台本概要
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タイトル | ite-ドラゴンハーツ- |
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作者名 | 桜蛇あねり(おうじゃあねり) (@aneri_writer) |
ジャンル | ファンタジー |
演者人数 | 5人用台本(男3、女2) |
時間 | 50 分 |
台本使用規定 | 非商用利用時は連絡不要 |
説明 |
iteシリーズ第2作目。 人間とドラゴンが共に暮らす国、アングウィス。 この国では、人間とドラゴンが力を合わせて、ドラゴンストーンというこの世界の源となる石を守っていました。 その世界に住む彼らの中でも、特別な訓練を受け、世界の平和を守るもの達がいました。 これは、ドラゴナイトと呼ばれる彼らの物語。 ※世界観を壊さない程度のアドリブ等はOKです。 『ite』シリーズ 0. ラスト・ブラック 1.ite-ロジカルハーツ- 桜蛇あねり、天駆ケイとのコラボ台本 2.ite-ドラゴンハーツ- 3.ite-マーメイドハーツ- 4. ite-デーモンハーツ- 270 views |
キャラ説明
名前 | 性別 | 台詞数 | 説明 |
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ルフス | 男 | 125 | ドラゴナイトの人間。国一番のドラゴナイトになることが目標。 |
シトリン | 女 | 76 | ルフスのパートナーのドラゴン。穏やかな性格。 |
ニゲル | 男 | 109 | ドラゴナイトの人間。国の長の息子。ルフスとは同期。 |
ジャスパー | 男 | 62 | ニゲルのパートナーのドラゴン。臆病なところがある。 |
ラリマー | 女 | 104 | ドラゴナイトの人間。ドラゴナイトだが、ドラゴンは連れていない。 |
※役をクリックするとセリフに色が付きます。
台本本編
0:ite-ドラゴンハーツ-
:
ルフス:ニゲル!そっちいったぞ!
ニゲル:おう、任せろ。ジャスパー、一気に突っ込め。
ジャスパー:えぇ!?正面からぁ!?あのモンスターの爪、ヤバいじゃん!
ニゲル:俺の指示通りに動けば問題ない、行くぞ。
ジャスパー:わかったよ!任せるからね!
ルフス:シトリン、その間にけが人を安全な場所へつれてくぞ!
シトリン:わかったわ、ルフス、しっかり掴まってて、最速で飛ぶわよ!
ルフス:おっけー!
0:間
ルフス:よし、これで任務完了、だな!
シトリン:重傷者がいなくてよかったわ。
ジャスパー:はぁぁぁ、怖かったぁ......。
ニゲル:その臆病なとこ、いい加減直せよ。
ジャスパー:怖いもんは怖いんだよ〜!
ニゲル:ったく......おら、戻るぞ。
0:間
:
シトリン:人間とドラゴンが共に暮らす国、アングウィス。この国では、人間とドラゴンが力を合わせて、ドラゴンストーンというこの世界の源となる石を守っていました。ドラゴンストーンは、この世界を創造し、この世界のバランスを保っているといわれていました。その世界に住む彼らの中でも、特別な訓練を受け、世界の平和を守るもの達がいました。これは、ドラゴナイトと呼ばれる彼らの物語。
:
0:ドラゴナイト拠点
ルフス:あー!疲れたぁ!今夜は何食べようかなぁー!
ニゲル:結構遅くなったな。街で暴れるモンスターの討伐任務は後処理が多くて面倒だ。
ルフス:そうだな。ま、でも一番ナイトっぽい任務だから俺は好きだけどな!
ニゲル:…この時間だから、食堂誰もいねぇな。
:
ラリマー:ざーんねん、あたしがいましたー!貸切じゃなくて悪いね!
:
ルフス:.........ラリマー。
ニゲル:お前も任務終わりか。
ラリマー:まーね!任務終わりに食べるご飯っておいしいよな!
ニゲル:.........また単身での任務だったのか?
ラリマー:そーだよ。あたしは特別だからね。
ルフス:特別......悪い意味で、だろ。
ラリマー:んー?
ルフス:この国では幼少期からパートナーとなるドラゴンを決め、そのドラゴンと一生を共にする。そういうしきたりだ。なのに、なんでお前はドラゴンを従えてないんだよ。ドラゴナイトとしてここにいるのに、おかしいだろ。
ラリマー:だから、あたしが特別だから、って言ってんじゃん。
ルフス:俺はお前のこと、ドラゴナイトだって認めねぇからな。
ラリマー:ここにあたしがいることを決めたのはあんたでもあたしでもない。この国の長だ。文句なら長にいいなよ。
ルフス:てめぇ.......!
ニゲル:おい、その辺にしとけ。ラリマー、この国では、人間とドラゴン、2つが揃ってはじめて1人前と言える。ドラゴンを従えてない半人前のお前が、舐めた口きくな。
ラリマー:へぇ?2つ揃って1人前、ねぇ?
ニゲル:さらにお前はまだここに入隊して3ヶ月程度の新人だ。物心ついた頃からここで全てを捧げてきた俺らに歯向かってんじゃねぇよ。
ラリマー:あー、怖い怖い。後輩イビリやめなって。そんなに、新人に追い越されるのが怖い?
ルフス:あぁ?
ラリマー:ドラゴンと2つで1人前って言うけどさぁ、そのドラゴンに頼りっぱなしで、人間はどんどん弱くなっていってんじゃないの?あたしは、ドラゴンがいなくても、この身一つで何でもできる。でも、あんたたちはドラゴンがいないと何も出来ない。違う?
ルフス:てめぇ.........っ!!(ラリマーの胸ぐらを掴もうとする、が)
ラリマー:はぁっ!
ルフス:うっ!(その手を掴まれ、そのままラリマーに投げ飛ばされる)ぐあっ!!
ラリマー:ほら、簡単にその新人に投げ飛ばされてんじゃん。
ルフス:くそっ....!女のくせに......!
ラリマー:はいはい、その女のくせにって言うの、ダサいからやめときな?
ルフス:ちっ!(食堂を飛び出していく)
ラリマー:全く、いちいち突っかかってさぁ......
ニゲル:おい
ラリマー:なに.........うわっ!あぶなっ!(ニゲルからの攻撃をとっさに避ける)
ニゲル:舐めた口きくな、と言ったはずだが。
ラリマー:あーらら、大好きな同期のお仲間さんがやられたから仕返し?素敵な友情だね。
ニゲル:ったく.........はぁっ!(ラリマーに掴みかかる)
ラリマー:(避けながら)っとぉ!やる?いいよ!あたしは負けな.........
ニゲル:見えてないぞ
ラリマー:へ......?っうわっ!(ニゲルに足を払われ、体勢を崩す)
ニゲル:ふん!(ラリマーの両手首を拘束し、地面に叩き伏せる)
ラリマー:......たぁ...っ!足払いなんて姑息なことしやがって!
ニゲル:親父に気に入られてるかなんだか知らねぇが、あまり生意気な態度とんじゃねぇ。
ラリマー:んだよ、ドラゴンもいない、こんな女が活躍するのが嫌なんだろ?男はプライドが高くて嫌だね。
ニゲル:黙れ。ここでお前の衣服をはぎとって、女として辱めることも、俺にはできるぞ。
ラリマー:うーわ、トップのドラゴナイト様がそんな下品な脅ししてんじゃねぇよ。
ニゲル:...............。
ラリマー:................。(睨み合う)
ニゲル:ふん、次目に余るようなことしたらタダじゃおかねぇ。
ラリマー:はいはい、せーぜー気をつけまーす。
ニゲル:ちっ。(去っていく)
ラリマー:(ボソッと呟く)あたしは、馴れ合うわけにはいかないんだよ......。
:
ルフス:くそ!くそっ!なんなんだよ、ラリマーのやつ!腹立つ!!
シトリン:まーたラリマーに突っかかって返り討ちにあったの?
ルフス:うるせぇ!突っかかってもないし、返り討ちにあってもねぇ!
シトリン:もういいじゃない、ラリマーはラリマーの強さ、ルフスにはルフスの強さがあるんだから。
ルフス:俺は絶対に認めない…!…そうだ、明日の戦闘訓練でわからせてやる…!
シトリン:まーた返り討ちにあっても知らないわよー?
ルフス:シトリン、お前も一緒に手伝ってくれ。
シトリン:え?なにを?
:
0:翌日、訓練場
ルフス:ってなわけでラリマー!お前がドラゴンを従えなくても強いという証明、してもらうぞ!
シトリン:.........ルフス?これは....
ルフス:俺とシトリンでお前と戦う!今日こそ、完膚無きまでに叩きのめしてやるぞ!
ニゲル:............(呆れたようにため息を着く)
ジャスパー:えぇー.........。
ラリマー:プライド捨てたの?あんた。
ルフス:ちげぇよ!昨日お前は言ったな、ドラゴンがいなくても、この身一つで戦えると!だから、それを証明してみやがれってんだ!
ラリマー:あー.........まぁ、いいけどさぁ。
シトリン:ごめんなさいね、この子、こういうバカなとこあるから......。
ルフス:剣は有りにしよう、さぁ!剣をもて!
ラリマー:はいはい。ねぇ、あたしがこれに勝てたら、もう突っかかってくんなよ?
ルフス:行くぞ!シトリン、上昇だ!
シトリン:はいはいっと!(勢いよく上昇する)
ラリマー:仕方ねぇ、あたしも本気で行くからな!
ルフス:ドラゴンなして、勝てるわけねぇ!シトリン、捕らえろ!
シトリン:ごめんなさいね、戦闘ってなると、私も本気を出さなきゃだから......!はぁっ!(勢いよく下降し、ラリマーに突進する)
ラリマー:うぉっ!(ギリギリで避ける)やっぱ、シトリンの速さはすげぇな......。
ルフス:急旋回、連撃!
シトリン:はぁぁっ!!
ラリマー:ちっ......!風圧が......っ!(避けるが、風圧でよろめく)
ルフス:今だっ!くらえぇぇぇぇ!
ラリマー:ったく、その大振りな攻撃が隙だらけなんだって。......やぁっ!(片手でルフスの剣撃を剣で受け流す)ほーらよっと!(もう片方の手で、ルフスの手首を打つ)
ルフス:だっ......!あっ!剣が!(ルフスの手から剣が落ちる).........う、うわぁっ!
0:ルフス、シトリンから落ちてしまう。
シトリン:あっ!ルフス!
ルフス:.........っ!!
ラリマー:これでわかっただろ?ドラゴンと一緒だろうと、あたしには勝てないって。
ルフス:............くっ!
シトリン:ルフス、大丈夫?
ルフス:...........。
ラリマー:これに懲りたら、あたしにはもう突っかからないでよ。
ニゲル:はぁ。(剣を抜いて、ラリマーの元へと向かう)
ジャスパー:あぁちょっと、ニゲル!
