台本概要
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タイトル | 【仲間と絆】Like a jewel |
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作者名 | ゆる男 (@yuruyurumanno11) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 8人用台本(男2、女4、不問2) |
時間 | 90 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
o,+:。☆.*・+。o,+:。☆.*・+。o,+:。☆.*・+。o,+:。☆.*・+。 むかしむかし、あるところに、キラキラした宝石をまとった一人の少女がいました 彼女の姿は美しく、輝かしい姿で、誰もが羨んでいました。 その身体を見た者は……この女を国に売れば、金になると企み、彼女を襲います そして最後に、こう呟くのです 「やっと見つけたよ…Like a jewel」 o,+:。☆.*・+。o,+:。☆.*・+。o,+:。☆.*・+。o,+:。☆.*・+。 8人用台本になります! 90分もあるので長いですがよろしくお願いします! キャラの性別を変えなければ異性のキャラを演じても大丈夫です! 過度なアドリブなどは控えてくださいませ! 野良劇や約束劇で使用する時に X(ツイッター)で呟いて頂けると今後のモチベーションに繋がります!! 1024 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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ノア | 女 | 211 | 8人が住む村を作り、みんなの幸せを願う優しい人。 誰にでも優しいのが特徴的 20歳くらい |
ハイド | 男 | 156 | 生まれ持った能力、テンプルを持つ青年。呪いを解く力を持っている 20歳くらい |
ラナ | 女 | 148 | 少し気が強いけど大人な雰囲気がある。 お人好しな一面もある 22歳くらい |
マリル | 女 | 85 | ちょっと生意気なところもあるが案外素直なところもある 寂しがり屋の女の子 12歳くらい |
ライチ | 不問 | 70 | ヨイチの兄、まだ幼いけど口は多少悪い 嘘はつけないタイプ 15歳くらい |
ヨイチ | 不問 | 70 | ライチの弟、ライチの口調を真似したりする 嘘はつけないタイプ 14歳くらい |
ニコル | 女 | 100 | 賑やかな村人をなだめるように見守るが、気が弱い 色んなことを知ってしまうのは彼女のせいではない。 18歳くらい |
レイヤ | 男 | 110 | 頭が良くて本を沢山読んでいる その知識は何のためなのかはわからない 19歳くらい |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
ノア:むかしむかし、あるところに、キラキラした宝石をまとった一人の少女が居ました
ハイド:耳にはダイヤのピアス。指にはルビー、オパールの指輪。首にはエメラルドが飾られている不思議な少女でした
ラナ:彼女の姿は美しく、輝かしい姿で、誰もが羨んでいました。しかし、彼女の友人である一人の人物はある時、気付いたのです
マリル:この子が付けている宝石は飾りなんかじゃない。この子自身が宝石なんだと
ライチ:よく見てみると、ピアスではなく。耳たぶにダイヤモンドが一つ、二つ、三つ。埋め込まれているのに気付いたのです
ヨイチ:その女の子は、身体中に宝石が埋め込まれる呪いに掛けられていたのでした。
ニコル:その身体を見た友人は……この女を国に売れば、金になると企み、彼女を襲います。
レイヤ:彼女と親密になり、彼女との信頼関係を築き上げ、彼女に抱きつき…背後から…ナイフを突き刺します。
ハイド:そして、友人は彼女に向かってこう呟くのです
ノア:やっと見つけたよ。Like a jewel(ライカ ジュエル)
0:【間】
ノア:どこに行っても誰と居ても、優しい世界は優しいあなたに包まれてる
ハイド:……何言ってんだよ
ノア:私のお母さんが最後に言ってた言葉だよ
ハイド:それがどうしたっていうんだ?
ノア:ううん。私も、そんなお母さんのような生き方をしてみたいと思って
ハイド:……なればいいさ。なれるものならな
ノア:うん
ハイド:……もう少しフードを深く被ったらどうだ?
ノア:ああ、ごめん
ハイド:………
マリル:あれれ??また二人で村のハズレに居るの?また!また!二人で!
ハイド:茶化すなマリル。何の意味もない。ただ話していただけだ
ノア:そうだよ。もうそろそろお昼だしライチとヨイチが戻ってくる頃だと思って
マリル:えー!せーっかくウチが二人のラブラブタイムを邪魔してあげようと思ったのに。あの二人うるさいから嫌いなのよね
ノア:そう言わないであげてよ。賑やかでいいじゃん
ライチ:おぉーーい!!食料持ってきたぞー!
ヨイチ:おぉーーい!!水も持ってきたぞー!
マリル:出たわね、やかましい兄弟
ライチ:おー!マリルじゃねーか!相変わらずチビだなー!
マリル:ウチの頭を触るんじゃないよ!
ヨイチ:なんでだよー!ライチ、こいつ丸めてドッヂボールでもしねーか?
ライチ:さんせー!やるぞやるぞー!
ラナ:やめなさい!あんた達!
ライチ:いで!(同時に)
ヨイチ:いだっ!(同時に)
0:ラナはライチとヨイチにゲンコツをする
ラナ:女の子いじめるなんてありえないんだけど?次やったらぶっ殺すわよ?
ライチ:こ、殺すだってよ…村で反乱が起こるってことか?
ヨイチ:望むところだ!えぇーい!覚悟!
ラナ:ふん!!
0:ライチ、ヨイチ同時に
ライチ:ボギャアアアア!!
ヨイチ:ボギャアアアア!!
マリル:すっごーい!二人がかりでもラナが勝つんだね!ゴリラ女だー!
ラナ:仕舞いにはあんたも殴るわよ?
マリル:あれ?
ノア:…あはっ。ラナは優しいね
ラナ:はあ?ノアほどじゃないっての
ノア:あははっ
ハイド:……
レイヤ:よし、ニコル、ここに線を引いてくれ
ニコル:はい
レイヤ:これで、持ち上げてっと!
ニコル:完成、ですね?
レイヤ:ああ。ありがとう
ライチ:お?何作ってんだ?
ヨイチ:なんか変な匂いするな
レイヤ:ああ、これはアンデリールって言われる魔よけの道具さ
ラナ:なんで魔よけなんか?
レイヤ:深い意味は無いさ。この村は僕ら合わせて8人。みんなで健康で、平和に過ごせることが大事だと思ってね
ハイド:……魔よけなんかしなくても平和に過ごせるだろ
レイヤ:……じゃあ君は何があっても僕に頼らないで欲しいな
ハイド:……お前の呪いを解いたのは俺だろ。こっちのセリフだ
ニコル:ふ、二人とも!もうそろそろご飯だからみんなで作りますよ?ね?
レイヤ:………
ハイド:………
マリル:ニコルも魔よけなんて信じてるのー?
ニコル:い、いや?そういう訳じゃないですけど、なんか効果があれば嬉しいなーっと
ラナ:逆に物騒じゃない?まるで…魔物か何かが来るって言ってるようなもんじゃない?
レイヤ:誰もそんなこと言ってないだろ!
ノア:いいよ。置いといても。レイヤが良心でやってくれたんだから皆でお祈りしようよ。それに…あんなことがあった後だしね……
ライチ:よーし!魔よけに聞く言葉ー!あーーめん!!
ヨイチ:そーーめん!!
ラナ:縁起悪いことすな!
マリル:やーい!バカコンビー!怒られてやんのー!
ライチ:なんだとー!おい!ヨイチ!こいつを平たく伸ばして天日干ししようぜ!
ヨイチ:ああそうだな!干物にしてやろうぜ!
マリル:ぎゃあああ!離して!ツインバカ!
ラナ:はあ。あの三人は相変わらずね
ニコル:そろそろご飯作りますね。今日はレイヤの好きな物入れますから
レイヤ:別に気を使わなくてもいい
ノア:あ、レイヤ、どこ行くの?
レイヤ:ちょっと散歩
ノア:そう?ご飯も近いしすぐ戻るんだよ?
レイヤ:わかってる
0:レイヤは村を出る
レイヤ:…………はあ。
レイヤ:(M)僕は…ずっと…ずっとノアを見ていた
レイヤ:………この村は…僕にとっては寒すぎる
0:村では
ハイド:………
ノア:どうしたの?ハイド
ハイド:いや、なんでもない
ノア:レイヤのことで何か悩んでる?
ハイド:………まあ、あいつは俺にはよくわからん
ノア:大丈夫だよ。あの魔よけも特に意味は無いだろうし
ハイド:……お前の…その体のことかも知れないだろ?
ノア:……どうして?それなら魔よけの効果で平和になれるんじゃない
ハイド:あんなもので平和になれたら…誰も苦労はしないだろ
ノア:……祈るだけでも、損はしないよ
ハイド:…………
0:レイヤも戻り、8人は食事をする
マリル:ねえー。ラナー。今日はラナの家で寝てもいいー?
ラナ:あんたまだ他の人の家で寝てるの?いい加減一人で寝れるようになりなさい
マリル:いいじゃーん!ケチ!ブス!
ラナ:誰がブスだー!こんのぉ〜!
マリル:うわぁー!やめてー!ブスが移るー!
レイヤ:騒がしいぞ。食事中くらい静かにしろ。行儀が悪い
ラナ:あ、うん。ごめん
マリル:相変わらずつまらない男だね〜レイヤは。今日はレイヤの家で寝ようかな
ライチ:え!レイヤの家!?俺も行きたいぞ!
ヨイチ:えー!じゃあ俺もー!
レイヤ:僕の家に来たって何も無いぞ?
マリル:寝るだけだよぉー!
レイヤ:……まあ別にいいけど
ライチ:いえーい!
ヨイチ:レイヤの家だー!
マリル:あんたらは来なくていいよ!ばっちぃ!
ノア:あはは。みんな仲良しで安心するね
ラナ:ほんとにこんなんでいいのかしら?
ノア:うん。みんなが優しい世界に包まれるように、私は見守ってるからね
ラナ:何よそれ
0:食事が終わる
マリル:よーし!レイヤの家に集合ねー!
ライチ:おーう!
ヨイチ:やったぜー!
レイヤ:ごちそうさま、ニコル
ニコル:はい。お皿は置いといてください
レイヤ:ありがとう。じゃあ、僕は家に戻るから…
ラナ:んもう。相変わらずあの3人は子供ね
ノア:でも、レイヤが誰かを家にあげるなんて珍しいね。きっと初めてじゃない?
ラナ:確かにそうね。人を受け入れる姿勢はあるみたいで安心したわ
ニコル:………
ラナ:まあ何はともあれ、この村に来てから6ヶ月は経ってるし、何事も無くここまでやってこれたのもノアのおかげよね。ありがとう
ノア:わ、私は何もしてないよ?
ラナ:何言ってんの。この村を買い取ってくれたのはノアでしょ?
ノア:そうだけど、みんなが色々手伝ってくれるからこの村も平和なんだよ
ラナ:ま、そういうことにしといてあげる。はあ。夜風が気持ちいいわ。少し散歩でもしない?ノア
ノア:うん!いいよ
ラナ:じゃあね、ハイド、ニコル
ニコル:い、いってらっしゃい……
0:ノアとラナは外に出る
ニコル:……行っちゃいましたね。二人とも
ハイド:ああ。そうだな
ニコル:夜は寒いですね
ハイド:そうか?
ニコル:そう思わないですか?
ハイド:俺は何ともない。…ニコルがさっきから震えてるのは寒さのせいか?
ニコル:……あ、はい。そうかも
ハイド:ならもう家に戻れ。風邪引くぞ
ニコル:ありがとうございます。でも大丈夫ですよ
ハイド:ああ、ならいいけど
ニコル:この村での生活もまだ慣れないですね
ハイド:そうだな。俺もレイヤとあまり交流は出来てないし、上手くいかないことばかりだ
ニコル:ハイドはレイヤのこと苦手だったりしますか?
ハイド:そんなことはない。……でも、なんだろうな。俺はあいつとはどこか合わない気がするんだ
ニコル:……どうして?
ハイド:……わからない。…でもこれだけは言える。俺はそれでもレイヤを仲間だと思っている
ニコル:………そうですか。よかったです
ハイド:んじゃあ。俺は家に戻るから
ニコル:はい。おやすみなさい
0:ハイドは自分の家に戻る
ニコル:……私は一体…何をしてるんだろ?
ニコル:ハイドはきっといい人でみんなもきっといい人で、ずっと一緒に居られる大切な存在なのに……
ニコル:きっと……みんなはいい人のはずなのに……
ニコル:私の震えは…止まらない
0:【間】
0:レイヤの家では……
マリル:うわー!紙の匂いくさっ!!本がいっぱいで頭痛くなっちゃうよ
ライチ:ここもあそこも全部本だ!どんだけあんだよー!
ヨイチ:気味が悪いぞ!レイヤ!
レイヤ:だから僕の家には何も無いって言っただろ?
ライチ:何かもっと面白いの無いのかよー!
レイヤ:面白いのなんてあるわけないだろ。僕はいつも勉強で忙しいんだ
ヨイチ:勉強ばっかなんだなー
マリル:死んだお父さんが言ってたよー?勉強はバカがやることだぁー!って
レイヤ:だとしたらマリルのお父さんが間違っている
マリル:なんだってー!?お父さんをバカにしないでよ!
レイヤ:そんなつもりは無いさ。でも、勉強は必要だよ、マリル
マリル:えー?そうなの?
レイヤ:何か一つの答えを求める事に執着をすること。これが勉強をしてわかった事だ
ライチ:意味がわかんねーよ
ヨイチ:そうだそうだ!わかんねーよ!
レイヤ:じゃあ、君たちに面白い話をしてあげよう
マリル:やったー!さっきからつまんないと思ってたから面白い話してよー!
レイヤ:この本を知ってるかい?
ライチ:きったねぇ本だなー!
ヨイチ:違うだろ!腐った本だろ!
レイヤ:はあ。知らないなら教えてあげるよ。この本のタイトルは……
レイヤ:Like a jewel(ライカ ジュエル)
ライチ:らいか?
ヨイチ:じゅえる??
マリル:じゅえるってなにー?
レイヤ:ジュエルとは宝石のことだ。ルビー。オパール。サファイア。ダイヤモンド。これくらいは聞いたことあるだろ?
ライチ:ほえー。なんか高い金になるやつだろー?
レイヤ:その通りさ。この本はまさに宝石が舞台となっている。
ヨイチ:どんな話なんだー?
レイヤ:この話は……まるで宝石のような話だ
0:【間】
0:ノアとラナは夜道を散歩していた
ノア:外は涼しいね
ラナ:ほんとね。寒くはないかしら?
ノア:大丈夫だよ。ありがと
ラナ:この場所、覚えてる?村から少し離れた水面が綺麗な湖だよ
ノア:もちろんだよ。ラナと初めて出会った場所でしょ?
ラナ:そう。この村から遠く離れた国で、私は母と弟を亡くした。もちろん、一人で生きていけるくらいには私もしっかり出来るようになったけどね
ラナ:ノアに出会ってなかったらこんなに自由にはなれなかった。この涼しくて気持ちいい空気を感じられるのもノアのおかげよ
ノア:そんなこと____
ラナ:そんな事ないってもう言わないで。いい加減怒るわよ?
ノア:……うふっ。じゃあ、ありがと。嬉しいよ
ラナ:ノア
ノア:なに?
ラナ:抱きしめていいかしら?
ノア:うん。いいよ
0:ラナはノアを抱きしめる
ラナ:暖かいわ。
ノア:うん。あったかいね。
ラナ:ノアに出会えて、本当によかった
ノア:私も、ラナとみんなに会えてよかったよ
ラナ:…………ええ、そうね
0:【間】
0:レイヤの家では
マリル:あ、あわわわ!そ、それで!?
レイヤ:その女の子は、身体中に宝石が埋め込まれる呪いに掛けられたんだ
ライチ:ぎょえーー!!怖いわ!
ヨイチ:一周まわってエロいわ!
