台本概要

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タイトル 終わる時
作者名 まりおん  (@marion2009)
ジャンル ラブストーリー
演者人数 2人用台本(男1、女1)
時間 20 分
台本使用規定 台本説明欄参照
説明 わたしに実害が無い範囲で、有料無料に関わらず全て自由にお使いください。
過度のアドリブ、内容や性別、役名の改編も好きにしてください。
わたしへの連絡や、作者名の表記なども特に必要ありません。

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キャラ説明  

名前 性別 台詞数 説明
裕也 100 別に名前はさ、好きな名前読んだらいいじゃん
梨花 101 途中で呼び方が変わらなければ何でもいいよね
※役をクリックするとセリフに色が付きます。

台本本編

文字サイズ
0:『終わる時』 0:  裕也:「ただいま・・・。」 梨花:「・・・おかえりなさい。」 裕也:「うん・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「あ、これ。おみやげ。梨花が好きだったスモークサーモンのサラダ。」 梨花:「・・・うん。ありがと。」 裕也:「・・・今日は、何してたの?」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「今日は、・・・なにしてた?」 梨花:「・・・洗濯して、・・・その後、部屋の掃除を・・・。」 裕也:「・・・そっか。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・お昼は、ちゃんと食べた?」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・なあ。」 梨花:「・・・ん?」 裕也:「・・・・・・別れよう。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「色々考えたけど、それが一番いいと思うんだ・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「一緒にいれば、どうしても考えちゃうし・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「このままじゃだめだと思うんだよ・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「だから・・・、別れたほうがいいと思うんだ。」 梨花:「・・・なにが?」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「なにが・・・いいの?」 裕也:「・・・誰かを責めても何も変わらない。 裕也: ・・・それが自分なら、なおさらだよ。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「だから・・・。」 梨花:「だから?・・・だから忘れるの?逃げ出すの?」 裕也:「逃げ出すって、そんな・・・。」 梨花:「そうじゃない!わたしからもあの子からも逃げ出して、 梨花: 新しくやり直そうってことじゃない!違う?」 裕也:「じゃあ、いつまでこんなことを続けるって言うんだよ! 裕也: 悲しんでれば亡くなった子が返ってくるのか!?こないだろ!」 梨花:「やめてよ!そんなこと言わないで!・・・言わないでよ・・・。」 裕也:「・・・ごめん。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「ごめん・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・俺だって辛いし悲しいよ。 裕也: でも正直俺が一番辛いのは、梨花がそうやってずっと悲しんでることだ。 裕也: 悲しんでる梨花に何もしてやれないことなんだよ。」 梨花:「・・・じゃあ、抱きしめてよ。・・・わたしのこと、抱きしめて。」 裕也:「・・・ああ。」 梨花:「・・・・・・。!やめて!触らないで!」 裕也:「うっ!・・・またか。」 梨花:「・・・・・・ごめん。」 裕也:「なんなんだよ、それ。嫌ならはっきり言ってくれよ。」 梨花:「そうじゃないの・・・。」 裕也:「じゃあ、なんなんだよ。いつもいつも、俺が慰めようとするとそうやって・・・。」 梨花:「わかんないよ・・・、わかんないの。 梨花: でも、裕也に触られると、全身に鳥肌が立つような感覚になって、 梨花: どうにも我慢できなくなるの・・・。