台本概要

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タイトル 吾輩はネコである
作者名 Danzig
ジャンル その他
演者人数 1人用台本(不問1)
時間 10 分
台本使用規定 商用、非商用問わず連絡不要
説明 ひとり読み(朗読)台本
ネコの話です。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
語り 不問 -
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0: 0: 0:吾輩は猫である。 0:名前はもう無い 0: 0:ずっと以前、吾輩にも名前が付いていた記憶はあるが、 0:いつしかそれを呼ぶ人はいなくなってしまった。 0:だから、名前はもう無い 0: 0:この建物の軒先で、吾輩はいつも日向ぼっこをしている。 0:吾輩はこの場所が気に入っているのだ。 0: 0:だから、ここに誰がいようと、誰もいなくても、ただ吾輩はここに居る。 0:嬉しいという気持ちにも、寂しいという気持ちにもなった事がない。 0: 0:そんなある時、吾輩に新しい同居人が出来た 0:同居人と言っても、主従関係がある訳ではない 0: 0:ただ、一緒に暮らして餌をくれる、 0:ただ、そんな関係なだけなのだ 0: 0:同居人は、吾輩を「ネコ」と呼んだ 0:名前を付けると、情が移るから駄目なのだそうだ 0:情が移れば、別れが寂しくなるし、何かの決意も揺らいでしまうのだそうだ 0: 0:同居人は、不器用で、情に脆く、生きるのが下手な人間のようだ。 0:いつも悩み、いつも傷つき、いつも寂しそうだった。 0:それでも、いつも何かを探そうとしているようだった。 0:そんな人間もいるものなのだと、吾輩は少々不思議であった 0: 0:不思議と思いながらも、その同居人との暮らしは、大層心地のいいものであった 0: 0:同居人はよく、傍らに座る吾輩を撫でては 0:「吾輩は猫である」 0:と語りかけて来た 0:どういうつもりだったのか、未だに分からないが 0:どうやら、同居人の心に何かあった時に、そうしているような気がしていた。 0:だから、吾輩はいつも大人しく成すがままに撫でられていた、 0:それが「一緒に暮らす」というものなのだと、吾輩なりに思っていたからだ。 0: 0:それからというもの、吾輩は吾輩の事を「吾輩」と言うようになった 0:それ以前に、自分の事を何と言っていたのか、 0:もう思い出せない程に、吾輩は「吾輩」なのである。 0: 0:吾輩はネコと呼ばれ続けた 0:吾輩に月日の概念はないが、おそらく何年も、何年も、そう呼ばれていたと思う。 0: 0:吾輩は同居人の名前を知らない。 0:同居人は自分の名前も教えようとはしなかったからだ。 0:これも、おそらく情が移るからなのであろう。 0: 0:しかしまぁ、ネコに名前を名乗る人間などは見た事がないし 0:ここの暮らしは、いつも同居人と二人だったから、 0:同居人が誰かに名前を呼ばれたところも聞いたことがない 0: 0:それ故、吾輩は同居人の名前を知らないのだ。 0: 0:だが、吾輩は同居人の名前を知らなくても、誰かとの見分けはつくし 0:同居人も吾輩を他の猫と区別しているだろう 0:だから、それでいいのだ 0: 0:そういう関係もまたいいものだ 0: 0:この暮らしは心地いい 0:吾輩は、もう、吾輩が死ぬまで、この暮らしが続くのだろうと思っていた 0:日々の心地よさが、吾輩にそう感じさせていたのだ 0: 0:ところが、ある日、同居人の様子が少し変わった事に気づいた 0:どうやら、同居人はここを離れるらしい 0:何故かは分からない 0: 0:同居人は、何やら思い出でもかき集めるかのように、小さな荷物を纏めていた。 0: 0:そして 0:「また会おう」 0:そう言って、どこかに出かけて行った。 0: 0:それから、どれくら経ったのであろうか 0: 0:未だに、同居人は現れない 0:いや、もう同居人ではないのだな。 0: 0:あの人がいなくなってから、吾輩の胸の中には、何かポッカリと穴が空いたような感じがしている 0:これが何かは分からないが、まぁ、そのうちに、その穴も埋まっていくのだろう。 0: 0:そう、ここでいつものように日向ぼっこをしていれば、そのうちに・・・ 0: 0:吾輩は特に、あの人を待っている訳ではない。 0:住み慣れたここに、ずっと居るだけなのだ 0: 0:それは誰かに限った事ではなく、 0:誰がやって来ても、誰が去って行っても 0:ずっと吾輩はここにいる 0: 0:誰かについていく事もなく、 0:誰かから逃げる事もなく、 0:ただ、ここにいる 0: 0:それが吾輩という存在なのだから 0: 0: 0:だからきっと、あの人が帰って来た時も、吾輩はここにいるだろう 0:あの人が、いつ帰って来たとしても。 0: 0: 0:時々ふと思い出す 0:「また会おう」という言葉 0:あの人は、そう言っていたな 0: 0: 0:ふわぁ・・・ 0: 0:最近、吾輩はよく眠る 0:段々と、眠る時間も長くなってきている気がする 0:眠るのが心地よいのだ 0: 0:そろそろ春が来るのだろうか 0: 0:今日も吾輩は、一人でここに居る 0: 0:吾輩は猫である 0:名前は・・・・そう、「ネコ」である。

