朝食当番が俺になってるってだけの話なんだがな。
:
天音:んぐ…。
:
椎名:なぁんだ、じゃあ天音が朝起きれないせいで朝食当番サボってるってことかぁ…。和君も大変だね、可哀想だから私がヨシヨシってしてあげようか?
:
天音:ちょっ…しいちゃん!
:
徹:じゃあ、天音が早起きしてれば天音が作った朝食を食べられたかもしれないってことだね。
:
天音:徹まで…
:
徹:あはは…あれ?悠、それどうしたの?
:
悠人:んぁ?何が?
:
徹:ほら、左手の手首のところ。黒っぽくなってる…痣?
:
椎名:え…?
:
:
0:悠人、チラッと見て確認すると何気ない顔で食事を口に運ぶ。
:
:
悠人:あー、これは階段でコケた時のだな。
:
天音:えぇ?!悠ちゃん大丈夫なの?!
:
悠人:ヘーキヘーキ、よそ見してて階段踏み外しただけだからさ。
:
椎名:…。
:
徹:悠人は注意力散漫なんだよ…ホント気を付けなね?
:
悠人:え?何?もしかして徹…、俺のことを心配してくれるのか?
:
徹:そりゃそうだろ。心配してなかったら、こんなこと言わないよ。
:
悠人:んじゃ、ベーコンちょうだい★
:
徹:…悠人に痣どころか重めの天罰が下りますように…。
:
天音:ちょっ…と、徹…??
:
悠人:こわ!!怖いよ徹!!
:
和真:…。
:
和真:悠。俺の分やるから、ふざけるのも大概にしろ。いくら早い時間とはいえこのペースだと遅刻するぞ。
:
悠人:へーい、和兄ありがとう!
:
:
0:学校に着き、天音は次の授業の準備をしている。
:
:
天音:…にしても、みんなお兄ちゃんの料理が食べたくて朝から家に来るとは思わなかったなぁ。
:
天音:しいちゃんも、昨日の夜にメッセージくれればよかったのに。
:
椎名:…。
:
天音:あ、でも昨日はどちらにせよ見れなかったか。そうそう!そういえば昨日ね、家に帰って買ったチョコ食べたんだけど…
:
:
0:椎名、厳しい顔でスマホに何か打込んでいる。
:
:
天音:しい…ちゃん?
:
椎名:…。
:
天音:…しいちゃん。
:
椎名:ん…?
:
椎名:わぁぁ!な、何?どうしたの、天音。
:
天音:しいちゃん、次理科室だよ。移動しなくていいの?
:
椎名:えっ!?ヤバッ、今準備するね!!
:
天音:…うん。
:
天音:(今、しいちゃんスマホをとっさに隠したけど、お兄ちゃんにメッセージ打ってた…。私も徹も悠ちゃんも誕生日近くないし、バレンタインデーのチョコは私と買いに行く約束してるし、その件でお兄ちゃんにリサーチかけてるなら隠す必要ないよね…。)
:
椎名:ごめん、天音!お待たせ!!
:
天音:…ううん、行こっか。
:
天音:(しいちゃん、私に何を隠してるの…?)
:
:
0:天音、放課後になるとすぐに椎名のところへ行く。椎名は相変わらず厳しい顔でスマホに何かを打ち込んでいた。
:
:
天音:しいちゃん!
:
椎名:あ、天音?!どした…?
:
天音:もう放課後だよ、大丈夫?
:
椎名:え?あぁ…うん。
:
天音:しいちゃん、今朝からずっとそんな調子だよね。何かあったの?
:
椎名:やだなぁ…何もないって。
:
天音:…ホントに?
:
椎名:ホントにホント!
:
天音:…分かったよ。でも何か困ったことがあるなら私とか…私じゃ力になれないなら悠ちゃんとかお兄ちゃんにちゃんと相談してね。
:
椎名:天音…。うん、ありがとう。
:
:
0:椎名、表情が柔らかくなり、天音はホッとする。
:
:
天音:…じゃあ、一緒に帰ろ?
