台本概要

 343 views 

タイトル アンダーインクコリダー第1場
作者名 冷凍みかん-光柑-  (@mikanchilled)
ジャンル ファンタジー
演者人数 5人用台本(男2、女1、不問2)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 第1場『巨大な地下空間』。地下には巨大な書庫がある。歴史の闇に葬られた奈落の底で、ルビは焚書された書物の復元に励む。一方地上では、帝国主義が跋扈して世界大戦の兆しが見える中、3人の若者が未知の巨大地下空間の探索に乗り出すのだった。

 343 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ルビ 32 地下書庫で、焚書された書物の復元に生涯を捧げる16歳の少女。控えめな性格だが、優しさと勇気を併せ持つ。
アイオリス 不問 41 明るく適当な性格の少年。夢を捨て、フラフラと生きている。女性の方に演じてほしい気がする。
ドーリア 13 現実主義な青年。資本主義に辟易しながらも、自らもその恩恵にあやかっていることを自覚している。
イオニア 12 古い王家の血を引く若者。次期ロザリオブルク大公爵と期待されている。アイオリスとドーリアを洞窟探検に誘う。
ノヴァ 不問 19 地下に生息する、活発な緊急警報用の人工精霊。地下に潜むあらゆる危険を察知する能力を持つ。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:じりじりと、ロウソクの芯が焦げる音の他には、紙面を走る羽ペンの音だけが聞こえる。 ルビ:少しずつ、言葉を思い出しながら紡いでゆく。 ルビ:ああ、そうだ。ここだ。私はこの一節に惹かれたのだ。 ルビ:よかった。まだ、覚えてて… ルビ:私の大好きな物語は、今となってはもう私の頭の中にしか存在しない。 ルビ:”12月の焚書”は全てを焼いてしまった。 ルビ:小説、歴史書、紀行文。古き神々の伝説さえも。 ルビ:先人たちの想い。私の宝物。 ルビ:忘れてなるものか。全てを書き残し、次の世界に伝えるまでは。 ノヴァ:〈タイトルコール〉『アンダー・インク・コリダー第1場”巨大な地下空間”』 0:暗い洞窟を三人の若者が探索している。 イオニア:冷たっ!今なんか濡れたぞ!? アイオリス:平気だよ、ただの水さ。 ドーリア:ここは溶食洞だからね。近くに水脈があるんだろう アイオリス:洋食堂…お腹空いたなあ イオニア:2人とも、本当に付き合ってくれてありがとう アイオリス:気にするなよ。幼い頃から”三つ山(みっつやま)”で遊んだ仲じゃないか イオニア:ありがとう、アイオリス ドーリア:今では二つは禿げ上がって、残る一つは坑道でスカスカだけどね アイオリス:文明の犠牲とはいえ、ひどい話だよ。 イオニア:ああ。緑を愛していた総統閣下のことを思うと、本当に心が痛むよ。 ドーリア:おかげで、俺は儲けさせてもらったがな。重工業が発展すれば、政府も潤う。閣下も許してくれるさ。 アイオリス:なあ、今回の探索は閣下直々のお願いなんだろ?どうして秘密裏に進める必要があるのさ。 アイオリス:なあどうしてさ、イオニア・ロザリオブルク大公殿っ! イオニア:大公殿は止してくれよ、アイオリス。 ドーリア:国境付近だからだよ、アイオリス。 ドーリア:もし”巨大な地下空間”が本当に存在するのなら、戦略的価値は十分にある。 ドーリア:なんせ地上からは何が建設されようが観測できないわけだからね。 アイオリス:戦争…戦争か。戦争をするのか?僕たちの国は イオニア:そうならないために僕がいる。こんな所で失踪するわけにはいかない。 ドーリア:俺も。まだまだ儲けさせてもらうからね。 イオニア:なあ。