台本概要

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タイトル アテレゴースト
作者名 シンタマ  (@UdonguRataN)
ジャンル コメディ
演者人数 3人用台本(男1、女2)
時間 10 分
台本使用規定 非商用利用時は連絡不要
説明 性別変更可

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
マイコ 136 声優
恩田 91 音響監督
イブキ 107 幽霊(?)
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:とある収録スタジオ。録音したものを確認している恩田とマイコ。 マイコ:「カシス、ラム!もう一度力を貸して!これで・・・とどめよ!」 マイコ:「カクテル忍法!ベルモットパンチ!」 恩田:・・・うーん。 マイコ:・・・うぅ、どう・・・でしょうか? 恩田:・・・うん。いいね。これで頂きましょう。 マイコ:あ、ありがとうございます! 恩田:マイコちゃんも居残りお疲れ様でした。ありがとうね。 マイコ:いえいえ!私のせいで恩田さんにもご迷惑を・・・ 恩田:ははは・・・。まぁ僕らはそれが仕事だから。おかげでいい感じにはなったと思うよ。 マイコ:ほんとですか!嬉しいです。 恩田:このシーンは終盤に向けてとっても大事だからよかった。もう一度聴いてみる? マイコ:はい。是非お願い致します。 恩田:マイコちゃんにはもっともっと成長して欲しいからね。 マイコ:・・・は、はい。頑張ります。 恩田:じゃあ流しまーす。 イブキ:「カシス、ラム!もう一度力を貸して!」 マイコ:え? 恩田:あれ? イブキ:「カクテル忍法!ベルモットパンチ!」 マイコ:恩田さん今のって 恩田:マイコちゃんの声・・・じゃないよね。 マイコ:はい、絶対違います。 恩田:このデータで間違いなんだけど・・・え?どういうこと? マイコ:き、聴き間違いですよね!きっと・・・ 恩田:そ、そうかもね。ははは・・・疲れてんのかなー。 マイコ:あはは・・・ですよー。すいません私のせいでー。 恩田:録った声と違う声が録音されているなんて心霊現象か(笑)そんな訳ないよね。 マイコ:はい!ありえません! 恩田:ごめんごめんちょっと慌てちゃった。じゃあ改めて流しまーす。 イブキ:「カシス!ラム!もう一度力を貸して!」 恩田:うんこれ聴き間違えじゃないね! マイコ:はいそうですね! 恩田:何がどうなってんだ。 マイコ:しかも二回目の方がびみょーに上手くなってる感じが腹立ちますね・・・。 恩田:そこ!? マイコ:だって私のセリフなんですよ!コリンは私の役なのに! 恩田:だ、大丈夫だよ。マイコちゃんの方が上手かったから。 マイコ:あ、ほんとですか? イブキ:むぅ・・・。 マイコ:・・・ん?今何か聞こえたような。 恩田:そう?それよりどうしようか。 マイコ:もう一度、録り直しお願い致します。 恩田:・・・だよねー。 マイコ:今度は一回で決めます!こんな心霊現象に負ける訳にはいかないんです! 恩田:いい気合だ。じゃあやろうか。テイク・・・いくつからだっけ? マイコ:30から先は数えるのをやめられていましたね。 恩田:・・・じゃあ新鮮な気持ちでテイク1から。本番・・・はいスタート! イブキ:「カシス!ラム!」 マイコ:ちょっとー、パクに全然合ってな・・・ってえええええ?! イブキ:あ、すいません・・・。もう一度お願いします。 恩田:はーい本番中は勝手に芝居とめないでねー。じゃあテイク2・・・ってえええええ!? マイコ:マ、マイクが・・・ 恩田:喋ってる!? イブキ:そりゃマイクですから喋りますよ。 マイコ:喋るのはマイクを使う人だよね! イブキ:随分と古い考えを。ZOOM(ずーむ)とか使ったことないんですか? マイコ:あ、あるよ!・・・あれ?確かにマイクが喋ってるかも・・・ 恩田:落ち着いて!あれはスピーカーからだ! マイコ:はっ。 イブキ:ちっ。上手く誤魔化せるかと思ったのに・・・。 マイコ:とにかく!あなたが私のオッケーテイクを台無しにしてくれたのね。 イブキ:だって私がやった方がいいでしょ? マイコ:はぁ? イブキ:30回だか40回だかやってアレでしょ?なら私がやった方がコリンの為、ひいては作品の為だってこと。 マイコ:そんなにやってないから! 恩田:もっとやったような気もするな・・・。 マイコ:恩田さん! 恩田:は、はい! マイコ:はっきり、恩田さんの口からこのふざけたマイクに言ってやって下さい! マイコ:私とこのマイクには圧倒的な差があるからコリンは諦めろって! 恩田:そこまで圧倒的な差があるかと言われると・・・ マイコ:恩田ぁ!! 恩田:はい!・・・あのー、マイクさん? イブキ:あ、初めまして!もしかして監督さんですか? 恩田:まぁ、一応。 イブキ:私、イブキって言います!宜しくお願い致します! マイコ:ぐ・・・見た目マイクなのに礼儀正しい・・・。 恩田:・・・イブキさん。 イブキ:はい! 恩田:あの、ね。参加したい気持ちとかこの作品に対する熱意は凄く嬉しいんだけど・・・ マイコ:恩田さん。はっきりずばっと言って下さいよ。 恩田:いやでも、なんかいい子っぽいし。 イブキ:私、精一杯頑張ります! マイコ:だーから!あなたの役もセリフもないの!