台本概要

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タイトル 互悦導衆
作者名 アール/ドラゴス  (@Dragoss_R)
ジャンル その他
演者人数 5人用台本(男1、女1、不問3)
時間 30 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 ごえつどうしゅう。

とあるマフィア組織。
共通の師の提案によって、特別チームを組むことになった五人のマフィア。
そして今日は、その顔合わせの日で…。

「元リーダーを越えられるように。行くぞ、野郎ども!」

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
ロータス 64 最も新米のマフィア。通称【蓮の子】。 自分に自信がないようだが、作戦や指示、戦闘などあらゆる分野に強い。
エクレア 58 各方面から恐れられている戦闘狂。通称【破壊の雷光】。 ロータスが大好きで、彼を傷つけるものを許さない。
ベイカー 不問 57 面倒見のいい兄(姉)貴肌なマフィア。通称【火薬風味のパン屋さん】。 組織で都市伝説となるほどの凄腕ボマーで、パン好き。
レイヴン 不問 54 元は二つ隣の国で活動していた情報屋。通称【ウォッチャー】。 人をからかうのが好きで、最高峰の情報ネットワークを持つ。
シャンディ 不問 52 いつも悲観的で静かな酒好き。通称【告別の黄金酒】。 本人はいつも自己嫌悪気味だが、実際はエクレアと並ぶ戦闘の天才で、暗殺者。 (女性がやっても男性がやっても構いません。)
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

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0:夜。とあるホテルの一室。 0: 0:一人の青年が五人掛けの丸いテーブルの席に座っている。 0: ロータス:……誰も、来ないな。ここで合ってるハズ、なんだが…。 ロータス:“リーダー”…、あなたは俺をこの「特別チーム」に配属して、いったいなにがしたいんですか。 0: エクレア:それは勿論、アナタの成長のためでしょうね。 0: ロータス:っ…!? 0: 0:気が付くと、ロータスの左隣の席にローブの女性が座っていた。 0: ロータス:え、エクレアッ…!?あんたいつの間に…!? エクレア:ワタシにかかれば気配を消すことなんて赤子の手をひねるようなものですよ。ロータスくんも知っているでしょう?それにしても。クククッ……。驚いてしまって、やっぱりロータスくんはかわいいですねぇ。 ロータス:…うるさいな。というか、あんた一人なのか? エクレア:ええ、今のところは。じきに揃うでしょう。ああ、飲み物はそこの冷蔵庫からでしたっけ。グラスも取ってきましょう。何が飲みたいですか? ロータス:…じゃあ、シャンパーニュ。 エクレア:わかりました。では、ワタシもそれにしますね。 0: 0: ロータス:……。 エクレア:緊張してますか? ロータス:…そりゃあな。 エクレア:クククッ……。大丈夫ですよ。“あの方”が招集したチームなのですし、ワタシもいるのです。 ロータス:…それは、そうだが。 エクレア:それに、これからロータスくんはそんな凄腕たちと肩を並べて指令をこなすことになるのです。今からその調子では、やってられませんよ? ロータス:…そう、だな。 エクレア:まあ、今日は歓迎会のようなものですから、その緊張もすぐほぐれるでしょう。……おや。 0: 0:部屋のドアが開いた音が聞こえる。 0: ロータス:っ…! エクレア:一人、到着したようですね。 0: 0:部屋に入ってきたのは、黒スーツを身に纏った者。 0: ベイカー:お、私が三番目か? エクレア:はい。初めまして。エクレアです。 ベイカー:おお、アンタが『雷光』(らいこう)……!!お初にお目にかかる!ベイカーってモンだ。これからよろしくな!そこの坊ちゃんも。 ロータス:は、はじめまして。ロータスと言います…。 ベイカー:ロータス!“兄貴”から話聞いてるぜ。よろしくなァ! ロータス:は、はい…。 ベイカー:アー、敬語は要らんぞ。私と君はこれから対等になるんだからよ! ロータス:わ、わかり…、わかった。 ベイカー:ハハッ!まあゆっくり慣れてくれりゃいいさ! エクレア:はい、ロータスくん。これグラスです。お酒はテーブルに置いておきますね。 ロータス:あぁ、ありがとう…。 ベイカー:お、いいなあその酒!エクレア、すまんが私にもグラスをもらえるか? エクレア:はいはい…。どうぞ。…面倒ですし、もう五人分グラスを用意しておきますか。 ロータス:あ、あの…。ベイカー。 ベイカー:ン~?どうした? ロータス:あなたって、その…。『パン屋』、だよな?都市伝説の。 ベイカー:おう、そうとも!なんだ、“兄貴”から話聞いてたかァー? ロータス:ああ。…“リーダー”が認めるだけでなく、「都市伝説になったマフィア」…。いつか会ってみたいと思っていた。 ベイカー:ホントかァ~?そんな持ちあげられると照れるぜ…。フフ。ありがとうなァ、ルーキー!でも、私も今日をずっと心待ちにしてたんだぜ? エクレア:と、言いますと? ベイカー:だってよォ、“兄貴”が認める凄腕マフィア四人と一緒にチームを組めるんだぜ!?こんな嬉しいことあるかよ! ロータス:俺は…。そんなんじゃない。 エクレア:そんなことはありません。ロータスくんのいないところで“あの方”はロータスくんのことをとても褒めていましたよ。「将来絶対に大きくなる」とも。 ベイカー:そうそう、「今はまだ『蓮(はす)の子』でも、将来は絶対に大きく花開くだろう」ってなァ! エクレア:それに“あの方”はロータスくんに成長してもらうためにこのチームに入れたのでしょうし。何も心配はいりませんよ。ワタシたちがサポートしますから。 ベイカー:おう、死ぬときゃ一緒だ!気楽に行こうぜェ。 ロータス:…ありがとう。 エクレア:っと…。足音がしますね。それも二人分。どうやら揃ったようです。 ベイカー:だな!ご対面だ! 話数転換。 0:ベイカーがそういうと部屋のドアが開き、 0:入ってきたのは二人。 0:片方はピアスが印象的で、片方は丸眼鏡だ。 0: シャンディ:あら…。あたしたちが最後みたいよ。 レイヴン:おや、本当だね。遅れてすまない。 エクレア:いえいえ。どうぞ席に。 シャンディ:ありがとう、失礼するわね…。 レイヴン:君、隣失礼するよ。 ロータス:あ、あぁ…。 ベイカー:アンタらも酒はこれでいいか? レイヴン:僕は良いよ。シャンディは? シャンディ:あたしも最初はそれいただくわ。 ベイカー:オーケー。さて…。揃ったな! エクレア:それではまずは乾杯ですか? レイヴン:そうだねぇ。あぁ、僕が注いでいくよ。 0: 0:レイヴンが酒をもって五人のグラスに注いでいく。 0: エクレア:……なんと言いますか、個性的なメンバーが集まったようですね。 ベイカー:ソレ、アンタが言うかァ!? シャンディ:あら…。