ラリマー:もっと強くなってから喧嘩うってきてね。あたしも暇じゃな....っ!!(背後からの剣撃に、とっさに剣で応じる)
ニゲル:いい加減にしろ。言ったよな、タダじゃおかねぇって。
ラリマー:ニゲル......っ!急な不意打ちはないんじゃないの?やっ!(剣を振りほどく)
ニゲル:俺と剣で戦え。タイマンだ。
ラリマー:いーよ、ついでにあんたもねじ伏せるっ!はぁっ!
ニゲル:自分の力を過信しすぎだ、ラリマー。
0:剣がぶつかり合う
ラリマー:過信じゃないか、確かめようぜ!
ニゲル:確かにお前は強い。体術も剣術もトップだ。だが、協調性がなさすぎる。
ラリマー:いいんだよ、そんなのなくて。任務は1人で充分だし、馴れ合いとかごめんだからなっ!
ニゲル:あと、その人を見下す態度もやめろ。それが1番鼻につく。
ラリマー:見下してるつもりないよ。ただ、突っかかってきたやつに制裁をくだしてるだけ。正当防衛だ。
ニゲル:そうやって見下してると、見えるもんも見えないぞっ!(足払いをかける)
ラリマー:おっとぉ!残念、それはもうくらわ.........
ニゲル:今度は上が見えてない。
ラリマー:.........がっ!頭、突き......っ!............ぐあっ!(頭づきをくらって、後ろに倒れる)
ニゲル:また、俺の勝ちだ。(ラリマーの首元に剣をつきつけながら)
ラリマー:くそっ!
ニゲル:さて、どうしてくれようか......
ジャスパー:ニゲル。やり過ぎ。
ニゲル:やり過ぎなわけねぇだろ、このくらいやんなきゃこいつは......
ジャスパー:違う。君たちの事じゃない。
ニゲル:あ?どういう......
:
ルフス:なんだよ.......それ.....。
:
ニゲル:ルフス?どーした?
ルフス:ラリマーはシトリンと戦った俺の事を簡単に倒して、そのラリマーをニゲルは自分の力だけで倒して......なんだよ......俺、そんなに弱いのかよ.......っ!
ニゲル:おい、ルフ...
ルフス:お前も俺の事見下してたのか、ニゲルっ!!
ニゲル:はぁ?ちが......
ルフス:バカにしてんじゃねぇよっ!!!どいつもこいつもっ!!!(走り去っていく)
シトリン:ルフス!(ルフスを追いかけていく)
ニゲル:............。
ラリマー:...............。
ジャスパー:まったく......。もっとさ、彼の尊厳ってものをちゃんと見てよ。
ニゲル:いや、むしろ俺はアイツの尊厳を守った。アイツを煽るラリマーをねじ伏せて......
ジャスパー:それがダメだって言ってるんだ。君たちは強くて、自分のその強さに自信を持ってるから、ちょっとやそっとじゃプライドは崩れないだろうけど......自分は弱いって思ってる身としては、常にプライドが崩される不安と戦ってるんだよ。
ニゲル:......ちっ。わかったよ、ルフスに謝ってくる。
ジャスパー:行かなくていい。逆効果。
ニゲル:だけど!
ジャスパー:彼のことはシトリンに任せよう。彼女の言葉が1番だと思うから。
ニゲル:.........わかった。
:
0:森の奥
:
ルフス:くそ、くそ、くそぅっ!!!んだよ.......なんでそんなにみんな強いんだよ....っ!どうして、俺は強くなれないんだよ......っ!くそっ!
シトリン:ルフス!
ルフス:あぁ、シトリンか。お前も俺の事、笑いにきたのか。
シトリン:そんなわけないでしょ。ルフス、戻ろう?
ルフス:戻らない。俺は......俺はドラゴナイトに向いてない。こんな、こんな弱い俺なんて。
シトリン:ルフスは弱くないよ。ずっと頑張ってきたじゃん、だから
ルフス:そうだよ!ずっと頑張ってきたんだよ!それなのに!.........それなのに、入って3ヶ月のラリマーにも、同期のニゲルにも、あんなに差をつけられてんだよ.........!
シトリン:それ、は.........
ルフス:わかってんだろ、お前だって。俺が弱いからだって。
シトリン:そんなこと思ってな......
ルフス:嘘つくな!そういうお前だって!お前だって弱いだろうがっ!
シトリン:............っ!!
ルフス:俺もお前も!弱いから!だからいつまでたっても勝てないんだよ!
シトリン:どう、して......そんなことを言うの.........?
ルフス:俺みたいな弱い人間がパートナーで悪かったな。だけどな、俺だって、もっと強いドラゴンと組みたかった。
シトリン:っ!それは、言わないでよ.........あなただけだったのに.........あなただけが!私の弱さを受け入れてくれてたのに!
ルフス:シトリン。お前との関係を解消する。
シトリン:ルフ、ス............。
ルフス:俺は1人で強くなる。お前はもう自由だ。.........じゃあな。(走り去る)
シトリン:どう、して.........ルフス......!
:
0:ドラゴンストーンの祠
:
ラリマー:......近づいてる。.........そろそろ、か?
ニゲル:こんなとこでなにしてる。
ラリマー:......ニゲル、とジャスパーもか。
ジャスパー:やあ、ラリマー。
ニゲル:ここは、ドラゴンストーンのある祠(ほこら)。俺の一族しか立ち入られないはずだが?
ラリマー:その一族の長から、許可をもらってる。
ニゲル:.........はぁ、親父も何でこんなに特別扱いをするのか。
ジャスパー:3ヶ月前、長がここで倒れているラリマーを保護したんだよね。
ニゲル:家に連れ帰るなり、こいつをドラゴナイトの特別部隊に任命する、とか何とか言って。特別扱いする理由は、未だに教えてもらっちゃいねぇ。
ジャスパー:ラリマーが入りたての頃はだいぶ荒れたよね。なんでこんな訳の分からないやつが急にドラゴナイトに、って。......だけど、ラリマーの強さに、みんな何も言わなくなっていった。
ラリマー:ま、それでも疎まれていることに変わりはないけどな。
ニゲル:ずっと考えてた。お前の存在を。そして、1つの結論に至った。
ラリマー:へぇ?聞かせてよ。
:
ニゲル:ラリマー、お前は”イニシエの竜騎士”だろ。
:
0:再び森
:
ルフス:俺は弱い.........誰よりも。.........強くなりたい、強さが欲しい......!もっと、もっと、誰にも......ドラゴンにすら負けない力を.........っ!
:
ルフス:............ん?なんだ、あの光?黒い、光.........?って、こっちに、落ちてきてる!?
:
0:上空から、黒い物体が近くに轟音を立てて落ちる。
:
ルフス:なんだ!?近くに落ちたぞ......?............っ!!(ルフスの頭の中で何やら声が響く)なん、だ.........頭に、なにか.........声.........?俺を.........よん、でる?.........あの黒い物体から、か?行ってみよう.........。
:
ルフス:これは......!黒い石......いや......黒い.......ドラゴンストーン?俺たちが護っているのは白いドラゴンストーン。.........これは....いったい......?............うっ!また、声が.........!...........っ!触れて、みろ....?
0:(ルフスは黒いドラゴンストーンに触れる。すると、突然。黒い炎がルフスを包んだ)
ルフス:っ!!なんだ、これ!!黒い炎が.........っ!くっ!逃げられ.........っ!ぐああああっ!!
:
ルフス:う......、くる、しい......声が...強く.........あた、まが.........
ルフス:(徐々にとりつかれていく)俺ハ......ヨワ、い......チカラ、が......ホシ、い......ダレにもマケなイ、チカラ、が.........そうダ.........オレ、を......ミクだすモノ......スべて......コワス......ゼツぼうを...........。チカラを......すべてを壊すチカラを......!俺が!!いちばん強いんだっ!!!俺をバカにしたヤツら、皆、皆!!絶望にたたき落としてやるっ!!俺の!!チカラで!!この!絶望のチカラで!!!はははははっ!!!
:
0:ドラゴンストーンの祠
ジャスパー:っ!!なにか、きてる。
ニゲル:ジャスパー?どうした。
ジャスパー:ヤバいのが、来てる気がする.........っ!!
:
0:(轟音が遠くで響き、地面が揺れる)
ラリマー:なんだ!?
ニゲル:今の音は?
ジャスパー:たぶん、かなりヤバい......すぐ向かおう、ニゲル!
ニゲル:おう、行くぞ。
ジャスパー:ラリマーも、乗って!
ラリマー:わるい、頼んだ。
ジャスパー:しっかり掴まってて!
:
0:祠からでて、上空へ飛び立つ。
ニゲル:あそこだ。森の奥......!
ジャスパー:黒い火柱が、あがってる......!
ラリマー:黒い......炎.........!
ニゲル:待て、あの方向.........ルフスが走っていった方向じゃないか......?
ジャスパー:急ごう!
:
0:森の奥
ジャスパー:なんだ、あれ......中心になにか黒いものが.......ドラゴン、ストーン......?
ニゲル:くっ......!炎の威力が強い...近づけねぇ......っ!
ラリマー:あれ!あのドラゴンストーンの中心!
ジャスパー:あれは.........ルフス!?
ニゲル:黒のドラゴンストーンに飲み込まれてる......?おい!ルフス!聞こえるかっ!?
ルフス:.........絶望を。
ニゲル:ルフス!シトリンはどうした!おい!
ルフス:絶望の、炎よ、燃え盛れ。
:
0:炎の威力が増す。
:
ラリマー:くっ!さらに炎の勢いが......っ!
ルフス:俺は、この力でこの国を、この世界を絶望に染める。絶望こそが、力。最強の力。
ニゲル:ルフス!のまれてるのか......?ジャスパー!突っ込むぞ、ルフスを助け出す!
ジャスパー:.........っ!
ニゲル:ジャスパー!
ジャスパー:ニゲル、ダメだ......。これは近づけない......。
ニゲル:......そんなに、ヤバいのか。
ジャスパー:飛び込んで......全員がのまれる未来しか見えなかった......。
ニゲル:くそ.........どうすれば......っ!
ラリマー:あたしが......飛び込む......っ!
ジャスパー:まって、ラリマー。ダメだよ、同じ結果だ....!
ラリマー:でも!このままにできないだろ!
ジャスパー:でも.........っ!
:
シトリン:ルフスっ!!!(躊躇なく黒い炎へ飛びこむ)
:
ジャスパー:......!シトリンっ!ダメだ、飛び込むなっ!!
シトリン:ルフス、ルフスっ!
ジャスパー:あぁ......っ!シトリンまで、黒い炎に......っ!
ラリマー:ジャスパー。落ち着いて。
ジャスパー:落ち着いてられないよ!これじゃあ、シトリンまで......っ!
