台本概要

 1615 views 

タイトル 吸血はショコラーデと共に
作者名 アール/ドラゴス  (@Dragoss_R)
ジャンル ファンタジー
演者人数 4人用台本(男1、女1、不問2)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 時はバレンタインデー前日、日本。
吸血鬼になりたい少年、クロイツは女吸血鬼のショコラーデと共にいた。
しかし、それを吸血鬼狩りに見られていて…。

「じゃあ、クロの甘い血と美味しいマカロンに…、乾杯。」


※戦闘、詠唱アリ。

 1615 views 

キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ショコラーデ 79 女吸血鬼。戦闘経験があまりない。 クロイツのことを誰よりも大事に思っている。
クロイツ 89 ショコラ―デと共に遊んでいる少年。 ショコラーデの失態で拗ねることになる。
メルヘン 不問 64 ショコラ―デの友人。 クロイツとショコラ―デの恋路を応援している…。
ゼーレ 不問 69 吸血鬼狩りに所属する人間。 ショコラ―デを狙いクロイツを攫う。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:煌めく大都市の夜景を一望できるビルの屋上。 0:誰もいないはずのそこには、二つの影。 0: ショコラーデ:……ぷは。ふふふっ…。―――今日も、クロの血は美味しいね。 クロイツ:それは良かったです、ショコラーデ。…うぁ。(少しふらつく) ショコラーデ:おっと…。(クロを支える)ごめんごめん、ちょっと吸いすぎちゃったみたいだね。 クロイツ:あ…。えへへ、すみません。ありがとうございます。もう大丈夫です! ショコラーデ:それならよかった。…さて、じゃあそろそろ行こっか。メルも待ってる。歩けるかな? クロイツ:はい! 0: 0:―吸血はショコラ―デと共に― シーン転換。 0:日本。バレンタインデー前日の夜。 0: 0:ビルから漏れ出る幻想的な光が街を彩る。 0: クロイツ:メルさーん!こんばんはー! メルヘン:お、来た来た…。遅いよー、二人ともー! ショコラーデ:ごめんごめん、クロの血があんまりにもおいしくて、ちょっとふけってたの。 メルヘン:まったくー、今日もイチャイチャしてんねぇ、お二人さん! ショコラーデ:なっ…。い、イチャイチャなんてしてないから!私とクロはただヴァンパイアと吸血袋(しょくりょう)の関係だから! メルヘン:あははっ!そうだねぇ、“今は”ね!さて、今日二人を呼んだのは他でもない、明日がバレンタインだからさ! クロイツ:あぁ、そういえばもうそんな時期でしたね! ショコラーデ:え、ってことはもしかして、メル、私たちにチョコくれるの!? メルヘン:まあ、チョコレートじゃないんだけどね。じゃあ二人とも、ちょっと手を出してくれるかなー? クロイツ:おお…!楽しみです! ショコラーデ:いやあ、ご馳走になるよメル~! メルヘン:ふふー、はい、どうぞ! 0: 0:二人の手のひらに、メルヘンはクッキーの袋を一つ乗せる。 0: クロイツ:おお、美味しそうなチョコクッキー! メルヘン:ふっふっふー。今食べてくれてもいいよ? クロイツ:やったあ!じゃあ、早速(いただきます) ショコラーデ:(被せて)待って、クロ。 クロイツ:え? ショコラーデ:メル…。このチョコ、包装を剝がしてもないのに凄い血の匂いがするけど…。 メルヘン:…?そりゃもちろん入れたよ?私の血。 ショコラーデ:それはダメに決まってるでしょーー!! メルヘン:えぇ!?なんでぇ!? クロイツ:た、確か人間が吸血鬼になる条件って、「吸血鬼の血を飲むこと」でしたよね…!? メルヘン:そうだね、その吸血鬼の血を飲むことでその人間は晴れてその吸血鬼の眷属(けんぞく)となる…。だけど、え?もしかしてロイちゃんってまさか…。 ショコラーデ:吸血鬼じゃない!クロは人間だよメル!! メルヘン:えぇー!?そりゃごめん!てっきりもうとっくのとうに眷属(けんぞく)の契(ちぎ)りを結んでるのかと思ってた…。血の臭いもしてたからさあ。 クロイツ:俺は今にでもなりたいんですけど…。ショコラーデが「ちゃんと考えてからにしなさい」って言うから…。 ショコラーデ:そりゃそうでしょ!私たちの同胞になるってことは、もう二度と人間として生きることができないってこと。ちゃんと理解してくれないと困るよ…? メルヘン:まあ、人間だった時のことを捨て去るために、僕たちは偽名を使うわけだしね…。人間と同じ生活には戻れない。それはちゃんと理解するべきだね。 クロイツ:むぅ。絶対吸血鬼になったほうが楽しいと思うんだけどなあ…。人間としての生活なんてつまらないですし…。 ショコラーデ:それでもいつか、後悔する日が来るかもしれないからね。もし本当になりたいなら、人間のうちにやっておきたいことは全部やっておくんだよ? クロイツ:…むぅ。わかりました。 メルヘン:よろしい。…にしても、本当にショコラーデはロイちゃんのことが好きなんだね! ショコラーデ:…うるさい。 メルヘン:あははっ!本当、君はからかい甲斐があるね! クロイツ:…あ、そういえば。ずっと聞きたかったんですけど。 ショコラーデ:ん?どしたの、クロ。 クロイツ:えっと…。ショコラーデと知り合った時から、吸血鬼のルールってことで俺も偽名を命名されましたけど…。なんでクロイツなんですか?というかクロイツってどういう意味なんです? メルヘン:ドイツ語で「十字」を表す言葉だよ。 クロイツ:えっ、確か十字架って吸血鬼の天敵じゃあ…。なんで俺にその名前を…? ショコラーデ:そりゃあ、えっと…。 ショコラーデ:クロが私の“弱点”だからだよ…。(小声) クロイツ:え、なんて…? ショコラーデ:…あー、そりゃあ勿論、君を他の吸血鬼に取られないようにするためだよ!名前が自分たちの弱点だったら、吸血鬼少しでも近寄りがたくなるでしょ? クロイツ:な、なるほど…? メルヘン:ふふっ…。素直じゃないなあ…。(小声) 話数転換。 ショコラーデ:ああ、そうそう!私も実はクロイツにお菓子持ってきたんだ! クロイツ:えっ!本当ですか! ショコラーデ:うん。私器用じゃないから、市販のだけどね…。はい、これ。どうぞ! 0: 0:そういってショコラーデはクロイツにマシュマロの袋を手渡す。 0: クロイツ:ま、マシュマロ…。(少しショックそうに) メルヘン:……。 ショコラーデ:あれ、マシュマロ嫌いだった!?だったらごめん…!普通に私が焼きマシュマロパーティーしたくて買ったみたいなところあるから…! メルヘン:理由が私利私欲すぎるでしょ…。 クロイツ:い、いえ…!楽しそうですね、それ…! ショコラーデ:…うーん、やっぱりマシュマロは不満だったかあ。じゃ、じゃあ…、こっちはいかが?! 0: 0:そういってショコラーデが懐から取り出したのは小さなグミの袋。 0: クロイツ:グ、ミ……。 メルヘン:……。(片手で顔を覆ってやれやれ、の意) ショコラーデ:いったんこれあげるから!これで我慢して!明日ちゃんとしたチョコ作ってくるからさ…!ね…!ごめんねクロ…! クロイツ:……ばか。 ショコラーデ:え? クロイツ:ショコラーデのばかっ!! 0: 0:そう言ってクロイツは受け取らずに走り去ってしまう。 0: ショコラーデ:えっ!?ちょっ、クロぉー!?…行っちゃった。 メルヘン:…そりゃそうだよ。 ショコラーデ:…もしかして私、何かやらかしちゃった? メルヘン:…バレンタインデーに送るお菓子によって意味があるの、知ってるかい? ショコラーデ:知らないけど…。 