アイオリス、君はまだ詩を書いているの? アイオリス:え?ああ…詩ね。そんなの、とっくにやめちゃったよ。 アイオリス:…文字なんて帳簿と契約書を書ければ十分ってね! ドーリア:同感だね。 イオニア:そうか… 0:アイオリスは、白い石灰質に似た岩肌を撫でながら首をひねる アイオリス:おっかしーなー!? 0:アイオリスの声が洞窟に木霊する ドーリア:大声を出すなアイオリス。耳に響く イオニア:反響…事前調査をした時は、こんなに狭い洞窟じゃないと思っていたが… ドーリア:こんなもんだろ。いつだってロマンを砕くのが現実さ。 アイオリス:あれ?割れ目がある。活断層じゃないよね?ここ 0:ピッケルの腹で、割れ目を叩くアイオリス 0:コーン…コーン… イオニア:反響してるぞ…! ドーリア:ははあ。なるほどな アイオリス:〈キラキラ目〉割れ目の先に洞窟は続いている… ドーリア:そうと分かれば、よいしょっと。 0:三人は背嚢から取り出した爆薬の包装に雷管をねじ込み、ペンチで導火線を固定する アイオリス:2人とも準備はいい? イオニア:いいよ。 ドーリア:爆薬セット完了した。 アイオリス:OK!2人とも離れてね。 アイオリス:現実を打ち砕くのもまた アイオリス:ロマンッ!!〈カチッ〉 0:ちゅどおおおん!! ドーリア:これが文明の力。もはや恐れるものは何もないな。 0:ズゴゴゴ… イオニア:なんだ?この音は… 0:洞窟全体が揺れ始め、天井からパラパラと粉が降る ドーリア:まさか、落盤する…? アイオリス:うそだ!?生き埋めはイヤだ~ッ! 0:一方、地下のとある部屋ではロウソクの灯りを頼りに、ルビが写本作業をしていた。 ルビ:〈モノローグ〉気がつけば、ガチョウの羽をインクに浸したはずなのに ルビ:紙に墨がのらなくなってしまった。 ルビ:どれほどの時間が過ぎたのだろう。 ルビ:インク壺は渇いていた。 0:ちゅどおおおん!! ルビ:今のは、爆破音…? 0:薄手のカーディガンを羽織り、扉を開け表に出ると、すでに警報用の人工精霊が現場へと向かっていた ノヴァ:危険です!危険です!住民はその場で待機してください! ルビ:何があったの? ノヴァ:書架030A群が崩落しました!危険です!落盤の連鎖する恐れがあります! ルビ:030…百科事典の棚だわ…! ルビ:…!〈走り出す〉 ノヴァ:駄目ですルビ!危険ですよ!! ノヴァ:ああ、行っちゃった… ルビ:〈モノローグ〉もし、今までの書物が台無しになってしまったら? ルビ:一日に書ける文量には限度がある…他にも書き残すモノが残っているのに! 0:書架030A群にたどり着くと、木製の棚は石灰質の瓦礫に押しつぶされていた ルビ:ひどい…何があったの…? アイオリス:たす、けて… ルビ:っ!どなたですか…? アイオリス:ごめ、なさい…たすけて… ルビ:しっかりして下さい!今引っ張り出します! アイオリス:〈うめき声〉う、ああああ!! 0:ブチブチブチッ…!! ルビ:ごめんなさい…!あなたの脚が…!わたし、そんなつもりじゃ…! 0:挟まったアイオリスの左脚が引きちぎれ、瓦礫に置き去りにされる アイオリス:あ、ああ、あ…〈気絶〉 0:激しい痛みの中で、アイオリスはゆっくりと意識を失った 0: アイオリス:〈モノローグ〉気がつくと僕は、ベッドの上で横たわっていた。 アイオリス:左足は宙吊りにされて、ズキズキと痛む。 アイオリス:まって!?脚が、ある!!ああ、よかった… アイオリス:辺りを見渡すと、部屋全体が薄暗く、ロウソクの灯りで大小二つの影が揺れていた。 ノヴァ:まったくう!私が駆けつけなければ、どうやって助けたと言うんですかあ!! ルビ:ノヴァ。本当に助かったよ… ノヴァ:貴女はいつもそうです!生きるのが下手くそなのに!