ラリマー:大丈夫。彼らを信じよう。
ジャスパー:ラリマー.........。
:
シトリン:あつ......っ!ルフ......ス.......!
ルフス:お前も絶望の1部となりにきたのか。
シトリン:ルフスっ!目を覚まして!
ルフス:俺と一緒に、絶望に......
シトリン:あなたはこんな絶望に屈するほど弱くないでしょう!負けないで、ルフス!
ルフス:弱い自分を、絶望が強くしてくれたんだ.........弱かった!俺を!
シトリン:違う!ルフス、あなたは弱くないっ!!あなたはいつだって、強くあろうとした、強かった!だから!!弱い私も強くなれた!!そうでしょう、ルフス!
ルフス:..........っ!なにを......うっ!くそ......出て......クル、な....っ!....ヤメ...ろ......
シトリン:私たちは!最速最強の!空のドラゴナイトでしょ、ルフスっ!!!
ルフス:.........!!サイソく......サイ、きョウの.........そらの......ドラゴ、ナイト......っ!!
シトリン:目を覚まして!お願いっ!私も一緒に、戦うから!
ルフス:そう、ダ.........俺は......俺タチは.........最速!最強の!!空のドラゴナイトだ!シトリン!!!
:
0:ルフスとシトリンから白い光が発せられる。
:
ルフス:(M)なんで、忘れていたんだろう。
:
ルフス:(M)シトリンと出会ったのは、5歳の時だ。しきたりとして与えられたドラゴンの卵を一生懸命にお世話したのを覚えている。そして、お世話して半年......ついに卵がかえった。
:
ルフス:(M)生まれたドラゴンは、俺よりも小さくて、とても弱々しくて......だけどとても.........暖かかった。俺はその時、コイツをずっと守ろう。守れる強い人間になろう。そう、思ったのだ。
:
ルフス:(M)それから、10年の時が経ち、俺とシトリンは、ドラゴナイト養成所で訓練を受けていた。ある日、実戦形式の戦闘訓練があったときの夜のこと。俺は、ボロボロになったシトリンの手当てしていた。
:
シトリン:ルフス.........ごめんなさい、私が弱いばかりに....いつも勝てなくて..ごめんなさい.......
ルフス:なーに、気にすんなって!強くなるための訓練なんだからさ!これからこれから!
シトリン:............こんなに弱いドラゴン、初めてだって......言われるの。
ルフス:はぁ?誰だよ、そんなこと言ってる奴!
シトリン:同じ養成所のドラゴンたちに....。力もなくて、戦いのセンスもない、お前のパートナーの人間がかわいそうだって.......。
ルフス:............。
シトリン:私が弱いばかりに......これじゃあルフスが目指す、国1番のドラゴナイトになれない.........ごめんね、ごめんなさい......。
ルフス:じゃあ、シトリンの分まで俺が強くなってやるよ。
シトリン:え.........?
ルフス:お前の力が弱い分は、俺が強くなってやる。そんで、お前が胸を張って、俺らは強いんだって言えるようなドラゴナイトになろう。俺たちは、2つで1つなんだからさ。
シトリン:ルフス.........。
ルフス:それに、お前はさ、力は確かに弱いかもしれないけど、飛行能力はすげぇじゃん。飛行訓練のとき、先生かなり褒めてんだぜ?
シトリン:......昔から、飛ぶのが好きだったもんね、私も、ルフスも。
ルフス:............そうか!そうだよ!なんだ!簡単な事だったんだよ、シトリン!
シトリン:え?な、なにが?
ルフス:お前には、自在に瞬速で飛び回るチカラがある!だから、力の強いドラゴナイトじゃなくて!空を自由に飛ぶ最速最強の空のドラゴナイトになろう!
シトリン:空の......ドラゴナイト.........
ルフス:誰にも追いつけない速さでさ、空を翔(かけ)るって、ほら!カッコイイじゃん!!な!力が強いだけが強さじゃないよ、シトリン!それと、俺も、俺自身もいっぱい頑張って強くなる!一緒に、トップを目指そう!
シトリン:............ルフ、ス。
ルフス:なに泣いてんだよ!よっし!そうと決まれば!夜空を翔け回ってみようぜ!
シトリン:............あり、がとう、ルフス。
ルフス:ほら!立てよ!行くぜ!シトリン!
シトリン:.........ルフス、私、結構怪我してるんだけど......?
ルフス:だいじょーぶだいじょーぶ!気合いでなんとかなるって!
シトリン:..........ルフスのそういうとこ、嫌いじゃないけど.........まぁいっか......うん、本調子で飛べないかもしれないけど、行こっか!
:
ルフス:シトリンっ!!
シトリン:ルフスっ!!
:
0:ルフスを包んでいた黒い炎が消える。
:
ニゲル:炎が......消えた。
ラリマー:よかった......。ジャスパー、下に降りよう。
ジャスパー:うん!了解!
:
ルフス:ごめん、シトリン......酷いこと言って......ごめん、ごめんっ!
シトリン:いいの。あなたが無事でよかった。
ルフス:ごめんな.........ごめん.......!
シトリン:いつまで謝ってるの。ほら、顔あげてよ。
ルフス:俺、やっぱおまえと.........
:
ニゲル:おいっ!逃げろっ!!
:
ルフス:え....?うわぁっ!
:
0:黒いドラゴンストーンから、再び炎が燃え上がる。
:
シトリン:ルフス!乗って!
ルフス:なんだ、あれ.........!
:
ジャスパー:黒い炎の.........ドラゴン....?
ラリマー:くそ、ルフスが解放されても、あの石の力は無くならないみたいだ!ルフスから吸い取った力でまだ動いてる!
ニゲル:一旦離れるぞ!
:
0:ルフスたちは黒いドラゴンストーンから距離をとって、地面に降りる。
:
ラリマー:あれはやばいな.........。どんどん大きくなっていってる....。おそらく、あの石本体を壊さない限り、アレは勢力を増していく......!
ニゲル:だったら、壊すしかねぇな。ジャスパー、行けるか。
ジャスパー:誰に聞いてんの?行けるよ。
ルフス:俺も、シトリンと.......うっ!げほっ、げほっ!
シトリン:ルフス!だめよ、火傷が酷い......。
ニゲル:無理するな、ルフス。ここは俺たちに任せろ。............ラリマー、覚醒しろ。
ラリマー:分かった。
ニゲル:ジャスパー。行くぞ。
ジャスパー:いつでもいいよ!
:
ニゲル:.........竜装-結-(りゅうそう、むすび)
ジャスパー:はぁぁぁぁぁぁっ!!
:
0:ニゲルとジャスパーの体を光が包み、一体化した。
:
ルフス:え......なんだ、それ......。ニゲル......?いや、ジャスパー?
ニゲル:これは竜装と呼ばれる力、ドラゴンを身にまとい、文字通り一心同体で戦う力だ。
:
ラリマー:あたしも行くね。.........竜騎覚醒(りゅうきかくせい)!!
:
0:ラリマーの姿が白いドラゴンへと変化した。
:
シトリン:え…?白い、ドラゴンになった…?
ラリマー:今まで黙ってて悪かった。これがあたしの本来の力だ。
ルフス:お前自身が......ドラゴンだったのか......。
ニゲル:話してる暇はねぇ。行くぞ、ラリマー。
ラリマー:あぁ。黒いドラゴンストーンを破壊する!!
:
0:回想
:
ニゲル:ラリマー。お前は”イニシエの竜騎士”だろ。
ラリマー:イニシエの竜騎士?なに、それ。説明してくれない?
ニゲル:元々、この国には竜族と呼ばれる人間が住んでいた。普段は人間の姿だが、ドラゴンに姿を変えられる力を持つ種族。
ジャスパー:今はもう語られていない、遠い昔の話、だね。元は僕達はひとつの存在だったんだよ。
ニゲル:しかし、ある日、ドラゴンに変身する時間が長いもの達に、異変が起こる。人間の姿に戻れなくなってしまったんだ。それに呼応するように、1部の竜族はドラゴンに変身できなくなった。
ジャスパー:そして、人間とドラゴンは完全に分断された。それが、今のこの世界。
ラリマー:なーるほど。んで、あたしみたいに、ドラゴンにも人間にもなれる存在を”イニシエの竜騎士”って呼ぶわけね。で、あたしは”イニシエの竜騎士”だから、特別扱いされてる、と。
ニゲル:...違うのか。
ラリマー:んー、正解って事にしておこうかな。
ニゲル:どっちだよ、それは。
ラリマー:見せてあげる。......竜騎覚醒!
ニゲル:っ!白いドラゴンに......!
ジャスパー:本当に...イニシエの竜騎士は存在したんだね......!
ラリマー:長はこのことを知ってる。だから、ここに立入ることを許されているし、任務は絶対に単身で行くことにしている。
ニゲル:なるほど、な。
ラリマー:(ドラゴン化を解く)よっと。まぁでも、この力は、この世界に脅威が訪れる時以外は使わないって決めてんだ。
ニゲル:そうか。
ラリマー:たぶんそろそろ、その時が来ると思うけどな。
:
0:回想終了。
:
ニゲル:ラリマー!黒い竜の攻撃を引きつけてくれ!俺たちはアレを破壊する!
ラリマー:頼んだ!......っ!黒い竜から..無数の......石の槍.........?
0:黒い竜の身体から、無数の槍が精製され、ラリマーに襲いかかった。
ラリマー:くそっ!飛ばしてきたかっ!避け.........っ!は、はやいっ!......ぐあっ!
ニゲル:ラリマー!?
ラリマー:平気だ!破壊に集中、しろっ!
ニゲル:ちっ、やられんなよ!
ラリマー:あの槍......なんてスピードで撃ってくるんだ......!充填速度も早すぎる......!くっ!かすった.........!っ!ヤバい、バランスが、............っ!!!
:
0:バランスを崩したラリマーに、無数の槍が襲いかかる。
:
ラリマー:あああああぁっ!!!
ニゲル:ラリマーっっ!!!
ラリマー:はや、すぎる........悪い、翼、やられた.........。
ニゲル:くそっ.......!だが隙はできた!一旦、上昇だ!
ジャスパー:ニゲル、黒い槍がこっち来てる!速い!
ニゲル:避(よ)けながら急降下して、破壊する!はあぁぁぁぁっ!!!
0:急降下の勢いをつけて、黒いドラゴンストーンを攻撃する。しかし
ニゲル:........っ!破壊、できてない......?
ジャスパー:ニゲル!!避(よ)けてっ!!!
ニゲル:....っ!!間に合わな......っ!ぐああぁぁぁっ!!!
ジャスパー:うわぁぁぁぁぁっ!!!
0:攻撃を受け、竜装が解除される。
ジャスパー:竜装が......解けた.........。ニゲル、どこ、に.........。っ!ニゲル!ニゲル!目を覚まして!!