ということは貴女がかの『雷光』さんなのかしら?意外ね。 エクレア:ええ、そうですが……。ロータスくん、ワタシ、そんなに変わってます? ロータス:え?…いや、変わってない方だと思うけどな。 シャンディ:本当に?あたしたちの認識としては、『雷光』は変人で戦闘狂で、破壊が大好きで、敵味方見境なく銃を乱射するヤバい奴って言われてるのだけれど…。 エクレア:ふむ…?それの何がおかしいのです。 ベイカー:ほぅ? エクレア:「敵はどんな手を使ってでも生かして返さない」、抗争の時は一番大事なことですし、これは私の信条ですよ。 レイヴン:それは理解しているよ。だとしても…。建物や味方にまで被害が及ぶってのはどうなんだい? エクレア:クククッ……。芸術は破壊と創造、ですよ。 シャンディ:…やっぱり変人でしょ、あなた。 ベイカー:ハハハッ…。まァでも、一つの芸を極めた強ェマフィアが変人揃いってのは一理ある。 レイヴン:そうだね。『雷光』さんは変過ぎるけど、僕達も変人に変わりはない。そしてそれは、この場でだんだん明らかになるだろうさ。 シャンディ:でも、自己紹介は乾杯の後よ。ちょうど注ぎ終わったみたいだし。 レイヴン:うん、待たせたね。ちゃーんと全員均等に注いだよ。 エクレア:では、乾杯といきましょうか。 ベイカー:あぁ、このチームの結束と組織の繁栄を願って! 0: ロータス:か、乾杯…!(同時に) エクレア:カンパイ。(同時に) ベイカー:乾杯ーッ!(同時に) レイヴン:乾杯!(同時に) シャンディ:かーんぱい。(同時に) 0: 0: ベイカー:おー、この酒なかなか美味いな!シャンパンなんて久々に飲んだが! シャンディ:ん、たまにはこういうのも悪くないわね…。 レイヴン:あれ、シャンディってあんまり発泡酒飲まないの? シャンディ:ええ、ほとんど。ウイスキーをロックで飲むのが好きなの。 レイヴン:そのコードネームでお酒強いの面白いねえ…。 エクレア:そのコードネーム、というと? ロータス:…“リーダー”からの手紙にここにいる全員の名前書いてあっただろ。 エクレア:ああ、すみません。興味がなかったのでロータスくん以外の名前を忘れてしまったのですよ……。 ベイカー:興味がないって酷ェなぁ!?私たちは今日からチームなんだ、覚えてもらわないと困るぜ…? レイヴン:あはは。じゃあエクレアもこんな感じだし、親睦を深めるためにお待ちかね、自己紹介タイムと行きますか! シャンディ:じゃあ、そこの坊やから時計回りでいきましょう。ちょうど円卓(えんたく)なのだし。 ロータス:お、俺が最初か!? シャンディ:あら、ご不満だったかしら? ロータス:い、いや。不満ってわけじゃあないんだが…。 ベイカー:違ェよ、ロータスは緊張してるんだよ!あんまりこういうの慣れてないみたいでな!だからそんな詰めてやるなよォ~。 シャンディ:あら、そうだったのね。圧をかけてしまったみたいでごめんなさい。悪気はないのよ。 ロータス:いや、大丈夫だ。ベイカーもありがとう。…じゃあ、俺から。 0: ロータス:元『チーム・ブラック』、ロータスだ。“リーダー”からの厚意でこのチームに配属されることになった。足を引っ張らないように精一杯頑張らせていただくので、どうぞ宜しく…。 0: レイヴン:ぱちぱちぱちー。 シャンディ:ふふ…。初々しいわね。あたしにもこんな時代があったかしら…。 ベイカー:そりゃアンタ、誰だって最初は初心者だろ。チェスでも、麻雀でも、このセカイでもなァ。 エクレア:まあ、我々の場合「もう1ゲーム」はできないのですがね。 レイヴン:まったくだね。コンティニューができたらどんなに楽なことか。 ベイカー:ハハッ!ホントにな! 話数転換。 シャンディ:…ねぇ、『蓮(はす)の子』。質問なのだけど。 ロータス:なんだ…? シャンディ:あなた、確か“彼”に拾われてこの組織に来たのよね。組織に来る前は何をしてたのかしら?年齢的には学生よね。 ロータス:…過去の話、か。 ベイカー:おー、確かに聞きてェな!私も凄い興味あるぜ、他人の堕落話! レイヴン:趣味悪いねぇ君…。 ロータス:…俺は、親がクソで学校に行かせてもらえなかった。金遣いが荒い親のせいで貧乏だったから、身を粉にして働いた。…稼いだ金は全部親に持ってかれたんだけどな。勿論虐待もされた。 ベイカー:マジかよ。そりゃ随分とヘヴィーな話だなァ…。そっからどうやってこっちまで流れ着いたんだ? ロータス:…5年前、当時俺は13だったんだが、遂に親が身体を売れって言ってきて。さすがに嫌だったから、外まで逃げて、捕まって。そんな時助けてくれたのが偶然通りかかった“リーダー”だったんだ。 ロータス:今でも鮮明に覚えてる。“リーダー”は懐から札束を取り出して言ったんだ。「このガキを俺に寄こしたらこの金をくれてやる、はした金ですまねぇな。」って。 シャンディ:まるで映画みたいな話ね。 ロータス:俺もそう思うよ。…それで、“リーダー”に憧れてこの世界に入ったっていうのが俺の過去の話だな。 エクレア:その話、いつ聞いてもそのクソ親をぶち殺してやりたくなります……。でも、大丈夫ですよロータスくん。あなたはワタシが守りますから。……クククッ。 ロータス:あ、あぁ…。助かる。 レイヴン:あはは。噂通り、ロータスにゾッコンだね、エクレア。 エクレア:勿論。ロータスくんはワタシを理解してくれた人……。傷つけたらチームメイトでも殺します。 ベイカー:ひぇー、アンタが言うと恐ろしいなァ、マジで! ロータス:…と、こんな感じで良かったか?自己紹介。 レイヴン:あぁ、パーフェクトさ! シャンディ:…辛い過去の話をさせてしまってごめんなさいね。 ロータス:大丈夫だ。気遣いありがとう。 ベイカー:んじゃ、次はアンタの番ですぜ『雷光』! エクレア:わかりました。 0: エクレア:コードネーム、エクレア。周りからは『破壊の雷光』と呼ばれています。前の所属はロータスくんと同じ『チーム・ブラック』です。よろしくお願いしますね。 0: ベイカー:本当、光栄だなァ!アンタとチームを組める日が来るとは…! レイヴン:ベイカーはエクレアのこと、尊敬しているんだったよね。いやあ、おめでたいことだ! ベイカー:おう、瞬く間に何もかも全部ぶっ壊すって殺り方、マジで尊敬して…ってェ、なんでアンタがそれを知ってんだ!? レイヴン:フフー。「『ウォッチャー』は空を飛び俯瞰(ふかん)する。ある者からは善、ある者からは悪。その様、ワタリガラスの如く。」、だよ。 ベイカー:ハァー…。なるほどォ。全部お見通しか、流石だなァ。 ロータス:おぉ……!! シャンディ:ちょっと。自信満々に自分のこと語るのはいいけれど、今は『雷光』さんのターンよ。レディを追い越すのはマナー違反じゃないかしら? レイヴン:おっと失礼。…とは言っても。『雷光』さんは有名すぎて、紹介してもらうことがなくないかい? シャンディ:…確かに。多分、逸話も全部事実でしょうしね…。 エクレア:では、ワタシの自己紹介はこのあたりで…。あ、ロータスくんのグラスもうお酒がないではありませんか。注ぎますね……! ロータス:えっ?あ、あぁ…。