台本概要
258 views
タイトル | 終わる時 |
---|---|
作者名 | まりおん (@marion2009) |
ジャンル | ラブストーリー |
演者人数 | 2人用台本(男1、女1) |
時間 | 20 分 |
台本使用規定 | 台本説明欄参照 |
説明 |
わたしに実害が無い範囲で、有料無料に関わらず全て自由にお使いください。 過度のアドリブ、内容や性別、役名の改編も好きにしてください。 わたしへの連絡や、作者名の表記なども特に必要ありません。 258 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
---|---|---|---|
裕也 | 男 | 100 | 別に名前はさ、好きな名前読んだらいいじゃん |
梨花 | 女 | 101 | 途中で呼び方が変わらなければ何でもいいよね |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:『終わる時』
0:
裕也:「ただいま・・・。」
梨花:「・・・おかえりなさい。」
裕也:「うん・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「あ、これ。おみやげ。梨花が好きだったスモークサーモンのサラダ。」
梨花:「・・・うん。ありがと。」
裕也:「・・・今日は、何してたの?」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「今日は、・・・なにしてた?」
梨花:「・・・洗濯して、・・・その後、部屋の掃除を・・・。」
裕也:「・・・そっか。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・お昼は、ちゃんと食べた?」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・なあ。」
梨花:「・・・ん?」
裕也:「・・・・・・別れよう。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「色々考えたけど、それが一番いいと思うんだ・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「一緒にいれば、どうしても考えちゃうし・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「このままじゃだめだと思うんだよ・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「だから・・・、別れたほうがいいと思うんだ。」
梨花:「・・・なにが?」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「なにが・・・いいの?」
裕也:「・・・誰かを責めても何も変わらない。
裕也: ・・・それが自分なら、なおさらだよ。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「だから・・・。」
梨花:「だから?・・・だから忘れるの?逃げ出すの?」
裕也:「逃げ出すって、そんな・・・。」
梨花:「そうじゃない!わたしからもあの子からも逃げ出して、
梨花: 新しくやり直そうってことじゃない!違う?」
裕也:「じゃあ、いつまでこんなことを続けるって言うんだよ!
裕也: 悲しんでれば亡くなった子が返ってくるのか!?こないだろ!」
梨花:「やめてよ!そんなこと言わないで!・・・言わないでよ・・・。」
裕也:「・・・ごめん。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「ごめん・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・俺だって辛いし悲しいよ。
裕也: でも正直俺が一番辛いのは、梨花がそうやってずっと悲しんでることだ。
裕也: 悲しんでる梨花に何もしてやれないことなんだよ。」
梨花:「・・・じゃあ、抱きしめてよ。・・・わたしのこと、抱きしめて。」
裕也:「・・・ああ。」
梨花:「・・・・・・。!やめて!触らないで!」
裕也:「うっ!・・・またか。」
梨花:「・・・・・・ごめん。」
裕也:「なんなんだよ、それ。嫌ならはっきり言ってくれよ。」
梨花:「そうじゃないの・・・。」
裕也:「じゃあ、なんなんだよ。いつもいつも、俺が慰めようとするとそうやって・・・。」
梨花:「わかんないよ・・・、わかんないの。
梨花: でも、裕也に触られると、全身に鳥肌が立つような感覚になって、
梨花: どうにも我慢できなくなるの・・・。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「・・・・・・ごめんなさい。」
