台本概要

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タイトル 瑠璃と玻璃
作者名 ままま  (@marika_writing)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(不問2) ※兼役あり
時間 10 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 個人利用商用利用連絡不要です。

ただ、音声データや配信のURLをいただけたら嬉しいし私も宣伝できますし嬉しいです!

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
硝太 不問 23 しょうた。半分ガラスで出来ている。肌色素薄め。受け。
瑠璃 不問 19 るり。人間。地主の甥。松◯桃◯イメージ。攻め。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
 硝太:一、浴衣の裾涼しげに  硝太:蝉の声は風情などと言う口当たりの良い言葉とは程遠く、耳にべったり張り付いては頭痛を起こさせる。  硝太:僕がここへ嫁いだのは十八の頃。親の言いつけで何もわからぬまま、地主の家へ身一つでやってきた。  硝太:それから三年、また夏が来た。  草一郎:「硝太、おいで」  硝太:地主である夫の草一郎はもうすぐ四十で、僕とはかなり歳が離れている。三年前母はそれを懸念し縁談を断ったが、子を儲ければのちのち草一郎の土地のいくらかはお前らのものになると言われ、弟たちの飯のために、長男を売った。  硝太:「だんなさま、お暑うございますから」  硝太:僕は氷を持ってこようと振り返るが、強く手を引かれ夫の胸に背中で飛び込んだ。  草一郎:「いいからおいで。会わせたい人がいる」  硝太:太い腕が僕の体をつつむ。低い体温が、彼と触れているところだけ温度を上げる。  硝太:離れは静かだ。蝉の声も遠く、鹿おどしの水の音がかすかに聞こえる。四畳半のそこに座っていたのは、齢二十歳の男だった。  草一郎:「こいつは瑠璃。私の弟の息子だ」  硝太:つまり僕らの甥にあたる男。  瑠璃:「瑠璃と申します、奥方様」  硝太:仏頂面のまま軽く頭を下げ、瑠璃さんは夫と僕を交互に見上げる。  草一郎:「では瑠璃、頼んだぞ」  瑠璃:「はっ」  硝太:すると夫は僕の頭をぽんとなで、そのままピシャリと障子を閉じ去っていく。途端に部屋は薄暗くなった。    瑠璃:奥方様はしばらく、ぼうっと草一郎様がいた場所を見つめ、カコンと水の落ちる音を聞いていたように思う。  硝太:「え、るり……さん。これはどういうことでしょうか」  瑠璃:「奥方様、何も伺っていないのですか?」  瑠璃:彼がぽかんとしたまま首を横に振ると、わたしは困ったように頬をかくしかなかった。奥にはひと組の布団。彼にこれが見えているだろうか。  瑠璃:三年間、夫婦は子に恵まれなかった。おそらく年齢のせいもあるとは思うが、皆、公(おおやけ)に口に出すのははばかられた。  瑠璃:小さく息を吐き、奥方様に真っ直ぐ瞳を向ける。彼ははっとしたように唇を噛み締め、目を逸らした。  瑠璃:「……奥方様は、おつらいでしょうが、あなたさまは子をなさなければなりません。村の地主の沽券(こけん)を守るため、内密に、身籠る必要があります」  瑠璃:こちらへ、と手を差し出す。彼はじっと畳を見つめたまま動かない。見ておられずに肩を抱き、一歩進む。  硝太:「あっ、あのっ! 僕は……何もわからなくて……」  瑠璃:「存じております。