台本概要
170 views
タイトル | あきのこえ |
---|---|
作者名 | 蒼(あおい) (@aoi_m_o10) |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 2人用台本(男2) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
空気が澄み、月がより綺麗に見える“中秋の名月”。俺は――― 中秋の名月を題材にした、あて書きシナリオです。 とても幼い場面が出てきます。ショタ声?幼児声?に挑戦したい方はどうぞ(笑) 演者様の性別は不問です。 読んで下さるだけで嬉しいです。 170 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
理維人 | 男 | 91 | 理維人(りいと) 兄 |
明 | 男 | 92 | 明(あき) 弟 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
理維人:空気が澄み、月がより綺麗に見える“中秋の名月”。
理維人:俺は毎年、空を見上げる……。
0:
0:
0:
0:
0:
0:
明:あっ!りいにぃ、つまみ食いしてる。せっかく綺麗に団子乗ってたのに、崩れちゃうじゃんか。
理維人:どうせ終わったら、食うんだし、今食べても別に変わんねぇだろ?
明:分かってないなぁ。十五夜だから団子の数も15個あるのに…りいにぃのせいで、十四夜(じゅうしや)?…もう、訳分かんなくなったじゃん!
理維人:悪かったな!別に良いだろ?満月が団子の代わりってことで。それで十五夜になるだろ?
明:はぁ。まったく…りいにぃらしいや。…変わってないね。いつになっても。
理維人:人間、そんな簡単に変わりゃしねーよ。…お前だって、いつまで経っても、りいにぃ呼びしてんじゃねぇか。呼ばれてるこっちの身にもなれ。恥ずかしいんだぞ?
明:それは諦めてよ。りいにぃは、りいにぃだもん。今更、兄貴とか、兄ちゃんって呼ぶほうが無理。物心ついた時から、そう呼んでるんだもん。
理維人:ほんと…そういう所だぞ?
明:何が?
理維人:…いいや、何でもない。…今日は、ここに居るんだろ?
明:うん。俺的には、りいにぃとずっと一緒に居たいけどね。…中々厳しくてさ。
理維人:そうか。まぁ、仕方ねーよな。
明:こうやって、兄弟で顔合わせるって事も、毎年あるかないかだし。
理維人:まぁ、他の兄弟達からすれば、珍しいかもしれないけどな。
明:そうだね。好みに多少の違いはあるけど、そこまで噛み合わないって訳でもないし。兄弟だから似通った所もある訳で。
理維人:喧嘩っていう喧嘩もしてないしな。
明:上手いように、りいにぃに、はぐらかされてた様な気もするけど…。すぐ、俺のこと可愛いって言うし。
理維人:明は可愛いだろ?
明:…なっ!?ちょっ…不意打ちはズルイって!
理維人:あはは!諦めろよ。本当の事なんだから。
明:俺は男だっての!可愛いって言われても嬉しくない!
理維人:そうムキになる所が余計に可愛いんだって。
明:あー!もう!この話は終わり!せっかく、久し振りに会ったんだし、昔の話とかしようよ。
理維人:あ、誤魔化した。…可愛い。
明:りいにぃ?!
理維人:ごめんって。昔の話なぁ…今年の夏も暑かったし、小さい頃の夏の話でもするか?
0:
0:
0:理維人6歳、明3歳。
0:
0:
理維人:あっちー…。
明:あついねー…。
理維人:何で夏って、こんなに暑いんだろうなー。
明:おひさま、元気だねー。
理維人:そうだなー。元気すぎるよなー。暑すぎて溶けそうだ…。
明:えっ?!りいにぃ溶けちゃうの?!
理維人:溶けねーよ!
明:良かった!
理維人:はぁ。…アイスでも食べるか。
明:アイス!明も食べる!
理維人:ちょっと待ってろよ……おっ!スイカバーとメロンバーあるぞ!
明:明、スイカバーがいい!
理維人:言うと思ったよ。…ほい、スイカバー。
明:ありがとう!りいにぃ!
理維人:明はスイカ派だもんな。
明:メロンバーも好きだよ?
理維人:いや、そうなんだけど。そうじゃなくて。
明:…?
理維人:果物のスイカが好きだよなって事。
明:うん!スイカ大好きだよ!りいにぃはスイカ嫌い?
理維人:いや、嫌いじゃないんだけど、種取るのが面倒くさいんだよなぁ…。俺はメロンの方が好きだなぁ。
明:明、まだメロン食べた事ない。
理維人:そっか。明はまだ食べた事ないんだっけ?