裕也:「・・・いいよ。」
梨花:「・・・なにがいけなかったのかな?」
裕也:「・・・なに?」
梨花:「わたしたち、何かした?うまくやってたと思うんだけどなぁ・・・。」
裕也:「うまくやってたよ・・・。何も間違ったことなんてしてなかったさ・・・。」
梨花:「じゃあさ、なんで死んじゃったんだろ・・・、赤ちゃん。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「まださ、手のひらに収まる程度だったんだよ。
梨花: やっとさ、頭とか心臓とかわかるくらいになって・・・。
梨花: 裕也も見たよね?写真。手足もちっちゃくて・・・。」
裕也:「ああ・・・。」
梨花:「・・・うちのお父さんさ、赤ちゃんできたかまだはっきりわからないうちから、
梨花: 近所の人呼んで大騒ぎして喜んじゃってさ・・・。」
裕也:「うん・・・。」
梨花:「それなのに、赤ちゃんだめになっちゃったって言ったら、
梨花: 『子供はまた作ればいいから。元気出せ。』って・・・。
梨花: あんなに楽しみにしてたのに・・・。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「どうすればよかったんだろ・・・。何がいけなかったのかな・・・。」
裕也:「何も悪くないよ。誰も悪くない。お医者さんも言ってたじゃん。
裕也: この時期は、はっきりとした理由も無くこういうことがあるって・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・もし誰かが悪いんだとすれば、それは俺だよ。
裕也: まだ安定期に入ってないのに、梨花に色々家事させて・・・。」
梨花:「家事って、わたしがしてたの洗濯くらいじゃん。
梨花: 夕飯だっていつも買ってきてくれてたし。」
裕也:「掃除してくれてたじゃん。」
梨花:「あれは趣味だもん。暇つぶしみたいなものだし。」
裕也:「でも・・・。」
梨花:「やめよ。・・・こういう話、したくない。」
裕也:「・・・そうだね。やめよう。俺も、もうしたくない。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・だから、離婚しよう。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・今日、お義父さんに会ってきたんだ。」
梨花:「・・・え?」
裕也:「離婚しようと思ってるって伝えてきた。」
梨花:「・・・そう。」
裕也:「最初は胸ぐらつかまれて、『今なんて言った?』って脅されたよ。
裕也: ・・・でも、ちゃんと説明したらわかってくれた。
裕也: 梨花のことは任せろって言ってくれた。だから・・・。」
梨花:「・・・離婚したいの?」
裕也:「・・・わからない。」
梨花:「わからないの?」
裕也:「俺にだってわからないことはあるよ。
裕也: どうすればいいのかとか、どうすれば正しいのかとか・・・。」
梨花:「・・・ねえ、わたしが聞いてるのは、離婚したいのかどうか。
梨花: どうするのが正しいかなんて聞いてないよ。」
裕也:「・・・それでも、同じことだよ。」
梨花:「同じなの?」
裕也:「同じだよ。だって俺は、正しい道を選びたいと思っているんだから。」
梨花:「・・・そう。」
裕也:「そう・・・。」
梨花:「・・・離婚するのが、正しい道なのかな?」
裕也:「それは・・・、わからない・・・。」
梨花:「・・・わたしたちは、正しい道を歩いてきたかな?」
裕也:「・・・ここまで?」
梨花:「・・・ここまで。」
裕也:「・・・どうかな。間違った選択をした覚えは無いけど・・・。」
梨花:「・・・間違って無くても、赤ちゃんがなくなっちゃうこともあるんだね・・・。」
裕也:「・・・どんなに気をつけてても、落し物しちゃう時ってあるじゃん。きっとそういうことだよ。」
梨花:「・・・赤ちゃん、落としてきちゃったの?」
裕也:「・・・そうかもしれない。」
梨花:「拾いに行かなきゃ・・・。」
裕也:「梨花?」
梨花:「赤ちゃん、落としちゃったから、拾いに行かなきゃ。」
裕也:「梨花、しっかりしろ。」
梨花:「赤ちゃんが、あの子が、迎えに来るのを待ってるの。行かなきゃ!」
裕也:「無理だよ!」
梨花:「っ!」
裕也:「・・・無理なんだよ。もう、戻ってこない。一度失ったら、もう戻ってこないんだ。」
梨花:「なんでそんなこと言うの・・・。なんでそんなこと言うのよ!」
裕也:「梨花、落ち着け。」
梨花:「待ってるの!どこかでわたしが迎えに来るのを待ってるのよ!
梨花: わたしが探しに行かなきゃ!あの子を見つけてあげなきゃいけないの!」
裕也:「だから!もういないんだって!」
梨花:「放して!放してよ!あああああああああああああああああああああ!
梨花: あああああああ!ああああああああああ!ああああああああああああ!