:
椎名:あー…ごめん、天音。今日は悠人と約束があるんだ…。
:
天音:そっかぁ…悠ちゃんと約束があるなら仕方ないね、邪魔しちゃ悪いし。
:
椎名:うん…ごめんね?
:
椎名:…そろそろ行かなきゃ、じゃあ天音、またね!!
:
天音:うん、バイバイ。
:
:
0:天音、椎名を見送ると小さく溜息を吐いてから帰り支度を始める。
:
:
天音:(何か今日のしいちゃん、ずっと上の空って感じだったよなぁ…朝家に来た時は普通だったと思うけど…いつから様子がおかしかったんだっけ?)
:
天音:(しばらく考え込む)…あ。
:
天音:(悠ちゃんの手首に痣があるの見つけてからだ…。)
:
天音:(…でもそれなら、今日は悠ちゃんと約束があるって言ってたし、直接話したりするのかな?)
:
天音:んんん~、ダメ!分かんなくなってきたぁ!!
:
悠人:―何が分かんなくなってきたんだ?
:
天音:…え。
:
:
0:天音、振り返ると悠人が不思議そうな顔で廊下から顔を覗かせている。
:
:
悠人:よう!あーちゃん、教室に残って何してんの?百面相でもしてたのか?
:
天音:悠…ちゃん?
:
悠人:ん?おぉ…悠ちゃんですけど?
:
天音:何してんの?
:
悠人:(キョトンとしながら)え?いや…椎名が今日用事あるらしくて先帰ったからさ、暇だから校内ブラブラしてただけだけど。姉ちゃんが長期の仕事終わらせて帰ってきてるなら話は別だけど、まだ先みたいだし…早く帰って来ねぇかな…。家帰ってもすることねーし。
:
天音:…え?
:
悠人:あーちゃん、どうした?何かさっきから変だぞ?
:
天音:―ごめん、悠ちゃん。私行かなきゃ!
:
悠人:お、おぉ…気をつけて帰れよー?
:
:
0:天音、急いで荷物をまとめると、ダッシュで教室を後にする。
:
:
天音:(…明らかにしいちゃんは何か隠してるし、私を避けてる。でも…何で?何で嘘なんか吐くの…?私何かしたかな…それとも、頼りない…とか?)
:
天音:しい…ちゃん…。
:
:
0:天音、泣きながら家まで走って帰るが、気持ちの整理がつかない。
:
:
天音:(…ダメだ。自分じゃ悪い方向にばっかり考えちゃう…。それとなくお兄ちゃんに相談して話聞いてもらおう…。)
:
天音:ただいま…―!?
:
:
0:玄関先に和真のバスケットシューズと椎名のものと思しき革靴が並んでいる。
:
:
天音:(え?しいちゃん!?もしかして私に相談しに…!)
:
天音:(…じゃないか、それなら私に隠す必要ないもんね…。あ、じゃあお兄ちゃんに相談しに来たのかな?)
:
:
0:天音、静かに靴を脱ぐと、そろそろと居間へ繋がる扉に近付き、中の様子を確認する。
:
:
天音:しいちゃ…
:
椎名:和君…!私どうしたらいいの?
:
和真:椎名、まずは落ち着け。
:
椎名:落ち着いてなんかいられないよ!私はもうずっと我慢してきた!!
:
和真:だからって…。
:
椎名:和君には分かんないよ!ずっと近くで…自分の気持ち、抑えてたのに…
:
椎名:(椎名泣き出す)今更悠人に、何て言えばいいのよ…
:
天音:…。
:
天音:(これ…もしかして、もしかしなくとも…修羅場?)
:
天音:(しいちゃんは悠ちゃんと付き合ってたけど、本当はずっと前からお兄ちゃんが好きって気付いたとか…そういうやつ?!)
:
和真:…あー、もう!
:
:
0:和真、頭をガシガシと掻くとそっぽを向きながら椎名の頭を優しくポンポンする。
:
:
和真:感情を内に溜め込むな、お前は自分の気持ちをハッキリ伝えるだけでいいんだよ。…だから泣くな。
:
椎名:…無理、だよ…こんなに好きで、好きすぎて…辛いんだもん…!