旦那様はあなたが怖がって触れられないと……。ですからわたしが、奥方様が気を楽にして臨めるよう、呼ばれたのです」  瑠璃:奥方様を布団にそっと座らせる。綿を打ち直した、ふかふかで真っ白なそれを、これから汚そうと言うのだ。混乱した彼は手をバタバタさせながらうろたえる。  硝太:「ああああなた様は奥様はいらっしゃらないのですか! こんな、ふらち……! 神社に契りも交わさずにそんな……!」  瑠璃:「……奥方は農家の出だと伺っておりましたが、義理堅いお方なのですね。ですが、あまり興奮してはお体に障ります」  瑠璃:膝立ちになり、奥方様の両肩を抱いて迫る。彼が後ろ手を伸ばした先の蕎麦殻の枕が、じゃりりとあられもない音を上げ、そのままふたりで崩れ落ちた。    硝太:瑠璃さんの肌は、薄暗い部屋の中でも透き通るように白かった。瞳の色が色濃く浮かび、油断すると本当に吸い込まれそうだ。  瑠璃:「わたしの目は、青いのです。珍しいでしょう。どうかそらさないで。まっすぐ見ていてください」  硝太:緊張と恐怖で呼吸は早まる。涙目になりながら声の方へ視線をやると、瑠璃さんの瞳が濡羽色に光り、落ち着いたその中に星が瞬くようだ。  瑠璃:「奥方様、お名前でお呼びしても、よろしいですか?」  硝太:僕の短い髪をそっとなで、指先がかすかに触れるくらいの繊細さで、彼が耳のふちをなでた。  硝太:「ひゃ、う……」  硝太:即座に身をよじり、逃げたいと感じた。しかしさっと腕が伸び、僕の背をぎゅっと抱き寄せてきた。  瑠璃:「大丈夫です。大丈夫。奥方様は美しいお方だから、きっと良くなりますよ」  硝太:瑠璃さんの心臓の音。あらわになった腕が僕を包んで、旦那様と同じ、自分より高い温度を持つ彼に、くらくらとめまいがした。  瑠璃:「わたしのことは瑠璃と呼んでください。硝太様」  硝太:振り返り瑠璃さんの顔を見上げると、きめの細やかな頬で擦り寄ってくる。ほのかな暖かさが自分とは違って、つい、暖かさが心地よい。  瑠璃:「硝太様は細身ですね。指先もこんなに細い……」  硝太:左手を取り、瑠璃さんは自身の頬にその手のひらをあてがう。冷たくて心地がいいと笑うと、瑠璃そんは僕の手のひらの真ん中に、チクッと音を立てて口付けをした。  瑠璃:「ひゃあっ! えっ、な、なんですか!」  瑠璃:「申し訳ございません。つい、可愛らしかったもので……」  硝太:しかしその手を振り解くことは出来ず、瑠璃さんは口付けを続ける。親指の付け根の膨らみを喰み、人差し指の先をくわえられた。  硝太:「やっ……! だ、だんなさまだってこんな事なさらないのに……っうう」  硝太:彼の行動ひとつひとつに大きく反応してしまう。  瑠璃:「硝太様、怖いですか?」  硝太:僕の体は半分ガラスで出来ている。大きな衝撃を与えたり体温が上がると、割れたり溶けたりしてしまう。これは生まれた頃からの異性質で、赤ん坊の頃は夏になるといつも溶けた。  硝太:「こわ……い、言えません」  瑠璃:「大丈夫です、硝太様のことは旦那様から伺って存じております。絶対に怖いことはいたしませんので、どうか安心して、預けていただきたいのです」  硝太:瑠璃さんは僕のひたいから前髪をかきあげ、眉尻からまぶたに向かって唇を沿わせていく。反対の手は浴衣の裾をまくりあげてきて、脚がこわばる。  瑠璃:「すごく綺麗です。硝太様……」  硝太:瑠璃さんから目が離せなくて、自分の太ももを撫でている熱い手を、心地よく感じてしまう。耳たぶに吐息がかかる。喉が詰まるような感覚が苦しくてつい、彼の浴衣にしがみつく。  瑠璃:「硝太様……暑いですか?」  硝太:瑠璃さんが僕の浴衣の襟を開け、冷たい鎖骨を熱い指でなぞる。  硝太:「ゃ……」  瑠璃:「まるで……雪のようですね。暑いのなら、溶けてしまう前に冷やさなくては……」  硝太:彼は帯を手際よくほどくと、一瞬動きが止まってからごくりとつばを飲み込んだ。  瑠璃:「……こんなに美しい方に触れられるなんて、私は幸せです」  硝太:彼はぐっと近寄ると、僕の腰を大きく跨ぐようにして膝で立ち上がり、続けた。  瑠璃:「わたしの熱でとろとろに溶かしてしまいたいです」