梨花: はあはあはあはぁはぁはぁ・・・・・・・・・。」
裕也:「・・・・・・落ち着いた?」
梨花:「・・・・・・ごめんなさい。」
裕也:「ううん、大丈夫。それより、どこか、怪我してない?」
梨花:「・・・うん。大丈夫。ありがと。」
裕也:「・・・なんで、こんなことになったんだろ。」
梨花:「ごめんね・・・。」
裕也:「ううん。梨花のせいじゃないよ。梨花は悪くない。」
梨花:「・・・・・・離婚、しよっか。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「・・・離婚、しよ?」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「裕也?」
裕也:「愛してるよ、梨花・・・。」
梨花:「うん・・・。わたしも、愛してる。・・・だから、離婚しよ。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「ね?」
裕也:「・・・・・・うん。」
梨花:「離婚届、持ってるんでしょ?出して。」
裕也:「・・・うん。」
梨花:「・・・・・・白紙じゃん。」
裕也:「・・・うん。」
梨花:「こういうのは、片方が書いた状態で渡すんだよ。」
裕也:「・・・何度も、書こうとしたけど・・・。」
梨花:「・・・うん。」
裕也:「・・・書けなかった。」
梨花:「・・・だめじゃん。」
裕也:「・・・ごめん。」
梨花:「・・・じゃあ、今、一緒に書こ。そんで、この後、一緒に出しに行こ。」
裕也:「・・・この後?」
梨花:「善は急げって言うでしょ?・・・善なのかはわかんないけど。
梨花: でも、このままじゃ裕也までおかしくなっちゃうもん。」
裕也:「俺は別に・・・。」
梨花:「それに、裕也がいっぱいいっぱい考えて出した結論だもん。
梨花: きっとそれが『正しい』んだと思うんだ。だから、ね。」
0:離婚届の記入欄を埋めていく梨花。
梨花:「・・・はい。次は裕也の番。」
裕也:「・・・ああ。」
0:裕也も、ゆっくりとだが記入していく。
梨花:「・・・よし、書けたね。えらいえらい。」
裕也:「・・・もう9時だね。出すのは明日にでも・・・。」
梨花:「ダメだよ。今行かないと。明日になったら出せなくなっちゃうよ。」
裕也:「・・・・・・出したくない。」
梨花:「ほら、もうそんなこと言ってる・・・。だから、今出さなきゃ。」
裕也:「・・・・・・うん。」
梨花:「そのまま駅まで送ってくれない?わたし、実家に帰るから。」
裕也:「・・・じゃあ、家まで送るよ。」
梨花:「・・・ありがと。」
裕也:「・・・きっとこれが、最後になるのかな?」
梨花:「たぶんね・・・。」
裕也:「そっか・・・。」
梨花:「・・・ねえ、裕也。」
裕也:「ん?」
梨花:「わたしたち、・・・幸せだったよね?」
裕也:「・・・ああ、最高に幸せだったよ。」
梨花:「・・・そうだよね。」
裕也:「もちろんだよ・・・。」
梨花:「・・・忘れられるかなぁ。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「・・・でも、忘れないとね。」
裕也:「・・・うん。」
梨花:「・・・じゃあ、ちょっとだけ支度してくるね。」
裕也:「うん・・・。」
梨花:「あ、お父さんにも連絡しとかなきゃ。」
裕也:「あ、じゃあ、俺が電話しておくよ。」
梨花:「・・・うん。じゃあ、お願い。」
裕也:「ああ。支度、ゆっくりでいいからね。」
梨花:「うん、ありがと。」
裕也:「・・・・・・あ、もしもし、さっきはどうも。
裕也: ・・・はい、帰ってから話をして、今、離婚届にサインしました。
裕也: これから二人で出しに行きます。・・・・・・はい。
裕也: それで、その後梨花を、・・・梨花さんを、そちらに送り届けます。
裕也: ・・・・・・いえ、本当にすみません。俺がふがいないばっかりに・・・。
裕也: ・・・はい、また、役所を出る時にでも連絡します。・・・はい、では。」
梨花:「・・・終わった?」
裕也:「うん。荷物はそれだけ?」
梨花:「うん。色々考えたけど、なんか、いっかなって。」
裕也:「そっか。」
梨花:「うん・・・。」
裕也:「じゃあ、行く?」
梨花:「うん。行こ。」
裕也:「・・・今まで、ありがとね。」
梨花:「こちらこそ。・・・って、この後まだ一緒に役所行くんだから。」
裕也:「そうだね。」
梨花:「笑顔で別れましょ。」
裕也:「こんなに目を腫らしておいて?」
梨花:「サングラスでもする?」
