台本概要
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タイトル | [3:0:1]三本の矢 |
---|---|
作者名 | 新武将@野生の台本師 (@atarasitakemasa) |
ジャンル | コメディ |
演者人数 | 4人用台本(男3、不問1) ※兼役あり |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
三本の矢って実は創作らしいですよ奥さん
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キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
隆景 | 男 | 73 | 小早川隆景。あたまいい。たぶん |
元春 | 男 | 68 | 吉川元春。嫁が個性的な顔 |
元就 | 男 | 31 | 毛利元就。息子と孫大好き |
輝元 | 不問 | 60 | 毛利輝元。若い |
元清 | 男 | 7 | 穂井田元清。隆景狂信者。元就兼役 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
隆景:父上からの呼び出し・・・一体何であろうか
隆景:・・・この部屋だな、失礼
元春:むっ、隆景ではないか
隆景:なんと、兄上
元春:お前、ここになんの用だ?
隆景:父上に呼び出されたのです
元春:父上にか
隆景:まさか、兄上まで呼ばれていようとは・・・
隆景:一体何の話でしょうな
元春:さぁな
隆景:まぁ、兄上が呼ばれたということは謀(はかりごと)の話ではなさそうだ
元春:なぜわかる
隆景:だって兄上、策というものを知らぬではないですか!そんな兄上に謀の話をしても全くの無駄というもの!
元春:あ?
隆景:兄上は「戦わずして克つ」をまるきり理解しておらぬ!ハッハッハ!
元春:言うではないか、隆景・・・
隆景:もう少し戦術というものを学んだほうが良いのではないですかな!
元春:お主、私に喧嘩を売っている・・・そう解釈しても良いのだな?
隆景:私は事実を言ったまでです
元春:上等だ!ここで貴様を斬ってくれよう!
隆景:そう言うところですぞ、兄上!
元春:貴様そこに直れ!切り捨ててくれる!
隆景:この私を切り捨てられますかな、兄上!
元春:ぐぬぬ・・・
隆景:ぐぬぬ・・・
元就:・・・そこまで!
隆景:ち・・・
元春:父上!
元就:どうしてお主らはそう喧嘩ばかりなのだ・・・
元春:(同時)それは隆景が!
隆景:(同時)それは兄上が!
元就:やれやれ・・・
元就:お主らの剣幕に隆元が怯えているではないか
元春:あ、兄上
隆景:そこにおられましたか
元就:・・・はぁ・・・
元就:これは先が思いやられるな・・・
隆景:して、父上
元就:何じゃ
元春:我らをこうして呼びつけたのは何故でしょうか
元就:お、おお・・・すっかり忘れるところであった
元就:隆元もこちらへ来るが良い
─
元就:えーおほん!
元就:今日そなたら三人に集まってもらったのには理由がある
元春:・・・
隆景:はい
元就:さて、ここに弓矢がある・・・隆元、これを折ってみなさい
隆景:いともたやすく折れましたな
元就:元春も折ってみよ
元春:こんな物、朝飯前だ
元就:折れたな・・・隆景も
隆景:・・・こんなもの、よほど非力でない限り折るのは容易いですな
元就:・・・では2本ではどうか
元春:これは・・・折れますな
元就:そうであろう
隆景:こ・・・れは・・・結構・・・硬い・・・ですな・・・!
元就:・・・
元春:流石に非力すぎでは?
隆景:むぅー!むぅー!
元就:・・・と、とりあえず次行くぞ
元就:次は三本じゃ
元就:三本ならどうかな?
元就:隆元から
元春:・・・折れませぬな
元就:では次、元春
元春:承知・・・グッ・・・!
元就:どうじゃ?
元春:こ・・・れは・・・グッ・・・
元就:そうであろう・・・では次、隆景
隆景:ぐ・・・硬い・・・
元就:そうであろう、そうであろう
隆景:父上、この三本の矢に一体何の意味が?