本のこととなると見境がないんだから! ルビ:うう…ご、ごめんね… ノヴァ:本当ですよ!とれた脚だって糊でくっつくワケじゃないんですからね! アイオリス:あ、あの… ルビ:あ、気がついたんですね、よかった。 ノヴァ:動いちゃダメですよ!単なる応急処置ですから! 0:起きかけたアイオリスは、再び枕に頭をつけた。 アイオリス:まずは助けてくれてありがとう…そして、ここはどこですか? ルビ:王国の地下書庫です。この部屋は私の仕事部屋です… アイオリス:まさか洞窟の奥に人がいたなんて… アイオリス:先ほど爆破したのは僕です ルビ:そう、でしたか… アイオリス:ごめんなさい!いってて… ノヴァ:動かないで下さいってば!ね、ルビ。ひとまず許してあげましょ。 ノヴァ:罰はこの通り受けてるわけですし… 0:アイオリスの傷は深く、薬が切れてしまえばまた激痛が彼を襲うだろう ルビ:罰とか、許すとか、そういう問題じゃないです… ノヴァ:ルビ… アイオリス:あの…政府に連絡できますか?この事を報告しないと。 ルビ:…政府、ですか? アイオリス:はい。…そうだ!2人!僕の他に、あと2人いませんでしたかっ? ルビ:いえ、瓦礫に挟まっていたのはあなただけでしたけど… ノヴァ:もしかしたら2人とも生き埋めになっているかもしれませんね。 アイオリス:そんな…ドーリア、イオニア… ルビ:っ…大丈夫ですよ…きっと、誰かが先に助け出したでしょう… アイオリス:は、そっか、よかった… ノヴァ:どうですかね。この地下書庫で人を助けようだなんてお人好しは ノヴァ:ルビ、貴女くらいのモノでしょう。 0:ゴゴゴゴゴ…!! アイオリス:〈N〉突然、部屋が大きく揺れ始めた ルビ:まって!燭台が!! アイオリス:〈N〉落下した衝撃で燭台は激しい音を鳴らし、ロウソクの火が消える アイオリス:〈N〉部屋が暗闇に包まれると、いつの間にか揺れは収まった アイオリス:〈N〉あとにはただ、煙の匂いが漂っている ルビ:また誰かが爆破したのかしら… ノヴァ:いいえ、この揺れは深層からです。いま仲間と交信します! アイオリス:〈N〉暗闇の中で、ノヴァの瞳がチカチカ光る アイオリス:〈モノローグ〉交信中?電話線も無しにどうやって… ルビ:んしょ、うんしょ… アイオリス:何をしてるの? ルビ:脱出、準備です…念のため。 アイオリス:脱出、て…? 0:ズゴゴゴゴ!! アイオリス:また地震!?どんどん大きくなってるぞ!! ノヴァ:暗号を受信!震源は”ワーム・スケルター”と断定。対象は地上に向かって上昇中… ノヴァ:座標を特定…まさか…! ノヴァ:この部屋の真下です!! アイオリス:ええっ!?この部屋て!! ノヴァ:動いてください!早く!! アイオリス:嘘!?いたたた! ノヴァ:脚に命は替えられませんよ!! ルビ:肩を貸します!掴まって、アイオリス…! アイオリス:…うん! ルビ:うひゃあ! 0:ルビに掴まって立ち上がろうとしたら、ルビの方が倒れてきた アイオリス:ええ!?ちょっと、体幹よわッ! ルビ:すみません…普段全く運動してないモノですから… ノヴァ:もう2人とも何してるんですか!!投げますよ! ルビ:きゃあ! 0:2人の体がひょいと宙に上がると、 ノヴァ:えーい!! 0:たちまちドアの外へと放り出された。 アイオリス:いてて… ルビ:っ!ノヴァ、早くこっちへ! ノヴァ:〈覚悟を決める〉 ノヴァ:…救難信号を発信しました。あとは”ほかの私”を頼って下さい。 ノヴァ:〈笑顔〉まったく、わたしが居なかったら死んでましたよ? ノヴァ:あなた達は。 ルビ:ノヴァ!! アイオリス:〈モノローグ〉次の瞬間、巨大な虫の腹が、部屋の床下から天井へと突き抜ける。 アイオリス:虫の掘り進むスピードはすさまじく、長い長い胴が過ぎ去るまで、絶えず強風が吹き荒れた。 