メルヘン:…グミとマシュマロの意味、今調べてみ。 ショコラーデ:(スマホを取り出し調べる)……っ!ち、違うの!ホントに知らなかったの!偶然なの! メルヘン:それを僕に言ってどうするのさ…。(苦笑) ショコラーデ:あぁぁ、明日クロになんて言おう……。 0: 0:そんなやり取りを遠くから見つめる影。 0: 0: ゼーレ:…これはこれは。…はぁ。せっかくのバレンタインデーが…。 シーン転換。 0:翌日。 0: 0:夕暮れの街を歩くクロイツ。片手には袋を持っている。 0: クロイツ:…かなり早く家出ちゃった…。どこで暇潰そうかなあ。 0: ゼーレ:―――もし、そこの少年。 クロイツ:…えっと、俺ですか? ゼーレ:そう。君だ。少し聞きたいことがあってね。いいかな? クロイツ:はい、いいですけど…。 ゼーレ:ありがとう。いやあ、バレンタインデー当日にすまないね。 クロイツ:いえ、ちょうど暇をしていたところだったので…! ゼーレ:ふぅん?…暇なようには見えないが。(クロイツの持つ袋を見て) クロイツ:あぁ、えっと…。実は、夜から待ち合わせで…! ゼーレ:そうかい、それは楽しそうで何よりだ。お幸せにね。 クロイツ:…はいっ。 ゼーレ:…しかし、残念なことに私は君に謝罪しなくてはならない。 クロイツ:謝罪…? ゼーレ:あぁ。 0: ゼーレ:今年のバレンタインは、君にとって最悪の日になるだろう。 0: クロイツ:それは、どういう…? ゼーレ:言葉通りの意味…さっ。 0: 0:ゼーレが小さな針をクロイツの腕に刺す。 0: クロイツ:っ…!? ゼーレ:君、習わなかったかい?知らない人の話は無視しなきゃダメなんだぞぅ…? クロイツ:ぁ…。(意識を失う) ゼーレ:…さあて。…私にとっても最悪だよ、クソ……。 シーン転換。 0:同日、夜。煌びやかな街の中。 0: ショコラーデ:…遅いな、クロ。もう三十分も過ぎてるし、何の連絡もない…。いつも遅刻することすらないのに。 ショコラーデ:…いやな予感がする。 シーン転換。 0:人気のない公園にて。 0: 0:クロイツは手足を拘束されている。 0: ゼーレ:すまないな。巻き込んでしまって。 クロイツ:…俺を攫って、なんのつもりですか。 ゼーレ:決まっているだろう?君のお友達をおびき寄せるためだよ。 クロイツ:…友達って、ショコラーデのことですか? ゼーレ:ああ。私も本当はこんなことしたくないのだがね。そういう仕事なんだ。 クロイツ:…まさか、吸血鬼狩りですか。 ゼーレ:ご名答。あの吸血鬼から聞いていたかな。そうとも、吸血鬼を始末するのが私の仕事だ…。誠に、申し訳ないがね…。 クロイツ:ま、待ってください!確かに人を襲う吸血鬼もいるって聞きましたけど、ショコラーデは人を無暗に襲ったり血を吸ったりしません! ゼーレ:だろうね。それは昨日の会話からして明らかだ。…しかし、吸血鬼という存在がこの世界に“在る”。それだけで十分我々人類の脅威、なのだ。少年。 ゼーレ:それ故(ゆえ)、我々は吸血鬼を滅するために動く。そこに善良か悪辣(あくらつ)かは関係ない。吸血鬼は等しく吸血鬼だ…。はぁ。 クロイツ:そんな…。 ゼーレ:…いや、実は私も好きで(この仕事に就いているわけでは) ショコラーデ:クローっ! 0: 0:空からショコラーデが飛び降りてくる。 0: ゼーレ:と…。ようやく来たか、ヴァンパイア。 話数転換。 0:地面に着地し、ゼーレと対峙するショコラーデ。 0:クロイツはゼーレの後ろにいる。 0: ゼーレ:やあ。待ちくたびれたよヴァンパイア。 ショコラーデ:…待ち合わせの場所にいつまでも来ないと思ったら。クロを攫うだなんて、随分と卑怯なことをするんだね、吸血鬼狩りって言うのは。 ゼーレ:仕方ないだろう?生身の人間が暴力の化身ともいえる吸血鬼に正攻法で敵うわけがない。それに、街中でいきなり襲うのもまずいだろう?だからおびき寄せさせてもらった。悪いな。 クロイツ:ショコラーデ…! ショコラーデ:クロっ! ゼーレ:御覧の通り、少年は無事だし、麻酔の注射と手足の拘束以外は何もしていない。そこは安心してくれたまえ。 ショコラーデ:……。 0: 0:ショコラーデとゼーレがゆっくりと歩み寄る。 0: ゼーレ:あぁ、そういえば自己紹介が遅れたね。私の名前は『ゼーレ』。魂なんて籠っていない、気だるげな吸血鬼狩りさ。 ショコラーデ:御託(ごたく)はいいよ。あなたの目的は私の命でしょ。…早く始めよう。 ゼーレ:フフッ…。そうだな。 0: クロイツ:(N)この気迫と張りつめた空気…。これが吸血鬼の殺し合い…。 クロイツ:(N)…息がつまる。俺でもわかる。この空気に漂う殺気は尋常じゃない。ショコラ―デも不安そうな顔をしてる…。 クロイツ:(N)なのに、あの吸血鬼狩りの人…。ゼーレは一切怯んでない。むしろ…。笑ってる。 0: ゼーレ:何せ今日はバレンタインデーだ。私もさっさと終わらせて、チョコレートを食べたいからね。 ショコラーデ:へえ。あなた、チョコ好きなんだ。 ゼーレ:甘味はよく嗜(たしな)む方だよ。意外だとよく言われるがね。 0: 0:お互いが十分近づくと、沈黙が続く。 0: ゼーレ:……。 ショコラーデ:……。 0: クロイツ:(N)次の瞬間、ゼーレは拳銃を取り出してショコラーデに発砲する。 0: ショコラーデ:(躱して)ふっ、そんな弾丸には当たらないよっ! ゼーレ:そんなことはわかっているさ…。ふむ。 0: クロイツ:(N)ショコラ―デが避けた方向に次々に弾丸を放っていくゼーレと、それをことごとく避け続けるショコラーデ。 クロイツ:(N)…何かがおかしい気がする。ゼーレは今まで何人も吸血鬼を殺して来たんだろ。そんな吸血鬼殺しのエキスパートが、こんな単調な攻撃しかしないなんてことあるのか…? 0: ショコラーデ:ふふ…!攻撃が単調だね!そんなので私を捉えられるわけないじゃん! ゼーレ:…いい位置だ。 クロイツ:(何かに気づいて)…っ!そっちに避けちゃだめです! ゼーレ:点火。 ショコラーデ:っ!? 0: クロイツ:(N)俺の言葉も束の間、ショコラ―デが避けた先の地面が大きな音を立てて爆発し、爆発地点から“水”が噴き出してきた。 クロイツ:(N)咄嗟にショコラ―デも回避の姿勢に入るが、間に合わず足に水を浴びせられる。 0: ショコラーデ:こ、れはっ…!“聖水”っ…!(苦しんで)ぐぁあっ…!!(膝をつく) クロイツ:ショコラ―デっ! ゼーレ:吸血鬼。お前、戦い慣れてないな。自分の力を過信して、まんまと聖水を仕込んだ地面まで誘導されてくれた。それにしても…。少年。ただの人間がよく地面の仕込みに気づいたね。 ゼーレ:おかげで全身に与えられるはずだったダメージも足を潰しただけになってしまった。…まあ、十分だがね。 クロイツ:くっ…! ショコラーデ:あ、足に力がっ…、入らない…っ! ゼーレ:(ゆっくりショコラーデに近づく)しかし、戦闘経験がないということは…。本当にお前は平和に過ごしてきたんだなあ、ショコラーデ。戦闘前の殺気は見せかけだったってことか。 ショコラーデ:っ、うぅ…っ! ゼーレ:先に言っておく。お前に罪はない。強いて言えば吸血鬼になってしまったというくらいだ。じゃあ…。宣言通り、さっさと終わらせるとしよう。 クロイツ:待って、ショコラーデっ!! ゼーレ:―――この無辜(むこ)なる魂に救済あれ。 0: クロイツ:(N)そうしてゼーレは拳銃をショコラーデの頭に向ける。 クロイツ:(N)待って、だって俺はまだショコラ―デに―――。 0: メルヘン:そんなこと、この僕がさせるわけないだろう!! 0: クロイツ:(N)そんな声が響いたかと思うと、空からコウモリの大群がショコラーデとゼーレの間を割るように登場し。 