ニゲル:..................。
ジャスパー:まだ攻撃は続いてる!!ニゲルっ!!!くそ、動け......動けよ......っ!護らなきゃ!!
ラリマー:くっ........!つよ、すぎる.........!
ジャスパー:やめろ、やめろ、やめろぉぉぉっ!!!
:
0:槍がニゲルを攻撃する刹那
:
ルフス:させねぇっ!(槍をはじく)
ラリマー:ルフス......!
ルフス:俺があの黒いドラゴンストーンに力を与えちまった。だったら、俺がおとしまえをつける!!
シトリン:ルフス、アレはニゲルとジャスパーの力でも壊せなかった。もっともっと、高さと速さがいるわ。
ルフス:問題ないだろ。俺とお前なら、できる!くるぞ、避(よ)けろ!
シトリン:うんっ!
ラリマー:な.....!あの攻撃を全部避(よ)けてる!?
ルフス:シトリン、上昇だ!とにかく、高くっ!!
シトリン:任せ............(槍がシトリンの足をかすめる)あぁっ!?
ルフス:!!槍が!!
シトリン:あう......っ!槍の速度が......どんどん.........はやくなってる.........!
ルフス:シトリンっ!大丈夫か!?
シトリン:へーき......!だけど、あの速さ....私でも避(よ)けきれない......!
:
ルフス:............いや、お前なら、俺らならできる。
:
シトリン:えっ?
ルフス:俺らなら、できる!俺らは最速最強のドラゴナイトだろ!
シトリン:.......うん、そうだね。私たちなら、やれる。
ルフス:やるぞ、シトリン。見よう見まねだけど。
シトリン:わかった。
:
ルフス:竜装-結-展開。
:
ジャスパー:な!竜、装.......?だめだよ、危険だ!それは互いの身体に重度の負荷がかかる!!
:
シトリン:はぁぁぁぁっ!!!
:
ラリマー:……!……成功、してる?
ジャスパー:ルフスとシトリンが.........ひとつになってる.......!
:
ルフス:行くぞ!とにかく上へ.........!
シトリン:ずっとずっと、上へ、上へ!!
:
ルフス:(M)追いかけてくる。後ろから、無数の槍が。速い、けど、避(よ)けられる。身体が思うように動く。シトリンと一緒になった、この身体が。
:
シトリン:(M)わかる。ルフスがどう動きたいのか。瞬間的に感じ取り、動くことが出来る。速い、速い、速い!
:
ルフス:(M)あぁ、こんなに高くまで飛んだことはなかった。国中が見渡せるほどの高さ。さぁ......急降下だ。槍もまだまだ攻撃をゆるめない。むしろどんどん速くなっている。ここからが、勝負だ。
:
シトリン:(M)目の前から飛んでくる無数の槍を避(よ)けながらの急降下.........少しでも判断が遅れれば終わりだ。だけど、あなたがいるから。あなたがいるから、私たちは最速になれる!
:
ルフス:行くぞっ!!
シトリン:うんっ!!
:
ルフス:(M)槍と槍とわずかな隙間。それを見極めて最小限の動きで避(よ)けていく。
:
シトリン:(M)さらに速く、加速に加速を重ねていく。
:
ルフス:(M)すごい、俺たちはこんなに速く飛べたのか。
:
シトリン:(M)ずっとずっと培ってきた。最速で飛ぶ力。
:
ルフス:(M)俺は弱いけど、
:
シトリン:(M)私は弱いけど、
:
ルフス:(M)今の俺たちは
:
シトリン:(M)1番、強い!!
:
:
ニゲル:.........ぅっ....。
ジャスパー:ニゲル!よかった....。
ニゲル:ジャス、パー......。っ!おい、お前、その傷!大丈夫か......っ!いっ!(自分の傷の痛みに顔を歪める)
ジャスパー:ニゲルも酷いけがなんだ。安静にしておいて。
ニゲル:アレは......どうなった......?
ラリマー:ルフスとシトリンが破壊しようとしてる。
ニゲル:!ラリマー、お前、足...!
ラリマー:あぁ。右足、やられた。そのせいでドラゴン化もできない。.........あの2人に任せるしかない。
ジャスパー:大丈夫だよ。あの2人なら。
ニゲル:あれは......竜装か.....?
ジャスパー:うん。だからきっと......いや、絶対に、大丈夫。
:
ルフス:うおおおおおおおっ!!!
シトリン:はああああああっ!!
:
0:2人は黒いドラゴンストーンに突っ込んだ。
:
0:
:
ルフス:ニゲル!ジャスパー!ラリマー!!無事か!?
ニゲル:なんとか。大丈夫だ。
ラリマー:情けねぇな、この力は脅威から護るためにあるチカラなのに......。なにも、できなかった......。
シトリン:いいえ、それは違う。
ラリマー:......?
シトリン:あの石を壊す直前に気づいたんだけど、内側にヒビがいくつかはいっていたの。あなたたちの一撃があったから、トドメをさせた。
ニゲル:そう、か。
ジャスパー:じゃあこれは、みんなの勝利、だね!それにしても、ルフス、シトリン、あの土壇場で竜装を身につけるなんて、すごいじゃないか!
ルフス:へへ、なんか、必死だったんだよ。皆を、この国を守りたいって一心で。
シトリン:破壊した瞬間、気が抜けちゃってすぐ解除されちゃったけどね。
ルフス:っと、すぐに救護呼ばなきゃな......。先にラリマーを連れて拠点に戻る。そっから、救護班連れてここまでまた来るから、それまで頑張ってくれ、ニゲル、ジャスパー。
ニゲル:すまねぇ、ルフス。
ジャスパー:ごめんね、僕が動けないばかりに......。
ルフス:名誉の負傷だ、気にすんな!......よし、シトリン、ラリマー、行くぞ。
ラリマー:いや、あたしは必要ない。
ルフス:は?何言ってんだ?ラリマー、
:
ラリマー:ここで、お別れだ。
:
ルフス:......え?
ニゲル:......あ?どういうことだ、ラリマー。
:
ラリマー:この世界での役目は終わった。次に、行かなきゃ。
:
0:ラリマーの体を白い炎が包む。
:
ルフス:っ!?ラリマー!うわ、白い炎!?なんだ、これ!
ラリマー:大丈夫だ。この炎はあたしをあるべき場所へ返す炎。
ニゲル:別れってどういう事だ!役目?次?訳の分からねぇこと言ってんじゃねぇ!
ラリマー:ニゲル。さっきお前は、あたしのこと”イニシエの竜騎士”って言ったよな。それは......この世界の言い方だと正解なのかもしれないけど、ちょっと違うんだ。
ニゲル:あぁ?
:
ラリマー:あたしは、ドラゴンストーンに代わって、襲いかかる脅威から世界を守る存在、”アイト”だ。
:
ルフス:アイ、ト......?
ラリマー:世界ってのは、ここの世界以外にもたくさん存在していて、その世界はドラゴンストーンを中心に繋がっているんだ。そして、どこかの世界でドラゴンストーン......呼び方は様々だが......それが危機に晒されてしまった時、他の世界にもほころびが生じてしまう。だから、あたしは、どこかの世界が脅威に襲われたとき、その世界を守らなきゃいけない。ひとつの世界が壊れてしまったら、全ての世界がやがて滅んでしまうから。
ジャスパー:それが、君の......ラリマーの役目、ってことなんだね。
ラリマー:そう。そして、この世界でのあたしの役目は終わった。だから、お別れだ。
ルフス:......嫌だよ。これからだってのに......!俺は!お前がいたから!お前の背中をただひたすら追いかけていたから!ここまで努力して、がんばってこれたのに......!
ラリマー:はは、いつもあたしに突っかかってきてたもんな。......その度に、夜遅くまで修行してたよな、ルフス。
ルフス:んだよ、知ってたのかよ......!
ラリマー:ルフス、お前は強い。剣術とか、体術とかそういうのじゃなくて、自分の弱さを受け入れる強さだ。
ルフス:............。
ラリマー:弱さを受け入れているからこそ、常に鍛錬を怠らないし、常に上を見て全力で走っている。それは、誰にでもできることじゃない。
ルフス:やめ、ろよ.........。
ラリマー:お前とシトリンなら、必ずトップのドラゴナイトになれるさ。
ルフス:............っ!!
ニゲル:...............どうしても行かなきゃいけないのか。ここにとどまることはできないのかっ!
ラリマー:......ごめんな。
ニゲル:.........行くなよ。
ラリマー:なんだよ、そんなしんみりするキャラじゃないだろ、ニゲル。いつもみたいに、睨みながら敵意、むけてこいよ....。
ニゲル:この状況でできるわけないだろ......っ!
ラリマー:ニゲル。そんな顔するな。あたしが消えるってことは、この世界から脅威が消えたってことだ!ほら、喜ばしいことじゃん。
ニゲル:.........やっと、分かり合えたと思ったのに。
ラリマー:ありがとう。一緒にたたかえて、よかった。
シトリン:行っちゃうのね。
ラリマー:あぁ。もう、時間だ。
ジャスパー:ラリマー、ありがとう。君のことは忘れない。
ラリマー:シトリン、ジャスパー。ありがとう。ルフス、ニゲルとともに、これからのこの世界を護ってくれ。
:
0:炎の勢いが増す。
:
ラリマー:ありがとな。さよなら。あたしの大切な、親友たち。
:
ルフス:ラリマーぁぁぁぁっ!!
ニゲル:..........っ!!!
:
0:ラリマーは炎とともに消えていった。
:
0:数日後
ニゲル:ルフス、シトリン。
ルフス:おっ!ニゲル、ジャスパー!もうケガはいいのか?
ジャスパー:うん。今日から任務復帰だ!
シトリン:よかった、大事に至らなくて。
ニゲル:にしても、世界も穏やかになったな。
ルフス:あぁ。あの黒いドラゴンストーンを壊した日から…災害も減って、モンスターの凶暴化も減った。
ニゲル:ラリマーが言ってたほころび、ってやつをあの黒いのが引き起こしていたのかもな。
ルフス:かもな。ま、それでもまだ完全に平和になったわけじゃないからな。…さて、そろそろパトロールに行く時間だ。
ニゲル:今日はどこに行くんだ?
ルフス:今日はディーワ国だな。
ニゲル:は?あの国、すげぇ遠いとこじゃねぇか。遠征か?
ルフス:いいや、日帰りだよ。俺とシトリンなら、すぐに行ける。
ニゲル:……ふっ、なるほどな。
ジャスパー:気を付けてね。
シトリン:うん!さ、行きましょうか。
ルフス:おうっ!