:
天音:―!!
:
:
0:天音、驚いて後ずさった拍子に壁にぶつかり、ガタンと物音を立てる。
:
:
椎名:え?
:
和真:あ…天音?
:
天音:(可能なら少しかすれて震えた感じの声で)…ご、めんなさ…!ホントに…ホントに盗み聞きするつもりとか、なくて…!
:
椎名:天音…。
:
和真:…おい…天音、盗み聞きとか―
:
天音:ちょっと出てくる…邪魔してゴメンね!
:
:
0:天音、和真の言葉を最後まで聞かずに家を飛び出す。
:
:
和真:―天音!?
:
天音:(どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう…!)
:
天音:(しいちゃんは悠ちゃんと付き合ってたけど、実はお兄ちゃんのことが好きで?お兄ちゃんは悠ちゃんに本当の気持ち伝えるようにしいちゃんを諭してて??しいちゃんは溢れんばかりの愛情を告白してて???)
:
天音:(もう訳分かんない…!私今どんな顔してお兄ちゃんに会えばいいか分かんないよ…!)
:【タイトル】
: 君の一番になりたくて 第2話
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:
:【登場人物】
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和真:峰岸和真。高校2年生、天音の兄。
和真:勉強、運動、家事、何でもござれの超人。バスケ部に所属。
和真:口調はぶっきらぼうで、不愛想に感じられるが、根は優しい。
和真:名前の読みは「ミネギシ カズマ」。
:
天音:峰岸天音。高校1年生、和真の妹。
天音:朝が非常に弱く、起こしてもらえないと起きられないほど。
天音:天然で昔からイジられやすいことを気にしている。
天音:名前の読みは「ミネギシ アマネ」。
:
椎名:雛森椎名。和真と天音の幼馴染で、天音の親友。
椎名:しっかりしている反面、周りに振り回されがちな苦労者。
椎名:悠人の彼女。
椎名:名前の読みは「ヒナモリ シイナ」。
:
悠人:木嶋悠人。和真と天音の幼馴染で、結構なお調子者。
悠人:和真をからかいすぎて、いつも怒られている。
悠人:椎名の彼氏。
悠人:年の離れた姉がいるが、長期の仕事で最近は不在にしている。
悠人:名前の読みは「キジマ ユウト」。
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徹:金津徹。和真と天音の幼馴染で、真面目な男の子。
徹:成績は学年1位。
徹:笑顔でブラックなことを言ったりする(被害者は主に悠人)。
徹:名前の読みは「カネヅ トオル」。
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:【本編】
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天音:うーん…あれ…?お兄ちゃん…?
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和真:おー、起きたか。
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天音:…?
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0:見ると天音は和真に抱きしめられている。
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天音:―え!?何で私お兄ちゃんに抱き締められてるの?!
:
和真:…ったく、俺がどんな思いで…。
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0:和真、額を押さえて溜息を吐くが、急に真面目な顔になると、そのまま天音に覆い被さるような体勢になる。
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天音:お、おにい…ちゃ…?
:
和真:あんな無防備な顔…他の奴には絶対にするなよ…。
:
天音:え?ちょっ…!お兄ちゃん!?
:
天音:(顔…顔近い…!これじゃあまるでキスするみたいな…!!)
:
和真:(切なく愛おしそうに)天音…好きだよ。
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天音:―ハッ!!
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0:天音、ベッドから起き上がり、周囲を見渡す。
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0:部屋には天音しかおらず、枕元に置いてあるスマホを確認すると珍しくアラームが鳴る前に目が覚めたようだった。
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天音:…ゆ、め…?
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0:天音、夢の最後の場面で和真からキスされそうになったことを思い出し、奇声を上げながら赤面する。
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天音:―ふっ!ぐぅぅぅ!!
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天音:(―というか!何て夢見てるの私!!確かにお兄ちゃんは何でもできるしカッコいいけど…でもお兄ちゃんだし!そんな目で見たことなかったのに…!!あんな距離じゃ誰だって意識するしドキドキするよ…!)