レイヤ:その身体を見た友人は……この女を国に売れば、金になると企み、彼女を襲うんだ。彼女と仲良くなり、彼女との信頼関係を築き上げて、彼女に抱きつき…背後から…ナイフを突き刺す
マリル:うわああー!ストーップ!寝れなくなっちゃうよ!バカ!謝りなさい!
レイヤ:君たちにはこの話は早すぎたかな?
ライチ:こえーんだよ!なんて話なんだ!
ヨイチ:そうだそうだ!こんな話嘘に決まってる!
レイヤ:嘘ではないさ。この話と、この呪いは実際に存在する。……そして、彼女の身体を売ろうとするものは必ず現れるということだ
0:場面転換。ノアとラナは……
ラナ:………ノア
ノア:ん?
ラナ:このままずっと抱きしめててもいい?
ノア:……うん。いいよ。でもさ……よっ!
ラナ:………うわっ!
0:ノアはラナを押し倒す
ラナ:な、なに?
ノア:あははっ。見える?この景色
ラナ:………
ノア:星が綺麗でしょ
ラナ:………ほんとだ
ノア:目の前にある景色がこんなにも輝いてる。まるで宝石みたいだよね
ラナ:……そうだね!
ノア:ラナとこの景色を見られたことは私の人生の最高の思い出だよ。だから、ここに連れてってくれてありがとう。
ラナ:…………
ノア:ラナ?どうしたの?
ラナ:い、いや!何でもないよ。そろそろ村に戻ろっか
ノア:うん。そうだね
0:ノアとラナは村に戻る
ノア:じゃあ、おやすみ。ラナ
ラナ:うん、おやすみ……
ノア:……ラナ?
ラナ:ん?
ノア:……何でもない。おやすみ
ラナ:うん……おやすみ
0:そしてある日のこと
マリル:あんただぁー!カチコチの宝石ー!
ライチ:いでー!いでーよ!俺の鼻だ!
ヨイチ:おいチビ!ライチの鼻をもぎ取るな!
マリル:この鼻をもぎ取って売りつけるんだー!
ハイド:何してんだ?お前ら
マリル:あー!出たわねハイド。あんたの鼻も頂くわよ!えい!
ハイド:んっ。なんだよ急に
ライチ:こいつ、本を読んで影響されたかわかんねーけど、人の事を売ろうとしてるんだよ
ハイド:……なんだと?そんなこと誰から教わったんだ
ヨイチ:レイヤから
ハイド:………あいつが?なんかの冗談だろ?
マリル:冗談っていうよりは本の話を聞いただけだからね。人を売りつけて金儲けをする話
ハイド:……マリル。人を売りつけるなんて言葉を使うのはやめろ。
マリル:なんでー?お金があれば世界が広がるんだってレイヤが言ってたよ?
ハイド:だからと言って、人を売りつけて金儲けする考えは間違ってる
マリル:えー!なんでよー!知らないよそんなの!
ハイド:お前の父親が、人に売られて死んでいった。なんて言ったらお前はどう思うんだ?
マリル:………え?
ライチ:お、おい!ハイド!そんな言い方するなよ!
ヨイチ:そーだそーだ!大人気ないぞ!
ハイド:例え話だ。お前らも気を付けろ。むやみやたらに物騒な事を言うな。村じゃなきゃどうなるかわからないぞ
ヨイチ:む、村以外じゃ言わねーよ!
ハイド:村でも言うな。誰もよく思わないだろ
マリル:ねえ。お父さんは……売られたの?
ハイド:そうは言ってない。逆の立場になって考えてみろと言ってるんだ。売られた人の家族はどう思う?大切に思っていた人が金に変えられて……喜べるか?
マリル:喜べるわけないでしょ〜!
ハイド:なら人を売りつけて金儲けなんて言うのはやめろ
マリル:むぅ〜。ごめんなさいでした〜
ハイド:……まあ。俺も悪かった
0:場面転換、調理場にて
ニコル:ねえ、ノア
ノア:ん?どうしたの?
ニコル:今日の晩御飯は何にしようかなって思ってるんですけど、何か食べたいものはありますか?
ノア:えぇ!私の好きな食べ物でいいの?
ニコル:はい。何がいいですか?
ノア:じゃあ……
ラナ:あら、今日は調理場に居たのね
ノア:あ、ラナ
ラナ:今日は何を作るのかしら?ニコル
ニコル:あ、はい。ノアの好きな物にしようかなーと
ラナ:あら、それなら私も手伝ってもいいかしら?
ニコル:あ、ああ。ありがとうございます
ノア:じゃあ私は食堂に行ってるね
ニコル:はい。じゃあまた後で
ラナ:じゃあ作っちゃいましょう
ニコル:はい
ラナ:ノアの好きな物は何なの?
ニコル:確かチーズが沢山乗ったドリアが好きだったはずです
ラナ:いいわね。なら早速作りましょ?
ニコル:はい……
ラナ:ニコルの料理は私も好きよ
ニコル:ほんとですか?ありがとうございます
ラナ:私たちはさ、元々親や兄弟が居て、大切な人達に囲まれていたはず
ニコル:はい。そうですね
ラナ:ニコルは、どうしてこの村に……ノアに出会ったの?
ニコル:……そうですね、私は……私は…
ラナ:ん?
ニコル:いえ、なんでもないです。ノアに出会ったのはノアがこの村を買う少し前ですよ。1番最後にノアに出会いました
ラナ:そうなんだ。どこで出会ったか聞いてもいい?
ニコル:……水面が綺麗な…湖で
ラナ:え、私と同じじゃん。偶然?
ニコル:そ、そうかもですね
ラナ:ニコルは……テンプルは使えるの?
ニコル:……テンプル?
ラナ:うん。生まれつき特別な力が与えられる不思議な…魔法みたいなものよ
ニコル:……そんなのないです。ハイドがレイヤの呪いを解いたのもテンプルなんですよね?
ラナ:そう。あの高熱は病気なんかじゃなかったんだ。悪魔のような…そんな呪いが存在するし、それを解くための力だって存在する
ニコル:すごいですね。でも…私はテンプルは使えないですよ
ラナ:そっか……ならいいけど
ニコル:……はい
0:場面転換。食堂にて
マリル:今日はチーズドリアだー!ヨイチのチーズ分けてよー
ヨイチ:あげねーよ!マルチーズが!
マリル:マルチーズって犬でしょ!
ライチ:俺のチーズもあげねーからな!?
マリル:分けてよー!
ノア:ほら、マリル、私のチーズあげるよ
マリル:えー。いいの?
ノア:うん!
マリル:ありがとー!ウチはあんたのことだけは好きよ
ノア:うふっ。みんなにもそう言えるといいね
ライチ:レイヤー!今日も本の話してくれよー!
ヨイチ:そうだそうだ!またワクワクさせろー!
レイヤ:別に構わないが
マリル:やったー!
ハイド:……レイヤ、ひとつ言っておくことがある
レイヤ:なんだ?
ハイド:こいつら3人に変なことを教え込むのはやめろ
レイヤ:変なこと?そんなつもりはないが
ハイド:とぼけるな。3人とも、国に人を売りつける事を知っていた。それはお前から教わったと言っていたぞ。そんな物騒なことを教えるな
レイヤ:そんなの、僕の勝手じゃないか。人の人生でこういったこともありえる。ただそんな話をしただけだ
ハイド:なら、そのありえる事を無くすために何が出来るかまで教えておけ。それを肯定するようなことは言うな
レイヤ:ごちゃごちゃうるさいな。それに肯定して何が悪い?
ハイド:……なんだと?
ラナ:ちょっと、二人とも?食事の時まで喧嘩しないでもらえる?
レイヤ:………
ニコル:………
0:食事が終わる
ニコル:………ハイド。ちょっといいですか?
ハイド:どうした?
ニコル:はい。ちょっとだけ
0:ハイドとニコルは村のはずれに行く
ラナ:じゃあ、ノアと私はまた夜の散歩ね
ノア:うん!また行こっか
0:ノアとラナも村から外れる
レイヤ:……ふぅ。さて、君らはどうする?本の話でもする?
ライチ:おう!聞かせろー!
ヨイチ:俺にも聞かせろー!
マリル:ウチももっと勉強するわよー!
レイヤ:賢いやつらだな。まあいいだろう。Like a jewel(ライカ ジュエル)の続きでもしてやろう
ライチ:やったぜー!
ヨイチ:腕が鳴るぜー!
レイヤ:そうだな。身体中から宝石が埋め込まれる呪いを掛けられるが、その呪いは人から人に伝染させる事が出来るんだ
マリル:ほえー。どうやってー?
レイヤ:呪われた人間の血を飲む事だ
ライチ:血を!?
ヨイチ:飲む!?
マリル:ぎょえーー!!恐ろしい!!
レイヤ:そうすることによって呪いは伝染するんだ。つまり、Like a jewelの血を飲む事で、そいつの身体にも宝石が埋め込まれるようになる。
レイヤ:若い奴らの方が宝石は沢山埋め込まれるらしい。だから、若い奴らにその呪いを伝染させれば、より金になるということだ。
ライチ:へぇー。夢のような話だな!
レイヤ:ああ。そうだね
ヨイチ:まあ、ハイドにそういう物騒なこと言うなって言われたしな
レイヤ:ああ、あいつは真面目だからな
マリル:でも!ウチのお父さんが売られたって考えたら酷い話だしね!もうそういうこと考えるのはやめるのよ!バカ男たち!
レイヤ:君たちは賢いはずなのにまだわからないのかい?
ヨイチ:ん?
マリル:何か話の続きでもあるの?
レイヤ:ああ、そうだね。この村がより裕福になるための話さ
ライチ:なんだーそれ?
レイヤ:君たちが…Like a jewelの血を飲むこと…だよ
0:場面転換
ハイド:ニコル、どうした?
ニコル:あの、ハイド……聞いて欲しいことがあるんですけど
ハイド:なんだ?
ニコル:……ハイドはテンプルを持ってますよね?
ハイド:……ああ。そうだな。ある意味これも呪いのようなものだ
ニコル:……呪いを解く力があるなら……ハイドにも協力して欲しいことがあります……
ハイド:………
ニコル:実は…私もテンプルを持ってるんです
ハイド:っ!……そうだったのか?なぜ今まで黙っていた?
ニコル:黙っててごめんなさい。でも、ノアとの約束だったから
ハイド:何の約束だ?
ニコル:これから先、何があっても、どんな事があっても……私のテンプルと……ノアの呪いについては…誰にも内緒ってこと
ハイド:なら何故それを俺に言う?
ニコル:ノアの姿を知ってる人は……ハイドだけだって私も知っていますから……
ハイド:………何故…それを……?
ニコル:私が持ったテンプルは、遠くの方まで声が聞こえること。だから……どうしても聞こえてしまうんです……。
ハイド:……一体…何が聞こえると言うんだ?
ニコル:……ノアの正体を知っている人が……ノアの事を襲おうとしていること……
ハイド:………っ!
ニコル:だから…ハイド……私一人じゃもう耐えられないです…!……ノアを…助けてください……
ハイド:………ニコル…動けるか?
ニコル:……はい。大丈夫です
ハイド:ノアの所に向かってくれ
ニコル:……ありがとうございます
ハイド:礼を言うのは俺の方だ…ありがとう
0:ハイドは走ってある場所に向かう
0:場面転換。ノアとラナ…
ノア:今日も空が綺麗だね
ラナ:そうね。やっとこの村に慣れてきたし、こんな風に息抜きするのもいいわね
ノア:そうだね。今度はみんなで花火とかしない?きっと楽しいよ
ラナ:いいわね!楽しそう
ノア:……ラナも、一緒に楽しもうね
ラナ:……どうかしたの?
ノア:ううん。ラナが少し無理してるように見えるからさ
ラナ:な、何も無理はしてないわよ。ノアの勘違いでしょ?
ノア:それならいいけど
ラナ:………ノア
ノア:ん?
ラナ:ただ一人の家族のために……自分の人生を賭けるなんて…バカげてるかしら?
ノア:……どうして?
ラナ:ノアならどう思うかなって
ノア:……素敵な事だと思うよ
ラナ:………
ノア:私にも…お母さんが居たの。たった一人の…かけがえのない…大好きだったお母さんが
ラナ:………そうだったのね
ノア:最後にお母さんに言われた言葉を私は今でも覚えてる
ラナ:なんて言われたの?
ノア:どこに行っても誰と居ても、優しい世界は優しいあなたに包まれてる
ラナ:………
ノア:優しい世界は、優しい人で溢れてるんだよ。だから私もみんなに優しくなれるような人になりたい。
ノア:お母さんのその言葉を胸に…私も生きているから……。家族のために自分の人生を賭けることは素敵な事だよ
ラナ:………そっか…
ノア:……ラナ?寒い?
ラナ:あ、ああ。確かに少し寒いわ
ノア:冷えるかな?私はもう慣れちゃった
ラナ:なら、その服…貸して貰える?
ノア:………え?
ラナ:ノアが寒くないなら…貸してほしい
ノア:……ああ、ごめん。このフードは……
ラナ:このフードが……脱げない理由があるのかしら?
ノア:………それは
ラナ:……ノア…私が望む世界はこうよ
ノア:………?
ラナ:たった一人の家族のために…どんな手段を使ってでもそいつを幸せにしたい。一人にさせたくない。だから……ごめんね…ノア
ノア:……っ!!
0:ラナはノアのフードを勢いよく取る
ラナ:額に綺麗なダイヤモンド……
ノア:……何をするつもり?
ラナ:やっと見つけたわよ……Like a jewel(ライカ ジュエル)
0:場面転換。ライチ、ヨイチ、マリルは……
ライチ:は、離して……レイヤ
ヨイチ:な、何してんだよレイヤ!やめてくれよ!
マリル:なんでライチの顔を掴んでるのよ!離しなさい!
レイヤ:ガキは黙ってろ。お前ら3人で何が出来るんだ?
ライチ:うっ……うぐぅぅ
ヨイチ:ライチ!くっそー!離せー!
レイヤ:っ!!
ヨイチ:うぐぅぅー!!
0:レイヤはヨイチのあばらを蹴り飛ばす
マリル:ヨイチー!……レイヤ……どうしてこんなことするの!?
レイヤ:さっきも言っただろ?何度も説明させるな。僕は金が欲しいだけだ。お前らにLike a jewelの血を飲ませてお前らを売り飛ばす。ただそれだけだ!
マリル:やめてってば!あんたね!売り飛ばされた人の気持ち考えたことあるの!?
レイヤ:ああ?そんなの当たり前だ。痛いほどわかる……っ!
0:レイヤはライチの顔を離し地面に叩きつける
ライチ:ぐはっ!……はあ、はあ
ヨイチ:ライチ!大丈夫?
ライチ:う、うん……でも。こえーよ。……震えて足が動かねぇ
ヨイチ:弱音吐くな!俺だってこえーよ!
ライチ:ああ…俺たちは……どうなるんだろうな……
マリル:なんであんたにその気持ちがわかるのよ…
レイヤ:……ああ。僕はな……母親に売られたからだ。
マリル:………え?
レイヤ:お前らのようにただ平和に過ごして、たまたま親が死んだ、たまたま生き別れになった。そんな不運だけの人生じゃねーんだよ。
レイヤ:僕は人を恨んで…!人が憎くて…!人を殺したいと思い続けてきた!奴隷のような毎日を過ごしていたんだ。だから人が金になっても今更何も思わない!
ライチ:………でも!この村には宝石が埋め込まれてる人なんて居ないだろ!
レイヤ:……居るだろう…いつもフードを被って…顔を隠している奴が…一人
ヨイチ:………え?
マリル:……ノアが…?そんな
レイヤ:そろそろ片付いている頃だろう。後はお前らを……
ハイド:そこまでにしとけ
レイヤ:………っ!?
ライチ:ハイド!
ヨイチ:よ、よかった!ハイドが来た!
レイヤ:何しに来た?