アイオリス:ルビの部屋はドアだけを残して、もぬけの殻となった。 アイオリス:今の僕は、何を見ている? アイオリス:状況が現実のものとして、全く飲み込めない… ルビ:そんな…ノヴァ… アイオリス:ルビ… 0:呆然としながら、空っぽの部屋を見つめるルビ ルビ:いつからでしょうか…私の部屋も安全じゃないって…分かっていたはずなのに… ルビ:怖い…この世界が怖いです… アイオリス:〈モノローグ〉かける言葉が見つからない。 アイオリス:これは僕のせいなのか…? アイオリス:イオニアやドーリアは無事なのか。 ルビ:なんで…どうしてこんな目に… アイオリス:っ!ごめんルビ…ごめんね… 0:ノヴァを失った小さな二人は 0:冷たい書庫の廊下に投げ出され、そのままひしと抱き合って泣いた。 0: 0:ー続くー

0:じりじりと、ロウソクの芯が焦げる音の他には、紙面を走る羽ペンの音だけが聞こえる。 ルビ:少しずつ、言葉を思い出しながら紡いでゆく。 ルビ:ああ、そうだ。ここだ。私はこの一節に惹かれたのだ。 ルビ:よかった。まだ、覚えてて… ルビ:私の大好きな物語は、今となってはもう私の頭の中にしか存在しない。 ルビ:”12月の焚書”は全てを焼いてしまった。 ルビ:小説、歴史書、紀行文。古き神々の伝説さえも。 ルビ:先人たちの想い。私の宝物。 ルビ:忘れてなるものか。全てを書き残し、次の世界に伝えるまでは。 ノヴァ:〈タイトルコール〉『アンダー・インク・コリダー第1場”巨大な地下空間”』 0:暗い洞窟を三人の若者が探索している。 イオニア:冷たっ!今なんか濡れたぞ!? アイオリス:平気だよ、ただの水さ。 ドーリア:ここは溶食洞だからね。近くに水脈があるんだろう アイオリス:洋食堂…お腹空いたなあ イオニア:2人とも、本当に付き合ってくれてありがとう アイオリス:気にするなよ。幼い頃から”三つ山(みっつやま)”で遊んだ仲じゃないか イオニア:ありがとう、アイオリス ドーリア:今では二つは禿げ上がって、残る一つは坑道でスカスカだけどね アイオリス:文明の犠牲とはいえ、ひどい話だよ。 イオニア:ああ。緑を愛していた総統閣下のことを思うと、本当に心が痛むよ。 ドーリア:おかげで、俺は儲けさせてもらったがな。重工業が発展すれば、政府も潤う。閣下も許してくれるさ。 アイオリス:なあ、今回の探索は閣下直々のお願いなんだろ?どうして秘密裏に進める必要があるのさ。 アイオリス:なあどうしてさ、イオニア・ロザリオブルク大公殿っ! イオニア:大公殿は止してくれよ、アイオリス。 ドーリア:国境付近だからだよ、アイオリス。 ドーリア:もし”巨大な地下空間”が本当に存在するのなら、戦略的価値は十分にある。 ドーリア:なんせ地上からは何が建設されようが観測できないわけだからね。 アイオリス:戦争…戦争か。戦争をするのか?僕たちの国は イオニア:そうならないために僕がいる。こんな所で失踪するわけにはいかない。 ドーリア:俺も。まだまだ儲けさせてもらうからね。 イオニア:なあ。アイオリス、君はまだ詩を書いているの? アイオリス:え?ああ…詩ね。そんなの、とっくにやめちゃったよ。 アイオリス:…文字なんて帳簿と契約書を書ければ十分ってね! ドーリア:同感だね。 イオニア:そうか… 0:アイオリスは、白い石灰質に似た岩肌を撫でながら首をひねる アイオリス:おっかしーなー!? 0:アイオリスの声が洞窟に木霊する ドーリア:大声を出すなアイオリス。耳に響く イオニア:反響…事前調査をした時は、こんなに狭い洞窟じゃないと思っていたが… ドーリア:こんなもんだろ。いつだってロマンを砕くのが現実さ。 アイオリス:あれ?割れ目がある。活断層じゃないよね?ここ 0:ピッケルの腹で、割れ目を叩くアイオリス 0:コーン…コーン… イオニア:反響してるぞ…! ドーリア:ははあ。