明:メロンバーは食べてるよ!
理維人:メロンバーとはちょっと味が違うんだよなぁ。…今度、お母さんにお願して、カットしたメロン買ってもらおうか。
明:うん!りいにぃと一緒にメロン食べたい!
0:
0:後日―理維人と明、一緒にメロンを食べる。
0:
明:う~ん…
理維人:どうだ?初めて食べたメロンの感想は?
明:う~~ん…
理維人:明?
明:う~~~ん?
理維人:あーきー?顔が変な顔になってるぞー?
明:…明、あんまりメロン好きくない。
理維人:ダメだったか?
明:なんかね、耳の下がね、ジワジワ~ってする。変な感じ。メロン、変な感じ!
理維人:メロンは変じゃねーよ?…明には、メロン合わなかった訳だ。
明:りいにぃと一緒にメロン食べられない…。
理維人:そう落ち込むなよ。同じものは食べられなくても、喧嘩して取り合いっこしなくて済むだろ?俺達が好きなものを一緒に食べられるんだから。
明:一緒に…?
理維人:明はスイカで、俺はメロン。好きなものを一緒に、仲良く食べられる。いい事だろ?
明:…うん!りいにぃと一緒に仲良く食べる!
0:
0:
0:
0:
0:
0:
明:そんな事もあったね。うわぁ…今思えば、メチャクチャ恥ずかしい…。
理維人:お互いガキだったんだ。そこはしょうがねーだろ。
明:でも、あれから何度かチャレンジしたんだよ?俺。でも、どうも好きになれなくて…。
理維人:好みまで一緒にしなくてもいいだろ。それも、明の個性みたいなもんなんだから。
明:そういうもん?
理維人:そういうもん。
明:変わらないといえば…りいにぃの苦手なものも、今も変わってない?
理維人:俺の…?
0:
0:
0:理維人12歳、明9歳。
0:
0:
理維人:だぁぁあああーーー!!
明:…?!りいにぃ、どうしたの?大きい声出して。
理維人:せせせ、せな、背中…!!
明:背中がどうかした?
理維人:なん…なんか、飛んで来たんだよ…!絶対くっついてる…!!明、取って!!
明:ちょっと待ってて……あ、本当だ。りいにぃ動かないでよ?
理維人:はやっ…早く…!!
明:そんなに急かさないでってば……ほら、取れたよ。
理維人:…だぁーもう!あいつら何で俺に向かって飛んで来るかなぁ?!虫は全般的に嫌いだって言ってんだろ?!
明:いや、それを虫に言っても分かる訳ないじゃん。りいにぃが頑張って避けてよ。
理維人:避けても、避けた方に来るんだよ!どうしろってんだ!?
明:それは……しょうがないね。どうしようもない。
理維人:くそぅ…。明は、そういうの平気だよな。
明:俺もそこまで好きとか、得意って訳じゃないよ?でも、りいにぃ程ではないね。
理維人:はぁ…大声出したらどっと疲れた…。もう寝ようかな…。
明:あ…りいにぃ。
理維人:何だよ、明。
明:今日の夕方から夜にかけて、雷雨になるって。天気予報が言ってる…。
理維人:………何でこうも嫌なことが重なるかな…。
明:りいにぃ、雷もダメだもんね。
理維人:明…。
明:何?りいにぃ。
理維人:……一緒に寝るぞ。
明:…うん。分かった。一緒に寝よう。
0:
0:
0:
0:
0:
0:
理維人:ダメなものはダメなんだ。克服出来るもんじゃねーよ。
明:それが、りいにぃの個性だもんね。
理維人:嬉しくねー個性だぞ?!それ。
明:あはは。
理維人:笑うなよ。
明:ごめんごめん。
理維人:ったく…。
明:兄弟だけどさ、全部が同じって訳でもないんだよね。こうして改めて話すとさ。
理維人:そうだな。
明:りいにぃは、タバコ吸うけど、俺は吸わないし。
理維人:タバコと一緒に俺はコーヒーも飲むけど、明は、あんまり飲まないもんな。
明:飲めなくはないんだけどね。お茶ばっか飲んでる。
理維人:じいちゃんみたい…
明:うるさいな。
理維人:あはは。悪い悪い。
明:それでも、服の好みとか、考え方とかさ…そういう所は似てるというか、やっぱり、兄弟なんだなって思うよ。
理維人:確かに。散歩しながら近くの神社寄ったりとか、何気ない空の景色に感動とかしてさ。
明:そうそう。まぁ…散歩しながら、冒険しだすから、俺的にはいつもヒヤヒヤしてたけどね。
理維人:そうか?