ハイド:お前こそ…何をしてるんだ?
レイヤ:見てわかるだろう?教育をしてるんだ
ハイド:ふざけんな…!ライチが傷だらけじゃねぇーか!
レイヤ:ああ。逆らったらこうなるってことも教えてやらないといけないからな。
ハイド:っ!!
レイヤ:くっ!!
0:ハイドはレイヤの頬に拳を思い切り振り下ろす
ハイド:お前が呪いにかかった時に…約束したはずだ。この村の為に働いてくれと
レイヤ:ああ。だから少しでも稼いだ金をこの村に寄付しようとしていたさ
ハイド:人を売った金で!この村を汚すな!!
レイヤ:バカが!金なんかに美学もクソもないだろ!お前が思ってるよりもこの世は腐れ果ててるんだよ!
マリル:ハイド!危ない!
ハイド:っ!!
0:レイヤはハイドにナイフを振りかざしたが、それをハイドはかわす
レイヤ:……外したか…
ハイド:いいや、かすったよ
レイヤ:ふんっ。お前のことは…いつも気に食わないと思っていた。常に正義ぶっていてムカついていたさ。だが……お前は何故僕を助けた?
ハイド:………同じ…人だからだ
レイヤ:ふざけるな……僕とお前とでは住んでいた世界が違うだろ!
ハイド:同じだ!!
レイヤ:………
ハイド:金にもならない……俺はただ捨てられただけだが……両親からは見放された。……テンプルのせいでな
レイヤ:なら何故…お前は誰にでも優しく出来るんだ?
ハイド:………ノアに、出会ったからだ
レイヤ:………っ
ハイド:誰にでも優しいノアに出会ったから…俺はお前を助けた。ノアならそうすると思ったから。ただそれだけだ
レイヤ:………ああ。見事なまでの綺麗事だな。またムカついてきたよ。どうにかして君を殺すしかないようだね!
マリル:やーっ!!
レイヤ:……なっ!
ハイド:マリル!危ないぞ!
ライチ:おりゃー!!
ヨイチ:でりゃーー!!
レイヤ:は、離せ!!やめろ!!
ハイド:………ったく。お前らは。……レイヤ。最後に言う。俺とお前は分かり合えないんだな?
レイヤ:……ああ。お前の考えなんて…反吐が出る
ハイド:なら覚悟を決めろ
ハイド:はあっ!!!
0:ハイドはレイヤの顎を力強く殴りつけた
レイヤ:…………っ
ハイド:……お前とは…仲良くなりたかったよ
0:場面転換。ノアとラナ…
ノア:ラナ……
ラナ:……離して
0:ノアはラナを抱きしめていた
ノア:やだよ
ラナ:離して!!私はあんたを…!
ノア:襲うなら……好きにして
ラナ:………何言ってるのよ
ノア:私は…大丈夫だから。ラナのしたいようにしてもいいよ
ラナ:………ふざけないで!自分の置かれてる状況がわからないの!?
ノア:わかってるよ。……でも。それでラナが報われるなら…助けてあげたい
ラナ:……うわぁぁー!!
ノア:………くっ
0:ラナはノアの肩にナイフを突き刺す
ラナ:はあ…はあ……痛いでしょ……?これでもあんたは怖くないの?
ノア:痛くも…ない
ラナ:嘘つかないで!!……痛くないわけないでしょ?
ノア:……ラナだって……痛いでしょ?
ラナ:………あんた…なんなのよ!!
ノア:ラナ……辛いことがあるんだよね?
ラナ:…………っ
ノア:何があったのかわからないけど……ラナは優しいね。誰かのために…自分の心を痛めて…誰かを助けようとしてるんだもん
ラナ:………知ったようなこと言わないで
ノア:それに比べたら…私は痛くないよ。……もう…痛みなんて忘れちゃったから
0:ノアはラナから離れる
ラナ:………っ!ノア…その顔は…
ノア:そう。私がLike a jewel。(ライカ ジュエル)もう何も価値の無い…輝きを失った宝石だよ
ラナ:………っ。…ノア……。……ごめんなさい
ノア:どうして謝るの?
ラナ:………ごめんなさい…ごめんなさい…!
ノア:泣かないで……ラナ
ニコル:ノアー!
ラナ:………っ!…ニコル
ノア:……ニコル。来てくれたんだ
ニコル:………ラナ
ラナ:………もう…私は……この村には居られないわよね…
ニコル:……ラナ。私……本当は、テンプルを持ってるんです
ラナ:………そうだったのね。
ニコル:はい。遠くの方まで声が聞こえる。ただそれだけの力です。だから……ラナとレイヤが兄弟だってことも知ってました
ラナ:…………そんなことまで
ノア:だから、ニコルから全部聞いたんだよ。
ラナ:………何を?
ノア:ラナと……レイヤの事を
0:半年前の事
ラナ:………レイヤ。ノアって子で間違いないのね?
レイヤ:ああ。恐らく。こんなにも黒い呪いが見えるのは間違いない。あいつがLike a jewelだ
ラナ:あんたのテンプルも便利ね。呪いを察知する力があるなんて
レイヤ:まあな。だからこそ、ノアを見つけることが出来た……。早く近づかないといけないな。
ラナ:何をするつもり?
レイヤ:呪いは人に伝染するんだ。呪われてる人の血を飲めば、同じ呪いにかかるんだと。
ラナ:……あんた…まさか
レイヤ:ああ。あわよくばノアごとだが…あいつの血を誰かに飲ませて……身体中が宝石になったそいつを国に売るんだ。そうすれば僕もラナも金持ちになれるだろ?
ラナ:……でも…そんなことしたら……
レイヤ:今更なにを怖気付いてる?僕達は元々孤独だ。親がなんだ?家族がなんだ?人は生まれた時から地獄のはじまりなんだよ。誰が犠牲になろうと構わないだろう
ラナ:レイヤは……そうしたいんだね?
レイヤ:ああ。だから…ラナにも協力して欲しい
ラナ:はあ。わかったわよ。……でも、これだけは言っておくわ、レイヤ
レイヤ:………?
ラナ:あんたは孤独じゃないわ。私が居るんだもの
レイヤ:………そうだな
0:ノアとニコルは村のはずれにある。湖
ニコル:………どうしよう……どうしよう…
ノア:………どうかしたの?
ニコル:………あ。……あなたは…
ノア:ごめん。ちょっと心配になっちゃって。大丈夫?
ニコル:ノアさん……ですか?
ノア:うん。ノアだけど
ニコル:逃げてください!
ノア:……え?どうして?
ニコル:あなたの姿……今どうなってるんですか?
ノア:お、落ち着いて!何が何だかわかんないよ!
ニコル:……すみません。
ノア:私がどうかしたの?
ニコル:……あなたは…ある二人組に…命を狙われています
ノア:………私が?
ニコル:だから…逃げてください
ノア:……ありがとう。…でも、私はこのままでいいよ
ニコル:……どうして?あなたの姿だって…知られているんですよ?
ノア:うん。別にいいよ。私はLike a jewel。私の宝石が欲しいのなら……違う人がいいかもね
0:ノアはフードを外す
ニコル:……あなた…その姿……
ノア:私の呪いは人に伝染してしまう。……でも。そんなことがあったとしても、私の呪いを解いてくれる人がもうそばに居るから、安心して?
ニコル:……でも
ノア:優しい世界は……優しい人たちで溢れてる。きっとその人達も、自分で抱えきれないものがあって、誰かを騙して、何かを壊さないと自分の重荷が軽くならないんだよ
ノア:それがたまたま私だっただけ。大丈夫だよ。その重荷が軽くなった時…きっと笑える日々が続いて…人は優しくなれるんだから
ニコル:………ノア…さん
ノア:だから…私はその二人を、私の村に迎え入れる
ニコル:そ、そんな!
ノア:大丈夫。……大丈夫だから
ニコル:……なら、私も行きます
ノア:……あなたも?
ニコル:だから……約束してください。この事は二人だけの秘密だって。あなたのその姿と…私のテンプルの事も
ノア:うん。だからあなたも、二人に何があっても責めたりはしないでね
ニコル:………それは…わかりませんよ
0:場面転換_____現在では
ラナ:……じゃあ……ノアは…
ノア:うん。最初から全部知ってたよ。ラナとレイヤが兄弟だったってことも。私を襲おうとしていたことも
ラナ:……じゃあ…どうして……?
ノア:こんなにも優しいラナを…助けたいと思ったから
ラナ:………ノア…ごめんなさい
ノア:いいんだよ。レイヤのために…頑張ってたんだよね
ラナ:………うっ…ううぅぅー。
ノア:泣か…ないで……ラナ
0:ノアは力が抜け、倒れる
ラナ:………ノア?
ノア:………っ
ラナ:ノア?ノア!?
ニコル:……肩の出血が…止まってないからですよ
ラナ:……っ!
ニコル:ラナ!?何してるんですか!?
0:ラナはノアの傷口に口を付けて
ラナ:ごほっ!ごほっ!
0:血を吐き出す
ニコル:ラナ…!そんなことしたら……
ラナ:ノアの……血を止めなきゃ…!早くしなきゃ…!
0:ラナはまたノアの傷口に口を付ける
ニコル:やめてください!ラナ!
ラナ:ごほっ!ごほっ!離して…ニコル。私がやってしまった事だから
ニコル:でも!ノアの血を吸ったら……あなたも……!
ラナ:……それでも…いい!
ニコル:……ラナ!
0:場面転換____ハイドはレイヤを縄で縛り付けていた
ハイド:覚悟は出来てるんだろうな?
レイヤ:………
マリル:うえーーーん!!怖かったよぉー!ハイドぉー!
ライチ:お、俺は怖くなかった!
ヨイチ:嘘つけ!ライチはビビってた!
レイヤ:……もう、どうにでもしてくれ
ハイド:………俺が決めることでもないからな。後はノアに任せる
ライチ:そ、そういえば…ノアがLike a jewel(ライカ ジュエル)だったって本当かよ!?
ヨイチ:そうだよ!ハイドは何か知ってるのか?
ハイド:……ああ。ノアの身体のことは知っていた。だから俺もノアをずっと見守っていたんだよ
マリル:なーんだ。好きでイチャコラしてたわけじゃなかったんだー。つまんないのー
レイヤ:なら…教えろ。ハイド。ノアはどうして村を買えるほどの大金を持っていたんだ?
ハイド:………それは
ニコル:ハイドー!
ハイド:……ニコル…。
ライチ:ノア!?なんで血だらけなんだよ!
ヨイチ:おおい!しっかりしろー!ノアー!
ニコル:ノアは気を失ってます。ここで安静にさせときますね
レイヤ:………ラナ
ラナ:………レイヤ
レイヤ:………なぜ、口に血が付いているんだ……?
ラナ:………ノアの血を…吸ったのよ
レイヤ:………なんだと…?
ハイド:………ラナ…お前、そんなことしたら
ラナ:ええ。わかってるわ…。でも……ノアにどうしても謝りたくて……ノアに助かって欲しくて……こうしたの
マリル:どうしてノアが血だらけなのー!ねえ!……ラナがやったの…?
ラナ:………ええ。そうよ
マリル:どうして!みんなどうしちゃったの!?みんな仲間だと思ってたのにー!
ライチ:そうだよ!ラナもレイヤも…何してんだよ!
ヨイチ:俺たち…もうバラバラになっちゃうの?
ニコル:……なりません。そうはさせないですよ
ハイド:……ラナ…お前もいずれ身体中に宝石が埋め込まれる。それでいいんだな?
ラナ:………うん。
レイヤ:……よくねーよ。ラナ、お前が宝石になるなんて許さないぞ!
ラナ:でも……ノアに償いが出来るなら…それでいいの
レイヤ:ふざけんな!どうしてノアに執着するんだよ!あいつは………
ラナ:ノアは……こんな状況でも私に優しいって言ってくれたの
レイヤ:……だからなんだってんだよ
ラナ:優しい世界は、優しいあなたで溢れてる。まさにノアのことなんだよ。ノアが優しいからみんながノアに優しくなれるんだよ。そんなノアを傷つけた私は……私は…
ライチ:俺は…こいつらを許せねーよ!
ハイド:……ライチ
ヨイチ:俺だって許せねー!
ライチ:ラナ!お前ノアの血を飲んだんだろ!?じゃあお前にも宝石が埋められるってことだ!
ヨイチ:ああ!そうだ!お前が国に売られろ!
ハイド:何言ってんだ、お前ら
ライチ:だって!許せないだろ!
ヨイチ:ノアをこんなに傷つけてこいつは生きて帰ってきたんだ!だったらこいつが国に売られるべきだよ!
マリル:やめなさいよ!あんたたち!
ライチ:なんでだよ!こいつはもう裏切り者だ!
ヨイチ:レイヤも裏切ったんだ!こいつも国に売ってやろうよ!
マリル:そんなの!ノアが望んでないよ!
ライチ:……でも!
ヨイチ:……納得出来ねー!
マリル:ハイドだって言ってたでしょ?。大切な人が金に変えられても喜べないって。ノアにとってラナは大事な人かもしれないんだよ!
ライチ:……でも…
ヨイチ:……そんなの…わかってるけど……
レイヤ:こんな状況でこんなこと言うのは間違ってる。それは承知の上だが…ハイド……ラナを助けてくれ…
ラナ:……レイヤ!?
レイヤ:ハイドのテンプルなら呪いを解くことが出来るはずだ。だから……ラナを助けてくれ!僕の……たった一人の…家族なんだ……。頼む!
ハイド:……それは…出来ない
レイヤ:………どうしても……僕たちが許せないか?
ハイド:違う。そうじゃない。ラナの呪いは解くことは出来ないんだ
レイヤ:……どうして?
ハイド:ノアの呪いは先天的なものなんだ。その呪いから伝染された呪いは解くことは出来ない。もっと言えば、解こうとすると呪われた人間が消えてしまうんだ。
ラナ:…………
ハイド:唯一……解く方法があるとしたら……先天的に掛かった人間の呪いを解くこと……
ライチ:なら!そうするしかねーな!
ヨイチ:ノアが助かる方法はそれだー!
ハイド:助かるなら最初からそうしてる
レイヤ:…………
ハイド:先天的に呪われた人間も……呪いを解こうとすると消えてしまうんだよ。……だから、ラナの呪いを解くことは…出来ない
ライチ:じ、じゃあ、ノアは呪われたままなのか?
ハイド:そう…だな
ヨイチ:………じゃあ、やっぱラナを!
マリル:やだよ
ラナ:……マリル?
マリル:ウチ……ラナのこと好きだもん。レイヤのことだって…。ウチ……みんなが幸せになれる方がいい
ライチ:バカか!そんな方法はもうねーよ!こいつらはノアを!
ヨイチ:そうだよ!レイヤなんか俺とライチを傷つけたんだ!無理に決まってる!
マリル:うるさいわね!じゃああんた達がどうにかしなさいよ!
ライチ:出来るか!んなこと!
ヨイチ:出来たら最初からやってるよ!
ハイド:……でも、ライチとヨイチの言う通りだ…。ノアがいる以上は、こいつらをこの村に置いとくわけにはいかない!
ニコル:でも、ノアはきっと寂しいと思いますよ?
ハイド:何度もこんな事態になったらどうするんだよ!
ラナ:じゃあ!……やっぱり私が売られるべきよ…
レイヤ:……何言ってんだよ!ラナ!
ラナ:もうそれしかないじゃない!!みんなが幸せになれる方法は!
ニコル:………ラナ…?額に……何か……?
ラナ:………え?
ハイド:………始まったか
ライチ:うわあー!ダイヤモンド!?
ヨイチ:ほんとに出て来るんだ!?初めて見た!
レイヤ:………くっそぉ!
ラナ:………ほら、やっぱり呪いは伝染するんだよ。やっぱり……私が国に売られて…そのお金でみんな幸せに暮らすべきだよ
マリル:そんなの嫌だよー!!