ありがとう…。 シャンディ:…ロータスには絶対にちょっかいかけないようにしないといけないわね…。 レイヴン:さ、次はベイカーの番だよ! ベイカー:おう! シャンディ:ベイカー…。ふふっ。都市伝説さん、案外名前はそのまんまなのね。 ベイカー:仕方ねェだろ、私には小洒落た名前つける脳がないんだからよ!それに私、無類のパン好きだしな!ハハ! シャンディ:こんな単細胞みたいな喋り方してるのに、手口は一流…。やっぱり強いマフィアってクセモノ揃いね。 エクレア:…ロータスくん、この方々は先ほどから何を言っているのですか? ロータス:…あんた、本当に何も知らないのな。 エクレア:ええ、まったく。申し訳ないですがね。 ベイカー:ハハッ、『雷光』らしい!んじゃまあ、自己紹介を「謳(うた)わせて」貰おう! 0: ベイカー:ある日から、この組織にとある都市伝説が噂されるようになった。「ある日仕事を終えて帰ってくると買った覚えのないバゲットが置かれており、そのバゲットを届けられた者は一週間以内に必ず爆死する。」 ベイカー:その都市伝説の名は、『火薬風味のパン屋さん』。んで、その正体がこの私、パンを愛する奇妙で愉快な爆弾魔、ベイカーってわけだ! 話数転換。 レイヴン:爆発というとても目立つ現象なのに、一切足取りは掴めないし痕跡も残さない、そして一週間以内に爆破できなかったことはない…。間違いなく君はこの国一番の爆弾魔だ!この僕が断言しよう。 ベイカー:あンがとな、俯瞰者(ふかんしゃ)さんよ! シャンディ:それにしても、いつ聞いても面白い手口よね、それ。予告状代わりにパンのお届けだなんて。 レイヴン:あ、もしかして爆発の跡からはパンの焼けた匂いでもするのかなー? エクレア:クククッ……。焼死体からバターの香りでもするのですか? ロータス:バターの香りはしないんじゃないか?小麦粉の粉塵爆発(ふんじんばくはつ)だから小麦の焦げた匂いはするかもしれないが…。 シャンディ:え…。冗談のつもりだったのだけれど…。あなたそこまで拘(こだわ)っているの? ベイカー:勿論さァ!私の芸術のコンセプトは「パン喰らいがパンになる」なんだからよ! レイヴン:そのパンを食べさせてるのは紛れもない君だけどね! ベイカー:細けェことはいーんだよ! エクレア:その回りくどいモノが芸術……。ワタシとはかけ離れていますね……。 ベイカー:すまんね、かけ離れてて!でも、私はアンタを尊敬してる。それだけ頭のどっかに留めてくれていりゃいいさ! エクレア:ふむ……。わかりました。 ベイカー:サンキュ。にしてもロータス、よくそこまで知ってたなァ!ちょっと嬉しかったぜ。 ロータス:だから言っただろ、“リーダー”からよく聞いてるって。…あと話は変わるんだが、願わくば今度あんたの作ったパンが食べてみたい。…勿論、火薬抜きで。 ベイカー:フッ、ハハハッ!お安い御用だ!口に入れたときには思わず満月みたいな笑みがこぼれる最高のふわふわクロワッサンを振舞ってやる! ロータス:それはいいな…!! 0: 0:そのまま二人の話が盛り上がっていく。 0: シャンディ:…なんか、二人の空気になっちゃったわね。 レイヴン:まあ、ロータスもパンが好物らしいし、ベイカーの兄(姉)貴肌な性格がきっと接しやすいんだよ。 シャンディ:…あたしたち、完璧に地雷な飲んだくれと胡散臭い丸眼鏡だものね…。って、『雷光』さん?どうしたの、そんなにスマホの画面タップして…。 エクレア:ワタシもおいしいパンを作ればロータスくんに喜んでもらえるはず…!あぁ、いっそ名前の通り「エクレア」でも作ってみましょうかねぇ……。ククッ、ククククッ……!! レイヴン:あはは、愛が重いことで…。 レイヴン:…でも確かエクレアって、料理ド下手じゃなかったっけ…。(小声) シャンディ:それにしても…。“彼”お墨付きのルーキー『蓮(はす)の子』、『破壊の雷光』、『火薬風味のパン屋さん』、『ウォッチャー』…。夢かと思うくらい豪華なメンバーね。…あたし、やっていけるかしら。 レイヴン:冗談。君は隠密任務のエキスパートだろう、シャンディ。十分このチームに見合うだけの力は持っていると思うけどね。 シャンディ:そうかしらね…。あたしなんか仕事がないときはただの飲んだくれよ…。あなたなら知ってるでしょう。 レイヴン:勿論。そして、お酒が入るととーっても悲観的になっちゃうこともリサーチ済みだよ。流石、黄金色(こがねいろ)の悲恋酒(ひれんしゅ)の名前を冠するだけあるね! シャンディ:…せいぜい足を引っ張らないように気を付けるわね。……ぷは。飲み切っちゃった。申し訳ないけれどウイスキーグラスとバーボンを取ってもらえるかしら…。確かそこにあったわ…。 レイヴン:あはは。仰せのままに、ユアマジェスティ。 0: 0: ベイカー:いやあ、すまんすまん!話がだいぶ盛り上がって遮っちまったな! ロータス:本当にすまない…。ベイカーがとっても話しやすくてつい…。 レイヴン:まさかロータスがあんなに喋る子だったとは…。リサーチ不足だったなぁ…。 エクレア:目をキラキラさせてたくさん喋るロータスくんもかわいくて素敵でした……! ロータス:恥ずかしいからあんまり蒸し返すな…! エクレア:クククッ……!! シャンディ:…えーっと、次はあたしの自己紹介で良かったのよね? レイヴン:ああ。よろしく頼むよ、「暗殺者」さん。 シャンディ:はいはい…。 0: シャンディ:元、組織のゴミ処理係もとい暗殺者。『告別の黄金酒(おうごんしゅ)』、シャンディ・ガフ…。上っ面だけの異名でごめんなさいね。 0: エクレア:…あぁ、アナタが。 レイヴン:えっ、エクレアが自分とロータス以外のマフィアの情報を知っている…!? ロータス:明日は槍が降るかな…。 エクレア:失礼ですね。昔、少しだけ“あの方”から聞いただけです。なんでも「ワタシと肩を並べるほどの戦闘能力を持つマフィア」、だとか……。 話数転換。 レイヴン:どんな獲物も必ず仕留める、可憐(かれん)で華奢(きゃしゃ)な発泡酒。それが業界最高峰の暗殺者、シャンディ・ガフ。…謳(うた)い文句は完璧なんだけど…。 シャンディ:当の本人は仕事嫌いのただの酒カスよ…。というか、暗殺ばっかりやってきたけれど…。チームなんか組んであたし、本当に機能するのかしらね。 ベイカー:大丈夫だろ、ここのメンバーは全員得意なことがちゃあんとバラけてンだからよ!私はこのチーム、なかなかいいチームになると思うぜ? ロータス:…それに、このチームは“リーダー”の推薦で作られたんだ、あの人が判断ミスなんてするわけないだろ? シャンディ:…それもそうね。……ぷは。もう一杯…。 エクレア:本当、よく飲まれるのですね。 シャンディ:飲まないとやっていられないもの…。仕事の疲れや杞憂(きゆう)に苛(さいな)まれるのは懲り懲りなのよ。 レイヴン:まあ、お酒飲むと忘れられるもんね!どこかのアニメでもやってたよ、なんだっけ。お酒の幸せタイフーン!、みたいな。 ベイカー:それ絶対ロクでもないだろ…。 シャンディ:じゃあ、あたしもうこれ以上話すことないし、レイヴンに回すわ…。 レイヴン:え、これで終わりかい?