明:そうだよ。俺にはその好奇心は備わってないの。あの時も、迷子になりかけたじゃん…。
0:
0:
0:理維人21歳、明18歳
0:
0:
明:りいにぃ、ちょっと待って…歩くの早いよ…。
理維人:一緒に行くって言ったのは明の方だろ?しっかりついて来いよ。
明:それは、そうだけど…。
理維人:時間的にも、俺と一緒じゃないとダメなんだから、離れんなよ?
明:うん。…っていうか、俺達、どこ向かってんだっけ?
理維人:俺のタバコが切れたから、タバコを買いにコンビニまで行きがてら、その辺ブラブラ散歩だな。
明:だよね?ちょっと前にコンビにあったけど、何で寄ってないの?
理維人:いつも同じ所で買ってたら、つまんないだろ?普段あんまり行かないコンビニまで行って買うのが良いんだよ。
明:その思想よく分かんない…。
理維人:何でだよ?
明:何でも。…はぁ、それで?今歩いてるこの道は?大通りから外れて人通りも少ない一本道なんだけど?
理維人:そこがまた良いんだろうが。
明:言っとくけど、結構暗いからね?!街灯もそこまで立ってないし…ちょっと怖いんですけど?!
理維人:異世界への狭間とかありそうじゃね?
明:余計に怖がらせないでよ?!
理維人:何だよ、ビビってんのか?可愛いな。
明:今は可愛さ関係ない…!!もう…。
理維人:……ん?
明:今度は何?
理維人:………何処だここ?
明:俺に聞かないで?!え?!知っててこの道通ってたんじゃないの?!
理維人:いや、知らん。冒険してたら迷った。
明:ちょっと?!
理維人:まぁ、そこまで大通りから離れてるわけでもないし、明るい方に歩いていけば、大通りに出るだろ。大丈夫、大丈夫。
明:すっげー心配なんだけど?!大丈夫なの本当に!ねぇ?!
理維人:任せとけって!
明:はぁ…不安でしかない……。
0:
0:
0:
0:
0:
0:
理維人:でも、ちゃんと帰って来れただろ?あの時。
明:あの時“も”!ね。…日が高い時でも同じ事やってんだもんなぁ。りいにぃ…。
理維人:知らない道を開拓していくって、なんか楽しいじゃんか。男はそういう事にワクワクするもんなんだぞ?いいか、覚えておけ。
明:それは、覚えたくない事だなぁ。だったら、女になった方がマシって思う。
理維人:女の明かぁ………絶対可愛いな。
明:何想像してんのさ?!可愛くないっての!!
理維人:そういうとこだぞ?
明:どういうとこだよ?!もう…!!
理維人:悪かったって。こういう時じゃないと、馬鹿話も出来ないだろ…?
明:………。
理維人:いつまでも一緒って訳にもいかないんだろ?
明:うん…。
0:
0:少しの間―
0:
理維人:…そろそろ時間か?
明:そう…だね。そろそろかな?
理維人:そうか…。
明:久し振りに、りいにぃと話せて楽しかったよ。一緒にお月見もしながらさ。
理維人:俺も、楽しかった。明と話せて。
明:来年もまた来るからさ、ちゃんとお月見の準備してよね?
理維人:分かってるよ。
明:本当かな?
理維人:何だよ、俺を疑うのか?
明:最初の頃は、お月見で飾るススキ。間違えて、稲穂飾ってたじゃん。いくら、りいにぃがお米好きだからって、あれにはビックリしたよ。
理維人:うるせーな。そこまで細かい事気にしたことねーんだよ。…つーか、何でそれ知ってんだよ?