大人しくどこかへ帰りなさい。 イブキ:ふんっ。 マイコ:恩田さん!こいつ全然いい子じゃないですよ! イブキ:マイコスも、コリン役をくれたら少しは敬ってあげますよ。 マイコ:私にとって初めての主役を誰があげるか!・・・ん?マイコス? イブキ:あ、やば・・・。 マイコ:いまマイコスって言ったよね? イブキ:い、言ってません。 0:反転するマイク(イブキ) マイコ:器用に顔を背けるな! 恩田:やっぱりマイクの顔ってそこなんだな。 マイコ:ひょっとしてイブキちゃんて。 イブキ:・・・はい。 マイコ:私の、ファン? イブキ:ち、違います。 マイコ:ほんとう?じゃあなんで私を愛称で呼んだの。 イブキ:本当です!なんで私がマイコさんなんかのファンにならないといけないんですか! マイコ:・・・ふーん。そういうこと言うんだ。 イブキ:うう・・・だ、だって事実ですし・・・ マイコ:恩田さん。 恩田:はいはい。 マイコ:今日はもう帰りましょう。 イブキ:ええ!?帰っちゃうんですか?私ここから動けないんですよ!? マイコ:でしょうね。よかったわ。 イブキ:しゅ、収録だって出来なくなっちゃいますよ?いいんですか? 恩田:スケジュール的には別の日に録り直しでもまだ問題ないかな。 イブキ:そんな?! マイコ:その時はスタジオを変えて頂けますか? 恩田:仕方がないか・・・。 イブキ:ひどい! 恩田:だけど本当にいいの?今日は終わりにしちゃって。 マイコ:・・・私だってあのセリフは今日中に録り終わりたいです。 マイコ:でも、それを邪魔するマイクが突然出てきたんじゃどのみち収録なんか出来ませんし。 恩田:そっか・・・分かった。 マイコ:はい。 イブキ:あ・・・。 恩田:じゃあ、出ようk イブキ:あああすいません!ほんとはマイコスの大ファンなんです!だから帰らないで下さい! マイコ:よろしい。最初からそう言ってよね。 イブキ:すいません・・・。 マイコ:いつからいたの? イブキ:・・・テイクいくつかを監督が言わなくなった辺りです。 マイコ:ふーん。じゃあほんの少し前ね。 恩田:結構前からいたんだね。 マイコ:は? 恩田:うっ・・・おほん。改めて聞くけどイブキさんはなんでここに? マイコ:そう、それよ。 イブキ:あの・・・それが分からないんです。 マイコ:分からない?生まれも育ちもここのマイクって訳じゃないのね。 イブキ:なんですかそれ、ちゃんと人ですよ!・・・いや・・・人、でした? 恩田:え? マイコ:・・・どういうこと? イブキ:私、多分さっき死んだばかりの幽霊です。 マイコ:へー、なり立ての幽霊さんね。・・・恩田さん。 恩田:はいはい。 マイコ:やっぱり速やかに帰りましょう! 恩田:そうだね! イブキ:ああああ!待って!待って下さい!何もしませんから! マイコ:騙されないわ。幽霊は皆そう言うのよ! イブキ:私はわるい幽霊じゃありませんよ! 恩田:残念だね。僕達のパーティはもういっぱいなんだ。 イブキ:・・・それどういう意味ですか? マイコ:ごめんなさい恩田さん何言ってるんですか? 恩田:これがジェネレーションギャップか・・・。 マイコ:とにかく!なんとなくの流れで喋るマイクと話してたけど、それがそもそも異常だったわね。 イブキ:うう・・・。マイコスがどんどん冷静さを取り戻している・・・ マイコ:という訳でさようなら!ちゃんといい塩で清めてあげるからね。 イブキ:そういう気遣いいりませんから!・・・お願いです。もう少しだけここにいて下さい。 0:項垂れるマイク(イブキ) マイコ:そんなしょげないでよ・・・。しょげてるん・・・だよね? イブキ:しゅん・・・。 恩田:凄く分かりやすい。 マイコ:・・・分かったわよ。もう少しいてあげる。 イブキ:!!ほんとですか!ありがとうございます! マイコ:ま、まぁ見た目がマイクとはいえ私の大事なファンに変わりはないし。 マイコ:・・・ほんとに呪ったり祟ったりしないよね? イブキ:しませんし出来ません。 イブキ:私が出来るのはこのスタジオにある機材をなんとなくいじれるのとマイクを通して話すことくらいです。 マイコ:ほっ。 イブキ:そしてそれも今だけです。 恩田:今だけ? イブキ:はい。今の私の状態は期間限定なので。 マイコ:イベントモンスターみたいな感じってこと? イブキ:モンスターって言い方がとても引っ掛かりますが、そうですね。 恩田:その、期間が終わったらどうなるの? イブキ:・・・消えると思います。 マイコ:え!マイクなくなっちゃうの!?困るんだけど! イブキ:私が、です! マイコ:マイクは無事か。よかったー・・・。 イブキ:ほんと私なんでこの人のファンなんだろう・・・。 マイコ:冗談よ。・・・消えちゃうって、いなくなっちゃうってこと、よね。 イブキ:はい。成仏して、この世からいなくなりますね、きっと。 マイコ:そっか・・・。 イブキ:・・・。 恩田:・・・。 マイコ:・・・。 イブキ:きゅ、急にしんみりしないでください! マイコ:だってさー・・・。 イブキ:私は一切後悔ないですし、ここに来ることを選んだのも私が望んだことですから! 恩田:え? イブキ:はい。私・・・実はずっと入院してて。そして、いよいよ死ぬなって時にどこからか声がしたんです。 恩田:声?なんて言ってたの? イブキ:「最後に会いたい人は?」って。 