随分短いけど。もっと話すことあるだろー? シャンディ:あたしはやってることがいつも同じだから武勇伝とかもないのよ…。強いて言うなら武装した敵組織のチーム二つを皆殺しにしたくらいじゃないかしら…。 レイヴン:違うだろう!まったく、情報は正確に伝えてくれないと困るよー?正確には「ナイフ一本だけで計27名を闇に屠った」んだろー! シャンディ:…なんであなたは全部覚えてるのよ…。ちょっと気味悪いわよ、それ。 ロータス:いや、ちょっと待て。ナイフ一本?…それ強いて言うなら、で出すような武勇伝じゃなくないか。 エクレア:ナイフ一本で…。それはなかなか珍妙ですね。何故銃を使わなかったのですか? シャンディ:急に襲撃されたからよ…。銃はあったけど弾がなくて、仕方ないから死ぬ覚悟でダガーだけ持って行ったらなんか生き残ったのよ…。あたし、生への執着は強いのかもね。 ベイカー:なんか生き残ったって…。おいおい、どんな話だソレぇ!? シャンディ:あたしもわかんないわよ。まったく…。ほら、過去の実績も話したわ。これで文句ないでしょう…? レイヴン:…君の過去の話は面白いの沢山あるんだけどなあ。まあいいや、本人が乗り気じゃないみたいなのでね!じゃあ最後に残るは僕の挨拶だ! 0: レイヴン:僕の名前はレイヴン。通称『ウォッチャー』。全てを見通す情報ネットワークを持った、気まぐれな伝書鴉(でんしょがらす)さ! 0: エクレア:確かアナタは、この地域のマフィアではないんでしたね。 レイヴン:あぁ。二つ隣の国で誰を味方に取るわけでもなくのらりくらりと情報屋をしていたら、いろいろあって“彼”に出会ってね。いろいろ助けてもらった恩もあるからってことで、この国に移ってきたのさ。 シャンディ:…“あの人”、いったい何種類のパイプを持っているのかしら…。 ロータス:ところで…。さっきも俺たちの情報をだいぶ握っている素振りを見せていたが、どれだけ知ってるんだ? レイヴン:どれだけー、かあ。そうだなあ。じゃあ…。 レイヴン:まず、ベイカーは耳の形フェチだろう? ベイカー:ハァ!?何でそんなこと知ってやがる!? レイヴン:シャンディは恋人にフラれる理由がいつも決まって「ため息がうるさい」だ。 シャンディ:悲恋の感情を伝えるお酒を冠するあたしにそれを言うのね…。はぁ。 レイヴン:そして、エクレアはアジトに戻ると毎度必ずロータスがどうしたら笑顔になるかを考えている。 エクレア:当然でしょう?ワタシはロータスくんに幸せを感じてほしいのです。 ロータス:…ありがとう、な。はは…。嬉しいよ。 レイヴン:そして最後にロータスは―――。 0: 0:瞬間、レイヴンの身体をとてつもない殺気が襲う。 0:それがエクレアから向けられているモノなのは何も見ずとも理解できるだろう。 0: エクレア:―――ロータスくんは、なんなのです? レイヴン:…ね、眠る前にエクレアのことをずっと考エテイマス…。 ロータス:おい、レイヴン!? エクレア:おや、おや。そうだったのですか、ロータスくん……。ワタシはとても嬉しいです……!クク、クククッ…!アハハハハハハッ!! ベイカー:…おい、これもう手ェ付けられんぞ。 シャンディ:ドンマイ、『蓮(はす)の子』…。…まあでも、レイヴンが余計なことまで全部知り尽くしてるってのは十分理解できたわ…。 ベイカー:本当になァ…。マジで怖ェ、距離置こォ~…。 ロータス:レイヴン…。あとで覚えておけよ……!! レイヴン:すみませんでしたー! 話数転換。 0:先ほどの場面から少し経過。 ベイカー:で、これから私たちは晴れてチームとなるわけだが。最初の指令はどうなるんだろうな? シャンディ:さあ…?まあ、そのうち“彼”から連絡が来るでしょう…。 エクレア:そうですね…。と、おや?どうにも外が騒がしいみたいですが。 ロータス:外で暴力沙汰かなんかあったんじゃないか…? レイヴン:…一応窓から覗いておくか。 0: 0:レイヴンが窓の外を覗く。 0: レイヴン:…あ。 ロータス:…どうした、何かあったのか? レイヴン:えーっと、外にねぇ…。僕の元取引先であろう顔ぶれが武装して走り回ってる…。 ベイカー:ハァ? シャンディ:…まさかあなた、国籍を移すときに自分の身の回りのカタつけてこなかったの…? レイヴン:いや、そこらへんはちゃんとしてきたんだけど…。多分、僕の情報ネットワークを逃すまいと追ってきたって言うのが濃厚かな…?あの取引先だいぶ強欲でケチだったし! ベイカー:愚痴吐いてる場合かァ…? エクレア:面倒ですね。ワタシがまとめて潰してきます……。 ロータス:待ってくれエクレア。ここは普通に市街地のホテルだ。いくら夜とはいえ、いつもみたいに暴れまわられたら困る。それに相手が奇襲してきてレイヴンを攫われたら元も子もない。 エクレア:むぅ……。 シャンディ:…あなたって多分とっても頼りになるんだろうけれどその分敵が多いのが難点ね。 レイヴン:そりゃあ誰彼構わず情報売ってるからね…。ってぇ、まずい!あいつら結構重装備だ!グレランとか持ってる奴いるし! ベイカー:グレネードだァ?はぁー、こんな夜中にこのホテルと街中で派手にドンパチやろうってかァ。だいぶ殺意高いなァ。っつうかそこまでしてレイヴンの情報が欲しいのかそいつら! レイヴン:それくらい僕が情報屋として優れてるってことさ! ロータス:言ってる場合かよ…。…でも、少しわくわくする。このチーム最初のミッションは、このホテルから抜け出して敵を殲滅することってわけだ。 シャンディ:ふふ…。確かに、そう考えると楽しくなってくるわね…。よし…。こっちも準備しましょう。数で負けてるなら必要なのは戦法ね。 ロータス:よし…。じゃあ、エクレアは敵をできるだけ引き付けてくれ。相手がグレネード持ち出してるんなら抑える必要はない。全力で頼む。 エクレア:わかりました。何に換えてもロータスくんをお護りします。 ロータス:今回護るのはレイヴンだってことを忘れるなよ!で、レイヴンはできる限り隠密。相手が狙ってるのはあんただからな。ベイカーは俺と一緒にレイヴンの近くについて防衛だ。 ベイカー:了解。…ハハ、流石は“兄貴”の見こんだ男、戦況の理解から指示までルーキーとは思えねェな! レイヴン:僕もできる限り自分の身は自分で守るからね! シャンディ:あたしは…。奇襲かしら? ロータス:その通り。こちらで引き付けるから全力で後ろから殺ってくれ。華麗な暗殺、楽しみにしてる! シャンディ:はいはい…。酔ってるから誤射とかしたらごめんなさいね。 エクレア:動くのは相手が動き始めたら、ですよね。 シャンディ:ええ。“彼”に教えてもらった最低限のチーム戦術。 レイヴン:いやあ、本当にごめんね君たち!僕のせいで巻き込んでしまった…。 ベイカー:ったく、これが終わったら煙草1カートン奢りだぜレイヴン。 レイヴン:勿論、お詫びはするさ!煙草はフィリップ・モリスでよかったかな? ベイカー:…お前、そうやって人のプライベートにずかずか入るから狙われるんだよ!恨みも含めて! エクレア:クククッ……。まあでも、チームでどんちゃん騒ぎしながら命のやり取りをする、なんて…。血が滾ります。 ロータス:…エクレア。 エクレア:はい? ロータス:頼りにしてるぞ! エクレア:…!! はい、ロータスくん!……クククッ、アハハハハハハハハハッ!! シャンディ:ふふ。…流石、味方の士気の上げ方は心得てるわね。 ベイカー:そんじゃま、仮ではあるがリーダー、ロータスに作戦開始の号令をいただくとするか! ロータス:えぇ、号令!? レイヴン:いつも“彼”のを見てただろう?あの感じで、さ! ロータス:…むぅ。わかった。 エクレア:では、お願いします。「リーダー」。 ロータス:…よし。 0: ロータス:“元リーダー”のおかげで、俺達はめぐり合えた。全員出発地点や性格はバラバラだが、断言しよう、「このチームは最高、最強だ。」恐れることはない、思う存分自分の本領を発揮しろ!…さあ。 0: ロータス:作戦開始だ!!野郎共!! 0: 0:そうして、爆発音とともに五人の 0:初めての共同任務が始まった…! 0: 0:End