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天音:…まだドキドキいってる。早く着替えてご飯食べよ…。
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0:天音、階段を下りて居間に向かう途中で角を曲がってきた和真にぶつかる。
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:
天音:んぶっ!?
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和真:―っと!…あ、天音…?
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天音:(鼻を押さえながら)…おあおう(おはよう)。
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和真:お、う…。
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和真:お前、まさか…アラーム通りに起きられたのか…?
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天音:違うよ…たまたまアラーム鳴る前に目が覚めただけ。
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和真:夢か…?天音が時間通りに起きているなんて、まさか現実なわけが…!今日は槍でも降るんじゃないか…?!
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天音:夢じゃないってば。まったく…私を何だと思って―
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0:天音、今朝の夢を思い出し、廊下の壁に頭を強く打ち付ける。
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和真:…おい。何、やってんだ…?
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天音:まぁ…何ていうか、その…
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天音:汚れた妹でごめんナサイ…。
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和真:…はぁ?
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天音:いや、こっちの話だから…気にしないで。
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和真:…朝っぱらから変な奴。
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和真:―!(ちょっと焦り気味で)…まさか、お前まだ昨日の酒が残ってるんじゃねぇだろうな?
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天音:…え?お酒?!
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天音:何言ってるの、お兄ちゃん…。私まだ未成年だし、お酒なんか飲まないよ。
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和真:…お前、昨日のこと、なんっっにも覚えてねぇの?
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天音:…昨日?何かあったっけ??
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和真:…。(溜息)
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和真:昨日、放課後どこに行ってた?
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天音:…あ!しいちゃん達と駅前のチョコレート専門店に行ったんだった!!
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和真:はい…、それで?
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天音:自分用のチョコレートも買って、お兄ちゃんが帰ってくる前に食べてみたんだっけ。
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和真:そうだな、俺が帰ってきたらチョコの包みが転がってたもんな。…そしたら?
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天音:んー…疲れて寝ちゃってた、とか?
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0:天音、和真の顔を見るが形容できないほど険しい顔で自分を見ていることに気付く。
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天音:…違ったみたいだね。
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和真:お前が食ってたチョコ。あれは「ウイスキーボンボン」って言って、アルコール度数が高い酒を使ったチョコなんだよ。
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天音:…え?
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和真:だから…俺が帰ってきた時には、お前が酔っぱらって大変なことになってた訳だ。
:
天音:え、えぇぇ…。
:
和真:ったく…本当に大変だったんだからな。俺の言うことなんか聞きやしねーし、途中で寝始めたと思ったら、こっちが起こそうとしても起きねーし。
:
天音:そ、そんなことになってたなんて…。
:
和真:まぁ…こういうアルコールを使った商品は普通買う時に店員から一声かけられるものなんだが。何も言われなかったって言ってたし、お前も知らずに食っちまったんなら仕方ねぇけど今後は気を付けろよ?…お前は特に酒弱いみたいだし。
:
天音:うぅぅ…はい。
:
天音:(そっかぁ…じゃあ朝起きてすぐに動悸が収まらなかったのもお酒のせいだったりするのかも…)
:
和真:大方お前がアラーム止める前に起きたのも酒のせいだろ、酒飲むと睡眠は浅くなるらしいからな。
:
天音:そうなんだ…気を付けるね―って、ちょっと待って!
:
和真:ん?
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天音:…お兄ちゃんから見て、私はお酒に弱い人だって思ったんだよね?
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和真:あぁ。…というか、お前の酔い方からしてあれは誰の目から見ても明らかに弱いと思うだろうよ。
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天音:そ、そそそそんなに酷い酔い方してたの…?
:
和真:(結構間をとって)…さぁな。
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天音:ちょっと!何で教えてくれないの?!
:
和真:その方が想像が膨らんで自分で気を付けようとするだろ?…さーて、朝飯食うぞー、いい加減腹減った。
:
天音:話逸らさないでよ!!どんな酔い方だったか教えてってば!!
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和真:…別に言ってもいいが、多分お前立ち直れなくなるぞ。
:
天音:え…。
:
和真:ふはっ!お前なんて顔してんだよ…、この世の終わりみたいな顔してるぞ。
:
天音:だってお兄ちゃんが意地悪したり私で遊ぶから…!!