元就:実はな、この三本の弓矢はお主ら三人を表しておる
隆景:・・・つまり
元就:一本ならばたやすく折れよう
元就:ならば二本ならばどうじゃ?
元就:そして三本なら・・・
─ボキッ
元就:えっ、ボキッ?
元春:・・・ッハァ・・・ハァ・・・
元春:折れ・・・ましたぞ・・・!
元就:えっ、折っちゃったの?
元就:かなり苦戦はいたしましたが・・・!ほら、見ての通り・・・!
元就:なんで折っちゃうかな
隆景:・・・なるほど、つまり三本の矢を折るにはもっと頭を使えと!
元就:いや、ちが・・・
隆景:ならば私は「知」を使います!
隆景:三本の矢をたやすく折るには・・・そうだ、火を使おう!
元就:待って、ねぇ、話を聞いて
隆景:・・・折れはしませんでしたが、燃え尽きましたぞ
元就:でしょうね
元春:結局、父上はこの矢で何を伝えたかったのですか
元就:・・・だいぶ話が逸れたが、この矢はお主ら三人を表しておる
元春:我らを・・・
元就:一人、二人だとたやすく折れてしまう矢も三人で集まれば折れはせぬ
元春:つまり・・・
元就:そう、お主ら3人で支え合って
隆景:(被せて)兄上に技の極意を叩き込めば良いということですね!
元春:なるほど!
元就:うん、そうだね、この流れから行くと工夫して折る流れになっちゃうよね
元就:でも違うんだ、そうじゃない
元春:そうと決まれば、兄上!
隆景:みっちりきっちり
元春:しごきまするぞ~!
元就:ああっ、隆元・・・
元春:(遠くで)兄上!まずは素振り10万回ですぞ!うおおおお!
隆景:(遠くで)兵法書を写本いたしましょう!まずは孫子から!
元就:どうしてこうなった
─数十年後
輝元:・・・
元春:・・・
隆景:・・・
輝元:・・・いきなり叔父上に呼ばれてきてみれば・・・なんか昔話を聞かされましたが
元春:いやぁ、あの頃はお互い若かったなぁ
隆景:ですねぇ・・・
輝元:いや、「若かったなぁ」じゃないんだよ
輝元:なにこれ
元春:どうした?
輝元:いや、「どうした?」じゃねーんだわ
隆景:我らの若かりし頃の話になにかおかしかった点があるか?
輝元:いや、問題点しかねーんだわ
隆景:・・・そうか
輝元:なんでちょっと不満げなんだよ
元春:輝元が言いたいこともわかる
輝元:はい
元春:父上の話が回りくどいということだよな
輝元:いや、違うんだわ
輝元:それもあるかもしれないけど、違うんだわ
隆景:あるかもしれないのか・・・
輝元:・・・率直に聞きますけど、叔父上たちは父上・・・いや、兄をなんだと思っていらっしゃるので?
─隆元を「しごく」日々を思い浮かべながら
元春:(同時に)おもちゃ
隆景:(同時に)おもちゃ
輝元:おおい!この人たち、自分の兄をあろうことか「おもちゃ」呼ばわりしちゃったよ!
元春:だって
隆景:ねぇ・・・?
輝元:・・・(まさか、父上が心労で倒れたのってこの人たちのせいでは?)
元春:さて、輝元
輝元:は、はい
元春:お主を呼んだのは理由がある
輝元:クソみたいな過去話を聞かせるのが理由じゃなかったんですか
隆景:それもある
輝元:それもあるんだ
隆景:今日お主を呼んだのはほかでもない
隆景:先程の我らの話にも出てきた三本の矢のことだ
輝元:・・・父上と叔父上が互いに支え合おうという例えの、アレですか
元春:なんと、三本の矢にはそう言う意味があったのか
輝元:他にどういう意味があんだよ
輝元:脳筋も大概にせぇよ
隆景:さて、その三本の矢、「毛利が両川(りょうせん)」たる我らが亡き兄上・・・そしてその息子、毛利輝元を支えてきたわけであるが
輝元:まぁ、それは・・・そうですな
隆景:我らももう若くはない
元春:つまり世代交代の話、というわけだ
輝元:はぁ、そうですか
元春:うむ
輝元:まぁ、たしかに叔父上方はもう若くはございませぬ
輝元:しかし・・・叔父上方に匹敵するほどの者が居りましょうや?