クロイツ:(N)コウモリはショコラーデの身体を包み込むと、俺の近くにショコラーデを移動させ、やがて人の形へと変化していく。…そう、俺達のよく見慣れた、あの形に! 0: ショコラーデ:メルっ…! クロイツ:メルさんっ!! メルヘン:ああ、そうとも。吸血鬼メルヘン、親友のピンチに遅れて登場だ。待たせたなぁー! 話数転換。 ゼーレ:ちっ…。こりゃ参ったな。増援とは。日を分けて始末するつもりだったんだけどな。 ショコラーデ:メル…。ごめん、ありがとう…!というか、なんでここが…? メルヘン:そりゃあ勿論、親友が殺されかかってて何もしない僕じゃあないからさ!さて…。ロイちゃん。ショコラーデの足が治癒されるまでショコラーデを頼むよ。 クロイツ:えっ…?あれ、拘束が解かれてる…!? メルヘン:あはは、僕にかかればこのくらいちょちょいのちょいさ。さあて、じゃあ(戦闘と行きますか) ゼーレ:(被せて)させないっ…! 0: 0:ゼーレがメルヘンに近づきながら銃を発砲する。 0: メルヘン:おっとっ…!ハハ! 0: クロイツ:(N)メルさんは不敵に笑うと、再び身体を百数匹のコウモリに変え、そのうちの一匹で銀の銃弾を受け止めさせる。そのコウモリは塵となって消えたが、 クロイツ:(N)それ以外は途轍もないスピードでゼーレの後ろに回り込み。 0: メルヘン:喰らえッ! 0: クロイツ:(N)また人間の形に姿を戻すと、メルさんは赤黒い斧のようなものを瞬時に造りだし、ゼーレに向かって振り下ろす! 0: ゼーレ:ちぃっ!血液の物質化かッ…!ふんっ!(懐から聖水の入った瓶を斧に向かって投げつつ回避する) メルヘン:勿論それも喰らわないよっ!(瓶からあふれる聖水を浴びることなく足に血をつける) ゼーレ:…なかなかやるな、吸血鬼。 メルヘン:あいにく、僕はショコラーデと違って戦闘のやり方をしっかり教わっているんでね!そりゃ、まだまだ行くぞぉー! ゼーレ:望むところだっ…! 0: 0:ゼーレとメルヘンの激しい戦闘が続く。 0: ショコラーデ:…ごめんね、クロ。すぐに攫われたことに気づけなくて。 クロイツ:いえ、謝るのは俺の方です。俺のせいで、ショコラーデとメルさんを危険な目に合わせてしまって…。それに、昨日も喧嘩して別れちゃったし…。 ショコラーデ:ふふ…。あれはごめんね、知らなかったとはいえ、あんまりにもピンポイントな偶然だったね…。 クロイツ:…大丈夫です、俺もショコラーデに悪気がないことは心では分かっていたので。 ショコラーデ:…あーあ、ホントはあとでゆっくりお菓子と一緒にクロの血を嗜む予定だったのに。吸血鬼狩りさんのせいで狂っちゃった。 クロイツ:えっ、お菓子…? ショコラーデ:うん。流石にクロに悪いと思ったから、あのあとメルに頼んでチョコの作り方教わって作ってきたんだ。 クロイツ:…あはは。奇遇ですね、ショコラーデ。俺も今日、お菓子作ってきたんですよ。男子から女子に渡すのもアリかなて思って。 ショコラーデ:マジか…!じゃあ余計はやくゼーレをやっつけて、一緒にお菓子を楽しまなきゃね…!さて、じゃあそのために、クロにお願いがあります。 クロイツ:勿論です、ショコラーデ。さあ…。たんと召し上がれ。 ショコラーデ:ふふ。いただきます、クロ。 0: 0: 0: メルヘン:そこだッ!行け、コウモリ!!(コウモリを招来してゼーレにぶつけようとする) ゼーレ:もうその手には乗らないッ!『打ち砕かれよ。救いあれ。迷える隣人を、無辜(むこ)なる怪物を、無垢(むく)なる子供を。』!(コウモリを消滅させる) メルヘン:特定の範囲で効果を発揮する神託詠唱(しんたくえいしょう)か、厄介な…!でも、隙ができたようだね!出でよ、『ブラッディ・メアリー』!(血のナイフが降り注ぐ) ゼーレ:隙だらけなのはそちらの方だ!『プレイヤーズ・シルバー』…!(懐から銀のナイフを取り出し、メルヘンに向かって投げる) メルヘン:それくらいっ…、なっ!?ぐぁっ…! 0: クロイツ:(N)メルさんは銀のナイフを斧で弾こうとするも、そのナイフは斧を貫通し、メルさんの肩に命中。その衝撃で作り出した無数の血のナイフはナイフの形を留めることなく地面にぼたぼたと堕ちた。 0: ゼーレ:…ふぅ。ようやっと怯んだな。儀式が施された銀の短剣のお味はいかがだ、吸血鬼。 メルヘン:…ま、さか…。こんなに力が入らなくなるだなんてッ…!このナイフに一体どれだけ魔力を籠めればこうなるんだッ、くそ…。ヴァンパイアの力が浄化されていく…ッ! ゼーレ:このナイフに籠っている魔力はわずかだ。では、なぜそんなに苦しいんだろうなあ、吸血鬼。(懐から木の杭を取り出しながら) 0: ショコラーデ:それは勿論、メルが戦いのときに自分の血を消費し過ぎているから! 0: ゼーレ:っ! クロイツ:頑張ってください、ショコラーデ! ショコラーデ:はぁぁーっ!(血の剣を携えてゼーレに斬りかかる) ゼーレ:なぜ、あまりにも回復が早すぎる…!(避けるが木の杭を落とす)…っ、そういうことか吸血鬼! ショコラーデ:そうだよ!ヴァンパイアらしく、美味しく食料(クロ)をいただいて回復したの! クロイツ:だいぶ吸われたので、俺は結構フラフラですけどね…!! 話数転換。 メルヘン:ふたりとも…! クロイツ:メルさんはいったん休憩を!血を消耗し過ぎているんでしょう…!? メルヘン:…うん、すまないね…!(コウモリに姿を変えゼーレから距離を取る) ゼーレ:…ハハハ。しかし…。ショコラーデ。お前が復活したからなんだ!お前に戦闘経験がないことは知っている、そんなお前が私に果たして敵うのか…、見ものだな!(ショコラーデに接近する) ショコラーデ:…っ! ゼーレ:行くぞッ!(銃を手に取り発砲する) ショコラーデ:戦闘経験がなくても血が満タンの今ならできるはず…!『ヴァンプ・オブ・ミスト』ッ!(一瞬でその姿が消える) ゼーレ:なにッ!?どこに…、いや、これは!? ショコラーデ:隙だらけだよ、吸血鬼狩り!(いつの間にかゼーレの背後に立っており、血の剣をゼーレに向けて振り下ろす) ゼーレ:っ…!(躱しきれず右足を剣先が抉る)…っぐぁ。 ショコラーデ:まだまだ行くよ!『ヴァンプ・オブ・ミスト』!(再び姿を消す) ゼーレ:まさかお前も霞化(かすみか)を使えるとは…!厄介この上ないな! ショコラーデ:はぁッ!(次はゼーレの上に姿を現し剣を振りかぶる) ゼーレ:ぐぅ…ッ!!(短剣を取り出し何とか止める) 0: 0: メルヘン:…なあんだ、ショコラーデ、結構戦闘の才能あるんじゃん。 クロイツ:…吸血鬼ってコウモリになるだけじゃないんですね…。 メルヘン:ああ、そうとも!コウモリが一番一般的だけど、霞(かすみ)や狼…。カラスになる奴なんかもいるね。 クロイツ:へぇ…。 メルヘン:…あー、くらくらする。血が一切戻ってる感覚が無いや。…あの銀のナイフに籠められた祈りが吸血鬼の回復能力を封じてるのか。 クロイツ:大丈夫なんですか…!?なんだったら俺の血を…! メルヘン:それはダメだ。ただでさえショコラーデに血を吸われてるのに、僕まで吸ったら君がミイラになっちゃうよ。 クロイツ:…そうですか。 メルヘン:…あぁ、少しでも血が補充できれば不意をつけるんだろうけど…。 クロイツ:…あっ! 0: 0: ゼーレ:チッ、ちょこまかとっ…!! ショコラーデ:はぁぁッ!!(剣でゼーレの横腹を貫く) ゼーレ:ぐ、ぁ…!しかし、そこが好機ッ…!『燃える焔(ほむら)は火刑の罪、悪しき魔女に鉄槌を。』…!! 0: 0:ゼーレとショコラ―デの周りを炎が包み込む 0: ショコラーデ:っ、これはッ…! ゼーレ:これで霞(かすみ)になることもコウモリに化けることもできまい…ッ!