裕也:「もう夜だよ。」
梨花:「芸能人なら、夜でもするんじゃない?」
裕也:「確かに、こんな夜にこっそり届けを出すなんて、芸能人みたいだ。」
梨花:「・・・行こっか。」
裕也:「・・・うん。」
0:梨花、部屋の方を振り向き
梨花:「・・・じゃあね。バイバイ。」
:
0:おわり
0:『終わる時』
0:
裕也:「ただいま・・・。」
梨花:「・・・おかえりなさい。」
裕也:「うん・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「あ、これ。おみやげ。梨花が好きだったスモークサーモンのサラダ。」
梨花:「・・・うん。ありがと。」
裕也:「・・・今日は、何してたの?」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「今日は、・・・なにしてた?」
梨花:「・・・洗濯して、・・・その後、部屋の掃除を・・・。」
裕也:「・・・そっか。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・お昼は、ちゃんと食べた?」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・なあ。」
梨花:「・・・ん?」
裕也:「・・・・・・別れよう。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「色々考えたけど、それが一番いいと思うんだ・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「一緒にいれば、どうしても考えちゃうし・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「このままじゃだめだと思うんだよ・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「だから・・・、別れたほうがいいと思うんだ。」
梨花:「・・・なにが?」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「なにが・・・いいの?」
裕也:「・・・誰かを責めても何も変わらない。
裕也: ・・・それが自分なら、なおさらだよ。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「だから・・・。」
梨花:「だから?・・・だから忘れるの?逃げ出すの?」
裕也:「逃げ出すって、そんな・・・。」
梨花:「そうじゃない!わたしからもあの子からも逃げ出して、
梨花: 新しくやり直そうってことじゃない!違う?」
裕也:「じゃあ、いつまでこんなことを続けるって言うんだよ!
裕也: 悲しんでれば亡くなった子が返ってくるのか!?こないだろ!」
梨花:「やめてよ!そんなこと言わないで!・・・言わないでよ・・・。」
裕也:「・・・ごめん。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「ごめん・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・俺だって辛いし悲しいよ。
裕也: でも正直俺が一番辛いのは、梨花がそうやってずっと悲しんでることだ。
裕也: 悲しんでる梨花に何もしてやれないことなんだよ。」
梨花:「・・・じゃあ、抱きしめてよ。・・・わたしのこと、抱きしめて。」
裕也:「・・・ああ。」
梨花:「・・・・・・。!やめて!触らないで!」
裕也:「うっ!・・・またか。」
梨花:「・・・・・・ごめん。」
裕也:「なんなんだよ、それ。嫌ならはっきり言ってくれよ。」
梨花:「そうじゃないの・・・。」
裕也:「じゃあ、なんなんだよ。いつもいつも、俺が慰めようとするとそうやって・・・。」
梨花:「わかんないよ・・・、わかんないの。
梨花: でも、裕也に触られると、全身に鳥肌が立つような感覚になって、
梨花: どうにも我慢できなくなるの・・・。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「・・・・・・ごめんなさい。」
裕也:「・・・いいよ。」
梨花:「・・・なにがいけなかったのかな?」
裕也:「・・・なに?」
梨花:「わたしたち、何かした?うまくやってたと思うんだけどなぁ・・・。」
裕也:「うまくやってたよ・・・。何も間違ったことなんてしてなかったさ・・・。」