0:夜。とあるホテルの一室。 0: 0:一人の青年が五人掛けの丸いテーブルの席に座っている。 0: ロータス:……誰も、来ないな。ここで合ってるハズ、なんだが…。 ロータス:“リーダー”…、あなたは俺をこの「特別チーム」に配属して、いったいなにがしたいんですか。 0: エクレア:それは勿論、アナタの成長のためでしょうね。 0: ロータス:っ…!? 0: 0:気が付くと、ロータスの左隣の席にローブの女性が座っていた。 0: ロータス:え、エクレアッ…!?あんたいつの間に…!? エクレア:ワタシにかかれば気配を消すことなんて赤子の手をひねるようなものですよ。ロータスくんも知っているでしょう?それにしても。クククッ……。驚いてしまって、やっぱりロータスくんはかわいいですねぇ。 ロータス:…うるさいな。というか、あんた一人なのか? エクレア:ええ、今のところは。じきに揃うでしょう。ああ、飲み物はそこの冷蔵庫からでしたっけ。グラスも取ってきましょう。何が飲みたいですか? ロータス:…じゃあ、シャンパーニュ。 エクレア:わかりました。では、ワタシもそれにしますね。 0: 0: ロータス:……。 エクレア:緊張してますか? ロータス:…そりゃあな。 エクレア:クククッ……。大丈夫ですよ。“あの方”が招集したチームなのですし、ワタシもいるのです。 ロータス:…それは、そうだが。 エクレア:それに、これからロータスくんはそんな凄腕たちと肩を並べて指令をこなすことになるのです。今からその調子では、やってられませんよ? ロータス:…そう、だな。 エクレア:まあ、今日は歓迎会のようなものですから、その緊張もすぐほぐれるでしょう。……おや。 0: 0:部屋のドアが開いた音が聞こえる。 0: ロータス:っ…! エクレア:一人、到着したようですね。 0: 0:部屋に入ってきたのは、黒スーツを身に纏った者。 0: ベイカー:お、私が三番目か? エクレア:はい。初めまして。エクレアです。 ベイカー:おお、アンタが『雷光』(らいこう)……!!お初にお目にかかる!ベイカーってモンだ。これからよろしくな!そこの坊ちゃんも。 ロータス:は、はじめまして。ロータスと言います…。 ベイカー:ロータス!“兄貴”から話聞いてるぜ。よろしくなァ! ロータス:は、はい…。 ベイカー:アー、敬語は要らんぞ。私と君はこれから対等になるんだからよ! ロータス:わ、わかり…、わかった。 ベイカー:ハハッ!まあゆっくり慣れてくれりゃいいさ! エクレア:はい、ロータスくん。これグラスです。お酒はテーブルに置いておきますね。 ロータス:あぁ、ありがとう…。 ベイカー:お、いいなあその酒!エクレア、すまんが私にもグラスをもらえるか? エクレア:はいはい…。どうぞ。…面倒ですし、もう五人分グラスを用意しておきますか。 ロータス:あ、あの…。ベイカー。 ベイカー:ン~?どうした? ロータス:あなたって、その…。『パン屋』、だよな?都市伝説の。 ベイカー:おう、そうとも!なんだ、“兄貴”から話聞いてたかァー? ロータス:ああ。…“リーダー”が認めるだけでなく、「都市伝説になったマフィア」…。いつか会ってみたいと思っていた。 ベイカー:ホントかァ~?そんな持ちあげられると照れるぜ…。フフ。ありがとうなァ、ルーキー!でも、私も今日をずっと心待ちにしてたんだぜ? エクレア:と、言いますと? ベイカー:だってよォ、“兄貴”が認める凄腕マフィア四人と一緒にチームを組めるんだぜ!?こんな嬉しいことあるかよ! ロータス:俺は…。そんなんじゃない。 エクレア:そんなことはありません。ロータスくんのいないところで“あの方”はロータスくんのことをとても褒めていましたよ。「将来絶対に大きくなる」とも。 ベイカー:そうそう、「今はまだ『蓮(はす)の子』でも、将来は絶対に大きく花開くだろう」ってなァ! エクレア:それに“あの方”はロータスくんに成長してもらうためにこのチームに入れたのでしょうし。何も心配はいりませんよ。ワタシたちがサポートしますから。 ベイカー:おう、死ぬときゃ一緒だ!気楽に行こうぜェ。 ロータス:…ありがとう。 エクレア:っと…。足音がしますね。それも二人分。どうやら揃ったようです。 ベイカー:だな!ご対面だ! 話数転換。 0:ベイカーがそういうと部屋のドアが開き、 0:入ってきたのは二人。 0:片方はピアスが印象的で、片方は丸眼鏡だ。 0: シャンディ:あら…。あたしたちが最後みたいよ。 レイヴン:おや、本当だね。遅れてすまない。 エクレア:いえいえ。どうぞ席に。 シャンディ:ありがとう、失礼するわね…。 レイヴン:君、隣失礼するよ。 ロータス:あ、あぁ…。 ベイカー:アンタらも酒はこれでいいか? レイヴン:僕は良いよ。シャンディは? シャンディ:あたしも最初はそれいただくわ。 ベイカー:オーケー。さて…。揃ったな! エクレア:それではまずは乾杯ですか? レイヴン:そうだねぇ。あぁ、僕が注いでいくよ。 0: 0:レイヴンが酒をもって五人のグラスに注いでいく。 0: エクレア:……なんと言いますか、個性的なメンバーが集まったようですね。 ベイカー:ソレ、アンタが言うかァ!? シャンディ:あら…。ということは貴女がかの『雷光』さんなのかしら?意外ね。 エクレア:ええ、そうですが……。ロータスくん、ワタシ、そんなに変わってます? ロータス:え?…いや、変わってない方だと思うけどな。 シャンディ:本当に?あたしたちの認識としては、『雷光』は変人で戦闘狂で、破壊が大好きで、敵味方見境なく銃を乱射するヤバい奴って言われてるのだけれど…。 エクレア:ふむ…?それの何がおかしいのです。 ベイカー:ほぅ? エクレア:「敵はどんな手を使ってでも生かして返さない」、抗争の時は一番大事なことですし、これは私の信条ですよ。 レイヴン:それは理解しているよ。だとしても…。建物や味方にまで被害が及ぶってのはどうなんだい? エクレア:クククッ……。芸術は破壊と創造、ですよ。 シャンディ:…やっぱり変人でしょ、あなた。 ベイカー:ハハハッ…。まァでも、一つの芸を極めた強ェマフィアが変人揃いってのは一理ある。 