隆景:言うに及ばず
輝元:は、はぁ・・・
元春:思えば、織田が遠征の後、織田旧臣による内紛を経て、豊臣が四国を制し、残るは九州のみとなった
元春:その九州も制圧されるのは時間の問題といえよう
輝元:戸次川(へつぎがわ)で豊臣方が惨敗したらしいですが
元春:・・・
輝元:おい、なんかいえよ
隆景:しかし、もはや豊臣の天下は決まったも同然
隆景:あとは豊臣政権に影響をもたらす立場であれば良い
元春:戦の世は、終わるのだ
輝元:なんか言ってて悲しくないですか?それ
隆景:・・・
元春:・・・
輝元:・・・(なんか余計なこと言ってしまったな)
隆景:私の策を披露する場が無くなるのはまこと寂しい限り
元春:もっと暴れたかった
輝元:(あ、これ大丈夫なやつだ、心配して損した)
隆景:しかし、豊臣政権の中枢に入るのは夢が広がりますなぁ!
元春:全くよ!これは外様二番手待ったなし!ですな!ガッハッハ!
輝元:二番手は加賀殿(前田利家)ですが
隆景:えっ・・・
元春:・・・じゃあ三番手でもいいや
輝元:それは三河殿(徳川家康)ですが
元春:・・・
隆景:・・・
輝元:・・・
元春:な、ならば・・・そうだ!あの憎き宇喜多より上ならば
輝元:宇喜多も筆頭格です
輝元:何なら秀家が養子に入って豊臣一門格ですので裏の二番手と言っても過言ではないですぞ
隆景:・・・じゃあもう筆頭格に入るだけでいいや
輝元:もうやめませんか?この話
輝元:聞いてるこっちが虚しくなってきましたぞ
隆景・・・
輝元:それで、何の話でしたっけ?
輝元:世代交代の話?
元春:おお、そうだそうだ、すっかり忘れておった
輝元:多分今日一重要な話だろ、忘れるなよ
元春:それでな、ワシの跡を継いでもらうのが
元春:この、広家じゃ
隆景:わぁ、兄上によく似てアホ・・・ゲフンゲフン
隆景:脳みそに筋肉がついてそうな勇猛な子ですな
元春:あ?
隆景:あ?
輝元:ちょ、ここで喧嘩はやめてくだされ
輝元:この場から追い出しますぞ
元春:うむむ・・・
隆景:ぐぬぬ・・・
輝元:・・・しかし、本当に広家でよろしいのですか?
輝元:正直私は・・・ちょっと・・・
元春:多分大丈夫
輝元:多分って言っちゃったよこの人
元春:いいからいいから
元春:さ、広家、ここに三本の矢があるであろう?
元春:これを折ってみよ
輝元:・・・矢を放り出して弁当を食べ始めましたな
元春:なるほど?
輝元:おい、父親が一番意図を理解してねーじゃねーかよ
元春:いや、これはきっと意味があるのだ
輝元:例えば?
元春:さぁ?
輝元:「さぁ?」じゃねーよ
輝元:やっぱりさっぱりわかってねーじゃねーか
隆景:やはり兄上の息子となればそれが限界のようですな!
輝元:なんで争ってんだよ
輝元:毛利家の補佐を決める話し合いだろ
輝元:もっと仲良くしろよ
隆景:兄上の息子となればやっぱりアホ・・・ゲフンゲフン
隆景:うつけでございますな!
輝元:何で言い直したんだよ
輝元:それ同じ意味だよ
隆景:それでは次はこちらの番ですな
隆景:こちらは、この、秀秋殿です
輝元:もっとダメなの出してきちゃった
隆景:ダメとはなんですか、ダメとは
輝元:いや、これ・・・もはや小早川でもなんでもねーじゃん
輝元:てか、え?これ豊臣の縁者だよね?なんでここにいるの?
隆景:養子として迎え入れました
輝元:え?
隆景:豊臣政権の政治に口出しできる権利を貰うかわりに押し付けられました
輝元:なに抜け駆けしてんだよ、さっき宇喜多の話したばかりだろ
隆景:てへぺろ
輝元:なんかもう色々と破綻してきた
隆景:とりあえず秀秋殿に三本の矢を渡してみましょう
輝元:はいはい、もう好きにやってくれ
隆景:さ、秀秋殿、この三本の矢を折ってみてくだされ
元春:・・・矢で輝元をつつき出したな
輝元:痛い痛い痛い!え!?ちょ!痛い痛い!
隆景:なるほどそう来たか
輝元:「そう来たか」じゃないんだよ!
輝元:ちょ!痛いって!
輝元:叔父上!やめさせてくだされ!
隆景:・・・これはこれで面白いから有り
輝元:ねえよ!バカ!痛い痛い!
元春:アリよりのアリだな
輝元:無しよりの無しだよ!え、ちょっと待って!こいつら私を亡き者にしようとしてる!?
元春:そんなわけ
隆景:ないかも・・・しれない
輝元:何でそこで言いよどむんだよ!やめろ!
隆景:・・・しょうがないな
輝元:お前、後で覚えてろよ
隆景:・・・で、どうでしたかな?私の後継に推す秀秋殿は?
輝元:お前の目は節穴か?
輝元:さっきまでの惨状で「毛利家は安泰だなぁ」なんて思うわけ無いだろ
輝元:絶対禍根を残すわこんなん
隆景:えー
輝元:「えー」じゃないですよ
輝元:そもそも毛利の縁者じゃない時点で論外です
輝元:豊臣に送り返してください
隆景:・・・仕方ない、秀秋殿はやめときます
輝元:何で不服そうな感じ出してんだよ
隆景:かわりと言ってはなんですが、元清に頼もうと思います
隆景:元清、頼めるか?
元清:景兄様のお頼みとあらば
輝元:うわ、元清叔父上、いたんですか
元清:最初からいたぞ
輝元:影薄くて気が付かなかったわ
元清:叔父に向かって失礼ではないか?それ
元春:まぁ、影が薄いのは仕方ない
元春:我ら兄弟が有名すぎて、隆景から下の弟たちは、いまいちぱっとしないからな
元清:殺すぞ
元春:兄に向かって何たる言い草!
元春:影が薄いのは事実やろがい!
元清:ペッ!
元春:こいつ隆景に心酔しすぎて隆景の分身みたいになってやがる
隆景:人聞きが悪い
隆景:それでは私がいつも兄上に「死ね」と思いながらつば吐きかけてるみたいじゃないですか
元春:事実そうだろ
元清:景兄様をバカにするな脳筋
隆景:そうだそうだ!もっと言ってやれ元清!
元清:ペッペッ!
隆景:やーいやーい、兄上の嫁ブサ・・・じゃなかった、個性的な顔!
元春:ええい、貴様らそこになおれ!たたっ斬ってくれる!
隆景:やれるもんならやってみろ!ペッペッ!
輝元:ちょ、兄弟喧嘩は他所でやってくだされ叔父上!
輝元:・・・はぁ、どうしてこうなった
輝元:あと、秀秋殿?さっきから矢で突くのやめてもらっていいですか?地味に痛いんで・・・
0:─慶長五年 大阪城
輝元:なんか治部(じぶ(石田三成のこと))と内府(ないふ(徳川家康のこと))の喧嘩に巻き込まれて総大将に担がれた・・・クソめんどい
輝元:治部め、私なんぞに頼まず自分で総大将やればいいのに
輝元:ああめんどい
輝元:なんか城内が慌ただしくなってきたな
輝元:ん?伝令?何ぞ申してみよ
輝元:・・・はぁ!?広家めが徳川方に内通しておった、だと!?
輝元:秀秋も徳川方で参戦、治部は敗走し行方知れずとな
輝元:ほら、言わんこっちゃない!
隆景:父上からの呼び出し・・・一体何であろうか
隆景:・・・この部屋だな、失礼
元春:むっ、隆景ではないか
隆景:なんと、兄上
元春:お前、ここになんの用だ?
隆景:父上に呼び出されたのです
元春:父上にか
隆景:まさか、兄上まで呼ばれていようとは・・・
隆景:一体何の話でしょうな
元春:さぁな
隆景:まぁ、兄上が呼ばれたということは謀(はかりごと)の話ではなさそうだ
元春:なぜわかる
隆景:だって兄上、策というものを知らぬではないですか!そんな兄上に謀の話をしても全くの無駄というもの!
元春:あ?
隆景:兄上は「戦わずして克つ」をまるきり理解しておらぬ!ハッハッハ!
元春:言うではないか、隆景・・・
隆景:もう少し戦術というものを学んだほうが良いのではないですかな!
元春:お主、私に喧嘩を売っている・・・そう解釈しても良いのだな?
隆景:私は事実を言ったまでです
元春:上等だ!ここで貴様を斬ってくれよう!
隆景:そう言うところですぞ、兄上!
元春:貴様そこに直れ!切り捨ててくれる!
隆景:この私を切り捨てられますかな、兄上!
元春:ぐぬぬ・・・
隆景:ぐぬぬ・・・
元就:・・・そこまで!
隆景:ち・・・
元春:父上!
元就:どうしてお主らはそう喧嘩ばかりなのだ・・・
元春:(同時)それは隆景が!
隆景:(同時)それは兄上が!
元就:やれやれ・・・
元就:お主らの剣幕に隆元が怯えているではないか
元春:あ、兄上
隆景:そこにおられましたか
元就:・・・はぁ・・・
元就:これは先が思いやられるな・・・
隆景:して、父上
元就:何じゃ
元春:我らをこうして呼びつけたのは何故でしょうか
元就:お、おお・・・すっかり忘れるところであった
元就:隆元もこちらへ来るが良い
─
元就:えーおほん!
元就:今日そなたら三人に集まってもらったのには理由がある
元春:・・・
隆景:はい
元就:さて、ここに弓矢がある・・・隆元、これを折ってみなさい
隆景:いともたやすく折れましたな
元就:元春も折ってみよ
元春:こんな物、朝飯前だ
元就:折れたな・・・隆景も
隆景:・・・こんなもの、よほど非力でない限り折るのは容易いですな
元就:・・・では2本ではどうか
元春:これは・・・折れますな
元就:そうであろう
隆景:こ・・・れは・・・結構・・・硬い・・・ですな・・・!
元就:・・・
元春:流石に非力すぎでは?
隆景:むぅー!むぅー!
元就:・・・と、とりあえず次行くぞ
元就:次は三本じゃ
元就:三本ならどうかな?
元就:隆元から
元春:・・・折れませぬな
元就:では次、元春
元春:承知・・・グッ・・・!
元就:どうじゃ?
元春:こ・・・れは・・・グッ・・・
元就:そうであろう・・・では次、隆景
隆景:ぐ・・・硬い・・・
元就:そうであろう、そうであろう
隆景:父上、この三本の矢に一体何の意味が?
元就:実はな、この三本の弓矢はお主ら三人を表しておる
隆景:・・・つまり
元就:一本ならばたやすく折れよう
元就:ならば二本ならばどうじゃ?
元就:そして三本なら・・・
─ボキッ
元就:えっ、ボキッ?
元春:・・・ッハァ・・・ハァ・・・
元春:折れ・・・ましたぞ・・・!
元就:えっ、折っちゃったの?
元就:かなり苦戦はいたしましたが・・・!ほら、見ての通り・・・!
元就:なんで折っちゃうかな
隆景:・・・なるほど、つまり三本の矢を折るにはもっと頭を使えと!
元就:いや、ちが・・・
隆景:ならば私は「知」を使います!
隆景:三本の矢をたやすく折るには・・・そうだ、火を使おう!
元就:待って、ねぇ、話を聞いて
隆景:・・・折れはしませんでしたが、燃え尽きましたぞ
元就:でしょうね
元春:結局、父上はこの矢で何を伝えたかったのですか
元就:・・・だいぶ話が逸れたが、この矢はお主ら三人を表しておる
元春:我らを・・・
元就:一人、二人だとたやすく折れてしまう矢も三人で集まれば折れはせぬ
元春:つまり・・・
元就:そう、お主ら3人で支え合って
隆景:(被せて)兄上に技の極意を叩き込めば良いということですね!
元春:なるほど!
元就:うん、そうだね、この流れから行くと工夫して折る流れになっちゃうよね
元就:でも違うんだ、そうじゃない
元春:そうと決まれば、兄上!
隆景:みっちりきっちり
元春:しごきまするぞ~!
元就:ああっ、隆元・・・
元春:(遠くで)兄上!まずは素振り10万回ですぞ!うおおおお!
隆景:(遠くで)兵法書を写本いたしましょう!まずは孫子から!
元就:どうしてこうなった
─数十年後
輝元:・・・
元春:・・・
隆景:・・・
輝元:・・・いきなり叔父上に呼ばれてきてみれば・・・なんか昔話を聞かされましたが
元春:いやぁ、あの頃はお互い若かったなぁ
隆景:ですねぇ・・・
輝元:いや、「若かったなぁ」じゃないんだよ
輝元:なにこれ
元春:どうした?
輝元:いや、「どうした?」じゃねーんだわ
隆景:我らの若かりし頃の話になにかおかしかった点があるか?
輝元:いや、問題点しかねーんだわ
隆景:・・・そうか
輝元:なんでちょっと不満げなんだよ
元春:輝元が言いたいこともわかる
輝元:はい
元春:父上の話が回りくどいということだよな
輝元:いや、違うんだわ
輝元:それもあるかもしれないけど、違うんだわ
隆景:あるかもしれないのか・・・
輝元:・・・率直に聞きますけど、叔父上たちは父上・・・いや、兄をなんだと思っていらっしゃるので?
─隆元を「しごく」日々を思い浮かべながら
元春:(同時に)おもちゃ
隆景:(同時に)おもちゃ
輝元:おおい!この人たち、自分の兄をあろうことか「おもちゃ」呼ばわりしちゃったよ!
元春:だって
隆景:ねぇ・・・?
輝元:・・・(まさか、父上が心労で倒れたのってこの人たちのせいでは?)
元春:さて、輝元
輝元:は、はい
元春:お主を呼んだのは理由がある
輝元:クソみたいな過去話を聞かせるのが理由じゃなかったんですか
隆景:それもある
輝元:それもあるんだ
隆景:今日お主を呼んだのはほかでもない
隆景:先程の我らの話にも出てきた三本の矢のことだ
輝元:・・・父上と叔父上が互いに支え合おうという例えの、アレですか
元春:なんと、三本の矢にはそう言う意味があったのか
輝元:他にどういう意味があんだよ
輝元:脳筋も大概にせぇよ
隆景:さて、その三本の矢、「毛利が両川(りょうせん)」たる我らが亡き兄上・・・そしてその息子、毛利輝元を支えてきたわけであるが
輝元:まぁ、それは・・・そうですな
隆景:我らももう若くはない
元春:つまり世代交代の話、というわけだ
輝元:はぁ、そうですか
元春:うむ
輝元:まぁ、たしかに叔父上方はもう若くはございませぬ
輝元:しかし・・・叔父上方に匹敵するほどの者が居りましょうや?
隆景:言うに及ばず
輝元:は、はぁ・・・
元春:思えば、織田が遠征の後、織田旧臣による内紛を経て、豊臣が四国を制し、残るは九州のみとなった
元春:その九州も制圧されるのは時間の問題といえよう
輝元:戸次川(へつぎがわ)で豊臣方が惨敗したらしいですが
元春:・・・
輝元:おい、なんかいえよ
隆景:しかし、もはや豊臣の天下は決まったも同然
隆景:あとは豊臣政権に影響をもたらす立場であれば良い
元春:戦の世は、終わるのだ
輝元:なんか言ってて悲しくないですか?それ
隆景:・・・
元春:・・・
輝元:・・・(なんか余計なこと言ってしまったな)
隆景:私の策を披露する場が無くなるのはまこと寂しい限り
元春:もっと暴れたかった
輝元:(あ、これ大丈夫なやつだ、心配して損した)
隆景:しかし、豊臣政権の中枢に入るのは夢が広がりますなぁ!
元春:全くよ!これは外様二番手待ったなし!ですな!ガッハッハ!
輝元:二番手は加賀殿(前田利家)ですが
隆景:えっ・・・
元春:・・・じゃあ三番手でもいいや
輝元:それは三河殿(徳川家康)ですが
元春:・・・
隆景:・・・
輝元:・・・
元春:な、ならば・・・そうだ!あの憎き宇喜多より上ならば
輝元:宇喜多も筆頭格です
輝元:何なら秀家が養子に入って豊臣一門格ですので裏の二番手と言っても過言ではないですぞ
隆景:・・・じゃあもう筆頭格に入るだけでいいや
輝元:もうやめませんか?この話
輝元:聞いてるこっちが虚しくなってきましたぞ
隆景・・・
輝元:それで、何の話でしたっけ?
輝元:世代交代の話?
元春:おお、そうだそうだ、すっかり忘れておった
輝元:多分今日一重要な話だろ、忘れるなよ
元春:それでな、ワシの跡を継いでもらうのが
元春:この、広家じゃ
隆景:わぁ、兄上によく似てアホ・・・ゲフンゲフン
隆景:脳みそに筋肉がついてそうな勇猛な子ですな
元春:あ?
隆景:あ?
輝元:ちょ、ここで喧嘩はやめてくだされ
輝元:この場から追い出しますぞ
元春:うむむ・・・
隆景:ぐぬぬ・・・
輝元:・・・しかし、本当に広家でよろしいのですか?
輝元:正直私は・・・ちょっと・・・
元春:多分大丈夫
輝元:多分って言っちゃったよこの人
元春:いいからいいから
元春:さ、広家、ここに三本の矢があるであろう?
元春:これを折ってみよ
輝元:・・・矢を放り出して弁当を食べ始めましたな
元春:なるほど?
輝元:おい、父親が一番意図を理解してねーじゃねーかよ
元春:いや、これはきっと意味があるのだ
輝元:例えば?
元春:さぁ?
輝元:「さぁ?」じゃねーよ
輝元:やっぱりさっぱりわかってねーじゃねーか
隆景:やはり兄上の息子となればそれが限界のようですな!
輝元:なんで争ってんだよ
輝元:毛利家の補佐を決める話し合いだろ
輝元:もっと仲良くしろよ
隆景:兄上の息子となればやっぱりアホ・・・ゲフンゲフン
隆景:うつけでございますな!
輝元:何で言い直したんだよ
輝元:それ同じ意味だよ
隆景:それでは次はこちらの番ですな
隆景:こちらは、この、秀秋殿です
輝元:もっとダメなの出してきちゃった
隆景:ダメとはなんですか、ダメとは
輝元:いや、これ・・・もはや小早川でもなんでもねーじゃん
輝元:てか、え?これ豊臣の縁者だよね?なんでここにいるの?
隆景:養子として迎え入れました
輝元:え?