ライチ:泣き言なんて言うな!ラナがそう言うんだからそうするべきだよ!
ヨイチ:俺たちは……昔から仲良しだと思ってたけど……悲しいけど……そうするんだ
ニコル:みんな落ち着いてください!
マリル:落ち着いてられないよ!
ライチ:もう…わかんないよ!!
ヨイチ:どっちも助かる方法なんてないよ!
マリル:じゃあどうするのよ!
ラナ:もういいの!そうしないと私の気が済まない!だから!ノアのこと……。っ!?
0:後ろから人影が見えて、全員振り返る
ノア:…………みんな?
ハイド:…………ノア
ニコル:……ノア。動いちゃダメですよ
ノア:ううん。大丈夫
ハイド:………せめて座っとけ
ノア:ありがと
マリル:ノ、ノア?話聞こえてたの?
ノア:……何となく話は聞こえてきたよ
ラナ:………
ノア:………ラナ?……その額
ラナ:ううん。なんてことないよ
ノア:………ダメだよ、どうしてこんなことになったの?
ラナ:黙って聞いてて、ノア。私はあんたの呪いが伝染したの。だから…私がLike a jewelとして……国に売られるわ
ノア:……そんなの…ダメだよ
ラナ:呪いの伝染は私が勝手にやった事なの!あんたは口出ししないで!……今までごめんね
ノア:……わかった
ハイド:……ノア?
ノア:ラナもレイヤも。この村から出ていくのは好きにしてもいいよ。だから……すぐに出て行って
ラナ:………わかった。明日の朝には……出て行くわ
マリル:……ノア?本当にいいの?
ノア:……うん
レイヤ:……ラナ…とりあえず行くぞ。
ラナ:……うん
0:ラナとレイヤは家に戻る
ノア:………私も家に戻ってるね
ハイド:………ノア…。……安静にしてろよ?
ノア:……うん。わかってる
0:ノアも家に戻る
ライチ:……はは。これでよかったんだ
マリル:………何言ってんの…よくないよ
ヨイチ:ノアも…よく言ってくれたよ。あいつらはさっさと村から……
マリル:いい加減にしてよ!あんた達、最低よ!
ハイド:………マリル…やめとけ。こいつらの表情を見ても、それを言えるか?
ライチ:……うぅぅ……うううぅぅ……ラナ
ヨイチ:……レイヤ……うっ……ううぅぅー
マリル:……ウチだって……悲しいよ……うぅ…うわあああん!
0:場面転換____ハイドの家では…
ハイド:………あいつの言葉は…本心のはずがない………優しいあいつが……
ハイド:………はあ。なかなか寝付けないな。外に行くか……
0:ハイドは外に出て村を歩く
ハイド:(M)この村は……人が8人過ごすには十分だが、小さな村だ
ハイド:(M)ノアがこの村を買い取ると言い出した時からそんな予感がしていたんだ
ハイド:(M)こうなる運命だった。そうは言いたくは無いが……ノアは今…何を思うんだろう
ハイド:………ん?何か音がする…?
0:ハイドは音のする方に向かう
ハイド:…………っ
ノア:…っ!…っ!!
0:ノアは額を何度も岩に打ち付けていた
ノア:……っ!……消えて……!……消えて……!……っ!
ノア:私の身体も……こんな宝石も……いらない……。……消えて…!お願い…!消えて…!……っ!……っ!!
ハイド:……ノア…何してんだよ…!
ノア:……はあ…はあ……ハイド…
ハイド:安静にしてろって言っただろ
ノア:………私は……どうして……生まれてきちゃったんだろう……。……やっぱ私なんて……何も価値のない…呪われた人間だよ
ハイド:……最初からこうなることはわかってたんじゃないのか?
ノア:………でも…あの頃と今じゃ違うでしょ?
ハイド:………ああ。そうだな
0:半年前のこと
ハイド:……お前がLike a jewel(ライカ ジュエル)か?
ノア:……うん。そうだよ
ハイド:服を脱いでみろ
ノア:………っ
ハイド:………っ!な、なんだよ…この傷は?
0:ノアの体は刃物でえぐられていたような無惨な跡が残っていた
ノア:私の身体だよ。もうこれ以上…宝石は出てこなくなった。あとは額のダイヤモンドだけ。
ハイド:誰に付けられた傷だ?
ノア:義理の父から。毎日、ナイフでえぐり取るように体に埋め込まれていた宝石を切り抜かれたの
ハイド:………いくらなんでも……残酷すぎる
ノア:意外とそんな事ないよ。私は大丈夫だから。あなたの名前はハイドでいいんだよね?
ハイド:ああ。そうだ。人の呪いを解くテンプルを持っている。お前の呪いは後天的なものか?
ノア:……ううん。先天的なものだよ
ハイド:……なら、お前の呪いを解いた瞬間。お前が消えていなくなるぞ?それでもいいのか?
ノア:いいよ
ハイド:………話が早くて助かる
ノア:あなたもずっと一人だったの?
ハイド:……ああ。少しわけがあってな。
ノア:私のお母さんが…最後にあなたの名前を教えてくれたの。あなたに会えてよかった。呪いを解いて、私ごと消してくれる人が居てくれて…よかった
ハイド:そうは言うな。俺はお前の呪いを解くつもりはない
ノア:……どうして?
ハイド:消えるとわかってて呪いを解くなんて…人を殺しているようで…俺には出来ない
ノア:……私が…人だって言うの?
ハイド:………当たり前だ。お前は宝石では無い。一人の人間だろ
ノア:………っ
ハイド:………なんだ?
ノア:……いや、なんでもないよ。…それならさ、ハイド。私は人に優しくしたい
ハイド:……そんなこと、いくらでも出来るだろう
ノア:ほら。これ見て
ハイド:……なんだ?この金は
ノア:お母さんが、義理の父から奪ったお金だよ。……これは…私の宝石を売った時のお金だから、私のもの。だから…このお金が使えるなら私は人に優しくして、優しい世界を作りたい
ハイド:………そんなこと…俺に言われても困るぞ
ノア:……うん。ごめんね。……ならこうしたい。このお金で私と同じく一人ぼっちだった人達を助けたい。このお金で村を買って集まった不幸な人達全員と幸せに暮らすんだ
ハイド:………好きにしろ。だかお前はLike a jewelだ。誰かと居れば誰かに呪いが伝染することだって有り得る。それでもいいのか?
ノア:その時は……あなたが私の呪いを解いて。伝染した人を助けてあげて
ハイド:………お前が消えるということだな?
ノア:……うん。
ハイド:……わかった
0:場面転換____現在では
ノア:………その時は…こんなに大事な場所になるなんて思わなかった……こんなに大切な人になるなんて思わなかった……どうして……どうして……!
ハイド:お前のその悔いは……お前の人生が輝いていたからだろ?
ノア:………え?
ハイド:ノアもラナもレイヤも……みんなが平和になれれば、俺だってそうしたい……だが…みんなが悲しまない選択肢って……本当にどこにもないと思うか?
ノア:………きっと…ないよ
ハイド:……なぜ言い切れる!?
ノア:Like a jewelの呪いは体中に宝石が出来るだけの呪いだと思うけど、実際はそうじゃないの。体に宝石がある事で、人としての価値はなくて、お金としてしか見られない…そんな不幸になる呪いなんだよ
ノア:だから…ラナにはそんな不幸な道に進んで欲しくない。それなら……私の呪いを解いて欲しい
ハイド:………それは出来ない
ノア:………お願いだよ、ハイド
ハイド:………やりたくないんだ
ノア:どうしてよ!
ハイド:……俺だって……悲しいからだよ
ノア:………ハイド…?
ハイド:宝石じゃなくなったお前に価値がないなんて言わせねーよ。お前は人としての価値がある。……だから……居なくならないで欲しいんだよ
ノア:………ハイド…私の言うことをよく聞いて
ハイド:……?
ノア:私も…みんなが幸せになれるならそうしたいよ。みんなと…この村でずっと暮らしていたい
ハイド:………
ノア:でも、もしこの先、私もラナも生きていて…どこかでラナが不幸な目に遭った時…きっと私は死にたくなる
ハイド:………ノア
ノア:私の呪いは……きっと死ぬまで呪いなの。……誰かを不幸にさせるくらいなら、消えて居なくなりたい。……それが私の願いだよ。
ハイド:………くっ!
ノア:お願い。ハイド。私の呪いを解いて欲しい
0:場面転換____ニコルの部屋では
ニコル:………ノア
ニコル:……うっ……ううぅ……ノア……全部聞こえてるよ……
ニコル:助けてあげられなくて……ごめんなさい
0:場面転換____ノアとハイド……
ハイド:………ノアが望むのなら……呪いを解いてやる
ノア:………ありがとう
ハイド:………一瞬苦しくなるけど我慢してくれ
ノア:うん
ハイド:…………はあっ!!!
ノア:……っ!!
0:ハイドがノアの喉元を力強く握る。その瞬間、ノアの体から青いオーラが放たれた
ハイド:5分もすれば呪いは解かれる。……そして…ラナの呪いも解かれ……ノアの姿は無くなる
ノア:………よかった
ライチ:よかったじゃねーよ!!
ヨイチ:なんにもよくねーよ!!
ノア:………ライチ?…ヨイチ!?
マリル:……ノアー!!何してんのー!!
ノア:………マリルまで…
ニコル:……ノア…
ノア:……ニコル…
ハイド:………なんでお前らがここに…?
ニコル:………全部…聞こえてきてしまったんです。最後にお別れが出来ないなんて寂しいじゃないですか!
ノア:………みんな…
ニコル:ううん。ここにいる人がみんなじゃないですよ?
ノア:………え?
0:ラナとレイヤも現れる
ラナ:ノアーー!!
ノア:っ!……ラナ
0:ラナはノアに抱きつく
ラナ:ノア……嫌だよ……なんで私のために
レイヤ:……ハイド!!テンプルの力を止めろ!ノアが居なくなるなんて間違ってる!
ハイド:………ああ。間違ってるよ。でもあいつは……優しいんだ
マリル:居なくならないでよー!ノアー!!
ライチ:そうだよー!!俺たちのそばに居てくれよ!!
ヨイチ:俺たちは!!お前のおかげで毎日楽しかったんだぞーー!!
0:場面転換____半年前のこと
ライチ:お、おい!そこの奴ら!か、金を出せ!
ノア:……え?私?
ヨイチ:そうだよ!お前らだよ!か、金を出せ!
ハイド:なんだ?こいつら
ライチ:俺たちは!悪党兄弟だ!
ヨイチ:そうだ!ビビったなら金を寄越しな!
ノア:幼い兄弟なんだね。お腹すいてない?
ライチ:すいて……ない!!
ヨイチ:ああ!……すいて……ない…
ノア:無理はだめだよ?おにぎりあげるから食べて?
ライチ:ええー!いいの?
ヨイチ:やったぜー!!
ノア:あなた達、ご両親は?
ライチ:ああ、多分死んじゃったんだ
ヨイチ:船で流されちゃったらしい
ノア:行くあては?
ライチ:もちろんない!
ヨイチ:おにぎりうめー!
ノア:元気な子達だね
ハイド:………ノア?
ノア:私ね、村を作ろうと思うの。その村でみんなが幸せに平和に過ごせる…そんな村を作りたいの
ライチ:そ、そんなこと出来るの!?すげーな!お前!
ヨイチ:天才だな!おにぎりもうめーし!
ノア:あなた達の平和は、私が保証するわ。
0:場面転換_____マリルとの出会い
マリル:……うっ……うううぅ〜……お父さん
ハイド:……ん?お前どうかしたのか?
マリル:………ウチのお父さんが…どこか行っちゃった…
ノア:また孤児みたいね。可愛そう。名前は?
マリル:マリル
ノア:マリルっていうのね。私はノア。マリルはどうして一人になっちゃったの?
マリル:ずっと……お父さんと一緒に居たのに……急に居なくなっちゃったから寂しい
ノア:そうなのね。わかった。もうこれからは寂しい思いはさせないよ
マリル:どうして?
ノア:私も…寂しいから……かな?
マリル:………あんたも?
ノア:うん。だからさ、私、マリルのように、一人ぼっちの人達を集めて、平和な村を作るんだ。マリルも一緒に住んでみない?
マリル:……いいの!?ウチ一人で眠れないんだけど
ノア:みんなで寝ればいいよ
マリル:……うん!じゃあそうする!
ノア:………ありがとう!
0:場面転換____現在では
ライチ:ノアーー!!お前が居てくれたから俺たちはいつも楽しかったんだよー!
ヨイチ:楽しくて!暖かくて!ノアだっていつも優しかっただろー!なんで消えるんだよ!
ノア:……ごめんね。……でも、私は……
マリル:ノアが居ないとウチは……誰に頼ればいいの!
ノア:ううん。あなた達3人はもう立派だよ。人に優しくて。人の痛みを、孤独を分かち合いながら、明るい笑顔をみんなに与えてくれる素敵な人。私はあなた達3人を忘れないよ
レイヤ:………お前、それでいいのかよ
ノア:レイヤも…ラナのこと大事にしてくれてありがとう
レイヤ:……何もしてないよ。僕は
ノア:そうやって静かに見守ってくれてたことを私は知ってるよ。レイヤは面倒見が良くてしっかりしてる。……ラナのことよろしくね
ラナ:嫌だ!……私は…ノアに何も償えてない
ノア:償いなんていらないよ。私は…ラナに沢山愛情を貰ったと思う
ラナ:……それでも……私はノアを裏切ったから…
ノア:裏切りなんて思ってない。ラナのその涙が真実だと思ってるから。謝らないで。元々私はこうなるべきだったんだから
ラナ:………ノア…
ノア:ラナは誰よりも大きな愛情を持って、誰よりも人を大事にする人だよ。私はそんなラナが大好き
ラナ:…………うん…私も…ノアの事大好き…本当にありがとう……
ニコル:……私だって寂しいです…ノア
ノア:ニコル……今までずっと我慢させてごめんね。私のわがままで何度も辛い思いをさせてきた
ニコル:いいえ。ノアの方が辛かったですよね…。私はそばで見守ることしか出来なかった……。もっと早く……ノアの事も助けられたのに……
ノア:ううん。ニコルが思うより私はニコルに助けられたよ。いつも喧嘩しちゃうみんなをなだめてくれたり、本当に気使い屋さんなんだから。ありがとう
ニコル:………私の方こそ…ありがとうございます…!
ハイド:…………
ノア:ハイド
ハイド:…………なんだ?
ノア:私の呪いを解いてくれて…ありがとう
ハイド:………お前は自分の母親の言葉を信じすぎだ。優しい世界はお前に包まれるはずだった
ノア:それはみんなにも言えることだよ。優しいみんなのだからこの村も優しい世界に包まれるはずだよ
ハイド:………どこまでも優しくしすぎだ。お前は……
ノア:そうだね。こんな体の私でも……人に優しくしている自分のことは少しだけ好きになれるんだもの。
0:全員涙を流す
ハイド:(そっと涙ぐむ)
ラナ:(泣きじゃくる)
マリル:(泣きじゃくる)
ライチ:(泣きじゃくる)
ヨイチ:(泣きじゃくる)
ニコル:(堪えるように泣く)
レイヤ:(静かに泣く)
0:【間】
ノア:ねえ、最後に見て…みんな
0:泣き声は静かになる
ノア:これが私の本当の姿なの
0:ノアは服を脱ぐ
ノア:手足の爪は剥がれて、両耳は引きちぎられて、首はもちろん、体中に出来た宝石は全部えぐり取られて、こんな体になっちゃったの
ライチ:……なんだよ…この体
ヨイチ:……大丈夫なのか?