レイヴン:そうだね。『雷光』さんは変過ぎるけど、僕達も変人に変わりはない。そしてそれは、この場でだんだん明らかになるだろうさ。 シャンディ:でも、自己紹介は乾杯の後よ。ちょうど注ぎ終わったみたいだし。 レイヴン:うん、待たせたね。ちゃーんと全員均等に注いだよ。 エクレア:では、乾杯といきましょうか。 ベイカー:あぁ、このチームの結束と組織の繁栄を願って! 0: ロータス:か、乾杯…!(同時に) エクレア:カンパイ。(同時に) ベイカー:乾杯ーッ!(同時に) レイヴン:乾杯!(同時に) シャンディ:かーんぱい。(同時に) 0: 0: ベイカー:おー、この酒なかなか美味いな!シャンパンなんて久々に飲んだが! シャンディ:ん、たまにはこういうのも悪くないわね…。 レイヴン:あれ、シャンディってあんまり発泡酒飲まないの? シャンディ:ええ、ほとんど。ウイスキーをロックで飲むのが好きなの。 レイヴン:そのコードネームでお酒強いの面白いねえ…。 エクレア:そのコードネーム、というと? ロータス:…“リーダー”からの手紙にここにいる全員の名前書いてあっただろ。 エクレア:ああ、すみません。興味がなかったのでロータスくん以外の名前を忘れてしまったのですよ……。 ベイカー:興味がないって酷ェなぁ!?私たちは今日からチームなんだ、覚えてもらわないと困るぜ…? レイヴン:あはは。じゃあエクレアもこんな感じだし、親睦を深めるためにお待ちかね、自己紹介タイムと行きますか! シャンディ:じゃあ、そこの坊やから時計回りでいきましょう。ちょうど円卓(えんたく)なのだし。 ロータス:お、俺が最初か!? シャンディ:あら、ご不満だったかしら? ロータス:い、いや。不満ってわけじゃあないんだが…。 ベイカー:違ェよ、ロータスは緊張してるんだよ!あんまりこういうの慣れてないみたいでな!だからそんな詰めてやるなよォ~。 シャンディ:あら、そうだったのね。圧をかけてしまったみたいでごめんなさい。悪気はないのよ。 ロータス:いや、大丈夫だ。ベイカーもありがとう。…じゃあ、俺から。 0: ロータス:元『チーム・ブラック』、ロータスだ。“リーダー”からの厚意でこのチームに配属されることになった。足を引っ張らないように精一杯頑張らせていただくので、どうぞ宜しく…。 0: レイヴン:ぱちぱちぱちー。 シャンディ:ふふ…。初々しいわね。あたしにもこんな時代があったかしら…。 ベイカー:そりゃアンタ、誰だって最初は初心者だろ。チェスでも、麻雀でも、このセカイでもなァ。 エクレア:まあ、我々の場合「もう1ゲーム」はできないのですがね。 レイヴン:まったくだね。コンティニューができたらどんなに楽なことか。 ベイカー:ハハッ!ホントにな! 話数転換。 シャンディ:…ねぇ、『蓮(はす)の子』。質問なのだけど。 ロータス:なんだ…? シャンディ:あなた、確か“彼”に拾われてこの組織に来たのよね。組織に来る前は何をしてたのかしら?年齢的には学生よね。 ロータス:…過去の話、か。 ベイカー:おー、確かに聞きてェな!私も凄い興味あるぜ、他人の堕落話! レイヴン:趣味悪いねぇ君…。 ロータス:…俺は、親がクソで学校に行かせてもらえなかった。金遣いが荒い親のせいで貧乏だったから、身を粉にして働いた。…稼いだ金は全部親に持ってかれたんだけどな。勿論虐待もされた。 ベイカー:マジかよ。そりゃ随分とヘヴィーな話だなァ…。そっからどうやってこっちまで流れ着いたんだ? ロータス:…5年前、当時俺は13だったんだが、遂に親が身体を売れって言ってきて。さすがに嫌だったから、外まで逃げて、捕まって。そんな時助けてくれたのが偶然通りかかった“リーダー”だったんだ。 ロータス:今でも鮮明に覚えてる。“リーダー”は懐から札束を取り出して言ったんだ。「このガキを俺に寄こしたらこの金をくれてやる、はした金ですまねぇな。」って。 シャンディ:まるで映画みたいな話ね。 ロータス:俺もそう思うよ。…それで、“リーダー”に憧れてこの世界に入ったっていうのが俺の過去の話だな。 エクレア:その話、いつ聞いてもそのクソ親をぶち殺してやりたくなります……。でも、大丈夫ですよロータスくん。あなたはワタシが守りますから。……クククッ。 ロータス:あ、あぁ…。助かる。 レイヴン:あはは。噂通り、ロータスにゾッコンだね、エクレア。 エクレア:勿論。ロータスくんはワタシを理解してくれた人……。傷つけたらチームメイトでも殺します。 ベイカー:ひぇー、アンタが言うと恐ろしいなァ、マジで! ロータス:…と、こんな感じで良かったか?自己紹介。 レイヴン:あぁ、パーフェクトさ! シャンディ:…辛い過去の話をさせてしまってごめんなさいね。 ロータス:大丈夫だ。気遣いありがとう。 ベイカー:んじゃ、次はアンタの番ですぜ『雷光』! エクレア:わかりました。 0: エクレア:コードネーム、エクレア。周りからは『破壊の雷光』と呼ばれています。前の所属はロータスくんと同じ『チーム・ブラック』です。よろしくお願いしますね。 0: ベイカー:本当、光栄だなァ!アンタとチームを組める日が来るとは…! レイヴン:ベイカーはエクレアのこと、尊敬しているんだったよね。いやあ、おめでたいことだ! ベイカー:おう、瞬く間に何もかも全部ぶっ壊すって殺り方、マジで尊敬して…ってェ、なんでアンタがそれを知ってんだ!? レイヴン:フフー。「『ウォッチャー』は空を飛び俯瞰(ふかん)する。ある者からは善、ある者からは悪。その様、ワタリガラスの如く。」、だよ。 ベイカー:ハァー…。なるほどォ。全部お見通しか、流石だなァ。 ロータス:おぉ……!! シャンディ:ちょっと。自信満々に自分のこと語るのはいいけれど、今は『雷光』さんのターンよ。レディを追い越すのはマナー違反じゃないかしら? レイヴン:おっと失礼。…とは言っても。『雷光』さんは有名すぎて、紹介してもらうことがなくないかい? シャンディ:…確かに。多分、逸話も全部事実でしょうしね…。 エクレア:では、ワタシの自己紹介はこのあたりで…。あ、ロータスくんのグラスもうお酒がないではありませんか。注ぎますね……! ロータス:えっ?あ、あぁ…。ありがとう…。 シャンディ:…ロータスには絶対にちょっかいかけないようにしないといけないわね…。 レイヴン:さ、次はベイカーの番だよ! ベイカー:おう! シャンディ:ベイカー…。ふふっ。都市伝説さん、案外名前はそのまんまなのね。 ベイカー:仕方ねェだろ、私には小洒落た名前つける脳がないんだからよ!それに私、無類のパン好きだしな!ハハ! シャンディ:こんな単細胞みたいな喋り方してるのに、手口は一流…。やっぱり強いマフィアってクセモノ揃いね。 エクレア:…ロータスくん、この方々は先ほどから何を言っているのですか? ロータス:…あんた、本当に何も知らないのな。 エクレア:ええ、まったく。申し訳ないですがね。 ベイカー:ハハッ、『雷光』らしい!んじゃまあ、自己紹介を「謳(うた)わせて」貰おう! 0: ベイカー:ある日から、この組織にとある都市伝説が噂されるようになった。