台本概要
554 views
タイトル | 吾輩はネコである |
---|---|
作者名 | Danzig |
ジャンル | その他 |
演者人数 | 1人用台本(不問1) |
時間 | 10 分 |
台本使用規定 | 商用、非商用問わず連絡不要 |
説明 |
ひとり読み(朗読)台本 ネコの話です。 554 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
語り | 不問 | - |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:
0:
0:吾輩は猫である。
0:名前はもう無い
0:
0:ずっと以前、吾輩にも名前が付いていた記憶はあるが、
0:いつしかそれを呼ぶ人はいなくなってしまった。
0:だから、名前はもう無い
0:
0:この建物の軒先で、吾輩はいつも日向ぼっこをしている。
0:吾輩はこの場所が気に入っているのだ。
0:
0:だから、ここに誰がいようと、誰もいなくても、ただ吾輩はここに居る。
0:嬉しいという気持ちにも、寂しいという気持ちにもなった事がない。
0:
0:そんなある時、吾輩に新しい同居人が出来た
0:同居人と言っても、主従関係がある訳ではない
0:
0:ただ、一緒に暮らして餌をくれる、
0:ただ、そんな関係なだけなのだ
0:
0:同居人は、吾輩を「ネコ」と呼んだ
0:名前を付けると、情が移るから駄目なのだそうだ
0:情が移れば、別れが寂しくなるし、何かの決意も揺らいでしまうのだそうだ
0:
0:同居人は、不器用で、情に脆く、生きるのが下手な人間のようだ。
0:いつも悩み、いつも傷つき、いつも寂しそうだった。
0:それでも、いつも何かを探そうとしているようだった。
0:そんな人間もいるものなのだと、吾輩は少々不思議であった
0:
0:不思議と思いながらも、その同居人との暮らしは、大層心地のいいものであった
0:
0:同居人はよく、傍らに座る吾輩を撫でては
0:「吾輩は猫である」
0:と語りかけて来た
0:どういうつもりだったのか、未だに分からないが
0:どうやら、同居人の心に何かあった時に、そうしているような気がしていた。
0:だから、吾輩はいつも大人しく成すがままに撫でられていた、
0:それが「一緒に暮らす」というものなのだと、吾輩なりに思っていたからだ。
0:
0:それからというもの、吾輩は吾輩の事を「吾輩」と言うようになった
0:それ以前に、自分の事を何と言っていたのか、
0:もう思い出せない程に、吾輩は「吾輩」なのである。
0:
0:吾輩はネコと呼ばれ続けた
0:吾輩に月日の概念はないが、おそらく何年も、何年も、そう呼ばれていたと思う。
0:
0:吾輩は同居人の名前を知らない。
0:同居人は自分の名前も教えようとはしなかったからだ。
0:これも、おそらく情が移るからなのであろう。
0:
0:しかしまぁ、ネコに名前を名乗る人間などは見た事がないし
0:ここの暮らしは、いつも同居人と二人だったから、
0:同居人が誰かに名前を呼ばれたところも聞いたことがない
0:
0:それ故、吾輩は同居人の名前を知らないのだ。
0:
0:だが、吾輩は同居人の名前を知らなくても、誰かとの見分けはつくし
0:同居人も吾輩を他の猫と区別しているだろう
0:だから、それでいいのだ
0:
0:そういう関係もまたいいものだ
0:
0:この暮らしは心地いい
0:吾輩は、もう、吾輩が死ぬまで、この暮らしが続くのだろうと思っていた
0:日々の心地よさが、吾輩にそう感じさせていたのだ
0:
0:ところが、ある日、同居人の様子が少し変わった事に気づいた
0:どうやら、同居人はここを離れるらしい
0:何故かは分からない
0:
0:同居人は、何やら思い出でもかき集めるかのように、小さな荷物を纏めていた。
0:
0:そして
0:「また会おう」
0:そう言って、どこかに出かけて行った。
0:
0:それから、どれくら経ったのであろうか
0:
0:未だに、同居人は現れない
0:いや、もう同居人ではないのだな。
0:
0:あの人がいなくなってから、吾輩の胸の中には、何かポッカリと穴が空いたような感じがしている
0:これが何かは分からないが、まぁ、そのうちに、その穴も埋まっていくのだろう。
0:
0:そう、ここでいつものように日向ぼっこをしていれば、そのうちに・・・
0:
0:吾輩は特に、あの人を待っている訳ではない。
0:住み慣れたここに、ずっと居るだけなのだ
0:
0:それは誰かに限った事ではなく、
0:誰がやって来ても、誰が去って行っても
0:ずっと吾輩はここにいる
0:
0:誰かについていく事もなく、
0:誰かから逃げる事もなく、
0:ただ、ここにいる
0:
0:それが吾輩という存在なのだから
0:
0:
0:だからきっと、あの人が帰って来た時も、吾輩はここにいるだろう
0:あの人が、いつ帰って来たとしても。
0:
0:
0:時々ふと思い出す
0:「また会おう」という言葉
0:あの人は、そう言っていたな
0:
0:
0:ふわぁ・・・
0:
0:最近、吾輩はよく眠る
0:段々と、眠る時間も長くなってきている気がする
0:眠るのが心地よいのだ
0:
0:そろそろ春が来るのだろうか
0:
0:今日も吾輩は、一人でここに居る
0:
0:吾輩は猫である
0:名前は・・・・そう、「ネコ」である。
0:
0:
0:吾輩は猫である。
0:名前はもう無い
0:
0:ずっと以前、吾輩にも名前が付いていた記憶はあるが、
0:いつしかそれを呼ぶ人はいなくなってしまった。
0:だから、名前はもう無い
0:
0:この建物の軒先で、吾輩はいつも日向ぼっこをしている。
0:吾輩はこの場所が気に入っているのだ。
0:
0:だから、ここに誰がいようと、誰もいなくても、ただ吾輩はここに居る。
0:嬉しいという気持ちにも、寂しいという気持ちにもなった事がない。
0:
0:そんなある時、吾輩に新しい同居人が出来た
0:同居人と言っても、主従関係がある訳ではない
0:
0:ただ、一緒に暮らして餌をくれる、
0:ただ、そんな関係なだけなのだ
0:
0:同居人は、吾輩を「ネコ」と呼んだ
0:名前を付けると、情が移るから駄目なのだそうだ
0:情が移れば、別れが寂しくなるし、何かの決意も揺らいでしまうのだそうだ
0:
0:同居人は、不器用で、情に脆く、生きるのが下手な人間のようだ。
0:いつも悩み、いつも傷つき、いつも寂しそうだった。
0:それでも、いつも何かを探そうとしているようだった。
0:そんな人間もいるものなのだと、吾輩は少々不思議であった
0:
0:不思議と思いながらも、その同居人との暮らしは、大層心地のいいものであった
0:
0:同居人はよく、傍らに座る吾輩を撫でては
0:「吾輩は猫である」
0:と語りかけて来た
0:どういうつもりだったのか、未だに分からないが
0:どうやら、同居人の心に何かあった時に、そうしているような気がしていた。
0:だから、吾輩はいつも大人しく成すがままに撫でられていた、
0:それが「一緒に暮らす」というものなのだと、吾輩なりに思っていたからだ。
0:
0:それからというもの、吾輩は吾輩の事を「吾輩」と言うようになった
0:それ以前に、自分の事を何と言っていたのか、
0:もう思い出せない程に、吾輩は「吾輩」なのである。
0:
0:吾輩はネコと呼ばれ続けた
0:吾輩に月日の概念はないが、おそらく何年も、何年も、そう呼ばれていたと思う。
0:
0:吾輩は同居人の名前を知らない。
0:同居人は自分の名前も教えようとはしなかったからだ。
0:これも、おそらく情が移るからなのであろう。
0:
0:しかしまぁ、ネコに名前を名乗る人間などは見た事がないし
0:ここの暮らしは、いつも同居人と二人だったから、
0:同居人が誰かに名前を呼ばれたところも聞いたことがない
0:
0:それ故、吾輩は同居人の名前を知らないのだ。
0:
0:だが、吾輩は同居人の名前を知らなくても、誰かとの見分けはつくし
0:同居人も吾輩を他の猫と区別しているだろう
0:だから、それでいいのだ
0:
0:そういう関係もまたいいものだ
0:
0:この暮らしは心地いい
0:吾輩は、もう、吾輩が死ぬまで、この暮らしが続くのだろうと思っていた
0:日々の心地よさが、吾輩にそう感じさせていたのだ
0:
0:ところが、ある日、同居人の様子が少し変わった事に気づいた
0:どうやら、同居人はここを離れるらしい
0:何故かは分からない
0:
0:同居人は、何やら思い出でもかき集めるかのように、小さな荷物を纏めていた。
0:
0:そして
0:「また会おう」
0:そう言って、どこかに出かけて行った。
0:
0:それから、どれくら経ったのであろうか
0:
0:未だに、同居人は現れない
0:いや、もう同居人ではないのだな。
0:
0:あの人がいなくなってから、吾輩の胸の中には、何かポッカリと穴が空いたような感じがしている
0:これが何かは分からないが、まぁ、そのうちに、その穴も埋まっていくのだろう。
0:
0:そう、ここでいつものように日向ぼっこをしていれば、そのうちに・・・
0:
0:吾輩は特に、あの人を待っている訳ではない。
0:住み慣れたここに、ずっと居るだけなのだ
0:
0:それは誰かに限った事ではなく、
0:誰がやって来ても、誰が去って行っても
0:ずっと吾輩はここにいる
0:
0:誰かについていく事もなく、
0:誰かから逃げる事もなく、
0:ただ、ここにいる
0:
0:それが吾輩という存在なのだから
0:
0:
0:だからきっと、あの人が帰って来た時も、吾輩はここにいるだろう
0:あの人が、いつ帰って来たとしても。
0:
0:
0:時々ふと思い出す
0:「また会おう」という言葉
0:あの人は、そう言っていたな
0:
0:
0:ふわぁ・・・
0:
0:最近、吾輩はよく眠る
0:段々と、眠る時間も長くなってきている気がする
0:眠るのが心地よいのだ
0:
0:そろそろ春が来るのだろうか
0:
0:今日も吾輩は、一人でここに居る
0:
0:吾輩は猫である
0:名前は・・・・そう、「ネコ」である。