:
0:ルフスとシトリンはすごい速さで飛んで行った。
:
ジャスパー:なんか、昔の僕らを見ているみたいだね。
ニゲル:……そうだな。
ジャスパー:ルフスとシトリン、これから強くなっていくよ。
ニゲル:追いつかれない様にしないとな。
ジャスパー:うん。僕らもがんばろう。
:
:
ラリマー:(M)ルフス、ニゲル、シトリン、ジャスパー。君たちがいるなら、この世界はもう、大丈夫だ。君たちのその強さで、平和を守ってくれ。......あーあ、だから馴れ合う訳にはいかなかったんだ。別れがこんなに辛いなんて。この国で、あたしもドラゴンと一緒に、護っていきたかったな。.........さて、感傷に浸ってる場合じゃないね。まさか黒蛇石(くろへびいし)が現れるとは思ってもいなかった....。絶望の力が、増えつつある、のか。ま、考えても無駄か。記憶は失うんだからな.........。さて、ドラゴンストーン。次は、どの世界を救えばいい?......そうか。それじゃあ、その国へ。また生まれ変わろうか。
:
0:-終-
0:ite-ドラゴンハーツ-
:
ルフス:ニゲル!そっちいったぞ!
ニゲル:おう、任せろ。ジャスパー、一気に突っ込め。
ジャスパー:えぇ!?正面からぁ!?あのモンスターの爪、ヤバいじゃん!
ニゲル:俺の指示通りに動けば問題ない、行くぞ。
ジャスパー:わかったよ!任せるからね!
ルフス:シトリン、その間にけが人を安全な場所へつれてくぞ!
シトリン:わかったわ、ルフス、しっかり掴まってて、最速で飛ぶわよ!
ルフス:おっけー!
0:間
ルフス:よし、これで任務完了、だな!
シトリン:重傷者がいなくてよかったわ。
ジャスパー:はぁぁぁ、怖かったぁ......。
ニゲル:その臆病なとこ、いい加減直せよ。
ジャスパー:怖いもんは怖いんだよ〜!
ニゲル:ったく......おら、戻るぞ。
0:間
:
シトリン:人間とドラゴンが共に暮らす国、アングウィス。この国では、人間とドラゴンが力を合わせて、ドラゴンストーンというこの世界の源となる石を守っていました。ドラゴンストーンは、この世界を創造し、この世界のバランスを保っているといわれていました。その世界に住む彼らの中でも、特別な訓練を受け、世界の平和を守るもの達がいました。これは、ドラゴナイトと呼ばれる彼らの物語。
:
0:ドラゴナイト拠点
ルフス:あー!疲れたぁ!今夜は何食べようかなぁー!
ニゲル:結構遅くなったな。街で暴れるモンスターの討伐任務は後処理が多くて面倒だ。
ルフス:そうだな。ま、でも一番ナイトっぽい任務だから俺は好きだけどな!
ニゲル:…この時間だから、食堂誰もいねぇな。
:
ラリマー:ざーんねん、あたしがいましたー!貸切じゃなくて悪いね!
:
ルフス:.........ラリマー。
ニゲル:お前も任務終わりか。
ラリマー:まーね!任務終わりに食べるご飯っておいしいよな!
ニゲル:.........また単身での任務だったのか?
ラリマー:そーだよ。あたしは特別だからね。
ルフス:特別......悪い意味で、だろ。
ラリマー:んー?
ルフス:この国では幼少期からパートナーとなるドラゴンを決め、そのドラゴンと一生を共にする。そういうしきたりだ。なのに、なんでお前はドラゴンを従えてないんだよ。ドラゴナイトとしてここにいるのに、おかしいだろ。
ラリマー:だから、あたしが特別だから、って言ってんじゃん。
ルフス:俺はお前のこと、ドラゴナイトだって認めねぇからな。
ラリマー:ここにあたしがいることを決めたのはあんたでもあたしでもない。この国の長だ。文句なら長にいいなよ。
ルフス:てめぇ.......!
ニゲル:おい、その辺にしとけ。ラリマー、この国では、人間とドラゴン、2つが揃ってはじめて1人前と言える。ドラゴンを従えてない半人前のお前が、舐めた口きくな。
ラリマー:へぇ?2つ揃って1人前、ねぇ?
ニゲル:さらにお前はまだここに入隊して3ヶ月程度の新人だ。物心ついた頃からここで全てを捧げてきた俺らに歯向かってんじゃねぇよ。
ラリマー:あー、怖い怖い。後輩イビリやめなって。そんなに、新人に追い越されるのが怖い?
ルフス:あぁ?
ラリマー:ドラゴンと2つで1人前って言うけどさぁ、そのドラゴンに頼りっぱなしで、人間はどんどん弱くなっていってんじゃないの?あたしは、ドラゴンがいなくても、この身一つで何でもできる。でも、あんたたちはドラゴンがいないと何も出来ない。違う?
ルフス:てめぇ.........っ!!(ラリマーの胸ぐらを掴もうとする、が)
ラリマー:はぁっ!
ルフス:うっ!(その手を掴まれ、そのままラリマーに投げ飛ばされる)ぐあっ!!
ラリマー:ほら、簡単にその新人に投げ飛ばされてんじゃん。
ルフス:くそっ....!女のくせに......!
ラリマー:はいはい、その女のくせにって言うの、ダサいからやめときな?
ルフス:ちっ!(食堂を飛び出していく)
ラリマー:全く、いちいち突っかかってさぁ......
ニゲル:おい
ラリマー:なに.........うわっ!あぶなっ!(ニゲルからの攻撃をとっさに避ける)
ニゲル:舐めた口きくな、と言ったはずだが。
ラリマー:あーらら、大好きな同期のお仲間さんがやられたから仕返し?素敵な友情だね。
ニゲル:ったく.........はぁっ!(ラリマーに掴みかかる)
ラリマー:(避けながら)っとぉ!やる?いいよ!あたしは負けな.........
ニゲル:見えてないぞ
ラリマー:へ......?っうわっ!(ニゲルに足を払われ、体勢を崩す)
ニゲル:ふん!(ラリマーの両手首を拘束し、地面に叩き伏せる)
ラリマー:......たぁ...っ!足払いなんて姑息なことしやがって!
ニゲル:親父に気に入られてるかなんだか知らねぇが、あまり生意気な態度とんじゃねぇ。
ラリマー:んだよ、ドラゴンもいない、こんな女が活躍するのが嫌なんだろ?男はプライドが高くて嫌だね。
ニゲル:黙れ。ここでお前の衣服をはぎとって、女として辱めることも、俺にはできるぞ。
ラリマー:うーわ、トップのドラゴナイト様がそんな下品な脅ししてんじゃねぇよ。
ニゲル:...............。
ラリマー:................。(睨み合う)
ニゲル:ふん、次目に余るようなことしたらタダじゃおかねぇ。
ラリマー:はいはい、せーぜー気をつけまーす。
ニゲル:ちっ。(去っていく)
ラリマー:(ボソッと呟く)あたしは、馴れ合うわけにはいかないんだよ......。
:
ルフス:くそ!くそっ!なんなんだよ、ラリマーのやつ!腹立つ!!
シトリン:まーたラリマーに突っかかって返り討ちにあったの?
ルフス:うるせぇ!突っかかってもないし、返り討ちにあってもねぇ!
シトリン:もういいじゃない、ラリマーはラリマーの強さ、ルフスにはルフスの強さがあるんだから。
ルフス:俺は絶対に認めない…!…そうだ、明日の戦闘訓練でわからせてやる…!
シトリン:まーた返り討ちにあっても知らないわよー?
ルフス:シトリン、お前も一緒に手伝ってくれ。
シトリン:え?なにを?
:
0:翌日、訓練場
ルフス:ってなわけでラリマー!お前がドラゴンを従えなくても強いという証明、してもらうぞ!
シトリン:.........ルフス?これは....
ルフス:俺とシトリンでお前と戦う!今日こそ、完膚無きまでに叩きのめしてやるぞ!
ニゲル:............(呆れたようにため息を着く)
ジャスパー:えぇー.........。
ラリマー:プライド捨てたの?あんた。
ルフス:ちげぇよ!昨日お前は言ったな、ドラゴンがいなくても、この身一つで戦えると!だから、それを証明してみやがれってんだ!
ラリマー:あー.........まぁ、いいけどさぁ。
シトリン:ごめんなさいね、この子、こういうバカなとこあるから......。
ルフス:剣は有りにしよう、さぁ!剣をもて!
ラリマー:はいはい。ねぇ、あたしがこれに勝てたら、もう突っかかってくんなよ?
ルフス:行くぞ!シトリン、上昇だ!
シトリン:はいはいっと!(勢いよく上昇する)
ラリマー:仕方ねぇ、あたしも本気で行くからな!
ルフス:ドラゴンなして、勝てるわけねぇ!シトリン、捕らえろ!
シトリン:ごめんなさいね、戦闘ってなると、私も本気を出さなきゃだから......!はぁっ!(勢いよく下降し、ラリマーに突進する)
ラリマー:うぉっ!(ギリギリで避ける)やっぱ、シトリンの速さはすげぇな......。
ルフス:急旋回、連撃!
シトリン:はぁぁっ!!
ラリマー:ちっ......!風圧が......っ!(避けるが、風圧でよろめく)
ルフス:今だっ!くらえぇぇぇぇ!
ラリマー:ったく、その大振りな攻撃が隙だらけなんだって。......やぁっ!(片手でルフスの剣撃を剣で受け流す)ほーらよっと!(もう片方の手で、ルフスの手首を打つ)
ルフス:だっ......!あっ!剣が!(ルフスの手から剣が落ちる).........う、うわぁっ!
0:ルフス、シトリンから落ちてしまう。
シトリン:あっ!ルフス!
ルフス:.........っ!!
ラリマー:これでわかっただろ?ドラゴンと一緒だろうと、あたしには勝てないって。
ルフス:............くっ!
シトリン:ルフス、大丈夫?
ルフス:...........。
ラリマー:これに懲りたら、あたしにはもう突っかからないでよ。
ニゲル:はぁ。(剣を抜いて、ラリマーの元へと向かう)
ジャスパー:あぁちょっと、ニゲル!
ラリマー:もっと強くなってから喧嘩うってきてね。あたしも暇じゃな....っ!!(背後からの剣撃に、とっさに剣で応じる)
ニゲル:いい加減にしろ。言ったよな、タダじゃおかねぇって。
ラリマー:ニゲル......っ!急な不意打ちはないんじゃないの?やっ!(剣を振りほどく)
ニゲル:俺と剣で戦え。タイマンだ。
ラリマー:いーよ、ついでにあんたもねじ伏せるっ!はぁっ!
ニゲル:自分の力を過信しすぎだ、ラリマー。
0:剣がぶつかり合う
ラリマー:過信じゃないか、確かめようぜ!
ニゲル:確かにお前は強い。体術も剣術もトップだ。だが、協調性がなさすぎる。
ラリマー:いいんだよ、そんなのなくて。任務は1人で充分だし、馴れ合いとかごめんだからなっ!