:
和真:言っておくが俺は事実しか言ってないからな。…ほら、飯食おうぜ。お前も腹減ってるだろ。
:
:
0:2人が食卓に着くと同時にチャイムが鳴った。
:
:
和真:はい。
:
徹:あ、和兄おはよう。
:
和真:…お前ら今日は早くないか?
:
悠人:だって、和兄が言ったんじゃん。「他人の食いかけ食うぐらいなら今度ちゃんと作ってやるから~」って。
:
和真:…悠には言ってなかったがな?
:
悠人:やっぱり酷い!
:
椎名:でも和兄ご機嫌だね、何かあった?
:
和真:別に。
:
和真:…まぁいい、上がれ。
:
:
:
椎名:お邪魔しまーす。
:
天音:え?しいちゃん?!おはよう。今日は早くない?
:
徹:あれ!?天音が起きてる!!
:
悠人:え?マジ??
:
椎名:えへへ…昨日言ってた通り、朝食頂きに来ました~
:
天音:なるほど…だからこんなに早いんだね。
:
徹:天音こそどうしたの、こんな時間に起きてるなんて珍しいよね。
:
天音:ちょっと目が冴えちゃってさ…。
:
悠人:あーちゃんが寝てる間に和兄のご飯食べさせてもらおうと思ってたんだけど、タイミング悪かったな。
:
天音:気にしないで、私は大丈夫だから。
:
悠人:それであーちゃんが寝坊したら普段和兄がどんな風に起こしてるかドアの陰からコッソリ見ようかと思ってたのに―
:
和真:だ・れ・が、させるか。
:
:
0:和真、悠人にアイアンクローをかける。(悠人の足は浮いている)
:
:
徹:うわぁ、悠サイテー…年頃の女の子の部屋覗くとかありえないよ。
:
椎名:ないわー、たった今浮気現場目撃したわー。
:
悠人:…あーちゃーん、助けてー。君のお兄さんのアイアンクローメッチャ痛いんだけど、頭蓋骨メキメキ言ってるんだけど。
:
天音:自業自得だね。
:
椎名:あーあ、せっかく和兄の機嫌良かったのにねぇ。
:
天音:え?そうなの?
:
椎名:そうだよ、だってドアホンで会話してる時の声も弾んでたし、和兄滅多に笑わないのに玄関開けてくれた時、微笑んでたもん。
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天音:そういえば…。
:
天音:(さっき私の酔い方の話をしてた時、お兄ちゃん笑ってたっけ…。昔は結構笑ってたはずなのに、いつから笑わなくなったんだろう…。)
:
和真:…(溜息)。お前ら、とにかく座れ。椅子がないから一人は向こうのソファになるが…
:
徹:んじゃあ、悠がソファで。
:
悠人:おい!!何が悲しゅうて俺だけ一人でポツンと食べにゃあならんのだ!!
:
徹:え、悠だから…?
:
悠人:あのー、徹サン?俺も一応人の心を持っているんですけど…。
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椎名:あーもう、…よしよし。
:
椎名:じゃあ私が悠人と一緒にソファで食べるから、徹がテーブルで食べて?
:
徹:そうだね。じゃあ椎名、悠のことは頼んだ。
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和真:…ったく仕方ねぇやつだな。…今他の部屋から椅子持ってくるから待ってろ。全員こっちで食うぞ。
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悠人:和兄…!やっぱり何だかんだ言いつつ優しい兄貴!!俺惚れちゃうかも―
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和真:次気色悪いこと言ったら、お前だけ床で食うことになるぞ…。
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悠人:あ…はい…。
:
徹:…ホント、和兄は優しいね。
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和真:うっせ。…とにかくお前らは座って待ってろ。すぐに作ってやるから。
:
椎名:はーい!
:
:
0:和真が台所に入り、手際よく3人分の朝食を作り始めると、悠人がコンロに置かれている鍋に気が付く。
:
:
悠人:ん?そういえば、その鍋は何なの?
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和真:!