『審判はここに。神託はここに。我らが神の御心(みこころ)のままに。』!!(炎が勢いを増し光が溢れ出す) ショコラーデ:熱っ…! ゼーレ:オオォ…ッ!!浄化の光をここにッ!『オラクル・(アシスタント・プレイヤーズ』) メルヘン:(被せて)『バートリー・メイデン』!!(ゼーレが呪文を言い終える前にゼーレの腕が血でできた無数のナイフに襲われる) ゼーレ:ぐぅあッ!?(光も炎も消え去る) ショコラ―デ:メル!?血が足りないんじゃなかったの!? メルヘン:あぁ、足りなかったさ。でも…。ロイちゃんが機転を利かせてくれてね! 0: 0: クロイツ:多分ほんの微量ですけど、ここに昨日メルさんからもらったクッキーがあります。確かこれ、血が入ってるんでしたよね…! メルヘン:おお、流石ロイちゃん!その血のリソースさえあれば私も奇襲できる…! 0: 0: メルヘン:と、いうわけさ!仮にも手作りお菓子がずっとポケットに入れっぱなしだったってのは悲しかったけどね…。 クロイツ:そんなことより今がチャンスです、ショコラーデ! ショコラーデ:ありがとう、二人とも!さあ…!吸血鬼狩りよ、その心臓を捧げなさい!『アリス・オブ・ハーツ』!! ゼーレ:(全身から血を吹き出すゼーレ)うぐっ、ァ…!……く、そ…ッ。(その場に倒れる) 0: 0: ショコラーデ:…はぁー、疲れたぁ。吸血鬼相手なのにこの人強すぎ…! クロイツ:完全勝利ですね、ショコラーデ!メルさんもありがとうございました…! メルヘン:うんうん、ナイス連携だった!これにて一件落着…、の前に。…おーい、生きてるかい、吸血鬼狩りさん。 ゼーレ:…ぁ。 メルヘン:よかったよかった。まだ生きてるね。…いや、良くなかったかもな。 クロイツ:え、それはなんで…。 ショコラーデ:確か吸血鬼狩りって仕事を失敗したことを知られれば役立たずとして始末されるんじゃなかったっけ…? メルヘン:あぁ、その通り。なにせ聖水や吸血鬼の存在、神託詠唱(しんたくえいしょう)まで教わっているんだからね。 クロイツ:そ、そんな…! ショコラーデ:まあ、いいんじゃない?私たちを殺そうとしてきた人だし、クロまで危険な目に合わせてたし。見殺していいと思うなあ、私は。 メルヘン:そうだね、残念だけどこのまま放っておくしかない。 話数転換。 クロイツ:ま、待ってください! ショコラーデ:クロ? クロイツ:確かこの人、俺を攫ったとき、「私も本意では殺したくない」って言ってたような気がして…。 メルヘン:あー…。もしかしてこの人、死にたくなくて戦ってた感じかな。 ショコラーデ:というと? メルヘン:吸血鬼狩りって言うのは言うなれば超ブラック企業だ。一度入ったら抜けられないし、逃げ出せば始末され、吸血鬼を逃がしても始末され、吸血鬼と戦っても殺されるかもしれない。 メルヘン:じゃあなんで吸血鬼狩りが居なくならないのかといえば、組織が戦闘経験のある殺し屋とかボディガードとかを強引に組織に引っ張っているからなんだ。 クロイツ:結構えげつないことしますね、吸血鬼狩り…。 メルヘン:まあ、吸血鬼弾圧過激派だからねぇ彼らは。多分吸血鬼よりも凶暴なんじゃないかと思うんだけど…、まあそれはさておき。僕が言いたいのは、多分その人はその被害者だってことさ。 ショコラーデ:被害者?…あー、半ば強制的に入れられてるんじゃないかってこと? メルヘン:そうそう。それで失敗しても逃げても殺される。…とんだとばっちりだよね。 クロイツ:か、可哀想…。どうにかしてこの人を救う方法はないんですか…!? メルヘン:…そうだねぇ。じゃあ、こんなのはどうかな―――。 0: 0:そう言いながらメルヘンは血入りのクッキーを取り出し…。 シーン転換。 0:ゼーレがベッドで横になっている。 0: ゼーレ:ぅ…。こ、こは…?私は確か、あの吸血鬼たちに負けて…。 メルヘン:おや、お目覚めかな、“元”吸血鬼狩りさん。 ゼーレ:っ…!?お前は…! メルヘン:吸血鬼のメルヘンだよ。メルって呼んでくれて構わないさ! ゼーレ:そうじゃない、ここはどこだ、何故私の傷がすべて治っている…!? メルヘン:まあまあ、焦らないで。順を追って説明しよう。まず、ここは僕の家。あぁ、バルコニーにはロイちゃんとショコラーデもいるよ! ゼーレ:…それで。なぜ敵である私をここに?申し訳ないが、私はまだ死にたくなくてね。わざわざ家に招かれ治癒されたことを知っていながら私は今からお前たちを殺しに行くが。 メルヘン:あぁ、その必要はない。なぜなら…、君はもう、僕達の“同胞”だからね! ゼーレ:…は? メルヘン:気づかないかい?君はもうすでに、僕の眷属(けんぞく)になっている。 ゼーレ:…なるほど、違和感の正体はこれか。確かに、身体を廻(めぐ)る血の流れをはっきりと感じることができる…。 メルヘン:だろう?きっと吸血鬼狩りの仕事はさぞ大変だろうと思ってね。楽で仕方がないこちら側の世界にご招待したってわけさ。 ゼーレ:お前、私の事情を知っていたのか…!? メルヘン:その感じだと僕の推測は当たっていたようだね。どうだい、お加減は。 ゼーレ:…フフ。案外悪い気はしない。重苦しい呪縛から解放されたような…、そんな気分だ。これなら追われていてももはや関係ないし、な。 メルヘン:良かった、なにも聞かずに眷属するのは本当はタブーなんだけど…。喜んでもらえてるなら何よりさ! ゼーレ:とんでもない。むしろこちらから襲い掛かったようなものなのに私の心中を察してここまでしてくれるなんてまさに感謝の極みだ。…これからよろしく頼む。吸血鬼狩りの迎撃は知識のある私に任せてくれ。 メルヘン:ひゅぅ、こりゃとんでもなく強い用心棒が手に入っちゃったかなぁ…! ゼーレ:期待に添えるかはわからんが、精一杯ボディガードをさせてもらおう。「マイマスター」。 メルヘン:あはは、そうかしこまらなくてもいいって。ほら、もう日は跨いじゃったけど、今日はバレンタインデーだ。お菓子を用意してあるから、みんなで楽しく食べようじゃないか! ゼーレ:ああ…。感謝する。 話数転換。 0:同時刻、大都市を一望できるバルコニーにて。 0: クロイツ:いやあ、今日は大変でしたね。 ショコラーデ:そうだね…。でも、ゼーレさん?とも和解できそうで、クロもメルも無事で…、本当よかった。 クロイツ:でも、今日であったばかりのゼーレさんが俺より先に吸血鬼になっちゃうなんて…。ちょっとショックです。 ショコラーデ:あれは仕方ないでしょ、状況が状況なんだから! クロイツ:むぅ…。いつか、俺のことも吸血鬼にしてくださいね!約束ですよ…? ショコラーデ:…勿論だよ。いつか、ね。ふふ…。 クロイツ:もう、はぐらかさないでくださいよぉ! ショコラーデ:そうやって焦らないの。生き急いだら転んじゃうよ、ニンゲンくん。 クロイツ:うー、わかりましたよぉ…。 シーン転換。 クロイツ:…あの、ショコラーデ。 ショコラーデ:うん? クロイツ:その…。渡しそびれてたお菓子、渡したいんですけど…。 ショコラーデ:あ、そっか!クロ作ってきてくれてたんだっけ!ごめんごめん、いろいろありすぎてすっかり忘れてたよ。 クロイツ:…えっと、これ、どうぞ。(袋に入ったマカロンを渡す) ショコラーデ:お、美味しそうなマカロン!さっすが、女子力高いね!じゃあ…、私からもこれ。量は少ないし初めて作ったから不格好だけどね。(生チョコレートを渡す) クロイツ:わぁ…!可愛いチョコレート…!ショコラーデからの贈り物ってだけで凄く嬉しいです…!大切に食べますね! ショコラーデ:ありがとう、クロ!嬉しいな…!……ねえ、クロ。…貧血気味ならいいんだけどさ。…このチョコマカロンと一緒にクロの血、吸っていい? クロイツ:…!勿論、です。さっき甘いものいただいたから、甘ったるい味がするかもですけど…。 ショコラーデ:クロの血ならなんだっておいしいよ。甘くたって、苦くたって…、ね。 クロイツ:そういうものなんですか…? ショコラーデ:そうそう、それにクロの血は絶品だしね!さて…、じゃあいただこうかな。 クロイツ:は、はい…。どうぞ…!(首を差し出して) ショコラーデ:ふふ…。じゃあ、聖バレンタインデーと、クロの愛情たっぷりマカロンに…、乾杯。 0: 0: 0: ショコラ―デ:…うん、蕩(とろ)けちゃいそうなほど、甘いや。 0: 0:End