 硝太:一、浴衣の裾涼しげに  硝太:蝉の声は風情などと言う口当たりの良い言葉とは程遠く、耳にべったり張り付いては頭痛を起こさせる。  硝太:僕がここへ嫁いだのは十八の頃。親の言いつけで何もわからぬまま、地主の家へ身一つでやってきた。  硝太:それから三年、また夏が来た。  草一郎:「硝太、おいで」  硝太:地主である夫の草一郎はもうすぐ四十で、僕とはかなり歳が離れている。三年前母はそれを懸念し縁談を断ったが、子を儲ければのちのち草一郎の土地のいくらかはお前らのものになると言われ、弟たちの飯のために、長男を売った。  硝太:「だんなさま、お暑うございますから」  硝太:僕は氷を持ってこようと振り返るが、強く手を引かれ夫の胸に背中で飛び込んだ。  草一郎:「いいからおいで。会わせたい人がいる」  硝太:太い腕が僕の体をつつむ。低い体温が、彼と触れているところだけ温度を上げる。  硝太:離れは静かだ。蝉の声も遠く、鹿おどしの水の音がかすかに聞こえる。四畳半のそこに座っていたのは、齢二十歳の男だった。  草一郎:「こいつは瑠璃。私の弟の息子だ」  硝太:つまり僕らの甥にあたる男。  瑠璃:「瑠璃と申します、奥方様」  硝太:仏頂面のまま軽く頭を下げ、瑠璃さんは夫と僕を交互に見上げる。  草一郎:「では瑠璃、頼んだぞ」  瑠璃:「はっ」  硝太:すると夫は僕の頭をぽんとなで、そのままピシャリと障子を閉じ去っていく。途端に部屋は薄暗くなった。    瑠璃:奥方様はしばらく、ぼうっと草一郎様がいた場所を見つめ、カコンと水の落ちる音を聞いていたように思う。  硝太:「え、るり……さん。これはどういうことでしょうか」  瑠璃:「奥方様、何も伺っていないのですか?」  瑠璃:彼がぽかんとしたまま首を横に振ると、わたしは困ったように頬をかくしかなかった。奥にはひと組の布団。彼にこれが見えているだろうか。  瑠璃:三年間、夫婦は子に恵まれなかった。おそらく年齢のせいもあるとは思うが、皆、公(おおやけ)に口に出すのははばかられた。  瑠璃:小さく息を吐き、奥方様に真っ直ぐ瞳を向ける。彼ははっとしたように唇を噛み締め、目を逸らした。  瑠璃:「……奥方様は、おつらいでしょうが、あなたさまは子をなさなければなりません。村の地主の沽券(こけん)を守るため、内密に、身籠る必要があります」  瑠璃:こちらへ、と手を差し出す。彼はじっと畳を見つめたまま動かない。見ておられずに肩を抱き、一歩進む。  硝太:「あっ、あのっ! 僕は……何もわからなくて……」  瑠璃:「存じております。旦那様はあなたが怖がって触れられないと……。ですからわたしが、奥方様が気を楽にして臨めるよう、呼ばれたのです」  瑠璃:奥方様を布団にそっと座らせる。綿を打ち直した、ふかふかで真っ白なそれを、これから汚そうと言うのだ。混乱した彼は手をバタバタさせながらうろたえる。  硝太:「ああああなた様は奥様はいらっしゃらないのですか! こんな、ふらち……! 神社に契りも交わさずにそんな……!」  瑠璃:「……奥方は農家の出だと伺っておりましたが、義理堅いお方なのですね。