ノア:大丈夫。でも……宝石が埋め込まれてないLike a jewelなんて、なんの価値もないの。それなのに…誰かに伝染させてその人を不幸にさせる……そんな呪いから解放されたいから…消えるの
ラナ:……ノア…
ノア:でもね……みんなが私に優しくしてくれた。みんなが…私に寄り添ってくれた。……みんなが私を…愛してくれた。今だって…みんながそばに居てくれる
マリル:……うぅぅ…ノア〜……
ノア:本当に嬉しいよ。私にはお母さんしか居ないと思ってたから。こんな体でも…みんなが私を見てくれてるんだってわかったんだもん。私は一人じゃないんだって思えるよ
レイヤ:………くっ…
ノア:この世にはね、宝石よりも輝いていてキラキラしていて綺麗なものがいっぱいあるんだよ。今この場所が、まさに宝の箱みたいに綺麗に輝いてる
ノア:私はここにいるみんなが宝石のような存在なんだって。一人一人が宝物なんだってやっと思えるようになった。もうみんなは一人ぼっちなんかじゃない
ハイド:………ノア…!!
ノア:私はみんなのことを忘れないよ。みんなのこと……大好きだよ。だから、私のことも忘れないでいてね
ノア:やっと見つけた。やっとわかった。やっと思えた。ここにいるみんなが私にとっての
ノア:Like a jewel
ノア:むかしむかし、あるところに、キラキラした宝石をまとった一人の少女が居ました
ハイド:耳にはダイヤのピアス。指にはルビー、オパールの指輪。首にはエメラルドが飾られている不思議な少女でした
ラナ:彼女の姿は美しく、輝かしい姿で、誰もが羨んでいました。しかし、彼女の友人である一人の人物はある時、気付いたのです
マリル:この子が付けている宝石は飾りなんかじゃない。この子自身が宝石なんだと
ライチ:よく見てみると、ピアスではなく。耳たぶにダイヤモンドが一つ、二つ、三つ。埋め込まれているのに気付いたのです
ヨイチ:その女の子は、身体中に宝石が埋め込まれる呪いに掛けられていたのでした。
ニコル:その身体を見た友人は……この女を国に売れば、金になると企み、彼女を襲います。
レイヤ:彼女と親密になり、彼女との信頼関係を築き上げ、彼女に抱きつき…背後から…ナイフを突き刺します。
ハイド:そして、友人は彼女に向かってこう呟くのです
ノア:やっと見つけたよ。Like a jewel(ライカ ジュエル)
0:【間】
ノア:どこに行っても誰と居ても、優しい世界は優しいあなたに包まれてる
ハイド:……何言ってんだよ
ノア:私のお母さんが最後に言ってた言葉だよ
ハイド:それがどうしたっていうんだ?
ノア:ううん。私も、そんなお母さんのような生き方をしてみたいと思って
ハイド:……なればいいさ。なれるものならな
ノア:うん
ハイド:……もう少しフードを深く被ったらどうだ?
ノア:ああ、ごめん
ハイド:………
マリル:あれれ??また二人で村のハズレに居るの?また!また!二人で!
ハイド:茶化すなマリル。何の意味もない。ただ話していただけだ
ノア:そうだよ。もうそろそろお昼だしライチとヨイチが戻ってくる頃だと思って
マリル:えー!せーっかくウチが二人のラブラブタイムを邪魔してあげようと思ったのに。あの二人うるさいから嫌いなのよね
ノア:そう言わないであげてよ。賑やかでいいじゃん
ライチ:おぉーーい!!食料持ってきたぞー!
ヨイチ:おぉーーい!!水も持ってきたぞー!
マリル:出たわね、やかましい兄弟
ライチ:おー!マリルじゃねーか!相変わらずチビだなー!
マリル:ウチの頭を触るんじゃないよ!
ヨイチ:なんでだよー!ライチ、こいつ丸めてドッヂボールでもしねーか?
ライチ:さんせー!やるぞやるぞー!
ラナ:やめなさい!あんた達!
ライチ:いで!(同時に)
ヨイチ:いだっ!(同時に)
0:ラナはライチとヨイチにゲンコツをする
ラナ:女の子いじめるなんてありえないんだけど?次やったらぶっ殺すわよ?
ライチ:こ、殺すだってよ…村で反乱が起こるってことか?
ヨイチ:望むところだ!えぇーい!覚悟!
ラナ:ふん!!
0:ライチ、ヨイチ同時に
ライチ:ボギャアアアア!!
ヨイチ:ボギャアアアア!!
マリル:すっごーい!二人がかりでもラナが勝つんだね!ゴリラ女だー!
ラナ:仕舞いにはあんたも殴るわよ?
マリル:あれ?
ノア:…あはっ。ラナは優しいね
ラナ:はあ?ノアほどじゃないっての
ノア:あははっ
ハイド:……
レイヤ:よし、ニコル、ここに線を引いてくれ
ニコル:はい
レイヤ:これで、持ち上げてっと!
ニコル:完成、ですね?
レイヤ:ああ。ありがとう
ライチ:お?何作ってんだ?
ヨイチ:なんか変な匂いするな
レイヤ:ああ、これはアンデリールって言われる魔よけの道具さ
ラナ:なんで魔よけなんか?
レイヤ:深い意味は無いさ。この村は僕ら合わせて8人。みんなで健康で、平和に過ごせることが大事だと思ってね
ハイド:……魔よけなんかしなくても平和に過ごせるだろ
レイヤ:……じゃあ君は何があっても僕に頼らないで欲しいな
ハイド:……お前の呪いを解いたのは俺だろ。こっちのセリフだ
ニコル:ふ、二人とも!もうそろそろご飯だからみんなで作りますよ?ね?
レイヤ:………
ハイド:………
マリル:ニコルも魔よけなんて信じてるのー?
ニコル:い、いや?そういう訳じゃないですけど、なんか効果があれば嬉しいなーっと
ラナ:逆に物騒じゃない?まるで…魔物か何かが来るって言ってるようなもんじゃない?
レイヤ:誰もそんなこと言ってないだろ!
ノア:いいよ。置いといても。レイヤが良心でやってくれたんだから皆でお祈りしようよ。それに…あんなことがあった後だしね……
ライチ:よーし!魔よけに聞く言葉ー!あーーめん!!
ヨイチ:そーーめん!!
ラナ:縁起悪いことすな!
マリル:やーい!バカコンビー!怒られてやんのー!
ライチ:なんだとー!おい!ヨイチ!こいつを平たく伸ばして天日干ししようぜ!
ヨイチ:ああそうだな!干物にしてやろうぜ!
マリル:ぎゃあああ!離して!ツインバカ!
ラナ:はあ。あの三人は相変わらずね
ニコル:そろそろご飯作りますね。今日はレイヤの好きな物入れますから
レイヤ:別に気を使わなくてもいい
ノア:あ、レイヤ、どこ行くの?
レイヤ:ちょっと散歩
ノア:そう?ご飯も近いしすぐ戻るんだよ?
レイヤ:わかってる
0:レイヤは村を出る
レイヤ:…………はあ。
レイヤ:(M)僕は…ずっと…ずっとノアを見ていた
レイヤ:………この村は…僕にとっては寒すぎる
0:村では
ハイド:………
ノア:どうしたの?ハイド
ハイド:いや、なんでもない
ノア:レイヤのことで何か悩んでる?
ハイド:………まあ、あいつは俺にはよくわからん
ノア:大丈夫だよ。あの魔よけも特に意味は無いだろうし
ハイド:……お前の…その体のことかも知れないだろ?
ノア:……どうして?それなら魔よけの効果で平和になれるんじゃない
ハイド:あんなもので平和になれたら…誰も苦労はしないだろ
ノア:……祈るだけでも、損はしないよ
ハイド:…………
0:レイヤも戻り、8人は食事をする
マリル:ねえー。ラナー。今日はラナの家で寝てもいいー?
ラナ:あんたまだ他の人の家で寝てるの?いい加減一人で寝れるようになりなさい
マリル:いいじゃーん!ケチ!ブス!
ラナ:誰がブスだー!こんのぉ〜!
マリル:うわぁー!やめてー!ブスが移るー!
レイヤ:騒がしいぞ。食事中くらい静かにしろ。行儀が悪い
ラナ:あ、うん。ごめん
マリル:相変わらずつまらない男だね〜レイヤは。今日はレイヤの家で寝ようかな
ライチ:え!レイヤの家!?俺も行きたいぞ!
ヨイチ:えー!じゃあ俺もー!
レイヤ:僕の家に来たって何も無いぞ?
マリル:寝るだけだよぉー!
レイヤ:……まあ別にいいけど
ライチ:いえーい!
ヨイチ:レイヤの家だー!
マリル:あんたらは来なくていいよ!ばっちぃ!
ノア:あはは。みんな仲良しで安心するね
ラナ:ほんとにこんなんでいいのかしら?
ノア:うん。みんなが優しい世界に包まれるように、私は見守ってるからね
ラナ:何よそれ
0:食事が終わる
マリル:よーし!レイヤの家に集合ねー!
ライチ:おーう!
ヨイチ:やったぜー!
レイヤ:ごちそうさま、ニコル
ニコル:はい。お皿は置いといてください
レイヤ:ありがとう。じゃあ、僕は家に戻るから…
ラナ:んもう。相変わらずあの3人は子供ね
ノア:でも、レイヤが誰かを家にあげるなんて珍しいね。きっと初めてじゃない?
ラナ:確かにそうね。人を受け入れる姿勢はあるみたいで安心したわ
ニコル:………
ラナ:まあ何はともあれ、この村に来てから6ヶ月は経ってるし、何事も無くここまでやってこれたのもノアのおかげよね。ありがとう
ノア:わ、私は何もしてないよ?
ラナ:何言ってんの。この村を買い取ってくれたのはノアでしょ?
ノア:そうだけど、みんなが色々手伝ってくれるからこの村も平和なんだよ
ラナ:ま、そういうことにしといてあげる。はあ。夜風が気持ちいいわ。少し散歩でもしない?ノア
ノア:うん!いいよ
ラナ:じゃあね、ハイド、ニコル
ニコル:い、いってらっしゃい……
0:ノアとラナは外に出る
ニコル:……行っちゃいましたね。二人とも
ハイド:ああ。そうだな
ニコル:夜は寒いですね
ハイド:そうか?
ニコル:そう思わないですか?
ハイド:俺は何ともない。…ニコルがさっきから震えてるのは寒さのせいか?
ニコル:……あ、はい。そうかも
ハイド:ならもう家に戻れ。風邪引くぞ
ニコル:ありがとうございます。でも大丈夫ですよ
ハイド:ああ、ならいいけど
ニコル:この村での生活もまだ慣れないですね
ハイド:そうだな。俺もレイヤとあまり交流は出来てないし、上手くいかないことばかりだ
ニコル:ハイドはレイヤのこと苦手だったりしますか?
ハイド:そんなことはない。……でも、なんだろうな。俺はあいつとはどこか合わない気がするんだ
ニコル:……どうして?
ハイド:……わからない。…でもこれだけは言える。俺はそれでもレイヤを仲間だと思っている
ニコル:………そうですか。よかったです
ハイド:んじゃあ。俺は家に戻るから
ニコル:はい。おやすみなさい
0:ハイドは自分の家に戻る
ニコル:……私は一体…何をしてるんだろ?
ニコル:ハイドはきっといい人でみんなもきっといい人で、ずっと一緒に居られる大切な存在なのに……
ニコル:きっと……みんなはいい人のはずなのに……
ニコル:私の震えは…止まらない
0:【間】
0:レイヤの家では……
マリル:うわー!紙の匂いくさっ!!本がいっぱいで頭痛くなっちゃうよ
ライチ:ここもあそこも全部本だ!どんだけあんだよー!
ヨイチ:気味が悪いぞ!レイヤ!
レイヤ:だから僕の家には何も無いって言っただろ?
ライチ:何かもっと面白いの無いのかよー!
レイヤ:面白いのなんてあるわけないだろ。僕はいつも勉強で忙しいんだ
ヨイチ:勉強ばっかなんだなー
マリル:死んだお父さんが言ってたよー?勉強はバカがやることだぁー!って
レイヤ:だとしたらマリルのお父さんが間違っている
マリル:なんだってー!?お父さんをバカにしないでよ!
レイヤ:そんなつもりは無いさ。でも、勉強は必要だよ、マリル
マリル:えー?そうなの?
レイヤ:何か一つの答えを求める事に執着をすること。これが勉強をしてわかった事だ
ライチ:意味がわかんねーよ
ヨイチ:そうだそうだ!わかんねーよ!
レイヤ:じゃあ、君たちに面白い話をしてあげよう
マリル:やったー!さっきからつまんないと思ってたから面白い話してよー!
レイヤ:この本を知ってるかい?
ライチ:きったねぇ本だなー!
ヨイチ:違うだろ!腐った本だろ!
レイヤ:はあ。知らないなら教えてあげるよ。この本のタイトルは……
レイヤ:Like a jewel(ライカ ジュエル)
ライチ:らいか?
ヨイチ:じゅえる??
マリル:じゅえるってなにー?
レイヤ:ジュエルとは宝石のことだ。ルビー。オパール。サファイア。ダイヤモンド。これくらいは聞いたことあるだろ?
ライチ:ほえー。なんか高い金になるやつだろー?
レイヤ:その通りさ。この本はまさに宝石が舞台となっている。
ヨイチ:どんな話なんだー?
レイヤ:この話は……まるで宝石のような話だ
0:【間】
0:ノアとラナは夜道を散歩していた
ノア:外は涼しいね
ラナ:ほんとね。寒くはないかしら?
ノア:大丈夫だよ。ありがと
ラナ:この場所、覚えてる?村から少し離れた水面が綺麗な湖だよ
ノア:もちろんだよ。ラナと初めて出会った場所でしょ?
ラナ:そう。この村から遠く離れた国で、私は母と弟を亡くした。もちろん、一人で生きていけるくらいには私もしっかり出来るようになったけどね
ラナ:ノアに出会ってなかったらこんなに自由にはなれなかった。この涼しくて気持ちいい空気を感じられるのもノアのおかげよ
ノア:そんなこと____
ラナ:そんな事ないってもう言わないで。いい加減怒るわよ?
ノア:……うふっ。じゃあ、ありがと。嬉しいよ
ラナ:ノア
ノア:なに?
ラナ:抱きしめていいかしら?
ノア:うん。いいよ
0:ラナはノアを抱きしめる
ラナ:暖かいわ。
ノア:うん。あったかいね。
ラナ:ノアに出会えて、本当によかった
ノア:私も、ラナとみんなに会えてよかったよ
ラナ:…………ええ、そうね
0:【間】
0:レイヤの家では
マリル:あ、あわわわ!そ、それで!?
レイヤ:その女の子は、身体中に宝石が埋め込まれる呪いに掛けられたんだ
ライチ:ぎょえーー!!怖いわ!
ヨイチ:一周まわってエロいわ!
レイヤ:その身体を見た友人は……この女を国に売れば、金になると企み、彼女を襲うんだ。彼女と仲良くなり、彼女との信頼関係を築き上げて、彼女に抱きつき…背後から…ナイフを突き刺す
マリル:うわああー!ストーップ!寝れなくなっちゃうよ!バカ!謝りなさい!
レイヤ:君たちにはこの話は早すぎたかな?
ライチ:こえーんだよ!なんて話なんだ!
ヨイチ:そうだそうだ!こんな話嘘に決まってる!
レイヤ:嘘ではないさ。この話と、この呪いは実際に存在する。……そして、彼女の身体を売ろうとするものは必ず現れるということだ
0:場面転換。ノアとラナは……
ラナ:………ノア
ノア:ん?
ラナ:このままずっと抱きしめててもいい?
ノア:……うん。いいよ。でもさ……よっ!
ラナ:………うわっ!
0:ノアはラナを押し倒す
ラナ:な、なに?
ノア:あははっ。見える?この景色
ラナ:………
ノア:星が綺麗でしょ
ラナ:………ほんとだ
ノア:目の前にある景色がこんなにも輝いてる。まるで宝石みたいだよね
ラナ:……そうだね!