隆景:豊臣政権の政治に口出しできる権利を貰うかわりに押し付けられました
輝元:なに抜け駆けしてんだよ、さっき宇喜多の話したばかりだろ
隆景:てへぺろ
輝元:なんかもう色々と破綻してきた
隆景:とりあえず秀秋殿に三本の矢を渡してみましょう
輝元:はいはい、もう好きにやってくれ
隆景:さ、秀秋殿、この三本の矢を折ってみてくだされ
元春:・・・矢で輝元をつつき出したな
輝元:痛い痛い痛い!え!?ちょ!痛い痛い!
隆景:なるほどそう来たか
輝元:「そう来たか」じゃないんだよ!
輝元:ちょ!痛いって!
輝元:叔父上!やめさせてくだされ!
隆景:・・・これはこれで面白いから有り
輝元:ねえよ!バカ!痛い痛い!
元春:アリよりのアリだな
輝元:無しよりの無しだよ!え、ちょっと待って!こいつら私を亡き者にしようとしてる!?
元春:そんなわけ
隆景:ないかも・・・しれない
輝元:何でそこで言いよどむんだよ!やめろ!
隆景:・・・しょうがないな
輝元:お前、後で覚えてろよ
隆景:・・・で、どうでしたかな?私の後継に推す秀秋殿は?
輝元:お前の目は節穴か?
輝元:さっきまでの惨状で「毛利家は安泰だなぁ」なんて思うわけ無いだろ
輝元:絶対禍根を残すわこんなん
隆景:えー
輝元:「えー」じゃないですよ
輝元:そもそも毛利の縁者じゃない時点で論外です
輝元:豊臣に送り返してください
隆景:・・・仕方ない、秀秋殿はやめときます
輝元:何で不服そうな感じ出してんだよ
隆景:かわりと言ってはなんですが、元清に頼もうと思います
隆景:元清、頼めるか?
元清:景兄様のお頼みとあらば
輝元:うわ、元清叔父上、いたんですか
元清:最初からいたぞ
輝元:影薄くて気が付かなかったわ
元清:叔父に向かって失礼ではないか?それ
元春:まぁ、影が薄いのは仕方ない
元春:我ら兄弟が有名すぎて、隆景から下の弟たちは、いまいちぱっとしないからな
元清:殺すぞ
元春:兄に向かって何たる言い草!
元春:影が薄いのは事実やろがい!
元清:ペッ!
元春:こいつ隆景に心酔しすぎて隆景の分身みたいになってやがる
隆景:人聞きが悪い
隆景:それでは私がいつも兄上に「死ね」と思いながらつば吐きかけてるみたいじゃないですか
元春:事実そうだろ
元清:景兄様をバカにするな脳筋
隆景:そうだそうだ!もっと言ってやれ元清!
元清:ペッペッ!
隆景:やーいやーい、兄上の嫁ブサ・・・じゃなかった、個性的な顔!
元春:ええい、貴様らそこになおれ!たたっ斬ってくれる!
隆景:やれるもんならやってみろ!ペッペッ!
輝元:ちょ、兄弟喧嘩は他所でやってくだされ叔父上!
輝元:・・・はぁ、どうしてこうなった
輝元:あと、秀秋殿?さっきから矢で突くのやめてもらっていいですか?地味に痛いんで・・・
0:─慶長五年 大阪城
輝元:なんか治部(じぶ(石田三成のこと))と内府(ないふ(徳川家康のこと))の喧嘩に巻き込まれて総大将に担がれた・・・クソめんどい
輝元:治部め、私なんぞに頼まず自分で総大将やればいいのに
輝元:ああめんどい
輝元:なんか城内が慌ただしくなってきたな
輝元:ん?伝令?何ぞ申してみよ
輝元:・・・はぁ!?広家めが徳川方に内通しておった、だと!?
輝元:秀秋も徳川方で参戦、治部は敗走し行方知れずとな
輝元:ほら、言わんこっちゃない!