マイコ:最後に・・・そこは、私が言うのもなんだけど家族とかお友達の名前を言うんじゃないの? イブキ:家族はその時みんな病室にいましたし、友達とは随分前にお別れをすましていましたので。 恩田:・・・それでマイコちゃんに会いたいって願ったんだ。 マイコ:だからって・・・声優さんだってさ、他にももっと有名で素敵な人いるでしょ。 マイコ:なんで、正直まだまだ無名の私なの? イブキ:それは・・・ マイコ:うん。 イブキ:よく分かりません。 マイコ:分からんのかい。 イブキ:ただ、私はその時マイコスに会いたいって。それしか考えられませんでした。 マイコ:・・・。 イブキ:私ほんとに大ファンなんです。マイコスの。何かのアニメで初めて声を聴いてから一気に好きになっちゃって! マイコ:・・・ありがとう。 イブキ:マイコスはいつも楽しそうに演じていて、観てるとなんだか凄く元気を貰える気がしたんです。 イブキ:段々マイコスが出るアニメが増えてきて、ほんとに嬉しくて・・・。 イブキ:そして遂に主役に抜擢!って情報をみて私はもうこのまま死んじゃうんじゃないかって思ったくらいで! 恩田:イブキちゃん・・・。 イブキ:まぁほんとに死んじゃったんですけど。 恩田:イブキちゃん!? イブキ:放送を観れないのは残念でしたけど、ならせめて最後に会いたいって思って、そしたら。 恩田:この収録現場に来たってことか。 イブキ:目の前でマイコス喋ってるし、コリンって今度マイコスがやる主役のだ!って凄くテンション上がりました! マイコ:・・・そうだったのね。 イブキ:体がマイクなのはびっくりしましたけどね。 恩田:・・・イブキちゃんはマイコちゃんのことが本当に好きなんだね。 イブキ:はい。 恩田:じゃあなんで収録の邪魔、なんてしたのかな? イブキ:っ・・・それは・・・。あれです、見てたらついついやりたくなっちゃって。 恩田:ほんと? マイコ:恩田さん? 恩田:僕にはイブキちゃんがそんな理由でマイコちゃんの収録を邪魔するとはどうしても思えないんだ。 イブキ:・・・。 恩田:僕達は収録の時は本気だ。そして恐らくそれを気付いていて尚、 恩田:君が、大好きなマイコちゃんの録音を上書きしたのは何故か・・・教えてくれないかい? イブキ:・・・全然、よくないと思ったからです。 マイコ:なっ! 恩田:・・・なるほど、ね。 イブキ:あんなのが放送されるなんて嫌だったので消しました。 マイコ:はぁ!?あんた私のファンなんでしょ?!それに、監督がいいって言ったらいいに決まってるじゃない! マイコ:作品のこともコリンのことも何も分からないくせにふざけたこと言わないで! イブキ:っ・・・!あなたこそマイコスのこと全然分かってないくせに!勝手なこと言わないで下さい! マイコ:!?私のこと? イブキ:そうですよ!・・・自分のことなのに・・・なんで分かんないんですか。 イブキ:それとも忘れちゃったんですか? マイコ:・・・どういうこと?私は・・・ イブキ:・・・。 恩田:イブキちゃん。 イブキ:・・・はい。 恩田:マイコちゃんの芝居の何が嫌だと感じたの? イブキ:・・・凄く辛そうだったからです。 マイコ:辛そうって、そりゃ遊びじゃないんだから!・・・私も真剣にやっているだけよ。 イブキ:でも、私の好きなマイコスじゃない。 マイコ:だから 恩田:続けて。 イブキ:・・・ずっと何かを気にして全然楽しそうじゃなかった。 イブキ:いつも私に元気をくれたマイコスと同じ人とは思えません・・・。 マイコ:・・・そんな、こと言われたって・・・私だって・・・。 イブキ:・・・すいません。あははは・・・収録を邪魔した挙句に引き留めて、その上ファンだって言っておきながら イブキ:自分の気持ちを押し付けて酷いこというなんてほんと最悪ですね私!忘れて下さい! マイコ:イブキちゃん・・・。 イブキ:最後に会えて嬉しかったのはほんとです。目があったら絶対に泣いてますよ。 マイコ:待って、それお別れの前フリみたいじゃない。 イブキ:はい。この辺で失礼しようかと。 マイコ:ねぇ イブキ:監督もありがとうございました。あの・・・マイコスの収録みてたら私もやりたくなった、 イブキ:っていうのも実は、少し本当だったんです。子供の頃からの夢だったので。すいませんでした。 恩田:大丈夫。それは凄く伝わってきたよ。 イブキ:そうですか!嬉しいです。来世では頑張ります!・・・なんて。 マイコ:ねぇってば! イブキ:マイコス。 マイコ:・・・何? イブキ:ずっとずっと、応援してます。 マイコ:・・・今の私は、ダメなんでしょ? イブキ:うーん、ダメと言うか。もっと素直に楽しめばいいと思います。 マイコ:素直に、楽しむ・・・ イブキ:その方がマイコスらしいというか!あ、また生意気なこと言っちゃいましたね。では今度こそ失礼します! マイコ:え? イブキ:これからも頑張って下さい!ありがとうございました・・・さようなら! マイコ:っ!イブキちゃん!私は! 0:呼びかけられても反応のないマイク。 恩田:・・・いっちゃった、のかな。 マイコ:私・・・少し分かったかも知れない。イブキちゃんが言ってた私のこと・・・。 恩田:マイコちゃん・・・。 マイコ:折角会いに来てくれたのに、私全然ダメだった・・・イブキちゃん・・・ イブキ:はいなんでしょうか。 マイコ:うあああああ!いるの!? 恩田:心臓止まるかと思った。 イブキ:すいません。ミュートのまま喋ってました。 