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「・・・・・・ごめんなさい。」 裕也:「・・・いいよ。」 梨花:「・・・なにがいけなかったのかな?」 裕也:「・・・なに?」 梨花:「わたしたち、何かした?うまくやってたと思うんだけどなぁ・・・。」 裕也:「うまくやってたよ・・・。何も間違ったことなんてしてなかったさ・・・。」 梨花:「じゃあさ、なんで死んじゃったんだろ・・・、赤ちゃん。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「まださ、手のひらに収まる程度だったんだよ。 梨花: やっとさ、頭とか心臓とかわかるくらいになって・・・。 梨花: 裕也も見たよね?写真。手足もちっちゃくて・・・。」 裕也:「ああ・・・。」 梨花:「・・・うちのお父さんさ、赤ちゃんできたかまだはっきりわからないうちから、 梨花: 近所の人呼んで大騒ぎして喜んじゃってさ・・・。」 裕也:「うん・・・。」 梨花:「それなのに、赤ちゃんだめになっちゃったって言ったら、 梨花: 『子供はまた作ればいいから。元気出せ。』って・・・。 梨花: あんなに楽しみにしてたのに・・・。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「どうすればよかったんだろ・・・。何がいけなかったのかな・・・。」 裕也:「何も悪くないよ。誰も悪くない。お医者さんも言ってたじゃん。 裕也: この時期は、はっきりとした理由も無くこういうことがあるって・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・もし誰かが悪いんだとすれば、それは俺だよ。 裕也: まだ安定期に入ってないのに、梨花に色々家事させて・・・。」 梨花:「家事って、わたしがしてたの洗濯くらいじゃん。 梨花: 夕飯だっていつも買ってきてくれてたし。」 裕也:「掃除してくれてたじゃん。」 梨花:「あれは趣味だもん。暇つぶしみたいなものだし。」 裕也:「でも・・・。」 梨花:「やめよ。・・・こういう話、したくない。」 裕也:「・・・そうだね。やめよう。俺も、もうしたくない。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・だから、離婚しよう。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・今日、お義父さんに会ってきたんだ。」 梨花:「・・・え?」 裕也:「離婚しようと思ってるって伝えてきた。」 梨花:「・・・そう。」 裕也:「最初は胸ぐらつかまれて、『今なんて言った?』って脅されたよ。 裕也: ・・・でも、ちゃんと説明したらわかってくれた。 裕也: 梨花のことは任せろって言ってくれた。だから・・・。」 梨花:「・・・離婚したいの?」 裕也:「・・・わからない。」 梨花:「わからないの?」 裕也:「俺にだってわからないことはあるよ。 裕也: どうすればいいのかとか、どうすれば正しいのかとか・・・。」 梨花:「・・・ねえ、わたしが聞いてるのは、離婚したいのかどうか。 梨花: どうするのが正しいかなんて聞いてないよ。」 裕也:「・・・それでも、同じことだよ。」 梨花:「同じなの?」 裕也:「同じだよ。だって俺は、正しい道を選びたいと思っているんだから。」 梨花:「・・・そう。」 裕也:「そう・・・。」 梨花:「・・・離婚するのが、正しい道なのかな?」 裕也:「それは・・・、わからない・・・。」 梨花:「・・・わたしたちは、正しい道を歩いてきたかな?」 裕也:「・・・ここまで?」 梨花:「・・・ここまで。」 裕也:「・・・どうかな。間違った選択をした覚えは無いけど・・・。」 梨花:「・・・間違って無くても、赤ちゃんがなくなっちゃうこともあるんだね・・・。」 裕也:「・・・どんなに気をつけてても、落し物しちゃう時ってあるじゃん。きっとそういうことだよ。」 梨花:「・・・赤ちゃん、落としてきちゃったの?」 裕也:「・・・そうかもしれない。」 梨花:「拾いに行かなきゃ・・・。」 裕也:「梨花?」 梨花:「赤ちゃん、落としちゃったから、拾いに行かなきゃ。」 裕也:「梨花、しっかりしろ。」 梨花:「赤ちゃんが、あの子が、迎えに来るのを待ってるの。行かなきゃ!」 裕也:「無理だよ!」 梨花:「っ!」 裕也:「・・・無理なんだよ。もう、戻ってこない。一度失ったら、もう戻ってこないんだ。」 梨花:「なんでそんなこと言うの・・・。なんでそんなこと言うのよ!」 裕也:「梨花、落ち着け。」 