梨花:「じゃあさ、なんで死んじゃったんだろ・・・、赤ちゃん。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「まださ、手のひらに収まる程度だったんだよ。
梨花: やっとさ、頭とか心臓とかわかるくらいになって・・・。
梨花: 裕也も見たよね?写真。手足もちっちゃくて・・・。」
裕也:「ああ・・・。」
梨花:「・・・うちのお父さんさ、赤ちゃんできたかまだはっきりわからないうちから、
梨花: 近所の人呼んで大騒ぎして喜んじゃってさ・・・。」
裕也:「うん・・・。」
梨花:「それなのに、赤ちゃんだめになっちゃったって言ったら、
梨花: 『子供はまた作ればいいから。元気出せ。』って・・・。
梨花: あんなに楽しみにしてたのに・・・。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「どうすればよかったんだろ・・・。何がいけなかったのかな・・・。」
裕也:「何も悪くないよ。誰も悪くない。お医者さんも言ってたじゃん。
裕也: この時期は、はっきりとした理由も無くこういうことがあるって・・・。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・もし誰かが悪いんだとすれば、それは俺だよ。
裕也: まだ安定期に入ってないのに、梨花に色々家事させて・・・。」
梨花:「家事って、わたしがしてたの洗濯くらいじゃん。
梨花: 夕飯だっていつも買ってきてくれてたし。」
裕也:「掃除してくれてたじゃん。」
梨花:「あれは趣味だもん。暇つぶしみたいなものだし。」
裕也:「でも・・・。」
梨花:「やめよ。・・・こういう話、したくない。」
裕也:「・・・そうだね。やめよう。俺も、もうしたくない。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・だから、離婚しよう。」
梨花:「・・・・・・。」
裕也:「・・・今日、お義父さんに会ってきたんだ。」
梨花:「・・・え?」
裕也:「離婚しようと思ってるって伝えてきた。」
梨花:「・・・そう。」
裕也:「最初は胸ぐらつかまれて、『今なんて言った?』って脅されたよ。
裕也: ・・・でも、ちゃんと説明したらわかってくれた。
裕也: 梨花のことは任せろって言ってくれた。だから・・・。」
梨花:「・・・離婚したいの?」
裕也:「・・・わからない。」
梨花:「わからないの?」
裕也:「俺にだってわからないことはあるよ。
裕也: どうすればいいのかとか、どうすれば正しいのかとか・・・。」
梨花:「・・・ねえ、わたしが聞いてるのは、離婚したいのかどうか。
梨花: どうするのが正しいかなんて聞いてないよ。」
裕也:「・・・それでも、同じことだよ。」
梨花:「同じなの?」
裕也:「同じだよ。だって俺は、正しい道を選びたいと思っているんだから。」
梨花:「・・・そう。」
裕也:「そう・・・。」
梨花:「・・・離婚するのが、正しい道なのかな?」
裕也:「それは・・・、わからない・・・。」
梨花:「・・・わたしたちは、正しい道を歩いてきたかな?」
裕也:「・・・ここまで?」
梨花:「・・・ここまで。」
裕也:「・・・どうかな。間違った選択をした覚えは無いけど・・・。」
梨花:「・・・間違って無くても、赤ちゃんがなくなっちゃうこともあるんだね・・・。」
裕也:「・・・どんなに気をつけてても、落し物しちゃう時ってあるじゃん。きっとそういうことだよ。」
梨花:「・・・赤ちゃん、落としてきちゃったの?」
裕也:「・・・そうかもしれない。」
梨花:「拾いに行かなきゃ・・・。」
裕也:「梨花?」
梨花:「赤ちゃん、落としちゃったから、拾いに行かなきゃ。」
裕也:「梨花、しっかりしろ。」
梨花:「赤ちゃんが、あの子が、迎えに来るのを待ってるの。行かなきゃ!」
裕也:「無理だよ!」
梨花:「っ!」
裕也:「・・・無理なんだよ。もう、戻ってこない。一度失ったら、もう戻ってこないんだ。」
梨花:「なんでそんなこと言うの・・・。なんでそんなこと言うのよ!」
裕也:「梨花、落ち着け。」
梨花:「待ってるの!どこかでわたしが迎えに来るのを待ってるのよ!
梨花: わたしが探しに行かなきゃ!あの子を見つけてあげなきゃいけないの!」
裕也:「だから!もういないんだって!」
梨花:「放して!放してよ!あああああああああああああああああああああ!
梨花: あああああああ!ああああああああああ!ああああああああああああ!