マイコ:あーあるある、って驚かさないでよ! イブキ:あははは・・・そろそろお迎えが来るかなーと待機していたらマイコスが話かけてくれたので慌ててしまって・・・。 マイコ:・・・もう。 イブキ:それで、なんですか? マイコ:・・・うん。さっき言われて思ったんだ。私、確かに楽しんでないなーって。 恩田:・・・。 イブキ:マイコス・・・。 マイコ:今回のこのオーディションさ。受かる自信なんて全然なかったのに受かって、 マイコ:おまけに初めての主役で。私凄く嬉しかったんだ。 マイコ:・・・でもふと冷静になったら、周りからの期待と、私なんかに務まるのかっていう不安で堪らなくなった。 マイコ:自分なりに精一杯練習して臨んだんだけど、やっぱり共演するのは上手い人ばかりだし、 マイコ:私は当然一番下手。頭の中はいつも真っ白で、正直、収録の時は逃げ出したい気持ちでいっぱいだったのよ。 イブキ:・・・そうだったんですね。 マイコ:やっぱりファンにはばれちゃうかー。・・・参っちゃうなぁ。 恩田:マイコちゃん。 マイコ:はい。 恩田:君を主役に推したのは、実はイブキちゃんと同じ理由なんだ。 イブキ:え・・・。 恩田:オーディションの時思ったんだ。この子はなんて楽しそうに芝居をするんだろうって。 マイコ:恩田さん・・・。 恩田:正直に言って、まだまだ実力も経験も知名度も低いマイコちゃんを主役に据えることには反対意見も多かったし、 恩田:それが本人にとって物凄いプレッシャーになるであろうことは分かっていた。 マイコ:・・・はい。 恩田:でも君がたまにみせる、自然と「役と同化」する。その芝居に僕達は賭けることに決めたんだ。 恩田:・・・全然関係ないけど「役と同化」と「ヤクト・ドーガ」って似てるよね? イブキ:すいません分かりません。 マイコ:全然分かりませんし興味もないですし真面目に喋るか黙るかどっちかにしてもらってもいいですか? 恩田:・・・つまり僕もマイコちゃんには、今の不安をはねのけて楽しんで欲しいって思ってるってことだよ。 マイコ:最初からそう言って下さいよ。 恩田:ひどい。 マイコ:はぁ・・・自然と、楽しく、か。確かに前はそうだったかも。 イブキ:・・・やってみましょうよマイコス。 マイコ:・・・うん、そうだね。考えて考えてダメになったんだ。何も考えずやってみよう! イブキ:はい! マイコ:恩田さん、お願いします。 恩田:うん。やってみようか。 マイコ:あーっ!なんか出来る気がしてきた!気合入ってきた。・・・イブキちゃん。 イブキ:なんですか? マイコ:ほんとありがとね。しっかり聴いててよ。これが本当の、あなたの大好きなマイコスだよ! イブキ:・・・はい! 恩田:はい、じゃあテイク3。本番・・・スタート。 マイコ:「カシス、ラム!もう一度力を貸して・・・!これで・・・とどめよ!」 マイコ:「カクテル忍法!ベルモットパンチ!」 イブキ:・・・。 恩田:・・・うん。 マイコ:よっし! 恩田:その調子でテイク4行こうか。 マイコ:ええええ!なんでぇぇぇ! 恩田:いや確かに、今までで一番よかったと思うけど滑舌とかすこーし甘かったよね? マイコ:うう・・・確かに・・・。 恩田:それはそれこれはこれ、だから。よし、いこうか。 マイコ:はい!今度こそ決めます! イブキ:・・・ぷっ・・・あはははは マイコ:あー笑ったな! イブキ:あははは・・・すいません。だって・・・自信満々でリテイクされて・・・あははは マイコ:ぐっ・・・。 イブキ:あははは・・・マイコス。 マイコ:何? イブキ:また私・・・凄く元気もらっちゃいました。マイコスのファンで本当によかったです! マイコ:・・・こちらこそ。ファンでいてくれてありがとね。 マイコ:よーし、次は完璧だからしっかり聴いててねイブキちゃん! 0:反応のないマイク マイコ:・・・イブキちゃん?もー、またミュート? 0:依然反応のないマイク マイコ:イブキ・・・ちゃん? 恩田:今度こそ・・・いっちゃった、のかな。 マイコ:・・・ 恩田:・・・どうする?収録、出来る? マイコ:・・・出来ます。ううん、今しか出来ません。やらせて下さい! 恩田:うん。じゃあいくよー。テイク4、本番・・・スタート。 0: マイコ:(N)そして、私にとって一生忘れることのない出会いと、収録の日から3年の月日がたった。 マイコ:私はなんとかまだこの仕事を続けられていた。 0: 恩田:・・・うーん。 マイコ:・・・どう、でしょうか? 恩田:うん、相変わらずいいね。バッチリ。 マイコ:よっし!お疲れ様でしたー。 恩田:はい。お疲れ様でした。・・・あ、そうだマイコちゃん。 マイコ:何ですか? 恩田:今度マイコちゃんが主役をやる作品に出る新人の子なんだけど、今スタジオに来てて。 恩田:是非挨拶したいんだって。いい? マイコ:はい。いいですよ。 恩田:ありがとう。・・・入っていいですよー。 0:ドアを開け、一人の新人声優が入ってくる。 イブキ:改めまして初めまして!仮初(かりそめ)イブキと申します! マイコ:・・・えっ。 イブキ:心肺停止から奇跡的に復活。夢を叶える為に努力してここにやってきました! マイコ:イブキ・・・ちゃん? イブキ:聴いた人が元気を貰えるような声優を目指しています。そしてずっと大好きで、今は目標の人は・・・ マイコ:・・・うん。 イブキ:マイコスです!これから宜しくお願い致します!