梨花:「待ってるの!どこかでわたしが迎えに来るのを待ってるのよ! 梨花: わたしが探しに行かなきゃ!あの子を見つけてあげなきゃいけないの!」 裕也:「だから!もういないんだって!」 梨花:「放して!放してよ!あああああああああああああああああああああ! 梨花: あああああああ!ああああああああああ!ああああああああああああ! 梨花: はあはあはあはぁはぁはぁ・・・・・・・・・。」 裕也:「・・・・・・落ち着いた?」 梨花:「・・・・・・ごめんなさい。」 裕也:「ううん、大丈夫。それより、どこか、怪我してない?」 梨花:「・・・うん。大丈夫。ありがと。」 裕也:「・・・なんで、こんなことになったんだろ。」 梨花:「ごめんね・・・。」 裕也:「ううん。梨花のせいじゃないよ。梨花は悪くない。」 梨花:「・・・・・・離婚、しよっか。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「・・・離婚、しよ?」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「裕也?」 裕也:「愛してるよ、梨花・・・。」 梨花:「うん・・・。わたしも、愛してる。・・・だから、離婚しよ。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「ね?」 裕也:「・・・・・・うん。」 梨花:「離婚届、持ってるんでしょ?出して。」 裕也:「・・・うん。」 梨花:「・・・・・・白紙じゃん。」 裕也:「・・・うん。」 梨花:「こういうのは、片方が書いた状態で渡すんだよ。」 裕也:「・・・何度も、書こうとしたけど・・・。」 梨花:「・・・うん。」 裕也:「・・・書けなかった。」 梨花:「・・・だめじゃん。」 裕也:「・・・ごめん。」 梨花:「・・・じゃあ、今、一緒に書こ。そんで、この後、一緒に出しに行こ。」 裕也:「・・・この後?」 梨花:「善は急げって言うでしょ?・・・善なのかはわかんないけど。 梨花: でも、このままじゃ裕也までおかしくなっちゃうもん。」 裕也:「俺は別に・・・。」 梨花:「それに、裕也がいっぱいいっぱい考えて出した結論だもん。 梨花: きっとそれが『正しい』んだと思うんだ。だから、ね。」 0:離婚届の記入欄を埋めていく梨花。 梨花:「・・・はい。次は裕也の番。」 裕也:「・・・ああ。」 0:裕也も、ゆっくりとだが記入していく。 梨花:「・・・よし、書けたね。えらいえらい。」 裕也:「・・・もう9時だね。出すのは明日にでも・・・。」 梨花:「ダメだよ。今行かないと。明日になったら出せなくなっちゃうよ。」 裕也:「・・・・・・出したくない。」 梨花:「ほら、もうそんなこと言ってる・・・。だから、今出さなきゃ。」 裕也:「・・・・・・うん。」 梨花:「そのまま駅まで送ってくれない?わたし、実家に帰るから。」 裕也:「・・・じゃあ、家まで送るよ。」 梨花:「・・・ありがと。」 裕也:「・・・きっとこれが、最後になるのかな?」 梨花:「たぶんね・・・。」 裕也:「そっか・・・。」 梨花:「・・・ねえ、裕也。」 裕也:「ん?」 梨花:「わたしたち、・・・幸せだったよね?」 裕也:「・・・ああ、最高に幸せだったよ。」 梨花:「・・・そうだよね。」 裕也:「もちろんだよ・・・。」 梨花:「・・・忘れられるかなぁ。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「・・・でも、忘れないとね。」 裕也:「・・・うん。」 梨花:「・・・じゃあ、ちょっとだけ支度してくるね。」 裕也:「うん・・・。」 梨花:「あ、お父さんにも連絡しとかなきゃ。」 裕也:「あ、じゃあ、俺が電話しておくよ。」 梨花:「・・・うん。じゃあ、お願い。」 裕也:「ああ。支度、ゆっくりでいいからね。」 梨花:「うん、ありがと。」 裕也:「・・・・・・あ、もしもし、さっきはどうも。 裕也: ・・・はい、帰ってから話をして、今、離婚届にサインしました。 裕也: これから二人で出しに行きます。・・・・・・はい。 裕也: それで、その後梨花を、・・・梨花さんを、そちらに送り届けます。 裕也: ・・・・・・いえ、本当にすみません。俺がふがいないばっかりに・・・。 裕也: ・・・はい、また、役所を出る時にでも連絡します。・・・はい、では。」 梨花:「・・・終わった?」 裕也:「うん。荷物はそれだけ?」 梨花:「うん。色々考えたけど、なんか、いっかなって。」 裕也:「そっか。」 梨花:「うん・・・。」 裕也:「じゃあ、行く?」 梨花:「うん。行こ。」 裕也:「・・・今まで、ありがとね。」 梨花:「こちらこそ。・・・って、この後まだ一緒に役所行くんだから。」 裕也:「そうだね。」 梨花:「笑顔で別れましょ。」 裕也:「こんなに目を腫らしておいて?」 梨花:「サングラスでもする?」 裕也:「もう夜だよ。」 梨花:「芸能人なら、夜でもするんじゃない?」 裕也:「確かに、こんな夜にこっそり届けを出すなんて、芸能人みたいだ。」 梨花:「・・・行こっか。」 裕也:「・・・うん。」 0:梨花、部屋の方を振り向き 梨花:「・・・じゃあね。バイバイ。」  :  0:おわり