なるほどな アイオリス:〈キラキラ目〉割れ目の先に洞窟は続いている… ドーリア:そうと分かれば、よいしょっと。 0:三人は背嚢から取り出した爆薬の包装に雷管をねじ込み、ペンチで導火線を固定する アイオリス:2人とも準備はいい? イオニア:いいよ。 ドーリア:爆薬セット完了した。 アイオリス:OK!2人とも離れてね。 アイオリス:現実を打ち砕くのもまた アイオリス:ロマンッ!!〈カチッ〉 0:ちゅどおおおん!! ドーリア:これが文明の力。もはや恐れるものは何もないな。 0:ズゴゴゴ… イオニア:なんだ?この音は… 0:洞窟全体が揺れ始め、天井からパラパラと粉が降る ドーリア:まさか、落盤する…? アイオリス:うそだ!?生き埋めはイヤだ~ッ! 0:一方、地下のとある部屋ではロウソクの灯りを頼りに、ルビが写本作業をしていた。 ルビ:〈モノローグ〉気がつけば、ガチョウの羽をインクに浸したはずなのに ルビ:紙に墨がのらなくなってしまった。 ルビ:どれほどの時間が過ぎたのだろう。 ルビ:インク壺は渇いていた。 0:ちゅどおおおん!! ルビ:今のは、爆破音…? 0:薄手のカーディガンを羽織り、扉を開け表に出ると、すでに警報用の人工精霊が現場へと向かっていた ノヴァ:危険です!危険です!住民はその場で待機してください! ルビ:何があったの? ノヴァ:書架030A群が崩落しました!危険です!落盤の連鎖する恐れがあります! ルビ:030…百科事典の棚だわ…! ルビ:…!〈走り出す〉 ノヴァ:駄目ですルビ!危険ですよ!! ノヴァ:ああ、行っちゃった… ルビ:〈モノローグ〉もし、今までの書物が台無しになってしまったら? ルビ:一日に書ける文量には限度がある…他にも書き残すモノが残っているのに! 0:書架030A群にたどり着くと、木製の棚は石灰質の瓦礫に押しつぶされていた ルビ:ひどい…何があったの…? アイオリス:たす、けて… ルビ:っ!どなたですか…? アイオリス:ごめ、なさい…たすけて… ルビ:しっかりして下さい!今引っ張り出します! アイオリス:〈うめき声〉う、ああああ!! 0:ブチブチブチッ…!! ルビ:ごめんなさい…!あなたの脚が…!わたし、そんなつもりじゃ…! 0:挟まったアイオリスの左脚が引きちぎれ、瓦礫に置き去りにされる アイオリス:あ、ああ、あ…〈気絶〉 0:激しい痛みの中で、アイオリスはゆっくりと意識を失った 0: アイオリス:〈モノローグ〉気がつくと僕は、ベッドの上で横たわっていた。 アイオリス:左足は宙吊りにされて、ズキズキと痛む。 アイオリス:まって!?脚が、ある!!ああ、よかった… アイオリス:辺りを見渡すと、部屋全体が薄暗く、ロウソクの灯りで大小二つの影が揺れていた。 ノヴァ:まったくう!私が駆けつけなければ、どうやって助けたと言うんですかあ!! ルビ:ノヴァ。本当に助かったよ… ノヴァ:貴女はいつもそうです!生きるのが下手くそなのに!本のこととなると見境がないんだから! ルビ:うう…ご、ごめんね… ノヴァ:本当ですよ!とれた脚だって糊でくっつくワケじゃないんですからね! アイオリス:あ、あの… ルビ:あ、気がついたんですね、よかった。 ノヴァ:動いちゃダメですよ!単なる応急処置ですから! 0:起きかけたアイオリスは、再び枕に頭をつけた。 アイオリス:まずは助けてくれてありがとう…そして、ここはどこですか? ルビ:王国の地下書庫です。この部屋は私の仕事部屋です… アイオリス:まさか洞窟の奥に人がいたなんて… アイオリス:先ほど爆破したのは僕です ルビ:そう、でしたか… アイオリス:ごめんなさい!いってて… ノヴァ:動かないで下さいってば!ね、ルビ。ひとまず許してあげましょ。 