0:とある収録スタジオ。録音したものを確認している恩田とマイコ。 マイコ:「カシス、ラム!もう一度力を貸して!これで・・・とどめよ!」 マイコ:「カクテル忍法!ベルモットパンチ!」 恩田:・・・うーん。 マイコ:・・・うぅ、どう・・・でしょうか? 恩田:・・・うん。いいね。これで頂きましょう。 マイコ:あ、ありがとうございます! 恩田:マイコちゃんも居残りお疲れ様でした。ありがとうね。 マイコ:いえいえ!私のせいで恩田さんにもご迷惑を・・・ 恩田:ははは・・・。まぁ僕らはそれが仕事だから。おかげでいい感じにはなったと思うよ。 マイコ:ほんとですか!嬉しいです。 恩田:このシーンは終盤に向けてとっても大事だからよかった。もう一度聴いてみる? マイコ:はい。是非お願い致します。 恩田:マイコちゃんにはもっともっと成長して欲しいからね。 マイコ:・・・は、はい。頑張ります。 恩田:じゃあ流しまーす。 イブキ:「カシス、ラム!もう一度力を貸して!」 マイコ:え? 恩田:あれ? イブキ:「カクテル忍法!ベルモットパンチ!」 マイコ:恩田さん今のって 恩田:マイコちゃんの声・・・じゃないよね。 マイコ:はい、絶対違います。 恩田:このデータで間違いなんだけど・・・え?どういうこと? マイコ:き、聴き間違いですよね!きっと・・・ 恩田:そ、そうかもね。ははは・・・疲れてんのかなー。 マイコ:あはは・・・ですよー。すいません私のせいでー。 恩田:録った声と違う声が録音されているなんて心霊現象か(笑)そんな訳ないよね。 マイコ:はい!ありえません! 恩田:ごめんごめんちょっと慌てちゃった。じゃあ改めて流しまーす。 イブキ:「カシス!ラム!もう一度力を貸して!」 恩田:うんこれ聴き間違えじゃないね! マイコ:はいそうですね! 恩田:何がどうなってんだ。 マイコ:しかも二回目の方がびみょーに上手くなってる感じが腹立ちますね・・・。 恩田:そこ!? マイコ:だって私のセリフなんですよ!コリンは私の役なのに! 恩田:だ、大丈夫だよ。マイコちゃんの方が上手かったから。 マイコ:あ、ほんとですか? イブキ:むぅ・・・。 マイコ:・・・ん?今何か聞こえたような。 恩田:そう?それよりどうしようか。 マイコ:もう一度、録り直しお願い致します。 恩田:・・・だよねー。 マイコ:今度は一回で決めます!こんな心霊現象に負ける訳にはいかないんです! 恩田:いい気合だ。じゃあやろうか。テイク・・・いくつからだっけ? マイコ:30から先は数えるのをやめられていましたね。 恩田:・・・じゃあ新鮮な気持ちでテイク1から。本番・・・はいスタート! イブキ:「カシス!ラム!」 マイコ:ちょっとー、パクに全然合ってな・・・ってえええええ?! イブキ:あ、すいません・・・。もう一度お願いします。 恩田:はーい本番中は勝手に芝居とめないでねー。じゃあテイク2・・・ってえええええ!? マイコ:マ、マイクが・・・ 恩田:喋ってる!? イブキ:そりゃマイクですから喋りますよ。 マイコ:喋るのはマイクを使う人だよね! イブキ:随分と古い考えを。ZOOM(ずーむ)とか使ったことないんですか? マイコ:あ、あるよ!・・・あれ?確かにマイクが喋ってるかも・・・ 恩田:落ち着いて!あれはスピーカーからだ! マイコ:はっ。 イブキ:ちっ。上手く誤魔化せるかと思ったのに・・・。 マイコ:とにかく!あなたが私のオッケーテイクを台無しにしてくれたのね。 イブキ:だって私がやった方がいいでしょ? マイコ:はぁ? イブキ:30回だか40回だかやってアレでしょ?なら私がやった方がコリンの為、ひいては作品の為だってこと。 マイコ:そんなにやってないから! 恩田:もっとやったような気もするな・・・。 マイコ:恩田さん! 恩田:は、はい! マイコ:はっきり、恩田さんの口からこのふざけたマイクに言ってやって下さい! マイコ:私とこのマイクには圧倒的な差があるからコリンは諦めろって! 恩田:そこまで圧倒的な差があるかと言われると・・・ マイコ:恩田ぁ!! 恩田:はい!・・・あのー、マイクさん? イブキ:あ、初めまして!もしかして監督さんですか? 恩田:まぁ、一応。 イブキ:私、イブキって言います!宜しくお願い致します! マイコ:ぐ・・・見た目マイクなのに礼儀正しい・・・。 恩田:・・・イブキさん。 イブキ:はい! 恩田:あの、ね。参加したい気持ちとかこの作品に対する熱意は凄く嬉しいんだけど・・・ マイコ:恩田さん。はっきりずばっと言って下さいよ。 恩田:いやでも、なんかいい子っぽいし。 イブキ:私、精一杯頑張ります! マイコ:だーから!あなたの役もセリフもないの!大人しくどこかへ帰りなさい。 イブキ:ふんっ。 マイコ:恩田さん!こいつ全然いい子じゃないですよ! イブキ:マイコスも、コリン役をくれたら少しは敬ってあげますよ。 マイコ:私にとって初めての主役を誰があげるか!・・・ん?マイコス? イブキ:あ、やば・・・。 マイコ:いまマイコスって言ったよね? イブキ:い、言ってません。 0:反転するマイク(イブキ) マイコ:器用に顔を背けるな! 恩田:やっぱりマイクの顔ってそこなんだな。 マイコ:ひょっとしてイブキちゃんて。 