明:見てたからね……。
理維人:………。
明:でもちゃんと、次の年からススキ飾って、完璧なお月見にしてくれたからね。
理維人:調べたからな…俺、そういうの詳しくねーし。
明:うん。まぁ、あながち間違ってはないんだろうけど。ススキは稲穂の代わりだからね。
理維人:魔除けでもあり、古くから神様の依り代と考えられていた…。
明:俺は、神様でも何でもないけどね。
理維人:明は、明だよ。
明:うん…。りいにぃも、りいにぃだよ。
理維人:あぁ…。
明:…じゃあ、また…ね。りいにぃ。
理維人:またな。明…。
0:
0:
0:
0:
0:
0:
明:空気が澄み、月がより綺麗に見える“中秋の名月”。
明:俺は毎年、優しく君を照らす……。
0:
0:
0:
理維人:空気が澄み、月がより綺麗に見える“中秋の名月”。
理維人:俺は毎年、空を見上げる……。
0:
0:
0:
0:
0:
0:
明:あっ!りいにぃ、つまみ食いしてる。せっかく綺麗に団子乗ってたのに、崩れちゃうじゃんか。
理維人:どうせ終わったら、食うんだし、今食べても別に変わんねぇだろ?
明:分かってないなぁ。十五夜だから団子の数も15個あるのに…りいにぃのせいで、十四夜(じゅうしや)?…もう、訳分かんなくなったじゃん!
理維人:悪かったな!別に良いだろ?満月が団子の代わりってことで。それで十五夜になるだろ?
明:はぁ。まったく…りいにぃらしいや。…変わってないね。いつになっても。
理維人:人間、そんな簡単に変わりゃしねーよ。…お前だって、いつまで経っても、りいにぃ呼びしてんじゃねぇか。呼ばれてるこっちの身にもなれ。恥ずかしいんだぞ?
明:それは諦めてよ。りいにぃは、りいにぃだもん。今更、兄貴とか、兄ちゃんって呼ぶほうが無理。物心ついた時から、そう呼んでるんだもん。
理維人:ほんと…そういう所だぞ?
明:何が?
理維人:…いいや、何でもない。…今日は、ここに居るんだろ?
明:うん。俺的には、りいにぃとずっと一緒に居たいけどね。…中々厳しくてさ。
理維人:そうか。まぁ、仕方ねーよな。
明:こうやって、兄弟で顔合わせるって事も、毎年あるかないかだし。
理維人:まぁ、他の兄弟達からすれば、珍しいかもしれないけどな。
明:そうだね。好みに多少の違いはあるけど、そこまで噛み合わないって訳でもないし。兄弟だから似通った所もある訳で。
理維人:喧嘩っていう喧嘩もしてないしな。
明:上手いように、りいにぃに、はぐらかされてた様な気もするけど…。すぐ、俺のこと可愛いって言うし。
理維人:明は可愛いだろ?
明:…なっ!?ちょっ…不意打ちはズルイって!
理維人:あはは!諦めろよ。本当の事なんだから。
明:俺は男だっての!可愛いって言われても嬉しくない!
理維人:そうムキになる所が余計に可愛いんだって。
明:あー!もう!この話は終わり!せっかく、久し振りに会ったんだし、昔の話とかしようよ。
理維人:あ、誤魔化した。…可愛い。
明:りいにぃ?!
理維人:ごめんって。昔の話なぁ…今年の夏も暑かったし、小さい頃の夏の話でもするか?
0:
0:
0:理維人6歳、明3歳。
0:
0:
理維人:あっちー…。
明:あついねー…。
理維人:何で夏って、こんなに暑いんだろうなー。
明:おひさま、元気だねー。
理維人:そうだなー。元気すぎるよなー。暑すぎて溶けそうだ…。
明:えっ?!りいにぃ溶けちゃうの?!
理維人:溶けねーよ!
明:良かった!
理維人:はぁ。…アイスでも食べるか。
明:アイス!明も食べる!
理維人:ちょっと待ってろよ……おっ!スイカバーとメロンバーあるぞ!
明:明、スイカバーがいい!
理維人:言うと思ったよ。…ほい、スイカバー。
明:ありがとう!りいにぃ!
理維人:明はスイカ派だもんな。
明:メロンバーも好きだよ?
理維人:いや、そうなんだけど。そうじゃなくて。
明:…?
理維人:果物のスイカが好きだよなって事。
明:うん!スイカ大好きだよ!りいにぃはスイカ嫌い?
理維人:いや、嫌いじゃないんだけど、種取るのが面倒くさいんだよなぁ…。俺はメロンの方が好きだなぁ。
明:明、まだメロン食べた事ない。
理維人:そっか。明はまだ食べた事ないんだっけ?
明:メロンバーは食べてるよ!
理維人:メロンバーとはちょっと味が違うんだよなぁ。…今度、お母さんにお願して、カットしたメロン買ってもらおうか。
明:うん!りいにぃと一緒にメロン食べたい!