0:煌めく大都市の夜景を一望できるビルの屋上。 0:誰もいないはずのそこには、二つの影。 0: ショコラーデ:……ぷは。ふふふっ…。―――今日も、クロの血は美味しいね。 クロイツ:それは良かったです、ショコラーデ。…うぁ。(少しふらつく) ショコラーデ:おっと…。(クロを支える)ごめんごめん、ちょっと吸いすぎちゃったみたいだね。 クロイツ:あ…。えへへ、すみません。ありがとうございます。もう大丈夫です! ショコラーデ:それならよかった。…さて、じゃあそろそろ行こっか。メルも待ってる。歩けるかな? クロイツ:はい! 0: 0:―吸血はショコラ―デと共に― シーン転換。 0:日本。バレンタインデー前日の夜。 0: 0:ビルから漏れ出る幻想的な光が街を彩る。 0: クロイツ:メルさーん!こんばんはー! メルヘン:お、来た来た…。遅いよー、二人ともー! ショコラーデ:ごめんごめん、クロの血があんまりにもおいしくて、ちょっとふけってたの。 メルヘン:まったくー、今日もイチャイチャしてんねぇ、お二人さん! ショコラーデ:なっ…。い、イチャイチャなんてしてないから!私とクロはただヴァンパイアと吸血袋(しょくりょう)の関係だから! メルヘン:あははっ!そうだねぇ、“今は”ね!さて、今日二人を呼んだのは他でもない、明日がバレンタインだからさ! クロイツ:あぁ、そういえばもうそんな時期でしたね! ショコラーデ:え、ってことはもしかして、メル、私たちにチョコくれるの!? メルヘン:まあ、チョコレートじゃないんだけどね。じゃあ二人とも、ちょっと手を出してくれるかなー? クロイツ:おお…!楽しみです! ショコラーデ:いやあ、ご馳走になるよメル~! メルヘン:ふふー、はい、どうぞ! 0: 0:二人の手のひらに、メルヘンはクッキーの袋を一つ乗せる。 0: クロイツ:おお、美味しそうなチョコクッキー! メルヘン:ふっふっふー。今食べてくれてもいいよ? クロイツ:やったあ!じゃあ、早速(いただきます) ショコラーデ:(被せて)待って、クロ。 クロイツ:え? ショコラーデ:メル…。このチョコ、包装を剝がしてもないのに凄い血の匂いがするけど…。 メルヘン:…?そりゃもちろん入れたよ?私の血。 ショコラーデ:それはダメに決まってるでしょーー!! メルヘン:えぇ!?なんでぇ!? クロイツ:た、確か人間が吸血鬼になる条件って、「吸血鬼の血を飲むこと」でしたよね…!? メルヘン:そうだね、その吸血鬼の血を飲むことでその人間は晴れてその吸血鬼の眷属(けんぞく)となる…。だけど、え?もしかしてロイちゃんってまさか…。 ショコラーデ:吸血鬼じゃない!クロは人間だよメル!! メルヘン:えぇー!?そりゃごめん!てっきりもうとっくのとうに眷属(けんぞく)の契(ちぎ)りを結んでるのかと思ってた…。血の臭いもしてたからさあ。 クロイツ:俺は今にでもなりたいんですけど…。ショコラーデが「ちゃんと考えてからにしなさい」って言うから…。 ショコラーデ:そりゃそうでしょ!私たちの同胞になるってことは、もう二度と人間として生きることができないってこと。ちゃんと理解してくれないと困るよ…? メルヘン:まあ、人間だった時のことを捨て去るために、僕たちは偽名を使うわけだしね…。人間と同じ生活には戻れない。それはちゃんと理解するべきだね。 クロイツ:むぅ。絶対吸血鬼になったほうが楽しいと思うんだけどなあ…。人間としての生活なんてつまらないですし…。 ショコラーデ:それでもいつか、後悔する日が来るかもしれないからね。もし本当になりたいなら、人間のうちにやっておきたいことは全部やっておくんだよ? クロイツ:…むぅ。わかりました。 メルヘン:よろしい。…にしても、本当にショコラーデはロイちゃんのことが好きなんだね! ショコラーデ:…うるさい。 メルヘン:あははっ!本当、君はからかい甲斐があるね! クロイツ:…あ、そういえば。ずっと聞きたかったんですけど。 ショコラーデ:ん?どしたの、クロ。 クロイツ:えっと…。ショコラーデと知り合った時から、吸血鬼のルールってことで俺も偽名を命名されましたけど…。なんでクロイツなんですか?というかクロイツってどういう意味なんです? メルヘン:ドイツ語で「十字」を表す言葉だよ。 クロイツ:えっ、確か十字架って吸血鬼の天敵じゃあ…。なんで俺にその名前を…? ショコラーデ:そりゃあ、えっと…。 ショコラーデ:クロが私の“弱点”だからだよ…。(小声) クロイツ:え、なんて…? ショコラーデ:…あー、そりゃあ勿論、君を他の吸血鬼に取られないようにするためだよ!名前が自分たちの弱点だったら、吸血鬼少しでも近寄りがたくなるでしょ? クロイツ:な、なるほど…? メルヘン:ふふっ…。素直じゃないなあ…。(小声) 話数転換。 ショコラーデ:ああ、そうそう!私も実はクロイツにお菓子持ってきたんだ! クロイツ:えっ!本当ですか! ショコラーデ:うん。私器用じゃないから、市販のだけどね…。はい、これ。どうぞ! 0: 0:そういってショコラーデはクロイツにマシュマロの袋を手渡す。 0: クロイツ:ま、マシュマロ…。(少しショックそうに) メルヘン:……。 ショコラーデ:あれ、マシュマロ嫌いだった!?だったらごめん…!普通に私が焼きマシュマロパーティーしたくて買ったみたいなところあるから…! メルヘン:理由が私利私欲すぎるでしょ…。 クロイツ:い、いえ…!楽しそうですね、それ…! ショコラーデ:…うーん、やっぱりマシュマロは不満だったかあ。じゃ、じゃあ…、こっちはいかが?! 0: 0:そういってショコラーデが懐から取り出したのは小さなグミの袋。 0: クロイツ:グ、ミ……。 メルヘン:……。(片手で顔を覆ってやれやれ、の意) ショコラーデ:いったんこれあげるから!これで我慢して!明日ちゃんとしたチョコ作ってくるからさ…!ね…!ごめんねクロ…! クロイツ:……ばか。 ショコラーデ:え? クロイツ:ショコラーデのばかっ!! 0: 0:そう言ってクロイツは受け取らずに走り去ってしまう。 0: ショコラーデ:えっ!?ちょっ、クロぉー!?…行っちゃった。 メルヘン:…そりゃそうだよ。 ショコラーデ:…もしかして私、何かやらかしちゃった? メルヘン:…バレンタインデーに送るお菓子によって意味があるの、知ってるかい? ショコラーデ:知らないけど…。 メルヘン:…グミとマシュマロの意味、今調べてみ。 ショコラーデ:(スマホを取り出し調べる)……っ!ち、違うの!ホントに知らなかったの!偶然なの! メルヘン:それを僕に言ってどうするのさ…。(苦笑) ショコラーデ:あぁぁ、明日クロになんて言おう……。 0: 0:そんなやり取りを遠くから見つめる影。 0: 0: ゼーレ:…これはこれは。…はぁ。せっかくのバレンタインデーが…。 シーン転換。 0:翌日。 0: 0:夕暮れの街を歩くクロイツ。片手には袋を持っている。 0: クロイツ:…かなり早く家出ちゃった…。どこで暇潰そうかなあ。 0: ゼーレ:―――もし、そこの少年。 