イブキ:・・・はい。 マイコ:私の、ファン? イブキ:ち、違います。 マイコ:ほんとう?じゃあなんで私を愛称で呼んだの。 イブキ:本当です!なんで私がマイコさんなんかのファンにならないといけないんですか! マイコ:・・・ふーん。そういうこと言うんだ。 イブキ:うう・・・だ、だって事実ですし・・・ マイコ:恩田さん。 恩田:はいはい。 マイコ:今日はもう帰りましょう。 イブキ:ええ!?帰っちゃうんですか?私ここから動けないんですよ!? マイコ:でしょうね。よかったわ。 イブキ:しゅ、収録だって出来なくなっちゃいますよ?いいんですか? 恩田:スケジュール的には別の日に録り直しでもまだ問題ないかな。 イブキ:そんな?! マイコ:その時はスタジオを変えて頂けますか? 恩田:仕方がないか・・・。 イブキ:ひどい! 恩田:だけど本当にいいの?今日は終わりにしちゃって。 マイコ:・・・私だってあのセリフは今日中に録り終わりたいです。 マイコ:でも、それを邪魔するマイクが突然出てきたんじゃどのみち収録なんか出来ませんし。 恩田:そっか・・・分かった。 マイコ:はい。 イブキ:あ・・・。 恩田:じゃあ、出ようk イブキ:あああすいません!ほんとはマイコスの大ファンなんです!だから帰らないで下さい! マイコ:よろしい。最初からそう言ってよね。 イブキ:すいません・・・。 マイコ:いつからいたの? イブキ:・・・テイクいくつかを監督が言わなくなった辺りです。 マイコ:ふーん。じゃあほんの少し前ね。 恩田:結構前からいたんだね。 マイコ:は? 恩田:うっ・・・おほん。改めて聞くけどイブキさんはなんでここに? マイコ:そう、それよ。 イブキ:あの・・・それが分からないんです。 マイコ:分からない?生まれも育ちもここのマイクって訳じゃないのね。 イブキ:なんですかそれ、ちゃんと人ですよ!・・・いや・・・人、でした? 恩田:え? マイコ:・・・どういうこと? イブキ:私、多分さっき死んだばかりの幽霊です。 マイコ:へー、なり立ての幽霊さんね。・・・恩田さん。 恩田:はいはい。 マイコ:やっぱり速やかに帰りましょう! 恩田:そうだね! イブキ:ああああ!待って!待って下さい!何もしませんから! マイコ:騙されないわ。幽霊は皆そう言うのよ! イブキ:私はわるい幽霊じゃありませんよ! 恩田:残念だね。僕達のパーティはもういっぱいなんだ。 イブキ:・・・それどういう意味ですか? マイコ:ごめんなさい恩田さん何言ってるんですか? 恩田:これがジェネレーションギャップか・・・。 マイコ:とにかく!なんとなくの流れで喋るマイクと話してたけど、それがそもそも異常だったわね。 イブキ:うう・・・。マイコスがどんどん冷静さを取り戻している・・・ マイコ:という訳でさようなら!ちゃんといい塩で清めてあげるからね。 イブキ:そういう気遣いいりませんから!・・・お願いです。もう少しだけここにいて下さい。 0:項垂れるマイク(イブキ) マイコ:そんなしょげないでよ・・・。しょげてるん・・・だよね? イブキ:しゅん・・・。 恩田:凄く分かりやすい。 マイコ:・・・分かったわよ。もう少しいてあげる。 イブキ:!!ほんとですか!ありがとうございます! マイコ:ま、まぁ見た目がマイクとはいえ私の大事なファンに変わりはないし。 マイコ:・・・ほんとに呪ったり祟ったりしないよね? イブキ:しませんし出来ません。 イブキ:私が出来るのはこのスタジオにある機材をなんとなくいじれるのとマイクを通して話すことくらいです。 マイコ:ほっ。 イブキ:そしてそれも今だけです。 恩田:今だけ? イブキ:はい。今の私の状態は期間限定なので。 マイコ:イベントモンスターみたいな感じってこと? イブキ:モンスターって言い方がとても引っ掛かりますが、そうですね。 恩田:その、期間が終わったらどうなるの? イブキ:・・・消えると思います。 マイコ:え!マイクなくなっちゃうの!?困るんだけど! イブキ:私が、です! マイコ:マイクは無事か。よかったー・・・。 イブキ:ほんと私なんでこの人のファンなんだろう・・・。 マイコ:冗談よ。・・・消えちゃうって、いなくなっちゃうってこと、よね。 イブキ:はい。成仏して、この世からいなくなりますね、きっと。 マイコ:そっか・・・。 イブキ:・・・。 恩田:・・・。 マイコ:・・・。 イブキ:きゅ、急にしんみりしないでください! マイコ:だってさー・・・。 イブキ:私は一切後悔ないですし、ここに来ることを選んだのも私が望んだことですから! 恩田:え? イブキ:はい。私・・・実はずっと入院してて。そして、いよいよ死ぬなって時にどこからか声がしたんです。 恩田:声?なんて言ってたの? イブキ:「最後に会いたい人は?」って。 マイコ:最後に・・・そこは、私が言うのもなんだけど家族とかお友達の名前を言うんじゃないの? イブキ:家族はその時みんな病室にいましたし、友達とは随分前にお別れをすましていましたので。 恩田:・・・それでマイコちゃんに会いたいって願ったんだ。 マイコ:だからって・・・声優さんだってさ、他にももっと有名で素敵な人いるでしょ。 