ノア:ラナとこの景色を見られたことは私の人生の最高の思い出だよ。だから、ここに連れてってくれてありがとう。
ラナ:…………
ノア:ラナ?どうしたの?
ラナ:い、いや!何でもないよ。そろそろ村に戻ろっか
ノア:うん。そうだね
0:ノアとラナは村に戻る
ノア:じゃあ、おやすみ。ラナ
ラナ:うん、おやすみ……
ノア:……ラナ?
ラナ:ん?
ノア:……何でもない。おやすみ
ラナ:うん……おやすみ
0:そしてある日のこと
マリル:あんただぁー!カチコチの宝石ー!
ライチ:いでー!いでーよ!俺の鼻だ!
ヨイチ:おいチビ!ライチの鼻をもぎ取るな!
マリル:この鼻をもぎ取って売りつけるんだー!
ハイド:何してんだ?お前ら
マリル:あー!出たわねハイド。あんたの鼻も頂くわよ!えい!
ハイド:んっ。なんだよ急に
ライチ:こいつ、本を読んで影響されたかわかんねーけど、人の事を売ろうとしてるんだよ
ハイド:……なんだと?そんなこと誰から教わったんだ
ヨイチ:レイヤから
ハイド:………あいつが?なんかの冗談だろ?
マリル:冗談っていうよりは本の話を聞いただけだからね。人を売りつけて金儲けをする話
ハイド:……マリル。人を売りつけるなんて言葉を使うのはやめろ。
マリル:なんでー?お金があれば世界が広がるんだってレイヤが言ってたよ?
ハイド:だからと言って、人を売りつけて金儲けする考えは間違ってる
マリル:えー!なんでよー!知らないよそんなの!
ハイド:お前の父親が、人に売られて死んでいった。なんて言ったらお前はどう思うんだ?
マリル:………え?
ライチ:お、おい!ハイド!そんな言い方するなよ!
ヨイチ:そーだそーだ!大人気ないぞ!
ハイド:例え話だ。お前らも気を付けろ。むやみやたらに物騒な事を言うな。村じゃなきゃどうなるかわからないぞ
ヨイチ:む、村以外じゃ言わねーよ!
ハイド:村でも言うな。誰もよく思わないだろ
マリル:ねえ。お父さんは……売られたの?
ハイド:そうは言ってない。逆の立場になって考えてみろと言ってるんだ。売られた人の家族はどう思う?大切に思っていた人が金に変えられて……喜べるか?
マリル:喜べるわけないでしょ〜!
ハイド:なら人を売りつけて金儲けなんて言うのはやめろ
マリル:むぅ〜。ごめんなさいでした〜
ハイド:……まあ。俺も悪かった
0:場面転換、調理場にて
ニコル:ねえ、ノア
ノア:ん?どうしたの?
ニコル:今日の晩御飯は何にしようかなって思ってるんですけど、何か食べたいものはありますか?
ノア:えぇ!私の好きな食べ物でいいの?
ニコル:はい。何がいいですか?
ノア:じゃあ……
ラナ:あら、今日は調理場に居たのね
ノア:あ、ラナ
ラナ:今日は何を作るのかしら?ニコル
ニコル:あ、はい。ノアの好きな物にしようかなーと
ラナ:あら、それなら私も手伝ってもいいかしら?
ニコル:あ、ああ。ありがとうございます
ノア:じゃあ私は食堂に行ってるね
ニコル:はい。じゃあまた後で
ラナ:じゃあ作っちゃいましょう
ニコル:はい
ラナ:ノアの好きな物は何なの?
ニコル:確かチーズが沢山乗ったドリアが好きだったはずです
ラナ:いいわね。なら早速作りましょ?
ニコル:はい……
ラナ:ニコルの料理は私も好きよ
ニコル:ほんとですか?ありがとうございます
ラナ:私たちはさ、元々親や兄弟が居て、大切な人達に囲まれていたはず
ニコル:はい。そうですね
ラナ:ニコルは、どうしてこの村に……ノアに出会ったの?
ニコル:……そうですね、私は……私は…
ラナ:ん?
ニコル:いえ、なんでもないです。ノアに出会ったのはノアがこの村を買う少し前ですよ。1番最後にノアに出会いました
ラナ:そうなんだ。どこで出会ったか聞いてもいい?
ニコル:……水面が綺麗な…湖で
ラナ:え、私と同じじゃん。偶然?
ニコル:そ、そうかもですね
ラナ:ニコルは……テンプルは使えるの?
ニコル:……テンプル?
ラナ:うん。生まれつき特別な力が与えられる不思議な…魔法みたいなものよ
ニコル:……そんなのないです。ハイドがレイヤの呪いを解いたのもテンプルなんですよね?
ラナ:そう。あの高熱は病気なんかじゃなかったんだ。悪魔のような…そんな呪いが存在するし、それを解くための力だって存在する
ニコル:すごいですね。でも…私はテンプルは使えないですよ
ラナ:そっか……ならいいけど
ニコル:……はい
0:場面転換。食堂にて
マリル:今日はチーズドリアだー!ヨイチのチーズ分けてよー
ヨイチ:あげねーよ!マルチーズが!
マリル:マルチーズって犬でしょ!
ライチ:俺のチーズもあげねーからな!?
マリル:分けてよー!
ノア:ほら、マリル、私のチーズあげるよ
マリル:えー。いいの?
ノア:うん!
マリル:ありがとー!ウチはあんたのことだけは好きよ
ノア:うふっ。みんなにもそう言えるといいね
ライチ:レイヤー!今日も本の話してくれよー!
ヨイチ:そうだそうだ!またワクワクさせろー!
レイヤ:別に構わないが
マリル:やったー!
ハイド:……レイヤ、ひとつ言っておくことがある
レイヤ:なんだ?
ハイド:こいつら3人に変なことを教え込むのはやめろ
レイヤ:変なこと?そんなつもりはないが
ハイド:とぼけるな。3人とも、国に人を売りつける事を知っていた。それはお前から教わったと言っていたぞ。そんな物騒なことを教えるな
レイヤ:そんなの、僕の勝手じゃないか。人の人生でこういったこともありえる。ただそんな話をしただけだ
ハイド:なら、そのありえる事を無くすために何が出来るかまで教えておけ。それを肯定するようなことは言うな
レイヤ:ごちゃごちゃうるさいな。それに肯定して何が悪い?
ハイド:……なんだと?
ラナ:ちょっと、二人とも?食事の時まで喧嘩しないでもらえる?
レイヤ:………
ニコル:………
0:食事が終わる
ニコル:………ハイド。ちょっといいですか?
ハイド:どうした?
ニコル:はい。ちょっとだけ
0:ハイドとニコルは村のはずれに行く
ラナ:じゃあ、ノアと私はまた夜の散歩ね
ノア:うん!また行こっか
0:ノアとラナも村から外れる
レイヤ:……ふぅ。さて、君らはどうする?本の話でもする?
ライチ:おう!聞かせろー!
ヨイチ:俺にも聞かせろー!
マリル:ウチももっと勉強するわよー!
レイヤ:賢いやつらだな。まあいいだろう。Like a jewel(ライカ ジュエル)の続きでもしてやろう
ライチ:やったぜー!
ヨイチ:腕が鳴るぜー!
レイヤ:そうだな。身体中から宝石が埋め込まれる呪いを掛けられるが、その呪いは人から人に伝染させる事が出来るんだ
マリル:ほえー。どうやってー?
レイヤ:呪われた人間の血を飲む事だ
ライチ:血を!?
ヨイチ:飲む!?
マリル:ぎょえーー!!恐ろしい!!
レイヤ:そうすることによって呪いは伝染するんだ。つまり、Like a jewelの血を飲む事で、そいつの身体にも宝石が埋め込まれるようになる。
レイヤ:若い奴らの方が宝石は沢山埋め込まれるらしい。だから、若い奴らにその呪いを伝染させれば、より金になるということだ。
ライチ:へぇー。夢のような話だな!
レイヤ:ああ。そうだね
ヨイチ:まあ、ハイドにそういう物騒なこと言うなって言われたしな
レイヤ:ああ、あいつは真面目だからな
マリル:でも!ウチのお父さんが売られたって考えたら酷い話だしね!もうそういうこと考えるのはやめるのよ!バカ男たち!
レイヤ:君たちは賢いはずなのにまだわからないのかい?
ヨイチ:ん?
マリル:何か話の続きでもあるの?
レイヤ:ああ、そうだね。この村がより裕福になるための話さ
ライチ:なんだーそれ?
レイヤ:君たちが…Like a jewelの血を飲むこと…だよ
0:場面転換
ハイド:ニコル、どうした?
ニコル:あの、ハイド……聞いて欲しいことがあるんですけど
ハイド:なんだ?
ニコル:……ハイドはテンプルを持ってますよね?
ハイド:……ああ。そうだな。ある意味これも呪いのようなものだ
ニコル:……呪いを解く力があるなら……ハイドにも協力して欲しいことがあります……
ハイド:………
ニコル:実は…私もテンプルを持ってるんです
ハイド:っ!……そうだったのか?なぜ今まで黙っていた?
ニコル:黙っててごめんなさい。でも、ノアとの約束だったから
ハイド:何の約束だ?
ニコル:これから先、何があっても、どんな事があっても……私のテンプルと……ノアの呪いについては…誰にも内緒ってこと
ハイド:なら何故それを俺に言う?
ニコル:ノアの姿を知ってる人は……ハイドだけだって私も知っていますから……
ハイド:………何故…それを……?
ニコル:私が持ったテンプルは、遠くの方まで声が聞こえること。だから……どうしても聞こえてしまうんです……。
ハイド:……一体…何が聞こえると言うんだ?
ニコル:……ノアの正体を知っている人が……ノアの事を襲おうとしていること……
ハイド:………っ!
ニコル:だから…ハイド……私一人じゃもう耐えられないです…!……ノアを…助けてください……
ハイド:………ニコル…動けるか?
ニコル:……はい。大丈夫です
ハイド:ノアの所に向かってくれ
ニコル:……ありがとうございます
ハイド:礼を言うのは俺の方だ…ありがとう
0:ハイドは走ってある場所に向かう
0:場面転換。ノアとラナ…
ノア:今日も空が綺麗だね
ラナ:そうね。やっとこの村に慣れてきたし、こんな風に息抜きするのもいいわね
ノア:そうだね。今度はみんなで花火とかしない?きっと楽しいよ
ラナ:いいわね!楽しそう
ノア:……ラナも、一緒に楽しもうね
ラナ:……どうかしたの?
ノア:ううん。ラナが少し無理してるように見えるからさ
ラナ:な、何も無理はしてないわよ。ノアの勘違いでしょ?
ノア:それならいいけど
ラナ:………ノア
ノア:ん?
ラナ:ただ一人の家族のために……自分の人生を賭けるなんて…バカげてるかしら?
ノア:……どうして?
ラナ:ノアならどう思うかなって
ノア:……素敵な事だと思うよ
ラナ:………
ノア:私にも…お母さんが居たの。たった一人の…かけがえのない…大好きだったお母さんが
ラナ:………そうだったのね
ノア:最後にお母さんに言われた言葉を私は今でも覚えてる
ラナ:なんて言われたの?
ノア:どこに行っても誰と居ても、優しい世界は優しいあなたに包まれてる
ラナ:………
ノア:優しい世界は、優しい人で溢れてるんだよ。だから私もみんなに優しくなれるような人になりたい。
ノア:お母さんのその言葉を胸に…私も生きているから……。家族のために自分の人生を賭けることは素敵な事だよ
ラナ:………そっか…
ノア:……ラナ?寒い?
ラナ:あ、ああ。確かに少し寒いわ
ノア:冷えるかな?私はもう慣れちゃった
ラナ:なら、その服…貸して貰える?
ノア:………え?
ラナ:ノアが寒くないなら…貸してほしい
ノア:……ああ、ごめん。このフードは……
ラナ:このフードが……脱げない理由があるのかしら?
ノア:………それは
ラナ:……ノア…私が望む世界はこうよ
ノア:………?
ラナ:たった一人の家族のために…どんな手段を使ってでもそいつを幸せにしたい。一人にさせたくない。だから……ごめんね…ノア
ノア:……っ!!
0:ラナはノアのフードを勢いよく取る
ラナ:額に綺麗なダイヤモンド……
ノア:……何をするつもり?
ラナ:やっと見つけたわよ……Like a jewel(ライカ ジュエル)
0:場面転換。ライチ、ヨイチ、マリルは……
ライチ:は、離して……レイヤ
ヨイチ:な、何してんだよレイヤ!やめてくれよ!
マリル:なんでライチの顔を掴んでるのよ!離しなさい!
レイヤ:ガキは黙ってろ。お前ら3人で何が出来るんだ?
ライチ:うっ……うぐぅぅ
ヨイチ:ライチ!くっそー!離せー!
レイヤ:っ!!
ヨイチ:うぐぅぅー!!
0:レイヤはヨイチのあばらを蹴り飛ばす
マリル:ヨイチー!……レイヤ……どうしてこんなことするの!?
レイヤ:さっきも言っただろ?何度も説明させるな。僕は金が欲しいだけだ。お前らにLike a jewelの血を飲ませてお前らを売り飛ばす。ただそれだけだ!
マリル:やめてってば!あんたね!売り飛ばされた人の気持ち考えたことあるの!?
レイヤ:ああ?そんなの当たり前だ。痛いほどわかる……っ!
0:レイヤはライチの顔を離し地面に叩きつける
ライチ:ぐはっ!……はあ、はあ
ヨイチ:ライチ!大丈夫?
ライチ:う、うん……でも。こえーよ。……震えて足が動かねぇ
ヨイチ:弱音吐くな!俺だってこえーよ!
ライチ:ああ…俺たちは……どうなるんだろうな……
マリル:なんであんたにその気持ちがわかるのよ…
レイヤ:……ああ。僕はな……母親に売られたからだ。
マリル:………え?
レイヤ:お前らのようにただ平和に過ごして、たまたま親が死んだ、たまたま生き別れになった。そんな不運だけの人生じゃねーんだよ。
レイヤ:僕は人を恨んで…!人が憎くて…!人を殺したいと思い続けてきた!奴隷のような毎日を過ごしていたんだ。だから人が金になっても今更何も思わない!
ライチ:………でも!この村には宝石が埋め込まれてる人なんて居ないだろ!
レイヤ:……居るだろう…いつもフードを被って…顔を隠している奴が…一人
ヨイチ:………え?
マリル:……ノアが…?そんな
レイヤ:そろそろ片付いている頃だろう。後はお前らを……
ハイド:そこまでにしとけ
レイヤ:………っ!?
ライチ:ハイド!
ヨイチ:よ、よかった!ハイドが来た!
レイヤ:何しに来た?
ハイド:お前こそ…何をしてるんだ?
レイヤ:見てわかるだろう?教育をしてるんだ
ハイド:ふざけんな…!ライチが傷だらけじゃねぇーか!
レイヤ:ああ。逆らったらこうなるってことも教えてやらないといけないからな。
ハイド:っ!!
レイヤ:くっ!!
0:ハイドはレイヤの頬に拳を思い切り振り下ろす
ハイド:お前が呪いにかかった時に…約束したはずだ。この村の為に働いてくれと
レイヤ:ああ。だから少しでも稼いだ金をこの村に寄付しようとしていたさ
ハイド:人を売った金で!この村を汚すな!!
レイヤ:バカが!金なんかに美学もクソもないだろ!お前が思ってるよりもこの世は腐れ果ててるんだよ!
マリル:ハイド!危ない!
ハイド:っ!!
0:レイヤはハイドにナイフを振りかざしたが、それをハイドはかわす
レイヤ:……外したか…
ハイド:いいや、かすったよ
レイヤ:ふんっ。お前のことは…いつも気に食わないと思っていた。常に正義ぶっていてムカついていたさ。だが……お前は何故僕を助けた?