クロイツ:…えっと、俺ですか? ゼーレ:そう。君だ。少し聞きたいことがあってね。いいかな? クロイツ:はい、いいですけど…。 ゼーレ:ありがとう。いやあ、バレンタインデー当日にすまないね。 クロイツ:いえ、ちょうど暇をしていたところだったので…! ゼーレ:ふぅん?…暇なようには見えないが。(クロイツの持つ袋を見て) クロイツ:あぁ、えっと…。実は、夜から待ち合わせで…! ゼーレ:そうかい、それは楽しそうで何よりだ。お幸せにね。 クロイツ:…はいっ。 ゼーレ:…しかし、残念なことに私は君に謝罪しなくてはならない。 クロイツ:謝罪…? ゼーレ:あぁ。 0: ゼーレ:今年のバレンタインは、君にとって最悪の日になるだろう。 0: クロイツ:それは、どういう…? ゼーレ:言葉通りの意味…さっ。 0: 0:ゼーレが小さな針をクロイツの腕に刺す。 0: クロイツ:っ…!? ゼーレ:君、習わなかったかい?知らない人の話は無視しなきゃダメなんだぞぅ…? クロイツ:ぁ…。(意識を失う) ゼーレ:…さあて。…私にとっても最悪だよ、クソ……。 シーン転換。 0:同日、夜。煌びやかな街の中。 0: ショコラーデ:…遅いな、クロ。もう三十分も過ぎてるし、何の連絡もない…。いつも遅刻することすらないのに。 ショコラーデ:…いやな予感がする。 シーン転換。 0:人気のない公園にて。 0: 0:クロイツは手足を拘束されている。 0: ゼーレ:すまないな。巻き込んでしまって。 クロイツ:…俺を攫って、なんのつもりですか。 ゼーレ:決まっているだろう?君のお友達をおびき寄せるためだよ。 クロイツ:…友達って、ショコラーデのことですか? ゼーレ:ああ。私も本当はこんなことしたくないのだがね。そういう仕事なんだ。 クロイツ:…まさか、吸血鬼狩りですか。 ゼーレ:ご名答。あの吸血鬼から聞いていたかな。そうとも、吸血鬼を始末するのが私の仕事だ…。誠に、申し訳ないがね…。 クロイツ:ま、待ってください!確かに人を襲う吸血鬼もいるって聞きましたけど、ショコラーデは人を無暗に襲ったり血を吸ったりしません! ゼーレ:だろうね。それは昨日の会話からして明らかだ。…しかし、吸血鬼という存在がこの世界に“在る”。それだけで十分我々人類の脅威、なのだ。少年。 ゼーレ:それ故(ゆえ)、我々は吸血鬼を滅するために動く。そこに善良か悪辣(あくらつ)かは関係ない。吸血鬼は等しく吸血鬼だ…。はぁ。 クロイツ:そんな…。 ゼーレ:…いや、実は私も好きで(この仕事に就いているわけでは) ショコラーデ:クローっ! 0: 0:空からショコラーデが飛び降りてくる。 0: ゼーレ:と…。ようやく来たか、ヴァンパイア。 話数転換。 0:地面に着地し、ゼーレと対峙するショコラーデ。 0:クロイツはゼーレの後ろにいる。 0: ゼーレ:やあ。待ちくたびれたよヴァンパイア。 ショコラーデ:…待ち合わせの場所にいつまでも来ないと思ったら。クロを攫うだなんて、随分と卑怯なことをするんだね、吸血鬼狩りって言うのは。 ゼーレ:仕方ないだろう?生身の人間が暴力の化身ともいえる吸血鬼に正攻法で敵うわけがない。それに、街中でいきなり襲うのもまずいだろう?だからおびき寄せさせてもらった。悪いな。 クロイツ:ショコラーデ…! ショコラーデ:クロっ! ゼーレ:御覧の通り、少年は無事だし、麻酔の注射と手足の拘束以外は何もしていない。そこは安心してくれたまえ。 ショコラーデ:……。 0: 0:ショコラーデとゼーレがゆっくりと歩み寄る。 0: ゼーレ:あぁ、そういえば自己紹介が遅れたね。私の名前は『ゼーレ』。魂なんて籠っていない、気だるげな吸血鬼狩りさ。 ショコラーデ:御託(ごたく)はいいよ。あなたの目的は私の命でしょ。…早く始めよう。 ゼーレ:フフッ…。そうだな。 0: クロイツ:(N)この気迫と張りつめた空気…。これが吸血鬼の殺し合い…。 クロイツ:(N)…息がつまる。俺でもわかる。この空気に漂う殺気は尋常じゃない。ショコラ―デも不安そうな顔をしてる…。 クロイツ:(N)なのに、あの吸血鬼狩りの人…。ゼーレは一切怯んでない。むしろ…。笑ってる。 0: ゼーレ:何せ今日はバレンタインデーだ。私もさっさと終わらせて、チョコレートを食べたいからね。 ショコラーデ:へえ。あなた、チョコ好きなんだ。 ゼーレ:甘味はよく嗜(たしな)む方だよ。意外だとよく言われるがね。 0: 0:お互いが十分近づくと、沈黙が続く。 0: ゼーレ:……。 ショコラーデ:……。 0: クロイツ:(N)次の瞬間、ゼーレは拳銃を取り出してショコラーデに発砲する。 0: ショコラーデ:(躱して)ふっ、そんな弾丸には当たらないよっ! ゼーレ:そんなことはわかっているさ…。ふむ。 0: クロイツ:(N)ショコラ―デが避けた方向に次々に弾丸を放っていくゼーレと、それをことごとく避け続けるショコラーデ。 クロイツ:(N)…何かがおかしい気がする。ゼーレは今まで何人も吸血鬼を殺して来たんだろ。そんな吸血鬼殺しのエキスパートが、こんな単調な攻撃しかしないなんてことあるのか…? 0: ショコラーデ:ふふ…!攻撃が単調だね!そんなので私を捉えられるわけないじゃん! ゼーレ:…いい位置だ。 クロイツ:(何かに気づいて)…っ!そっちに避けちゃだめです! ゼーレ:点火。 ショコラーデ:っ!? 0: クロイツ:(N)俺の言葉も束の間、ショコラ―デが避けた先の地面が大きな音を立てて爆発し、爆発地点から“水”が噴き出してきた。 クロイツ:(N)咄嗟にショコラ―デも回避の姿勢に入るが、間に合わず足に水を浴びせられる。 0: ショコラーデ:こ、れはっ…!“聖水”っ…!(苦しんで)ぐぁあっ…!!(膝をつく) クロイツ:ショコラ―デっ! ゼーレ:吸血鬼。お前、戦い慣れてないな。自分の力を過信して、まんまと聖水を仕込んだ地面まで誘導されてくれた。それにしても…。少年。ただの人間がよく地面の仕込みに気づいたね。 ゼーレ:おかげで全身に与えられるはずだったダメージも足を潰しただけになってしまった。…まあ、十分だがね。 クロイツ:くっ…! ショコラーデ:あ、足に力がっ…、入らない…っ! ゼーレ:(ゆっくりショコラーデに近づく)しかし、戦闘経験がないということは…。本当にお前は平和に過ごしてきたんだなあ、ショコラーデ。戦闘前の殺気は見せかけだったってことか。 ショコラーデ:っ、うぅ…っ! ゼーレ:先に言っておく。お前に罪はない。強いて言えば吸血鬼になってしまったというくらいだ。じゃあ…。宣言通り、さっさと終わらせるとしよう。 クロイツ:待って、ショコラーデっ!! ゼーレ:―――この無辜(むこ)なる魂に救済あれ。 0: クロイツ:(N)そうしてゼーレは拳銃をショコラーデの頭に向ける。 クロイツ:(N)待って、だって俺はまだショコラ―デに―――。 0: メルヘン:そんなこと、この僕がさせるわけないだろう!! 0: クロイツ:(N)そんな声が響いたかと思うと、空からコウモリの大群がショコラーデとゼーレの間を割るように登場し。 クロイツ:(N)コウモリはショコラーデの身体を包み込むと、俺の近くにショコラーデを移動させ、やがて人の形へと変化していく。…そう、俺達のよく見慣れた、あの形に! 0: ショコラーデ:メルっ…! クロイツ:メルさんっ!! メルヘン:ああ、そうとも。吸血鬼メルヘン、親友のピンチに遅れて登場だ。待たせたなぁー! 話数転換。 ゼーレ:ちっ…。こりゃ参ったな。増援とは。日を分けて始末するつもりだったんだけどな。 ショコラーデ:メル…。ごめん、ありがとう…!というか、なんでここが…? メルヘン:そりゃあ勿論、親友が殺されかかってて何もしない僕じゃあないからさ!