マイコ:なんで、正直まだまだ無名の私なの? イブキ:それは・・・ マイコ:うん。 イブキ:よく分かりません。 マイコ:分からんのかい。 イブキ:ただ、私はその時マイコスに会いたいって。それしか考えられませんでした。 マイコ:・・・。 イブキ:私ほんとに大ファンなんです。マイコスの。何かのアニメで初めて声を聴いてから一気に好きになっちゃって! マイコ:・・・ありがとう。 イブキ:マイコスはいつも楽しそうに演じていて、観てるとなんだか凄く元気を貰える気がしたんです。 イブキ:段々マイコスが出るアニメが増えてきて、ほんとに嬉しくて・・・。 イブキ:そして遂に主役に抜擢!って情報をみて私はもうこのまま死んじゃうんじゃないかって思ったくらいで! 恩田:イブキちゃん・・・。 イブキ:まぁほんとに死んじゃったんですけど。 恩田:イブキちゃん!? イブキ:放送を観れないのは残念でしたけど、ならせめて最後に会いたいって思って、そしたら。 恩田:この収録現場に来たってことか。 イブキ:目の前でマイコス喋ってるし、コリンって今度マイコスがやる主役のだ!って凄くテンション上がりました! マイコ:・・・そうだったのね。 イブキ:体がマイクなのはびっくりしましたけどね。 恩田:・・・イブキちゃんはマイコちゃんのことが本当に好きなんだね。 イブキ:はい。 恩田:じゃあなんで収録の邪魔、なんてしたのかな? イブキ:っ・・・それは・・・。あれです、見てたらついついやりたくなっちゃって。 恩田:ほんと? マイコ:恩田さん? 恩田:僕にはイブキちゃんがそんな理由でマイコちゃんの収録を邪魔するとはどうしても思えないんだ。 イブキ:・・・。 恩田:僕達は収録の時は本気だ。そして恐らくそれを気付いていて尚、 恩田:君が、大好きなマイコちゃんの録音を上書きしたのは何故か・・・教えてくれないかい? イブキ:・・・全然、よくないと思ったからです。 マイコ:なっ! 恩田:・・・なるほど、ね。 イブキ:あんなのが放送されるなんて嫌だったので消しました。 マイコ:はぁ!?あんた私のファンなんでしょ?!それに、監督がいいって言ったらいいに決まってるじゃない! マイコ:作品のこともコリンのことも何も分からないくせにふざけたこと言わないで! イブキ:っ・・・!あなたこそマイコスのこと全然分かってないくせに!勝手なこと言わないで下さい! マイコ:!?私のこと? イブキ:そうですよ!・・・自分のことなのに・・・なんで分かんないんですか。 イブキ:それとも忘れちゃったんですか? マイコ:・・・どういうこと?私は・・・ イブキ:・・・。 恩田:イブキちゃん。 イブキ:・・・はい。 恩田:マイコちゃんの芝居の何が嫌だと感じたの? イブキ:・・・凄く辛そうだったからです。 マイコ:辛そうって、そりゃ遊びじゃないんだから!・・・私も真剣にやっているだけよ。 イブキ:でも、私の好きなマイコスじゃない。 マイコ:だから 恩田:続けて。 イブキ:・・・ずっと何かを気にして全然楽しそうじゃなかった。 イブキ:いつも私に元気をくれたマイコスと同じ人とは思えません・・・。 マイコ:・・・そんな、こと言われたって・・・私だって・・・。 イブキ:・・・すいません。あははは・・・収録を邪魔した挙句に引き留めて、その上ファンだって言っておきながら イブキ:自分の気持ちを押し付けて酷いこというなんてほんと最悪ですね私!忘れて下さい! マイコ:イブキちゃん・・・。 イブキ:最後に会えて嬉しかったのはほんとです。目があったら絶対に泣いてますよ。 マイコ:待って、それお別れの前フリみたいじゃない。 イブキ:はい。この辺で失礼しようかと。 マイコ:ねぇ イブキ:監督もありがとうございました。あの・・・マイコスの収録みてたら私もやりたくなった、 イブキ:っていうのも実は、少し本当だったんです。子供の頃からの夢だったので。すいませんでした。 恩田:大丈夫。それは凄く伝わってきたよ。 イブキ:そうですか!嬉しいです。来世では頑張ります!・・・なんて。 マイコ:ねぇってば! イブキ:マイコス。 マイコ:・・・何? イブキ:ずっとずっと、応援してます。 マイコ:・・・今の私は、ダメなんでしょ? イブキ:うーん、ダメと言うか。もっと素直に楽しめばいいと思います。 マイコ:素直に、楽しむ・・・ イブキ:その方がマイコスらしいというか!あ、また生意気なこと言っちゃいましたね。では今度こそ失礼します! マイコ:え? イブキ:これからも頑張って下さい!ありがとうございました・・・さようなら! マイコ:っ!イブキちゃん!私は! 0:呼びかけられても反応のないマイク。 恩田:・・・いっちゃった、のかな。 マイコ:私・・・少し分かったかも知れない。イブキちゃんが言ってた私のこと・・・。 恩田:マイコちゃん・・・。 マイコ:折角会いに来てくれたのに、私全然ダメだった・・・イブキちゃん・・・ イブキ:はいなんでしょうか。 マイコ:うあああああ!いるの!? 恩田:心臓止まるかと思った。 イブキ:すいません。ミュートのまま喋ってました。 マイコ:あーあるある、って驚かさないでよ! イブキ:あははは・・・そろそろお迎えが来るかなーと待機していたらマイコスが話かけてくれたので慌ててしまって・・・。 