0:『終わる時』 0:  裕也:「ただいま・・・。」 梨花:「・・・おかえりなさい。」 裕也:「うん・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「あ、これ。おみやげ。梨花が好きだったスモークサーモンのサラダ。」 梨花:「・・・うん。ありがと。」 裕也:「・・・今日は、何してたの?」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「今日は、・・・なにしてた?」 梨花:「・・・洗濯して、・・・その後、部屋の掃除を・・・。」 裕也:「・・・そっか。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・お昼は、ちゃんと食べた?」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・なあ。」 梨花:「・・・ん?」 裕也:「・・・・・・別れよう。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「色々考えたけど、それが一番いいと思うんだ・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「一緒にいれば、どうしても考えちゃうし・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「このままじゃだめだと思うんだよ・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「だから・・・、別れたほうがいいと思うんだ。」 梨花:「・・・なにが?」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「なにが・・・いいの?」 裕也:「・・・誰かを責めても何も変わらない。 裕也: ・・・それが自分なら、なおさらだよ。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「だから・・・。」 梨花:「だから?・・・だから忘れるの?逃げ出すの?」 裕也:「逃げ出すって、そんな・・・。」 梨花:「そうじゃない!わたしからもあの子からも逃げ出して、 梨花: 新しくやり直そうってことじゃない!違う?」 裕也:「じゃあ、いつまでこんなことを続けるって言うんだよ! 裕也: 悲しんでれば亡くなった子が返ってくるのか!?こないだろ!」 梨花:「やめてよ!そんなこと言わないで!・・・言わないでよ・・・。」 裕也:「・・・ごめん。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「ごめん・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・俺だって辛いし悲しいよ。 裕也: でも正直俺が一番辛いのは、梨花がそうやってずっと悲しんでることだ。 裕也: 悲しんでる梨花に何もしてやれないことなんだよ。」 梨花:「・・・じゃあ、抱きしめてよ。・・・わたしのこと、抱きしめて。」 裕也:「・・・ああ。」 梨花:「・・・・・・。!やめて!触らないで!」 裕也:「うっ!・・・またか。」 梨花:「・・・・・・ごめん。」 裕也:「なんなんだよ、それ。嫌ならはっきり言ってくれよ。」 梨花:「そうじゃないの・・・。」 裕也:「じゃあ、なんなんだよ。いつもいつも、俺が慰めようとするとそうやって・・・。」 梨花:「わかんないよ・・・、わかんないの。 梨花: でも、裕也に触られると、全身に鳥肌が立つような感覚になって、 梨花: どうにも我慢できなくなるの・・・。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「・・・・・・ごめんなさい。」 裕也:「・・・いいよ。」 梨花:「・・・なにがいけなかったのかな?」 裕也:「・・・なに?」 梨花:「わたしたち、何かした?うまくやってたと思うんだけどなぁ・・・。」 裕也:「うまくやってたよ・・・。