ニゲル:あと、その人を見下す態度もやめろ。それが1番鼻につく。
ラリマー:見下してるつもりないよ。ただ、突っかかってきたやつに制裁をくだしてるだけ。正当防衛だ。
ニゲル:そうやって見下してると、見えるもんも見えないぞっ!(足払いをかける)
ラリマー:おっとぉ!残念、それはもうくらわ.........
ニゲル:今度は上が見えてない。
ラリマー:.........がっ!頭、突き......っ!............ぐあっ!(頭づきをくらって、後ろに倒れる)
ニゲル:また、俺の勝ちだ。(ラリマーの首元に剣をつきつけながら)
ラリマー:くそっ!
ニゲル:さて、どうしてくれようか......
ジャスパー:ニゲル。やり過ぎ。
ニゲル:やり過ぎなわけねぇだろ、このくらいやんなきゃこいつは......
ジャスパー:違う。君たちの事じゃない。
ニゲル:あ?どういう......
:
ルフス:なんだよ.......それ.....。
:
ニゲル:ルフス?どーした?
ルフス:ラリマーはシトリンと戦った俺の事を簡単に倒して、そのラリマーをニゲルは自分の力だけで倒して......なんだよ......俺、そんなに弱いのかよ.......っ!
ニゲル:おい、ルフ...
ルフス:お前も俺の事見下してたのか、ニゲルっ!!
ニゲル:はぁ?ちが......
ルフス:バカにしてんじゃねぇよっ!!!どいつもこいつもっ!!!(走り去っていく)
シトリン:ルフス!(ルフスを追いかけていく)
ニゲル:............。
ラリマー:...............。
ジャスパー:まったく......。もっとさ、彼の尊厳ってものをちゃんと見てよ。
ニゲル:いや、むしろ俺はアイツの尊厳を守った。アイツを煽るラリマーをねじ伏せて......
ジャスパー:それがダメだって言ってるんだ。君たちは強くて、自分のその強さに自信を持ってるから、ちょっとやそっとじゃプライドは崩れないだろうけど......自分は弱いって思ってる身としては、常にプライドが崩される不安と戦ってるんだよ。
ニゲル:......ちっ。わかったよ、ルフスに謝ってくる。
ジャスパー:行かなくていい。逆効果。
ニゲル:だけど!
ジャスパー:彼のことはシトリンに任せよう。彼女の言葉が1番だと思うから。
ニゲル:.........わかった。
:
0:森の奥
:
ルフス:くそ、くそ、くそぅっ!!!んだよ.......なんでそんなにみんな強いんだよ....っ!どうして、俺は強くなれないんだよ......っ!くそっ!
シトリン:ルフス!
ルフス:あぁ、シトリンか。お前も俺の事、笑いにきたのか。
シトリン:そんなわけないでしょ。ルフス、戻ろう?
ルフス:戻らない。俺は......俺はドラゴナイトに向いてない。こんな、こんな弱い俺なんて。
シトリン:ルフスは弱くないよ。ずっと頑張ってきたじゃん、だから
ルフス:そうだよ!ずっと頑張ってきたんだよ!それなのに!.........それなのに、入って3ヶ月のラリマーにも、同期のニゲルにも、あんなに差をつけられてんだよ.........!
シトリン:それ、は.........
ルフス:わかってんだろ、お前だって。俺が弱いからだって。
シトリン:そんなこと思ってな......
ルフス:嘘つくな!そういうお前だって!お前だって弱いだろうがっ!
シトリン:............っ!!
ルフス:俺もお前も!弱いから!だからいつまでたっても勝てないんだよ!
シトリン:どう、して......そんなことを言うの.........?
ルフス:俺みたいな弱い人間がパートナーで悪かったな。だけどな、俺だって、もっと強いドラゴンと組みたかった。
シトリン:っ!それは、言わないでよ.........あなただけだったのに.........あなただけが!私の弱さを受け入れてくれてたのに!
ルフス:シトリン。お前との関係を解消する。
シトリン:ルフ、ス............。
ルフス:俺は1人で強くなる。お前はもう自由だ。.........じゃあな。(走り去る)
シトリン:どう、して.........ルフス......!
:
0:ドラゴンストーンの祠
:
ラリマー:......近づいてる。.........そろそろ、か?
ニゲル:こんなとこでなにしてる。
ラリマー:......ニゲル、とジャスパーもか。
ジャスパー:やあ、ラリマー。
ニゲル:ここは、ドラゴンストーンのある祠(ほこら)。俺の一族しか立ち入られないはずだが?
ラリマー:その一族の長から、許可をもらってる。
ニゲル:.........はぁ、親父も何でこんなに特別扱いをするのか。
ジャスパー:3ヶ月前、長がここで倒れているラリマーを保護したんだよね。
ニゲル:家に連れ帰るなり、こいつをドラゴナイトの特別部隊に任命する、とか何とか言って。特別扱いする理由は、未だに教えてもらっちゃいねぇ。
ジャスパー:ラリマーが入りたての頃はだいぶ荒れたよね。なんでこんな訳の分からないやつが急にドラゴナイトに、って。......だけど、ラリマーの強さに、みんな何も言わなくなっていった。
ラリマー:ま、それでも疎まれていることに変わりはないけどな。
ニゲル:ずっと考えてた。お前の存在を。そして、1つの結論に至った。
ラリマー:へぇ?聞かせてよ。
:
ニゲル:ラリマー、お前は”イニシエの竜騎士”だろ。
:
0:再び森
:
ルフス:俺は弱い.........誰よりも。.........強くなりたい、強さが欲しい......!もっと、もっと、誰にも......ドラゴンにすら負けない力を.........っ!
:
ルフス:............ん?なんだ、あの光?黒い、光.........?って、こっちに、落ちてきてる!?
:
0:上空から、黒い物体が近くに轟音を立てて落ちる。
:
ルフス:なんだ!?近くに落ちたぞ......?............っ!!(ルフスの頭の中で何やら声が響く)なん、だ.........頭に、なにか.........声.........?俺を.........よん、でる?.........あの黒い物体から、か?行ってみよう.........。
:
ルフス:これは......!黒い石......いや......黒い.......ドラゴンストーン?俺たちが護っているのは白いドラゴンストーン。.........これは....いったい......?............うっ!また、声が.........!...........っ!触れて、みろ....?
0:(ルフスは黒いドラゴンストーンに触れる。すると、突然。黒い炎がルフスを包んだ)
ルフス:っ!!なんだ、これ!!黒い炎が.........っ!くっ!逃げられ.........っ!ぐああああっ!!
:
ルフス:う......、くる、しい......声が...強く.........あた、まが.........
ルフス:(徐々にとりつかれていく)俺ハ......ヨワ、い......チカラ、が......ホシ、い......ダレにもマケなイ、チカラ、が.........そうダ.........オレ、を......ミクだすモノ......スべて......コワス......ゼツぼうを...........。チカラを......すべてを壊すチカラを......!俺が!!いちばん強いんだっ!!!俺をバカにしたヤツら、皆、皆!!絶望にたたき落としてやるっ!!俺の!!チカラで!!この!絶望のチカラで!!!はははははっ!!!
:
0:ドラゴンストーンの祠
ジャスパー:っ!!なにか、きてる。
ニゲル:ジャスパー?どうした。
ジャスパー:ヤバいのが、来てる気がする.........っ!!
:
0:(轟音が遠くで響き、地面が揺れる)
ラリマー:なんだ!?
ニゲル:今の音は?
ジャスパー:たぶん、かなりヤバい......すぐ向かおう、ニゲル!
ニゲル:おう、行くぞ。
ジャスパー:ラリマーも、乗って!
ラリマー:わるい、頼んだ。
ジャスパー:しっかり掴まってて!
:
0:祠からでて、上空へ飛び立つ。
ニゲル:あそこだ。森の奥......!
ジャスパー:黒い火柱が、あがってる......!
ラリマー:黒い......炎.........!
ニゲル:待て、あの方向.........ルフスが走っていった方向じゃないか......?
ジャスパー:急ごう!
:
0:森の奥
ジャスパー:なんだ、あれ......中心になにか黒いものが.......ドラゴン、ストーン......?
ニゲル:くっ......!炎の威力が強い...近づけねぇ......っ!
ラリマー:あれ!あのドラゴンストーンの中心!
ジャスパー:あれは.........ルフス!?
ニゲル:黒のドラゴンストーンに飲み込まれてる......?おい!ルフス!聞こえるかっ!?
ルフス:.........絶望を。
ニゲル:ルフス!シトリンはどうした!おい!
ルフス:絶望の、炎よ、燃え盛れ。
:
0:炎の威力が増す。
:
ラリマー:くっ!さらに炎の勢いが......っ!
ルフス:俺は、この力でこの国を、この世界を絶望に染める。絶望こそが、力。最強の力。
ニゲル:ルフス!のまれてるのか......?ジャスパー!突っ込むぞ、ルフスを助け出す!
ジャスパー:.........っ!
ニゲル:ジャスパー!
ジャスパー:ニゲル、ダメだ......。これは近づけない......。
ニゲル:......そんなに、ヤバいのか。
ジャスパー:飛び込んで......全員がのまれる未来しか見えなかった......。
ニゲル:くそ.........どうすれば......っ!
ラリマー:あたしが......飛び込む......っ!
ジャスパー:まって、ラリマー。ダメだよ、同じ結果だ....!
ラリマー:でも!このままにできないだろ!
ジャスパー:でも.........っ!
:
シトリン:ルフスっ!!!(躊躇なく黒い炎へ飛びこむ)
:
ジャスパー:......!シトリンっ!ダメだ、飛び込むなっ!!
シトリン:ルフス、ルフスっ!
ジャスパー:あぁ......っ!シトリンまで、黒い炎に......っ!
ラリマー:ジャスパー。落ち着いて。
ジャスパー:落ち着いてられないよ!これじゃあ、シトリンまで......っ!
ラリマー:大丈夫。彼らを信じよう。
ジャスパー:ラリマー.........。
:
シトリン:あつ......っ!ルフ......ス.......!
ルフス:お前も絶望の1部となりにきたのか。
シトリン:ルフスっ!目を覚まして!
ルフス:俺と一緒に、絶望に......
シトリン:あなたはこんな絶望に屈するほど弱くないでしょう!負けないで、ルフス!
ルフス:弱い自分を、絶望が強くしてくれたんだ.........弱かった!俺を!
シトリン:違う!ルフス、あなたは弱くないっ!!あなたはいつだって、強くあろうとした、強かった!だから!!弱い私も強くなれた!!そうでしょう、ルフス!
ルフス:..........っ!なにを......うっ!くそ......出て......クル、な....っ!....ヤメ...ろ......
シトリン:私たちは!最速最強の!空のドラゴナイトでしょ、ルフスっ!!!