0:
0:後日―理維人と明、一緒にメロンを食べる。
0:
明:う~ん…
理維人:どうだ?初めて食べたメロンの感想は?
明:う~~ん…
理維人:明?
明:う~~~ん?
理維人:あーきー?顔が変な顔になってるぞー?
明:…明、あんまりメロン好きくない。
理維人:ダメだったか?
明:なんかね、耳の下がね、ジワジワ~ってする。変な感じ。メロン、変な感じ!
理維人:メロンは変じゃねーよ?…明には、メロン合わなかった訳だ。
明:りいにぃと一緒にメロン食べられない…。
理維人:そう落ち込むなよ。同じものは食べられなくても、喧嘩して取り合いっこしなくて済むだろ?俺達が好きなものを一緒に食べられるんだから。
明:一緒に…?
理維人:明はスイカで、俺はメロン。好きなものを一緒に、仲良く食べられる。いい事だろ?
明:…うん!りいにぃと一緒に仲良く食べる!
0:
0:
0:
0:
0:
0:
明:そんな事もあったね。うわぁ…今思えば、メチャクチャ恥ずかしい…。
理維人:お互いガキだったんだ。そこはしょうがねーだろ。
明:でも、あれから何度かチャレンジしたんだよ?俺。でも、どうも好きになれなくて…。
理維人:好みまで一緒にしなくてもいいだろ。それも、明の個性みたいなもんなんだから。
明:そういうもん?
理維人:そういうもん。
明:変わらないといえば…りいにぃの苦手なものも、今も変わってない?
理維人:俺の…?
0:
0:
0:理維人12歳、明9歳。
0:
0:
理維人:だぁぁあああーーー!!
明:…?!りいにぃ、どうしたの?大きい声出して。
理維人:せせせ、せな、背中…!!
明:背中がどうかした?
理維人:なん…なんか、飛んで来たんだよ…!絶対くっついてる…!!明、取って!!
明:ちょっと待ってて……あ、本当だ。りいにぃ動かないでよ?
理維人:はやっ…早く…!!
明:そんなに急かさないでってば……ほら、取れたよ。
理維人:…だぁーもう!あいつら何で俺に向かって飛んで来るかなぁ?!虫は全般的に嫌いだって言ってんだろ?!
明:いや、それを虫に言っても分かる訳ないじゃん。りいにぃが頑張って避けてよ。
理維人:避けても、避けた方に来るんだよ!どうしろってんだ!?
明:それは……しょうがないね。どうしようもない。
理維人:くそぅ…。明は、そういうの平気だよな。
明:俺もそこまで好きとか、得意って訳じゃないよ?でも、りいにぃ程ではないね。
理維人:はぁ…大声出したらどっと疲れた…。もう寝ようかな…。
明:あ…りいにぃ。
理維人:何だよ、明。
明:今日の夕方から夜にかけて、雷雨になるって。天気予報が言ってる…。
理維人:………何でこうも嫌なことが重なるかな…。
明:りいにぃ、雷もダメだもんね。
理維人:明…。
明:何?りいにぃ。
理維人:……一緒に寝るぞ。
明:…うん。分かった。一緒に寝よう。
0:
0:
0:
0:
0:
0:
理維人:ダメなものはダメなんだ。克服出来るもんじゃねーよ。
明:それが、りいにぃの個性だもんね。
理維人:嬉しくねー個性だぞ?!それ。
明:あはは。
理維人:笑うなよ。
明:ごめんごめん。
理維人:ったく…。
明:兄弟だけどさ、全部が同じって訳でもないんだよね。こうして改めて話すとさ。
理維人:そうだな。
明:りいにぃは、タバコ吸うけど、俺は吸わないし。
理維人:タバコと一緒に俺はコーヒーも飲むけど、明は、あんまり飲まないもんな。
明:飲めなくはないんだけどね。お茶ばっか飲んでる。
理維人:じいちゃんみたい…
明:うるさいな。
理維人:あはは。悪い悪い。
明:それでも、服の好みとか、考え方とかさ…そういう所は似てるというか、やっぱり、兄弟なんだなって思うよ。
理維人:確かに。散歩しながら近くの神社寄ったりとか、何気ない空の景色に感動とかしてさ。
明:そうそう。まぁ…散歩しながら、冒険しだすから、俺的にはいつもヒヤヒヤしてたけどね。
理維人:そうか?