「ある日仕事を終えて帰ってくると買った覚えのないバゲットが置かれており、そのバゲットを届けられた者は一週間以内に必ず爆死する。」 ベイカー:その都市伝説の名は、『火薬風味のパン屋さん』。んで、その正体がこの私、パンを愛する奇妙で愉快な爆弾魔、ベイカーってわけだ! 話数転換。 レイヴン:爆発というとても目立つ現象なのに、一切足取りは掴めないし痕跡も残さない、そして一週間以内に爆破できなかったことはない…。間違いなく君はこの国一番の爆弾魔だ!この僕が断言しよう。 ベイカー:あンがとな、俯瞰者(ふかんしゃ)さんよ! シャンディ:それにしても、いつ聞いても面白い手口よね、それ。予告状代わりにパンのお届けだなんて。 レイヴン:あ、もしかして爆発の跡からはパンの焼けた匂いでもするのかなー? エクレア:クククッ……。焼死体からバターの香りでもするのですか? ロータス:バターの香りはしないんじゃないか?小麦粉の粉塵爆発(ふんじんばくはつ)だから小麦の焦げた匂いはするかもしれないが…。 シャンディ:え…。冗談のつもりだったのだけれど…。あなたそこまで拘(こだわ)っているの? ベイカー:勿論さァ!私の芸術のコンセプトは「パン喰らいがパンになる」なんだからよ! レイヴン:そのパンを食べさせてるのは紛れもない君だけどね! ベイカー:細けェことはいーんだよ! エクレア:その回りくどいモノが芸術……。ワタシとはかけ離れていますね……。 ベイカー:すまんね、かけ離れてて!でも、私はアンタを尊敬してる。それだけ頭のどっかに留めてくれていりゃいいさ! エクレア:ふむ……。わかりました。 ベイカー:サンキュ。にしてもロータス、よくそこまで知ってたなァ!ちょっと嬉しかったぜ。 ロータス:だから言っただろ、“リーダー”からよく聞いてるって。…あと話は変わるんだが、願わくば今度あんたの作ったパンが食べてみたい。…勿論、火薬抜きで。 ベイカー:フッ、ハハハッ!お安い御用だ!口に入れたときには思わず満月みたいな笑みがこぼれる最高のふわふわクロワッサンを振舞ってやる! ロータス:それはいいな…!! 0: 0:そのまま二人の話が盛り上がっていく。 0: シャンディ:…なんか、二人の空気になっちゃったわね。 レイヴン:まあ、ロータスもパンが好物らしいし、ベイカーの兄(姉)貴肌な性格がきっと接しやすいんだよ。 シャンディ:…あたしたち、完璧に地雷な飲んだくれと胡散臭い丸眼鏡だものね…。って、『雷光』さん?どうしたの、そんなにスマホの画面タップして…。 エクレア:ワタシもおいしいパンを作ればロータスくんに喜んでもらえるはず…!あぁ、いっそ名前の通り「エクレア」でも作ってみましょうかねぇ……。ククッ、ククククッ……!! レイヴン:あはは、愛が重いことで…。 レイヴン:…でも確かエクレアって、料理ド下手じゃなかったっけ…。(小声) シャンディ:それにしても…。“彼”お墨付きのルーキー『蓮(はす)の子』、『破壊の雷光』、『火薬風味のパン屋さん』、『ウォッチャー』…。夢かと思うくらい豪華なメンバーね。…あたし、やっていけるかしら。 レイヴン:冗談。君は隠密任務のエキスパートだろう、シャンディ。十分このチームに見合うだけの力は持っていると思うけどね。 シャンディ:そうかしらね…。あたしなんか仕事がないときはただの飲んだくれよ…。あなたなら知ってるでしょう。 レイヴン:勿論。そして、お酒が入るととーっても悲観的になっちゃうこともリサーチ済みだよ。流石、黄金色(こがねいろ)の悲恋酒(ひれんしゅ)の名前を冠するだけあるね! シャンディ:…せいぜい足を引っ張らないように気を付けるわね。……ぷは。飲み切っちゃった。申し訳ないけれどウイスキーグラスとバーボンを取ってもらえるかしら…。確かそこにあったわ…。 レイヴン:あはは。仰せのままに、ユアマジェスティ。 0: 0: ベイカー:いやあ、すまんすまん!話がだいぶ盛り上がって遮っちまったな! ロータス:本当にすまない…。ベイカーがとっても話しやすくてつい…。 レイヴン:まさかロータスがあんなに喋る子だったとは…。リサーチ不足だったなぁ…。 エクレア:目をキラキラさせてたくさん喋るロータスくんもかわいくて素敵でした……! ロータス:恥ずかしいからあんまり蒸し返すな…! エクレア:クククッ……!! シャンディ:…えーっと、次はあたしの自己紹介で良かったのよね? レイヴン:ああ。よろしく頼むよ、「暗殺者」さん。 シャンディ:はいはい…。 0: シャンディ:元、組織のゴミ処理係もとい暗殺者。『告別の黄金酒(おうごんしゅ)』、シャンディ・ガフ…。上っ面だけの異名でごめんなさいね。 0: エクレア:…あぁ、アナタが。 レイヴン:えっ、エクレアが自分とロータス以外のマフィアの情報を知っている…!? ロータス:明日は槍が降るかな…。 エクレア:失礼ですね。昔、少しだけ“あの方”から聞いただけです。なんでも「ワタシと肩を並べるほどの戦闘能力を持つマフィア」、だとか……。 話数転換。 レイヴン:どんな獲物も必ず仕留める、可憐(かれん)で華奢(きゃしゃ)な発泡酒。それが業界最高峰の暗殺者、シャンディ・ガフ。…謳(うた)い文句は完璧なんだけど…。 シャンディ:当の本人は仕事嫌いのただの酒カスよ…。というか、暗殺ばっかりやってきたけれど…。チームなんか組んであたし、本当に機能するのかしらね。 ベイカー:大丈夫だろ、ここのメンバーは全員得意なことがちゃあんとバラけてンだからよ!私はこのチーム、なかなかいいチームになると思うぜ? ロータス:…それに、このチームは“リーダー”の推薦で作られたんだ、あの人が判断ミスなんてするわけないだろ? シャンディ:…それもそうね。……ぷは。もう一杯…。 エクレア:本当、よく飲まれるのですね。 シャンディ:飲まないとやっていられないもの…。仕事の疲れや杞憂(きゆう)に苛(さいな)まれるのは懲り懲りなのよ。 レイヴン:まあ、お酒飲むと忘れられるもんね!どこかのアニメでもやってたよ、なんだっけ。お酒の幸せタイフーン!、みたいな。 ベイカー:それ絶対ロクでもないだろ…。 シャンディ:じゃあ、あたしもうこれ以上話すことないし、レイヴンに回すわ…。 レイヴン:え、これで終わりかい?随分短いけど。もっと話すことあるだろー? シャンディ:あたしはやってることがいつも同じだから武勇伝とかもないのよ…。強いて言うなら武装した敵組織のチーム二つを皆殺しにしたくらいじゃないかしら…。 レイヴン:違うだろう!まったく、情報は正確に伝えてくれないと困るよー?正確には「ナイフ一本だけで計27名を闇に屠った」んだろー! シャンディ:…なんであなたは全部覚えてるのよ…。ちょっと気味悪いわよ、それ。 ロータス:いや、ちょっと待て。ナイフ一本?…それ強いて言うなら、で出すような武勇伝じゃなくないか。 エクレア:ナイフ一本で…。それはなかなか珍妙ですね。何故銃を使わなかったのですか? シャンディ:急に襲撃されたからよ…。銃はあったけど弾がなくて、仕方ないから死ぬ覚悟でダガーだけ持って行ったらなんか生き残ったのよ…。あたし、生への執着は強いのかもね。 ベイカー:なんか生き残ったって…。