マイコ:・・・もう。 イブキ:それで、なんですか? マイコ:・・・うん。さっき言われて思ったんだ。私、確かに楽しんでないなーって。 恩田:・・・。 イブキ:マイコス・・・。 マイコ:今回のこのオーディションさ。受かる自信なんて全然なかったのに受かって、 マイコ:おまけに初めての主役で。私凄く嬉しかったんだ。 マイコ:・・・でもふと冷静になったら、周りからの期待と、私なんかに務まるのかっていう不安で堪らなくなった。 マイコ:自分なりに精一杯練習して臨んだんだけど、やっぱり共演するのは上手い人ばかりだし、 マイコ:私は当然一番下手。頭の中はいつも真っ白で、正直、収録の時は逃げ出したい気持ちでいっぱいだったのよ。 イブキ:・・・そうだったんですね。 マイコ:やっぱりファンにはばれちゃうかー。・・・参っちゃうなぁ。 恩田:マイコちゃん。 マイコ:はい。 恩田:君を主役に推したのは、実はイブキちゃんと同じ理由なんだ。 イブキ:え・・・。 恩田:オーディションの時思ったんだ。この子はなんて楽しそうに芝居をするんだろうって。 マイコ:恩田さん・・・。 恩田:正直に言って、まだまだ実力も経験も知名度も低いマイコちゃんを主役に据えることには反対意見も多かったし、 恩田:それが本人にとって物凄いプレッシャーになるであろうことは分かっていた。 マイコ:・・・はい。 恩田:でも君がたまにみせる、自然と「役と同化」する。その芝居に僕達は賭けることに決めたんだ。 恩田:・・・全然関係ないけど「役と同化」と「ヤクト・ドーガ」って似てるよね? イブキ:すいません分かりません。 マイコ:全然分かりませんし興味もないですし真面目に喋るか黙るかどっちかにしてもらってもいいですか? 恩田:・・・つまり僕もマイコちゃんには、今の不安をはねのけて楽しんで欲しいって思ってるってことだよ。 マイコ:最初からそう言って下さいよ。 恩田:ひどい。 マイコ:はぁ・・・自然と、楽しく、か。確かに前はそうだったかも。 イブキ:・・・やってみましょうよマイコス。 マイコ:・・・うん、そうだね。考えて考えてダメになったんだ。何も考えずやってみよう! イブキ:はい! マイコ:恩田さん、お願いします。 恩田:うん。やってみようか。 マイコ:あーっ!なんか出来る気がしてきた!気合入ってきた。・・・イブキちゃん。 イブキ:なんですか? マイコ:ほんとありがとね。しっかり聴いててよ。これが本当の、あなたの大好きなマイコスだよ! イブキ:・・・はい! 恩田:はい、じゃあテイク3。本番・・・スタート。 マイコ:「カシス、ラム!もう一度力を貸して・・・!これで・・・とどめよ!」 マイコ:「カクテル忍法!ベルモットパンチ!」 イブキ:・・・。 恩田:・・・うん。 マイコ:よっし! 恩田:その調子でテイク4行こうか。 マイコ:ええええ!なんでぇぇぇ! 恩田:いや確かに、今までで一番よかったと思うけど滑舌とかすこーし甘かったよね? マイコ:うう・・・確かに・・・。 恩田:それはそれこれはこれ、だから。よし、いこうか。 マイコ:はい!今度こそ決めます! イブキ:・・・ぷっ・・・あはははは マイコ:あー笑ったな! イブキ:あははは・・・すいません。だって・・・自信満々でリテイクされて・・・あははは マイコ:ぐっ・・・。 イブキ:あははは・・・マイコス。 マイコ:何? イブキ:また私・・・凄く元気もらっちゃいました。マイコスのファンで本当によかったです! マイコ:・・・こちらこそ。ファンでいてくれてありがとね。 マイコ:よーし、次は完璧だからしっかり聴いててねイブキちゃん! 0:反応のないマイク マイコ:・・・イブキちゃん?もー、またミュート? 0:依然反応のないマイク マイコ:イブキ・・・ちゃん? 恩田:今度こそ・・・いっちゃった、のかな。 マイコ:・・・ 恩田:・・・どうする?収録、出来る? マイコ:・・・出来ます。ううん、今しか出来ません。やらせて下さい! 恩田:うん。じゃあいくよー。テイク4、本番・・・スタート。 0: マイコ:(N)そして、私にとって一生忘れることのない出会いと、収録の日から3年の月日がたった。 マイコ:私はなんとかまだこの仕事を続けられていた。 0: 恩田:・・・うーん。 マイコ:・・・どう、でしょうか? 恩田:うん、相変わらずいいね。バッチリ。 マイコ:よっし!お疲れ様でしたー。 恩田:はい。お疲れ様でした。・・・あ、そうだマイコちゃん。 マイコ:何ですか? 恩田:今度マイコちゃんが主役をやる作品に出る新人の子なんだけど、今スタジオに来てて。 恩田:是非挨拶したいんだって。いい? マイコ:はい。いいですよ。 恩田:ありがとう。・・・入っていいですよー。 0:ドアを開け、一人の新人声優が入ってくる。 イブキ:改めまして初めまして!仮初(かりそめ)イブキと申します! マイコ:・・・えっ。 イブキ:心肺停止から奇跡的に復活。夢を叶える為に努力してここにやってきました! マイコ:イブキ・・・ちゃん? イブキ:聴いた人が元気を貰えるような声優を目指しています。そしてずっと大好きで、今は目標の人は・・・ マイコ:・・・うん。 イブキ:マイコスです!これから宜しくお願い致します!