さて…。ロイちゃん。ショコラーデの足が治癒されるまでショコラーデを頼むよ。 クロイツ:えっ…?あれ、拘束が解かれてる…!? メルヘン:あはは、僕にかかればこのくらいちょちょいのちょいさ。さあて、じゃあ(戦闘と行きますか) ゼーレ:(被せて)させないっ…! 0: 0:ゼーレがメルヘンに近づきながら銃を発砲する。 0: メルヘン:おっとっ…!ハハ! 0: クロイツ:(N)メルさんは不敵に笑うと、再び身体を百数匹のコウモリに変え、そのうちの一匹で銀の銃弾を受け止めさせる。そのコウモリは塵となって消えたが、 クロイツ:(N)それ以外は途轍もないスピードでゼーレの後ろに回り込み。 0: メルヘン:喰らえッ! 0: クロイツ:(N)また人間の形に姿を戻すと、メルさんは赤黒い斧のようなものを瞬時に造りだし、ゼーレに向かって振り下ろす! 0: ゼーレ:ちぃっ!血液の物質化かッ…!ふんっ!(懐から聖水の入った瓶を斧に向かって投げつつ回避する) メルヘン:勿論それも喰らわないよっ!(瓶からあふれる聖水を浴びることなく足に血をつける) ゼーレ:…なかなかやるな、吸血鬼。 メルヘン:あいにく、僕はショコラーデと違って戦闘のやり方をしっかり教わっているんでね!そりゃ、まだまだ行くぞぉー! ゼーレ:望むところだっ…! 0: 0:ゼーレとメルヘンの激しい戦闘が続く。 0: ショコラーデ:…ごめんね、クロ。すぐに攫われたことに気づけなくて。 クロイツ:いえ、謝るのは俺の方です。俺のせいで、ショコラーデとメルさんを危険な目に合わせてしまって…。それに、昨日も喧嘩して別れちゃったし…。 ショコラーデ:ふふ…。あれはごめんね、知らなかったとはいえ、あんまりにもピンポイントな偶然だったね…。 クロイツ:…大丈夫です、俺もショコラーデに悪気がないことは心では分かっていたので。 ショコラーデ:…あーあ、ホントはあとでゆっくりお菓子と一緒にクロの血を嗜む予定だったのに。吸血鬼狩りさんのせいで狂っちゃった。 クロイツ:えっ、お菓子…? ショコラーデ:うん。流石にクロに悪いと思ったから、あのあとメルに頼んでチョコの作り方教わって作ってきたんだ。 クロイツ:…あはは。奇遇ですね、ショコラーデ。俺も今日、お菓子作ってきたんですよ。男子から女子に渡すのもアリかなて思って。 ショコラーデ:マジか…!じゃあ余計はやくゼーレをやっつけて、一緒にお菓子を楽しまなきゃね…!さて、じゃあそのために、クロにお願いがあります。 クロイツ:勿論です、ショコラーデ。さあ…。たんと召し上がれ。 ショコラーデ:ふふ。いただきます、クロ。 0: 0: 0: メルヘン:そこだッ!行け、コウモリ!!(コウモリを招来してゼーレにぶつけようとする) ゼーレ:もうその手には乗らないッ!『打ち砕かれよ。救いあれ。迷える隣人を、無辜(むこ)なる怪物を、無垢(むく)なる子供を。』!(コウモリを消滅させる) メルヘン:特定の範囲で効果を発揮する神託詠唱(しんたくえいしょう)か、厄介な…!でも、隙ができたようだね!出でよ、『ブラッディ・メアリー』!(血のナイフが降り注ぐ) ゼーレ:隙だらけなのはそちらの方だ!『プレイヤーズ・シルバー』…!(懐から銀のナイフを取り出し、メルヘンに向かって投げる) メルヘン:それくらいっ…、なっ!?ぐぁっ…! 0: クロイツ:(N)メルさんは銀のナイフを斧で弾こうとするも、そのナイフは斧を貫通し、メルさんの肩に命中。その衝撃で作り出した無数の血のナイフはナイフの形を留めることなく地面にぼたぼたと堕ちた。 0: ゼーレ:…ふぅ。ようやっと怯んだな。儀式が施された銀の短剣のお味はいかがだ、吸血鬼。 メルヘン:…ま、さか…。こんなに力が入らなくなるだなんてッ…!このナイフに一体どれだけ魔力を籠めればこうなるんだッ、くそ…。ヴァンパイアの力が浄化されていく…ッ! ゼーレ:このナイフに籠っている魔力はわずかだ。では、なぜそんなに苦しいんだろうなあ、吸血鬼。(懐から木の杭を取り出しながら) 0: ショコラーデ:それは勿論、メルが戦いのときに自分の血を消費し過ぎているから! 0: ゼーレ:っ! クロイツ:頑張ってください、ショコラーデ! ショコラーデ:はぁぁーっ!(血の剣を携えてゼーレに斬りかかる) ゼーレ:なぜ、あまりにも回復が早すぎる…!(避けるが木の杭を落とす)…っ、そういうことか吸血鬼! ショコラーデ:そうだよ!ヴァンパイアらしく、美味しく食料(クロ)をいただいて回復したの! クロイツ:だいぶ吸われたので、俺は結構フラフラですけどね…!! 話数転換。 メルヘン:ふたりとも…! クロイツ:メルさんはいったん休憩を!血を消耗し過ぎているんでしょう…!? メルヘン:…うん、すまないね…!(コウモリに姿を変えゼーレから距離を取る) ゼーレ:…ハハハ。しかし…。ショコラーデ。お前が復活したからなんだ!お前に戦闘経験がないことは知っている、そんなお前が私に果たして敵うのか…、見ものだな!(ショコラーデに接近する) ショコラーデ:…っ! ゼーレ:行くぞッ!(銃を手に取り発砲する) ショコラーデ:戦闘経験がなくても血が満タンの今ならできるはず…!『ヴァンプ・オブ・ミスト』ッ!(一瞬でその姿が消える) ゼーレ:なにッ!?どこに…、いや、これは!? ショコラーデ:隙だらけだよ、吸血鬼狩り!(いつの間にかゼーレの背後に立っており、血の剣をゼーレに向けて振り下ろす) ゼーレ:っ…!(躱しきれず右足を剣先が抉る)…っぐぁ。 ショコラーデ:まだまだ行くよ!『ヴァンプ・オブ・ミスト』!(再び姿を消す) ゼーレ:まさかお前も霞化(かすみか)を使えるとは…!厄介この上ないな! ショコラーデ:はぁッ!(次はゼーレの上に姿を現し剣を振りかぶる) ゼーレ:ぐぅ…ッ!!(短剣を取り出し何とか止める) 0: 0: メルヘン:…なあんだ、ショコラーデ、結構戦闘の才能あるんじゃん。 クロイツ:…吸血鬼ってコウモリになるだけじゃないんですね…。 メルヘン:ああ、そうとも!コウモリが一番一般的だけど、霞(かすみ)や狼…。カラスになる奴なんかもいるね。 クロイツ:へぇ…。 メルヘン:…あー、くらくらする。血が一切戻ってる感覚が無いや。…あの銀のナイフに籠められた祈りが吸血鬼の回復能力を封じてるのか。 クロイツ:大丈夫なんですか…!?なんだったら俺の血を…! メルヘン:それはダメだ。ただでさえショコラーデに血を吸われてるのに、僕まで吸ったら君がミイラになっちゃうよ。 クロイツ:…そうですか。 メルヘン:…あぁ、少しでも血が補充できれば不意をつけるんだろうけど…。 クロイツ:…あっ! 0: 0: ゼーレ:チッ、ちょこまかとっ…!! ショコラーデ:はぁぁッ!!(剣でゼーレの横腹を貫く) ゼーレ:ぐ、ぁ…!しかし、そこが好機ッ…!『燃える焔(ほむら)は火刑の罪、悪しき魔女に鉄槌を。』…!! 0: 0:ゼーレとショコラ―デの周りを炎が包み込む 0: ショコラーデ:っ、これはッ…! ゼーレ:これで霞(かすみ)になることもコウモリに化けることもできまい…ッ!『審判はここに。神託はここに。我らが神の御心(みこころ)のままに。』!!(炎が勢いを増し光が溢れ出す) ショコラーデ:熱っ…! ゼーレ:オオォ…ッ!!浄化の光をここにッ!『オラクル・(アシスタント・プレイヤーズ』) メルヘン:(被せて)『バートリー・メイデン』!!(ゼーレが呪文を言い終える前にゼーレの腕が血でできた無数のナイフに襲われる) ゼーレ:ぐぅあッ!?(光も炎も消え去る) ショコラ―デ:メル!?血が足りないんじゃなかったの!? メルヘン:あぁ、足りなかったさ。でも…。ロイちゃんが機転を利かせてくれてね! 