ノヴァ:罰はこの通り受けてるわけですし… 0:アイオリスの傷は深く、薬が切れてしまえばまた激痛が彼を襲うだろう ルビ:罰とか、許すとか、そういう問題じゃないです… ノヴァ:ルビ… アイオリス:あの…政府に連絡できますか?この事を報告しないと。 ルビ:…政府、ですか? アイオリス:はい。…そうだ!2人!僕の他に、あと2人いませんでしたかっ? ルビ:いえ、瓦礫に挟まっていたのはあなただけでしたけど… ノヴァ:もしかしたら2人とも生き埋めになっているかもしれませんね。 アイオリス:そんな…ドーリア、イオニア… ルビ:っ…大丈夫ですよ…きっと、誰かが先に助け出したでしょう… アイオリス:は、そっか、よかった… ノヴァ:どうですかね。この地下書庫で人を助けようだなんてお人好しは ノヴァ:ルビ、貴女くらいのモノでしょう。 0:ゴゴゴゴゴ…!! アイオリス:〈N〉突然、部屋が大きく揺れ始めた ルビ:まって!燭台が!! アイオリス:〈N〉落下した衝撃で燭台は激しい音を鳴らし、ロウソクの火が消える アイオリス:〈N〉部屋が暗闇に包まれると、いつの間にか揺れは収まった アイオリス:〈N〉あとにはただ、煙の匂いが漂っている ルビ:また誰かが爆破したのかしら… ノヴァ:いいえ、この揺れは深層からです。いま仲間と交信します! アイオリス:〈N〉暗闇の中で、ノヴァの瞳がチカチカ光る アイオリス:〈モノローグ〉交信中?電話線も無しにどうやって… ルビ:んしょ、うんしょ… アイオリス:何をしてるの? ルビ:脱出、準備です…念のため。 アイオリス:脱出、て…? 0:ズゴゴゴゴ!! アイオリス:また地震!?どんどん大きくなってるぞ!! ノヴァ:暗号を受信!震源は”ワーム・スケルター”と断定。対象は地上に向かって上昇中… ノヴァ:座標を特定…まさか…! ノヴァ:この部屋の真下です!! アイオリス:ええっ!?この部屋て!! ノヴァ:動いてください!早く!! アイオリス:嘘!?いたたた! ノヴァ:脚に命は替えられませんよ!! ルビ:肩を貸します!掴まって、アイオリス…! アイオリス:…うん! ルビ:うひゃあ! 0:ルビに掴まって立ち上がろうとしたら、ルビの方が倒れてきた アイオリス:ええ!?ちょっと、体幹よわッ! ルビ:すみません…普段全く運動してないモノですから… ノヴァ:もう2人とも何してるんですか!!投げますよ! ルビ:きゃあ! 0:2人の体がひょいと宙に上がると、 ノヴァ:えーい!! 0:たちまちドアの外へと放り出された。 アイオリス:いてて… ルビ:っ!ノヴァ、早くこっちへ! ノヴァ:〈覚悟を決める〉 ノヴァ:…救難信号を発信しました。あとは”ほかの私”を頼って下さい。 ノヴァ:〈笑顔〉まったく、わたしが居なかったら死んでましたよ? ノヴァ:あなた達は。 ルビ:ノヴァ!! アイオリス:〈モノローグ〉次の瞬間、巨大な虫の腹が、部屋の床下から天井へと突き抜ける。 アイオリス:虫の掘り進むスピードはすさまじく、長い長い胴が過ぎ去るまで、絶えず強風が吹き荒れた。 アイオリス:ルビの部屋はドアだけを残して、もぬけの殻となった。 アイオリス:今の僕は、何を見ている? アイオリス:状況が現実のものとして、全く飲み込めない… ルビ:そんな…ノヴァ… アイオリス:ルビ… 0:呆然としながら、空っぽの部屋を見つめるルビ ルビ:いつからでしょうか…私の部屋も安全じゃないって…分かっていたはずなのに… ルビ:怖い…この世界が怖いです… アイオリス:〈モノローグ〉かける言葉が見つからない。 アイオリス:これは僕のせいなのか…? アイオリス:イオニアやドーリアは無事なのか。 ルビ:なんで…どうしてこんな目に… アイオリス:っ!ごめんルビ…ごめんね… 0:ノヴァを失った小さな二人は 0:冷たい書庫の廊下に投げ出され、そのままひしと抱き合って泣いた。 0: 0:ー続くー