明:そうだよ。俺にはその好奇心は備わってないの。あの時も、迷子になりかけたじゃん…。
0:
0:
0:理維人21歳、明18歳
0:
0:
明:りいにぃ、ちょっと待って…歩くの早いよ…。
理維人:一緒に行くって言ったのは明の方だろ?しっかりついて来いよ。
明:それは、そうだけど…。
理維人:時間的にも、俺と一緒じゃないとダメなんだから、離れんなよ?
明:うん。…っていうか、俺達、どこ向かってんだっけ?
理維人:俺のタバコが切れたから、タバコを買いにコンビニまで行きがてら、その辺ブラブラ散歩だな。
明:だよね?ちょっと前にコンビにあったけど、何で寄ってないの?
理維人:いつも同じ所で買ってたら、つまんないだろ?普段あんまり行かないコンビニまで行って買うのが良いんだよ。
明:その思想よく分かんない…。
理維人:何でだよ?
明:何でも。…はぁ、それで?今歩いてるこの道は?大通りから外れて人通りも少ない一本道なんだけど?
理維人:そこがまた良いんだろうが。
明:言っとくけど、結構暗いからね?!街灯もそこまで立ってないし…ちょっと怖いんですけど?!
理維人:異世界への狭間とかありそうじゃね?
明:余計に怖がらせないでよ?!
理維人:何だよ、ビビってんのか?可愛いな。
明:今は可愛さ関係ない…!!もう…。
理維人:……ん?
明:今度は何?
理維人:………何処だここ?
明:俺に聞かないで?!え?!知っててこの道通ってたんじゃないの?!
理維人:いや、知らん。冒険してたら迷った。
明:ちょっと?!
理維人:まぁ、そこまで大通りから離れてるわけでもないし、明るい方に歩いていけば、大通りに出るだろ。大丈夫、大丈夫。
明:すっげー心配なんだけど?!大丈夫なの本当に!ねぇ?!
理維人:任せとけって!
明:はぁ…不安でしかない……。
0:
0:
0:
0:
0:
0:
理維人:でも、ちゃんと帰って来れただろ?あの時。
明:あの時“も”!ね。…日が高い時でも同じ事やってんだもんなぁ。りいにぃ…。
理維人:知らない道を開拓していくって、なんか楽しいじゃんか。男はそういう事にワクワクするもんなんだぞ?いいか、覚えておけ。
明:それは、覚えたくない事だなぁ。だったら、女になった方がマシって思う。
理維人:女の明かぁ………絶対可愛いな。
明:何想像してんのさ?!可愛くないっての!!
理維人:そういうとこだぞ?
明:どういうとこだよ?!もう…!!
理維人:悪かったって。こういう時じゃないと、馬鹿話も出来ないだろ…?
明:………。
理維人:いつまでも一緒って訳にもいかないんだろ?
明:うん…。
0:
0:少しの間―
0:
理維人:…そろそろ時間か?
明:そう…だね。そろそろかな?
理維人:そうか…。
明:久し振りに、りいにぃと話せて楽しかったよ。一緒にお月見もしながらさ。
理維人:俺も、楽しかった。明と話せて。
明:来年もまた来るからさ、ちゃんとお月見の準備してよね?
理維人:分かってるよ。
明:本当かな?
理維人:何だよ、俺を疑うのか?
明:最初の頃は、お月見で飾るススキ。間違えて、稲穂飾ってたじゃん。いくら、りいにぃがお米好きだからって、あれにはビックリしたよ。
理維人:うるせーな。そこまで細かい事気にしたことねーんだよ。…つーか、何でそれ知ってんだよ?
明:見てたからね……。
理維人:………。
明:でもちゃんと、次の年からススキ飾って、完璧なお月見にしてくれたからね。
理維人:調べたからな…俺、そういうの詳しくねーし。
明:うん。まぁ、あながち間違ってはないんだろうけど。ススキは稲穂の代わりだからね。
理維人:魔除けでもあり、古くから神様の依り代と考えられていた…。
明:俺は、神様でも何でもないけどね。
理維人:明は、明だよ。
明:うん…。りいにぃも、りいにぃだよ。
理維人:あぁ…。
明:…じゃあ、また…ね。りいにぃ。
理維人:またな。明…。
0:
0:
0:
0:
0:
0:
明:空気が澄み、月がより綺麗に見える“中秋の名月”。
明:俺は毎年、優しく君を照らす……。
0:
0:
0: