台本概要

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タイトル 人生はバカになって。
作者名 ニンジャ。
ジャンル その他
演者人数 4人用台本(女2、不問2)
時間 20 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 バトル台本です。

女性が戦う台本が少ないと友人から連絡を受けて、作成しました。

楽しんで演じてください。

※2023年11月30日 追記

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
千代 74 主人公。アイドルを目指す女性。ちょっと緊張しがちで内気。武器は弓矢。
和歌 60 主人公の親友。女優を目指す女性。明るくて元気な性格。武器はハルバード。
アレクサンドル 不問 57 事務所の代表取締役。不問。めっちゃ怪しい人。眼鏡かけてる人。武器は刀。
ヴァイス 不問 39 アレクサンドルの補佐役。不問。めっちゃ強そう。サングラスかけてる人。武器は籠手。
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
作:ニンジャ 登場人物 千代(ちよ):主人公。アイドルを目指す女性。ちょっと緊張しがちで内気。武器は弓矢。 和歌(わか):主人公の親友。女優を目指す女性。明るくて元気な性格。武器はハルバード。 アレクサンドル:事務所の代表取締役。不問。めっちゃ怪しい人。眼鏡かけてる人。武器は刀。 ヴァイス:アレクサンドルの補佐役。不問。めっちゃ強そう。サングラスかけてる人。武器は籠手。 0:ここからが本編 和歌:バカにならないとできないことがある。 千代:例えば、緊張した時だ。 和歌:今までできていたことが、急にできなくなることがある。 千代:そういう時は、私はバカになっている。 千代:そう、アイドルのオーディションとか。 千代:・・・はあ。 千代:・・・また、落ちた。 千代:(落ちると思っていた。芸能事務所のアイドルオーディション。) 千代:なんで、あそこでセリフ噛むかな~、なんで振り付け間違えるかな~~ 和歌:まあまあ、しょうがないよ~~。私も落ちちゃったし。 千代:(この子は、私のルームメイトだ。一緒の事務所の女優のオーディションを受けたけど。) 和歌:千代が無理そうなんじゃ、私も無理かな~って思ったもん。 千代:あのね、それ嫌味になってるってわかって言ってる? 和歌:え? 千代:私よりスタイルもよくて、声も張りがあるじゃん、和歌は!! 和歌:それは関係ないよ~。私たち、目指しているステージも違うじゃん! 千代:(こういうことをさらっというから、この子にはかなわない。) 和歌:あ、そういえばさあ、次のオーディションなんだけどさ 千代:え、もう次のオーディション受けるの!? 和歌:なにいってんの、オーディションなんて落ちて当たり前じゃん!    ほら、これ見て。 千代:第1回新人タレント発掘オーディション20〇〇・・アレクサンドル芸能事務所??聞いたことないわね。 和歌:たぶん、新しい事務所なんじゃない?そこが、新人のタレント欲しいってことじゃないかな? 千代:なるほどね・・たしかに、チャンスは多いほうがいいものね。 和歌:じゃあ、一緒に申し込もうよ!! 千代:・・わかった。 千代:得体のしれない、新しい事務所のオーディション。ちょっと嫌な予感がするけど、私も申し込んだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー アレクサンドル:やあやあ、よく来たね。 和歌:はじめまして!おはようございます。 千代:(オーディション当日。私たちを出迎えたのはやけに、いやかなり怪しい雰囲気の細身の男だった。) アレクサンドル:さて、それじゃあオーディション参加者は全員そろったかな? ヴァイス:はい、これで全員でございます。アレクサンドル様。 和歌:・・・え!?これで全員なんですか? 千代:和歌。あんまり会話に突っ込んだりは・・ ヴァイス:ゴホンっ!参加者の方々は私語は控えていただけますと幸いです。 和歌:はーい、すみません!! アレクサンドル:いいんだ、ヴァイス。元気があるのはいいことじゃないか。 アレクサンドル:・・さて、ではまずは自己紹介をしようか。 アレクサンドル:私はアレクサンドル=フォン・ルーカスという者だ。 アレクサンドル:一応、ここの代表取締役をしている。 アレクサンドル:そっちはヴァイス。僕の補佐をしてくれてる。 アレクサンドル:今回のオーディションに参加してくれたことに、まずは礼を言うよ。 千代:いえ、こちらこそありがとうございます。 和歌:ありがとうございます!! アレクサンドル:いい返事だ。・・では、早速だがオーディションのルールを紹介しよう。         ヴァイス。例のものを。 ヴァイス:かしこまりました。 千代:例のもの? 和歌:なにが始まるんだろ~ アレクサンドル:これから行うオーディションは、VRの世界で行うのさ。 千代:VR? 和歌:バーチャルってこと? アレクサンドル:そうなるね。我が社はVR事業も展開していてね。 アレクサンドル:これからの時代はVRの世界が主流になる。 アレクサンドル:もちろん、タレントも例外ではないよ。 ヴァイス:お持ちいたしました。オーディション参加者のお二人はこれを身に着けてください。 和歌:うわ、すご!!ずいぶんと大きいゴーグル?ですね!! 千代:・・これを、頭につければいいんですか? アレクサンドル:察しがいい子は大好きだよ。・・さて、じゃあ始めようか。         定刻11時。これより、オーディションを開始するよ。 千代:わあ・・・ 千代:(ゴーグルを身に着けた私の目の前に広がったのは、あまりにも広い空間。    ビルの廃墟、といったところだろうか。) 和歌:うわあ、すっごい!なんだか冒険したくなるね!! アレクサンドル:いい反応だね。ヴァイス。舞台の説明をお願いするよ。 ヴァイス:かしこまりました。・・ここは遠い未来の東京でございます。 ヴァイス:廃墟がたくさんあるのは、そのためでございます。 ヴァイス:ご覧ください。あれがスカイツリーになります。 和歌:おおー!!、スカイツリーは古くなってもわかるね!! 千代:本当だ・・ ヴァイス:今回のオーディションのルールは、「生き残ること」でございます。 千代:生き残る?どういうことですか? アレクサンドル:説明の通りだよ。これから戦いが始まるのさ。昨今のVRは進化していてね。脳神経の働きを察知して・・まあ、簡単に言うと「動こうと思う方向に自分も動く」ということさ。 和歌:えーー!・・本当だ!!手を振らなくても手が振れるし、足が動く!! 千代:どんな技術なのよ・・ アレクサンドル:そこはまあ、企業秘密ってことで。 ヴァイス:オーディションのルールの説明を続けさせていただきます。 ヴァイス:生き残るまで、強敵がお二人に押し寄せます。 ヴァイス:それらを退けながら、生き残ってください。 千代:強敵? アレクサンドル:そうだね、例えば、そこのヴァイスとか、ね。 和歌:え?どういう意味ですか? ヴァイス:アレクサンドル様のおっしゃる通りです。・・もっと端的に申し上げましょうか。 ヴァイス:ここでやられたくなければ、私を倒してください。 千代:(そう言ったヴァイスさんの両拳に、いきなり大きな籠手が装着された。) 和歌:え、すっご、かっこいい!! 千代:突然すぎて、全然意味が分からないんだけど・・ アレクサンドル:目の前に、モニターが浮かんでいるだろう。それで、装備を選択するといいよ。 和歌:わ、楽しそう!!・・よーし、じゃあ私はこれで!!来い!ハルバード!! 千代:ちょ、ちょっと和歌!!本当に戦うの?まだ戦う意味もわかってないよ? 和歌:なにいってんの、千代。この人と戦って、勝てばいいんでしょ?すごくわかりやすいじゃない! 千代:え、で、でも、戦うなんて・・ アレクサンドル:背の高い彼女の言う通りだよ。ここでは、ヴァイスに勝てばいい。それだけさ。 アレクサンドル:いつの時代でも、戦わなければ勝ち取れない。生き残れないよ。 アレクサンドル:ある意味、バカになって戦わないといけないときもあるんだよ。 アレクサンドル:・・まあ、背の高い・・えっと、和歌さんだったか。彼女のほうが素質はあるかもね。 和歌:えへへ、ほめてもらっちゃった!!・・さて、行くよ!ヴァイスさん! ヴァイス:いつでも。どこからでも打ち込んできてください。 和歌:それじゃあ、行くよお!!・・やあああああああ!! ヴァイス:ふっ!!はあ!!せい!! 千代:戦いが、始まった。私が見ているうちに。 アレクサンドル:始まってしまったね。さて、君は見ているだけなのかい。 千代:こんなの、こんなのおかしいですよ!なんでタレントのオーディションで戦わなくちゃいけないんですか! アレクサンドル:さっきも言ったじゃないか。いつの時代も、戦わなければ生き残れない。 アレクサンドル:タレントも一緒さ。数ある多くのタレントの中から、生き残らなければならない。 アレクサンドル:といっても、この戦いでけがをすることはないさ。なにしろVRだからね。 アレクサンドル:・・その上で、オーディションは辞退するかい? アレクサンドル:まず、君みたいに理屈をこねてばかりで敵に立ち向かわない子は必要ないからね。 千代:なっ・・!! 和歌:あははっ!!この武器、楽しいね!!とにかく振り回せて、面白いっ!! ヴァイス:なかなかやりますね!!そろそろ出力を上げましょうか! 千代:(和歌が、楽しそうだ、楽しそうに戦っている。きっとあの子はこの先も前に進むだろう。) アレクサンドル:さて、どうするかね?千代さん。 千代:(それなのに、私は…) 千代:・・私も、私も、戦う!! 千代:(引き抜いた私の両手に構えられたのは、小型の弓だった。) ヴァイス:ぬっ!!! 和歌:千代!!決心ついたんだね!! 千代:・・うん!!戦う、私も!! ヴァイス:いい目をしておられます。それでは、ここで必殺技についてお話しましょう。 和歌:必殺技!!楽しそう!! ヴァイス:そのうち、画面の右下にゲージがたまります。その時に、大きな声で申し上げてください。 千代:大きな声でって、なにを? アレクサンドル:心の中で浮かんだ必殺技の名前さ、それもオーディションの一つだよ。 和歌:わかりました!!・・よし!!行くよヴァイスさん! 和歌:Super zelle!!(スーパーセル) ヴァイス:巨大な竜巻ですか!それを操り、私にぶつけてくるとは・・なかなかやりますね!!しかし、詰めが甘いですね 千代:っ!!和歌、避けて!! ヴァイス:Riesiger Riss im Boden!!(リーシガ・リス・ボーデン)!! 和歌:っ!しまった!! 千代:(空中からヴァイスさんが和歌に向かって急襲を仕掛けてくる。体勢を崩している和歌は避けられそうにない。) 千代:どうにか、どうにかしないとっ・・ 和歌:千代!!頼んだ!! 千代:(そういって私を向いて和歌の顔は、笑っていた。) 千代:・・やるしか、ない!!狙い撃つ!!! アレクサンドル:・・ほう。あれが千代さんの技か。 千代:Fire Break!!(ファイア・ブレイク) ヴァイス:ぐっ!ぐおおおお 和歌:!!ヴァイスさんの籠手が、千代の矢で粉々に!! ヴァイス:・・これは、してやられましたかね。 アレクサンドル:(拍手をしながら)うん、いいね。合格だね。 千代:はあ、はあ、合格、ですか。・・よかった。 和歌:やったね、千代!!二人とも受かったよ!! アレクサンドル:うん、ただし、第一審査の話だね。 千代:え? アレクサンドル:まだ一人敵が残っているよ、そう、僕がね。 和歌:ええ!あなたも戦えるんですか? 千代:審査員じゃなかったの? アレクサンドル:誰もそんなことは言ってないさ。ーーさて、僕の得物は、これだ。 千代:(アレクサンドルさんの手には、蒼い刀身の刀が握られていた。) 和歌:刀!!!すごいきれいな刀ですね!! 千代:っ!!和歌、来るわ!! 和歌:え?うわあ!! アレクサンドル:おっと、よく防いだね。・・いや、今の一瞬で放った、千代さんの矢のおかげかな。 アレクサンドル:僕の足元に、刺さったこいつがなければ、和歌さんは致命傷を負っていたね。 和歌:千代、助かったわ!!!・・・この人、ヴァイスさんとはタイプが違うわね。 ヴァイス:恐れながら、アレクサンドル様の強さは私などとは比較になりませんよ。 ヴァイス:その速さと強さ、身をもって味わってください。 千代:気を引き締めてかからないと・・ 和歌:なにいってんの!千代!!こういう時こそ、楽しまないと!! アレクサンドル:和歌さんの言う通りだよ、千代さん。戦いは「バカ」にならないとねえ!! 和歌:そうそう!!行くわよ!!・・うりゃあああああ!!! アレクサンドル:いい気合いだ!!だがねえ!! 和歌:わ、速い!! アレクサンドル:気合いだけでは、僕には勝てないよ? 千代:なんとか、なんとか援護しなきゃ・・ ヴァイス:千代さん。「援護」だけではいけません。アレクサンドル様を倒す勢いで弓をふるってください。 千代:っ!!・・そうだ、こういう時こそ、楽しまないと! ヴァイス:ふっ、それにしてもアレクサンドル様。ずいぶんと楽しそうに剣を振るわれておられる。 和歌:とおりゃあああ!もういっちょ!! アレクサンドル:いい踏み込みだ!だが、甘いね!! 和歌:わっ!!くっ、この人強いなあ 千代:(和歌が、ちょっとずつだけど押されている。落ち着け。)狙って、狙って・・そこだ! ヴァイス:(対して、アレクサンドル様はまだ余裕を残しておられる。これは、千代さん次第か。) 和歌:くっそう、このままじゃ埒があかない!!いくよ!!必殺!! 和歌:Super zelle!!(スーパーセル) アレクサンドル:なるほど、巨大な竜巻ですか。でも・・氷刃(ひょうじん)。 和歌:な、竜巻が!! 千代:凍った?! アレクサンドル:このように、凍らせてしまえば問題ないですね。 和歌:く、くそう・・もう、技がない。 アレクサンドル:では、これにて終いですかね。・・行きますよ! 千代:っ!今だ!!Fire break!!(ファイア・ブレイク) 和歌:千代!!ありがとう!!まだまだぁ! アレクサンドル:くっ!、決めに行ったところを狙われましたか・・やりますねえ! ヴァイス:アレクサンドル様!! アレクサンドル:よるな、ヴァイス!まだ負けたわけでもありません。 ヴァイス:(アレクサンドル様が、集中して力をためておられる!・・これは!!) アレクサンドル:氷刃・雪花ぁ!!(ひょうじん・せっか) 和歌:氷の柱が!こんなにたくさん・・よけきれない!! 千代:なら、溶かしてみせる!!Fire break!!(ファイア・ブレイク) アレクサンドル:ほう、氷の柱を溶かしますか!!しかし、すべてを溶かすことはできないでしょう!! 和歌:たしかに、一人じゃ無理ね! 千代:そうね、一人じゃあね!! ヴァイス:和歌さんが飛び上がって、ハルバードを振り回している、これは!! アレクサンドル:炎が竜巻になり、氷の柱を溶かしている、だと!! 和歌:いっくよ!千代!! 千代:うん!! 和歌・千代:Flamberge!!(フランベルジュ) アレクサンドル:ぐおおおお!! ヴァイス:アレクサンドル様! アレクサンドル:・・・見事、かな。 ヴァイス:アレクサンドル様・・お怪我は? アレクサンドル:大丈夫さ。合格だよ。二人とも。 和歌:や、やったあああああ!! 千代:やった・・ 和歌:千代、ありがとおおおおお! 千代:うん、ありがと、和歌。 和歌:千代と一緒に戦ったのは、初めてだったけど、すっごい楽しかった!! 千代:私も!私も、楽しかった。 ヴァイス:和歌さん、千代さん、この度は合格おめでとうございます。では続いて、こちらにサインを・・ 千代:?なんのサインですか? アレクサンドル:なに、事務所の契約書さ。そんなに難しいことは書いてないから、大丈夫。大丈夫。 和歌:はーい・・・これでよしっと。 ヴァイス:ありがとうございます。 アレクサンドル:・・さて、二人とも見事な戦いぶりだったよ。これで、我が社も安心だね。 千代:え?どういう意味ですか? アレクサンドル:決まってるじゃないか。これから二人は、戦うアイドルになるんだよ。 和歌:戦うアイドル? アレクサンドル:そう、VR世界で敵と戦うアイドル!!これが我が社の売り出す新しい形のアイドルさ!! 和歌:え?えええええええ! 千代:そんなの聞いてないですよ! ヴァイス:先ほど、お二人がサインされましたが? 千代:あ、あの契約書・・まさか。 ヴァイス:第1条第2項。「戦うアイドルとして、アレクサンドル事務所と契約を締結する。」とありますよ。 千代:難しいことは書いてないって・・ 和歌:いいじゃーん、楽しそう!! 千代:わ、わか・・ アレクサンドル:決まりだね!!さて、それじゃあ今日から二人は本事務所に所属ということで!! 和歌:わーい!!これで私もデビューだあ!! ヴァイス:おめでとうございます。 千代:はあ・・まあ、いっか。 千代:人生は、バカになる時間が必要だ。 千代:それは例えば、戦う時だ。 ーーー完ーーー

作:ニンジャ 登場人物 千代(ちよ):主人公。アイドルを目指す女性。ちょっと緊張しがちで内気。武器は弓矢。 和歌(わか):主人公の親友。女優を目指す女性。明るくて元気な性格。武器はハルバード。 アレクサンドル:事務所の代表取締役。不問。めっちゃ怪しい人。眼鏡かけてる人。武器は刀。 ヴァイス:アレクサンドルの補佐役。不問。めっちゃ強そう。サングラスかけてる人。武器は籠手。 0:ここからが本編 和歌:バカにならないとできないことがある。 千代:例えば、緊張した時だ。 和歌:今までできていたことが、急にできなくなることがある。 千代:そういう時は、私はバカになっている。 千代:そう、アイドルのオーディションとか。 千代:・・・はあ。 千代:・・・また、落ちた。 千代:(落ちると思っていた。芸能事務所のアイドルオーディション。) 千代:なんで、あそこでセリフ噛むかな~、なんで振り付け間違えるかな~~ 和歌:まあまあ、しょうがないよ~~。私も落ちちゃったし。 千代:(この子は、私のルームメイトだ。一緒の事務所の女優のオーディションを受けたけど。) 和歌:千代が無理そうなんじゃ、私も無理かな~って思ったもん。 千代:あのね、それ嫌味になってるってわかって言ってる? 和歌:え? 千代:私よりスタイルもよくて、声も張りがあるじゃん、和歌は!! 和歌:それは関係ないよ~。私たち、目指しているステージも違うじゃん! 千代:(こういうことをさらっというから、この子にはかなわない。) 和歌:あ、そういえばさあ、次のオーディションなんだけどさ 千代:え、もう次のオーディション受けるの!? 和歌:なにいってんの、オーディションなんて落ちて当たり前じゃん!    ほら、これ見て。 千代:第1回新人タレント発掘オーディション20〇〇・・アレクサンドル芸能事務所??聞いたことないわね。 和歌:たぶん、新しい事務所なんじゃない?そこが、新人のタレント欲しいってことじゃないかな? 千代:なるほどね・・たしかに、チャンスは多いほうがいいものね。 和歌:じゃあ、一緒に申し込もうよ!! 千代:・・わかった。 千代:得体のしれない、新しい事務所のオーディション。ちょっと嫌な予感がするけど、私も申し込んだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー アレクサンドル:やあやあ、よく来たね。 和歌:はじめまして!おはようございます。 千代:(オーディション当日。私たちを出迎えたのはやけに、いやかなり怪しい雰囲気の細身の男だった。) アレクサンドル:さて、それじゃあオーディション参加者は全員そろったかな? ヴァイス:はい、これで全員でございます。アレクサンドル様。 和歌:・・・え!?これで全員なんですか? 千代:和歌。あんまり会話に突っ込んだりは・・ ヴァイス:ゴホンっ!参加者の方々は私語は控えていただけますと幸いです。 和歌:はーい、すみません!! アレクサンドル:いいんだ、ヴァイス。元気があるのはいいことじゃないか。 アレクサンドル:・・さて、ではまずは自己紹介をしようか。 アレクサンドル:私はアレクサンドル=フォン・ルーカスという者だ。 アレクサンドル:一応、ここの代表取締役をしている。 アレクサンドル:そっちはヴァイス。僕の補佐をしてくれてる。 アレクサンドル:今回のオーディションに参加してくれたことに、まずは礼を言うよ。 千代:いえ、こちらこそありがとうございます。 和歌:ありがとうございます!! アレクサンドル:いい返事だ。・・では、早速だがオーディションのルールを紹介しよう。         ヴァイス。例のものを。 ヴァイス:かしこまりました。 千代:例のもの? 和歌:なにが始まるんだろ~ アレクサンドル:これから行うオーディションは、VRの世界で行うのさ。 千代:VR? 和歌:バーチャルってこと? アレクサンドル:そうなるね。我が社はVR事業も展開していてね。 アレクサンドル:これからの時代はVRの世界が主流になる。 アレクサンドル:もちろん、タレントも例外ではないよ。 ヴァイス:お持ちいたしました。オーディション参加者のお二人はこれを身に着けてください。 和歌:うわ、すご!!ずいぶんと大きいゴーグル?ですね!! 千代:・・これを、頭につければいいんですか? アレクサンドル:察しがいい子は大好きだよ。・・さて、じゃあ始めようか。         定刻11時。これより、オーディションを開始するよ。 千代:わあ・・・ 千代:(ゴーグルを身に着けた私の目の前に広がったのは、あまりにも広い空間。    ビルの廃墟、といったところだろうか。) 和歌:うわあ、すっごい!なんだか冒険したくなるね!! アレクサンドル:いい反応だね。ヴァイス。舞台の説明をお願いするよ。 ヴァイス:かしこまりました。・・ここは遠い未来の東京でございます。 ヴァイス:廃墟がたくさんあるのは、そのためでございます。 ヴァイス:ご覧ください。あれがスカイツリーになります。 和歌:おおー!!、スカイツリーは古くなってもわかるね!! 千代:本当だ・・ ヴァイス:今回のオーディションのルールは、「生き残ること」でございます。 千代:生き残る?どういうことですか? アレクサンドル:説明の通りだよ。これから戦いが始まるのさ。昨今のVRは進化していてね。脳神経の働きを察知して・・まあ、簡単に言うと「動こうと思う方向に自分も動く」ということさ。 和歌:えーー!・・本当だ!!手を振らなくても手が振れるし、足が動く!! 千代:どんな技術なのよ・・ アレクサンドル:そこはまあ、企業秘密ってことで。 ヴァイス:オーディションのルールの説明を続けさせていただきます。 ヴァイス:生き残るまで、強敵がお二人に押し寄せます。 ヴァイス:それらを退けながら、生き残ってください。 千代:強敵? アレクサンドル:そうだね、例えば、そこのヴァイスとか、ね。 和歌:え?どういう意味ですか? ヴァイス:アレクサンドル様のおっしゃる通りです。・・もっと端的に申し上げましょうか。 ヴァイス:ここでやられたくなければ、私を倒してください。 千代:(そう言ったヴァイスさんの両拳に、いきなり大きな籠手が装着された。) 和歌:え、すっご、かっこいい!! 千代:突然すぎて、全然意味が分からないんだけど・・ アレクサンドル:目の前に、モニターが浮かんでいるだろう。それで、装備を選択するといいよ。 和歌:わ、楽しそう!!・・よーし、じゃあ私はこれで!!来い!ハルバード!! 千代:ちょ、ちょっと和歌!!本当に戦うの?まだ戦う意味もわかってないよ? 和歌:なにいってんの、千代。この人と戦って、勝てばいいんでしょ?すごくわかりやすいじゃない! 千代:え、で、でも、戦うなんて・・ アレクサンドル:背の高い彼女の言う通りだよ。ここでは、ヴァイスに勝てばいい。それだけさ。 アレクサンドル:いつの時代でも、戦わなければ勝ち取れない。生き残れないよ。 アレクサンドル:ある意味、バカになって戦わないといけないときもあるんだよ。 アレクサンドル:・・まあ、背の高い・・えっと、和歌さんだったか。彼女のほうが素質はあるかもね。 和歌:えへへ、ほめてもらっちゃった!!・・さて、行くよ!ヴァイスさん! ヴァイス:いつでも。どこからでも打ち込んできてください。 和歌:それじゃあ、行くよお!!・・やあああああああ!! ヴァイス:ふっ!!はあ!!せい!! 千代:戦いが、始まった。私が見ているうちに。 アレクサンドル:始まってしまったね。さて、君は見ているだけなのかい。 千代:こんなの、こんなのおかしいですよ!なんでタレントのオーディションで戦わなくちゃいけないんですか! アレクサンドル:さっきも言ったじゃないか。いつの時代も、戦わなければ生き残れない。 アレクサンドル:タレントも一緒さ。数ある多くのタレントの中から、生き残らなければならない。 アレクサンドル:といっても、この戦いでけがをすることはないさ。なにしろVRだからね。 アレクサンドル:・・その上で、オーディションは辞退するかい? アレクサンドル:まず、君みたいに理屈をこねてばかりで敵に立ち向かわない子は必要ないからね。 千代:なっ・・!! 和歌:あははっ!!この武器、楽しいね!!とにかく振り回せて、面白いっ!! ヴァイス:なかなかやりますね!!そろそろ出力を上げましょうか! 千代:(和歌が、楽しそうだ、楽しそうに戦っている。きっとあの子はこの先も前に進むだろう。) アレクサンドル:さて、どうするかね?千代さん。 千代:(それなのに、私は…) 千代:・・私も、私も、戦う!! 千代:(引き抜いた私の両手に構えられたのは、小型の弓だった。) ヴァイス:ぬっ!!! 和歌:千代!!決心ついたんだね!! 千代:・・うん!!戦う、私も!! ヴァイス:いい目をしておられます。それでは、ここで必殺技についてお話しましょう。 和歌:必殺技!!楽しそう!! ヴァイス:そのうち、画面の右下にゲージがたまります。その時に、大きな声で申し上げてください。 千代:大きな声でって、なにを? アレクサンドル:心の中で浮かんだ必殺技の名前さ、それもオーディションの一つだよ。 和歌:わかりました!!・・よし!!行くよヴァイスさん! 和歌:Super zelle!!(スーパーセル) ヴァイス:巨大な竜巻ですか!それを操り、私にぶつけてくるとは・・なかなかやりますね!!しかし、詰めが甘いですね 千代:っ!!和歌、避けて!! ヴァイス:Riesiger Riss im Boden!!(リーシガ・リス・ボーデン)!! 和歌:っ!しまった!! 千代:(空中からヴァイスさんが和歌に向かって急襲を仕掛けてくる。体勢を崩している和歌は避けられそうにない。) 千代:どうにか、どうにかしないとっ・・ 和歌:千代!!頼んだ!! 千代:(そういって私を向いて和歌の顔は、笑っていた。) 千代:・・やるしか、ない!!狙い撃つ!!! アレクサンドル:・・ほう。あれが千代さんの技か。 千代:Fire Break!!(ファイア・ブレイク) ヴァイス:ぐっ!ぐおおおお 和歌:!!ヴァイスさんの籠手が、千代の矢で粉々に!! ヴァイス:・・これは、してやられましたかね。 アレクサンドル:(拍手をしながら)うん、いいね。合格だね。 千代:はあ、はあ、合格、ですか。・・よかった。 和歌:やったね、千代!!二人とも受かったよ!! アレクサンドル:うん、ただし、第一審査の話だね。 千代:え? アレクサンドル:まだ一人敵が残っているよ、そう、僕がね。 和歌:ええ!あなたも戦えるんですか? 千代:審査員じゃなかったの? アレクサンドル:誰もそんなことは言ってないさ。ーーさて、僕の得物は、これだ。 千代:(アレクサンドルさんの手には、蒼い刀身の刀が握られていた。) 和歌:刀!!!すごいきれいな刀ですね!! 千代:っ!!和歌、来るわ!! 和歌:え?うわあ!! アレクサンドル:おっと、よく防いだね。・・いや、今の一瞬で放った、千代さんの矢のおかげかな。 アレクサンドル:僕の足元に、刺さったこいつがなければ、和歌さんは致命傷を負っていたね。 和歌:千代、助かったわ!!!・・・この人、ヴァイスさんとはタイプが違うわね。 ヴァイス:恐れながら、アレクサンドル様の強さは私などとは比較になりませんよ。 ヴァイス:その速さと強さ、身をもって味わってください。 千代:気を引き締めてかからないと・・ 和歌:なにいってんの!千代!!こういう時こそ、楽しまないと!! アレクサンドル:和歌さんの言う通りだよ、千代さん。戦いは「バカ」にならないとねえ!! 和歌:そうそう!!行くわよ!!・・うりゃあああああ!!! アレクサンドル:いい気合いだ!!だがねえ!! 和歌:わ、速い!! アレクサンドル:気合いだけでは、僕には勝てないよ? 千代:なんとか、なんとか援護しなきゃ・・ ヴァイス:千代さん。「援護」だけではいけません。アレクサンドル様を倒す勢いで弓をふるってください。 千代:っ!!・・そうだ、こういう時こそ、楽しまないと! ヴァイス:ふっ、それにしてもアレクサンドル様。ずいぶんと楽しそうに剣を振るわれておられる。 和歌:とおりゃあああ!もういっちょ!! アレクサンドル:いい踏み込みだ!だが、甘いね!! 和歌:わっ!!くっ、この人強いなあ 千代:(和歌が、ちょっとずつだけど押されている。落ち着け。)狙って、狙って・・そこだ! ヴァイス:(対して、アレクサンドル様はまだ余裕を残しておられる。これは、千代さん次第か。) 和歌:くっそう、このままじゃ埒があかない!!いくよ!!必殺!! 和歌:Super zelle!!(スーパーセル) アレクサンドル:なるほど、巨大な竜巻ですか。でも・・氷刃(ひょうじん)。 和歌:な、竜巻が!! 千代:凍った?! アレクサンドル:このように、凍らせてしまえば問題ないですね。 和歌:く、くそう・・もう、技がない。 アレクサンドル:では、これにて終いですかね。・・行きますよ! 千代:っ!今だ!!Fire break!!(ファイア・ブレイク) 和歌:千代!!ありがとう!!まだまだぁ! アレクサンドル:くっ!、決めに行ったところを狙われましたか・・やりますねえ! ヴァイス:アレクサンドル様!! アレクサンドル:よるな、ヴァイス!まだ負けたわけでもありません。 ヴァイス:(アレクサンドル様が、集中して力をためておられる!・・これは!!) アレクサンドル:氷刃・雪花ぁ!!(ひょうじん・せっか) 和歌:氷の柱が!こんなにたくさん・・よけきれない!! 千代:なら、溶かしてみせる!!Fire break!!(ファイア・ブレイク) アレクサンドル:ほう、氷の柱を溶かしますか!!しかし、すべてを溶かすことはできないでしょう!! 和歌:たしかに、一人じゃ無理ね! 千代:そうね、一人じゃあね!! ヴァイス:和歌さんが飛び上がって、ハルバードを振り回している、これは!! アレクサンドル:炎が竜巻になり、氷の柱を溶かしている、だと!! 和歌:いっくよ!千代!! 千代:うん!! 和歌・千代:Flamberge!!(フランベルジュ) アレクサンドル:ぐおおおお!! ヴァイス:アレクサンドル様! アレクサンドル:・・・見事、かな。 ヴァイス:アレクサンドル様・・お怪我は? アレクサンドル:大丈夫さ。合格だよ。二人とも。 和歌:や、やったあああああ!! 千代:やった・・ 和歌:千代、ありがとおおおおお! 千代:うん、ありがと、和歌。 和歌:千代と一緒に戦ったのは、初めてだったけど、すっごい楽しかった!! 千代:私も!私も、楽しかった。 ヴァイス:和歌さん、千代さん、この度は合格おめでとうございます。では続いて、こちらにサインを・・ 千代:?なんのサインですか? アレクサンドル:なに、事務所の契約書さ。そんなに難しいことは書いてないから、大丈夫。大丈夫。 和歌:はーい・・・これでよしっと。 ヴァイス:ありがとうございます。 アレクサンドル:・・さて、二人とも見事な戦いぶりだったよ。これで、我が社も安心だね。 千代:え?どういう意味ですか? アレクサンドル:決まってるじゃないか。これから二人は、戦うアイドルになるんだよ。 和歌:戦うアイドル? アレクサンドル:そう、VR世界で敵と戦うアイドル!!これが我が社の売り出す新しい形のアイドルさ!! 和歌:え?えええええええ! 千代:そんなの聞いてないですよ! ヴァイス:先ほど、お二人がサインされましたが? 千代:あ、あの契約書・・まさか。 ヴァイス:第1条第2項。「戦うアイドルとして、アレクサンドル事務所と契約を締結する。」とありますよ。 千代:難しいことは書いてないって・・ 和歌:いいじゃーん、楽しそう!! 千代:わ、わか・・ アレクサンドル:決まりだね!!さて、それじゃあ今日から二人は本事務所に所属ということで!! 和歌:わーい!!これで私もデビューだあ!! ヴァイス:おめでとうございます。 千代:はあ・・まあ、いっか。 千代:人生は、バカになる時間が必要だ。 千代:それは例えば、戦う時だ。 ーーー完ーーー