何も間違ったことなんてしてなかったさ・・・。」 梨花:「じゃあさ、なんで死んじゃったんだろ・・・、赤ちゃん。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「まださ、手のひらに収まる程度だったんだよ。 梨花: やっとさ、頭とか心臓とかわかるくらいになって・・・。 梨花: 裕也も見たよね?写真。手足もちっちゃくて・・・。」 裕也:「ああ・・・。」 梨花:「・・・うちのお父さんさ、赤ちゃんできたかまだはっきりわからないうちから、 梨花: 近所の人呼んで大騒ぎして喜んじゃってさ・・・。」 裕也:「うん・・・。」 梨花:「それなのに、赤ちゃんだめになっちゃったって言ったら、 梨花: 『子供はまた作ればいいから。元気出せ。』って・・・。 梨花: あんなに楽しみにしてたのに・・・。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「どうすればよかったんだろ・・・。何がいけなかったのかな・・・。」 裕也:「何も悪くないよ。誰も悪くない。お医者さんも言ってたじゃん。 裕也: この時期は、はっきりとした理由も無くこういうことがあるって・・・。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・もし誰かが悪いんだとすれば、それは俺だよ。 裕也: まだ安定期に入ってないのに、梨花に色々家事させて・・・。」 梨花:「家事って、わたしがしてたの洗濯くらいじゃん。 梨花: 夕飯だっていつも買ってきてくれてたし。」 裕也:「掃除してくれてたじゃん。」 梨花:「あれは趣味だもん。暇つぶしみたいなものだし。」 裕也:「でも・・・。」 梨花:「やめよ。・・・こういう話、したくない。」 裕也:「・・・そうだね。やめよう。俺も、もうしたくない。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・だから、離婚しよう。」 梨花:「・・・・・・。」 裕也:「・・・今日、お義父さんに会ってきたんだ。」 梨花:「・・・え?」 裕也:「離婚しようと思ってるって伝えてきた。」 梨花:「・・・そう。」 裕也:「最初は胸ぐらつかまれて、『今なんて言った?』って脅されたよ。 裕也: ・・・でも、ちゃんと説明したらわかってくれた。 裕也: 梨花のことは任せろって言ってくれた。だから・・・。」 梨花:「・・・離婚したいの?」 裕也:「・・・わからない。」 梨花:「わからないの?」 裕也:「俺にだってわからないことはあるよ。 裕也: どうすればいいのかとか、どうすれば正しいのかとか・・・。」 梨花:「・・・ねえ、わたしが聞いてるのは、離婚したいのかどうか。 梨花: どうするのが正しいかなんて聞いてないよ。」 裕也:「・・・それでも、同じことだよ。」 梨花:「同じなの?」 裕也:「同じだよ。だって俺は、正しい道を選びたいと思っているんだから。」 梨花:「・・・そう。」 裕也:「そう・・・。」 梨花:「・・・離婚するのが、正しい道なのかな?」 裕也:「それは・・・、わからない・・・。」 梨花:「・・・わたしたちは、正しい道を歩いてきたかな?」 裕也:「・・・ここまで?」 梨花:「・・・ここまで。」 裕也:「・・・どうかな。間違った選択をした覚えは無いけど・・・。」 梨花:「・・・間違って無くても、赤ちゃんがなくなっちゃうこともあるんだね・・・。」 裕也:「・・・どんなに気をつけてても、落し物しちゃう時ってあるじゃん。きっとそういうことだよ。」 梨花:「・・・赤ちゃん、落としてきちゃったの?」 裕也:「・・・そうかもしれない。」 梨花:「拾いに行かなきゃ・・・。」 裕也:「梨花?」 梨花:「赤ちゃん、落としちゃったから、拾いに行かなきゃ。」 裕也:「梨花、しっかりしろ。」 梨花:「赤ちゃんが、あの子が、迎えに来るのを待ってるの。行かなきゃ!」 裕也:「無理だよ!」 梨花:「っ!」 裕也:「・・・無理なんだよ。もう、戻ってこない。一度失ったら、もう戻ってこないんだ。」 梨花:「なんでそんなこと言うの・・・。なんでそんなこと言うのよ!」 裕也:「梨花、落ち着け。」 梨花:「待ってるの!どこかでわたしが迎えに来るのを待ってるのよ! 梨花: わたしが探しに行かなきゃ!あの子を見つけてあげなきゃいけないの!」 裕也:「だから!もういないんだって!」 梨花:「放して!放してよ!あああああああああああああああああああああ! 梨花: あああああああ!ああああああああああ!ああああああああああああ! 梨花: はあはあはあはぁはぁはぁ・・・・・・・・・。」 