ハイド:………同じ…人だからだ
レイヤ:ふざけるな……僕とお前とでは住んでいた世界が違うだろ!
ハイド:同じだ!!
レイヤ:………
ハイド:金にもならない……俺はただ捨てられただけだが……両親からは見放された。……テンプルのせいでな
レイヤ:なら何故…お前は誰にでも優しく出来るんだ?
ハイド:………ノアに、出会ったからだ
レイヤ:………っ
ハイド:誰にでも優しいノアに出会ったから…俺はお前を助けた。ノアならそうすると思ったから。ただそれだけだ
レイヤ:………ああ。見事なまでの綺麗事だな。またムカついてきたよ。どうにかして君を殺すしかないようだね!
マリル:やーっ!!
レイヤ:……なっ!
ハイド:マリル!危ないぞ!
ライチ:おりゃー!!
ヨイチ:でりゃーー!!
レイヤ:は、離せ!!やめろ!!
ハイド:………ったく。お前らは。……レイヤ。最後に言う。俺とお前は分かり合えないんだな?
レイヤ:……ああ。お前の考えなんて…反吐が出る
ハイド:なら覚悟を決めろ
ハイド:はあっ!!!
0:ハイドはレイヤの顎を力強く殴りつけた
レイヤ:…………っ
ハイド:……お前とは…仲良くなりたかったよ
0:場面転換。ノアとラナ…
ノア:ラナ……
ラナ:……離して
0:ノアはラナを抱きしめていた
ノア:やだよ
ラナ:離して!!私はあんたを…!
ノア:襲うなら……好きにして
ラナ:………何言ってるのよ
ノア:私は…大丈夫だから。ラナのしたいようにしてもいいよ
ラナ:………ふざけないで!自分の置かれてる状況がわからないの!?
ノア:わかってるよ。……でも。それでラナが報われるなら…助けてあげたい
ラナ:……うわぁぁー!!
ノア:………くっ
0:ラナはノアの肩にナイフを突き刺す
ラナ:はあ…はあ……痛いでしょ……?これでもあんたは怖くないの?
ノア:痛くも…ない
ラナ:嘘つかないで!!……痛くないわけないでしょ?
ノア:……ラナだって……痛いでしょ?
ラナ:………あんた…なんなのよ!!
ノア:ラナ……辛いことがあるんだよね?
ラナ:…………っ
ノア:何があったのかわからないけど……ラナは優しいね。誰かのために…自分の心を痛めて…誰かを助けようとしてるんだもん
ラナ:………知ったようなこと言わないで
ノア:それに比べたら…私は痛くないよ。……もう…痛みなんて忘れちゃったから
0:ノアはラナから離れる
ラナ:………っ!ノア…その顔は…
ノア:そう。私がLike a jewel。(ライカ ジュエル)もう何も価値の無い…輝きを失った宝石だよ
ラナ:………っ。…ノア……。……ごめんなさい
ノア:どうして謝るの?
ラナ:………ごめんなさい…ごめんなさい…!
ノア:泣かないで……ラナ
ニコル:ノアー!
ラナ:………っ!…ニコル
ノア:……ニコル。来てくれたんだ
ニコル:………ラナ
ラナ:………もう…私は……この村には居られないわよね…
ニコル:……ラナ。私……本当は、テンプルを持ってるんです
ラナ:………そうだったのね。
ニコル:はい。遠くの方まで声が聞こえる。ただそれだけの力です。だから……ラナとレイヤが兄弟だってことも知ってました
ラナ:…………そんなことまで
ノア:だから、ニコルから全部聞いたんだよ。
ラナ:………何を?
ノア:ラナと……レイヤの事を
0:半年前の事
ラナ:………レイヤ。ノアって子で間違いないのね?
レイヤ:ああ。恐らく。こんなにも黒い呪いが見えるのは間違いない。あいつがLike a jewelだ
ラナ:あんたのテンプルも便利ね。呪いを察知する力があるなんて
レイヤ:まあな。だからこそ、ノアを見つけることが出来た……。早く近づかないといけないな。
ラナ:何をするつもり?
レイヤ:呪いは人に伝染するんだ。呪われてる人の血を飲めば、同じ呪いにかかるんだと。
ラナ:……あんた…まさか
レイヤ:ああ。あわよくばノアごとだが…あいつの血を誰かに飲ませて……身体中が宝石になったそいつを国に売るんだ。そうすれば僕もラナも金持ちになれるだろ?
ラナ:……でも…そんなことしたら……
レイヤ:今更なにを怖気付いてる?僕達は元々孤独だ。親がなんだ?家族がなんだ?人は生まれた時から地獄のはじまりなんだよ。誰が犠牲になろうと構わないだろう
ラナ:レイヤは……そうしたいんだね?
レイヤ:ああ。だから…ラナにも協力して欲しい
ラナ:はあ。わかったわよ。……でも、これだけは言っておくわ、レイヤ
レイヤ:………?
ラナ:あんたは孤独じゃないわ。私が居るんだもの
レイヤ:………そうだな
0:ノアとニコルは村のはずれにある。湖
ニコル:………どうしよう……どうしよう…
ノア:………どうかしたの?
ニコル:………あ。……あなたは…
ノア:ごめん。ちょっと心配になっちゃって。大丈夫?
ニコル:ノアさん……ですか?
ノア:うん。ノアだけど
ニコル:逃げてください!
ノア:……え?どうして?
ニコル:あなたの姿……今どうなってるんですか?
ノア:お、落ち着いて!何が何だかわかんないよ!
ニコル:……すみません。
ノア:私がどうかしたの?
ニコル:……あなたは…ある二人組に…命を狙われています
ノア:………私が?
ニコル:だから…逃げてください
ノア:……ありがとう。…でも、私はこのままでいいよ
ニコル:……どうして?あなたの姿だって…知られているんですよ?
ノア:うん。別にいいよ。私はLike a jewel。私の宝石が欲しいのなら……違う人がいいかもね
0:ノアはフードを外す
ニコル:……あなた…その姿……
ノア:私の呪いは人に伝染してしまう。……でも。そんなことがあったとしても、私の呪いを解いてくれる人がもうそばに居るから、安心して?
ニコル:……でも
ノア:優しい世界は……優しい人たちで溢れてる。きっとその人達も、自分で抱えきれないものがあって、誰かを騙して、何かを壊さないと自分の重荷が軽くならないんだよ
ノア:それがたまたま私だっただけ。大丈夫だよ。その重荷が軽くなった時…きっと笑える日々が続いて…人は優しくなれるんだから
ニコル:………ノア…さん
ノア:だから…私はその二人を、私の村に迎え入れる
ニコル:そ、そんな!
ノア:大丈夫。……大丈夫だから
ニコル:……なら、私も行きます
ノア:……あなたも?
ニコル:だから……約束してください。この事は二人だけの秘密だって。あなたのその姿と…私のテンプルの事も
ノア:うん。だからあなたも、二人に何があっても責めたりはしないでね
ニコル:………それは…わかりませんよ
0:場面転換_____現在では
ラナ:……じゃあ……ノアは…
ノア:うん。最初から全部知ってたよ。ラナとレイヤが兄弟だったってことも。私を襲おうとしていたことも
ラナ:……じゃあ…どうして……?
ノア:こんなにも優しいラナを…助けたいと思ったから
ラナ:………ノア…ごめんなさい
ノア:いいんだよ。レイヤのために…頑張ってたんだよね
ラナ:………うっ…ううぅぅー。
ノア:泣か…ないで……ラナ
0:ノアは力が抜け、倒れる
ラナ:………ノア?
ノア:………っ
ラナ:ノア?ノア!?
ニコル:……肩の出血が…止まってないからですよ
ラナ:……っ!
ニコル:ラナ!?何してるんですか!?
0:ラナはノアの傷口に口を付けて
ラナ:ごほっ!ごほっ!
0:血を吐き出す
ニコル:ラナ…!そんなことしたら……
ラナ:ノアの……血を止めなきゃ…!早くしなきゃ…!
0:ラナはまたノアの傷口に口を付ける
ニコル:やめてください!ラナ!
ラナ:ごほっ!ごほっ!離して…ニコル。私がやってしまった事だから
ニコル:でも!ノアの血を吸ったら……あなたも……!
ラナ:……それでも…いい!
ニコル:……ラナ!
0:場面転換____ハイドはレイヤを縄で縛り付けていた
ハイド:覚悟は出来てるんだろうな?
レイヤ:………
マリル:うえーーーん!!怖かったよぉー!ハイドぉー!
ライチ:お、俺は怖くなかった!
ヨイチ:嘘つけ!ライチはビビってた!
レイヤ:……もう、どうにでもしてくれ
ハイド:………俺が決めることでもないからな。後はノアに任せる
ライチ:そ、そういえば…ノアがLike a jewel(ライカ ジュエル)だったって本当かよ!?
ヨイチ:そうだよ!ハイドは何か知ってるのか?
ハイド:……ああ。ノアの身体のことは知っていた。だから俺もノアをずっと見守っていたんだよ
マリル:なーんだ。好きでイチャコラしてたわけじゃなかったんだー。つまんないのー
レイヤ:なら…教えろ。ハイド。ノアはどうして村を買えるほどの大金を持っていたんだ?
ハイド:………それは
ニコル:ハイドー!
ハイド:……ニコル…。
ライチ:ノア!?なんで血だらけなんだよ!
ヨイチ:おおい!しっかりしろー!ノアー!
ニコル:ノアは気を失ってます。ここで安静にさせときますね
レイヤ:………ラナ
ラナ:………レイヤ
レイヤ:………なぜ、口に血が付いているんだ……?
ラナ:………ノアの血を…吸ったのよ
レイヤ:………なんだと…?
ハイド:………ラナ…お前、そんなことしたら
ラナ:ええ。わかってるわ…。でも……ノアにどうしても謝りたくて……ノアに助かって欲しくて……こうしたの
マリル:どうしてノアが血だらけなのー!ねえ!……ラナがやったの…?
ラナ:………ええ。そうよ
マリル:どうして!みんなどうしちゃったの!?みんな仲間だと思ってたのにー!
ライチ:そうだよ!ラナもレイヤも…何してんだよ!
ヨイチ:俺たち…もうバラバラになっちゃうの?
ニコル:……なりません。そうはさせないですよ
ハイド:……ラナ…お前もいずれ身体中に宝石が埋め込まれる。それでいいんだな?
ラナ:………うん。
レイヤ:……よくねーよ。ラナ、お前が宝石になるなんて許さないぞ!
ラナ:でも……ノアに償いが出来るなら…それでいいの
レイヤ:ふざけんな!どうしてノアに執着するんだよ!あいつは………
ラナ:ノアは……こんな状況でも私に優しいって言ってくれたの
レイヤ:……だからなんだってんだよ
ラナ:優しい世界は、優しいあなたで溢れてる。まさにノアのことなんだよ。ノアが優しいからみんながノアに優しくなれるんだよ。そんなノアを傷つけた私は……私は…
ライチ:俺は…こいつらを許せねーよ!
ハイド:……ライチ
ヨイチ:俺だって許せねー!
ライチ:ラナ!お前ノアの血を飲んだんだろ!?じゃあお前にも宝石が埋められるってことだ!
ヨイチ:ああ!そうだ!お前が国に売られろ!
ハイド:何言ってんだ、お前ら
ライチ:だって!許せないだろ!
ヨイチ:ノアをこんなに傷つけてこいつは生きて帰ってきたんだ!だったらこいつが国に売られるべきだよ!
マリル:やめなさいよ!あんたたち!
ライチ:なんでだよ!こいつはもう裏切り者だ!
ヨイチ:レイヤも裏切ったんだ!こいつも国に売ってやろうよ!
マリル:そんなの!ノアが望んでないよ!
ライチ:……でも!
ヨイチ:……納得出来ねー!
マリル:ハイドだって言ってたでしょ?。大切な人が金に変えられても喜べないって。ノアにとってラナは大事な人かもしれないんだよ!
ライチ:……でも…
ヨイチ:……そんなの…わかってるけど……
レイヤ:こんな状況でこんなこと言うのは間違ってる。それは承知の上だが…ハイド……ラナを助けてくれ…
ラナ:……レイヤ!?
レイヤ:ハイドのテンプルなら呪いを解くことが出来るはずだ。だから……ラナを助けてくれ!僕の……たった一人の…家族なんだ……。頼む!
ハイド:……それは…出来ない
レイヤ:………どうしても……僕たちが許せないか?
ハイド:違う。そうじゃない。ラナの呪いは解くことは出来ないんだ
レイヤ:……どうして?
ハイド:ノアの呪いは先天的なものなんだ。その呪いから伝染された呪いは解くことは出来ない。もっと言えば、解こうとすると呪われた人間が消えてしまうんだ。
ラナ:…………
ハイド:唯一……解く方法があるとしたら……先天的に掛かった人間の呪いを解くこと……
ライチ:なら!そうするしかねーな!
ヨイチ:ノアが助かる方法はそれだー!
ハイド:助かるなら最初からそうしてる
レイヤ:…………
ハイド:先天的に呪われた人間も……呪いを解こうとすると消えてしまうんだよ。……だから、ラナの呪いを解くことは…出来ない
ライチ:じ、じゃあ、ノアは呪われたままなのか?
ハイド:そう…だな
ヨイチ:………じゃあ、やっぱラナを!
マリル:やだよ
ラナ:……マリル?
マリル:ウチ……ラナのこと好きだもん。レイヤのことだって…。ウチ……みんなが幸せになれる方がいい
ライチ:バカか!そんな方法はもうねーよ!こいつらはノアを!
ヨイチ:そうだよ!レイヤなんか俺とライチを傷つけたんだ!無理に決まってる!
マリル:うるさいわね!じゃああんた達がどうにかしなさいよ!
ライチ:出来るか!んなこと!
ヨイチ:出来たら最初からやってるよ!
ハイド:……でも、ライチとヨイチの言う通りだ…。ノアがいる以上は、こいつらをこの村に置いとくわけにはいかない!
ニコル:でも、ノアはきっと寂しいと思いますよ?
ハイド:何度もこんな事態になったらどうするんだよ!
ラナ:じゃあ!……やっぱり私が売られるべきよ…
レイヤ:……何言ってんだよ!ラナ!
ラナ:もうそれしかないじゃない!!みんなが幸せになれる方法は!
ニコル:………ラナ…?額に……何か……?
ラナ:………え?
ハイド:………始まったか
ライチ:うわあー!ダイヤモンド!?
ヨイチ:ほんとに出て来るんだ!?初めて見た!
レイヤ:………くっそぉ!
ラナ:………ほら、やっぱり呪いは伝染するんだよ。やっぱり……私が国に売られて…そのお金でみんな幸せに暮らすべきだよ
マリル:そんなの嫌だよー!!
ライチ:泣き言なんて言うな!ラナがそう言うんだからそうするべきだよ!
ヨイチ:俺たちは……昔から仲良しだと思ってたけど……悲しいけど……そうするんだ
ニコル:みんな落ち着いてください!
マリル:落ち着いてられないよ!
ライチ:もう…わかんないよ!!
ヨイチ:どっちも助かる方法なんてないよ!
マリル:じゃあどうするのよ!
ラナ:もういいの!そうしないと私の気が済まない!だから!ノアのこと……。っ!?
0:後ろから人影が見えて、全員振り返る
ノア:…………みんな?
ハイド:…………ノア
ニコル:……ノア。動いちゃダメですよ
ノア:ううん。大丈夫
ハイド:………せめて座っとけ
ノア:ありがと
マリル:ノ、ノア?話聞こえてたの?
ノア:……何となく話は聞こえてきたよ
ラナ:………
ノア:………ラナ?……その額
ラナ:ううん。なんてことないよ
ノア:………ダメだよ、どうしてこんなことになったの?