ですが、あまり興奮してはお体に障ります」  瑠璃:膝立ちになり、奥方様の両肩を抱いて迫る。彼が後ろ手を伸ばした先の蕎麦殻の枕が、じゃりりとあられもない音を上げ、そのままふたりで崩れ落ちた。    硝太:瑠璃さんの肌は、薄暗い部屋の中でも透き通るように白かった。瞳の色が色濃く浮かび、油断すると本当に吸い込まれそうだ。  瑠璃:「わたしの目は、青いのです。珍しいでしょう。どうかそらさないで。まっすぐ見ていてください」  硝太:緊張と恐怖で呼吸は早まる。涙目になりながら声の方へ視線をやると、瑠璃さんの瞳が濡羽色に光り、落ち着いたその中に星が瞬くようだ。  瑠璃:「奥方様、お名前でお呼びしても、よろしいですか?」  硝太:僕の短い髪をそっとなで、指先がかすかに触れるくらいの繊細さで、彼が耳のふちをなでた。  硝太:「ひゃ、う……」  硝太:即座に身をよじり、逃げたいと感じた。しかしさっと腕が伸び、僕の背をぎゅっと抱き寄せてきた。  瑠璃:「大丈夫です。大丈夫。奥方様は美しいお方だから、きっと良くなりますよ」  硝太:瑠璃さんの心臓の音。あらわになった腕が僕を包んで、旦那様と同じ、自分より高い温度を持つ彼に、くらくらとめまいがした。  瑠璃:「わたしのことは瑠璃と呼んでください。硝太様」  硝太:振り返り瑠璃さんの顔を見上げると、きめの細やかな頬で擦り寄ってくる。ほのかな暖かさが自分とは違って、つい、暖かさが心地よい。  瑠璃:「硝太様は細身ですね。指先もこんなに細い……」  硝太:左手を取り、瑠璃さんは自身の頬にその手のひらをあてがう。冷たくて心地がいいと笑うと、瑠璃そんは僕の手のひらの真ん中に、チクッと音を立てて口付けをした。  瑠璃:「ひゃあっ! えっ、な、なんですか!」  瑠璃:「申し訳ございません。つい、可愛らしかったもので……」  硝太:しかしその手を振り解くことは出来ず、瑠璃さんは口付けを続ける。親指の付け根の膨らみを喰み、人差し指の先をくわえられた。  硝太:「やっ……! だ、だんなさまだってこんな事なさらないのに……っうう」  硝太:彼の行動ひとつひとつに大きく反応してしまう。  瑠璃:「硝太様、怖いですか?」  硝太:僕の体は半分ガラスで出来ている。大きな衝撃を与えたり体温が上がると、割れたり溶けたりしてしまう。これは生まれた頃からの異性質で、赤ん坊の頃は夏になるといつも溶けた。  硝太:「こわ……い、言えません」  瑠璃:「大丈夫です、硝太様のことは旦那様から伺って存じております。絶対に怖いことはいたしませんので、どうか安心して、預けていただきたいのです」  硝太:瑠璃さんは僕のひたいから前髪をかきあげ、眉尻からまぶたに向かって唇を沿わせていく。反対の手は浴衣の裾をまくりあげてきて、脚がこわばる。  瑠璃:「すごく綺麗です。硝太様……」  硝太:瑠璃さんから目が離せなくて、自分の太ももを撫でている熱い手を、心地よく感じてしまう。耳たぶに吐息がかかる。喉が詰まるような感覚が苦しくてつい、彼の浴衣にしがみつく。  瑠璃:「硝太様……暑いですか?」  硝太:瑠璃さんが僕の浴衣の襟を開け、冷たい鎖骨を熱い指でなぞる。  硝太:「ゃ……」  瑠璃:「まるで……雪のようですね。暑いのなら、溶けてしまう前に冷やさなくては……」  硝太:彼は帯を手際よくほどくと、一瞬動きが止まってからごくりとつばを飲み込んだ。  瑠璃:「……こんなに美しい方に触れられるなんて、私は幸せです」  硝太:彼はぐっと近寄ると、僕の腰を大きく跨ぐようにして膝で立ち上がり、続けた。  瑠璃:「わたしの熱でとろとろに溶かしてしまいたいです」