0: 0: 0:吾輩は猫である。 0:名前はもう無い 0: 0:ずっと以前、吾輩にも名前が付いていた記憶はあるが、 0:いつしかそれを呼ぶ人はいなくなってしまった。 0:だから、名前はもう無い 0: 0:この建物の軒先で、吾輩はいつも日向ぼっこをしている。 0:吾輩はこの場所が気に入っているのだ。 0: 0:だから、ここに誰がいようと、誰もいなくても、ただ吾輩はここに居る。 0:嬉しいという気持ちにも、寂しいという気持ちにもなった事がない。 0: 0:そんなある時、吾輩に新しい同居人が出来た 0:同居人と言っても、主従関係がある訳ではない 0: 0:ただ、一緒に暮らして餌をくれる、 0:ただ、そんな関係なだけなのだ 0: 0:同居人は、吾輩を「ネコ」と呼んだ 0:名前を付けると、情が移るから駄目なのだそうだ 0:情が移れば、別れが寂しくなるし、何かの決意も揺らいでしまうのだそうだ 0: 0:同居人は、不器用で、情に脆く、生きるのが下手な人間のようだ。 0:いつも悩み、いつも傷つき、いつも寂しそうだった。 0:それでも、いつも何かを探そうとしているようだった。 0:そんな人間もいるものなのだと、吾輩は少々不思議であった 0: 0:不思議と思いながらも、その同居人との暮らしは、大層心地のいいものであった 0: 0:同居人はよく、傍らに座る吾輩を撫でては 0:「吾輩は猫である」 0:と語りかけて来た 0:どういうつもりだったのか、未だに分からないが 0:どうやら、同居人の心に何かあった時に、そうしているような気がしていた。 0:だから、吾輩はいつも大人しく成すがままに撫でられていた、 0:それが「一緒に暮らす」というものなのだと、吾輩なりに思っていたからだ。 0: 0:それからというもの、吾輩は吾輩の事を「吾輩」と言うようになった 0:それ以前に、自分の事を何と言っていたのか、 0:もう思い出せない程に、吾輩は「吾輩」なのである。 0: 0:吾輩はネコと呼ばれ続けた 0:吾輩に月日の概念はないが、おそらく何年も、何年も、そう呼ばれていたと思う。 0: 0:吾輩は同居人の名前を知らない。 0:同居人は自分の名前も教えようとはしなかったからだ。 0:これも、おそらく情が移るからなのであろう。 0: 0:しかしまぁ、ネコに名前を名乗る人間などは見た事がないし 0:ここの暮らしは、いつも同居人と二人だったから、 0:同居人が誰かに名前を呼ばれたところも聞いたことがない 0: 0:それ故、吾輩は同居人の名前を知らないのだ。 0: 0:だが、吾輩は同居人の名前を知らなくても、誰かとの見分けはつくし 0:同居人も吾輩を他の猫と区別しているだろう 0:だから、それでいいのだ 0: 0:そういう関係もまたいいものだ 0: 0:この暮らしは心地いい 0:吾輩は、もう、吾輩が死ぬまで、この暮らしが続くのだろうと思っていた 0:日々の心地よさが、吾輩にそう感じさせていたのだ 0: 0:ところが、ある日、同居人の様子が少し変わった事に気づいた 0:どうやら、同居人はここを離れるらしい 0:何故かは分からない 0: 0:同居人は、何やら思い出でもかき集めるかのように、小さな荷物を纏めていた。 0: 0:そして 0:「また会おう」 0:そう言って、どこかに出かけて行った。 0: 0:それから、どれくら経ったのであろうか 0: 0:未だに、同居人は現れない 0:いや、もう同居人ではないのだな。 0: 0:あの人がいなくなってから、吾輩の胸の中には、何かポッカリと穴が空いたような感じがしている 0:これが何かは分からないが、まぁ、そのうちに、その穴も埋まっていくのだろう。 0: 0:そう、ここでいつものように日向ぼっこをしていれば、そのうちに・・・ 0: 0:吾輩は特に、あの人を待っている訳ではない。 0:住み慣れたここに、ずっと居るだけなのだ 0: 0:それは誰かに限った事ではなく、 0:誰がやって来ても、誰が去って行っても 0:ずっと吾輩はここにいる 0: 0:誰かについていく事もなく、 0:誰かから逃げる事もなく、 0:ただ、ここにいる 0: 0:それが吾輩という存在なのだから 0: 0: 0:だからきっと、あの人が帰って来た時も、吾輩はここにいるだろう 0:あの人が、いつ帰って来たとしても。 0: 0: 0:時々ふと思い出す 0:「また会おう」という言葉 0:あの人は、そう言っていたな 0: 0: 0:ふわぁ・・・ 0: 0:最近、吾輩はよく眠る 0:段々と、眠る時間も長くなってきている気がする 0:眠るのが心地よいのだ 0: 0:そろそろ春が来るのだろうか 0: 0:今日も吾輩は、一人でここに居る 0: 0:吾輩は猫である 0:名前は・・・・そう、「ネコ」である。