ラナ:黙って聞いてて、ノア。私はあんたの呪いが伝染したの。だから…私がLike a jewelとして……国に売られるわ
ノア:……そんなの…ダメだよ
ラナ:呪いの伝染は私が勝手にやった事なの!あんたは口出ししないで!……今までごめんね
ノア:……わかった
ハイド:……ノア?
ノア:ラナもレイヤも。この村から出ていくのは好きにしてもいいよ。だから……すぐに出て行って
ラナ:………わかった。明日の朝には……出て行くわ
マリル:……ノア?本当にいいの?
ノア:……うん
レイヤ:……ラナ…とりあえず行くぞ。
ラナ:……うん
0:ラナとレイヤは家に戻る
ノア:………私も家に戻ってるね
ハイド:………ノア…。……安静にしてろよ?
ノア:……うん。わかってる
0:ノアも家に戻る
ライチ:……はは。これでよかったんだ
マリル:………何言ってんの…よくないよ
ヨイチ:ノアも…よく言ってくれたよ。あいつらはさっさと村から……
マリル:いい加減にしてよ!あんた達、最低よ!
ハイド:………マリル…やめとけ。こいつらの表情を見ても、それを言えるか?
ライチ:……うぅぅ……うううぅぅ……ラナ
ヨイチ:……レイヤ……うっ……ううぅぅー
マリル:……ウチだって……悲しいよ……うぅ…うわあああん!
0:場面転換____ハイドの家では…
ハイド:………あいつの言葉は…本心のはずがない………優しいあいつが……
ハイド:………はあ。なかなか寝付けないな。外に行くか……
0:ハイドは外に出て村を歩く
ハイド:(M)この村は……人が8人過ごすには十分だが、小さな村だ
ハイド:(M)ノアがこの村を買い取ると言い出した時からそんな予感がしていたんだ
ハイド:(M)こうなる運命だった。そうは言いたくは無いが……ノアは今…何を思うんだろう
ハイド:………ん?何か音がする…?
0:ハイドは音のする方に向かう
ハイド:…………っ
ノア:…っ!…っ!!
0:ノアは額を何度も岩に打ち付けていた
ノア:……っ!……消えて……!……消えて……!……っ!
ノア:私の身体も……こんな宝石も……いらない……。……消えて…!お願い…!消えて…!……っ!……っ!!
ハイド:……ノア…何してんだよ…!
ノア:……はあ…はあ……ハイド…
ハイド:安静にしてろって言っただろ
ノア:………私は……どうして……生まれてきちゃったんだろう……。……やっぱ私なんて……何も価値のない…呪われた人間だよ
ハイド:……最初からこうなることはわかってたんじゃないのか?
ノア:………でも…あの頃と今じゃ違うでしょ?
ハイド:………ああ。そうだな
0:半年前のこと
ハイド:……お前がLike a jewel(ライカ ジュエル)か?
ノア:……うん。そうだよ
ハイド:服を脱いでみろ
ノア:………っ
ハイド:………っ!な、なんだよ…この傷は?
0:ノアの体は刃物でえぐられていたような無惨な跡が残っていた
ノア:私の身体だよ。もうこれ以上…宝石は出てこなくなった。あとは額のダイヤモンドだけ。
ハイド:誰に付けられた傷だ?
ノア:義理の父から。毎日、ナイフでえぐり取るように体に埋め込まれていた宝石を切り抜かれたの
ハイド:………いくらなんでも……残酷すぎる
ノア:意外とそんな事ないよ。私は大丈夫だから。あなたの名前はハイドでいいんだよね?
ハイド:ああ。そうだ。人の呪いを解くテンプルを持っている。お前の呪いは後天的なものか?
ノア:……ううん。先天的なものだよ
ハイド:……なら、お前の呪いを解いた瞬間。お前が消えていなくなるぞ?それでもいいのか?
ノア:いいよ
ハイド:………話が早くて助かる
ノア:あなたもずっと一人だったの?
ハイド:……ああ。少しわけがあってな。
ノア:私のお母さんが…最後にあなたの名前を教えてくれたの。あなたに会えてよかった。呪いを解いて、私ごと消してくれる人が居てくれて…よかった
ハイド:そうは言うな。俺はお前の呪いを解くつもりはない
ノア:……どうして?
ハイド:消えるとわかってて呪いを解くなんて…人を殺しているようで…俺には出来ない
ノア:……私が…人だって言うの?
ハイド:………当たり前だ。お前は宝石では無い。一人の人間だろ
ノア:………っ
ハイド:………なんだ?
ノア:……いや、なんでもないよ。…それならさ、ハイド。私は人に優しくしたい
ハイド:……そんなこと、いくらでも出来るだろう
ノア:ほら。これ見て
ハイド:……なんだ?この金は
ノア:お母さんが、義理の父から奪ったお金だよ。……これは…私の宝石を売った時のお金だから、私のもの。だから…このお金が使えるなら私は人に優しくして、優しい世界を作りたい
ハイド:………そんなこと…俺に言われても困るぞ
ノア:……うん。ごめんね。……ならこうしたい。このお金で私と同じく一人ぼっちだった人達を助けたい。このお金で村を買って集まった不幸な人達全員と幸せに暮らすんだ
ハイド:………好きにしろ。だかお前はLike a jewelだ。誰かと居れば誰かに呪いが伝染することだって有り得る。それでもいいのか?
ノア:その時は……あなたが私の呪いを解いて。伝染した人を助けてあげて
ハイド:………お前が消えるということだな?
ノア:……うん。
ハイド:……わかった
0:場面転換____現在では
ノア:………その時は…こんなに大事な場所になるなんて思わなかった……こんなに大切な人になるなんて思わなかった……どうして……どうして……!
ハイド:お前のその悔いは……お前の人生が輝いていたからだろ?
ノア:………え?
ハイド:ノアもラナもレイヤも……みんなが平和になれれば、俺だってそうしたい……だが…みんなが悲しまない選択肢って……本当にどこにもないと思うか?
ノア:………きっと…ないよ
ハイド:……なぜ言い切れる!?
ノア:Like a jewelの呪いは体中に宝石が出来るだけの呪いだと思うけど、実際はそうじゃないの。体に宝石がある事で、人としての価値はなくて、お金としてしか見られない…そんな不幸になる呪いなんだよ
ノア:だから…ラナにはそんな不幸な道に進んで欲しくない。それなら……私の呪いを解いて欲しい
ハイド:………それは出来ない
ノア:………お願いだよ、ハイド
ハイド:………やりたくないんだ
ノア:どうしてよ!
ハイド:……俺だって……悲しいからだよ
ノア:………ハイド…?
ハイド:宝石じゃなくなったお前に価値がないなんて言わせねーよ。お前は人としての価値がある。……だから……居なくならないで欲しいんだよ
ノア:………ハイド…私の言うことをよく聞いて
ハイド:……?
ノア:私も…みんなが幸せになれるならそうしたいよ。みんなと…この村でずっと暮らしていたい
ハイド:………
ノア:でも、もしこの先、私もラナも生きていて…どこかでラナが不幸な目に遭った時…きっと私は死にたくなる
ハイド:………ノア
ノア:私の呪いは……きっと死ぬまで呪いなの。……誰かを不幸にさせるくらいなら、消えて居なくなりたい。……それが私の願いだよ。
ハイド:………くっ!
ノア:お願い。ハイド。私の呪いを解いて欲しい
0:場面転換____ニコルの部屋では
ニコル:………ノア
ニコル:……うっ……ううぅ……ノア……全部聞こえてるよ……
ニコル:助けてあげられなくて……ごめんなさい
0:場面転換____ノアとハイド……
ハイド:………ノアが望むのなら……呪いを解いてやる
ノア:………ありがとう
ハイド:………一瞬苦しくなるけど我慢してくれ
ノア:うん
ハイド:…………はあっ!!!
ノア:……っ!!
0:ハイドがノアの喉元を力強く握る。その瞬間、ノアの体から青いオーラが放たれた
ハイド:5分もすれば呪いは解かれる。……そして…ラナの呪いも解かれ……ノアの姿は無くなる
ノア:………よかった
ライチ:よかったじゃねーよ!!
ヨイチ:なんにもよくねーよ!!
ノア:………ライチ?…ヨイチ!?
マリル:……ノアー!!何してんのー!!
ノア:………マリルまで…
ニコル:……ノア…
ノア:……ニコル…
ハイド:………なんでお前らがここに…?
ニコル:………全部…聞こえてきてしまったんです。最後にお別れが出来ないなんて寂しいじゃないですか!
ノア:………みんな…
ニコル:ううん。ここにいる人がみんなじゃないですよ?
ノア:………え?
0:ラナとレイヤも現れる
ラナ:ノアーー!!
ノア:っ!……ラナ
0:ラナはノアに抱きつく
ラナ:ノア……嫌だよ……なんで私のために
レイヤ:……ハイド!!テンプルの力を止めろ!ノアが居なくなるなんて間違ってる!
ハイド:………ああ。間違ってるよ。でもあいつは……優しいんだ
マリル:居なくならないでよー!ノアー!!
ライチ:そうだよー!!俺たちのそばに居てくれよ!!
ヨイチ:俺たちは!!お前のおかげで毎日楽しかったんだぞーー!!
0:場面転換____半年前のこと
ライチ:お、おい!そこの奴ら!か、金を出せ!
ノア:……え?私?
ヨイチ:そうだよ!お前らだよ!か、金を出せ!
ハイド:なんだ?こいつら
ライチ:俺たちは!悪党兄弟だ!
ヨイチ:そうだ!ビビったなら金を寄越しな!
ノア:幼い兄弟なんだね。お腹すいてない?
ライチ:すいて……ない!!
ヨイチ:ああ!……すいて……ない…
ノア:無理はだめだよ?おにぎりあげるから食べて?
ライチ:ええー!いいの?
ヨイチ:やったぜー!!
ノア:あなた達、ご両親は?
ライチ:ああ、多分死んじゃったんだ
ヨイチ:船で流されちゃったらしい
ノア:行くあては?
ライチ:もちろんない!
ヨイチ:おにぎりうめー!
ノア:元気な子達だね
ハイド:………ノア?
ノア:私ね、村を作ろうと思うの。その村でみんなが幸せに平和に過ごせる…そんな村を作りたいの
ライチ:そ、そんなこと出来るの!?すげーな!お前!
ヨイチ:天才だな!おにぎりもうめーし!
ノア:あなた達の平和は、私が保証するわ。
0:場面転換_____マリルとの出会い
マリル:……うっ……うううぅ〜……お父さん
ハイド:……ん?お前どうかしたのか?
マリル:………ウチのお父さんが…どこか行っちゃった…
ノア:また孤児みたいね。可愛そう。名前は?
マリル:マリル
ノア:マリルっていうのね。私はノア。マリルはどうして一人になっちゃったの?
マリル:ずっと……お父さんと一緒に居たのに……急に居なくなっちゃったから寂しい
ノア:そうなのね。わかった。もうこれからは寂しい思いはさせないよ
マリル:どうして?
ノア:私も…寂しいから……かな?
マリル:………あんたも?
ノア:うん。だからさ、私、マリルのように、一人ぼっちの人達を集めて、平和な村を作るんだ。マリルも一緒に住んでみない?
マリル:……いいの!?ウチ一人で眠れないんだけど
ノア:みんなで寝ればいいよ
マリル:……うん!じゃあそうする!
ノア:………ありがとう!
0:場面転換____現在では
ライチ:ノアーー!!お前が居てくれたから俺たちはいつも楽しかったんだよー!
ヨイチ:楽しくて!暖かくて!ノアだっていつも優しかっただろー!なんで消えるんだよ!
ノア:……ごめんね。……でも、私は……
マリル:ノアが居ないとウチは……誰に頼ればいいの!
ノア:ううん。あなた達3人はもう立派だよ。人に優しくて。人の痛みを、孤独を分かち合いながら、明るい笑顔をみんなに与えてくれる素敵な人。私はあなた達3人を忘れないよ
レイヤ:………お前、それでいいのかよ
ノア:レイヤも…ラナのこと大事にしてくれてありがとう
レイヤ:……何もしてないよ。僕は
ノア:そうやって静かに見守ってくれてたことを私は知ってるよ。レイヤは面倒見が良くてしっかりしてる。……ラナのことよろしくね
ラナ:嫌だ!……私は…ノアに何も償えてない
ノア:償いなんていらないよ。私は…ラナに沢山愛情を貰ったと思う
ラナ:……それでも……私はノアを裏切ったから…
ノア:裏切りなんて思ってない。ラナのその涙が真実だと思ってるから。謝らないで。元々私はこうなるべきだったんだから
ラナ:………ノア…
ノア:ラナは誰よりも大きな愛情を持って、誰よりも人を大事にする人だよ。私はそんなラナが大好き
ラナ:…………うん…私も…ノアの事大好き…本当にありがとう……
ニコル:……私だって寂しいです…ノア
ノア:ニコル……今までずっと我慢させてごめんね。私のわがままで何度も辛い思いをさせてきた
ニコル:いいえ。ノアの方が辛かったですよね…。私はそばで見守ることしか出来なかった……。もっと早く……ノアの事も助けられたのに……
ノア:ううん。ニコルが思うより私はニコルに助けられたよ。いつも喧嘩しちゃうみんなをなだめてくれたり、本当に気使い屋さんなんだから。ありがとう
ニコル:………私の方こそ…ありがとうございます…!
ハイド:…………
ノア:ハイド
ハイド:…………なんだ?
ノア:私の呪いを解いてくれて…ありがとう
ハイド:………お前は自分の母親の言葉を信じすぎだ。優しい世界はお前に包まれるはずだった
ノア:それはみんなにも言えることだよ。優しいみんなのだからこの村も優しい世界に包まれるはずだよ
ハイド:………どこまでも優しくしすぎだ。お前は……
ノア:そうだね。こんな体の私でも……人に優しくしている自分のことは少しだけ好きになれるんだもの。
0:全員涙を流す
ハイド:(そっと涙ぐむ)
ラナ:(泣きじゃくる)
マリル:(泣きじゃくる)
ライチ:(泣きじゃくる)
ヨイチ:(泣きじゃくる)
ニコル:(堪えるように泣く)
レイヤ:(静かに泣く)
0:【間】
ノア:ねえ、最後に見て…みんな
0:泣き声は静かになる
ノア:これが私の本当の姿なの
0:ノアは服を脱ぐ
ノア:手足の爪は剥がれて、両耳は引きちぎられて、首はもちろん、体中に出来た宝石は全部えぐり取られて、こんな体になっちゃったの
ライチ:……なんだよ…この体
ヨイチ:……大丈夫なのか?
ノア:大丈夫。でも……宝石が埋め込まれてないLike a jewelなんて、なんの価値もないの。それなのに…誰かに伝染させてその人を不幸にさせる……そんな呪いから解放されたいから…消えるの
ラナ:……ノア…
ノア:でもね……みんなが私に優しくしてくれた。みんなが…私に寄り添ってくれた。……みんなが私を…愛してくれた。今だって…みんながそばに居てくれる
マリル:……うぅぅ…ノア〜……
ノア:本当に嬉しいよ。私にはお母さんしか居ないと思ってたから。こんな体でも…みんなが私を見てくれてるんだってわかったんだもん。私は一人じゃないんだって思えるよ
レイヤ:………くっ…
ノア:この世にはね、宝石よりも輝いていてキラキラしていて綺麗なものがいっぱいあるんだよ。今この場所が、まさに宝の箱みたいに綺麗に輝いてる
ノア:私はここにいるみんなが宝石のような存在なんだって。一人一人が宝物なんだってやっと思えるようになった。もうみんなは一人ぼっちなんかじゃない
ハイド:………ノア…!!
ノア:私はみんなのことを忘れないよ。みんなのこと……大好きだよ。だから、私のことも忘れないでいてね
ノア:やっと見つけた。やっとわかった。やっと思えた。ここにいるみんなが私にとっての
ノア:Like a jewel