ルフス:.........!!サイソく......サイ、きョウの.........そらの......ドラゴ、ナイト......っ!!
シトリン:目を覚まして!お願いっ!私も一緒に、戦うから!
ルフス:そう、ダ.........俺は......俺タチは.........最速!最強の!!空のドラゴナイトだ!シトリン!!!
:
0:ルフスとシトリンから白い光が発せられる。
:
ルフス:(M)なんで、忘れていたんだろう。
:
ルフス:(M)シトリンと出会ったのは、5歳の時だ。しきたりとして与えられたドラゴンの卵を一生懸命にお世話したのを覚えている。そして、お世話して半年......ついに卵がかえった。
:
ルフス:(M)生まれたドラゴンは、俺よりも小さくて、とても弱々しくて......だけどとても.........暖かかった。俺はその時、コイツをずっと守ろう。守れる強い人間になろう。そう、思ったのだ。
:
ルフス:(M)それから、10年の時が経ち、俺とシトリンは、ドラゴナイト養成所で訓練を受けていた。ある日、実戦形式の戦闘訓練があったときの夜のこと。俺は、ボロボロになったシトリンの手当てしていた。
:
シトリン:ルフス.........ごめんなさい、私が弱いばかりに....いつも勝てなくて..ごめんなさい.......
ルフス:なーに、気にすんなって!強くなるための訓練なんだからさ!これからこれから!
シトリン:............こんなに弱いドラゴン、初めてだって......言われるの。
ルフス:はぁ?誰だよ、そんなこと言ってる奴!
シトリン:同じ養成所のドラゴンたちに....。力もなくて、戦いのセンスもない、お前のパートナーの人間がかわいそうだって.......。
ルフス:............。
シトリン:私が弱いばかりに......これじゃあルフスが目指す、国1番のドラゴナイトになれない.........ごめんね、ごめんなさい......。
ルフス:じゃあ、シトリンの分まで俺が強くなってやるよ。
シトリン:え.........?
ルフス:お前の力が弱い分は、俺が強くなってやる。そんで、お前が胸を張って、俺らは強いんだって言えるようなドラゴナイトになろう。俺たちは、2つで1つなんだからさ。
シトリン:ルフス.........。
ルフス:それに、お前はさ、力は確かに弱いかもしれないけど、飛行能力はすげぇじゃん。飛行訓練のとき、先生かなり褒めてんだぜ?
シトリン:......昔から、飛ぶのが好きだったもんね、私も、ルフスも。
ルフス:............そうか!そうだよ!なんだ!簡単な事だったんだよ、シトリン!
シトリン:え?な、なにが?
ルフス:お前には、自在に瞬速で飛び回るチカラがある!だから、力の強いドラゴナイトじゃなくて!空を自由に飛ぶ最速最強の空のドラゴナイトになろう!
シトリン:空の......ドラゴナイト.........
ルフス:誰にも追いつけない速さでさ、空を翔(かけ)るって、ほら!カッコイイじゃん!!な!力が強いだけが強さじゃないよ、シトリン!それと、俺も、俺自身もいっぱい頑張って強くなる!一緒に、トップを目指そう!
シトリン:............ルフ、ス。
ルフス:なに泣いてんだよ!よっし!そうと決まれば!夜空を翔け回ってみようぜ!
シトリン:............あり、がとう、ルフス。
ルフス:ほら!立てよ!行くぜ!シトリン!
シトリン:.........ルフス、私、結構怪我してるんだけど......?
ルフス:だいじょーぶだいじょーぶ!気合いでなんとかなるって!
シトリン:..........ルフスのそういうとこ、嫌いじゃないけど.........まぁいっか......うん、本調子で飛べないかもしれないけど、行こっか!
:
ルフス:シトリンっ!!
シトリン:ルフスっ!!
:
0:ルフスを包んでいた黒い炎が消える。
:
ニゲル:炎が......消えた。
ラリマー:よかった......。ジャスパー、下に降りよう。
ジャスパー:うん!了解!
:
ルフス:ごめん、シトリン......酷いこと言って......ごめん、ごめんっ!
シトリン:いいの。あなたが無事でよかった。
ルフス:ごめんな.........ごめん.......!
シトリン:いつまで謝ってるの。ほら、顔あげてよ。
ルフス:俺、やっぱおまえと.........
:
ニゲル:おいっ!逃げろっ!!
:
ルフス:え....?うわぁっ!
:
0:黒いドラゴンストーンから、再び炎が燃え上がる。
:
シトリン:ルフス!乗って!
ルフス:なんだ、あれ.........!
:
ジャスパー:黒い炎の.........ドラゴン....?
ラリマー:くそ、ルフスが解放されても、あの石の力は無くならないみたいだ!ルフスから吸い取った力でまだ動いてる!
ニゲル:一旦離れるぞ!
:
0:ルフスたちは黒いドラゴンストーンから距離をとって、地面に降りる。
:
ラリマー:あれはやばいな.........。どんどん大きくなっていってる....。おそらく、あの石本体を壊さない限り、アレは勢力を増していく......!
ニゲル:だったら、壊すしかねぇな。ジャスパー、行けるか。
ジャスパー:誰に聞いてんの?行けるよ。
ルフス:俺も、シトリンと.......うっ!げほっ、げほっ!
シトリン:ルフス!だめよ、火傷が酷い......。
ニゲル:無理するな、ルフス。ここは俺たちに任せろ。............ラリマー、覚醒しろ。
ラリマー:分かった。
ニゲル:ジャスパー。行くぞ。
ジャスパー:いつでもいいよ!
:
ニゲル:.........竜装-結-(りゅうそう、むすび)
ジャスパー:はぁぁぁぁぁぁっ!!
:
0:ニゲルとジャスパーの体を光が包み、一体化した。
:
ルフス:え......なんだ、それ......。ニゲル......?いや、ジャスパー?
ニゲル:これは竜装と呼ばれる力、ドラゴンを身にまとい、文字通り一心同体で戦う力だ。
:
ラリマー:あたしも行くね。.........竜騎覚醒(りゅうきかくせい)!!
:
0:ラリマーの姿が白いドラゴンへと変化した。
:
シトリン:え…?白い、ドラゴンになった…?
ラリマー:今まで黙ってて悪かった。これがあたしの本来の力だ。
ルフス:お前自身が......ドラゴンだったのか......。
ニゲル:話してる暇はねぇ。行くぞ、ラリマー。
ラリマー:あぁ。黒いドラゴンストーンを破壊する!!
:
0:回想
:
ニゲル:ラリマー。お前は”イニシエの竜騎士”だろ。
ラリマー:イニシエの竜騎士?なに、それ。説明してくれない?
ニゲル:元々、この国には竜族と呼ばれる人間が住んでいた。普段は人間の姿だが、ドラゴンに姿を変えられる力を持つ種族。
ジャスパー:今はもう語られていない、遠い昔の話、だね。元は僕達はひとつの存在だったんだよ。
ニゲル:しかし、ある日、ドラゴンに変身する時間が長いもの達に、異変が起こる。人間の姿に戻れなくなってしまったんだ。それに呼応するように、1部の竜族はドラゴンに変身できなくなった。
ジャスパー:そして、人間とドラゴンは完全に分断された。それが、今のこの世界。
ラリマー:なーるほど。んで、あたしみたいに、ドラゴンにも人間にもなれる存在を”イニシエの竜騎士”って呼ぶわけね。で、あたしは”イニシエの竜騎士”だから、特別扱いされてる、と。
ニゲル:...違うのか。
ラリマー:んー、正解って事にしておこうかな。
ニゲル:どっちだよ、それは。
ラリマー:見せてあげる。......竜騎覚醒!
ニゲル:っ!白いドラゴンに......!
ジャスパー:本当に...イニシエの竜騎士は存在したんだね......!
ラリマー:長はこのことを知ってる。だから、ここに立入ることを許されているし、任務は絶対に単身で行くことにしている。
ニゲル:なるほど、な。
ラリマー:(ドラゴン化を解く)よっと。まぁでも、この力は、この世界に脅威が訪れる時以外は使わないって決めてんだ。
ニゲル:そうか。
ラリマー:たぶんそろそろ、その時が来ると思うけどな。
:
0:回想終了。
:
ニゲル:ラリマー!黒い竜の攻撃を引きつけてくれ!俺たちはアレを破壊する!
ラリマー:頼んだ!......っ!黒い竜から..無数の......石の槍.........?
0:黒い竜の身体から、無数の槍が精製され、ラリマーに襲いかかった。
ラリマー:くそっ!飛ばしてきたかっ!避け.........っ!は、はやいっ!......ぐあっ!
ニゲル:ラリマー!?
ラリマー:平気だ!破壊に集中、しろっ!
ニゲル:ちっ、やられんなよ!
ラリマー:あの槍......なんてスピードで撃ってくるんだ......!充填速度も早すぎる......!くっ!かすった.........!っ!ヤバい、バランスが、............っ!!!
:
0:バランスを崩したラリマーに、無数の槍が襲いかかる。
:
ラリマー:あああああぁっ!!!
ニゲル:ラリマーっっ!!!
ラリマー:はや、すぎる........悪い、翼、やられた.........。
ニゲル:くそっ.......!だが隙はできた!一旦、上昇だ!
ジャスパー:ニゲル、黒い槍がこっち来てる!速い!
ニゲル:避(よ)けながら急降下して、破壊する!はあぁぁぁぁっ!!!
0:急降下の勢いをつけて、黒いドラゴンストーンを攻撃する。しかし
ニゲル:........っ!破壊、できてない......?
ジャスパー:ニゲル!!避(よ)けてっ!!!
ニゲル:....っ!!間に合わな......っ!ぐああぁぁぁっ!!!
ジャスパー:うわぁぁぁぁぁっ!!!
0:攻撃を受け、竜装が解除される。
ジャスパー:竜装が......解けた.........。ニゲル、どこ、に.........。っ!ニゲル!ニゲル!目を覚まして!!
ニゲル:..................。
ジャスパー:まだ攻撃は続いてる!!ニゲルっ!!!くそ、動け......動けよ......っ!護らなきゃ!!
ラリマー:くっ........!つよ、すぎる.........!
ジャスパー:やめろ、やめろ、やめろぉぉぉっ!!!
:
0:槍がニゲルを攻撃する刹那
:
ルフス:させねぇっ!(槍をはじく)
ラリマー:ルフス......!
ルフス:俺があの黒いドラゴンストーンに力を与えちまった。だったら、俺がおとしまえをつける!!
シトリン:ルフス、アレはニゲルとジャスパーの力でも壊せなかった。もっともっと、高さと速さがいるわ。
ルフス:問題ないだろ。俺とお前なら、できる!くるぞ、避(よ)けろ!
シトリン:うんっ!
ラリマー:な.....!あの攻撃を全部避(よ)けてる!?