おいおい、どんな話だソレぇ!? シャンディ:あたしもわかんないわよ。まったく…。ほら、過去の実績も話したわ。これで文句ないでしょう…? レイヴン:…君の過去の話は面白いの沢山あるんだけどなあ。まあいいや、本人が乗り気じゃないみたいなのでね!じゃあ最後に残るは僕の挨拶だ! 0: レイヴン:僕の名前はレイヴン。通称『ウォッチャー』。全てを見通す情報ネットワークを持った、気まぐれな伝書鴉(でんしょがらす)さ! 0: エクレア:確かアナタは、この地域のマフィアではないんでしたね。 レイヴン:あぁ。二つ隣の国で誰を味方に取るわけでもなくのらりくらりと情報屋をしていたら、いろいろあって“彼”に出会ってね。いろいろ助けてもらった恩もあるからってことで、この国に移ってきたのさ。 シャンディ:…“あの人”、いったい何種類のパイプを持っているのかしら…。 ロータス:ところで…。さっきも俺たちの情報をだいぶ握っている素振りを見せていたが、どれだけ知ってるんだ? レイヴン:どれだけー、かあ。そうだなあ。じゃあ…。 レイヴン:まず、ベイカーは耳の形フェチだろう? ベイカー:ハァ!?何でそんなこと知ってやがる!? レイヴン:シャンディは恋人にフラれる理由がいつも決まって「ため息がうるさい」だ。 シャンディ:悲恋の感情を伝えるお酒を冠するあたしにそれを言うのね…。はぁ。 レイヴン:そして、エクレアはアジトに戻ると毎度必ずロータスがどうしたら笑顔になるかを考えている。 エクレア:当然でしょう?ワタシはロータスくんに幸せを感じてほしいのです。 ロータス:…ありがとう、な。はは…。嬉しいよ。 レイヴン:そして最後にロータスは―――。 0: 0:瞬間、レイヴンの身体をとてつもない殺気が襲う。 0:それがエクレアから向けられているモノなのは何も見ずとも理解できるだろう。 0: エクレア:―――ロータスくんは、なんなのです? レイヴン:…ね、眠る前にエクレアのことをずっと考エテイマス…。 ロータス:おい、レイヴン!? エクレア:おや、おや。そうだったのですか、ロータスくん……。ワタシはとても嬉しいです……!クク、クククッ…!アハハハハハハッ!! ベイカー:…おい、これもう手ェ付けられんぞ。 シャンディ:ドンマイ、『蓮(はす)の子』…。…まあでも、レイヴンが余計なことまで全部知り尽くしてるってのは十分理解できたわ…。 ベイカー:本当になァ…。マジで怖ェ、距離置こォ~…。 ロータス:レイヴン…。あとで覚えておけよ……!! レイヴン:すみませんでしたー! 話数転換。 0:先ほどの場面から少し経過。 ベイカー:で、これから私たちは晴れてチームとなるわけだが。最初の指令はどうなるんだろうな? シャンディ:さあ…?まあ、そのうち“彼”から連絡が来るでしょう…。 エクレア:そうですね…。と、おや?どうにも外が騒がしいみたいですが。 ロータス:外で暴力沙汰かなんかあったんじゃないか…? レイヴン:…一応窓から覗いておくか。 0: 0:レイヴンが窓の外を覗く。 0: レイヴン:…あ。 ロータス:…どうした、何かあったのか? レイヴン:えーっと、外にねぇ…。僕の元取引先であろう顔ぶれが武装して走り回ってる…。 ベイカー:ハァ? シャンディ:…まさかあなた、国籍を移すときに自分の身の回りのカタつけてこなかったの…? レイヴン:いや、そこらへんはちゃんとしてきたんだけど…。多分、僕の情報ネットワークを逃すまいと追ってきたって言うのが濃厚かな…?あの取引先だいぶ強欲でケチだったし! ベイカー:愚痴吐いてる場合かァ…? エクレア:面倒ですね。ワタシがまとめて潰してきます……。 ロータス:待ってくれエクレア。ここは普通に市街地のホテルだ。いくら夜とはいえ、いつもみたいに暴れまわられたら困る。それに相手が奇襲してきてレイヴンを攫われたら元も子もない。 エクレア:むぅ……。 シャンディ:…あなたって多分とっても頼りになるんだろうけれどその分敵が多いのが難点ね。 レイヴン:そりゃあ誰彼構わず情報売ってるからね…。ってぇ、まずい!あいつら結構重装備だ!グレランとか持ってる奴いるし! ベイカー:グレネードだァ?はぁー、こんな夜中にこのホテルと街中で派手にドンパチやろうってかァ。だいぶ殺意高いなァ。っつうかそこまでしてレイヴンの情報が欲しいのかそいつら! レイヴン:それくらい僕が情報屋として優れてるってことさ! ロータス:言ってる場合かよ…。…でも、少しわくわくする。このチーム最初のミッションは、このホテルから抜け出して敵を殲滅することってわけだ。 シャンディ:ふふ…。確かに、そう考えると楽しくなってくるわね…。よし…。こっちも準備しましょう。数で負けてるなら必要なのは戦法ね。 ロータス:よし…。じゃあ、エクレアは敵をできるだけ引き付けてくれ。相手がグレネード持ち出してるんなら抑える必要はない。全力で頼む。 エクレア:わかりました。何に換えてもロータスくんをお護りします。 ロータス:今回護るのはレイヴンだってことを忘れるなよ!で、レイヴンはできる限り隠密。相手が狙ってるのはあんただからな。ベイカーは俺と一緒にレイヴンの近くについて防衛だ。 ベイカー:了解。…ハハ、流石は“兄貴”の見こんだ男、戦況の理解から指示までルーキーとは思えねェな! レイヴン:僕もできる限り自分の身は自分で守るからね! シャンディ:あたしは…。奇襲かしら? ロータス:その通り。こちらで引き付けるから全力で後ろから殺ってくれ。華麗な暗殺、楽しみにしてる! シャンディ:はいはい…。酔ってるから誤射とかしたらごめんなさいね。 エクレア:動くのは相手が動き始めたら、ですよね。 シャンディ:ええ。“彼”に教えてもらった最低限のチーム戦術。 レイヴン:いやあ、本当にごめんね君たち!僕のせいで巻き込んでしまった…。 ベイカー:ったく、これが終わったら煙草1カートン奢りだぜレイヴン。 レイヴン:勿論、お詫びはするさ!煙草はフィリップ・モリスでよかったかな? ベイカー:…お前、そうやって人のプライベートにずかずか入るから狙われるんだよ!恨みも含めて! エクレア:クククッ……。まあでも、チームでどんちゃん騒ぎしながら命のやり取りをする、なんて…。血が滾ります。 ロータス:…エクレア。 エクレア:はい? ロータス:頼りにしてるぞ! エクレア:…!! はい、ロータスくん!……クククッ、アハハハハハハハハハッ!! シャンディ:ふふ。…流石、味方の士気の上げ方は心得てるわね。 ベイカー:そんじゃま、仮ではあるがリーダー、ロータスに作戦開始の号令をいただくとするか! ロータス:えぇ、号令!? レイヴン:いつも“彼”のを見てただろう?あの感じで、さ! ロータス:…むぅ。わかった。 エクレア:では、お願いします。「リーダー」。 ロータス:…よし。 0: ロータス:“元リーダー”のおかげで、俺達はめぐり合えた。全員出発地点や性格はバラバラだが、断言しよう、「このチームは最高、最強だ。」恐れることはない、思う存分自分の本領を発揮しろ!…さあ。 0: ロータス:作戦開始だ!!野郎共!! 0: 0:そうして、爆発音とともに五人の 0:初めての共同任務が始まった…! 0: 0:End