0: 0: クロイツ:多分ほんの微量ですけど、ここに昨日メルさんからもらったクッキーがあります。確かこれ、血が入ってるんでしたよね…! メルヘン:おお、流石ロイちゃん!その血のリソースさえあれば私も奇襲できる…! 0: 0: メルヘン:と、いうわけさ!仮にも手作りお菓子がずっとポケットに入れっぱなしだったってのは悲しかったけどね…。 クロイツ:そんなことより今がチャンスです、ショコラーデ! ショコラーデ:ありがとう、二人とも!さあ…!吸血鬼狩りよ、その心臓を捧げなさい!『アリス・オブ・ハーツ』!! ゼーレ:(全身から血を吹き出すゼーレ)うぐっ、ァ…!……く、そ…ッ。(その場に倒れる) 0: 0: ショコラーデ:…はぁー、疲れたぁ。吸血鬼相手なのにこの人強すぎ…! クロイツ:完全勝利ですね、ショコラーデ!メルさんもありがとうございました…! メルヘン:うんうん、ナイス連携だった!これにて一件落着…、の前に。…おーい、生きてるかい、吸血鬼狩りさん。 ゼーレ:…ぁ。 メルヘン:よかったよかった。まだ生きてるね。…いや、良くなかったかもな。 クロイツ:え、それはなんで…。 ショコラーデ:確か吸血鬼狩りって仕事を失敗したことを知られれば役立たずとして始末されるんじゃなかったっけ…? メルヘン:あぁ、その通り。なにせ聖水や吸血鬼の存在、神託詠唱(しんたくえいしょう)まで教わっているんだからね。 クロイツ:そ、そんな…! ショコラーデ:まあ、いいんじゃない?私たちを殺そうとしてきた人だし、クロまで危険な目に合わせてたし。見殺していいと思うなあ、私は。 メルヘン:そうだね、残念だけどこのまま放っておくしかない。 話数転換。 クロイツ:ま、待ってください! ショコラーデ:クロ? クロイツ:確かこの人、俺を攫ったとき、「私も本意では殺したくない」って言ってたような気がして…。 メルヘン:あー…。もしかしてこの人、死にたくなくて戦ってた感じかな。 ショコラーデ:というと? メルヘン:吸血鬼狩りって言うのは言うなれば超ブラック企業だ。一度入ったら抜けられないし、逃げ出せば始末され、吸血鬼を逃がしても始末され、吸血鬼と戦っても殺されるかもしれない。 メルヘン:じゃあなんで吸血鬼狩りが居なくならないのかといえば、組織が戦闘経験のある殺し屋とかボディガードとかを強引に組織に引っ張っているからなんだ。 クロイツ:結構えげつないことしますね、吸血鬼狩り…。 メルヘン:まあ、吸血鬼弾圧過激派だからねぇ彼らは。多分吸血鬼よりも凶暴なんじゃないかと思うんだけど…、まあそれはさておき。僕が言いたいのは、多分その人はその被害者だってことさ。 ショコラーデ:被害者?…あー、半ば強制的に入れられてるんじゃないかってこと? メルヘン:そうそう。それで失敗しても逃げても殺される。…とんだとばっちりだよね。 クロイツ:か、可哀想…。どうにかしてこの人を救う方法はないんですか…!? メルヘン:…そうだねぇ。じゃあ、こんなのはどうかな―――。 0: 0:そう言いながらメルヘンは血入りのクッキーを取り出し…。 シーン転換。 0:ゼーレがベッドで横になっている。 0: ゼーレ:ぅ…。こ、こは…?私は確か、あの吸血鬼たちに負けて…。 メルヘン:おや、お目覚めかな、“元”吸血鬼狩りさん。 ゼーレ:っ…!?お前は…! メルヘン:吸血鬼のメルヘンだよ。メルって呼んでくれて構わないさ! ゼーレ:そうじゃない、ここはどこだ、何故私の傷がすべて治っている…!? メルヘン:まあまあ、焦らないで。順を追って説明しよう。まず、ここは僕の家。あぁ、バルコニーにはロイちゃんとショコラーデもいるよ! ゼーレ:…それで。なぜ敵である私をここに?申し訳ないが、私はまだ死にたくなくてね。わざわざ家に招かれ治癒されたことを知っていながら私は今からお前たちを殺しに行くが。 メルヘン:あぁ、その必要はない。なぜなら…、君はもう、僕達の“同胞”だからね! ゼーレ:…は? メルヘン:気づかないかい?君はもうすでに、僕の眷属(けんぞく)になっている。 ゼーレ:…なるほど、違和感の正体はこれか。確かに、身体を廻(めぐ)る血の流れをはっきりと感じることができる…。 メルヘン:だろう?きっと吸血鬼狩りの仕事はさぞ大変だろうと思ってね。楽で仕方がないこちら側の世界にご招待したってわけさ。 ゼーレ:お前、私の事情を知っていたのか…!? メルヘン:その感じだと僕の推測は当たっていたようだね。どうだい、お加減は。 ゼーレ:…フフ。案外悪い気はしない。重苦しい呪縛から解放されたような…、そんな気分だ。これなら追われていてももはや関係ないし、な。 メルヘン:良かった、なにも聞かずに眷属するのは本当はタブーなんだけど…。喜んでもらえてるなら何よりさ! ゼーレ:とんでもない。むしろこちらから襲い掛かったようなものなのに私の心中を察してここまでしてくれるなんてまさに感謝の極みだ。…これからよろしく頼む。吸血鬼狩りの迎撃は知識のある私に任せてくれ。 メルヘン:ひゅぅ、こりゃとんでもなく強い用心棒が手に入っちゃったかなぁ…! ゼーレ:期待に添えるかはわからんが、精一杯ボディガードをさせてもらおう。「マイマスター」。 メルヘン:あはは、そうかしこまらなくてもいいって。ほら、もう日は跨いじゃったけど、今日はバレンタインデーだ。お菓子を用意してあるから、みんなで楽しく食べようじゃないか! ゼーレ:ああ…。感謝する。 話数転換。 0:同時刻、大都市を一望できるバルコニーにて。 0: クロイツ:いやあ、今日は大変でしたね。 ショコラーデ:そうだね…。でも、ゼーレさん?とも和解できそうで、クロもメルも無事で…、本当よかった。 クロイツ:でも、今日であったばかりのゼーレさんが俺より先に吸血鬼になっちゃうなんて…。ちょっとショックです。 ショコラーデ:あれは仕方ないでしょ、状況が状況なんだから! クロイツ:むぅ…。いつか、俺のことも吸血鬼にしてくださいね!約束ですよ…? ショコラーデ:…勿論だよ。いつか、ね。ふふ…。 クロイツ:もう、はぐらかさないでくださいよぉ! ショコラーデ:そうやって焦らないの。生き急いだら転んじゃうよ、ニンゲンくん。 クロイツ:うー、わかりましたよぉ…。 シーン転換。 クロイツ:…あの、ショコラーデ。 ショコラーデ:うん? クロイツ:その…。渡しそびれてたお菓子、渡したいんですけど…。 ショコラーデ:あ、そっか!クロ作ってきてくれてたんだっけ!ごめんごめん、いろいろありすぎてすっかり忘れてたよ。 クロイツ:…えっと、これ、どうぞ。(袋に入ったマカロンを渡す) ショコラーデ:お、美味しそうなマカロン!さっすが、女子力高いね!じゃあ…、私からもこれ。量は少ないし初めて作ったから不格好だけどね。(生チョコレートを渡す) クロイツ:わぁ…!可愛いチョコレート…!ショコラーデからの贈り物ってだけで凄く嬉しいです…!大切に食べますね! ショコラーデ:ありがとう、クロ!嬉しいな…!……ねえ、クロ。…貧血気味ならいいんだけどさ。…このチョコマカロンと一緒にクロの血、吸っていい? クロイツ:…!勿論、です。さっき甘いものいただいたから、甘ったるい味がするかもですけど…。 ショコラーデ:クロの血ならなんだっておいしいよ。甘くたって、苦くたって…、ね。 クロイツ:そういうものなんですか…? ショコラーデ:そうそう、それにクロの血は絶品だしね!さて…、じゃあいただこうかな。 クロイツ:は、はい…。どうぞ…!(首を差し出して) ショコラーデ:ふふ…。じゃあ、聖バレンタインデーと、クロの愛情たっぷりマカロンに…、乾杯。 0: 0: 0: ショコラ―デ:…うん、蕩(とろ)けちゃいそうなほど、甘いや。 0: 0:End