ルフス:シトリン、上昇だ!とにかく、高くっ!!
シトリン:任せ............(槍がシトリンの足をかすめる)あぁっ!?
ルフス:!!槍が!!
シトリン:あう......っ!槍の速度が......どんどん.........はやくなってる.........!
ルフス:シトリンっ!大丈夫か!?
シトリン:へーき......!だけど、あの速さ....私でも避(よ)けきれない......!
:
ルフス:............いや、お前なら、俺らならできる。
:
シトリン:えっ?
ルフス:俺らなら、できる!俺らは最速最強のドラゴナイトだろ!
シトリン:.......うん、そうだね。私たちなら、やれる。
ルフス:やるぞ、シトリン。見よう見まねだけど。
シトリン:わかった。
:
ルフス:竜装-結-展開。
:
ジャスパー:な!竜、装.......?だめだよ、危険だ!それは互いの身体に重度の負荷がかかる!!
:
シトリン:はぁぁぁぁっ!!!
:
ラリマー:……!……成功、してる?
ジャスパー:ルフスとシトリンが.........ひとつになってる.......!
:
ルフス:行くぞ!とにかく上へ.........!
シトリン:ずっとずっと、上へ、上へ!!
:
ルフス:(M)追いかけてくる。後ろから、無数の槍が。速い、けど、避(よ)けられる。身体が思うように動く。シトリンと一緒になった、この身体が。
:
シトリン:(M)わかる。ルフスがどう動きたいのか。瞬間的に感じ取り、動くことが出来る。速い、速い、速い!
:
ルフス:(M)あぁ、こんなに高くまで飛んだことはなかった。国中が見渡せるほどの高さ。さぁ......急降下だ。槍もまだまだ攻撃をゆるめない。むしろどんどん速くなっている。ここからが、勝負だ。
:
シトリン:(M)目の前から飛んでくる無数の槍を避(よ)けながらの急降下.........少しでも判断が遅れれば終わりだ。だけど、あなたがいるから。あなたがいるから、私たちは最速になれる!
:
ルフス:行くぞっ!!
シトリン:うんっ!!
:
ルフス:(M)槍と槍とわずかな隙間。それを見極めて最小限の動きで避(よ)けていく。
:
シトリン:(M)さらに速く、加速に加速を重ねていく。
:
ルフス:(M)すごい、俺たちはこんなに速く飛べたのか。
:
シトリン:(M)ずっとずっと培ってきた。最速で飛ぶ力。
:
ルフス:(M)俺は弱いけど、
:
シトリン:(M)私は弱いけど、
:
ルフス:(M)今の俺たちは
:
シトリン:(M)1番、強い!!
:
:
ニゲル:.........ぅっ....。
ジャスパー:ニゲル!よかった....。
ニゲル:ジャス、パー......。っ!おい、お前、その傷!大丈夫か......っ!いっ!(自分の傷の痛みに顔を歪める)
ジャスパー:ニゲルも酷いけがなんだ。安静にしておいて。
ニゲル:アレは......どうなった......?
ラリマー:ルフスとシトリンが破壊しようとしてる。
ニゲル:!ラリマー、お前、足...!
ラリマー:あぁ。右足、やられた。そのせいでドラゴン化もできない。.........あの2人に任せるしかない。
ジャスパー:大丈夫だよ。あの2人なら。
ニゲル:あれは......竜装か.....?
ジャスパー:うん。だからきっと......いや、絶対に、大丈夫。
:
ルフス:うおおおおおおおっ!!!
シトリン:はああああああっ!!
:
0:2人は黒いドラゴンストーンに突っ込んだ。
:
0:
:
ルフス:ニゲル!ジャスパー!ラリマー!!無事か!?
ニゲル:なんとか。大丈夫だ。
ラリマー:情けねぇな、この力は脅威から護るためにあるチカラなのに......。なにも、できなかった......。
シトリン:いいえ、それは違う。
ラリマー:......?
シトリン:あの石を壊す直前に気づいたんだけど、内側にヒビがいくつかはいっていたの。あなたたちの一撃があったから、トドメをさせた。
ニゲル:そう、か。
ジャスパー:じゃあこれは、みんなの勝利、だね!それにしても、ルフス、シトリン、あの土壇場で竜装を身につけるなんて、すごいじゃないか!
ルフス:へへ、なんか、必死だったんだよ。皆を、この国を守りたいって一心で。
シトリン:破壊した瞬間、気が抜けちゃってすぐ解除されちゃったけどね。
ルフス:っと、すぐに救護呼ばなきゃな......。先にラリマーを連れて拠点に戻る。そっから、救護班連れてここまでまた来るから、それまで頑張ってくれ、ニゲル、ジャスパー。
ニゲル:すまねぇ、ルフス。
ジャスパー:ごめんね、僕が動けないばかりに......。
ルフス:名誉の負傷だ、気にすんな!......よし、シトリン、ラリマー、行くぞ。
ラリマー:いや、あたしは必要ない。
ルフス:は?何言ってんだ?ラリマー、
:
ラリマー:ここで、お別れだ。
:
ルフス:......え?
ニゲル:......あ?どういうことだ、ラリマー。
:
ラリマー:この世界での役目は終わった。次に、行かなきゃ。
:
0:ラリマーの体を白い炎が包む。
:
ルフス:っ!?ラリマー!うわ、白い炎!?なんだ、これ!
ラリマー:大丈夫だ。この炎はあたしをあるべき場所へ返す炎。
ニゲル:別れってどういう事だ!役目?次?訳の分からねぇこと言ってんじゃねぇ!
ラリマー:ニゲル。さっきお前は、あたしのこと”イニシエの竜騎士”って言ったよな。それは......この世界の言い方だと正解なのかもしれないけど、ちょっと違うんだ。
ニゲル:あぁ?
:
ラリマー:あたしは、ドラゴンストーンに代わって、襲いかかる脅威から世界を守る存在、”アイト”だ。
:
ルフス:アイ、ト......?
ラリマー:世界ってのは、ここの世界以外にもたくさん存在していて、その世界はドラゴンストーンを中心に繋がっているんだ。そして、どこかの世界でドラゴンストーン......呼び方は様々だが......それが危機に晒されてしまった時、他の世界にもほころびが生じてしまう。だから、あたしは、どこかの世界が脅威に襲われたとき、その世界を守らなきゃいけない。ひとつの世界が壊れてしまったら、全ての世界がやがて滅んでしまうから。
ジャスパー:それが、君の......ラリマーの役目、ってことなんだね。
ラリマー:そう。そして、この世界でのあたしの役目は終わった。だから、お別れだ。
ルフス:......嫌だよ。これからだってのに......!俺は!お前がいたから!お前の背中をただひたすら追いかけていたから!ここまで努力して、がんばってこれたのに......!
ラリマー:はは、いつもあたしに突っかかってきてたもんな。......その度に、夜遅くまで修行してたよな、ルフス。
ルフス:んだよ、知ってたのかよ......!
ラリマー:ルフス、お前は強い。剣術とか、体術とかそういうのじゃなくて、自分の弱さを受け入れる強さだ。
ルフス:............。
ラリマー:弱さを受け入れているからこそ、常に鍛錬を怠らないし、常に上を見て全力で走っている。それは、誰にでもできることじゃない。
ルフス:やめ、ろよ.........。
ラリマー:お前とシトリンなら、必ずトップのドラゴナイトになれるさ。
ルフス:............っ!!
ニゲル:...............どうしても行かなきゃいけないのか。ここにとどまることはできないのかっ!
ラリマー:......ごめんな。
ニゲル:.........行くなよ。
ラリマー:なんだよ、そんなしんみりするキャラじゃないだろ、ニゲル。いつもみたいに、睨みながら敵意、むけてこいよ....。
ニゲル:この状況でできるわけないだろ......っ!
ラリマー:ニゲル。そんな顔するな。あたしが消えるってことは、この世界から脅威が消えたってことだ!ほら、喜ばしいことじゃん。
ニゲル:.........やっと、分かり合えたと思ったのに。
ラリマー:ありがとう。一緒にたたかえて、よかった。
シトリン:行っちゃうのね。
ラリマー:あぁ。もう、時間だ。
ジャスパー:ラリマー、ありがとう。君のことは忘れない。
ラリマー:シトリン、ジャスパー。ありがとう。ルフス、ニゲルとともに、これからのこの世界を護ってくれ。
:
0:炎の勢いが増す。
:
ラリマー:ありがとな。さよなら。あたしの大切な、親友たち。
:
ルフス:ラリマーぁぁぁぁっ!!
ニゲル:..........っ!!!
:
0:ラリマーは炎とともに消えていった。
:
0:数日後
ニゲル:ルフス、シトリン。
ルフス:おっ!ニゲル、ジャスパー!もうケガはいいのか?
ジャスパー:うん。今日から任務復帰だ!
シトリン:よかった、大事に至らなくて。
ニゲル:にしても、世界も穏やかになったな。
ルフス:あぁ。あの黒いドラゴンストーンを壊した日から…災害も減って、モンスターの凶暴化も減った。
ニゲル:ラリマーが言ってたほころび、ってやつをあの黒いのが引き起こしていたのかもな。
ルフス:かもな。ま、それでもまだ完全に平和になったわけじゃないからな。…さて、そろそろパトロールに行く時間だ。
ニゲル:今日はどこに行くんだ?
ルフス:今日はディーワ国だな。
ニゲル:は?あの国、すげぇ遠いとこじゃねぇか。遠征か?
ルフス:いいや、日帰りだよ。俺とシトリンなら、すぐに行ける。
ニゲル:……ふっ、なるほどな。
ジャスパー:気を付けてね。
シトリン:うん!さ、行きましょうか。
ルフス:おうっ!
:
0:ルフスとシトリンはすごい速さで飛んで行った。
:
ジャスパー:なんか、昔の僕らを見ているみたいだね。
ニゲル:……そうだな。
ジャスパー:ルフスとシトリン、これから強くなっていくよ。
ニゲル:追いつかれない様にしないとな。
ジャスパー:うん。僕らもがんばろう。
:
:
ラリマー:(M)ルフス、ニゲル、シトリン、ジャスパー。君たちがいるなら、この世界はもう、大丈夫だ。君たちのその強さで、平和を守ってくれ。......あーあ、だから馴れ合う訳にはいかなかったんだ。別れがこんなに辛いなんて。この国で、あたしもドラゴンと一緒に、護っていきたかったな。.........さて、感傷に浸ってる場合じゃないね。まさか黒蛇石(くろへびいし)が現れるとは思ってもいなかった....。絶望の力が、増えつつある、のか。ま、考えても無駄か。記憶は失うんだからな.........。さて、ドラゴンストーン。次は、どの世界を救えばいい?......そうか。それじゃあ、その国へ。また生まれ変わろうか。
:
0:-終-