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天音:あ…!それってもしかして―
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和真:…これは夕食に向けて仕込んでるんだ。お前らに出すにはまだ早過ぎる。
:
天音:(え…、でもそれって間違いなく昨日私が作ったシチューだよね…。)
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和真:…。
:
:
0:天音が驚いて和真を見ると、和真に視線で「何も言うな」と制される。
:
:
天音:…。
:
悠人:なぁんだ、残念。腹減ってるし、それも食わせてもらえるかと思ったのに~。
:
和真:お前は「遠慮」という言葉の意味を広辞苑で調べてこい。
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徹:へぇ…でも興味あるなぁ…仕込みが必要な料理ってどんな物なんだろう…。
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和真:…そっちはまた今度な。
:
悠人:和兄、ちょーっとだけ味見するのは―
:
和真:そうか…お前はそんなに床で食いたいか…!
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悠人:(なるべく早口で)嘘です、冗談です、テーブルで食べたいです、ハイ!!
:
椎名:悠人はいい加減に懲りなよ…。和君ごめんね、毎回毎回…。
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和真:俺は完成したものじゃないと人様に出したくねぇんだよ。…付き合い長いんだからいい加減分かるだろ。
:
徹:確かに、和兄って昔からそうだよね。こだわりが人一倍強いっていうか。
:
和真:…ほら、出来たぞ。
:
:
0:和真、オムレツとベーコン、マッシュポテトが添えられた皿を持って現れる。
:
:
和真:パンはそこな、調味料は各自でかけろ。
:
椎名:うわぁぁぁ!!超美味しそう!!
:
徹:ありがとう和兄!
:
和真:…で、お前の皿はどこに置けばいい?
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悠人:ちょっ…和兄待って!自然な流れで床に置こうとしないで!!…お前らも笑ってないで止めてくれ!!
:
和兄:…冗談だ。
:
悠人:今の間は何?!すんなり冗談だって言って!!
:
悠人:ってか、和兄が言うと冗談に聞こえな―嘘です、すみません、テーブルで食べたいです、お願いしまっす!!
:
和真:…ふっ。
:
椎名:(小声で)…ね?ご機嫌でしょ?
:
天音:うん…。
:
徹:椎名?天音?2人して何こそこそ話してんの?
:
椎名:べっつにー?
:
天音:あ、何でもないの。早く食べよ?
:
:
:
悠人:うっま!オムレツ中にチーズ入ってるしトロトロで最高!!
:
和真:お前なぁ…、そんなに腹減ってるなら家でも食って来いよ。
:
悠人:いやー、和兄の朝飯が楽しみでさぁ~。お腹空かせてきたんだよ。
:
徹:あ、でもその気持ちわかるなぁ。僕も足らなかった時のことを考えて軽食だけ持ってきたけど、朝は食べてこなかったもん。
:
和真:…そうかよ。
:
椎名:でもホントに美味しい!!…いいなぁ、天音は。こんなに美味しい朝食が毎日食べられるなんて!
:
悠人:ホントにそうだぞ。まったくもって羨ましい!!
:
和真:…ま、天音が早く起きてこないから、必然的に朝食当番が俺になってるってだけの話なんだがな。
:
天音:んぐ…。
:
椎名:なぁんだ、じゃあ天音が朝起きれないせいで朝食当番サボってるってことかぁ…。和君も大変だね、可哀想だから私がヨシヨシってしてあげようか?
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天音:ちょっ…しいちゃん!
:
徹:じゃあ、天音が早起きしてれば天音が作った朝食を食べられたかもしれないってことだね。
:
天音:徹まで…
:
徹:あはは…あれ?悠、それどうしたの?
:
悠人:んぁ?何が?
:
徹:ほら、左手の手首のところ。黒っぽくなってる…痣?
:
椎名:え…?
:
:
0:悠人、チラッと見て確認すると何気ない顔で食事を口に運ぶ。
:
:
悠人:あー、これは階段でコケた時のだな。
:
天音:えぇ?!悠ちゃん大丈夫なの?!