梨花: はあはあはあはぁはぁはぁ・・・・・・・・・。」
裕也:「・・・・・・落ち着いた?」
梨花:「・・・・・・ごめんなさい。」
裕也:「ううん、大丈夫。それより、どこか、怪我してない?」
梨花:「・・・うん。大丈夫。ありがと。」
裕也:「・・・なんで、こんなことになったんだろ。」
梨花:「ごめんね・・・。」
裕也:「ううん。梨花のせいじゃないよ。梨花は悪くない。」
梨花:「・・・・・・離婚、しよっか。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「・・・離婚、しよ?」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「裕也?」
裕也:「愛してるよ、梨花・・・。」
梨花:「うん・・・。わたしも、愛してる。・・・だから、離婚しよ。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「ね?」
裕也:「・・・・・・うん。」
梨花:「離婚届、持ってるんでしょ?出して。」
裕也:「・・・うん。」
梨花:「・・・・・・白紙じゃん。」
裕也:「・・・うん。」
梨花:「こういうのは、片方が書いた状態で渡すんだよ。」
裕也:「・・・何度も、書こうとしたけど・・・。」
梨花:「・・・うん。」
裕也:「・・・書けなかった。」
梨花:「・・・だめじゃん。」
裕也:「・・・ごめん。」
梨花:「・・・じゃあ、今、一緒に書こ。そんで、この後、一緒に出しに行こ。」
裕也:「・・・この後?」
梨花:「善は急げって言うでしょ?・・・善なのかはわかんないけど。
梨花: でも、このままじゃ裕也までおかしくなっちゃうもん。」
裕也:「俺は別に・・・。」
梨花:「それに、裕也がいっぱいいっぱい考えて出した結論だもん。
梨花: きっとそれが『正しい』んだと思うんだ。だから、ね。」
0:離婚届の記入欄を埋めていく梨花。
梨花:「・・・はい。次は裕也の番。」
裕也:「・・・ああ。」
0:裕也も、ゆっくりとだが記入していく。
梨花:「・・・よし、書けたね。えらいえらい。」
裕也:「・・・もう9時だね。出すのは明日にでも・・・。」
梨花:「ダメだよ。今行かないと。明日になったら出せなくなっちゃうよ。」
裕也:「・・・・・・出したくない。」
梨花:「ほら、もうそんなこと言ってる・・・。だから、今出さなきゃ。」
裕也:「・・・・・・うん。」
梨花:「そのまま駅まで送ってくれない?わたし、実家に帰るから。」
裕也:「・・・じゃあ、家まで送るよ。」
梨花:「・・・ありがと。」
裕也:「・・・きっとこれが、最後になるのかな?」
梨花:「たぶんね・・・。」
裕也:「そっか・・・。」
梨花:「・・・ねえ、裕也。」
裕也:「ん?」
梨花:「わたしたち、・・・幸せだったよね?」
裕也:「・・・ああ、最高に幸せだったよ。」
梨花:「・・・そうだよね。」
裕也:「もちろんだよ・・・。」
梨花:「・・・忘れられるかなぁ。」
裕也:「・・・・・・。」
梨花:「・・・でも、忘れないとね。」
裕也:「・・・うん。」
梨花:「・・・じゃあ、ちょっとだけ支度してくるね。」
裕也:「うん・・・。」
梨花:「あ、お父さんにも連絡しとかなきゃ。」
裕也:「あ、じゃあ、俺が電話しておくよ。」
梨花:「・・・うん。じゃあ、お願い。」
裕也:「ああ。支度、ゆっくりでいいからね。」
梨花:「うん、ありがと。」
裕也:「・・・・・・あ、もしもし、さっきはどうも。
裕也: ・・・はい、帰ってから話をして、今、離婚届にサインしました。
裕也: これから二人で出しに行きます。・・・・・・はい。
裕也: それで、その後梨花を、・・・梨花さんを、そちらに送り届けます。
裕也: ・・・・・・いえ、本当にすみません。俺がふがいないばっかりに・・・。
裕也: ・・・はい、また、役所を出る時にでも連絡します。・・・はい、では。」
梨花:「・・・終わった?」
裕也:「うん。荷物はそれだけ?」
梨花:「うん。色々考えたけど、なんか、いっかなって。」
裕也:「そっか。」
梨花:「うん・・・。」
裕也:「じゃあ、行く?」
梨花:「うん。行こ。」
裕也:「・・・今まで、ありがとね。」
梨花:「こちらこそ。・・・って、この後まだ一緒に役所行くんだから。」
裕也:「そうだね。」
梨花:「笑顔で別れましょ。」
裕也:「こんなに目を腫らしておいて?」
梨花:「サングラスでもする?」
裕也:「もう夜だよ。」
梨花:「芸能人なら、夜でもするんじゃない?」
裕也:「確かに、こんな夜にこっそり届けを出すなんて、芸能人みたいだ。」
梨花:「・・・行こっか。」
裕也:「・・・うん。」
0:梨花、部屋の方を振り向き
梨花:「・・・じゃあね。バイバイ。」
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0:おわり