台本概要
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タイトル | 雨の少女【1:2:0】15~20分 |
---|---|
作者名 | ろくしょうるり (@ruri6syo) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 3人用台本(男1、女2) ※兼役あり |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
-雨を冠する神々は人々を殺す -「傘人」はその神々を殺す 冷凍みかん様がボイコネにて企画・募集された「傘人」シリーズ参加作品です。 掲載了承を得られましたので、こちらに移転させていただきました。 男性/青年(兼ね役) 女性/女の声(兼ね役) 少女 の3人劇となります。 「男性」と「女性」は、エキストラ的な村人になります。 492 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
少女 | 女 | 48 | 雨の水を集める少女「しずく」 自分が誰なのかよくわからないが、とにかく雨水を集めては人々に届けて歩いている |
男性 | 男 | 11 | 砂漠の集落に住むガラの良くないオジチャン |
青年 | 男 | 31 | 雨を集める少女を殺し、傘人になろうとしている青年。正義感が強い。 |
女性 | 女 | 11 | 砂漠の集落に住むタチの良くないオバチャン |
女の声 | 女 | 18 | 少女を陰ながら見守る母親のような女の声(雲の神) |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
少女:神様は人を殺すと言うけれど
0:雨に打たれて立つ少女
少女:私はきっと、人ではないのだわ
0:
青年:この世界は狂ってる
女性:むかーしむかし、悪い王が雨の神の怒りを買ったんだってさ
男性:そいつのせいで俺たちゃ天罰さ。人間は雨の神に殺される
少女:雨に怯え 雨を敬い 砂漠の片隅で生きる人たちに
女性:あの子は水を持ってくるのさ。どっからかね
男性:ほーら。来たぜ。大きな革袋を背負って まるでラクダだな、ありゃあ
女の声:私のあの子は、今日も人間達の集落へ…
0:
少女:みんな、お待たせ。お水持ってきたわ
少女:(N)みんなが喜んでいる。ここは砂漠の中のちいさな集落。今日もいい天気。太陽で全てがキラキラと輝いているみたい
少女:今日はあんまりないの。ごめんね
女性:いいのよ、いつもありがとう。
男性:いつも助かるよ
少女:私が一人で運べる水なんて、たいした量じゃないのに
女性:おや、あんた。もう行ってしまうのかい?
少女:うん。お水を取りに行かなくちゃ。雨のにおいがするの。
男性:雨ねえ、こんなに晴れてるし、大体どこまで行っているんでえ?俺たちゃこの広い砂漠で雨になんか遭ったことねえぜ
少女:砂漠の外まで取りに行くのよ。雨が降る緑の草地に
女性:なんだって?砂漠の外までどれだけあると…
少女:だから、急がなくっちゃ。もう行くね
0:
少女:太陽は好き。みんなをキラキラさせてくれる。怖い神様から守ってくれる
0:
少女:だからね、とってきた雨をだいぶ飲まれても、平気なの
0:
少女:あんなに熱く輝いているんだもの。すぐに喉が渇くのは仕方がないよね?
0:
女性:ああ、いつ見ても気味の悪い子供だよ。飯もなしに砂漠の外まで一人でなんて、大人だって行って帰ってくるもんか
男性:あいつ、どっかに水場を知ってるに違いない。俺ぁそう思って後をつけたことがあるぜ
女性:で、どうだった。あるわけないだろう。見つけていたら、こんな思いはしなくて済んでるさ
男性:ああ、ああ。そうさ。その通りよ。あいつはいつも、いつの間にか消えちまうのさ。そう、この水のひとしずくがいつの間にかなくなってるようにな
0:
少女:ああ、雲が寄る。雨の匂い。緑の草地に雨が降る
少女:この皮の袋に 降る雨の水を集めるのが私の役目
少女:誰にもできない、私だけの役目
少女:ねえ、雲の神様、雷の神様、私をいつもお目こぼしくださって、ありがとう
少女:沢山のしずくが、私の体をぬらす。私の指先に、しずくが沢山集まって、皮の袋を満たしていくの
少女:雨の中で踊るように。私の幸せのひととき
0:
女性:あんた、『傘人』って知ってるかい?なんでも神を殺して神の力を得たっていう
男性:はっ、まさかおめえ、あの娘がそうだってのか? 冗談は休み休み言うもんだ
女性:なんでも、『傘人』の産んだ子供は、その力を受け継ぐっていうじゃないか
男性:なるほど、その方がわかりがいいや。と、まてよ?神を殺してその力を得るっていうんなら、その『傘人』を殺ったらどうなる?
女性:あんた、まさか
男性:ははははっ、冗談だよ。せっかくあんな厄介仕事を引き受けてもらってんだ。俺たちゃただここで待ってるほうが、性に合ってるさ
0:
少女:雨の神様、こんなにたくさん、ありがとう
少女:(N)私はいっぱいになった皮の袋を背中にしょって、もと来た道をもどっていく。髪から、服から、しずくが滴る。とてもいい気持ち。
少女:(N)さあっ、と 雲が散る。輝く太陽は、私のしずくを勢いよく飲み始める。皮の袋の中の水も、少しずつ。
少女:喉が渇いたでしょう?おひさま、沢山飲んでいってね
0:
女の声:しずく、 しずく
0:
少女:(N)誰かが私を呼んでいる
少女:だれ?
0:
男性:そういや、あいつの名前知ってるかい
女性:ああ、そういやしらないね。でもそんなのどうでもいいよ。あの子は水を運び続ける。この村のためにね。それだけさ。
男性:ちげぇねえ
0:
女の声:しずく、 しずく … 人は怖いものよ、しずく … 戻っておいで … しずく …
0:
少女:誰だかわからないけど、ありがとう。でも、いいの。人はみんな、わたしの水を喜んでくれるもの
少女:わたしの集めたしずくを喜んでくれるなら、わたしはそれが好きよ。人はみんな怖いものかもしれない。でも、それでいいの
0:
女の声:しずく …しずく … 雫… …わたしの可愛い … 雫…
少女:目が覚めたら、草の上に眠っていたの
少女:そんな私の、戻る所はどこなのかしら
女の声:空へ… こちらへいらっしゃい
少女:空?
女の声:そうです。あなたは空の住人。私たちと同じ
少女:やはり私は人ではないのね
青年:そうだよ、あんたは人じゃない
少女:誰?
0:刃物を構えた青年が迫ってくる
青年:俺はあんたを探してた。いや、あんたじゃなくてもいいんだ。俺は神を探してた
少女:神?
青年:そう、神だ。なんでもいい。俺は神を殺す。そしてその力を貰う
少女:私?
青年:そう、お前だ。ようやく見つけた。砂漠の村で聞いたのさ。雨を取りに行く娘がいると
女の声:いけません、しずく、はやくこちらへいらっしゃい
少女:私を殺すとあなたはどうなるの?
青年:お前を殺せばお前の力が手に入る
女の声:しずく、雫、言ったでしょう。人は怖いもの。村の人はあなたを-
少女:いいよ
青年:!
少女:お兄さん、ありがとう
青年:な、何を礼なんか。お前を殺しに…殺しに来たんだぞ
少女:私も聞いたことがあるよ。村の人たちから。あなたは『傘人』なのでしょう?
青年:そうだ。お前を 神を殺して俺は『傘人』になる
少女:ありがとうお兄さん、私を見つけてくれて
青年:だからなぜ礼なんか言うんだ!殺すぞ、俺はお前を殺してやる
女の声:人間 しずくから離れなさい…さもなければこの私が-
少女:誰だかわからないけど、お姉さんもありがとう。でもいいの。私はずっと待っていたの
女の声:しずく…なにを
少女:『傘人』の話を聞いたその時から。私はずうっと…待っていたの。
青年:待っていた、だと
少女:ねえお兄さん。私は多分神様じゃないけれど、あなたは私を神だと言ってくれた
青年:…お、おう
少女:もしも私が神様で、あなたが私を殺したときに私の力を受けとってくれるのなら…こんなに嬉しいことはないわ
少女:村の人から聞いたの。『傘人』の産んだ子供は、その力を受け継ぐのですって
少女:そうしたら私、ひとりぼっちじゃなくなるわ
女の声:!
青年:ひとりぼっちじゃなくなる?何を言ってる…お前は、死ぬんだぞ
少女:ねえお兄さん。私にできることはたったひとつよ。雨の雫をこの袋に集めること。そしてみんなに届けること
青年:ああ、雲の下で立っていられる。その力が俺は欲しい
女の声:その力で人間は神を殺すの。しずく
青年:どこにいるかわからん女、余計なことを
少女:それは神様が人を殺すからでしょう? 私わかるの。誰でもみんな…幸せになりたいだけ。ね、早くその刃物で私を刺して。こうして私の喉を…
0:少女は青年の刃物をとり、切っ先を喉元にあてがった
青年:・・・くそっ、や、やるぞ 本当に! いいんだな!
女の声:おやめなさい雫!
少女:(涙ぐむ)私ひとりだけじゃ、ほんの少しの水しか届けられないから…
青年:ぐう…っ
少女:もし、他の人にこの力をあげられたら… みんな、みんな…雨の水を取りに行けるように…なるでしょう? そして『私の水』をみんなが笑顔で飲み干したり、気持ちよさそうに浴びたり、お洗濯をするの…
青年:おいっ! 手を… 手を離せ… っ、 離しやがれ!
少女:そんな日をずっと…夢見ていたの
青年:うああっ!
女の声:人間!
青年:はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…
少女:! お兄さん どうして私を突き飛ばして
青年:(荒い呼吸)それは、もしお前が『神』だったら、の話だよな
少女:そう。もし私が神様だったらの話。もしそうなることができるなら。だから
青年:じゃあ!もしそうじゃなかったら! どうするんだよ!
少女:!
青年:誰が雨の水を取りに行く!誰が村に水を届ける!
少女:それは…
女の声:おのれ人間!この上利用するつもりか…雫、聞くのをやめなさい… さもなければ私がこの男を殺します
少女:だめ…お姉さん!
0:少女は青年をかばう
青年:・・・っ
少女:お姉さん、お願い
0:(間)
青年:っ わかった。わかったよ 多分!神なんかじゃねえよ。お前
少女:…あ…
少女:うう そう、だよね そんなわけ…なかった
青年:簡単に命、人に差し出してんじゃねえよ。バカ。あといつまで抱きついてんださっさと離れろ
少女:ごめんなさい
青年:あーあ!無駄足だったわ ったく
青年:おい、どこにいるかわからん女! そういうことだ。こいつは神なんかじゃない。だから俺は何もしねえ
女の声:雫…
少女:ありがとう、お姉さん。私、大丈夫だよ
女の声:わかりました しずくに免じてこの場は収めましょう 人間 さっさと去りなさい
青年:っふー …お、おいお前
少女:な、なに
青年:それ、
少女:これ?
青年:勘違いした詫びだ。その背中のでっかい袋俺が運んでやる
少女:重たいよ?
青年:いいからよこせ! …お前、水集めたら… 今度から俺が運んでやるっ!
青年:そしたらもう…一人じゃないだろ
少女:! ・・・うん!
0:
女の声:しずく… 雫 またあなたは行ってしまった 人間の世界に いつか還っておいで… 雫
少女:神様は人を殺すと言うけれど
0:雨に打たれて立つ少女
少女:私はきっと、人ではないのだわ
0:
青年:この世界は狂ってる
女性:むかーしむかし、悪い王が雨の神の怒りを買ったんだってさ
男性:そいつのせいで俺たちゃ天罰さ。人間は雨の神に殺される
少女:雨に怯え 雨を敬い 砂漠の片隅で生きる人たちに
女性:あの子は水を持ってくるのさ。どっからかね
男性:ほーら。来たぜ。大きな革袋を背負って まるでラクダだな、ありゃあ
女の声:私のあの子は、今日も人間達の集落へ…
0:
少女:みんな、お待たせ。お水持ってきたわ
少女:(N)みんなが喜んでいる。ここは砂漠の中のちいさな集落。今日もいい天気。太陽で全てがキラキラと輝いているみたい
少女:今日はあんまりないの。ごめんね
女性:いいのよ、いつもありがとう。
男性:いつも助かるよ
少女:私が一人で運べる水なんて、たいした量じゃないのに
女性:おや、あんた。もう行ってしまうのかい?
少女:うん。お水を取りに行かなくちゃ。雨のにおいがするの。
男性:雨ねえ、こんなに晴れてるし、大体どこまで行っているんでえ?俺たちゃこの広い砂漠で雨になんか遭ったことねえぜ
少女:砂漠の外まで取りに行くのよ。雨が降る緑の草地に
女性:なんだって?砂漠の外までどれだけあると…
少女:だから、急がなくっちゃ。もう行くね
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少女:太陽は好き。みんなをキラキラさせてくれる。怖い神様から守ってくれる
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少女:だからね、とってきた雨をだいぶ飲まれても、平気なの
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少女:あんなに熱く輝いているんだもの。すぐに喉が渇くのは仕方がないよね?
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女性:ああ、いつ見ても気味の悪い子供だよ。飯もなしに砂漠の外まで一人でなんて、大人だって行って帰ってくるもんか
男性:あいつ、どっかに水場を知ってるに違いない。俺ぁそう思って後をつけたことがあるぜ
女性:で、どうだった。あるわけないだろう。見つけていたら、こんな思いはしなくて済んでるさ
男性:ああ、ああ。そうさ。その通りよ。あいつはいつも、いつの間にか消えちまうのさ。そう、この水のひとしずくがいつの間にかなくなってるようにな
0:
少女:ああ、雲が寄る。雨の匂い。緑の草地に雨が降る
少女:この皮の袋に 降る雨の水を集めるのが私の役目
少女:誰にもできない、私だけの役目
少女:ねえ、雲の神様、雷の神様、私をいつもお目こぼしくださって、ありがとう
少女:沢山のしずくが、私の体をぬらす。私の指先に、しずくが沢山集まって、皮の袋を満たしていくの
少女:雨の中で踊るように。私の幸せのひととき
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女性:あんた、『傘人』って知ってるかい?なんでも神を殺して神の力を得たっていう
男性:はっ、まさかおめえ、あの娘がそうだってのか? 冗談は休み休み言うもんだ
女性:なんでも、『傘人』の産んだ子供は、その力を受け継ぐっていうじゃないか
男性:なるほど、その方がわかりがいいや。と、まてよ?神を殺してその力を得るっていうんなら、その『傘人』を殺ったらどうなる?
女性:あんた、まさか
男性:ははははっ、冗談だよ。せっかくあんな厄介仕事を引き受けてもらってんだ。俺たちゃただここで待ってるほうが、性に合ってるさ
0:
少女:雨の神様、こんなにたくさん、ありがとう
少女:(N)私はいっぱいになった皮の袋を背中にしょって、もと来た道をもどっていく。髪から、服から、しずくが滴る。とてもいい気持ち。
少女:(N)さあっ、と 雲が散る。輝く太陽は、私のしずくを勢いよく飲み始める。皮の袋の中の水も、少しずつ。
少女:喉が渇いたでしょう?おひさま、沢山飲んでいってね
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女の声:しずく、 しずく
0:
少女:(N)誰かが私を呼んでいる
少女:だれ?
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男性:そういや、あいつの名前知ってるかい
女性:ああ、そういやしらないね。でもそんなのどうでもいいよ。あの子は水を運び続ける。この村のためにね。それだけさ。
男性:ちげぇねえ
0:
女の声:しずく、 しずく … 人は怖いものよ、しずく … 戻っておいで … しずく …
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少女:誰だかわからないけど、ありがとう。でも、いいの。人はみんな、わたしの水を喜んでくれるもの
少女:わたしの集めたしずくを喜んでくれるなら、わたしはそれが好きよ。人はみんな怖いものかもしれない。でも、それでいいの
0:
女の声:しずく …しずく … 雫… …わたしの可愛い … 雫…
少女:目が覚めたら、草の上に眠っていたの
少女:そんな私の、戻る所はどこなのかしら
女の声:空へ… こちらへいらっしゃい
少女:空?
女の声:そうです。あなたは空の住人。私たちと同じ
少女:やはり私は人ではないのね
青年:そうだよ、あんたは人じゃない
少女:誰?
0:刃物を構えた青年が迫ってくる
青年:俺はあんたを探してた。いや、あんたじゃなくてもいいんだ。俺は神を探してた
少女:神?
青年:そう、神だ。なんでもいい。俺は神を殺す。そしてその力を貰う
少女:私?
青年:そう、お前だ。ようやく見つけた。砂漠の村で聞いたのさ。雨を取りに行く娘がいると
女の声:いけません、しずく、はやくこちらへいらっしゃい
少女:私を殺すとあなたはどうなるの?
青年:お前を殺せばお前の力が手に入る
女の声:しずく、雫、言ったでしょう。人は怖いもの。村の人はあなたを-
少女:いいよ
青年:!
少女:お兄さん、ありがとう
青年:な、何を礼なんか。お前を殺しに…殺しに来たんだぞ
少女:私も聞いたことがあるよ。村の人たちから。あなたは『傘人』なのでしょう?
青年:そうだ。お前を 神を殺して俺は『傘人』になる
少女:ありがとうお兄さん、私を見つけてくれて
青年:だからなぜ礼なんか言うんだ!殺すぞ、俺はお前を殺してやる
女の声:人間 しずくから離れなさい…さもなければこの私が-
少女:誰だかわからないけど、お姉さんもありがとう。でもいいの。私はずっと待っていたの
女の声:しずく…なにを
少女:『傘人』の話を聞いたその時から。私はずうっと…待っていたの。
青年:待っていた、だと
少女:ねえお兄さん。私は多分神様じゃないけれど、あなたは私を神だと言ってくれた
青年:…お、おう
少女:もしも私が神様で、あなたが私を殺したときに私の力を受けとってくれるのなら…こんなに嬉しいことはないわ
少女:村の人から聞いたの。『傘人』の産んだ子供は、その力を受け継ぐのですって
少女:そうしたら私、ひとりぼっちじゃなくなるわ
女の声:!
青年:ひとりぼっちじゃなくなる?何を言ってる…お前は、死ぬんだぞ
少女:ねえお兄さん。私にできることはたったひとつよ。雨の雫をこの袋に集めること。そしてみんなに届けること
青年:ああ、雲の下で立っていられる。その力が俺は欲しい
女の声:その力で人間は神を殺すの。しずく
青年:どこにいるかわからん女、余計なことを
少女:それは神様が人を殺すからでしょう? 私わかるの。誰でもみんな…幸せになりたいだけ。ね、早くその刃物で私を刺して。こうして私の喉を…
0:少女は青年の刃物をとり、切っ先を喉元にあてがった
青年:・・・くそっ、や、やるぞ 本当に! いいんだな!
女の声:おやめなさい雫!
少女:(涙ぐむ)私ひとりだけじゃ、ほんの少しの水しか届けられないから…
青年:ぐう…っ
少女:もし、他の人にこの力をあげられたら… みんな、みんな…雨の水を取りに行けるように…なるでしょう? そして『私の水』をみんなが笑顔で飲み干したり、気持ちよさそうに浴びたり、お洗濯をするの…
青年:おいっ! 手を… 手を離せ… っ、 離しやがれ!
少女:そんな日をずっと…夢見ていたの
青年:うああっ!
女の声:人間!
青年:はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…
少女:! お兄さん どうして私を突き飛ばして
青年:(荒い呼吸)それは、もしお前が『神』だったら、の話だよな
少女:そう。もし私が神様だったらの話。もしそうなることができるなら。だから
青年:じゃあ!もしそうじゃなかったら! どうするんだよ!
少女:!
青年:誰が雨の水を取りに行く!誰が村に水を届ける!
少女:それは…
女の声:おのれ人間!この上利用するつもりか…雫、聞くのをやめなさい… さもなければ私がこの男を殺します
少女:だめ…お姉さん!
0:少女は青年をかばう
青年:・・・っ
少女:お姉さん、お願い
0:(間)
青年:っ わかった。わかったよ 多分!神なんかじゃねえよ。お前
少女:…あ…
少女:うう そう、だよね そんなわけ…なかった
青年:簡単に命、人に差し出してんじゃねえよ。バカ。あといつまで抱きついてんださっさと離れろ
少女:ごめんなさい
青年:あーあ!無駄足だったわ ったく
青年:おい、どこにいるかわからん女! そういうことだ。こいつは神なんかじゃない。だから俺は何もしねえ
女の声:雫…
少女:ありがとう、お姉さん。私、大丈夫だよ
女の声:わかりました しずくに免じてこの場は収めましょう 人間 さっさと去りなさい
青年:っふー …お、おいお前
少女:な、なに
青年:それ、
少女:これ?
青年:勘違いした詫びだ。その背中のでっかい袋俺が運んでやる
少女:重たいよ?
青年:いいからよこせ! …お前、水集めたら… 今度から俺が運んでやるっ!
青年:そしたらもう…一人じゃないだろ
少女:! ・・・うん!
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女の声:しずく… 雫 またあなたは行ってしまった 人間の世界に いつか還っておいで… 雫