:
悠人:ヘーキヘーキ、よそ見してて階段踏み外しただけだからさ。
:
椎名:…。
:
徹:悠人は注意力散漫なんだよ…ホント気を付けなね?
:
悠人:え?何?もしかして徹…、俺のことを心配してくれるのか?
:
徹:そりゃそうだろ。心配してなかったら、こんなこと言わないよ。
:
悠人:んじゃ、ベーコンちょうだい★
:
徹:…悠人に痣どころか重めの天罰が下りますように…。
:
天音:ちょっ…と、徹…??
:
悠人:こわ!!怖いよ徹!!
:
和真:…。
:
和真:悠。俺の分やるから、ふざけるのも大概にしろ。いくら早い時間とはいえこのペースだと遅刻するぞ。
:
悠人:へーい、和兄ありがとう!
:
:
0:学校に着き、天音は次の授業の準備をしている。
:
:
天音:…にしても、みんなお兄ちゃんの料理が食べたくて朝から家に来るとは思わなかったなぁ。
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天音:しいちゃんも、昨日の夜にメッセージくれればよかったのに。
:
椎名:…。
:
天音:あ、でも昨日はどちらにせよ見れなかったか。そうそう!そういえば昨日ね、家に帰って買ったチョコ食べたんだけど…
:
:
0:椎名、厳しい顔でスマホに何か打込んでいる。
:
:
天音:しい…ちゃん?
:
椎名:…。
:
天音:…しいちゃん。
:
椎名:ん…?
:
椎名:わぁぁ!な、何?どうしたの、天音。
:
天音:しいちゃん、次理科室だよ。移動しなくていいの?
:
椎名:えっ!?ヤバッ、今準備するね!!
:
天音:…うん。
:
天音:(今、しいちゃんスマホをとっさに隠したけど、お兄ちゃんにメッセージ打ってた…。私も徹も悠ちゃんも誕生日近くないし、バレンタインデーのチョコは私と買いに行く約束してるし、その件でお兄ちゃんにリサーチかけてるなら隠す必要ないよね…。)
:
椎名:ごめん、天音!お待たせ!!
:
天音:…ううん、行こっか。
:
天音:(しいちゃん、私に何を隠してるの…?)
:
:
0:天音、放課後になるとすぐに椎名のところへ行く。椎名は相変わらず厳しい顔でスマホに何かを打ち込んでいた。
:
:
天音:しいちゃん!
:
椎名:あ、天音?!どした…?
:
天音:もう放課後だよ、大丈夫?
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椎名:え?あぁ…うん。
:
天音:しいちゃん、今朝からずっとそんな調子だよね。何かあったの?
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椎名:やだなぁ…何もないって。
:
天音:…ホントに?
:
椎名:ホントにホント!
:
天音:…分かったよ。でも何か困ったことがあるなら私とか…私じゃ力になれないなら悠ちゃんとかお兄ちゃんにちゃんと相談してね。
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椎名:天音…。うん、ありがとう。
:
:
0:椎名、表情が柔らかくなり、天音はホッとする。
:
:
天音:…じゃあ、一緒に帰ろ?
:
椎名:あー…ごめん、天音。今日は悠人と約束があるんだ…。
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天音:そっかぁ…悠ちゃんと約束があるなら仕方ないね、邪魔しちゃ悪いし。
:
椎名:うん…ごめんね?
:
椎名:…そろそろ行かなきゃ、じゃあ天音、またね!!
:
天音:うん、バイバイ。
:
:
0:天音、椎名を見送ると小さく溜息を吐いてから帰り支度を始める。
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:
天音:(何か今日のしいちゃん、ずっと上の空って感じだったよなぁ…朝家に来た時は普通だったと思うけど…いつから様子がおかしかったんだっけ?)
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天音:(しばらく考え込む)…あ。
:
天音:(悠ちゃんの手首に痣があるの見つけてからだ…。)
:
天音:(…でもそれなら、今日は悠ちゃんと約束があるって言ってたし、直接話したりするのかな?)
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天音:んんん~、ダメ!分かんなくなってきたぁ!!
:
悠人:―何が分かんなくなってきたんだ?