裕也:「・・・・・・落ち着いた?」 梨花:「・・・・・・ごめんなさい。」 裕也:「ううん、大丈夫。それより、どこか、怪我してない?」 梨花:「・・・うん。大丈夫。ありがと。」 裕也:「・・・なんで、こんなことになったんだろ。」 梨花:「ごめんね・・・。」 裕也:「ううん。梨花のせいじゃないよ。梨花は悪くない。」 梨花:「・・・・・・離婚、しよっか。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「・・・離婚、しよ?」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「裕也?」 裕也:「愛してるよ、梨花・・・。」 梨花:「うん・・・。わたしも、愛してる。・・・だから、離婚しよ。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「ね?」 裕也:「・・・・・・うん。」 梨花:「離婚届、持ってるんでしょ?出して。」 裕也:「・・・うん。」 梨花:「・・・・・・白紙じゃん。」 裕也:「・・・うん。」 梨花:「こういうのは、片方が書いた状態で渡すんだよ。」 裕也:「・・・何度も、書こうとしたけど・・・。」 梨花:「・・・うん。」 裕也:「・・・書けなかった。」 梨花:「・・・だめじゃん。」 裕也:「・・・ごめん。」 梨花:「・・・じゃあ、今、一緒に書こ。そんで、この後、一緒に出しに行こ。」 裕也:「・・・この後?」 梨花:「善は急げって言うでしょ?・・・善なのかはわかんないけど。 梨花: でも、このままじゃ裕也までおかしくなっちゃうもん。」 裕也:「俺は別に・・・。」 梨花:「それに、裕也がいっぱいいっぱい考えて出した結論だもん。 梨花: きっとそれが『正しい』んだと思うんだ。だから、ね。」 0:離婚届の記入欄を埋めていく梨花。 梨花:「・・・はい。次は裕也の番。」 裕也:「・・・ああ。」 0:裕也も、ゆっくりとだが記入していく。 梨花:「・・・よし、書けたね。えらいえらい。」 裕也:「・・・もう9時だね。出すのは明日にでも・・・。」 梨花:「ダメだよ。今行かないと。明日になったら出せなくなっちゃうよ。」 裕也:「・・・・・・出したくない。」 梨花:「ほら、もうそんなこと言ってる・・・。だから、今出さなきゃ。」 裕也:「・・・・・・うん。」 梨花:「そのまま駅まで送ってくれない?わたし、実家に帰るから。」 裕也:「・・・じゃあ、家まで送るよ。」 梨花:「・・・ありがと。」 裕也:「・・・きっとこれが、最後になるのかな?」 梨花:「たぶんね・・・。」 裕也:「そっか・・・。」 梨花:「・・・ねえ、裕也。」 裕也:「ん?」 梨花:「わたしたち、・・・幸せだったよね?」 裕也:「・・・ああ、最高に幸せだったよ。」 梨花:「・・・そうだよね。」 裕也:「もちろんだよ・・・。」 梨花:「・・・忘れられるかなぁ。」 裕也:「・・・・・・。」 梨花:「・・・でも、忘れないとね。」 裕也:「・・・うん。」 梨花:「・・・じゃあ、ちょっとだけ支度してくるね。」 裕也:「うん・・・。」 梨花:「あ、お父さんにも連絡しとかなきゃ。」 裕也:「あ、じゃあ、俺が電話しておくよ。」 梨花:「・・・うん。じゃあ、お願い。」 裕也:「ああ。支度、ゆっくりでいいからね。」 梨花:「うん、ありがと。」 裕也:「・・・・・・あ、もしもし、さっきはどうも。 裕也: ・・・はい、帰ってから話をして、今、離婚届にサインしました。 裕也: これから二人で出しに行きます。・・・・・・はい。 裕也: それで、その後梨花を、・・・梨花さんを、そちらに送り届けます。 裕也: ・・・・・・いえ、本当にすみません。俺がふがいないばっかりに・・・。 裕也: ・・・はい、また、役所を出る時にでも連絡します。・・・はい、では。」 梨花:「・・・終わった?」 裕也:「うん。荷物はそれだけ?」 梨花:「うん。色々考えたけど、なんか、いっかなって。」 裕也:「そっか。」 梨花:「うん・・・。」 裕也:「じゃあ、行く?」 梨花:「うん。行こ。」 裕也:「・・・今まで、ありがとね。」 梨花:「こちらこそ。・・・って、この後まだ一緒に役所行くんだから。」 裕也:「そうだね。」 梨花:「笑顔で別れましょ。」 裕也:「こんなに目を腫らしておいて?」 梨花:「サングラスでもする?」 裕也:「もう夜だよ。」 梨花:「芸能人なら、夜でもするんじゃない?」 裕也:「確かに、こんな夜にこっそり届けを出すなんて、芸能人みたいだ。」 梨花:「・・・行こっか。」 裕也:「・・・うん。」 0:梨花、部屋の方を振り向き 梨花:「・・・じゃあね。バイバイ。」  :  0:おわり