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天音:…え。
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:
0:天音、振り返ると悠人が不思議そうな顔で廊下から顔を覗かせている。
:
:
悠人:よう!あーちゃん、教室に残って何してんの?百面相でもしてたのか?
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天音:悠…ちゃん?
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悠人:ん?おぉ…悠ちゃんですけど?
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天音:何してんの?
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悠人:(キョトンとしながら)え?いや…椎名が今日用事あるらしくて先帰ったからさ、暇だから校内ブラブラしてただけだけど。姉ちゃんが長期の仕事終わらせて帰ってきてるなら話は別だけど、まだ先みたいだし…早く帰って来ねぇかな…。家帰ってもすることねーし。
:
天音:…え?
:
悠人:あーちゃん、どうした?何かさっきから変だぞ?
:
天音:―ごめん、悠ちゃん。私行かなきゃ!
:
悠人:お、おぉ…気をつけて帰れよー?
:
:
0:天音、急いで荷物をまとめると、ダッシュで教室を後にする。
:
:
天音:(…明らかにしいちゃんは何か隠してるし、私を避けてる。でも…何で?何で嘘なんか吐くの…?私何かしたかな…それとも、頼りない…とか?)
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天音:しい…ちゃん…。
:
:
0:天音、泣きながら家まで走って帰るが、気持ちの整理がつかない。
:
:
天音:(…ダメだ。自分じゃ悪い方向にばっかり考えちゃう…。それとなくお兄ちゃんに相談して話聞いてもらおう…。)
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天音:ただいま…―!?
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:
0:玄関先に和真のバスケットシューズと椎名のものと思しき革靴が並んでいる。
:
:
天音:(え?しいちゃん!?もしかして私に相談しに…!)
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天音:(…じゃないか、それなら私に隠す必要ないもんね…。あ、じゃあお兄ちゃんに相談しに来たのかな?)
:
:
0:天音、静かに靴を脱ぐと、そろそろと居間へ繋がる扉に近付き、中の様子を確認する。
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:
天音:しいちゃ…
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椎名:和君…!私どうしたらいいの?
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和真:椎名、まずは落ち着け。
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椎名:落ち着いてなんかいられないよ!私はもうずっと我慢してきた!!
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和真:だからって…。
:
椎名:和君には分かんないよ!ずっと近くで…自分の気持ち、抑えてたのに…
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椎名:(椎名泣き出す)今更悠人に、何て言えばいいのよ…
:
天音:…。
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天音:(これ…もしかして、もしかしなくとも…修羅場?)
:
天音:(しいちゃんは悠ちゃんと付き合ってたけど、本当はずっと前からお兄ちゃんが好きって気付いたとか…そういうやつ?!)
:
和真:…あー、もう!
:
:
0:和真、頭をガシガシと掻くとそっぽを向きながら椎名の頭を優しくポンポンする。
:
:
和真:感情を内に溜め込むな、お前は自分の気持ちをハッキリ伝えるだけでいいんだよ。…だから泣くな。
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椎名:…無理、だよ…こんなに好きで、好きすぎて…辛いんだもん…!
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天音:―!!
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:
0:天音、驚いて後ずさった拍子に壁にぶつかり、ガタンと物音を立てる。
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:
椎名:え?
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和真:あ…天音?
:
天音:(可能なら少しかすれて震えた感じの声で)…ご、めんなさ…!ホントに…ホントに盗み聞きするつもりとか、なくて…!
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椎名:天音…。
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和真:…おい…天音、盗み聞きとか―
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天音:ちょっと出てくる…邪魔してゴメンね!
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:
0:天音、和真の言葉を最後まで聞かずに家を飛び出す。
:
:
和真:―天音!?
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天音:(どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう…!)
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天音:(しいちゃんは悠ちゃんと付き合ってたけど、実はお兄ちゃんのことが好きで?お兄ちゃんは悠ちゃんに本当の気持ち伝えるようにしいちゃんを諭してて??しいちゃんは溢れんばかりの愛情を告白してて???)
:
天音:(もう訳分かんない…!私今どんな顔してお兄ちゃんに会えばいいか分かんないよ…!)